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【発明の名称】 流れ検出装置
【発明者】 【氏名】真行寺 信義

【氏名】青島 滋

【氏名】大石 安治

【氏名】新川 宏一郎

【要約】 【課題】簡素な構成で感温部の周囲温度に関する情報が得られる流れ検出装置を提供する。

【構成】流体の流れに起因する温度分布の変化に応じて電気抵抗の変化を生じる感温部と、この感温部に給電する電源部と、前記流れに応じた流れ信号を出力する流れ検出部とを有し、前記感温部は前記流れに応じて互いに有意な相関係数の差を生じるように電気抵抗が変化する対をなす部分を含むものであり、前記流れ検出部はこの対の電気抵抗の状態から前記流れを検出する装置であって、特に前記感温部への給電の状態に基づいて前記感温部の温度に応じた温度信号を出力する温度検出部を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流れに起因する温度分布の変化に応じて電気抵抗の変化を生じる感温部と、この感温部に給電する電源部と、前記流れに応じた流れ信号を出力する流れ検出部とを有し、前記感温部は前記流れに応じて互いに有意な相関係数の差を生じるように電気抵抗が変化する対をなす部分を含むものであり、前記流れ検出部はこの対の電気抵抗の状態から前記流れを検出するものである流れ検出装置において、
前記感温部への給電の状態に基づいて前記感温部の温度に応じた温度信号を出力する温度検出部を有することを特徴とする流れ検出装置。
【請求項2】
前記温度検出部は、前記感温部への給電状態を一定の電圧に保つものである請求項1に記載の流れ検出装置。
【請求項3】
前記温度検出部は、
電源端子、反転入力端子、非反転入力端子および出力端子を有し、この出力端子から前記温度信号を出力すると共に前記感温部の給電端に給電する差動増幅器と、
前記差動増幅器の非反転入力端子に基準電圧を供給する基準電圧供給部と、
その一端を前記差動増幅器の出力端子に接続され、他端を前記差動増幅器の反転入力端子および前記感温部の給電端に接続された帰還抵抗器と
を備えることを特徴とする請求項2に記載の流れ検出装置。
【請求項4】
前記感温部は前記流体の流れる流路の内壁近傍に配置されて前記流体に接触するものである請求項3に記載の流れ検出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の流れ検出装置において、
更に前記温度信号を用いて前記流れ信号を補正する補正部を有することを特徴とする流れ検出装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流れを検出するのに好適な流れ検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術を述べる前に、先ず本明細書の表記方法について説明する。ここでは流体の流量と流速とを総称して流れと記す。一般に流量は流路断面積(定数)と流速の積として表されるので、流量と流速は互いに変換可能である。また抵抗素子の名称とその抵抗値とを同一の符号で記す(例えば抵抗素子Ruの抵抗値をRuと記す)。また電位と電圧は区別せず、全て電圧と記す。また何れの図においても、同じ機能を有する構成要素には共通の符号を付す。
【0003】
さて流れ検出装置に用いられるフローセンサチップ1は、図7に示すように、半導体プロセス技術を用いてシリコン基台表面に発熱抵抗素子RHと一対の感温抵抗素子Ru,Rdとを測定対象流体(以下、単に流体という)の流れ方向Fに並置して形成したものである。即ち、発熱抵抗素子RHを挟んで上流側に感温抵抗素子Ruを配置し、下流側に感温抵抗素子Rdを配置する。そして発熱抵抗素子RHと感温抵抗素子Ru,Rdとの熱的な結合状態(感温抵抗素子Ru,Rd近傍の温度分布)が流体の流れによって変化することを利用し、これに伴う上記感温抵抗素子Ru,Rdの抵抗値の変化から前記流体の流れを検出する。尚、発熱抵抗素子RHを持たず、感温抵抗素子Ru,Rdを自己発熱させる構成のフローセンサチップ(図示せず)もある。
【0004】
