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【発明の名称】 絶対値エンコーダ装置
【発明者】 【氏名】有永 雄司

【要約】 【課題】主電源が切れた場合において、外部から電力供給しなくても多回転量を検出保持でき、多回転量検出に機械的接触部を持たない信頼性の高い絶対値エンコーダ装置を提供する。

【構成】回転ディスク5の平面方向に2極着磁した永久磁石7を、回転ディスク5上に搭載する。回路基板19上に、大バルクハウゼン効果を有する磁性ワイヤ2aとその回りにコイル2bを巻いた発電装置2が搭載する。主電源が遮断された場合、大バルクハウゼン効果によってコイルに発電された電圧を使って、磁気センサ8a、8b、比較器9a、9bおよび図示しない多回転検出演算処理器を動作させて多回転量をカウントする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の一回転内の絶対位置を検出する絶対位置検出器と、多回転を検出する多回転検出器とを備えた絶対値エンコーダにおいて、
前記多回転検出器は、前記回転軸の先端に設けられた永久磁石と、
大バルクハウゼン効果をもつ磁性ワイヤ及びコイルから構成され前記永久磁石の磁界を検出できる位置に設けられた発電装置と、
を備え、
外部電源遮断時に前記発電装置から発電された電圧によって、前記多回転検出器の電源をバックアップすることを特徴とする絶対値エンコーダ装置。
【請求項2】
前記多回転検出器は、位相差を有する2つのパルス信号を出力する磁界検出センサを備え、
前記発電装置の発電中に前記2つのパルス信号のどちらか一方がハイまたはローに変化するよう前記磁界検出センサを配置したことを特徴とする請求項1記載の絶対値エンコーダ装置。
【請求項3】
回転軸の一回転内の絶対位置を検出する絶対位置検出器と、多回転を検出する多回転検出器とを備えた絶対値エンコーダにおいて、
前記多回転検出器は、前記回転軸の先端に設けられた永久磁石と、
大バルクハウゼン効果をもつ磁性ワイヤ及びコイルから構成され、前記永久磁石の磁界を検出し発電電圧が互いに位相差を持つ位置に設けられた2個の発電装置と、
を備え、
外部電源遮断時に前記発電装置から発電された電圧によって、前記多回転検出器の電源をバックアップするとともに、前記2つの発電装置からの電圧をカウントすることによって多回転量を検出することを特徴とする絶対値エンコーダ装置。
【請求項4】
前記発電装置と電源切替え装置との間に前記発電装置が発生する過電圧及び逆電圧を阻止する保護回路を設けたことを特徴とする請求項1又は3記載の絶対値エンコーダ装置。
【請求項5】
前記発電装置は、大バルクハウゼン効果を有する複数の磁性ワイヤをある間隔を置いて並べ、その周辺に誘起電圧を発生するコイルを配置したことを特徴とする請求項1又は3記載の絶対値エンコーダ装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボット、NC工作機械等に用いられるモータの回転位置を検出するエンコーダ装置に関し、特に、1回転以内角度の絶対位置検出に加えて、多回転量を検出する絶対値エンコーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(従来例1)
従来、発電装置により変換された電気エネルギーを用いて多回転量をカウントし且つこのカウントを記憶するカウンタ回路を設けた絶対値エンコーダが開示されている。(特許文献1参照)。
図14は第1従来技術における絶対値エンコーダの部分的な正面図である。また、図15は、図14のA−A線における絶対値エンコーダの本体を含む側面断面図である。
図において、回転体9の先端には2つの爪部21が備えられており、この2つの爪部21の先端は回転軸3の回転に伴って回転するときの同心円上に位置するように構成されている。
【0003】
また、円板スケール5と回転体9との間には、種々の部材を固定するための固定部としての、例えば支持板23がカラー7の右端における外周面より外方に位置して回転体9と干渉しないようにしてエンコーダ1の本体25に取り付けられている。この支持板23の図15において右側面には、回転体9の爪部21の回転軌跡上で爪部21の先端に反発可能な弾性体としての例えば板バネ27が回転体9の周囲に位置して弾性体保持部29を介して設けられている。
【0004】
