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【発明の名称】 流量計測装置およびそれを用いた流体供給システム
【発明者】 【氏名】梅景 康裕

【氏名】宮田 肇

【氏名】伊藤 陽一

【氏名】賀門 健一

【要約】 【課題】ガス漏れが発生したときに、素早く検知し、迅速な処置を施すことが可能な流量計測装置を提供する。

【解決手段】流路内を流れる流体の瞬時流量を計測する流量計測手段12と、流量計測手段12で計測された瞬時流量を時系列的に記憶してパターン化する流量パターン記憶手段10aと、ガス管等の漏洩事象発生時に示す特徴的な流量変化パターンを予め漏洩パターンとして記憶する漏洩パターン記憶手段10bと、流量パターン記憶手段10aと漏洩パターン記憶手段10bに記憶された流量パターンに基づいて流量計測手段12の下流側の漏洩を判別する漏洩判別手段10dとを備え、漏洩判別手段10dは、漏洩パターン記憶手段10bに記憶された複数の漏洩パターンと比較して漏洩判別を行う複数の漏洩検知モードを有した構成としてある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路内を流れる流体の瞬時流量を計測する流量計測手段と、前記流量計測手段で計測された瞬時流量を時系列的に記憶してパターン化する流量パターン記憶手段と、ガス管等の漏洩事象発生時に示す特徴的な流量変化パターンを予め漏洩パターンとして記憶する漏洩パターン記憶手段と、前記流量パターン記憶手段と前記漏洩パターン記憶手段に記憶された流量パターンに基づいて前記流量計測手段の下流側の漏洩を判別する漏洩判別手段とを備え、
前記漏洩判別手段は、前記漏洩パターン記憶手段に記憶された複数の漏洩パターンと前記流量計測手段で計測された流量パターンとを比較して漏洩判別を行う複数の漏洩検知モードを有した流量計測装置。
【請求項2】
漏洩パターン記憶手段は、漏洩事象の発生原因に対応して、立ち上がり流量パターンより漏洩を判別する立ち上がり漏洩パターンを備え、
漏洩判別手段は、流量計測手段で流量を計測し始めたときの流量パターンと前記立ち上がり漏洩パターンを比較して、漏洩の有無を判別する第1漏洩検知モードを有した請求項1記載の流量計測装置。
【請求項3】
漏洩パターン記憶手段は、漏洩事象の発生原因に対応して、器具使用中の変動流量パターンより漏洩を判別する変動漏洩パターンを備え、
漏洩判別手段は、流量パターン記憶手段に記憶される流量パターンと前記変動漏洩パターンを比較して、漏洩の有無を判別する第2漏洩検知モードを有した請求項1記載の流量計測装置。
【請求項4】
流量計測手段で計測される流量値に基づいて漏洩検知モードを選択する漏洩検知モード選択手段を備え、
第1漏洩検知モードによる漏洩判別あるいは第2漏洩検知モードによる漏洩判別あるいは第1漏洩検知モードと第2漏洩検知モードによる漏洩判別を選択し、大流量域から微少流量域の漏洩判別を行う請求項1〜3のいずれか1項記載の流量計測装置。
【請求項5】
漏洩検知手段が選択された漏洩検知モードで漏洩を検知したとき、漏洩検知モードに応じて予め定めた異常処理を実行する異常処置手段を備えた請求項1〜4のいずれか1項記載の流量計測装置。
【請求項6】
異常処置手段は、第1漏洩検知モードで漏洩を検知したとき遮断弁を作動させてガス流路を遮断し、第2漏洩検知モードで漏洩を検知したとき警告通報を行い、第1漏洩検知モードと第2漏洩検知モードで漏洩を検知しとき警告通報を行ったのち遮断弁を作動させてガス流路を遮断するようにした請求項5記載の流量計測装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項記載の流量計測装置を用いた流体供給システム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、各家庭に接続されたガス配管の途中に設置されるガスメータを用いてガス漏れを検知する流量計測装置に関し、特に超音波センサ等を用いて計測される瞬時流量データに基づいて的確に漏洩判定を行う流量計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各家庭に設置された各種ガス器具へはガス事業者(LPガスの場合はガスボンベ、都市ガス等の場合は一括配管)から配管されたガス管を経由してガスの供給が行われており、このガス供給経路においてガス漏れのない安全なガス供給システムを構築することがガス事業を継続する上で重要な課題であった。
