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【発明の名称】 ガス器具判別装置
【発明者】 【氏名】鈴木 守

【氏名】甲野 祥子

【要約】 【課題】より高精度のガス器具判別装置を提供する。

【解決手段】ガス供給ラインに接続される装置であって,使用中のガス器具を判別するガス器具判別装置において,ガス供給ラインを流れるガス流量を検出する流量検出器と,複数種類のガス器具毎に,当該ガス器具の使用に伴って生じるガス流量の時間微分値について時間に対する変化を示す微分値パターンをあらかじめ有する器具判別テーブルと,流量検出器により検出された検出ガス流量の微分値パターンとマッチングする微分値パターンを器具判別テーブルから抽出し,当該器具判別テーブル内の抽出された微分値パターンに対応するガス器具を使用中のガス器具と判別するするガス器具判別手段とを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給ラインに接続される装置であって,使用中のガス器具を判別するガス器具判別装置において,
前記ガス供給ラインを流れるガス流量を検出する流量検出器と,
複数種類のガス器具毎に,当該ガス器具の使用に伴って生じるガス流量の時間微分値について時間に対する変化を示す微分値パターンをあらかじめ有する器具判別テーブルと,
前記流量検出器により検出された検出ガス流量の前記微分値パターンとマッチングする微分値パターンを前記器具判別テーブルから抽出し,当該器具判別テーブル内の前記抽出された微分値パターンに対応するガス器具を使用中のガス器具と判別するガス器具判別手段とを有するガス器具判別装置。
【請求項2】
請求項1において,
前記微分値パターンは,前記ガス流量の時間微分値の大きさと,所定の時間微分値が継続する時間の長さと,前記時間微分値が所定の変化を生じる時間の長さとを有することを特徴とするガス器具判別装置。
【請求項3】
請求項1において,
前記流量検出器は,所定のサンプリングレートで前記ガス流量を検出して検出ガス流量を出力し,
前記ガス器具判別手段は,前記検出ガス流量を平滑化することなく時間微分して第1の時間微分値を求め,前記検出ガス流量を所定の時間長で平滑化した平滑化検出ガス流量を時間微分して第2の時間微分値を求め,前記マッチングを前記第1及び第2の時間微分値に対する第1及び第2の微分値パターンについて行うことを特徴とするガス器具判別装置。
【請求項4】
請求項3において,
前記器具判別テーブルは,前記複数種類のガス器具に対応して,前記第1または第2の微分値パターンを前記ガス器具に対応付けていることを特徴とするガス器具判別装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は,各家庭へのガス供給ライン中に設置され,ガス流量計を有するガスメータなどに内蔵されるガス器具判別装置に関し,特に,使用中のガス器具を判別するガス器具判別装置に関する。本発明のガス器具判別装置によれば,計測したガス流量の時間微分値の時間変化パターンから使用中のガス器具を高精度に判別することができるので,判別結果を利用して高度な保安機能を実現することができる。
【背景技術】
【0002】
各家庭へのガス供給ラインの入り口に,ガス流量計を内蔵したガスメータが取り付けられる。ガスメータは,ガス供給ラインを通過するガス流量を計測し,計測されたガス流量は定期的なガス料金の算出に利用される。ガスメータは,上記ガス流量の計測機能に加えて,異常なガス使用状態を検出してガスの供給を遮断するという保安機能を有する。この保安機能によれば,地震,ガス漏れ,ガス器具の消し忘れなどの異常状態の検出に応答して,ガス流路内に設けられた遮断弁を閉じてガスの供給を遮断する。
【0003】
この場合,ガス器具の種類に応じて異なる態様の保安機能を実現することが望まれる。例えば,比較的消費ガス量が大きい大型の給湯器は,通常の連続使用時間がそれほど長くないので,所定の時間以上連続して使用される場合は何らかの異常状態と見なすことができる。一方,ストーブなどは少ないガス流量で長時間にわたり連続使用されることがあり,大型の給湯器と同様の判断を行うことは適切でない。また,ガス漏れ発生時には,即座に遮断弁を閉じることが望まれる。
