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【発明の名称】 ジャイロセンサモジュールおよび角速度検出方法
【発明者】 【氏名】佐藤 健二
【課題】検出軸の取付角度の変化にかかわらず、検出精度の向上したジャイロセンサモジュールおよび角速度検出方法を提供すること。

【解決手段】センサ出力補正回路32に含まれる第1のオフセット調整回路36および第2のオフセット調整回路37によって、第1角速度ω1および第2角速度ω2から、車両102が停止している時の第1のジャイロセンサ10の出力値B1および第2のジャイロセンサ20の出力値B2を減じることによって、車両102の移動時のより正確な第1角速度ω1”および第2角速度ω2”を得ることができる。また、第1検出軸11と第2検出軸21とのなす角は鋭角θ12で、第1検出軸11と第2検出軸21とで鋭角θ12で挟まれた間の角速度ωを検出できるので、検出軸と被検出軸60とのなす角度が小さくなり、検出精度のよいジャイロセンサモジュール100を得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に取り付けられるナビゲーションシステムに組み込まれるジャイロセンサモジュールであって、
第1検出軸回りの第1角速度ω1を検出し、出力する第1のジャイロセンサと、
前記第1角速度ω1の符号を判定する符号判定回路と、
前記第1検出軸と鋭角である角度θ12で交わる第2検出軸回りの第2角速度ω2を検出し、出力する第2のジャイロセンサと、
前記第1、第2のジャイロセンサの出力を補正するセンサ出力補正回路と、
前記センサ出力補正回路で補正された第1角速度ω1’および第2角速度ω2’を用いて下式によってω’を演算し、前記符号判定回路によって得られた前記第1角速度ω1の符号を前記ω’に乗算し、角速度ωを出力する演算回路とを備え、
ω’=√(ω1’2+SA2
SA=(ω2’−ω1’cosθ12)/sinθ12
前記センサ出力補正回路は、前記ジャイロセンサモジュールが設置されている前記移動体が停止している時の前記第1のジャイロセンサの出力値に対応する補正値B1を前記ω1から減算した値ω1”を出力する第1のオフセット調整回路と、
前記ジャイロセンサモジュールが設置されている前記移動体が停止している時の前記第2のジャイロセンサの出力値に対応する補正値B2を前記ω2から減算した値ω2”を出力する第2のオフセット調整回路とを有し、
前記角速度ωは、前記第1検出軸と前記第2検出軸とがなす面内で、かつ前記第1検出軸と前記第2検出軸とで挟まれた範囲の軸周りの角速度である
ことを特徴とするジャイロセンサモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のジャイロセンサモジュールにおいて、
前記ジャイロセンサモジュールは、
前記演算回路から出力される前記角速度ωを積分して得られる進行方位と前記ナビゲーションシステムの演算で決められた前記移動体の進行方位との誤差Δθを出力する車両位置測定回路と、
前記誤差Δθと前記演算回路から出力される前記角速度ωと前記移動体から出力される車速パルスとから、感度調整信号A1,A2を算出し、出力する調整係数演算回路とを備え、
前記センサ出力補正回路は、前記第1のオフセット調整回路の前記ω1”に前記感度調整信号A1を掛け合わせた値ω1’を出力する第1の感度調整回路と、
前記第2のオフセット調整回路の前記出力ω2”に前記感度調整信号A2を掛け合わせた値ω2’を出力する第2の感度調整回路とを有している
ことを特徴とするジャイロセンサモジュール。
【請求項3】
移動体に取り付けられ、ナビゲーションシステムに組み込まれるジャイロセンサモジュールを用いた角速度検出方法であって、
第1検出軸回りの第1角速度ω1を検出し、
前記第1角速度ω1の符号を判定し、
前記第1検出軸と鋭角である角度θ12で交わる第2検出軸回りの第2角速度ω2を検出し、