板バネ27の先端側の一面には発電装置31の一部を構成するハンマ33が設けられており、このハンマ33に対向する位置に発電装置31の一部を構成する圧電素子35が設けられている。
【0005】
上記構成により、回転軸3及び回転体9が図14の矢印の方向に回転すると、爪部21の先端が板バネ27の先端に引っ掛かった状態で反発して板バネ27を図14の2点鎖線に示されるように圧電素子35と反対側の方向に反らせることにより、板バネ27には反発力が蓄積される。さらに回転体9が回転すると、爪部21の先端が板バネ27の先端から弾かれるように外れるので、板バネ27が上記の蓄積された反発力により移動して板バネ27のハンマ33が圧電素子35に激突する。このときに生じる圧電素子35に与える衝撃力が板バネ27の移動エネルギー(運動エネルギー)が圧電素子35により電気エネルギーに変換され、発電が行われる。
【0006】
なお、上記の弾性体保持部29は板バネ27の基部側を支持板23に固定するための単なるブラケットでも構わない。しかし、エンコーダ1に通電されるときは後述されるカウンタ回路37に主電源が入っているので、本実施の形態の発電装置31としての圧電素子35によって発電される必要がないのであるが、板バネ27が上記のブラケットに取り付けられている場合は、常時回転体9の爪部21により弾かれて板バネ27のハンマ33により圧電素子35が何千回も何万回も叩かれることになる。そのために、板バネ27の先端部、ハンマ33、圧電素子35などの装置の寿命が短くなることになる。
【0007】
これを回避するためにエンコーダ1への通電時の状態においては、エンコーダ1の回転軸3が外部からの何らかの力により回転しても板バネ27が爪部21に引っ掛からない位置へ退避するような構成とし、板バネ27の先端部、ハンマ33、圧電素子35が作動しないので、装置の寿命が長くなる。
【0008】
図16は第1従来技術における電子回路部のブロック図である。
エンコーダ1には制御装置としての例えば電子回路部53が設けられており、圧電素子35で発電された電力を充電する蓄電回路55が設けられており、この蓄電回路55に充電された電荷をカウンタ回路37に給電する平滑回路57が設けられている。
【0009】
カウンタ回路37は、リセット部59とカウンタロジック部61と不揮発メモリ部63から構成されている。リセット部59は、カウンタロジック部61を初期化せしめるもので、カウンタロジック部61は、不揮発メモリ部63のメモリを読み出した後に新たなカウント値を計算し、この計算値を不揮発メモリ部63に入力せしめるものである。不揮発メモリ部63は、カウンタロジック部61からの入力値を記憶するもので電源を不要とする。
【0010】
上記の平滑回路57を経てカウンタ回路37に電力が供給されると、まずカウンタロジック部61がリセット部59の作動により初期化される。次に、このカウンタロジック部61では、不揮発メモリ部63に記憶されている現在の多回転量値が読み出される。次に、多回転量値がカウンタロジック部61により+1あるいは−1にされて新たなカウント値が計算される。この計算された新たなカウント値はカウンタロジック部61から不揮発メモリ部63へ書き戻され記憶される。
【0011】
このように、第1従来技術の絶対値エンコーダは、回転軸に装着され回転する回転体の先端に爪部を設け、この爪部の回転軌跡上における固定部の一部に弾性体を設け、爪部に弾かれて蓄積される弾性体の反発力により生じる弾性体の移動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電装置を設け、この発電装置により変換された電気エネルギーを用いて多回転量をカウントし且つこのカウント量を記憶するカウンタ回路を設けることによって多回転量を検出していた。
【0012】
(従来例2)
従来例2として、大バルクハウゼン効果を利用したエンコーダが開示されている。(特許文献2参照)。
図17は、第2従来技術におけるエンコーダの検出部構成と出力信号波形を示した図である。
図17(a)において、磁石200、300は回転体1の回転軸0−0を中心とした回転円上に磁極N、Sを互いに磁極が反対となるように埋め込まれ、磁石200、300の回転円上から所定距離を隔てて面直角にセンサ400、500が設置されている。