【0004】
したがって,ガスメータのガス流量計やガス圧力計の計測値から,使用中のガス器具を判別することができれば,ガス器具に適合した保安機能を実現することができる。
【0005】
特許文献1には,複数種類のガス器具について,燃焼制御に伴って発生する一連のガス流量パターンを分割した部分流量パターンを,制御ステップ毎に分類した流量パターンテーブルと,ガス器具に対応して制御ステップ毎の部分流量パターン及びガス流量を有する器具テーブルとをあらかじめ備えておき,ガス流量計で検出されたガス流量パターンとマッチングする部分流量パターンを抽出し,抽出した部分流量パターンの組み合わせから使用中のガス器具を判別することが提案されている。
【0006】
すなわち,器具テーブルには各ガス器具がとりうる複数の部分流量パターンを登録しておき,検出された流量パターンとマッチングする部分流量パターンの組み合わせから使用中のガス器具を判別する。部分流量パターンを利用することで,検出流量パターンとのマッチング精度を向上させることができ,高精度のガス器具判別を可能にする。
【特許文献1】特開2003−149019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら,特許文献1のように部分流量パターンのマッチングを手がかりにガス器具判別を行う場合,複数のガス器具が同じ部分流量パターンを持つ場合があるとともに,低コスト化の観点から流量センサや圧力センサのサンプリング精度や測定精度をそれほど高くすることができず,検出した流量パターンとマッチングする部分流量パターンを流量パターンテーブル内から抽出することができない場合があり,器具判別が不能になったり誤った器具判別を行う可能性がある。
【0008】
特に,流量パターンによる判別方法では,ガスコンロ,家庭用燃料電池,ガスファンヒータ,床暖房装置を他のガス器具から高精度に区別することが必ずしも容易でない。
【0009】
そこで,本発明の目的は,より高精度のガス器具判別装置を提供することにある。
【0010】
また,本発明の別の目的は,ガスコンロ,家庭用燃料電池,ガスファンヒータ,床暖房装置を他のガス器具から精度良く区別して判別することができるガス器具判別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために,本発明によれば,ガス供給ラインに接続される装置であって,使用中のガス器具を判別するガス器具判別装置において,前記ガス供給ラインを流れるガス流量を検出する流量検出器と,複数種類のガス器具毎に,当該ガス器具の使用に伴って生じるガス流量の時間微分値について時間に対する変化を示す微分値パターンをあらかじめ有する器具判別テーブルと,前記流量検出器により検出された検出ガス流量の前記微分値パターンとマッチングする微分値パターンを前記器具判別テーブルから抽出し,当該器具判別テーブル内の前記抽出された微分値パターンに対応するガス器具を使用中のガス器具と判別するするガス器具判別手段とを有する。
【0012】
上記の発明によれば,ガス流量を時間微分した微分値パターンを利用することにより,器具に特有の微分値パターンを有するガス器具を高精度に検出することができる。
【0013】
上記の発明において,好ましい態様によれば,前記微分値パターンは,前記ガス流量の時間微分値の大きさと,所定の時間微分値が継続する時間の長さと,前記時間微分値が所定の変化を生じる時間の長さとを有する。
【0014】
上記の発明において,好ましい態様によれば,前記流量検出器は,所定のサンプリングレートで前記ガス流量を検出して検出ガス流量を出力し,前記ガス器具判別手段は,前記検出ガス流量を平滑化することなく時間微分して第1の時間微分値を求め,前記検出ガス流量を所定の時間長で平滑化した平滑化検出ガス流量を時間微分して第2の時間微分値を求め,前記マッチングを前記第1及び第2の時間微分値に対する第1及び第2の微分値パターンについて行う。そして,好ましくは,前記器具判別テーブルは,前記複数種類のガス器具に対応して,前記第1または第2の微分値パターンを前記ガス器具に対応付けている。