前記ジャイロセンサモジュールが設置されている前記移動体が停止している時の前記第1のジャイロセンサの出力値に対応する補正値B1を前記ω1から減算する第1のオフセット調整と、
前記ジャイロセンサモジュールが設置されている移動体が停止している時の前記第2のジャイロセンサの出力値に対応する補正値B2を前記ω2から減算する第2のオフセット調整とを含むセンサ出力補正を行い、
前記センサ出力補正で補正された第1角速度ω1’および第2角速度ω2’を用いて下式によってω’を演算し、前記符号判定回路によって得られた前記第1角速度ω1の符号を前記ω’に乗算し、角速度ωを演算し、
ω’=√(ω1’2+SA2
SA=(ω2’−ω1’cosθ12)/sinθ12
前記第1検出軸と前記第2検出軸とがなす面内で、かつ前記第1検出軸と前記第2検出軸とで挟まれた範囲の軸周りの角速度ωを算出する
ことを特徴とする角速度検出方法。
【請求項4】
請求項3に記載の角速度検出方法であって、
前記角速度ωを積分して得られる進行方位と前記ナビゲーションシステムの演算で決められた前記移動体の進行方位との誤差Δθを算出し、
前記誤差Δθと前記角速度ωとから、感度調整信号A1,A2を算出し、
前記センサ出力補正において、前記第1のオフセット調整後の値ω1”に前記感度調整信号A1を掛け合わせた値ω1’を算出する第1の感度調整と、
前記第2のオフセット調整後の値ω2”に前記感度調整信号A2を掛け合わせた値ω2’を算出する第2の感度調整とを有している
ことを特徴とする角速度検出方法。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の角速度検出方法であって、
前記センサ出力補正は、センサ出力補正回路によって行う
ことを特徴とする角速度検出方法。
【請求項6】
請求項3または請求項4に記載の角速度検出方法であって、
前記センサ出力補正、前記角速度ωの算出、前記誤差Δθの算出または前記感度調整信号A1,A2の算出の処理のうち、1つまたは複数の処理をソフトウェア処理によって行う
ことを特徴とする角速度検出方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、方位角を知るための角速度を検出するジャイロセンサモジュールおよび角速度検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両などに取付けられるナビゲーション装置には、ジャイロセンサが用いられている。ジャイロセンサによって検出された車両が曲がる際の角速度は、車両の方位角を知るために用いられる。ここで、角速度を精度よく検出するには、ジャイロセンサの角速度検出軸と被検出軸を一致させる必要がある。方位角を知るための被検出軸は、地上水平面に対して垂直な軸であり、検出軸と被検出軸とが一致すると、検出感度が向上するためS/N比が向上し、検出精度がよくなる。一方、検出軸と被検出軸とが直行すると、検出感度が低下するためS/N比が低下し、検出精度が低下する。
車両の傾斜角度を検出し、ジャイロセンサの取付面が地上水平面になるようにジャイロセンサの車両に対する取付角度を機械的に調整して、検出軸と被検出軸とを一致させるジャイロセンサの取付角度調整装置が知られている(特許文献1参照)。
また、第1のジャイロセンサの出力と、第1のジャイロセンサの検出軸に直交する検出軸を有する第2のジャイロセンサの出力との2乗和平均によって、路面および取り付けの傾斜角度を求めることなく、鉛直方向の軸回りの角速度を求めるナビゲーションシステムが知られている。また、さらに、制御回路から出力された誤差と、車速信号に基づいてから補正係数を算出し、鉛直方向の軸回りの角速度を補正するナビゲーションシステムが知られている(特許文献2参照)。
また、第1のジャイロセンサと第2のジャイロセンサの出力に基づいて、故障判断を行う多軸ジャイロセンサが知られている(特許文献3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−153658号公報(3頁〜5頁、図1および図2)