いずれにせよ、流体の流れが速いほど上流側の感温抵抗素子Ruが冷却され下流側の感温抵抗素子Rdが加熱されて、感温抵抗素子Rd,Ruの対は、流体の流れに応じて互いに逆の相関を呈するように電気抵抗に変化を生じる。例えば温度が高くなるほど電気抵抗が大きくなる金属等の材質で形成された感温抵抗素子の場合、感温抵抗素子Ruの抵抗値が小さくなると共に感温抵抗素子Rdの抵抗値が大きくなる。このような特性を得るために、感温抵抗素子Ru,Rdは特に有意な大きさの、安定した抵抗温度係数(以下、TCRという)を持つ白金、ニクロム、パーマロイ等の材質で形成されており、例えば白金ではTCR=3000[ppm/deg]程度に設定されている。
【0005】
このようなフローセンサチップを用いた流れ検出装置は、例えば図8に示すように2つの感温抵抗素子Ru,Rdを直列接続した感温部2と、2つの基準抵抗素子R1,R2を直列接続した基準電圧部3とを並列接続したブリッジ回路を有する。感温抵抗素子Ru,Rdが流体に接触するように、シリコン基台の表面が流路中に露出して配置される。基準抵抗素子R1,R2は、他の回路部品と共に後述する回路基板8に搭載される。尚、基準抵抗素子R1,R2は、例えば通常の電気回路素子として用いられる抵抗器であり、そのTCRは100[ppm/deg]程度、或いはそれ以下なので、温度による抵抗値の変化を実質的に無視し得る。定電圧供給手段4(電源部)はブリッジ回路の給電端に定電圧Vbを印加する。
【0006】
このとき、基準抵抗素子R1,R2の抵抗値を実質的に一定とみなせば、基準抵抗素子R1,R2の中点の電圧は常に一定の値Vb・R2/(R1+R2)を示すので、これを基準電圧として用いる。一方、感温抵抗素子Ru,Rdの中点の電圧Vc=Vb・Rd/(Ru+Rd)は、流体の流れに応じた感温抵抗素子Ru,Rdの変化を反映する。電圧Vcおよび基準電圧を入力された差動増幅器5(流れ検出部)は、これらの差に応じた電圧信号(流れ信号)を出力する。
【0007】
ところで感温部2を形成する感温抵抗素子Ru,Rdは、流体の流れに応じて抵抗値変化を呈すると共に、これらが置かれた環境の温度からも影響を受けて抵抗値変化を示す。感温抵抗素子Ru,Rdが近接配置されているので、感温部2全体が同じ環境に置かれているものとみなせば、感温部2の置かれた環境の温度(以下、周囲温度という)が流れの検出に影響を与えると言える。上述の例ではTCRの影響によって、例えば図9に実線で示すように周囲温度が高くなるにつれて感度がやや低下する。この現象は高精度の測定を行うときには誤差の要因となる。
【0008】
これに対して発熱抵抗素子RHと基準抵抗素子RRをフローセンサチップ上に設け、これらの各素子RH,RRのそれぞれに直列接続された固定抵抗を用いてブリッジ回路を構成し、このブリッジ回路が平衡化するようにその駆動電圧を制御することで上記発熱抵抗素子RHの発熱量を制御すると共に、該駆動電圧とブリッジ出力電圧とから上記基準抵抗素子RRに加わる周囲温度を算出することが提唱されている(例えば特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2003−106887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで従来、感温部2の置かれた環境の温度が流れの検出に影響を与えるという課題を解決するために、フローセンサチップ上に設けられて周囲温度を検出する基準抵抗素子RRおよびその測定手段を用いている。これに対して発明者等は感温部2の感温抵抗素子Ru,Rdの抵抗値が周囲温度によって変化する点に着目し、この抵抗値から周囲温度に関する情報を求めることに思い至った。即ち、電圧保持部13から感温部2へ供給される電流が周囲温度とは逆の相関を示すので、電圧保持部13と感温部2との間に抵抗器を直列に挿入し、この抵抗器の両端電圧からそこに流れる電流を検出することを試みた。しかしながら抵抗器の両端電圧を測定する手段が新たに必要となるので、前述した従来の構成に対して特段の優位性を主張できるものとはいえない。