【0015】
ガス器具毎に第1または第2の微分値パターンのうち検出精度が高いほうを選択して器具判別テーブルに登録しておくことで,より高い判別精度を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば,検出ガス流量の時間微分値について時間に対する変化を示す微分値パターンをもとに,使用中のガス器具を判別するので,他のガス器具と明確に区別可能な特徴的な微分値パターンをもつガス器具を高精度に判別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下,図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し,本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず,特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0018】
図1は,本実施の形態におけるガス器具判別装置を内蔵するガスメータの構成図である。ガスメータ10は,外部からのガス供給ライン12と顧客宅内の内部のガス供給ライン14との間に設けられ,ガス供給路内に遮断弁106と,ガス圧力検出器104と,ガス流量検出器102とを有する。ガス流量検出器102は,例えば超音波センサなど比較的短いサンプリングレート(例えば2秒ごと)で瞬時流量を検出できるセンサが好ましい。制御ユニット108は,例えばマイクロコンピュータで構成され,ガス流量検出器102が検出する上記サンプリングレートのガス流量データからガス流量を積算し,所定の期間内でのガス消費量を求めるガス流量積算手段112と,器具判別テーブルを記憶した記憶手段114と,上記ガス流量データと圧力検出器104が検出するガス圧力データとに基づき,器具判別テーブルを参照して,使用中のガス器具を判別するガス器具判別手段116とを構成する。
【0019】
制御ユニット108が積算したガス消費量のデータは,図示しない表示手段に表示されるか,または,通信ユニット110から遠隔のセンタに送信される。制御ユニット108は,判別したガス器具に対応して所定の保安機能を実行する。例えば,ガス器具毎に設定された連続使用時間を超えて使用が継続される場合は,通信ユニット110を介してセンタに通報され,センタから顧客宅への電話連絡などにより安全確認が行われる。または,異常な使用形態が検出された場合は,制御ユニット108は,内蔵する遮断弁106を強制的に遮断制御する。或いは,制御ユニット108は,ガス漏れを検出した時も遮断弁106を強制的に遮断制御する。
【0020】
図1の例では,顧客宅16には,台所用のガスコンロ18,床暖房器(熱源器)20,ガスファンヒータ22,燃料電池24などがガス供給ライン14に接続される。また,顧客宅16には,ガスストーブや,風呂への給湯機能を有する給湯器など(図示せず)も接続される。
【0021】
一般に顧客宅に設置されるガス器具のうち,給湯器や床暖房器用熱源器などは,使用開始時の立ち上がり流量が600L/h以上と高いのに対して,ガスコンロ,ガスストーブ,ガスファンヒータ,家庭用燃料電池などは600L/hより低い。したがって,使用開始時の立ち上がり流量により,給湯器や熱源器などの大量にガスを消費するガス器具と,ガスコンロ,ガスファンヒータ,家庭用燃料電池など少量のガスを消費するガス器具とは,比較的区別が容易である。
【0022】
一方,ガスコンロ,ガスファンヒータ,家庭用燃料電池などは,ガス消費量が同等の範囲内であり,ガスストーブやガスファンヒータ,家庭用燃料電池などは特有のガス流量パターンを発生するものの,ガスコンロは,使用者によるマニュアル制御が介在するため,いかなるガス流量パターンも発生しうることからガス流量パターンの予測が容易でなく,他のガス器具との区別が容易ではない。さらに,ガスコンロや家庭用燃料電池をガス流量パターンに基づいて他のガス器具と区別することも容易ではない。