【特許文献2】特開2002−213959号公報(8頁、段落番号[0067]および段落番号[0068])
【特許文献3】特開2004−286529号公報(要約書)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ジャイロセンサの取付角度を機械的に調整するためには、付帯する調整用部品が必要であり、取付角度を大きく変化させるには、そのためのスペースも必要となる。したがって、検出軸の取付角度の可動範囲にも制約が生じる。また、上り下りなどで検出軸の角度が急激に変化した場合など、機械的な調整では、検出軸と被検出軸とが一致するまで時間を要する。したがって、検出精度の向上も難しい。そこで、特許文献2のように、第1のジャイロセンサの出力と、第1のジャイロセンサの検出軸に直交する検出軸を有する第2のジャイロセンサの出力との2乗和平均によって、路面および取り付けの傾斜角度を求めることなく、鉛直方向の軸回りの角速度を求め、さらに、いわゆる補正係数を用いて精度を向上する発明がなされた。しかし、第1のジャイロセンサおよび第2のジャイロセンサそれぞれのオフセット処理がなされていないことに起因する検出誤差が生じていることを本発明者は見出した。
本発明の目的は、検出軸の取付角度の変化にかかわらず、検出精度の向上したジャイロセンサモジュールおよび角速度検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のジャイロセンサモジュールは、移動体に取り付けられるナビゲーションシステムに組み込まれるジャイロセンサモジュールであって、第1検出軸回りの第1角速度ω1を検出し、出力する第1のジャイロセンサと、前記第1角速度ω1の符号を判定する符号判定回路と、前記第1検出軸と鋭角である角度で交わる第2検出軸回りの第2角速度ω2を検出し、出力する第2のジャイロセンサと、前記第1、第2のジャイロセンサの出力を補正するセンサ出力補正回路と、前記センサ出力補正回路で補正された第1角速度ω1’および第2角速度ω2’を用いて下式によってω’を演算し、前記符号判定回路によって得られた前記第1角速度ω1の符号を前記ω’に乗算し、角速度ωを出力する演算回路とを備え、
ω’=√(ω1’2+SA2
SA=(ω2’−ω1’cosθ12)/sinθ12
前記センサ出力補正回路は、前記ジャイロセンサモジュールが設置されている前記移動体が停止している時の前記第1のジャイロセンサの出力値に対応する補正値B1を前記ω1から減算した値ω1”を出力する第1のオフセット調整回路と、前記ジャイロセンサモジュールが設置されている前記移動体が停止している時の前記第2のジャイロセンサの出力値に対応する補正値B2を前記ω2から減算した値ω2”を出力する第2のオフセット調整回路とを有し、前記角速度ωは、前記第1検出軸と前記第2検出軸とがなす面内で、かつ前記第1検出軸と前記第2検出軸とで挟まれた範囲の軸周りの角速度であることを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、センサ出力補正回路に含まれる第1、第2のオフセット調整回路によって、第1角速度ω1および第2角速度ω2は、移動体が停止している時の第1のジャイロセンサの出力値B1および第2のジャイロセンサの出力値B2を減じることによって、第1角速度ω1”および第2角速度ω2”に換算される。したがって、移動体の移動時のより正確な第1角速度ω1”および第2角速度ω2”が得られる。
また、検出軸の取付角度の変化または地平面に対する角度の変化にかかわらず、地上水平面に対して垂直な被検出軸における角速度ωを検出するのに、2つの検出軸を用いてそれぞれの検出軸で測定された角速度を合成して検出できる。
第1検出軸と第2検出軸とのなす角は鋭角で、第1検出軸と第2検出軸とで鋭角で挟まれた間の角速度ωを検出するので、検出軸と被検出軸とのなす角度が小さくなり、検出精度のよいジャイロセンサモジュールが得られる。
