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【発明の名称】 流体の流れ計測装置
【発明者】 【氏名】竹村 晃一

【氏名】芝 文一

【氏名】別荘 大介

【要約】 【課題】流量変動の激しい条件下においても追従性の高い流量計測装置を提供する。

【解決手段】第1振動子2から送信され第2振動子3で受信され増幅回路7で増幅された超音波信号は、波形比較手段8、ゼロ点比較手段9で基準電圧と比較処理され、出力の反転タイミングを波形判定手段11で検出し、計時手段12で超音波信号の受信点として計時する。また、ゼロ点比較手段9の基準電圧は電圧設定手段10によって設定変更できる。電圧設定手段10の設定電圧変更に伴って生じる超音波信号の受信点の時間変化は計時手段12の計時分解能より小さく定められているので、基準電圧を徐々に変化させながら計時手段12の計測結果を時間演算手段13で平均化処理することにより伝搬時間を求めることで、伝搬時間の分解能が高められ、連続の繰り返し計測を行うことなくなるため、計測間隔の自由度が高まり、流量変化に対する追従性の高い流量計測が可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管路に設けられ超音波信号を送信する第1振動子と、前記第1振動子から送信された超音波信号を受信する第2振動子と、前記第2振動子で受信された超音波信号を基準電圧と比較する比較手段と、前記比較手段の比較結果の反転を以って超音波信号の受信点を検知する受信判定手段と、超音波信号の送信開始から超音波信号の受信点までの時間を計時する計時手段と、前記基準電圧を設定可能な電圧設定手段と、前記電圧設定手段の設定電圧に応じて変化する前記計時手段の計時結果の平均値から伝搬時間を求める時間演算手段と、前記時間演算手段で伝搬時間を求める毎に前記第1振動子および第2振動子の送受信の役割を切り替える切替手段と、前記時間演算手段で求めた双方向の伝搬時間を用いて流量を算出する流量演算手段とを備え、
前記受信判定手段で検知される受信点を変更することで計測周期を可変する流体の流れ計測装置であって、
前記電圧設定手段で設定される基準電圧を変更して受信点を変更すると共に、前記基準電圧を1段階変更したときに生じる超音波信号の受信点の時間変化を、前記計時手段の時間分解能より小さく定めて、伝搬時間の計時分解能を密にした流体の流れ計測装置。
【請求項2】
電圧設定手段で設定される基準電圧を1段階変更したときに生じる超音波信号の受信点の時間変化を、計時手段の時間分解能の1/M近傍に定め、時間演算手段は、基準電圧をM段階変化させたときに得られる計時手段の計測値の平均値を以って伝搬時間を求める請求項1記載の流体の流れ計測装置。
【請求項3】
電圧設定手段で設定される基準電圧のいずれかを基準点として定め、基準点と他の基準電圧の差に相当する超音波信号の受信点の時間差を補正して伝搬時間を求める請求項1記載の流体の流れ計測装置。
【請求項4】
計時手段の分解能を一定として、計測流量が大きくなるにしたがって基準電圧1段階当たりの電圧変化を大きく定めた請求項1記載の流体の流れ計測装置。
【請求項5】
計測流量が所定値以上であれば、電圧設定手段の基準電圧を固定とした請求項4記載の流体の流れ計測装置。
【請求項6】
電圧設定手段の基準電圧1段当たりの電圧変化を固定として、計測流量が大きくなるに従って計時手段の設定分解能が大きくなるように定めた請求項1記載の流体の流れ計測装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、流体中における超音波信号の伝搬時間を計測することにより流体の流速や流量を計測する流体の流れ計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の流量計においては、ふたつの振動子間の送受信を複数回繰り返すことにより、計測分解能を高めるシングアラウンド法という手法を用いたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図10は、シングアラウンド法を用いた流量計測装置のブロック図である。図10に示すように、流体管路31の途中に、超音波を送信する第1振動子32と、送信された超音波を受信する第2振動子33が流れ方向に配置されていて、ふたつの振動子を用いて超音波の伝搬時間を計測する計測部34と、計測部34を制御する制御部35、計測部34の計測結果を基に流体流量を求める演算部36とで構成されている。