【0023】
そして,床暖房器用熱源器は,ガス流量パターンに基づいて給湯器と区別することも容易ではない。また,家庭用燃料電池は長時間にわたり少量のガスを消費するので,ガス漏れと区別することが容易ではない。
【0024】
ガスストーブやガスファンヒータ,家庭用燃料電池などある程度自動制御機能を有するガス器具の場合は,立ち消え防止機能などの安全装備が施されているが,ガスコンロにはそのような装備が施されていない場合が多く,ガスコンロは,ガス漏れと並んで,保安上の観点から精度良く判別できる必要性が高い。よって,ガスコンロの使用をガス漏れと高精度に区別できる必要性も高い。
【0025】
本実施の形態では,各ガス器具の燃焼制御またはガス消費制御に伴うガス流量の時間微分値の時間に対する変化を示す微分値パターンを,各ガス器具毎にあらかじめ器具判別パターンテーブルに登録しておき,ガス流量検出器102からの検出ガス流量の微分値パターンとマッチングする微分値パターンを器具判別パターンテーブルから抽出し,器具判別テーブル内の抽出された微分値パターンに対応するガス器具を使用中のガス器具と判別する。
【0026】
図2は,本実施の形態における流量パターンを説明する図である。図2は,あるガス器具のガス流量の時間に対する変化(流量パターン)を示している。横軸が時間t,縦軸がガス流量Qに対応し,ガスメータ内のガス流量検出器102により検出されたガス流量Qrkが示されている。この例では,ある時間T1でガス器具が使用開始されガス流量がQbまで立ち上がり,その後時間T2で,所定の燃焼制御または使用制御によりガス流量Qrkが一旦減少し,さらに減少し,その後は時間T3では一定値で安定している。
【0027】
本実施の形態では,立ち上がり時T1から時間T3(例えば1時間)までの間に検出されるガス流量から時間微分値を算出し,時間微分値の時間に対する変化を示す微分値パターンのうち,ガス器具に特徴的な微分値パターンをあらかじめガス器具毎に器具判別テーブルに登録しておく。したがって,特徴的な微分値パターンは,立ち上がり時T1から時間T3までの任意の時間帯に発生する部分流量パターンの時間微分値のパターンである。
【0028】
また,本実施の形態のガス器具判別器は,ガス流量検出器102として,超音波を利用したガス流量センサなどの瞬時流量を検出できるセンサを利用して,例えば,2秒毎のサンプリングレートでガス流量を検出する。
【0029】
ただし,ガス器具によってはその動作制御からガス流量に高周波のノイズが乗る場合がある。そのようなガス器具に対しては,検出ガス流量の流量パターンを所定時間長で平滑化処理をして高周波ノイズを除去した後,時間微分により微分値パターンを求めることが望ましい。一方,ガス器具によっては特徴的な微分値パターンが極めて短時間に発生する流量パターンに基づく場合がある。そのようなガス器具に対しては,平滑化処理を行うと特徴的な微分値パターンが検出できないので,検出ガス流量の流量パターンを平滑化処理することなくそのまま時間微分して微分値パターンを求めることが望ましい。
【0030】
よって,本実施の形態では,器具判別テーブルでは,ガス器具使用時に検出される検出ガス流量に対して,平滑化処理せずに時間微分した第1の時間微分値の微分値パターンと,所定の時間長で平滑化した平滑化検出ガス流量を時間微分した第2の時間微分値の微分値パターンとのいずれかが,ガス器具に応じて登録される。そして,ガス器具判別手段は,検出ガス流量に対して,平滑化処理せずに時間微分して第1の時間微分値を求めると共に,検出ガス流量を所定の時間長で平滑化した平滑化検出ガス流量を時間微分して第2の時間微分値を求め,器具判別テーブルの微分値パターンとのマッチングを第1及び第2の時間微分値に対する第1及び第2の微分値パターンについて行う。このようにすることで,検出ガス流量に望ましくない高周波ノイズが重畳されるガス器具でもその特徴的な微分値パターンを器具判別に利用することができる。