鋭角としては、20°〜60°が好ましく、より好ましくは30°〜50°である。車両等の傾きの変動は、道路の上り下り勾配を加味しても最大40°程度である。20°より小さいと、容易に被検出軸が第1検出軸と第2検出軸との間から外れてしまい、検出精度が得られない。また、通常走行する道路においては、車両等の傾きの変動が60°以上になるのはまれである。
【0007】
本発明では、前記ジャイロセンサモジュールは、前記演算回路から出力される前記角速度ωを積分して得られる進行方位と前記ナビゲーションシステムの演算で決められた前記移動体の進行方位との誤差Δθを出力する車両位置測定回路と、前記誤差Δθと前記演算回路から出力される前記角速度ωと前記移動体から出力される車速パルスとから、感度調整信号A1,A2を算出し、出力する調整係数演算回路とを備え、前記センサ出力補正回路は、前記第1のオフセット調整回路の前記ω1”に前記感度調整信号A1を掛け合わせた値ω1’を出力する第1の感度調整回路と、前記第2のオフセット調整回路の前記出力ω2”に前記感度調整信号A2を掛け合わせた値ω2’を出力する第2の感度調整回路とを有しているのが好ましい。
この発明では、角速度ωを積分して得られる進行方位とナビゲーションシステムの演算で決められた進行方位との誤差Δθと角速度ωと車速パルスとから感度調整信号A1、A2が算出される。そして、この感度調整信号A1、A2がそれぞれω1”およびω2”に掛け合わされて感度調整が行われ、センサ出力補正回路からω1’およびω2’が出力される。したがって、角速度ω’の検出がより精度よく行えるジャイロセンサモジュールが得られる。
【0008】
本発明の角速度検出方法は、移動体に取り付けられ、ナビゲーションシステムに組み込まれるジャイロセンサモジュールを用いた角速度検出方法であって、第1検出軸回りの第1角速度ω1を検出し、前記第1角速度ω1の符号を判定し、前記第1検出軸と鋭角である角度θ12で交わる第2検出軸回りの第2角速度ω2を検出し、前記ジャイロセンサモジュールが設置されている前記移動体が停止している時の前記第1のジャイロセンサの出力値に対応する補正値B1を前記ω1から減算する第1のオフセット調整と、前記ジャイロセンサモジュールが設置されている移動体が停止している時の前記第2のジャイロセンサの出力値に対応する補正値B2を前記ω2から減算する第2のオフセット調整とを含むセンサ出力補正を行い、前記センサ出力補正で補正された第1角速度ω1’および第2角速度ω2’を用いて下式によってω’を演算し、前記符号判定回路によって得られた前記第1角速度ω1の符号を前記ω’に乗算し、角速度ωを演算し、
ω’=√(ω1’2+SA2
SA=(ω2’−ω1’cosθ12)/sinθ12
前記第1検出軸と前記第2検出軸とがなす面内で、かつ前記第1検出軸と前記第2検出軸とで挟まれた範囲の軸周りの角速度ωを算出することを特徴とする。
【0009】
本発明では、第1角速度ω1および第2角速度ω2を、移動体が停止している時の第1のジャイロセンサの出力値B1および第2のジャイロセンサの出力値B2を減じることによって、オフセット調整する。したがって、移動体の移動時のより正確な第1角速度ω1’および第2角速度ω2’が得られる。
また、検出軸の取付角度の変化または地平面に対する角度の変化にかかわらず、地上水平面に対して垂直な被検出軸における角速度ωを検出するのに、2つの検出軸を用いてそれぞれの検出軸で測定された角速度を合成して検出できる。
第1検出軸と第2検出軸とのなす角は鋭角で、第1検出軸と第2検出軸とで鋭角で挟まれた間の角速度ωを検出するので、検出軸と被検出軸とのなす角度が小さくなり、検出精度がよい。
【0010】
本発明では、前記角速度ωを積分して得られる進行方位と前記ナビゲーションシステムの演算で決められた前記移動体の進行方位との誤差Δθを算出し、前記誤差Δθと前記角速度ωとから、感度調整信号A1,A2を算出し、前記センサ出力補正において、前記第1のオフセット調整後の値ω1”に前記感度調整信号A1を掛け合わせた値ω1’を算出する第1の感度調整と、前記第2のオフセット調整後の値ω2”に前記感度調整信号A2を掛け合わせた値ω2’を算出する第2の感度調整とを有しているのが好ましい。