【0004】
図10において、音速をC、流速をv、ふたつの振動子間の距離をL、超音波の伝搬方向と流れの方向とがなす角度をθとし、管路の上流側に配置された振動子32から超音波を送信し、下流側に配置された振動子33にで受信した場合の伝搬時間をt1、逆方向の伝搬時間をt2とした場合t1およびt2は次式で求めることができる。
【0005】
t1=L/(C+vcosθ) (式1)
t2=L/(C−vcosθ) (式2)
(式1)および(式2)を変形し、(式3)で流速vが求まる。
【0006】
v=L・(1/t1−1/t2)/2cosθ (式3)
(式3)で求めた値に流体管路の断面積を掛ければ流体の流量を求めることができる。ところで、(式3)において、括弧内の項は(式4)のように変形できる。
【0007】
(t2−t1)/t1t2 (式4)
ここで、(式4)の分母の項は流速の変化に関わらずほぼ一定の値となるが、分子の項は流速とほぼ比例した値となる。したがって、ふたつの伝搬時間の差を精度よく計測する必要がある。そのため、流速が遅くなるほど、微小な時間差を求める必要があり、単発現象として計測するには計測部34は例えば、nsオーダーの非常に小さな時間分解能を有する必要がある。これだけの時間分解能を実現するのは難しく、仮に実現できたとしても時間分解能を上げることによる消費電力の増大を招くこととなる。そのため、超音波の送信を何回も繰り返し計測してその平均値を求めることにより必要な時間分解能を実現している。すなわち、計測部34の時間分解能をTA、繰り返し回数をMとすれば、この繰り返し計測の間、計測部34を連続して動作させることにより、伝搬時間の計測分解能はTA/Mとすることができる。
【特許文献1】特開2000−310550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の構成では、繰り返しの連続動作を前提としているので、一連の計測動作に必要な時間が長くなるため電流消費量が増えてしまう。そのため、家庭用のガスメータのように電池駆動で年単位の動作保証を求められるシステムにおいては、電流消費をできるだけ抑えるために、1度繰り返し計測を終えた後は、ある程度の休止期間を
置く必要があった。そのため、流体の局所的な情報しか得ることができないため、比較的短い周期で繰り返される変動性の流れに対しては、追従性が悪いという課題があった。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、計測間隔を自由に設定し、流量変化に対して追従性の高い流体の流れ計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
流体管路に設けられ超音波信号を送信する第1振動子と、第1振動子から送信された超音波信号を受信する第2振動子と、第2振動子で受信された超音波信号を基準電圧と比較する比較手段と、比較手段の比較結果の反転を以って超音波信号の受信点を検知する受信判定手段と、超音波信号の送信開始から超音波信号の受信点までの時間を計時する計時手段と、基準電圧を設定可能な電圧設定手段と、電圧設定手段の設定電圧に応じて変化する計時手段の計時結果の平均値から伝搬時間を求める時間演算手段と、時間演算手段で伝搬時間を求める毎に第1振動子および第2振動子の送受信の役割を切り替える切替手段と、時間演算手段で求めた双方向の伝搬時間を用いて流量を算出する流量演算手段とを備え、受信判定手段で検知される受信点を変更することで計測周期を可変する流体の流れ計測装置であって、電圧設定手段で設定される基準電圧を変更して受信点を変更すると共に、基準電圧を1段階変更したときに生じる超音波信号の受信点の時間変化を、計時手段の時間分解能より小さく定めて、伝搬時間の計時分解能を密にしたものである。