【0031】
具体的なマッチング処理は,検出ガス流量から得た微分値パターンが,登録されている微分値パターンと一致するかの判別ロジックを有する判別プログラムを実行することにより行われる。
【0032】
図3は,本実施の形態におけるガス器具判別手段のガス器具判別手順を示すフローチャート図である。ガス器具判別手段は,ガス流量検出器102からのガス流量データQrkとを,時刻tと共に,計測データDB1として内蔵メモリに記録する(S10)。このとき,望ましくはガス圧力検出器104からのガス圧力データPも計測データとして内蔵メモリに記録する。ただし,センサノイズなどを除去するために,有効な計測データは,サンプリング点での検出流量Qkrまたは所定数のサンプリング点での平均流量が基準値Q1を超えていることが条件である(S12)。よって,検出流量Qrkまたはその平均流量が基準値Q1以下になると,それまでの計測データは消去される(S14)。したがって,検出流量Qrkまたはその平均流量が基準値Q1を超えていることが検出されると(S12のYES),何らかのガス器具の使用が開始されたこと,またはガス漏れが始まったことが検出される。これがガス器具の使用開始時でありガス流量の立ち上がり時である。そして,上記の検出流量Qrkの記録が時間T3を経過するまで行われる(S16)。
【0033】
そして,ガス流量の立ち上がりから期間T3を経過すると(S16のYES),ガス器具判別手段は,それまでの計測データDB1から,検出ガス流量Qrkを平滑化処理することなく時間微分値dQをサンプリングレートの2秒毎に算出し,さらに,検出ガス流量Qrkを例えば30秒間の平均値,または所定の重み付け比率による平均値を求める平滑化処理を行い,その平滑化流量Qaの時間微分値dQaを30秒毎に算出する(S18)。
【0034】
そして,ガス器具判別手段は,平滑化されていない検出ガス流量Qの時間微分値dQと平滑化流量Qaの時間微分値dQaの時間に対する変化をそれぞれ示す2種類の微分値パターンについて,器具判別テーブルDB2内に登録されている微分値パターンとマッチングをとり,一致する微分値パターンを有するガス器具を使用中のガス器具と判断する(S20)。
【0035】
以下,特定のガス器具として,ガスコンロ,家庭用燃料電池,ガスファンヒータ,ガス床暖房器が有する特有の微分値パターンについて説明する。図4は,ガスコンロのガス流量パターン(図4(A))と微分値パターン(図4(B))とを示す図である。ガスコンロの場合,典型的なガス流量パターンは,図4(A)に示されるとおり,使用開始時にガス流量が急峻に上昇し(Q1),急峻に下降し(Q2),一定値で安定し(Q3),ある時点で急激に下降し(Q4),更に一定値で安定する(Q4)。図示しないが,流量Q3で安定している時に急激に上昇することもある。いずれにしても,ガスコンロは,利用者がマニュアルでガス流量の増減を制御するので,比較的短時間Ta(例えば4秒)内で急激に下降または上昇する。また,使用開始時は一旦ガス流量が最大レベルで発火しその後低下する。この現象も短時間Ta以内に生じる。
【0036】
これのガス流量の微分値を求めると,図4(B)に示されるとおり,短時間Ta内で高い微分値dQ1,dQ2が発生し,さらに,短時間Taで高い微分値dQ4が発生する。よって,ガスコンロに特有の微分値パターンは,短時間Ta以内である閾値dQthを超える微分値が生じるパターンといえる。
【0037】
図5は,家庭用燃料電池のガス流量パターン(図5(A))と微分値パターン(図5(B))とを示す図である。家庭用燃料電池は,例えば,固体高分子形燃料電池(PEFC)からなり,都市ガスのメタン(CH4)をブースタにより高圧状態にし,ガス燃焼による高温状態で水と反応させて水素(H2)を生成し,空気から得た酸素(O2)との反応により電力を生成する。家庭用燃料電池は,上記の電力生成メカニズムから,圧力状態と高温状態をバランスさせる必要があり,ガス流量を急激に変化させることはできない。つまり,家庭用燃料電池の場合のガス流量は極めてゆっくりと上昇または下降するよう制御される。