【0003】
しかしながら、ガス供給経路におけるガス漏れの原因となる要素が数多く存在しているのも現実であり、例えばガス器具の問題、ガス器具を設置するときの問題、ガス管に関連する問題等があり、全ての要因を排除してガス漏れのないガス供給システムを構築することは極めて困難であった。
【0004】
そこで、ガス漏れが発生したときに、素早く検知し、迅速な処置を施すことで、拡大被害を抑制することを目的として、各種方法が提案されている。
【0005】
例えば、ガス器具に関連するガス漏れ検知方法としては、ガス器具の設置場所近傍にガス漏れ警報器を設置し、ガス漏れが発生したときこれを検知して警報を発するものが一般的である。この方法は、ガス成分を直接検知するため誤検知がなく、正確なガス漏れを検知することが可能であるが、微少なガス漏れやガス漏れ警報器を設置した場所以外の箇所で発生したガス漏れを検知することができないという課題を有していた。そこで、近年、ガス管途中に配設されたガスメータの流量計測機能を利用してガス漏れを検知する方法が各種提案されている。
【0006】
このガスメータにおけるガス漏れ検知機能の最も代表的なものとして、器具最小流量以上の流量が30日以上継続して検知された場合に「漏洩あり」と判断するものがあり、現在のガスメータに内蔵されたガス漏れ検知機能の主流を成すものである。
【0007】
しかし、このガス漏れ検知機能は、「漏洩あり」を判断するまでに30日間という長い期間を必要とし、かつ途中で器具が使用され大きな流量が検出されると今までの判定時間がリセットされ、再度初期から判断をし直すという方法であったため、微少漏洩を検知するのに相当な時間を要していたという課題があった。
【0008】
そこで、この課題を解決する方法として、特許文献1に記載されたものが提案されている。この特許文献1に記載された方法は、LPG等のガス配管や各種ガス燃焼器具におけるガス漏洩の判断方法において、設置されているガス燃焼器具の最小燃焼量未満のガスの流れの有無を検知することによりガス漏洩の有無を判断するようにしたものである。
【0009】
また、ガスメータの流量計測機能を利用したガス漏れ検知機能として、ガス器具の使用流量(複数使用の場合は総合流量)に応じて連続使用時間を制限し、制限時間を超えて流量が検出された場合は漏洩の可能性があると判断してガスを遮断し、使用器具の安全機能を持たせるようにしたものが知られている。この方法によると、複数の器具が使用されたときに、個々の器具が単独で使用する場合に許される連続使用時間より短い時間で使用制限が加えられ、使い勝手が悪いという課題があった。
【0010】
そこで、この課題を解決する方法として、特許文献2に記載されたものが提案されている。この特許文献2に記載された方法は、複数のガス機器と、該ガス機器のガス流量を測定し、総合流量と継続時間の関係に応じて遮断を行うガスメータと、該複数のガス機器のうちあるガス機器が稼動した場合、このガス機器の稼動情報から総合流量を補正する補正手段とを具備し、大型ガス器具等の使用を識別し、ガス機器の確実な安全管理を図るようにしたものである。
【0011】
さらに、ガスメータの流速計測機能を利用したものとして、特許文献3に記載されたものが提案されている。
【0012】
この特許文献3に記載されたものは、ガス供給ラインのガス漏れを検出するガス漏れ検出装置において、複数種類のガス器具について、燃焼制御に伴って発生する一連のガス流量パターンを分割した部分流量パターンと、制御ステップ毎に分類した流量パターンテーブルと、複数種類のガス器具とそれに対応する前記部分流量パターンの組み合わせとを対応付けた器具テーブルと、前記ガス供給ラインで検出されたガス流量パターンとマッチングする部分流量パターンを、前記流量パターンテーブルから抽出し、当該抽出された部分流量パターンの組み合わせとマッチングするガス器具を、前記器具テーブルから抽出する器具判定手段と、前記器具判定手段がガス器具を判定できない場合、ガス供給圧力の変動に対応するガス流量の変化の有無を検出するガス漏れ検出手段を有したもので、ガス器具判定で器具が検出されない場合に、ガス漏れが発生していると予想し、使用中のガス器具のガスガバナ(圧力調整器)の有無をチェックする。ガスガバナも検出されない場合に初めて、ガス漏れと判断することで、ガス漏れの検出精度を高めることができるというものである。
【特許文献1】特開平7−332599号公報
【特許文献2】特開2001−255192号公報