【0011】
上記発明によれば、基準電圧のわずかな違いに相当する微小な時間変化の検出が可能になり、連続の繰り返し計測を行うことなく高い分解能を実現できるため、計測間隔の自由度が高まり、流量変化に対しての追従性を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の流体の流れ計測装置は、連続の繰り返し計測を行うことなく高い分解能を実現でき、流量変化に対しての追従性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
第1の発明は、流体管路に設けられ超音波信号を送信する第1振動子と、第1振動子から送信された超音波信号を受信する第2振動子と、第2振動子で受信された超音波信号を基準電圧と比較する比較手段と、比較手段の比較結果の反転を以って超音波信号の受信点を検知する受信判定手段と、超音波信号の送信開始から超音波信号の受信点までの時間を計時する計時手段と、基準電圧を設定可能な電圧設定手段と、電圧設定手段の設定電圧に応じて変化する前記計時手段の計時結果の平均値から伝搬時間を求める時間演算手段と、時間演算手段で伝搬時間を求める毎に前記第1振動子および第2振動子の送受信の役割を切り替える切替手段と、時間演算手段で求めた双方向の伝搬時間を用いて流量を算出する流量演算手段とを備え、前記受信判定手段で検知される受信点を変更することで計測周期を可変する流体の流れ計測装置であって、前記電圧設定手段で設定される基準電圧を変更して受信点を変更すると共に、前記基準電圧を1段階変更したときに生じる超音波信号の受信点の時間変化を、前記計時手段の時間分解能より小さく定めて、伝搬時間の計時分解能を密にしたことを特徴とするものである。
【0014】
そして、設定電圧のわずかな違いに相当する微小な時間変化の検出が可能になるので、連続の繰り返し計測を行うことなく高い分解能を実現できるため、計測間隔の自由度が高まり、流量変化に対しての追従性を高めることができる。
【0015】
第2の発明は、特に第1の発明の電圧設定手段で設定される基準電圧を1段階変更したときに生じる超音波信号の受信点の時間変化を計時手段の時間分解能の1/M近傍に定め、時間演算手段は、基準電圧をM段階変化させた時に得られる計時手段の計測値の平均値
を以って伝搬時間を求めるようにしたことを特徴とするものである。
【0016】
そして、計時手段の時間分解能を1/Mまで細かくしたのと同等の時間分解能を、消費電力を高めることなく実現することができる。
【0017】
第3の発明は、特に第1の発明の電圧設定手段で設定される基準電圧のいずれかを基準点と定め、基準点と他の基準電圧の差に相当する超音波信号の受信点の時間差を補正して伝搬時間を求めるようにしたことを特徴とするものである。
【0018】
そして、伝搬時間の精度が高められる。
【0019】
第4の発明は、特に第1の発明における、計時手段の分解能を一定として、計測流量が大きくなるにしたがって基準電圧1段階当たりの電圧変化を大きく定めているので、瞬時流量変化に対する応答性を高めることができる。
【0020】
第5の発明は、特に第4の発明において、計測流量が所定値以上であれば、電圧設定手段の基準電圧を固定としているので、大流量計測時には、瞬時流量変化に対する応答性を更に高めることができる。
【0021】
第6の発明は、特に第1の発明において、電圧設定手段の基準電圧1段当たりの電圧変化を固定として、計測流量が大きくなるに従って計時手段の設定分解能が大きくなるように定めているので、流量の過渡変化時における精度に悪影響を及ぼすことなく、装置全体の電流を削減することができる。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における流量計側装置のブロック図である。
【0024】