【0038】
また,家庭用燃料電池は,家庭で使用される最小電力を供給できる程度の電力生成を長時間にわたり継続して電力を蓄積するので,その固有のガス流量パターンは,少量のガス流量(例えば150L/H)が長時間(24時間以上)継続するパターンである。さらに,現在普及しているガスメータでは,少ないガス流量が長時間継続した場合,ガス漏れと判断して遮断弁を強制遮断する保安機能を有する。したがって,家庭用燃料電池の流量パターンがこの保安機能によりガス漏れパターンと判定されないようにするために,ガス流量を一時的に下降させ更に元の流量に上昇させる制御が定期的に行われる。
【0039】
図5(A)のガス流量Q11,Q15が,上記の長時間にわたり継続する少ないガス流量のパターンに対応し,ガス流量の下降と上昇(Q12,Q13,Q14)が,上記の一時的な下降と上昇の流量パターンに対応する。よって,家庭用燃料電池に特有の流量パターンは,長時間Tb(例えば10分)をかけてゆっくり下降するパターンQ12である。
【0040】
上記の流量パターンの微分パターンは,図5(B)に示されるとおり,比較的長い時間Tb以上にわたり所定の閾値dQth2以下の微分値dQ12,dQ15を有する。よって,長時間Tbにわたり小さい閾値dQth2以下の微分値dQ12が継続する微分値パターンが,家庭用燃料電池に固有の微分値パターンといえる。
【0041】
図6は,ガスファンヒータのガス流量パターン(図6(A))と微分値パターン(図6(B))とを示す図である。ガスファンヒータは,室温を測定し設定された温度になるように燃料制御が行われる。通常,ガス流量を制御する比例弁が設けられ7〜8段階のガス流量のいずれかがフィードバック制御により選択される。よって,図6(A)に示されるとおり,ガス流量は,使用開始時に最大ガス流量まで短時間Tc(例えば4秒)で立ち上がり(Q21),所定時間Td(例えば30秒)の間そのガス流量を維持し(Q22),フィードバック制御により比較的長い時間Te(例えば15秒)をかけて設定温度に対応するレベルまでガス流量が絞られる(Q23)。その後は,一定のガス流量が維持される(Q24)。
【0042】
上記の流量パターンの微分値パターンは,図6(B)に示されるとおり,短時間Tc内で閾値dQth3を超える高い微分値dQ21が発生し,所定時間Tdの間ゼロの微分値dQ22が発生し,その後比較的長い時間Teにわたり閾値dQth4以内のマイナスの微分値dQ23が発生するパターンである。これがガスファンヒータに特有の微分値パターンといえる。
【0043】
図7は,床暖房器のガス流量パターン(図7(A))と微分値パターン(図7(B))とを示す図である。床暖房器は,運転開始指令に応答して熱源器が燃焼を開始し,所定温度の湯水を床に設置した循環パイプ内に循環させる。よって,運転開始時は循環パイプ内の冷水を沸かすために比較的多くのガスを燃焼させる必要があるが,最初の循環で循環パイプ内の冷水の温度が上昇した後は比較的少ないガス燃焼だけでよく,長期的にはガス流量は低い値に維持される。
【0044】
図7(A)に示されるとおり,運転開始時にガス流量は急激に上昇し(Q31),一旦下降する(Q32)。その後は,比較的長時間Tf(例えば5分)の間で緩やかにガス流量は上昇し(Q33),更に長時間Tg(例えば5分)の間で緩やかにガス流量は下降する(Q34)。
【0045】
上記の流量パターンの微分値パターンは,図7(B)に示されるとおり,運転開始時に急激に立ち上がり(dQ31),急激に立ち下がってマイナス値になる(dQ32)。その後は,長時間Tfの間緩やかなプラスの値になり(dQ33),ゼロクロス点を経由して,長時間Tgの間緩やかなマイナスの値になる(dQ34)。これが,ガス床暖房器に特有の微分値パターンである。
【0046】
以上説明したガス器具毎の特徴的な微分値パターンがあらかじめ器具判別テーブルに登録されている。そして,ガス判別手段は,検出されたガス流量から平滑化処理せずに時間微分した微分値パターンと,平滑化処理して時間微分した微分値パターンとを演算で求め,2種類の微分値パターンについて器具判別テーブル内の微分値パターンとマッチング処理をする。
