トップ :: G 物理学 :: G01 測定;試験

【発明の名称】 熱式流量センサ
【発明者】 【氏名】有吉 博海

【要約】 【課題】乱流の影響を低減し、且つ、コストを低減することのできる熱式流量センサを提供する。

【解決手段】半導体基板の一面上に少なくとも発熱体が形成されて、流体の流量を検出する流量検出部が構成されたセンサチップと、センサチップと電気的に接続された外部接続端子としてのリードと、センサチップとリードとの接続部が被覆され、流量検出部が露出されるように一体的に配置された封止樹脂と、を備える熱式流量センサであって、封止樹脂が、センサチップの側面であって、少なくとも流体の流れに対して流量検出部の上流側部位に接して被覆しており、センサチップの発熱体形成面と封止樹脂の側面被覆部とが、発熱体形成面に垂直な方向において面一となっている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の一面上に少なくとも発熱体が形成されて、流体の流量を検出する流量検出部が構成されたセンサチップと、
前記センサチップと電気的に接続された外部接続端子としてのリードと、
前記センサチップと前記リードとの接続部が被覆され、前記流量検出部が露出されるように一体的に配置された封止樹脂と、を備える熱式流量センサであって、
前記封止樹脂は、前記センサチップの発熱体形成面に垂直な側面であって、少なくとも前記流体の流れに対して前記流量検出部の上流側部位に接して被覆しており、
前記センサチップの発熱体形成面と前記封止樹脂の側面被覆部とが、前記発熱体形成面に垂直な方向において面一となっていることを特徴とする熱式流量センサ。
【請求項2】
前記封止樹脂の側面被覆部は、前記流体の流れに対して前記流量検出部の下流側部位にも接して被覆していることを特徴とする請求項1に記載の熱式流量センサ。
【請求項3】
前記封止樹脂は、前記センサチップの側面全面を被覆していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱式流量センサ。
【請求項4】
前記封止樹脂の側面被覆部は、前記側面から離反する方向に凸のR形状の部位を含むことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の熱式流量センサ。
【請求項5】
前記封止樹脂の側面被覆部は、前記発熱体形成面に垂直な方向における厚さが、前記側面から離反する方向に向けて薄くされたテーパ状の部位を含むことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の熱式流量センサ。
【請求項6】
前記封止樹脂の端面被覆部位は、流線形状とされていることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の熱式流量センサ。
【請求項7】
前記センサチップの発熱体形成面上に、前記発熱体形成面とは離間して少なくとも前記流量検出部を覆うように、前記封止樹脂と一体化された平板状の庇をさらに備えることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の熱式流量センサ。
【請求項8】
前記庇は、前記封止樹脂の一部として構成されていることを特徴とする請求項7に記載の熱式流量センサ。
【請求項9】
前記庇は、前記封止樹脂とは別部材として前記封止樹脂に固定されていることを特徴とする請求項7に記載の熱式流量センサ。
【請求項10】
前記流体の流れ方向における前記流量検出部よりも上流側において、前記庇の端部と前記封止樹脂の側面被覆部との位置が一致していることを特徴とする請求項7〜9いずれか1項に記載の熱式流量センサ。
【請求項11】
前記流体の流れ方向において、前記庇の端部は、凸のR形状とされていることを特徴とする請求項7〜10いずれか1項に記載の熱式流量センサ。
【請求項12】
前記流体の流れ方向において、前記庇の端部は、テーパ状とされていることを特徴とする請求項7〜11いずれか1項に記載の熱式流量センサ。
【請求項13】
前記流体の流れ方向において、前記庇の端部は、流線形状とされていることを特徴とする請求項7〜12いずれか1項に記載の熱式流量センサ。
【請求項14】
リードフレームの不要部分を除去することで前記リードと分離された支持部材をさらに備え、
前記センサチップは、前記支持部材上に固定された状態で、前記封止樹脂によってその一部が被覆されていることを特徴とする請求項1〜13いずれか1項に記載の熱式流量センサ。
【請求項15】
前記流量検出部の入出力を制御する回路が形成された回路チップをさらに備え、