【特許文献3】特開2003−149075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記従来のガス漏れ検知方法において、特許文献1によれば、市場に存在する各種ガス器具の最少流量より少ない流量値をガス漏れ有無の判定値として設定するようにしているため、市場に導入されたガス器具の最少流量を常に調査し、この調査結果を反映して判定値を更新する必要があり、判定値の設定作業に手間がかかるとともに、判定値以上のガス漏れを検知することができない、という課題を有していた。
【0014】
また、特許文献2によれば、大型ガス器具の使用を識別しその情報を送信するための通信手段を必要とし、大流量漏洩を検出するための構成が複雑になるとともに、微少流量の漏洩を検出することが困難である、という課題を有していた。
【0015】
また、特許文献3によれば、器具判別を行うための手段が必要になるとともに、漏洩判定を行うための複雑な手順が必要となり、かつ器具判別で器具の使用が検出されたときの漏洩を検出することが困難である、という課題を有していた。
【0016】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、流量値の他に漏洩時固有の流量変化パターンを用いて、大流量から微少流量まで広範囲の流量域における漏洩判定を器具の使用有無に関係なく行い、ガス漏れが発生したときに、素早く検知し、迅速な処置を施すことが可能な流量計測装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記従来の課題を解決するために本発明の流量計測装置は、流路内を流れる流体の瞬時流量を計測する流量計測手段と、前記流量計測手段で計測された瞬時流量を時系列的に記憶してパターン化する流量パターン記憶手段と、ガス管等の漏洩事象発生時に示す特徴的な流量変化パターンを予め漏洩パターンとして記憶する漏洩パターン記憶手段と、前記流量パターン記憶手段と前記漏洩パターン記憶手段に記憶された流量パターンに基づいて前記流量計測手段の下流側の漏洩を判別する漏洩判別手段とを備え、前記漏洩判別手段は、前記漏洩パターン記憶手段に記憶された複数の漏洩パターンと前記流量計測手段で計測された流量パターンとを比較して漏洩判別を行う複数の漏洩検知モードを有したものである。
【0018】
上記発明によれば、ガス供給経路における漏洩事象の発生により起こる特徴的な流量変化パターンを、漏洩事象の発生原因別、ガス流量別、あるいは環境条件の変動等を考慮して事前に実験等で確認し、確認結果より共通する特徴的な流量変化パターンをグループ化して複数の漏洩パターンとして記憶するようにしているため、種々の形態で発生する漏洩事象に関し想定される範囲内の漏洩事象をカバーした判断基準を構成することができ、この漏洩パターンと流量計測手段で求められる流量パターンを直接的に比較することで、リアルタイムに漏洩事象を判定することができ、かつ複数の漏洩パターンを区別して漏洩判別を行う漏洩検知モードを有しているため、漏洩事象の発生形態に対応した的確な漏洩判別を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の流量計測装置によれば、種々の形態で発生する漏洩事象に関し想定される範囲内の漏洩事象をカバーした判断基準を構成することができ、この漏洩パターンと流量計測手段で求められる流量パターンを直接的に比較することで、リアルタイムに漏洩事象を判定することができ、かつ複数の漏洩パターンを区別して漏洩判別を行う漏洩検知モードを有しているため、漏洩事象の発生形態に対応した的確な漏洩判別を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
第1の発明は、流路内を流れる流体の瞬時流量を計測する流量計測手段と、前記流量計測手段で計測された瞬時流量を時系列的に記憶してパターン化する流量パターン記憶手段と、ガス管等の漏洩事象発生時に示す特徴的な流量変化パターンを予め漏洩パターンとして記憶する漏洩パターン記憶手段と、前記流量パターン記憶手段と前記漏洩パターン記憶手段に記憶された流量パターンに基づいて前記流量計測手段の下流側の漏洩を判別する漏洩判別手段とを備え、前記漏洩判別手段は、前記漏洩パターン記憶手段に記憶された複数の漏洩パターンと前記流量計測手段で計測された流量パターンとを比較して漏洩判別を行う複数の漏洩検知モードを有したことを特徴とするものである。