【0047】
次に,上記のガスコンロ,家庭用燃料電池,ガスファンヒータ,ガス床暖房器について,平滑化処理の有無を実験データを示して説明する。
【0048】
図8は,実験で得たガスコンロにおける平滑化していない流量パターンQとその微分値パターンdQとを示す図である。つまり,流量パターンQは,ガス流量検出器の2秒毎のサンプリングレートで検出された瞬時流量の時間に対する変化を示している。横軸が時間,縦軸が流量値(上)と微分値(下)に対応する。この微分値パターンには,起動時の短時間での高いプラスの微分値dQ1,短時間での高いマイナスの微分値dQ2が発生し,安定期において短時間での高いマイナス(またはプラス)の微分値dQ4が発生している。これは,図4で説明した微分値パターンと一致する。
【0049】
図9は,実験で得たガスコンロにおける平滑化した流量パターンQaとその微分値パターンdQaとを示す図である。平滑化処理は,30秒間における検出ガス流量を同じ比率で加重平均する処理である。この場合,ガスコンロの特徴的な短時間での急激なガス流量の下降や上昇が平滑化処理により失われ,平滑化処理した流量パターンから生成した微分値パターンには,前述の特徴的な微分値パターンが図8程は見出されない。
【0050】
よって,ガスコンロの特徴を示す微分値パターンは,平滑化していない検出流量パターンを時間微分して求めた微分値パターンが好ましい。
【0051】
図10は,実験で得た家庭用燃料電池における平滑化した流量パターンQaとその微分値パターンdQaとを示す図である。家庭用燃料電池の場合は,前述したとおりガスをブースタにより加圧する必要があり,このブースタの動作により検出ガス流量には微少な高周波ノイズが重畳する。したがって,検出される瞬時流量を所定の時間長(例えば30秒)で平滑化処理し,それを時間微分した微分値パターンを利用するのが好ましい。家庭用燃料電池の特徴は,緩やかなガス流量の低下であるので,平滑化処理により特徴的な流量パターンが消滅することはない。図10の例では,比較的長い時間に小さいマイナスの微分値dQa12が発生していて,図5の微分値dQ12と一致している。
【0052】
図11は,実験で得たガスファンヒータにおける平滑化していない流量パターンQとその微分値パターンdQとを示す図である。図示されるとおり,ガスファンヒータは流量Qが急峻に立ち上がり,一定量を維持した後,比較的緩やかに低下する(Q23)のが特徴であり,微分値パターンには,短時間での高い値dQ21と,ゼロの値dQ22と,比較的長い時間の比較的小さいマイナス値dQ23が生じている。これは,図6の説明と一致している。
【0053】
図12は,実験で得たガスファンヒータにおける平滑化した流量パターンQaとその微分値パターンdQaとを示す図である。平滑化処理は30秒間の均等な平均値である。図示されるとおり,ガスファンヒータの特徴である比較的長い時間の比較的小さいマイナス値dQ23が消滅している。よって,ガスファンヒータの場合は,平滑化しないで時間微分した微分値パターンが好ましい。ガスファンヒータには,比例弁が設けられているが,その制御段階が7〜8段階と比較的少ないので流量制御で頻繁に流量が上下することはなく,よって平滑化処理の必要性は少ない。
【0054】
図13は,実験で得た床暖房器における平滑化していない流量パターンQとその微分値パターンdQとを示す図である。床暖房器の場合は熱源器を燃焼させて循環パイプ内の水を温める。熱源器では比例弁によるフィードフォワード,フィードバック制御が行われ,その比例弁の制御は例えば20段階以上の流量レベルで行われる。したがって,比例弁で制御されるガス流量には高周波ノイズが生じる。よって,検出された瞬時ガス流量を平滑化しないとそこに含まれる高周波ノイズが微分値パターンに強調されて残ってしまい,特徴的な微分値パターンを抽出することが困難である。
【0055】