前記センサチップは、前記回路チップを介して前記リードと電気的に接続されており、
前記封止樹脂により、前記センサチップと前記回路チップとの接続部、及び、前記回路チップと前記リードとの接続部が被覆されていることを特徴とする請求項1〜14いずれか1項に記載の熱式流量センサ。
【請求項16】
前記半導体基板には、前記発熱体に対応する領域に、前記半導体基板の他領域よりも熱伝導率の低い低熱伝導領域が形成されていることを特徴とする請求項1〜15いずれか1項に記載の熱式流量センサ。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、熱式流量センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板の一面上に少なくとも発熱体が形成されて、流体の流量を検出する流量検出部が構成されたセンサチップを、外部接続端子とのしてのリードと電気的に接続し、流量検出部が露出されるように封止樹脂で被覆してなる熱式流量センサが知られている(特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1,2においては、ともに支持部材(例えばリードフレームの一部であって、リードフレームの不要部分を除去することでリードと分離されたもの)上にセンサチップが固定された状態で、センサチップとリードとの接続部が封止樹脂で被覆されている。
【0004】
特許文献1においては、支持部材(閉塞支持リード)に、センサチップ(半導体センサ素子)を位置決めする位置決め用の片端面及び両側面が、センサチップが配置される底面部から垂直方向に折曲されて設けられている。そして、センサチップは、この片端面及び両側面によって位置決めされて、半導体基板における発熱体に対応する領域に形成された空洞を塞ぐように支持部材上に配置されている。
【0005】
特許文献2においては、支持部材(支持体)に、センサチップ(流量検出チップ)が配置される溝部と、センサチップが配置された状態で、上述の空洞部位とセンサチップ上の外部とを連通させる連通部とが設けられている。そして、支持部材の溝部にセンサチップが配置された状態で、センサチップの発熱体形成面(流量検出部形成面)と支持部材の表面とが面一とされ、溝部側面とセンサチップの側面との間の隙間であって、少なくともモールド成形時に隙間への封止樹脂の侵入を抑制する位置に充填材が注入されて、隙間の少なくとも一部が閉塞されている。
【特許文献1】特許第3328547号
【特許文献2】特開2006−90889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によれば、支持部材に両側面が設けられているものの、両側面とセンサチップの発熱体形成面との位置関係については特に規定されていない。したがって、支持部材とセンサチップとに段差が存在し、これにより乱流が発生して流量検出部に影響を及ぼす(検出精度が低下する)恐れがある。なお、両側面とセンサチップの側面との間には所定の隙間(クリアランス)が存在するので、封止樹脂による一体成形時に隙間に封止樹脂が侵入して所謂バリが生じ、このバリによって乱流が発生する恐れもある。さらには、隙間の幅によっては、両側面とセンサチップの発熱体形成面とが面一であっても、センサチップの側面に流体(例えば空気)が当たり、これによって乱流が発生する恐れもある。
【0007】
特許文献2によれば、センサチップの発熱体形成面(流量検出部形成面)と支持部材の表面とが面一とされている。また、支持部材とセンサチップの側面との間の隙間への封止樹脂の侵入が抑制されている。したがって、特許文献1に示される構成と比べて、乱流の発生を低減することができる。しかしながら、隙間の幅によっては、センサチップの側面に流体(例えば空気)が当たり、これにより乱流が発生して流量検出部に影響を及ぼす恐れがある。
【0008】
また、特許文献1,2に示される構造を実現するためには、支持部材の折曲や、支持部材のエッチングなどの加工が必要となるので、熱式流量センサのコストが増加する。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑み、乱流の影響を低減し、且つ、コストを低減することのできる熱式流量センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する為に、請求項1に記載の熱式流量センサは、半導体基板の一面上に少なくとも発熱体が形成されて、流体の流量を検出する流量検出部が構成されたセンサチップと、センサチップと電気的に接続された外部接続端子としてのリードと、センサチップとリードとの接続部が被覆され、流量検出部が露出されるように一体的に配置された封止樹脂と、を備えるものである。そして、封止樹脂は、センサチップの発熱体形成面に垂直な側面であって、少なくとも流体の流れに対して流量検出部の上流側部位に接して被覆しており、センサチップの発熱体形成面と封止樹脂の側面被覆部とが、発熱体形成面に垂直な方向において面一となっていることを特徴とする。