センサ400、500は、磁石200、300に対し前記回転円の円周方向に位相差相当の距離差をもって設置され、例えば、アモルファス金属線まわりにコイルを巻回したもので、回転体1の回転に伴ってセンサ400、500に交差する磁束変化に応じて発生するバルクハウゼンジャンプを利用して、図17(b)に示す位相差φを有する信号PA 、PB が得られる。信号PA、PBは正・負を交互に繰り返す微分波で、この微分波の立上り,立下りでトリガされて所定のパルス幅のパルスが生じ、図17(c)に示す時間差△Tの位相時間差をもった正逆回転検出用のA、Bパルスが得られるものである。
【0013】
このように、第2従来技術のエンコーダは、バルクハウゼンジャンプを利用したセンサを用いて、正逆回転検出用のA、Bパルスを得ていた。
(従来例3)
【0014】
従来例3として、大バルクハウゼン効果を利用したエンコーダの他の例が開示されている。(特許文献3参照)。
図18は、第3従来技術におけるエンコーダの検出部構成を示す斜視図である。
図18において、永久磁石230は、略円柱状に形成され、所定の回転方向に回転する回転板200に接合されて取り付けられている。この永久磁石230は、その回転板200との接合面側がS極に、反対面側がN極に着磁されているので、内部を貫通する磁束Φが回転板200に直交するようになっている。
【0015】
センサコイル220は、バルクハウゼン効果を有するアモルファス磁性体製の鉄芯210にコイル線220が巻回されてなるものであって、鉄芯210の軸方向が回転板200の回転方向に沿うよう、詳しくは、回転方向に接する接線方向となるよう配設されている。
【0016】
次に、この動作を図19(a)及び(b)に基づいて以下に説明する。
同図(a) の状態では、永久磁石230は、センサコイル220の一端220a側に位置しており、永久磁石230から発せられた磁束Φは、センサコイル220の一端220a側から他端220b側へと鉄芯210を通過する。ここで、回転板200が所定の方向に回転して、同図(b)の状態になると、永久磁石230は、センサコイル220の他端220b側に位置しており、永久磁石230から発せられた磁束Φは、センサコイル220の他端220b側から一端220a側へと鉄芯210を通過する。このように、センサコイル220の鉄芯210を通る磁束Φの方向は、永久磁石230が回転板200と共に回転したときに逆転するので、この逆転に応じて、コイル線220の両端間にパルス信号が出力され、このパルス信号に基づいて、回転板200の回転状態が検出される。
【0017】
このように、第3従来技術のエンコーダは、回転板に永久磁石取り付け、バルクハウゼン効果を有するアモルファス磁性体製の鉄芯にコイル線が巻回したセンサを用いて、鉄芯の軸方向が回転方向に沿うよう配設し、永久磁石が回転板と共に回転したときに、センサコイルの鉄芯を通る磁束Φの方向が逆転するのに応じて発生するコイル線の両端間のパルス信号に基づいて、回転板の回転状態を検出していた。
【特許文献1】特開2002−131087号公報
【特許文献2】特開平10−267951号公報
【特許文献3】特開2000−161989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従来例1に示した絶対値エンコーダでは、爪部と板バネの接触部があるため、壊れる恐れがあり、信頼性に問題がある。また高速回転時に電源が切れた場合、爪部と板バネ部の接触が行なわれる前に回転する可能性があるため多回転量を誤検出する可能性がある。
また、従来例2、3に示したバルクハウゼン効果を用いたエンコーダでは、回転軸の回転方向や回転速度は検出できるが、回転軸の多回転量を含む回転角度の絶対値を検出することはできないという問題があった。
【0019】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、主電源が切れた場合において、外部から電力供給しなくても多回転量を検出保持でき、多回転量検出に機械的接触部を持たない信頼性の高い絶対値エンコーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
請求項1に記載の発明は、回転軸の一回転内の絶対位置を検出する絶対位置検出器と、多回転を検出する多回転検出器とを備えた絶対値エンコーダにおいて、前記多回転検出器は、前記回転軸の先端に設けられた永久磁石と、大バルクハウゼン効果をもつ磁性ワイヤ及びコイルから構成され前記永久磁石の磁界を検出できる位置に設けられた発電装置を備え、外部電源遮断時に前記発電装置から発電された電圧によって、前記多回転検出器の電源をバックアップすることを特徴としている。