この発明では、オフセット調整に加えて、角速度ωを積分して得られる進行方位とナビゲーションシステムの演算で決められた進行方位との誤差Δθと角速度ωと車速パルスとから算出される感度調整信号A1、A2を、それぞれω1”およびω2”に掛け合わせて感度調整を行う。したがって、角速度ωの検出がより精度よく行える。
【0011】
本発明では、前記センサ出力補正は、センサ出力補正回路によって行うのが好ましい。
この発明では、センサ出力補正回路によりセンサ出力補正を行うので、ジャイロセンサモジュールにセンサ出力補正回路を組み込むことが可能になる。
【0012】
本発明では、前記センサ出力補正、前記角速度ωの算出、前記誤差Δθの算出または前記感度調整信号A1,A2の算出の処理のうち、1つまたは複数の処理をソフトウェア処理によって行うのが好ましい。
この発明では、センサ出力補正、角速度ωの算出、誤差Δθの算出または感度調整信号A1,A2の算出の処理のうち、1つまたは複数のソフトウェア処理で処理を行うので、ジャイロセンサモジュールの組み込まれたナビゲーションシステムのCPU(Central Processing Unit)での処理が可能になる。したがって、ジャイロセンサモジュールが小型になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施形態について、図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態におけるジャイロセンサモジュール100の組み込まれたナビゲーションシステム101を移動体である車両102に取り付けた状態を示す模式図である。
図1において、ナビゲーションシステム101は、車両102の前方に取り付けられている。ここで、紙面に対して左側が車両102の進行方向である。また、ナビゲーションシステム101は、その底面103と地上水平面70とのなす角度がθで取り付けられている。ジャイロセンサモジュール100は、ナビゲーションシステム101の底面103に組み込まれている。
【0014】
図2は、本実施形態におけるジャイロセンサモジュール100を示す概略斜視図である。
図2において、ジャイロセンサモジュール100は、第1のジャイロセンサ10と第2のジャイロセンサ20と回路30と升型のパッケージ40と蓋50とを備えている。
第1のジャイロセンサ10と第2のジャイロセンサ20と回路30とは、パッケージ40の矩形の底面41に配置されている。
【0015】
第1のジャイロセンサ10は、第1検出軸11を有する音叉型のジャイロセンサである。第1のジャイロセンサ10は、底面41に設置された斜面を備えた台91の斜面に配置されている。斜面は底面41に対してθ24だけ傾いている。したがって、その第1検出軸11は底面41に対してθ24だけ傾いている。
第2のジャイロセンサ20は、T型の振動子を二つ組み合わせたWT型のジャイロセンサである。第2のジャイロセンサ20は、その第2検出軸21が、底面41に対し直交するように配置されている。
第1検出軸11は底面41に対してθ24だけ傾いているので、第1検出軸11と第2検出軸21とのなす角は鋭角θ12である。(図中で第1検出軸11の延長線上での第2検出軸21の方向を点線で示した)。
【0016】
図3は、第1検出軸11、第2検出軸21および被検出軸60と地上水平面70との位置関係を示す図である。図では、地上水平面70は紙面に対して直交している。
図3において、角速度ωの被検出軸60は、地上水平面70に対して垂直な方向を向いている。図1に示したジャイロセンサモジュール100の組み込まれたナビゲーションシステム101は、第1検出軸11と第2検出軸21とを含む平面が、地上水平面70に対して略垂直になるように車両等に取り付けられる。