【0011】
このように本発明によれば、封止樹脂の一部が、センサチップ(半導体基板)の側面であって、少なくとも流体の流れに対して流量検出部の上流側部位に接触し、該部位を被覆している。すなわち、流体は、センサチップの側面に接触せず、流量検出部に対して側面よりも遠い位置にある封止樹脂の側面被覆部に接触する。また、封止樹脂の側面被覆部とセンサチップの発熱体形成面とは、発熱体形成面に垂直な方向において面一となっており、封止樹脂の側面被覆部とセンサチップとの間に段差が無い。したがって、流量検出部を通る流体の流れ方向において、乱流は主として封止樹脂の側面被覆部の端部にて生じることとなり、側面被覆部の厚さ分、流量検出部の上流側部位で生じる乱流による流量検出部への影響を低減することができる。
【0012】
また、側面被覆部は封止樹脂の一部であるので、センサチップとリードとの接続部を被覆する際に、センサチップの側面も一括して被覆することができ、ひいてはコストを低減することができる。さらには、半導体基板からなるセンサチップの側面よりも形状の自由度が高いので、側面被覆部の形状によっては、乱流による流量検出部への影響をさらに低減することも可能である。
【0013】
なお、上述した熱式流量センサは、エンジンから排出される排気ガスの一部をエンジンの吸気側に循環させるEGR(Exhaust Gas Recirculation)システムのように、流体を逆流させる(脈動させる)構成に適用することも考えられる。この場合、流量検出部に対して下流側から流体が流れることもあるので、請求項2に記載のように、封止樹脂の側面被覆部が、流体の流れに対して流量検出部の下流側部位にも接触し、該部位を被覆した構成とすると良い。さらには、請求項3に記載のように、封止樹脂によって、センサチップの側面全面が被覆された構成としても良い。
【0014】
封止樹脂の側面被覆部としては、例えば請求項4に記載のように、側面から離反する方向に凸のR形状の部位を含む構成としても良い。また、請求項5に記載のように、発熱体形成面に垂直な方向における厚さが、側面から離反する方向に向けて薄くされたテーパ状の部位を含む構成としても良い。さらには、請求項6に記載のように、流線形状とされた構成としても良い。いずれの構成によっても、封止樹脂の側面被覆部にて生じる乱流を低減することができる。
【0015】
次に、請求項7に記載のように、センサチップの発熱体形成面上に、発熱体形成面とは離間して少なくとも流量検出部を覆うように、封止樹脂と一体化された庇をさらに備える構成としても良い。これによれば、センサチップの発熱体形成面と庇とによって流体の通路が規定され、流量検出部上を流れる流体が層流となる。また、庇によって周囲(例えば流体通路内壁)で生じた乱流が流量検出部上に流れるのを抑制することもできる。したがって、乱流による流量検出部への影響をさらに低減することができる。
【0016】
請求項8に記載のように、庇は、封止樹脂の一部として構成されても良いし、請求項9に記載のように、庇は、封止樹脂とは別部材として封止樹脂に固定されても良い。請求項8に記載の構成とすると、コストを低減することができる。なお、請求項9に記載の構成としては、別部材である庇がインサート部品として封止樹脂と一体成形されたものでも良いし、例えば接着固定のように成形後の封止樹脂に庇が固定されたものでも良い。
【0017】
請求項10に記載のように、流体の流れ方向における流量検出部よりも上流側において、庇の端部と封止樹脂の側面被覆部との位置が一致した構成とすることが好ましい。これによれば、庇の端部及び封止樹脂の側面被覆部の一方に接触した流体が、庇の端部及び封止樹脂の側面被覆部の他方に接触しがたいので、これによる乱流の発生を抑制することができる。
【0018】
なお、請求項11、請求項12、及び請求項13に記載の発明は、その作用効果が請求項4、請求項5、及び請求項6に記載の発明の作用効果と同様であるので、その記載を省略する。
【0019】
請求項14に記載のように、リードフレームの不要部分を除去することでリードと分離された支持部材をさらに備え、センサチップは、支持部材上に固定された状態で、封止樹脂によってその一部が被覆された構成としても良い。これによれば、簡素な構成でありながら、封止樹脂による封止時に、センサチップとリードとの位置ずれを抑制することができる。