図14は,実験で得た床暖房器における平滑化した流量パターンQaとその微分値パターンdQaとを示す図である。平滑化処理は,前述と同様に30秒間の均等比率の平均値を求める演算である。図示されるとおり,平滑化処理された流量パターンQaには,なだらかな上昇パターンQa33となだらかな下降パターンQa34とが生じていて,その時間微分した微分値パターンdQaには,比較的長い時間のプラスの微分値dQa33と比較的長い時間のマイナスの微分値dQa34とが生じている。これは,図7の説明と一致している。よって,床暖房器の場合は,平滑化処理した流量値を時間微分した微分値パターンが好ましい。
【0056】
図8〜図14の通り,ガスコンロとガスファンヒータは検出流量を平滑化処理することなく時間微分した微分値パターンを器具判別テーブルに登録し,家庭用燃料電池と床暖房器は検出流量を平滑化処理して時間微分した微分値パターンを器具判別テーブルに登録するのが望ましい。そして,器具判別工程では,検出した流量を平滑化せずに時間微分した微分値パターンと,平滑化して時間微分した微分値パターンとを算出し,二種類の微分値パターンについて器具判別テーブル内の微分値パターンとマッチング処理を行う。それにより,ガス器具毎に最適な微分値パターンでマッチング処理をすることができる。
【0057】
以上の通り,本実施の形態では,消費されるガス流量を検出し,そのガス流量に基づいて使用中のガス器具の判別をする場合,ガス流量を時間微分した微分値パターンに基づいてガス器具の判別をすることで,特徴的な微分値パターンを有するガス器具を高精度に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施の形態におけるガス器具判別装置を内蔵するガスメータの構成図である。
【図2】本実施の形態における流量パターンを説明する図である。
【図3】本実施の形態におけるガス器具判別装置のガス器具判別手順を示すフローチャート図である。
【図4】ガスコンロのガス流量パターンと微分値パターンとを示す図である。
【図5】家庭用燃料電池のガス流量パターンと微分値パターンとを示す図である。
【図6】ガスファンヒータのガス流量パターンと微分値パターンとを示す図である。
【図7】床暖房器のガス流量パターンと微分値パターンとを示す図である。
【図8】実験で得たガスコンロにおける平滑化していない流量パターンQとその微分値パターンdQとを示す図である。
【図9】実験で得たガスコンロにおける平滑化した流量パターンQaとその微分値パターンdQaとを示す図である。
【図10】実験で得た家庭用燃料電池における平滑化した流量パターンQaとその微分値パターンdQaとを示す図である。
【図11】実験で得たガスファンヒータにおける平滑化していない流量パターンQ(図中黒三角)とその微分値パターンdQとを示す図である。
【図12】実験で得たガスファンヒータにおける平滑化した流量パターンQaとその微分値パターンdQaとを示す図である。
【図13】実験で得た床暖房器における平滑化していない流量パターンQとその微分値パターンdQとを示す図である。
【図14】実験で得た床暖房器における平滑化した流量パターンQaとその微分値パターンdQaとを示す図である。
【符号の説明】
【0059】
10:ガスメータ 12:ガス供給路
102:ガス流量検出器 114:器具判別テーブル
116:ガス器具判別手段
【出願人】 【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
【出願日】 平成19年2月14日(2007.2.14)
【代理人】 【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二

【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳


【公開番号】 特開2008−196991(P2008−196991A)
【公開日】 平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願番号】 特願2007−33343(P2007−33343)