請求項2に記載の発明は、前記多回転検出器は、位相差を有する2つのパルス信号を出力する磁界検出センサを備え、前記発電装置の発電中に前記2つのパルス信号のどちらか一方がハイまたはローに変化するよう前記磁界検出センサを配置したことを特徴している。
請求項3に記載の発明は、回転軸の一回転内の絶対位置を検出する絶対位置検出器と、多回転を検出する多回転検出器とを備えた絶対値エンコーダにおいて、前記多回転検出器は、前記回転軸の先端に設けられた永久磁石と、大バルクハウゼン効果をもつ磁性ワイヤ及びコイルから構成され、前記永久磁石の磁界を検出し発電電圧が互いに位相差を持つ位置に設けられた2個の発電装置を備え、外部電源遮断時に前記発電装置から発電された電圧によって、前記多回転検出器の電源をバックアップするとともに、前記2つの発電装置からの電圧をカウントすることによって多回転量を検出することを特徴するものである。
請求項4に記載の発明は、前記発電装置と電源切替え装置との間に前記発電装置が発生する過電圧及び逆電圧を阻止する保護回路を設けたことを特徴としている。
請求項5に記載の発明は、前記発電装置は大バルクハウゼン効果を有する複数の磁性ワイヤをある間隔を置いて並べ、その周辺に誘起電圧を発生するコイルを配置したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の発明によると、外部電源遮断時に、大バルクハウゼン効果をもつ磁性ワイヤ及びコイルからなる発電装置によって、多回転検出器の電源をバックアップするので、主電源が切れた場合でも外部から電力供給せずに多回転量を検出保持でき、また、接触する部品がないので機械的な損傷の恐れがなく、信頼性の高い絶対値エンコーダ装置を提供することができる。
また、請求項2に記載の発明によると、発電装置の発電中に、磁界検出センサからの検出信号を整形した2つのパルス信号のどちらか一方がハイまたはローに変化するよう磁界検出センサを配置すれば、発電中に回転軸の回転変位および回転方向を検出できるので、多回転量のカウントミスを防ぐことができ、信頼性の高い絶対値エンコーダ装置を提供することができる。
また、請求項3に記載の発明によると、外部電源遮断時に、大バルクハウゼン効果をもつ磁性ワイヤ及びコイルからなる発電装置によって、多回転検出器の電源をバックアップするので、主電源が切れた場合でも外部から電力供給せずに多回転量を検出保持でき、接触する部品がないので機械的な損傷の恐れがなく、さらに、多回転検出を2個の発電装置の発電電圧を用いるので、多回転検出用センサを無くすことができ部品点数を減らすことができる。
また、請求項4に記載の発明によると、発電装置と電源切替え装置との間に発電装置が発生する過電圧及び逆電圧を阻止する保護回路を設ければ、過電圧及び負電圧から電源切替え装置を保護でき、信頼性の高い絶対値エンコーダ装置を提供することができる。
また、請求項5に記載の発明によると、大バルクハウゼン効果を有する複数の磁性ワイヤをある間隔を置いて並べ、その周辺に誘起電圧を発生するコイルを配置すれば、発電装置の発電時間を長くすることができるので、多回転検出の確実な検出および処理回路の動作が確実に行なわれ絶対値信号データの信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の第1実施例における絶対値エンコーダ装置の構成を示す側断面図である。
図1において、1は絶対値エンコーダ、2は発電装置、3は回転シャフト、4は回転シャフトに対して固定されたエンコーダステータ、5は回転シャフトに固定された回転ディスク、6は回転シャフトを支持するベアリング、7は多回転検出のための回転ディスク上に配置された永久磁石、8a、8bは多回転検出のための磁界検出センサ、9a、9bは前記磁界検出センサからの信号をパルス信号に変換する比較器、15はシャフト1回転内の絶対値を検出するために回転シャフトに光を照射するLEDやレーザなどの光源、17は光源15によって照射され、回転ディスクを透過した光を受光し、電気信号に変換する受光素子で、図示していないが、受光素子表面にはスリットを配置した固定スリットが配置されている。また、19は回路基板であり、8a、8bや9a、9b、さらに17等のセンサや発電装置および信号処理回路や上位とのデータ送受信および電源供給用ケーブル等を搭載している。
【0024】