【0010】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、簡素な構成で感温部の周囲温度に関する情報を得られる流れ検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するべく本発明に係る流れ検出装置は、流体の流れに起因する温度分布の変化に応じて電気抵抗の変化を生じる感温部と、この感温部に給電する電源部と、前記流れに応じた流れ信号を出力する流れ検出部とを有し、前記感温部は前記流れに応じて互いに有意な相関係数の差を生じるように電気抵抗が変化する対をなす部分を含むものであり、前記流れ検出部はこの対の電気抵抗の状態から前記流れを検出するものであって、特に前記感温部への給電の状態に基づいて前記感温部の温度に応じた温度信号を出力する温度検出部を有することを特徴としている。
【0012】
好ましくは前記温度検出部は、前記感温部への給電状態を一定の電圧に保つように構成される。また或いは前記温度検出部は、(a)電源端子、反転入力端子、非反転入力端子および出力端子を有し、この出力端子から前記温度信号を出力すると共に前記感温部の給電端に給電する差動増幅器と、(b)前記差動増幅器の非反転入力端子に基準電圧を供給する基準電圧供給部と、(c)その一端を前記差動増幅器の出力端子に接続され、他端を前記差動増幅器の反転入力端子および前記感温部の給電端に接続された帰還抵抗器とを備えることを特徴としている。
【0013】
また前記感温部については、前記流体の流れる流路の内壁近傍に配置されて前記流体に接触するように設けることが好ましい。更には上述した構成に加えて前記温度信号を用いて前記流れ信号を補正する補正部を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
上記構成によれば専用の感温抵抗素子を設けることなく感温部の周囲温度に関する情報を得られ、感温部の温度に起因して生じる流れ検出の誤差を補正することが可能な、簡素な構成の流れ検出装置を実現できる。また温度検出部が温度検出機能と電圧保持機能とを兼ね備えるので、装置の構成を単純化を図ることができる。更には単純な構成によって温度検出部が温度検出と電圧保持とを行うので、装置の構成を極めて単純化できる。また感温部を流路内壁近傍に配置したので単純な形状の流路を採用することが可能であり、更に温度検出部の構成も極めて単純であるため流れ検出装置全体の構成を単純化することができる。これによって流れ検出装置を小型化、低廉化することができる。また感温部の温度に起因する流れ検出の誤差を補正した流れ信号を容易に得られる。
【0015】
要するに本発明によれば簡素な構成で感温部の周囲温度に関する情報を得ることが可能な流れ検出装置が提供でき、更には感温部の温度に起因して生じる流れ検出の誤差を補正することが可能な流れ検出装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る流れ検出装置について説明する。
本発明の流れ検出装置が適用される熱式気体流量計の全体構成を図1に示す。金属製の本体6はその中央を貫通する流路7を有し、この流路7の上流側および下流側には外部の配管がそれぞれ連結されており、配管を流れる流体が流路7を通過する。流路7の内壁面には、図7に示すようなフローセンサチップ1が固定されている。本体6に固定された回路基板8には電気回路が形成されており、次の機能ブロックを構成する。
【0017】
即ち、電源部4は、電源端子9、交流直流変換部10、ヒータ駆動部11およびセンサ駆動部12を有する。電源端子9は外部電源からの電力供給線を接続する。交流直流変換部10は外部電源が交流電源の場合に必要とされ、電圧調整用トランス、整流器、平滑化コンデンサ等を用いて交流電力を直流電力に変換し電気回路全体に電力を供給する。この電源部4に直流電力の電圧を一定に保つための定電圧回路が組み込まれることもある。
【0018】
ヒータ駆動部11は発熱抵抗素子RHに供給する電力を調節して発熱抵抗素子RHの発熱を制御する。センサ駆動部12は電圧保持部13を有し、感温部2および基準電圧部3に所定の定電圧を供給する。基準電圧部3は前述した基準抵抗R1,R2を有する。処理部14は流れ検出部5、温度検出部15、補正部16を有する。補正部16は流れ検出部5からの流れ信号を、温度検出部15からの温度信号を用いて補正する。インターフェース部17は外部と処理部との情報を仲介するものであり、例えば処理部14に対する同期信号や演算パラメータの設定信号などの外部入力、流量信号や流量表示などの外部出力を司る。