【0020】
請求項15に記載のように、流量検出部の入出力を制御する回路が形成された回路チップをさらに備え、センサチップは、回路チップを介してリードと電気的に接続されており、封止樹脂によって、センサチップと回路チップとの接続部、及び、回路チップとリードとの接続部が被覆された構成としても良い。このように、センサチップとともに回路チップを含む構成としても良いし、上述の回路がセンサチップに集積化された構成としても良い。また、上述の回路が熱式流量センサに含まれない構成としても良い。
【0021】
請求項16に記載のように、半導体基板の発熱体に対応する領域に、半導体基板の他領域よりも熱伝導率の低い低熱伝導領域が形成された構成とすると良い。これによれば、低熱伝導領域の熱容量を半導体基板の他領域よりも低くし、低熱伝導領域と他領域との熱的な絶縁を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る熱式流量センサの概略構成を示す平面図である。図2は、図1のII−II線に沿う模式的な断面図である。図3は、図1のIII−III線に沿う模式的な断面図である。図4は、センサチップにおける流量検出部周辺の拡大平面図である。図1〜図3においては、便宜上、センサチップにおいて保護膜等の絶縁膜を省略して図示している。なお、以下に示す図において、白抜き矢印は通常時の流体の流れ方向を示している。
【0023】
本実施形態に示す熱式流量センサは、センサチップに構成された流量検出部(フローセンサ)を備えており、例えば車両内燃機関の吸気管内に配置される。
【0024】
図1及び図2に示すように、熱式流量センサ100は、主要部として、流体の流量を検出する流量検出部が構成されたセンサチップ110と、センサチップ110と電気的に接続された外部接続端子としてのリード130と、センサチップ110とリード130との接続部が被覆され、流量検出部が露出されるように封止樹脂を一体的に配置してなる封止樹脂140と、を備えている。換言すれば、流量検出部の構成されたセンサチップ110が、リード130と電気的に接続された状態で、封止樹脂140によって被覆されている。
【0025】
本実施形態においては、上述した主とする構成要素以外にも、図1及び図2に示すように、センサチップ110と電気的に接続された回路チップ150と、センサチップ110が搭載された第1支持部材160と、回路チップ150が搭載された第2支持部材170と、を備えている。
【0026】
センサチップ110に構成された流量検出部120は、半導体基板111の一面上に少なくとも発熱体が形成された、所謂熱式の流量センサとして構成されている。具体的には、図2〜図4に示すように、半導体基板111としてのシリコン基板における流量検出部形成領域の一部に、低熱伝導領域としての空洞部112が形成されて、空洞部112上に絶縁膜113からなる薄肉部114(メンブレン)が構成されている。より詳しくは、半導体基板111の発熱体が形成される面の裏面側から半導体基板111が異方性エッチングされて、薄肉部114が構成されている。なお、図4においては、破線で囲まれた2つの矩形領域のうち、小さい領域内が薄肉部114であり、大きい領域が空洞部112の開口面115を示している。薄肉部114は、薄肉部114以外の半導体基板111の他部位と比べて非常に薄く形成されているため熱容量が低く抑えられ、他部位との熱的な絶縁が確保されている。
【0027】
薄肉部114上には、図4に示すように発熱体121,122が形成されている。発熱体121は、通常時における流体の流れ方向(図中の白抜き矢印方向)に対して上流側に配置された上流側発熱体であり、発熱体122は上述した流体の流れ方向に対して下流側に配置された下流側発熱体である。また、一対の発熱体121,122を挟むようにして、測温抵抗体からなる一対の感温体123,124が、薄肉部114よりも厚い薄肉部114の周辺領域であって流体の上流側と下流側にそれぞれ形成されている。なお、発熱体121,122、及び、感温体123,124は、図4に示すように、配線部125の一部としてそれぞれ形成されており、配線部125の端部には、電極としてのパッド(図示略)が形成されている。なお、配線部125の構成材料としては、例えば不純物が適宜添加された多結晶シリコンや単結晶シリコン、Ptなどの金属といった公知の配線材料を採用することができる。このように、配線部125の一部として、薄肉部114上に形成された発熱体121,122、及び、発熱体121,122の近傍に形成された感温体123,124により、流量検出部120が構成されている。