また、第1検出軸11および第2検出軸21と地上水平面70とのなす角度はそれぞれθ22およびθ23である。ジャイロセンサモジュール100の底面41とナビゲーションシステム101の底面103が平行であれば、θ22は、図1に示したナビゲーションシステム101の底面103と地上水平面70との角度θとθ24とを加えたものと等しくなる。
【0017】
正確に方位を検出するには、ジャイロセンサモジュール100の取付角度等の変化によっても、第1検出軸11と第2検出軸21とを含む平面内から被検出軸60がずれないようにナビゲーションシステム101を車両等に取付けて使用する。
具体的には、車両の場合、ナビゲーションシステム101の取付角度や上り下りによる地上水平面70とのなす角度θは、車両の進行方向に対して変化するので、第1検出軸11と第2検出軸21とを含む平面が車両等の進行方向と平行になるように、ナビゲーションシステム101を取付ける。図3では、紙面に対して左右方向が車両等の進行方向になる。
【0018】
また、θ22およびθ23の変化に対して、被検出軸60が、第1検出軸11と第2検出軸21との間になるように車両等に取付ける。道路には上り下りが同じ数だけあるので、車両が水平な状態で、θ22とθ23とは同じ角度で、ナビゲーションシステム101を取付けるのが好ましい。
本実施形態においては、車両が水平な状態で、地上水平面70に対して、θ22とθ23とが同じ角度になるように、図2に示したパッケージ40の底面41を傾けて車両に取付けるのが好ましい。
【0019】
なお、パッケージ40の底面41を、車両が水平な状態で車両に対して傾けて取付けない場合は、第1検出軸11と第2検出軸21とのなす角度が鋭角θ12であれば、図2において、第2のジャイロセンサ20の第2検出軸21も底面41に対して傾いていてもよい。具体的には、ジャイロセンサ20を台91と同様な台の斜面に配置して、第2検出軸21の底面41に対する角度を調節する。
このように、パッケージ40と車両等との取付角度にあわせて、第1検出軸11および第2検出軸21の底面41に対する傾きを調節する。
第1検出軸11では、第1検出軸11での第1角速度ω1が測定され、第2検出軸21では、第2検出軸21での第2角速度ω2が測定される。
【0020】
図4は、回路30の信号処理ブロック図である。
図4において、回路30は、センサ出力補正回路32と演算回路33と符号判定回路34と制御回路35とを備えている。
【0021】
第1のジャイロセンサ10では第1角速度ω1を検出し、第2のジャイロセンサ20では第2角速度ω2を検出する。その信号は、センサ出力補正回路32へと送られる。
センサ出力補正回路32は、第1のオフセット調整回路36と第2のオフセット調整回路37と第1の感度調整回路38と第2の感度調整回路39を備えている。
第1のオフセット調整回路36では、検出した第1角速度ω1から車両102が停止している時の第1ジャイロセンサ10の出力値B1を減算した値ω1”を求め出力する。
第2のオフセット調整回路37では、検出した第2角速度ω2から車両102が停止している時の第2ジャイロセンサ20の出力値B2を減算した値ω2”を求め出力する。
【0022】
第1の感度調整回路38では、ω1”に感度調整信号A1を乗じた値ω1’を求め出力する。第2の感度調整回路39では、ω2”に感度調整信号A2を乗じた値ω2’を求め出力する。
出力値B1、出力値B2、感度調整信号A1および感度調整信号A2は制御回路35から出力される。
ω1’およびω2’の信号は、演算回路33へと送られる。また、ω1’の信号は符号判定回路34にも送られる。
【0023】
演算回路33は、下式で表されるSAを求める回路と2乗和平均回路と乗算回路332とを備えている。
SA=(ω2’−ω1’cosθ12)/sinθ12
まず、SAを求める手順として、第1検出軸11と第2検出軸21との鋭角θ12は、第1のジャイロセンサ10と第2のジャイロセンサ20との配置によって決まるので、鋭角θ12に応じた電圧V1を余弦演算回路に入力することでcosθ12の信号に変換する。同様に、鋭角θ12に応じた電圧V2を正弦演算回路に入力することでsinθ12の信号に変換する。