【0019】
図2を用いて本発明の流れ検出装置の第一の実施形態を説明する。この図2は、流量計の全体構成を示す図1から本発明の流れ検出装置に関する構成要素を抜粋して電気回路図として示したものである。感温部2における感温抵抗素子Ru,Rdの直列接続と基準電圧部3における基準抵抗素子R1,R2の直列接続とは並列接続されてブリッジを構成する。このブリッジは感温抵抗素子Ruと基準抵抗素子R1との接続点を給電端とし、感温抵抗素子Rdと基準抵抗素子R2との接続点を接地端とする。感温抵抗素子Ru,Rdは、互いに同じ材質・形状・電気的特性(抵抗値)を持ち、そのTCRは3000[ppm/deg]程度である。
【0020】
計測対象となる流体の流れに応じて上流側の感温抵抗素子Ruの温度がΔT低下し、下流側の感温抵抗素子Rdの温度がΔT上昇する。これに伴い、前者の抵抗値は3000ΔT[ppm]減少し、後者の抵抗値は3000・ΔT[ppm]増加する。即ち、感温抵抗素子Ru,Rdは、流体の流れに応じて互いに逆の相関を呈するように電気抵抗が変化する対をなしている。また基準抵抗素子R1,R2は、互いに同じ材質・形状・電気的特性(抵抗値)を持つものであり、そのTCRはせいぜい100[ppm/deg]程度であるため、基準抵抗素子R1,R2の各抵抗値は温度の影響を受けず実質的に一定とみなし得る。
【0021】
交流直流変換部10からのブリッジの給電端への給電電圧Vbを常に一定に保つ電圧保持部13と、感温部2の周囲温度に応じた温度信号を検出する温度検出部15とは、一つの差動増幅回路(即ち、差動増幅器201、帰還抵抗素子R3、レファレンス電圧供給手段202)によって実現される。差動増幅器201は一般的なオペアンプであり、大きなゲインを持ち、その入力インピーダンスは大きく、出力インピーダンスは小さい。差動増幅器201の電源入力端子には交流直流変換部10から直流電力が供給される。差動増幅器201の出力端子は、帰還抵抗素子R3を介して、差動増幅器201の反転入力端子および前記ブリッジの給電端に接続されている。差動増幅器201の非反転入力端子にはレファレンス電圧供給手段202からの定電圧Vrが入力されている。レファレンス電圧供給手段202は一般的な定電圧回路であり、例えばツェナーダイオードの降伏電圧を利用する回路や3端子レギュレータと称する市販のIC等を用いて実現される。仮に直流交流変換部10の供給電圧が十分に安定した定電圧であれば、その電圧を適宜に抵抗分割してレファレンス電圧供給手段202として用いても良い。
【0022】
このような差動増幅回路は、作動増幅器201の反転入力端子電圧Vbと非反転入力端子電圧Vrとが等しくなるように出力端子電圧Vtを自動調節する帰還作用を持ち、ブリッジへの給電電圧Vbをレファレンス電圧供給手段の定電圧Vrと等しく保つので、電圧保持部13として機能する。また差動増幅器201の反転入力端子および後述の補正部16はいずれも極めて高い入力インピーダンスを持つので、差動増幅器201の出力電流Iは実質的に全て帰還抵抗素子R3を介してブリッジに流れる。
【0023】
差動増幅器201の出力端子電圧Vtは
Vt=Vr+I・R3
=Vr+[Vr/(Ru+Rd)+Vr/(R1+R2)]・R3
と表される。ここで、Vr,R1.R2,R3はそれぞれ一定であり、感温抵抗素子Ru,Rdの抵抗値は流体の流れおよび感温部2の周囲温度に応じて変化するので、出力端子電圧Vtは流れおよび周囲温度の関数として表すことができる。従って出力端子電圧Vtから流れの影響を除去すれば、出力端子電圧Vtは周囲温度のみを表す温度信号として利用できる。
【0024】
流れの影響を除去する方法として最も容易な方法は、感温抵抗素子Ru,Rdの流れに対するそれぞれの抵抗値変化を逆向きで同じ大きさに設定することである。即ち、流れが生じたとき、感温抵抗素子Ruの抵抗値がΔRf減少すると共に感温抵抗素子Rdの抵抗値がΔRf増加するようにすれば、感温抵抗素子Ru,Rdの直列接続の合成抵抗値は
Ru−ΔRf+Rd+ΔRf=Ru+Rd
となって流れによる抵抗値変化同士が相殺されるので、出力端子電圧Vtは流れの影響を受けない。