1回転内の絶対値は、回転ディスク5上にグレイコードの透光、遮光のスリットパターンを蒸着して形成し、そのパターンを通過した光をフォトダイオード17で電気信号に変換し、図3のブロック図にある1回転絶対値演算処理器19dで演算処理することにより求められる。
スリットパターンについてはいくつかの方法があり、グレイコードの他に1トラックにランダムパターンを形成したものやバーニヤパターンを形成したものがある。
【0025】
多回転量は、回転ディスク5の光が照射されない位置に多回転検出用の永久磁石7を接着などの方法により固定し、永久磁石7の周辺に永久磁石7に対向してこの磁界を検出する磁界検出センサ8a、8bを配置し、この信号により検出するものである。
永久磁石7は、回転ディスク5の平面方向に2極着磁されている。この磁石の材質としてはネオジウム系磁石などの比較的磁力の強い磁石が好ましく、磁界は発電装置2の近辺で数十Oeくらいになるようにしている。
【0026】
磁界検出センサ8aと8bは、約90度位相差の検出波形が得られる相対位置に配置されてる。この磁界検出センサは回路基板19にリードを直接ハンダ付されて接続されるかあるいはリード線で接続される。磁界検出センサ8a、8bの出力信号はアナログ信号であるのでこれを比較器などでパルス信号に変換している。磁界検出センサはホールICなどのように1パッケージの中にアナログパルス変換処理が組み込まれたものを使ってパルス信号を出力しても良い。パルス信号は図3に示す多回転検出演算処理器19bに入力され多回転量をカウントする。
【0027】
発電装置2は、回路基板19上の永久磁石7の磁界が数十Oeくらいになる位置に搭載される。発電装置2は大バルクハウゼン効果を有する磁性ワイヤ2aとその回りにコイル2bを巻いたもので、大バルクハウゼン効果による急峻な磁壁移動により磁性ワイヤ2aの磁化が反転し、その磁化の反転によりコイルに誘起電圧が発生するようになっている。
主電源OFFの場合は、発電装置2によって発電された電圧を使って、磁気センサ8a、8b、比較器9a、9bおよび多回転検出演算処理器19bを動作させて多回転量をカウントする。
【0028】
図2は、発電装置2からの電圧と外部からの電圧とを選択する電源切替え装置の動作を示すブロック図である。
電源切替え器19aは、発電装置2のコイル2bに発生する誘起電圧と主電源を切り替えるもので、主電源がONの場合は、電源切替え器19aが発電装置2のコイル2bに発生する誘起電圧を遮断し、主電源から、多回転量を検出するセンサ及び回路への電源(Vc)が出力される。主電源OFFの場合は、主電源が遮断され、発電装置2のコイル2bに発生する誘起電圧が遮断されずにそのままVcとして出力される。
【0029】
このとき主電源が切れたことを検出し、電源切替え器19aの動作電圧範囲以下に主電源が落ちる前に主電源OFF検出信号を多回転演算処理器19bに送信する機能を有している。
【0030】
図3は、第1実施例における絶対値信号処理を示すブロック図である。
磁界検出センサ8aと8bの検出信号は比較器9a、9bでパルス信号に変換されて、多回転検出演算処理器19bに入力される。
多回転量をカウントするために必要な磁界検出センサ8aと8b、比較器9aと9b、多回転検出演算処理器19b、多回転量カウント値記憶装置19cの電源はVcに接続され、その他の処理器である1回転絶対値演算処理器19d、絶対値演算処理器19eは、主電源電圧Vmainに接続されている。
【0031】
先ず、通常の主電源ON及び主電源OFFのときの動作について説明する。
主電源ONのとき、多回転検出演算処理器19bは、多回転量カウント値記憶装置19cから多回転量カウント値データを読み込み、比較器9a、9bからのパルス信号を用いて多回転量をカウントする。なお、このとき比較器9a、9bからのパルス信号を使わずに1回転絶対値信号がゼロ位置になったときに多回転量カウント値を増減しても良い。
【0032】
主電源がOFFするときにはそれまで多回転検出演算処理器19bで保持していた多回転量カウント値を多回転量カウント値記憶装置19cに記憶させる。
【0033】
絶対値演算処理器19eは、主電源ON時に多回転検出演算処理器19bからの多回転量カウント値と1回転絶対値演算処理器19dの絶対値とを組み合わせて多回転量を含む絶対値信号を生成して上位コントローラへ送信する。
【0034】
次に、主電源OFF状態において、回転シャフト3が外力により回されたときの動作について説明する。