図1において、流体管路1の途中に超音波を送信する第1振動子2が流れの上流側に配置され、第1振動子2から送信された超音波を受信する第2振動子3が流れの下流側に配置されている。第1振動子2と第2振動子3は送受信の役割を反転する切換手段4を介して後段の処理ブロックに繋がれている。つまり、この切換手段4の作用により第1振動子2を送信側、第2振動子3を受信側にしたり、第2振動子3を送信側、第1振動子を受信側にしたり、することが可能である。
【0025】
トリガ手段5は計測開始を指示するトリガ信号を出力し、この信号と同期して送信手段である送信回路6から超音波駆動信号が出力される。送信回路6の出力信号は切換手段4を介して第1振動子2へ出力され、第1振動子2から超音波信号が出力される。第1振動子2から送信され第2振動子3で受信された超音波信号は、切換手段4を介して増幅手段である増幅回路7で増幅された後、波形比較手段8とゼロ点比較手段9に出力される。波形比較手段8、ゼロ点比較手段9はそれぞれ、増幅回路7の出力と基準電圧との大小比較の結果を出力する。
【0026】
また、電圧設定手段10はゼロ点比較手段9の基準電圧を設定することが可能である。波形比較手段8、ゼロ点比較手段9、電圧設定手段10の動作については後述する。受信判定手段11は、ゼロ点比較手段9の出力の反転を以って超音波信号の受信点を検知し、計時手段12はトリガ手段5が計時開始信号を出力してから受信判定手段11が超音波信号の受信点を検知するまでの時間を計測し、計測が完了すると計時手段12は動作を停止
する。
【0027】
トリガ手段5のトリガ信号出力から、計時手段12の計時終了までの一連の動作が完了すると、任意の時間間隔を置いて、再び、同様の動作を繰り返す。
【0028】
計時手段12の計時結果は時間演算手段13に出力される。時間演算手段13では、所定の回数の計測が終わると、計時手段12の出力を平均化して流れの上流側から下流側に向けての伝搬時間t1を求める。
【0029】
時間演算手段13において伝搬時間t1が求められた後、切換手段4が、ふたつの振動子の役割を切替えるため、第1振動子2を増幅回路7に接続し、第2振動子3を送信回路6に接続する。切換手段4によりふたつの振動子の役割を切替えた後、トリガ手段5から計測開始を指示するトリガ信号が出力され、今度は第2振動子3から超音波信号が出力され第1振動子2で受信される。
【0030】
第1振動子2で受信された超音波信号は増幅回路7で増幅される。増幅回路7で増幅された超音波信号は以降、先に説明した第1振動子2を送信側とした場合と同様に処理される。以降、伝搬時間t1を算出するために行った計測回数と同じ数だけ計時手段12で計時処理を実行し、計時結果は時間演算手段13に出力される。時間演算手段13では、所定の回数の計測が終わると、計時手段12の出力を平均化して流れの下流側から上流側に向けての伝搬時間t2を求める。
【0031】
以上のようにして求めた双方向の伝搬時間t1およびt2を用いて背景技術で説明した(式3)を用いて流量を求める。
【0032】
図2は、波形比較手段8とゼロ点比較手段9の具体的構成の一例を示す図、図3は、増幅回路7の出力波形と波形比較手段8及びゼロ点比較手段9の出力波形を示すタイムチャートである。
【0033】
図2および図3を用いて増幅回路7の出力波形が受信判定手段11で処理されるまでの動作、作用について説明する。
【0034】
図2において、波形比較手段8は、コンパレータ21、抵抗22、抵抗23とで構成される電子回路であり、ゼロ点比較手段9は、コンパレータ24、抵抗25、可変抵抗26、抵抗27により構成される電子回路である。増幅回路7の増幅手段7の出力は直流バイアス電圧に超音波受信信号の交流信号が重畳されたものであり、波形比較手段8とゼロ点比較手段9は、増幅回路7の出力と電圧設定手段10で設定される基準電圧との比較処理を行っている。
【0035】
波形比較手段8の役割は、増幅回路7の出力が期待される電圧に到達したことを検出することにある。コンパレータ21の非反転入力端子21aには、抵抗22と抵抗23の交点の電圧が入力されている。抵抗22と抵抗23は電源とGNDの間を直列に繋がれているので、抵抗22と抵抗23の分圧比で定まる電圧が波形検出の基準電圧Vref1として非反転入力端子21aに加えられることになる。コンパレータ21の反転入力端子21bには増幅回路7の出力信号が加えられている。コンパレータ21はふたつの入力端子に印加される電圧レベルを比較し、2値信号に変換して出力する。すなわち、基準電圧が大きければ“H”、増幅回路7の出力信号が大きければ“L”を出力する。