【0021】
そして、ガス供給経路における漏洩事象の発生により起こる特徴的な流量変化パターンを、漏洩事象の発生原因別、ガス流量別、あるいは環境条件の変動等を考慮して事前に実験等で確認し、確認結果より共通する特徴的な流量変化パターンをグループ化して複数の漏洩パターンとして記憶するようにしているため、種々の形態で発生する漏洩事象に関し想定される範囲内の漏洩事象をカバーした判断基準を構成することができ、この漏洩パターンと流量計測手段で求められる流量パターンを直接的に比較することで、リアルタイムに漏洩事象を判定することができ、かつ複数の漏洩パターンを区別して漏洩判別を行う漏洩検知モードを有しているため、漏洩事象の発生形態に対応した的確な漏洩判別を行うことができる。
【0022】
第2の発明は、漏洩パターン記憶手段は、漏洩事象の発生原因に対応して、立ち上がり流量パターンより漏洩を判別する立ち上がり漏洩パターンを備え、漏洩判別手段は、流量計測手段で流量を計測し始めたときの流量パターンと前記立ち上がり漏洩パターンを比較
して、漏洩の有無を判別する第1漏洩検知モードを有したことを特徴とするものである。
【0023】
そして、流量計測手段で計測される流量が給湯器などの大型ガス器具で使用する流量域の場合は、漏洩パターン記憶手段に登録してある立ち上がり漏洩パターンを用いて比較することで、大流量域における漏洩事象の発生形態に対応した的確な漏洩判別を行うことができ、短期間にガスの流出を遮断することが可能で、ガス漏れ警報器等が作動する前にガス漏れ状態を停止することができる。
【0024】
第3の発明は、漏洩パターン記憶手段は、漏洩事象の発生原因に対応して、器具使用中の変動流量パターンより漏洩を判別する変動漏洩パターンを備え、漏洩判別手段は、流量パターン記憶手段に記憶される流量パターンと前記変動漏洩パターンを比較して、漏洩の有無を判別する第2漏洩検知モードを有したことを特徴とするものである。
【0025】
そして、流量計測手段で計測される流量が小流量から微少流量域の場合は、漏洩パターン記憶手段に登録してある変動漏洩パターンを用いて比較することで、小流量から微少流量域における漏洩事象の発生形態に対応した的確な漏洩判別を行うことができ、警告通報を経由したガス遮断処理により、使用者の利便性を優先したガス漏れ対応が可能となり、使い勝手のよい流量計測装置を提供することができる。
【0026】
第4の発明は、流量計測手段で計測される流量値に基づいて漏洩検知モードを選択する漏洩検知モード選択手段を備え、第1漏洩検知モードによる漏洩判別あるいは第2漏洩検知モードによる漏洩判別あるいは第1漏洩検知モードと第2漏洩検知モードによる漏洩判別を選択し、大流量域から微少流量域の漏洩判別を行うことを特徴とするものである。
【0027】
そして、流量計測手段で計測される流量値によって、大流量域の場合は立ち上がり漏洩パターンと比較する第1漏洩検知モード、小流量域から微少流量域の場合は変動漏洩パターンと比較する第2漏洩検知モード、中流量域の場合は第1漏洩検知モードと第2漏洩検知モードの併用、というように、漏洩検知モードを選択するようにしているため、流量域によって異なる漏洩事象の発生形態に対応した的確な漏洩判別を行うことができ、漏洩判別期間の短縮による安全性の確保と、警告通報を経由したガス遮断処理による使用者の利便性の確保と、を漏洩事象の発生形態に応じて適切に実行することが可能となり、使い勝手のよい流量計測装置を提供することができる。
【0028】
第5の発明は、漏洩検知手段が選択された漏洩検知モードで漏洩を検知したとき、漏洩検知モードに応じて予め定めた異常処理を実行する異常処置手段を備えたことを特徴とするものである。
【0029】
そして、流量域によって異なる漏洩事象の発生形態に対応した漏洩判別結果に応じて異常処理を実行することで、漏洩判別期間の短縮による安全性の確保と、警告通報を経由したガス遮断処理による使用者の利便性の確保と、を漏洩事象の発生形態に応じて適切に実行することが可能となり、使い勝手のよい流量計測装置を提供することができる。
【0030】
第6の発明は、異常処置手段は、第1漏洩検知モードで漏洩を検知したとき遮断弁を作動させてガス流路を遮断し、第2漏洩検知モードで漏洩を検知したとき警告通報を行い、第1漏洩検知モードと第2漏洩検知モードで漏洩を検知しとき警告通報を行ったのち遮断弁を作動させてガス流路を遮断するようにしたことを特徴とするものである。
【0031】