この場合は、永久磁石のある回転位置で発電装置2の磁性ワイヤ2aに大バルクハウゼン効果により、コイル2bに発生した誘起電圧が、Vcとして、磁界検出センサ8aと8b、比較器9aと9b、多回転検出演算処理器19b、多回転量カウント値記憶装置19cに印加される。
【0035】
次に多回転検出演算処理器19bは、磁界検出センサ8aと8bの検出信号が比較器9a、9bで変換されたパルス信号を読み込み、多回転量カウント値の増減を検出してカウント値を更新し、この更新したカウント値を多回転検出演算処理器19bから多回転量カウント値記憶装置19cに記憶させる。
【0036】
図4は、本発明の第1実施例における発電装置の信号タイミング図である。
図4において、A相信号は、図3に示す磁界検出センサ8aの出力信号が比較器9aでパルス信号に変換された信号で、B相信号は、図3に示す磁界検出センサ8bの出力信号が比較器9bでパルス信号に変換された信号である。シャフト3がある回転方向に回転した場合、A相信号とB相信号は、約90度の位相差を持つ1回転に1周期のパルス信号が出力されるように磁界検出センサ8a、8bを回路基板19に実装している。ここで信号の位相差は約90度としているが、A相、B相の立ち上がりおよび立ち下がりに位相差があればよい。
【0037】
本実施例では、多回転量のカウント値の増減を確実にカウントするために、発電装置2の発電電圧によって、Vcを供給できる期間に、多回転量カウント値が更新されるB相パルス信号のエッジが、A相信号がハイ(またはロー)のときにローからハイ(またはハイからロー)に変化する位置になるように磁界検出センサ8a、8bを配置している。これにより発電装置2が発電する間にのみ多回転量のカウント値が変化するので、発電装置が発電していない間に多回転量を更新するエッジ変化が発生することがなく、確実に多回転量カウント値を更新することができる。ここで、A相、B相の信号を入れ替えても問題ないことは明らかである。
【実施例2】
【0038】
図5は、本発明の第2実施例の構成を示す側断面図である。
図5において、201、202は発電装置で、本発明の第1の実施例との違いは、発電装置を2つ配置したことである。この2つの発電装置201、202は、発電装置の機能の他に磁界検出センサの機能としても動作させて、前記磁界検出センサ8a、8bを削除することができる。
図6は、本発明の第2実施例の構成を示す発電装置2側から見た正面図である。発電装置201、202は、回路基板19上に90°の角度間隔を置いて配置されている。永久磁石は円形の2極着磁で示されているが、長方形の2極着磁品でも同じ効果が得られる。
【0039】
次に、動作について説明する。
図7は本発明の第2実施例の動作を示すブロック図である。
電源切替え器19aは、発電装置201のコイル201bに発生する誘起電圧および発電装置202のコイル202bに発生する誘起電圧と主電源を切り替えるもので、主電源がONの場合は、コイル201bおよびコイル202bに発生する誘起電圧を遮断し、主電源がVcとして出力される。主電源OFFの場合は、主電源が遮断され、コイル201bおよびコイル202bに発生する誘起電圧が遮断されずにそのままVcとして出力される。
【0040】
さらに、発電装置201のコイル201bに発生する誘起電圧および発電装置202のコイル202bに発生する誘起電圧は、磁界検出信号として使用される。発電電圧は、多回転検出演算処理器19bの入力信号電圧仕様に合うように波形整形器9c、9dで整形され、それぞれA相、B相パルス信号となる。
【0041】
また、電源切替え器19aは、主電源が切れたことを検出し、電源切替え器19aの動作電圧範囲以下に主電源が落ちる前に主電源OFF検出信号を多回転演算処理器19bに送信する機能を有している。また、主電源が、電源切替え器19aが動作する電圧範囲以下になる時間を長くするため、コンデンサで電荷をチャージできるようにするか、主電源にそのような機能を有している。
【0042】
図8は、第2実施例における絶対値信号処理を示すブロック図である。
多回転量をカウントするために必要な波形整形器9b、9c、多回転検出演算処理器19b、多回転量カウント値記憶装置19cの電源はVcに接続され、その他の処理器である1回転絶対値演算処理器19d、絶対値演算処理器19eは、主電源電圧Vmainに接続されている。
【0043】