【0036】
ゼロ点比較手段9の役割は、増幅回路7の出力である交流信号がそのゼロ点(バイアス電圧)に到達した瞬間を検知することにある。コンパレータ24の非反転入力端子24a
には、可変抵抗26と抵抗27の交点の電圧が入力されている。抵抗25、可変抵抗26、抵抗27は電源とGNDの間を直列に繋がれていて、各抵抗値の分圧比で定まる電圧がゼロ点検出の基準電圧Vref2として非反転入力端子24aに加えられることになる。可変抵抗26の抵抗値は、電圧設定手段10に指示により随時変更可能である。一方、コンパレータ24の反転入力端子24bには増幅回路7の出力信号が加えられている。コンパレータ24はふたつの入力端子に印加される電圧レベルを比較し、2値信号に変換して出力する。すなわち、基準電圧が大きければ“H”、増幅回路7の出力信号が大きければ“L”を出力する。すなわち、コンパレータ24の出力が反転した時が、超音波信号がゼロ点に到達した瞬間ということになる。コンパレータ21およびコンパレータ24から出力された2値信号は、受信判定手段11に入力され、受信点の検知に利用される。
【0037】
図3において、波形Aは増幅回路7の出力、波形Bは波形比較手段8の出力、波形Cはゼロ点比較手段9の出力を示している。波形Aが波形比較基準電圧Vref1を超えた時点で、波形Bの出力は“H”から“L”に変化し、以後、ふたつの信号の大小に応じて波形Bの出力は反転を繰り返す。また、波形Aがゼロ点基準電圧Vref2を超えた時点で、波形Cの出力は“H”から“L”に変化し、以後、ふたつの信号の大小に応じて波形Cの出力は反転を繰り返す。
【0038】
受信判定手段11は波形Aとノイズを混同しないように、波形がある一定レベル、すなわちVref1を超えるまでは、波形Cの出力を無視している。そして、波形Bの出力が初めて反転する時間Ta以降に発生した最初の波形Cの反転タイミング、すなわち時間Tbを持って、超音波信号が受信回路側に到達したものと判断する。そして、受信判定手段11で検知した時間Tbが計時手段12によって計測されることになる。
【0039】
続いて、図4および図5を用いて基準電圧設定手段10の動作、作用について説明する。受信判定手段11が検知した受信点は、計時手段12で計測されることになるが、その値は計時手段12の計時分解能で丸められる。そこで、計時分解能より小さな時間差の検出を、ゼロ点比較手段9の基準電圧Vref2を電圧設定手段10で変更することで実現する。
【0040】
受信波形は正弦波で近似できるので、ゼロ点近傍の増幅回路7の出力波形を正弦波で近似するものとすると、時間tと電圧Vの関係は(式5)のように表わせる。
【0041】
V=−Asin(2πt/τ) (式5)
ただし、Aは波形Aの振幅、τは周期とする。ゼロ点近傍、すなわちt≪τなる条件においては2πt/τ≒0が成り立つので、(式5)は更に(式6)のように近似できる。
【0042】
V=−2πAt/τ (式6)
したがって、ゼロ点近傍では電圧Vと時間tは一次式で関係づけることができる。
【0043】
図4は増幅回路7の出力波形のゼロ近傍の電圧を拡大して示したものである。図4において、ゼロ点基準電圧Vref2=V0の時、受信判定手段11の受信検知点の時間をt0と仮定する。ここで、Vref2を微小電圧ΔVずつ、つまり、V0+ΔV、V0+2ΔV、V0+3ΔVの如く、徐々に変化させたとする。この場合、受信判定手段11による受信点の検知時間は−Δtずつ、つまり、t0−Δt、t0−2Δt、t0−3Δtの如く等間隔で変化する。(式6)から考えて、ΔVとΔtの関係は、(式7)で表せる。
【0044】
ΔV=−2πA・Δt/τ (式7)
この関係を利用して、ΔV、すなわちΔtを適宜、調整し、計時手段12の時間分解能より小さな値に定めることで、この時間分解能より小さな時間差の検出を行なう。
【0045】