【0028】
このように構成される流量検出部120において、本実施形態においては、発熱体121,122に、電流の供給量によって発熱する機能に加えて、それ自身の抵抗値の変化に基づいて、自身の温度を感知する機能を持たせている。したがって、上流側と下流側の各発熱体121,122で生じる熱のうち、流体によって奪われる熱に基づき、流体の流量が検出される。また、上流側の発熱体121と下流側の発熱体122とのそれぞれに生じる熱のうち、流体によって奪われる熱量の差に基づき、流体の流通方向が検出される。さらに、上流側の発熱体121と上流側の感温体123との温度差、及び、下流側の発熱体122と下流側の感温体124との温度差に基づき、各発熱体121,122に供給される電流量が制御される。なお、上述した流量検出部120の詳細については、本出願人による例えば特開2004−205498号公報を参照されたい。
【0029】
なお、センサチップ110において、図1〜図3に示す符号116は、発熱体121,122などの配線部125、層間絶縁膜や保護膜などの絶縁膜などが形成された側の表面(以下、発熱体形成面と示す)である。図1及び図2に示すように、センサチップ110の発熱体形成面116のうち、流量検出部120の形成領域を除く一部が、封止樹脂140によって被覆されている。より具体的には、配線部125のうち、流量検出部120を除き、パッドを含む領域が封止樹脂140によって被覆されている。
【0030】
回路チップ150は、半導体基板にMOSトランジスタやダイオードなどの素子や配線を形成することで、流量検出部120の入出力を制御する回路が構成されたものである。回路チップ150を構成する半導体基板の一面上には、回路の配線端部にパッド(図示略)が形成されており、このパッドの一部は、AlやAuなどのワイヤ180を介して、半導体基板111の発熱体形成面116上に形成されたパッドと電気的に接続されている。また、パッドの一部は、AlやAuなどのワイヤ190を介して、リード130と電気的に接続されている。このように、本実施形態においては、センサチップ110(流量検出部120)とリード130とが、回路チップ150を介して電気的に接続されている。また、回路チップ150は、ワイヤ190及びリード130を介して、外部(例えば外部ECU)と信号を授受することができる。
【0031】
また、2つの半導体チップ110,150は、それぞれ対応する支持部材160,170上に固定されている。本実施形態においては、第1支持部材160上に、発熱体形成面の裏面を接着面として、空洞部112を塞ぐようにセンサチップ110が接着固定されている。また、第2支持部材170上に、パッド形成面の裏面を接着面として、回路チップ150が接着固定されている。また、支持部材160,170は、リード130とともに、金属材料からなるリードフレームの一部として構成されており、封止樹脂140を構成する封止樹脂が硬化された状態で、リードフレームの不要部分(露出部)が除去され、図1及び図2に示すように、リード130、第1支持部材160、及び第2支持部材170が分離された構成となっている。
【0032】
そして、ワイヤ180を含むセンサチップ110と回路チップ150との接続部、及び、ワイヤ190を含むセンサチップ110と回路チップ150との接続部が、エポキシ樹脂などの公知の封止樹脂からなる封止樹脂140によって、流量検出部120が露出するように、一体的に被覆されている。この被覆された状態で、回路チップ150及び第2支持部材170は、全体が封止樹脂140によって被覆されている。
【0033】
次に、本実施形態に係る熱式流量センサ100の特徴部分について、図1〜図3を用いて、以下に説明する。本実施形態においては、封止樹脂140に特徴がある。具体的には、図1〜図3に示すように、封止樹脂140から露出する発熱体形成面116の部位に対応する(連結する)、センサチップ110の側面117(発熱体形成面116に対して垂直な面)の部位全面に、封止樹脂140の一部(以下、側面被覆部141と示す)が接触している。すなわち、側面被覆部141が、センサチップ110(半導体基板111)の側面117であって、流体の流れに対して流量検出部120の上流側部位に接触し、当該部位を被覆することで、センサチップ110と封止樹脂140との間に隙間が無い構成となっている。そして、この接触状態で、センサチップ110の発熱体形成面116と封止樹脂140の側面被覆部141とが、発熱体形成面116に垂直な方向(側面117に沿う方向)において面一とされ、センサチップ110と側面被覆部141(封止樹脂140)との段差のない状態となっている。