次に、ω1’のアナログ信号とcosθ12との信号を乗算回路で、ω1’cosθ12の信号に変換する。
次に、ω2’のアナログ信号とω1’cosθ12との信号を減算回路でω2’−ω1’cosθ12の信号に変換する。
ω2’−ω1’cosθ12の信号と正弦演算回路で変換したsinθ12の信号との信号を割算回路によって(ω2’−ω1’cosθ12)/sinθ12の信号に変換する。この信号がSAの信号となる。
【0024】
次に、ω1’とSAの信号が2乗和平均回路へ送られ、2乗和平均である√(ω1’2+SA2)を求め、|ω|として出力する。
一方、符号判定回路34によってω1’の信号からsign(ω1’)値を求め、正負を決める。符号判定回路34は、sign(ω1’)が正であればcωを出力し、入力される角速度ωが図3の矢印方向に向かって時計回りの回転であることを示す。また、符号判定回路34は、sign(ω1’)が負であれば、ccωを出力し、入力される角速度ωが図3の矢印方向に向かって反時計回りの回転であることを示す。
演算回路33では、乗算回路332によって、符号判定回路34の出力と|ω|を乗じて正負が加味された角速度ωの値の信号を出力する。
【0025】
制御回路35は、車両位置測定回路351と調整係数演算回路352とを備えている。
車両位置測定回路351は、角速度ωを積分して求めた進行方位とナビゲーションシステム101の演算で決められた車両102の進行方位θとの誤差Δθを出力する。次に、調整係数演算回路352は、誤差Δθと演算回路33から出力される角速度ωと車両102から出力される車速パルスとから、感度調整信号A1、A2を算出し、第1の感度調整回路38と第2の感度調整回路39とへ出力する。感度調整信号A1、A2は、常にA1=A2であってもよい。また、次の式に基いて算出することができる。
A1=A2=1+Δθ/θ=1+(θω−θ)/θ
ここで、θωは、乗算回路332が出力する角速度ωを、車両102の進行方位が0からθまで変位する間、積分した値であり、次の式に基づく。
θω=∫ωdt
【0026】
また、調整係数演算回路352は、車両102が停止している時の第1ジャイロセンサ10の出力値B1を第1のオフセット調整回路36に、第2ジャイロセンサ20の出力値B2を第2のオフセット調整回路37に出力する。
車両102が停止しているか否かの判断は、制御回路35が、車速パルスに基づいて判断する。その他に例えば、ナビゲーションシステム101が起動したことをトリガとしたり、イグニッションキーがオフ状態からアクセサリーオンまたはイグニッションオンに切り換わったことをトリガとしたりして、オフセット調整を行うこともできる。
【0027】
なお、第1、第2の感度調整回路38,39は、それぞれ、第1、第2のオフセット調整回路36,37より後段にあればよく、例えば、2乗和平均回路や乗算回路332の後段にあっても良い。
また、温度変化による調整量の変化を記憶しておき、温度センサによってその調整を自動的に行ってもよい。
さらに、車両102のピッチ方向への傾きによる、マップとの誤差を重力方位センサや加速度センサによって検知し、感度調整を行ってもよい。
【0028】
以下、本実施形態の効果を記載する。
(1)センサ出力補正回路32に含まれる第1のオフセット調整回路36および第2のオフセット調整回路37によって、第1角速度ω1および第2角速度ω2を、第1角速度ω1および第2角速度ω2から、車両102が停止している時の第1のジャイロセンサ10の出力値B1および第2のジャイロセンサ20の出力値B2を減じることによって、第1角速度ω1”および第2角速度ω2”に換算できる。したがって、車両102の移動時のより正確な第1角速度ω1”および第2角速度ω2”を得ることができる。
また、第1検出軸11と第2検出軸21とのなす角は鋭角θ12で、第1検出軸11と第2検出軸21とで鋭角θ12で挟まれた間の角速度ωを検出できるので、検出軸と被検出軸60とのなす角度が小さくなり、検出精度のよいジャイロセンサモジュール100を得ることができる。
【0029】