図5は、わずかに伝搬時間の異なるふたつの電圧波形を計時手段12を用いて計時した時の動作を説明する特性図である。図5も図4と同様増幅回路7の出力波形のゼロ近傍の電圧を拡大して示したものである。計時手段12はクロック同期でカウントアップするタイマカウンタで構成されていて、受信判定手段11が超音波の到達を検出した時点のカウンタ値を読み取って計時結果として利用する。
【0046】
ここで、Δtの値が計時手段12の同期クロックの周期Tの4分の1の値になるように予め調整されているものとする。このような条件下において、ゼロ点基準電圧Vref2を本来の基準電圧V0を起点として、ΔVずつ異なるV1、V2、V3の如く、徐々に変化させながら、波形Aを改計時手段12で計測した値はn+1、n+1、n+1、nと変化する。
【0047】
次に、波形AとはT/4だけ伝搬時間の異なる波形Bも同様に処理した場合、計時手段12の計時結果は、それぞれ、n+1、n+1、n+1、n+1と変化する。
【0048】
計時手段12の計時結果は伝搬時間13に出力され平均化処理を行なって、波形の伝搬時間が求められる。タイマカウンタの同期クロックの周期をTとした場合、波形Aの伝搬時間Tx、波形Bの伝搬時間Tyはそれぞれ、次のように求められる。
【0049】
Tx=(n+0.75)・T (式8)
Ty=(n+1)・T (式9)
したがって、波形A、BはT/4だけ伝搬時間の異なる波形であることが検出できる。
【0050】
一方、Vref2が固定電圧であった場合、計時手段12の計時結果はクロック周期Tで丸められてしまうので、T/4の差異を認識することはできない。例えば、図5の場合であれば、両者とも(n+1)・Tと処理されるので同じ波形としか認識ができなくなる。
【0051】
以上の方法によれば、従来のシングアラウンド法のように送受信を連続して繰り返す必要は全くなく、一旦受信処理が完了した後、次の送信を行なうまでの時間間隔は如何様にでも設定できる。しかも、ΔVすなわちΔtを適宜調整し、平均化処理を行なうことで細かな分解能をも実現可能である。特に図5ではΔtをTの1/4に等しくなるように設定しているため、計時手段12の計時分解能をT/4に定めた時と同等の分解能を得ることができる。Δtの値はT/4に限らず、T/M(Mは整数)の近傍の数値に定めることで、計時手段12の同期クロックの周期を1/Mに定めたのと同等の計時分解能が得られるようになる。
【0052】
先の説明において伝搬時間演算手段13では、計時手段12で読み取った値をそのまま平均化しているが、電圧設定手段10の設定電圧による差分を考慮して補正する形をとっても良い。例えば、図5においてVref2がV0の場合を基準とおけば、Vref2をV1、V2、V3と変化させるに従って、伝搬時間は基準点よりT/4(タイマカウンタの1/4カウント分)ずつ早く検出されることになる。よって、この分を計時手段12で読み取った値に加算して考えれば良い。この考え方に基づけば、波形Aでは、補正後の値はn+1、n+1.25、n+1.5、n+0.75となり、波形Bではn+1、n+1.25、n+1.5、n+1.75と変化する。この場合、波形Aの伝搬時間Tx、波形Bの伝搬時間Tyはそれぞれ、
Tx=(n+1.125)・T (式10)
Ty=(n+1.375)・T (式11)
と求められる。
図5で示すように、Txおよび、Tyの真値は、それぞれ
Tx=(n+1.625)・T (式12)
Ty=(n+1.875)・T (式13)
であるので、(式8)、(式10)、(式12)の3者、(式9)、(式11)と(式13)の3者を比べれば明らかなように、補正を加えることにより、より真値に近い値を得ることが可能である。
【0053】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2における流体の流れ計側装置のブロック図である。図6が実施の形態1における図1と異なるのは、流量演算手段14で求めた流量が大きくなるにしたがって、電圧設定手段10の設定電圧1段階当たりの電圧変化を大きくなるように定めている点である。
【0054】