【0034】
このような構成とすると、流量検出部120を通る流体は、例えば図3に示すように、センサチップ110(半導体基板111)の側面117に接触するのではなく、流量検出部120に対して側面117よりも遠い位置にある封止樹脂140の側面被覆部141に接触する。これにより、流体熱式流量センサ100の流量検出面に対する側面部に当たった際に生じる乱流の位置を、封止樹脂140の側面被覆部141の厚さ分、流量検出部120に対して遠ざけることができる。したがって、流体の流れ方向(図3に示す実線矢印)において、側面被覆部141の端部に流体が当たって乱流が生じても、封止樹脂140の側面被覆部141の厚さ分、流量検出部120の上流側部位で生じる乱流による流量検出部120への影響を低減することができる。
【0035】
また、本実施形態においては、図3に示すように、封止樹脂140の側面被覆部141を、発熱体形成面116に垂直な方向における厚さが、側面117から離反する方向に向けて薄くされたテーパ状部位141bを含み、流線形状とされた構成としている。したがって、熱式流量センサ100の側面部が発熱体形成面116に対して垂直である構成に比べて、流体の抵抗を低減し、熱式流量センサ100の側面部にて生じる乱流を低減することができる。なお、本実施形態においては、図3に示すように、センサチップ110の発熱体形成面116に対して面一である平坦部位141aが、センサチップ110に接して構成され、平坦部位141aに連結してテーパ状部位141bが構成されている。このような構成とすると、平坦部位141aの幅によって、側面被覆部141の端部と流量検出部120との距離を調整することができる。なお、形状によっては、平坦部位141aがなく、テーパ状部位141bがセンサチップ110に接する構成としても良い。
【0036】
また、本実施形態においては、封止樹脂140から露出する発熱体形成面116の部位に対応する、センサチップ110の側面117部位全面に、側面被覆部141が接触している。すなわち、側面被覆部141は、流体の流れに対して流量検出部120の下流側部位にも接触し、当該部位を被覆している。したがって、流体を逆流させた(例えば図1において、下流側から上流側に流した)としても、少なくとも流体の流量を検出(本実施形態においては流体の方向も検出)することができる。このような構成は、エンジンから排出される排気ガスの一部をエンジンの吸気側に循環させるEGR(Exhaust Gas Recirculation)システムに好適である。
【0037】
また、側面被覆部141は封止樹脂140の一部であるので、モールド成形時においてセンサチップ110の側面117も一括して被覆することができる。すなわち、コストを低減することができる。
【0038】
また、本実施形態においては、センサチップ110の側面117全面だけでなく、図2及び図3に示すように、センサチップ110の発熱体形成面116の裏面全面も、封止樹脂140によって被覆されている。したがって、封止樹脂140から露出する発熱体形成面116の部位に対応する、センサチップ110の発熱体形成面116の裏面部位に封止樹脂140が配置されない構成に比べて、側面被覆部141を安定保持することができる。
【0039】
なお、このような構成の熱式流量センサ100は、公知の製造方法によって製造することができる。その一例を以下に示す。先ず、センサチップ110、回路チップ150をそれぞれ準備する。次に、リード130、第1支持部材160、及び第2支持部材170を含むリードフレームに対し、第1支持部材160上にセンサチップ110を、第2支持部材170上に回路チップ150を接着固定する。そして、センサチップ110のパッドと対応する回路チップ150のパッドとをワイヤ180を介して電気的に接続し、回路チップ150のパッドとリード130とをワイヤ190を介して電気的に接続する。
【0040】
次に、回路チップ150、各ワイヤ180,190、及び各ワイヤ180,190との接続部位(センサチップ110、回路チップ150、及びリード130の各部位)が封止樹脂140によって一体的に被覆されるように、所定の型を用いてモールド成形する。このモールド成形においては、センサチップ110の流量検出部120を含む発熱体形成面116の一部を封止樹脂140から露出させる(すなわち、封止樹脂140によって被覆しない)ので、好ましくは、センサチップ110と型との間に、離型性向上、バリ抑制、金型磨耗などを目的とした樹脂フィルムを介在させてモールド成形すると良い。このようなモールド成形については、例えば特許第3241553号、特許3516764号を参照されたい。