主電源ONのとき、発電装置201、202からの磁界検出信号は波形整形器9c、9dを通過してそれぞれA相、B相パルス信号として、多回転検出演算処理器19bに入力し、多回転検出演算処理器19bは、多回転量カウント値記憶装置19cから多回転量カウント値データを読み込み、波形整形器9c、9dから多回転量をカウントするものである。なお、このとき波形整形器9c、9dからのパルス信号を使わずに1回転絶対値信号がゼロ位置になったときに多回転量カウント値を増減しても良い。
【0044】
主電源がOFFするときにはそれまで多回転検出演算処理器19bで保持していた多回転量カウント値を多回転量カウント値記憶装置19cに記憶させる。電源切替え器19a内部にコンデンサで電荷をチャージできるようにしているので、多回転量のカウント値を多回転量カウント値記憶装置19cに記憶させる時間まで、多回転検出演算処理器19b、多回転量カウント値記憶装置19cが動作する電圧を保持することができる。
【0045】
絶対値演算処理器19eは、主電源ON時に多回転検出演算処理器19bからの多回転量カウント値と1回転絶対値演算処理器19dの絶対値とを組み合わせて多回転量を含む絶対値信号を生成して上位コントローラへ送信する。
【0046】
次に、主電源OFF状態において、回転シャフト3が外力により回されたときの動作について説明する。
この場合は、永久磁石のある回転位置で発電装置201、202の磁性ワイヤ201a、202aの大バルクハウゼン効果により、コイル201b、202bに発生した誘起電圧が、Vcとして、波形整形器9c、9d、多回転検出演算処理器19b、多回転量カウント値記憶装置19cに印加される。
【0047】
多回転検出演算処理器19bは、波形整形器9c、9dからのパルス信号を読み込み、多回転量カウント値の増減を検出してカウント値を更新し、この更新したカウント値を多回転量カウント値記憶装置19cに記憶させる。
【0048】
図9は、本発明の第2実施例における発電装置の主電源OFF時のA相、B相、Vcのタイミング図である。
ここで、A相は発電装置201から波形整形器9cを通ったパルス波形、B相は発電装置202から波形整形器9dを通ったパルス波形、Vcは発電装置201、202から電源切替え器19aを通った電圧波形で、各信号が左から右に変化した場合に多回転量カウント値が増加するものとしている。
【0049】
A相がローでかつB相がハイのとき多回転量カウント値を更新するとした場合、まずVc電圧が発生し、このときA相がハイ、B相がローの場合は、カウント値は変化しない。次にVc電圧が発生し、A相がローでB相がハイのとき多回転量カウント値は1つアップする。ここで、Vc電圧が発生した場合は常にA相、B相の状態を前記データ記憶装置19cに記憶しておく。
【0050】
このようにすることで、多回転量の増減を判断することができ、例えば、主電源ONからOFFになったときに記憶したA相、B相の状態が、A相がハイ、B相がローであったとすると、次にVc電圧が発生し、A相がロー、B相がハイであれば多回転量カウント値は1つ増加する。もし、記憶した状態と同じA相がハイ、B相がローの場合は次にA相がロー、B相がハイになったときに多回転量カウント値は1つ減少する。
【0051】
すなわち、Vc電圧が発生したときA相、B相パルスの状態が前回と同じであればそれまで多回転量カウント数が増加であれば減少に、またはそれまで多回転量カウント数が減少であれば増加になるようにしている。A相、B相パルスの状態が前回と異なれば、多回転量カウント数の増減状態は前のままである。このようにすることにより、多回転量カウンタ値の増減を間違いなく確実に検出することができる。
【実施例3】
【0052】
図10(a)は、本発明の第3実施例を示す発電装置および電源切替え器周辺のブロック図である。
本実施例の特徴は、発電装置2と電源切替え器19aとの間に保護回路19fを設けたことである。
発電装置2は、図10(b)に示すように発電電圧は0Vを中心に+電圧と−電圧(負電圧)が発生する。多回転演算処理器19b、多回転量カウント値記憶装置19cはデジタルICで構成されることが多く、デジタルICでは、一般に0−3.3V、0−5V電源で動作する。これらのICを動作させるために、保護回路で負電圧がVcに加わらないようにしている。具体的にはダイオード等で負電圧が電源切替え器19aに加わらないようにしている。
【0053】
図11は、本発明の第3実施例を本発明の第2実施例に引用した発電装置および電源切替え器周辺のブロック図である。この場合、負電圧がVcに加わらないようにし、且つ波形整形器9c、9dにも負電圧信号が入力されないように保護している。