計測流量が大きい場合、(式4)からも明らかなように伝搬時間の絶対値の誤差が流量の相対精度に与える影響は小さくなる。したがって、流量が大きくなるほど、計時分解能は粗くても問題がない。そこで、図7で示すように、計測流量に閾値Qth1、Qth2を設けて、前回の計測結果応じて、Δtの値を変化させている。すなわち、流量がQth1以上であれば、Δt=T/2、Qth2以上であれば設定電圧そのものを一点に固定して、平均化処理自体を行なわず、1回の計測結果で伝搬時間と流量値を求めている。
【0055】
流量が大きくなるにしたがって、平均化処理回数が小さくなるので、計測の応答性が高まる。したがって、流量が大きくなるにしたがってきめ細やかな計測が可能となり、流量値の積算処理や保安処理などの機能と組み合わせた場合の性能向上が期待できる。
【0056】
(実施の形態3)
図8は、本発明の実施の形態3における流体の流れ計測装置のブロック図である。図8が実施の形態1における図1と異なるのは、計測流量が大きくなるにしたがって、計時手段12の分解能を粗くしている点である。
【0057】
実施の形態2でも説明したように、計測流量の流量が大きくなるほど、計時分解能は粗くても問題がないため、図9で示すように流量が増すにしたがって、計時手段12の分解能を粗く設定している。すなわち、流量がQth1以上であれば、計時手段の計時分解能を2T、流量がQth2以上であれば計時分解能を4Tに定めている。これは計時手段12の計時クロックをTとし、流量が大きくなるにしたがって、分周回路を使って、周期を倍に変更していくことで容易に実現可能である。
【0058】
したがって、計測流量が大きいときには、省電力化が図れる。一方、電圧設定手段10による電圧設定の1段階当たりの電圧変化ΔVは固定にしているので、ΔVにより生じる受信点の時間変化Δtも固定されている。そのため、流量が急激に下降した場合であったとしても、Δtによって、おおよその分解能は担保されているので、流量変化を検知して即座に適切な分解能に変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の流量計測装置は、計測間隔を自由に設定することができるので、例えば脈動流が常時発生するような条件下においても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態1における流体の流れ計測装置のブロック図
【図2】同装置の比較手段、電圧設定手段の構成図
【図3】同装置の受信検知手段の動作を説明するタイムチャート
【図4】同装置の電圧設定手段の作用を説明する特性図
【図5】同装置の電圧設定手段の作用を説明する別の特性図
【図6】本発明の実施の形態2における流体の流れ計測装置のブロック図
【図7】同装置の電圧設定手段の動作を説明する特性図
【図8】本発明の実施の形態3における流体の流れ計測装置のブロック図
【図9】同装置の計時手段の動作を説明する特性図
【図10】従来の流体の流れ計測装置のブロック図
【符号の説明】
【0061】
1 流体管路
2 第1振動子
3 第2振動子
4 切替手段
6 送信回路
7 増幅回路
8 波形比較手段
9 ゼロ点比較手段
10 電圧設定手段
11 受信判定手段
12 計時手段
13 時間演算手段
14 流量演算手段
【出願人】 【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【出願日】 平成19年1月24日(2007.1.24)
【代理人】 【識別番号】100097445
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 文雄

【識別番号】100109667
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 浩樹

【識別番号】100109151
【弁理士】
【氏名又は名称】永野 大介


【公開番号】 特開2008−180565(P2008−180565A)
【公開日】 平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願番号】 特願2007−13312(P2007−13312)