【0025】
また感温抵抗素子Ru,Rdの流れによる抵抗値変化どうしが完全には相殺しない場合には、感温抵抗素子Ru,Rdの抵抗値は流体の流れの影響と感温部2の周囲温度の影響を両方とも受ける。しかし予め流れと周囲温度とを様々に変化させながら出力端子電圧Vtを測定し、これらの関係について、例えば図10に示すような補正用のデータを作成しておけば、後述の補正部16において実際の計測時の出力端子電圧Vtから流れの影響を除去することが可能である。このようにして差動増幅回路は前述の電圧保持部13としての機能と共に温度検出部15としても機能する。言い換えれば温度検出部15は、温度検出機能と共に電圧保持機能を有している。
【0026】
流れ検出部5は計装アンプからなる差動増幅器であり、ブリッジの基準抵抗素子R1,R2の中点電圧と感温抵抗素子Ru,Rdの中点電圧とが入力されて、両者の差を流れ信号Vsとして出力する。即ち、基準抵抗素子R1,R2の中点電圧は定電圧Vbを[R1:R2]に抵抗分割した電圧であり、一般的にはVb/2である(R1=R2の場合)。また感温抵抗素子Ru,Rdの中点電圧は定電圧Vbを[Ru:Rd]に抵抗分割した電圧であり、流体の流れが無いときには一般的にはVb/2である(Ru=Rdの場合)。
【0027】
流れによって感温抵抗素子Ru,Rdに抵抗値変化−ΔR,ΔRがそれぞれ発生すると、これらの中点電圧は定電圧Vbを[Ru−ΔR:Rd+ΔR]に抵抗分割した電圧に変化する。ここで感温部2の周囲温度変化により感温抵抗素子Ru,Rdに抵抗値変化ΔRT,ΔRTが発生すると、これらの中点電圧は定電圧Vbを[Ru−ΔR+ΔRT:Rd+ΔR+ΔRT]に抵抗分割した電圧に変化し、周囲温度の変化による誤差を含む。尚、前述した通り、基準抵抗素子R1,R2の各抵抗値は温度の影響を受けず、その中点電圧は変化しない。
【0028】
補正部16は、コンピュータのプログラムによって実現される。即ち、温度検出部15からの温度信号Vtを用いて、流れ検出部5からの流れ信号Vsを補正して、周囲温度による影響を除去する。補正用のデータは、感温部2の周囲温度および流体の流れを様々に変化させて計測した温度信号Vtおよび流れ信号Vsから作成してメモリに記憶させてある。また前述した温度信号Vtを補正するためのデータ(図10)も同様にメモリに記憶させておくことが望ましい。
【0029】
以上のように本発明の第一の実施形態によれば、感温部への給電の状態から感温部の周囲温度に関する情報を得られる。また温度検出機能と電圧保持機能とを兼ねる構成を採るので、装置の構成を単純化できる。更に感温部を流路内壁近傍に配置した単純な形状の流路に本発明の流れ検出装置を適用すれば、温度検出部の構成も極めて単純であるため、流れ検出装置全体の構成を単純化することができる。これによって流れ検出装置を小型化、低廉化することができる。
【0030】
次に図3を用いて本発明の第二の実施形態を説明する。この実施形態は前述の第一の実施形態とはブリッジの構成のみが異なり、その余は同じ構成を採る。即ち、基準抵抗素子R1および感温抵抗素子Ruが一方の直列接続をなし、基準抵抗素子R2および感温抵抗素子Rdが他方の直列接続をなし、これらが並列接続されてブリッジを形成する。給電側に配置された基準抵抗素子R1,R2が基準電圧部303をなし、接地側に配置された感温抵抗素子Ru,Rdが感温部302をなす。基準抵抗素子R1,R2が互いに同じ材質・形状・電気的特性(抵抗値)を持ち、感温抵抗素子Ru,Rdが互いに同じ材質・形状・電気的特性(抵抗値)を持つことが望ましい。
【0031】
この場合、差動増幅器201の出力端子電圧Vtは
Vt=Vr+I・R3
=Vr+[Vr/(R1+Ru)+Vr/(R2+Rd)]・R3
と表される。感温抵抗素子Ru,Rdの抵抗値は流体の流れの影響と感温部2の周囲温度の影響とを両方とも受ける。しかし予め流れと周囲温度とを様々に変化させながら出力端子電圧Vtを測定し、図10に示すような補正用のデータを作成しておけば、前述した補正部16において実際の計測時の出力端子電圧Vtから流れの影響を除去することが可能である。
【0032】