【0041】
そして、モールド成形後、封止樹脂140のキュアを行い、封止樹脂140から露出するリードフレームの不要部分を除去することにより、上述した構成の熱式流量センサ100を形成することができる。
【0042】
なお、本実施形態においては、封止樹脂140の側面被覆部141が、発熱体形成面116に垂直な方向における厚さが、側面117から離反する方向に向けて薄くされたテーパ状の部位を含み、流線形状とされた例を示した。しかしながら、側面被覆部141の形状は上記例に限定されるものではない。側面被覆部141は封止樹脂140の一部であり、半導体基板111や金属からなる第1支持部材160よりも、形状の自由度が高いので、上述した構成のように、乱流による流量検出部120への影響をさらに低減する形状とすることも可能である。例えば、図5に示すように、側面被覆部141が、センサチップ110の側面117から離反する方向に凸のR形状部位141cを含む構成としても良い。図5は、変形例を示す断面図であり、図3に対応している。
【0043】
また、本実施形態においては、センサチップ110の側面117全面が、封止樹脂140の側面被覆部141によって被覆された例を示した。しかしながら、側面被覆部141によって、側面117のうち、少なくとも流体の流れに対して流量検出部120の上流側部位が被覆された構成とすれば、上述と同様の効果を期待することができる。例えば、図6に示すように、発熱体形成面116の封止樹脂140によって被覆される側から流量検出部120の遠い側までの部位に対応する側面117の部位にのみ、側面被覆部141を設けた構成としても良い。また、図6に示す構成において、側面被覆部141を、上流側の側面117に対してのみ設けた構成としても良い。図6は、変形例を示す平面図であり、図1に対応している。
【0044】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、図7〜図9に基づいて説明する。図7は、第2実施形態に係る熱式流量センサ100の概略構成を示す平面図であり、図1に対応している。図8は、図7のVIII−VIII線に沿う模式的な断面図であり、図2に対応している。図9は、図7のIX−IX線に沿う模式的な断面図であり、図3に対応している。
【0045】
第2実施形態に係る熱式流量センサ100は、第1実施形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。なお、第1実施形態に示した要素と同一の要素には、同一の符号を付与するものとする。
【0046】
図7〜図9に示すように、本実施形態に係る熱式流量センサ100は、第1実施形態に示した熱式流量センサ100に対し、センサチップ110の発熱体形成面116上に、発熱体形成面116とは離間して少なくとも流量検出部120を覆うように、封止樹脂140と一体化された庇200をさらに備える点を特徴とする。
【0047】
このような庇200の構成材料は特に限定されるものではなく、封止樹脂140の一部として庇200が構成されても良いし、封止樹脂140とは別部材として庇200が構成され、封止樹脂140に固定されたものでも良い。封止樹脂140の一部とすると、製造工程を簡素化することができる。封止樹脂140とは別部材によって庇200を構成する場合には、例えばインサート部品として封止樹脂140と一体成形されることで、封止樹脂140に庇200を固定することもできるし、接着固定のようにモールド成形後の封止樹脂140に庇200を固定することもできる。本実施形態においては、図7〜図9に示すように、封止樹脂140とは別部材で平板状の庇200が形成され、封止樹脂140に接着固定されている。そして、この固定状態で、センサチップ110の発熱体形成面116と対向する庇200の対向面が、発熱体形成面116と略平行とされている。
【0048】
このような構成とすると、図9に示すように、センサチップ110の発熱体形成面116、庇200、及び封止樹脂140とによって流体の通路が規定され、流量検出部120(図4参照)上を流れる流体(図中の実線矢印)が層流となる。また、庇200によって、熱式流量センサ100の周囲(例えば吸気管内壁)で生じた乱流が、流量検出部120上に流れるのを抑制することもできる。したがって、乱流による流量検出部120への影響をさらに低減することができる。
【0049】