そして、大流量域の場合は短期間にガスを遮断して安全性を確保し、小流量から微少流量域の場合は警告通報を経由したガス事業者によるガス遮断処理により使用者の利便性を優先したガス漏れ対応とし、中流量域の場合は警告通報を経由した自動ガス遮断処理によ
り使用者の利便性を確保しつつ安全性を確保したガス漏れ対応として、漏洩事象の発生形態に対応した適切な異常処置を行うことができる。
【0032】
第7の発明は、請求項1から6項の流量計測装置を流体供給システムに利用した場合、それぞれの家庭で個別に漏洩判別や器具判別動作を開始させたり停止させたりすることができ、1家庭だけでなく地域全体に漏洩判別や器具判別を波及することができるので、ガス供給の保安機能を地域全体で行うことができると共に、器具別ガス料金の施策の普及を促進することができ、安全で安価なガス供給システムを地域全体で実現する顧客サービスのシステムとして有効に利用することができる。
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0034】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における流量計測装置のガス供給形態を示す図、図2は同流量計測装置の概略構成図、図3は同流量計測装置の制御ブロック図である。
【0035】
各家庭のガス供給管1の入口部分にガスメータ2が設置され、このガスメータ2を経由した後のガス配管3から分岐して家庭で使用する種々のガス器具が設置された場所まで配管されガスが供給される。例えば、屋外にはガス給湯器4が設置され、このガス給湯器4に分岐ガス配管3aを介して供給されるガスの燃焼で生成される湯が水配管を介して台所の給湯栓5、浴槽やシャワー装置が設置された風呂6、リビング等に設置された床暖房7に供給され、種々の使用形態を形成している。
【0036】
また、屋内にあっては、台所に設置されたガステーブル8に分岐ガス配管3bを介してガスが供給され、リビングや寝室等に設置されたガスファンヒータ9に分岐ガス配管3cを介してガスが供給され、必要に応じて適宜使用される。
【0037】
そして、設置されたガス器具が使用されガスの消費が発生するとガスメータ2でその使用量が計測され、そのデータが予め定めた収納形態に基づいて記憶されるようになっている。
【0038】
このようなガス供給形態において、ガス供給管1やガス配管3は一般的に鋳鉄製パイプを用い地中に埋設して必要な場所まで配管され、接続継ぎ手やガス元栓を経由したのち専用の接続パイプ3a、3b、3cを介して各種ガス器具と接続されている。
【0039】
次に、流量計測装置を構成するガスメータ2の概略構成について説明する。
【0040】
ガスメータ2には図2に示すように、ガス入口2aとガス出口2bを有し、その間のガス流路13内に異常時にガスを遮断する遮断弁11とガス流量を計測する一対の超音波センサ12が設けられ、この超音波センサ12からの信号でガス流量を算出する制御回路10が内蔵されている。
【0041】
また、この制御回路10には液晶表示器等で構成された表示部(図示せず)が設けられ、さらに、制御回路10を駆動させるための電池14が収納されている。また、遮断弁11が作動した後の復帰動作を手動で行う手段として復帰ボタン(図示せず)が配置されている。
【0042】
ガス流量を計測する流量計測部12と制御回路10は、例えば図3に示すように、ガス流路に一対の超音波センサを配置し流路を流れる流量に応じて変化する伝播時間を計測す
ることで流量を測定するものがある。
【0043】
以下、その構成を説明すると、超音波を送信または受信する第1送受信器12Aと受信または送信する第2送受信器12Bが流れ方向に配置され、制御回路10を構成する切換手段を有する計測制御部15によって送受信の切り換えが可能になっており、ガス等の流体の流れ状態を検出している。この第1送受信器12Aと第2送受信器12Bの信号を処理して流量を計測するもので、具体的には、まず計測制御部15により第1送受信器12Aを駆動し、第2送受信器12Bに向け、すなわち上流から下流に超音波を送信する。
【0044】
そして第2送受信器12Bで受信した信号を計測制御部15に設けた増幅手段により増幅し、この増幅された信号は基準信号と比較され、基準信号以上の信号が検出された後、計測制御部15に設けた繰り返し手段により上記の送受信を所定の回数を繰り返し、それぞれの時間値を計測制御部15に設けたタイマカウンタのような計時手段で計測する。
【0045】