次に図4を用いて本発明の第三の実施形態を説明する。この実施形態は、前述した第一の実施形態とは流れ検出部405の具体的構成および基準電圧部3への給電方法のみが異なり、その余は同じ構成を採る。即ち、流れ検出部405に安価なオペアンプを用い、基準電圧部3への給電をレファレンス電圧供給手段202から行う構成を採る。基準電圧部3への給電をレファレンス電圧供給手段202から行うのは、オペアンプの安定動作を期しての帰還抵抗素子Rfの制約により基準電圧部3の基準抵抗素子R1,R2の抵抗値を比較的小さめに設定する必要があるからである。このとき図2のように基準電圧部3に差動増幅器201の出力端子から帰還抵抗素子R3を介して電流を供給すると、帰還抵抗R3を流れる電流のうち、基準電圧部3に流れる電流が増加し、感温部2に流れる電流の比率が相対的に小さくなって、流れ検出のSN比が悪化してしまう。
【0033】
これを防ぐため、図4のように差動増幅器201の出力端子から帰還抵抗R3を介して感温部3のみに電流を供給するようにしている。この場合、差動増幅器201の出力電圧Vtは
Vt=Vr+I・R3
=Vr+Vr/(Ru+Rd)・R3
と表される。
【0034】
流れの影響を除去する方法として最も容易な方法は、感温抵抗素子Ru,Rdの流れに対する抵抗値変化を逆向きで同じ大きさに設定することである。即ち、流れが生じると感温抵抗素子Ruの抵抗値がΔRf減少すると共に感温抵抗素子Rdの抵抗値がΔRf増加するようにすれば、感温抵抗素子Ru,Rdの直列接続の合成抵抗値は
Ru−ΔRf+Rd+ΔRf=Ru+Rd
となって抵抗値変化同士が相殺するので、出力端子電圧Vtは流れの影響を受けない。
【0035】
また感温抵抗素子Ru,Rdの流れに対する抵抗値変化が相殺しないものである場合、感温抵抗素子Ru,Rdの抵抗値は流体の流れの影響と感温部2の周囲温度の影響を両方とも受ける。しかし予め流れと周囲温度とを様々に変化させながら出力端子電圧Vtを測定して図10に示すような補正用のデータを作成しておけば、前述した補正部16において実際の計測時の出力端子電圧Vtから流れの影響を除去することが可能である。
【0036】
次に図5を用いて本発明の第四の実施形態を説明する。この実施形態は前述の第三の実施形態とはブリッジの構成のみが異なり、その余は同じ構成を採る。即ち、基準抵抗素子R1および感温抵抗素子Ruが一方の直列接続をなし、基準抵抗素子R2および感温抵抗素子Rdが他方の直列接続をなし、これらが並列接続されてブリッジを形成している。給電側に配置された基準抵抗素子R1,R2が基準電圧部503をなし、接地側に配置された感温抵抗素子Ru,Rdが感温部502をなす。基準抵抗素子R1,R2が互いに同じ材質・形状・電気的特性(抵抗値)を持ち、感温抵抗素子Ru,Rdが互いに同じ材質・形状・電気的特性(抵抗値)を持つことが望ましい。
【0037】
ここで差動増幅器201の出力端子電圧Vtは
Vt=Vr+I・R3
=Vr+Vr/(R1+Ru)・R3
と表される。感温抵抗素子Ruの抵抗値は流体の流れの影響と感温部2の周囲温度の影響を両方とも受けるが、前述したように予め流れと周囲温度とを様々に変化させながら出力端子電圧Vtを測定して図10に示すような補正用のデータを作成しておけば、前じ゜ゅつした補正部16において実際の計測時の出力端子電圧Vtから流れの影響を除去することが可能である。
【0038】
次に、図6を用いて本発明の第五の実施形態を説明する。この実施形態は前述の第一の実施形態における電圧供給手段202とは別に、電源供給手段601を加えたものであり、その余は同じ構成を採る。即ち、電源部10から差動増幅器201を介してブリッジへ供給すべき電流が不足する場合(例えば、フローセンサチップ上に発熱抵抗素子RHを有せず、感温抵抗素子Ru,Rdの自己発熱を利用する場合)、別の電源供給手段601から電流制限抵抗素子を介してブリッジの給電端へ電流を供給する。尚、流れ検出機能および温度検出機能は第一の実施形態とほぼ同様であるので、詳述を省略する。
【0039】
上記においては、感温抵抗素子Ru,Rdの抵抗値が流れに対して逆に変化する(Ruが減少すると共にRdが増加する)ものとして説明したが、これに限定されない。例えば流れに応じて抵抗値Ru,Rdが共に増加するが、Ruの変化が小さく、Rdの変化が大きいものであっても構わない。要するに抵抗値RuとRdとが流れに対して同様に変化するものでなく、且つ両者を比較して検出可能なだけの有意な差異が生じる(即ち、有意な相関係数の差を生じる)ものであれば本発明の技術的範囲に属する。