【実施例4】
【0054】
図12は、本発明の第4実施例を示す発電装置の構成図である。
図において210cは、磁性ワイヤを搭載する基板である。この基板上に大バルクハウゼン効果を有する磁性ワイヤ210a、211aをある間隔dで配置している。図12(a)と図12(b)の違いは、図12(b)ではさらにコイル210bの周辺にコイル211bが巻き付けられている点である。
発電装置2および201、202は、大バルクハウゼン効果を有する磁性ワイヤの周辺にコイルを巻いたものである。この場合、多回転量をカウントし記憶する時間および各処理器を駆動する電源容量(電力)に問題が発生する可能性がある。この問題を解決する方策として、発電時間を長くする方法が本実施例である。
【0055】
次に、動作について説明する。
図13は、本実施例における発電装置の発電電圧のグラフである。
図13(a)は、図12(a)の発電装置に対応した発電電圧のグラフで、永久磁石が等速で回転したときの発電電圧を示す。図にしめすように、磁性ワイヤ210a、211aをある間隔dで配置することによって発電時間を長くすることができる。なお、この間隔は、図に示すように発電電圧が重なる間隔とすることが望ましい。
図13(b)は、図12(b)の発電装置に対応した発電電圧のグラフで、コイル210bの周辺にさらにコイル211bが巻き付けることによって、発電電圧を図のように大きくすることができ、電圧が大きくすることにより電圧が下がるまでの時間を長くすることができる。
【0056】
このように、本発明では大バルクハウゼン効果を有する磁性コイルとその回りに巻いたコイルを発電装置として用い、多回転検出器にバックアップ電源を供給しているので、非接触で電源を供給でき、絶対値エンコーダ装置の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1実施例を示す絶対値エンコーダ装置の側断面図
【図2】本発明の第1実施例の電源切替え装置動作を示すブロック図
【図3】本発明の第1実施例の絶対値信号処理を示すブロック図
【図4】本発明の第1実施例における発電装置の信号タイミング図
【図5】本発明の第2実施例の構成を示す側断面図
【図6】本発明の第2実施例の構成を示す正面図
【図7】本発明の第2実施例の動作を示すブロック図
【図8】本発明の第2実施例における絶対値信号処理を示すブロック図
【図9】本発明の第2実施例における発電装置の主電源OFF時のA相、B相、Vcのタイミング図
【図10】本発明の第3実施例を示す発電装置および電源切替え器周辺のブロック図
【図11】本発明の第3実施例を本発明の第2実施例に引用した発電装置および電源切替え器周辺のブロック図
【図12】本発明の第4実施例を示す発電装置の構成図
【図13】本発明の第4実施例における発電電圧を示すグラフ
【図14】第1従来技術における絶対値エンコーダの部分的な正面図
【図15】図12のA−A線における絶対値エンコーダの本体を含む側面断面図
【図16】第1従来技術における電子回路部のブロック図
【図17】第2従来技術におけるエンコーダの検出部構成と出力信号波形を示した図
【図18】第3従来技術におけるエンコーダの検出部構成を示す斜視図
【図19】第3従来技術におけるエンコーダの動作説明図
【符号の説明】
【0058】
1 絶対値エンコーダ装置
2、201、202 発電装置
2a、201a、202a、210a、211a 磁性ワイヤ
2b、201b、202b 210b、211b コイル
3 シャフト
4 エンコーダステータ
5 回転ディスク
6 ベアリング
7 永久磁石
8a、8b 磁界検出センサ
9a、9b 比較器
9c、9d 波形整形器
19 回路基板
19a 電源切替え器
19b 多回転検出演算処理器
19c 多回転量カウント値記憶装置
19d 1回転絶対値演算処理器
19e 絶対値演算処理器
19f 保護回路
【出願人】 【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
【出願日】 平成18年7月6日(2006.7.6)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−14799(P2008−14799A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−186368(P2006−186368)