なお、本実施形態においては、流体の流れ方向における流量検出部120よりも上流側において、図9に示すように、庇200の端部201の外周端と、封止樹脂140の側面被覆部141の外周端とが一致した構成となっている。このような構成とすると、庇200の端部201及び封止樹脂140の側面被覆部141の一方に接触した流体が、庇200の端部201及び封止樹脂140の側面被覆部141の他方に接触しがたいので、これによる乱流の発生を抑制することができる。なお、本実施形態においては、図7〜図9に示すように、庇200の端部201(図7においては符号略)の外周端と封止樹脂140の側面被覆部141の外周端とが完全に一致するように庇200が構成されている。
【0050】
また、本実施形態においては、図9に示すように、庇200の端部201を、封止樹脂140の側面被覆部141同様、発熱体形成面116に垂直な方向における厚さが、側面117から離反する方向に向けて薄くされたテーパ状部位を含み、流線形状とされた構成としている。このような構成とすると、庇200に当たる流体の抵抗を低減し、ひいては乱流を低減することができる。なお、乱流を低減できる構成としては、上記例に限定されるものではなく、それ以外にも、側面117から離反する方向に凸のR形状の部位を含む構成としても良い。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0052】
本実施形態においては、熱式流量センサ100が、センサチップ110とともに回路チップ150を含む例を示した。しかしながら、回路がセンサチップ110に集積化され、回路チップ150を含まない構成としても良い。また、回路が熱式流量センサ100に含まれない構成(外部に回路が設けられた構成)としても良い。
【0053】
本実施形態においては、熱式流量センサ100が、第1支持部材160及び第2支持部材170を含む例を示した。しかしながら、第1支持部材160及び第2支持部材170の少なくとも一方を含まない構成としても良い。また、1つの支持部材にセンサチップ110と回路チップ150が搭載された構成としても良い。また、第1支持部材160及び第2支持部材170の少なくとも一方が、リード130とは別の材料によって構成されても良い。
【0054】
本実施形態においては、半導体基板111の発熱体121,122に対応する領域に、半導体基板111の他領域よりも熱伝導率の低い低熱伝導領域として、空洞部112が形成された例を示した。しかしながら、低熱伝導領域は空洞部112に限定されるものではない。例えば、空洞部112にポーラスシリコンが充填されて低熱伝導領域が構成されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】第1実施形態に係る熱式流量センサの概略構成を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う模式的な断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う模式的な断面図である。
【図4】センサチップにおける流量検出部周辺の拡大平面図である。
【図5】変形例を示す断面図である。
【図6】変形例を示す平面図である。
【図7】第2実施形態に係る熱式流量センサの概略構成を示す平面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿う模式的な断面図である。
【図9】図7のIX−IX線に沿う模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0056】
100・・・熱式流量センサ
110・・・センサチップ
111・・・半導体基板
112・・・空洞部
114・・・薄肉部
116・・・発熱体形成面
120・・・流量検出部
121,122・・・発熱体
130・・・リード
140・・・封止樹脂
141・・・側面被覆部
160・・・第1支持部材(支持部材)
200・・・庇
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成19年1月22日(2007.1.22)
【代理人】 【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行

【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平


【公開番号】 特開2008−175780(P2008−175780A)
【公開日】 平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願番号】 特願2007−11733(P2007−11733)