【0040】
尚、上述においては説明を簡単にするために感温部が二つの感温抵抗素子Ru,Rdで構成されているものとしたが、これに限定されるものではない。例えば複数の素子が直列あるいは並列に接続されて一体として感温抵抗素子Ru相当の構成をなし、複数の素子が直列あるいは並列に接続されて一体として感温抵抗素子Rd相当の構成をなすものであっても、これらが電気抵抗変化を呈する対として機能するものであれば本発明の技術的範囲に属する。
【0041】
また本発明は装置の簡素化を旨とするものであるが、本発明にフローセンサチップ上に設けられる周囲温度検出用の感温抵抗素子(特許文献1の基準抵抗RRに相当するもの)を併用することを否定するものではない。即ち、前述の図7に示すフローセンサチップに本発明を適用すると共に周囲温度検出用の感温抵抗素子を用いれば、感温部の周囲温度の情報を感温抵抗素子Ru,Rdから得ると共に、感温部から離れた位置の周囲温度の情報を周囲温度検出用の感温抵抗素子から得ることができる。これにより更に安定した測定を行うべく、二つの周囲温度の差が最も小さくなるようなフローセンサチップの設置位置を見出したり、より高精度な測定を行うために二つの周囲温度情報を用いて測定値を補正したりすることが可能である。このような実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0042】
更に前述の実施形態においては図7に示すようなフローセンサチップを例示して説明したが、流体の流れに応じて電気抵抗が変化する対を備えるものであればこれに限らない。例えば流路から分岐させて設けられた細径のバイパス流路にTCRの大きい金属線を巻きつけて感温抵抗素子を形成した構成のもの(いわゆるキャピラリ・チューブ型)であっても本発明の技術的範囲に属する。
【0043】
要するに本発明の主旨を損なわずになされた種々の変形は、依然として本発明の技術的範囲に属するものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る流れ検出装置を適用した熱式流量計の全体構成図。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る流れ検出装置の構成図。
【図3】本発明の第二の実施形態に係る流れ検出装置の構成図。
【図4】本発明の第三の実施形態に係る流れ検出装置の構成図。
【図5】本発明の第四の実施形態に係る流れ検出装置の構成図。
【図6】本発明の第五の実施形態に係る流れ検出装置の構成図。
【図7】フローセンサチップの概略構成を模式的に示す斜視図。
【図8】従来の流れ検出装置の構成図。
【図9】温度と感度の関係を示す図。
【図10】温度と温度信号の関係を示す図。
【符号の説明】
【0045】
1 フローセンサチップ
2 感温部
3 基準電圧部
4 電源部
5 流れ検出部
6 本体
7 流路
8 回路基板
9 電源端子
10 交流直流変換部
11 ヒータ駆動部
12 センサ駆動部
13 電圧保持部
14 処理部
15 温度検出部
16 補正部
17 インターフェース部
201 差動増幅器
202 レファレンス電圧供給手段
302 感温部
303 基準電圧部
405 流れ検出部
502 感温部
503 基準電圧部
601 電源供給手段
【出願人】 【識別番号】000006666
【氏名又は名称】株式会社山武
【出願日】 平成18年6月21日(2006.6.21)
【代理人】 【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二

【識別番号】100116447
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 純一


【公開番号】 特開2008−2887(P2008−2887A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−171393(P2006−171393)