次に、切換手段を有する計測制御部15で第1送受信器12Aと第2送受信器12Bの送受信を切換えて、第2送受信器12Bから第1送受信器12A、すなわち下流から上流に向かって超音波信号を送信し、この送信を前述のように繰り返し、それぞれの時間値を計測する。そして、第1送受信器12Aと第2送受信器12Bとの超音波の伝搬時間差から流路13の大きさや流体の流れ状態を考慮して信号処理手段16で流量値を求める。求められた流量データは情報記憶手段10aで累積され、所定期間毎の累積データとして記憶される。
【0046】
また、流量計測部12が配置された流路13内には異常時等にガスの流れを遮断する遮断弁11が設けられ、信号処理手段16で求められる流量値が異常に多い場合や通常考えられる使用時間を超えて流量値が検出されるような場合に異常と判断して遮断弁11を作動させてガス流路13を遮断する。
【0047】
また、図示しない振動センサや圧力センサから地震や衝撃、あるいは異常なガス圧の信号が入力されると、制御回路10を介して遮断弁11を作動させてガス流路13を遮断する。
【0048】
以上のように構成された流量計測手段を用いて計測された流量データについて説明すると、第1送受信器12Aからガス流路13内のガス中に発振された超音波はガスによってその流れ方向に加速され、時間T1後に第2送受信器12Bに到達する。反対に、第2送受信器12Bからガス中に発振された超音波はガスによってその流れ方向に減速され、時間T2後に第1送受信器12Aに到達する。この伝搬時間の逆数の差((1/T1)−(1/T2))は流量に比例することから、伝搬時間を計測することでガスの流量が算出することができる。
【0049】
このように、第1送受信器12A、第2送受信器12Bを制御し流量を算定し、結果を表示する部分が制御回路10である。制御回路10はマイクロコンピュータを中心に構成され、超音波センサを駆動する駆動回路や超音波センサからの信号を受信する受信回路や伝搬時間を計測する計時手段、伝搬時間から流量を求める演算手段が備えられており、内蔵された電池14で駆動される。
【0050】
前述したような伝搬時間T1、T2を求める回路動作に要する時間は、200ms程度で、瞬時計測が可能である。制御回路は電池駆動のため、できるだけ省電力化が望まれる。このため、計測は例えば2秒間隔で行うようにしている。この計測間隔は任意に設定が可能で目的に応じた計測モードによって変更することができる。
【0051】
従来のこの種の流量計は膜式と呼ばれる方式が用いられており、2秒という高速な計測ができるようなものではなかったので、超音波式とすることにより、ガスの流れの変化を瞬時にとらえ器具の立ち上がりや、停止、および制御による流量の変化等がより詳しくとらえられる。このような特徴を活かして、どの器具が動作しているか、通常起こり得ない流量変化が発生しているか、等をガスメータのマイクロコンピュータで判断することができる。
【0052】
図4は超音波式のガスメータで計測した、器具の動作時の流量変化を示している。同図(a)はガステーブルの流量特性である。起動時の立ち上がりは急峻でピークは100L/h(リッター毎時)である。同図(b)は給湯器の台所蛇口およびシャワーへの給湯時の流量特性である。これも起動時の立ち上がりは急峻でピークは最大3000L/hに達している。また、ピークが1000L/hの特性も記載しているが、これは給湯時の湯量が少ない場合や、水温が高い場合である。特徴は、立ち上がってから、湯温を一定に保つための制御がかかるため、流量がダイナミックに変化する特徴のある特性となっている。同図(c)は同じく給湯器の湯張り時の流量特性で、起動時の立ち上がりは急峻で、2000L/h強の流量が安定して20分以上の長時間継続している特長がある。同図(d)は同じく給湯器の床暖房への温水供給の流量特性で、立ち上がりは緩やかに変化し、1000L/hに達してから、急激に200L/hまで減少するという特徴がある。同図(e)はファンヒータの流量特性である。起動時の立ち上がりは比較的急で、かつ、2段階の変化があり、300L/h強に達してからは安定した流量特性である。
【0053】
以上のように、2秒毎に瞬時流量の計測ができる超音波式のガスメータを用いることによって、特徴的な流量変化を的確に把握することができるため、比較基準となる流量パターンを予め設定しておくことで、例えば器具判別の場合、どの器具が動作しているか、どのような使い方で動作しているか、等を判別することができ、このような特徴を活かし、2秒ごとに得られる瞬時流量値およびこの変化量並びにこの瞬時流量の使用継続時間を計測する具体的なアルゴリズムを構築することによって、器具判別以外の用途にも利用できるものである。
【0054】
本発明はこの判別手法を用いて、ガス供給経路において種々の形態で発生する漏洩事象をリアルタイムに判別し、安全性を確保しつつ、使用者の利便性を向上することを目的とした漏洩検知手段を提供するものである。
【0055】
まず、図3を用いて概略構成を説明すると、計測制御部15からの指示で流量計測部12の第1送受信器12Aと第2送受信器12Bの間で送受信される超音波の伝搬時間を計測し、その伝搬時間より信号処理手段16で所定の計測周期、例えば2秒毎の流量値を算出し、その流量データを制御回路10の流量パターン記憶手段10aに時系列に記憶し流量パターンとして格納する。
【0056】
また、制御回路10には、漏洩パターン記憶手段10bを設け、ガス供給経路における漏洩事象の発生により起こる特徴的な流量変化パターンを、漏洩事象の発生原因別、ガス流量別、あるいは環境条件の変動等を考慮して事前に実験等で確認し、この確認結果より共通する特徴的な流量変化パターンをグループ化して複数の漏洩パターンとして登録する。漏洩パターンの一例として、図5(a),(b),(c)に示すような流量変化パターンを登録する。
【0057】
図5(a)はガス供給経路において、ガス管が破損したり、接続継ぎ手が緩んで給湯器の使用流量域相当の大流量域で漏洩事象が発生したことを想定した場合の流量変化パターンを漏洩パターンとして登録したもので、この場合は漏洩事象が発生した時点で急峻な流量変化で立ち上がり、その後、漏れ箇所の圧損で定まる流量が微増傾向あるいは安定して
流れるという特性を示す。
【0058】
図5(b)はガス供給経路において、ガス管が腐食により孔が開き始める初期の小流量域から微少流量域で漏洩事象が発生したことを想定した場合の流量変化パターンを漏洩パターンとして登録したもので、この場合は漏洩事象が発生した時点で小流量域から微少流量域の流量変化が見られ、その後、微増傾向を所定期間継続し安定するという特性を示す。また、この小流量域における漏洩事象においては環境条件によって漏洩パターンが変化する傾向にあり、雨が降った場合等は図5(c)に示すように、微少変動する場合があり、このような環境変化によって変動する流量特性も漏洩パターンとして登録しておく。
【0059】
図5(d)はガス供給経路において、接続継ぎ手の緩みにより小流量域から中流量域で漏洩事象が発生したことを想定した場合の流量変化パターンを漏洩パターンとして登録したもので、この場合は漏洩事象が発生した時点で小流量域から中流量域の流量変化が見られ、その後、比較的周期の短い不規則な変動を継続するという特性を示す。
【0060】
以上のように、漏洩事象に対応した漏洩パターンを想定できる範囲で数多く登録することで、精度よく漏洩事象を検知することができる。すなわち、超音波式の流量計測を用いたガスメータであるので、器具が使用している流量パターンと漏洩パターンを瞬時に見極めることができ、漏洩判別を瞬時に行い保安性能を向上して安全性を高めることができる。
【0061】
漏洩パターンは予め登録したもの以外に新たに追加してもよく、その場合は追加登録するための登録手段を別途準備する必要がある。
【0062】
また、信号処理手段16から送られる流量データに応じて漏洩パターン記憶手段10bに記憶された複数の漏洩パターンからどのパターンを用いて漏洩判別を行うかを選択する漏洩検知モード選択手段10cを備えており、この漏洩検知モード選択手段10cで選択された漏洩検知モードを用いて漏洩判別手段10dは、流量パターン記憶手段10aに格納された流量パターンと漏洩パターン記憶手段10bに登録された漏洩パターンを比較して、流量パターンと漏洩パターンが一致する場合、漏洩ありと判断して異常処置手段17に異常信号を出力し漏洩検知モードに対応した異常処理を実行する。
【0063】
そして、漏洩検知モードとして、信号処理手段16から送られる流量データが大流量域に相当する場合、漏洩パターン記憶手段10bに登録された立ち上がり漏洩パターンを用いて漏洩判別を行う第1漏洩検知モードを有し、信号処理手段16から送られる流量データが小流量域から微少流量域に相当する場合、漏洩パターン記憶手段10bに登録された変動漏洩パターンを用いて漏洩判別を行う第2漏洩検知モードを有し、信号処理手段16から送られる流量データが小流量域から中流量域に相当する場合、漏洩パターン記憶手段10bに登録された別の変動漏洩パターンを用いて漏洩判別を行う第3漏洩検知モードを有している。
【0064】
なお、漏洩検知モードは上記検知モードに限定されるものではなく、複数の漏洩検知モードを組み合わせてもよく、新たに追加される漏洩パターンを用いたものでもよいものである。そして、流量パターンとして、その時々の流量値や流量値の組合せを用いても良いものである。また、瞬時瞬時のパターン比較だけでなく、過去の流量パターンとの比較を用いて漏洩を判別すること間可能である。
【0065】
異常処置手段17は、漏洩ありの判別信号が入力されたとき、即座に遮断弁11を作動させてガスを遮断する第1異常処理と、ガス事業者に通信手段18を介して警告通報しガス事業者が出動するまで使用継続可能な第2異常処理と、ガス事業者に通信手段18を介
して警告通報し所定時間後にガスを遮断する第3異常処理とを有し、漏洩流量域すなわち漏洩検知モードに応じて異常処理を選択的に行うようにし、第1漏洩検知モードで漏洩を検知したとき第1異常処理を実行し、第2漏洩検知モードで漏洩を検知したとき第2異常処理を実行し、第1漏洩検知モードと第2漏洩検知モードで中流量域の漏洩を検知しとき第3異常処理を実行するようにしてある。
【0066】
この異常処理の選択も上記対応に限定されるものではなく、状況に応じてどのように組み合わせてもよいものである。例えば、流量値が大きい時は、すぐにガス遮断したり、流量が小さい時は警告通報するような処置も可能である。あるいは、漏洩の判断が器具の使用流量パターンと区別がつきにくいような場合は、警告通報とするような異常処理も可能である。
【0067】
以上のような流量計測装置を流体供給システムに利用した場合、それぞれの家庭で個別に漏洩判別や器具判別動作を開始させたり停止させたりすることができ、1家庭だけでなく地域全体に漏洩判別や器具判別を波及することができるので、ガス供給の保安機能を地域全体で行うことができると共に、器具別ガス料金の施策の普及を促進することができ、安全で安価なガス供給システムを地域全体で実現する顧客サービスのシステムとして有効に利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上のように、本発明に係る流量計測装置は、流量値の他に漏洩時固有の流量変化パターンを用いて、大流量から微少流量まで広範囲の流量域における漏洩判定を器具の使用有無に関係なく行い、ガス漏れが発生したときに、素早く検知し、迅速な処置を施すことが可能であり、流量計測装置全般において保安機能を充実させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施の形態1における流量計測装置のガス供給形態を示す図
【図2】同流量計測装置の概略構成図
【図3】同流量計測装置の制御ブロック図
【図4】(a)ガステーブルの流量特性図(b)給湯器(シャワー、蛇口への給湯)の流量特性図(c)給湯器(湯張り)の流量特性図(d)給湯器(床暖房)の流量特性図(e)給湯器(ファンヒータ)の流量特性図
【図5】(a)立ち上がり漏洩パターン図(b)変動漏洩パターン図(c)他の変動漏洩パターン図(d)他の変動漏洩パターン図
【符号の説明】
【0070】
10 制御回路
10a 流量パターン記憶手段
10b 漏洩パターン記憶手段
10c 漏洩検知モード選択手段
10d 漏洩判別手段
11 遮断弁
12 流量計測部
12A 超音波センサ(第1送受信器)
12B 超音波センサ(第1送受信器)
17 異常処置手段
【出願人】 【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【出願日】 平成19年1月31日(2007.1.31)
【代理人】 【識別番号】100097445
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 文雄

【識別番号】100109667
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 浩樹

【識別番号】100109151
【弁理士】
【氏名又は名称】永野 大介


【公開番号】 特開2008−185519(P2008−185519A)
【公開日】 平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願番号】 特願2007−20858(P2007−20858)