(2)角速度ωを積分して得られる進行方位とナビゲーションシステム101の演算で決められた進行方位との誤差Δθと角速度ωと車速パルスとから感度調整信号A1、A2を算出できる。そして、この感度調整信号A1、A2がそれぞれω1”およびω2”に掛け合わされて感度調整が行われ、センサ出力補正回路32からω1’およびω2’を出力できる。したがって、角速度ωの検出がより精度よく行えるジャイロセンサモジュール100および角速度検出方法を得ることができる。
【0030】
(3)第1のジャイロセンサ10が第1検出軸11を、第2のジャイロセンサ20が第2検出軸21を備えればよいので、1つのジャイロセンサが2つの検出軸を備える場合と比較して、ジャイロセンサの構造を簡単にできる。
【0031】
(4)演算回路33により角速度ωの出力を行うので、ジャイロセンサモジュール100に回路30を組み込むことが可能になる。
【0032】
(第2実施形態)
図5は、本実施形態におけるジャイロセンサモジュール200を示す概略斜視図である。
ジャイロセンサモジュール200は、第1のジャイロセンサ12と第2のジャイロセンサ22と回路31と矩形の設置面81を有する基板80とを備えている。
【0033】
第1のジャイロセンサ12は、音叉型の振動子を矩形の実装面13を備えたパッケージに実装したものである。その第1検出軸11は、実装面13の長辺になるように実装されている。第1のジャイロセンサ12は、設置面81に設置された斜面を備えた台90の斜面に配置されている。したがって、その第1検出軸11は設置面81に対して傾いている。
第2のジャイロセンサ22は、T型の振動子を二つ組み合わせたWT型の振動子を矩形の実装面23を備えたパッケージに実装したものである。WT型の振動子は、その第2検出軸21が、実装面23に対し直交するように実装されている。第2のジャイロセンサ22は、実装面23が設置面81と平行になるように基板80に設置されている。
第1検出軸11は設置面81に対して傾いているので、第1検出軸11と第2検出軸21とのなす角は鋭角θ12である。(図中で第1検出軸11の延長線上での第2検出軸21の方向を点線で示した)。
なお、第1実施形態と同様に、第1検出軸11と第2検出軸21とのなすθ12が鋭角であれば、設置面81に配置された第1のジャイロセンサ10と第2のジャイロセンサ20との位置関係は、どのような関係であってもよい。回路31は、第1実施形態と同じ回路を用いることができる。
【0034】
本実施形態では、第1実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(5)既存の実装された第1のジャイロセンサ12および第2のジャイロセンサ22と回路30とを組み合わせて簡便にジャイロセンサモジュール200を構成することができる。
【0035】
(第3実施形態)
図6は、本実施形態におけるジャイロセンサモジュール300を示す概略斜視図である。
図6において、ジャイロセンサモジュール300は、第1のジャイロセンサ10と第2のジャイロセンサ14と回路30と升型のパッケージ40と蓋50とを備えている。
第1のジャイロセンサ10と第2のジャイロセンサ14と回路30とは、パッケージ40の矩形の底面41に配置されている。
【0036】
第1のジャイロセンサ10および第2のジャイロセンサ14は、音叉型のジャイロセンサである。第1のジャイロセンサ10の第1検出軸17と第2のジャイロセンサ14の第2検出軸15とのなす角度は、鋭角θ12となるように配置されている。
【0037】
ジャイロセンサモジュール300の車両等への取付け方法は、第1検出軸17と第2検出軸15とを含む平面が、図3に示したように地上水平面70と直交するように取付ける。
具体的には、底面41と地上水平面70とが直交するように取付け、車両に取付ける場合、第1実施形態と同様に、底面41を車両の進行方向と平行に取付けて使用する。
なお、第1実施形態と同様に、車両が水平な状態で、地上水平面70に対して、図3に示したθ22とθ23とが同じ角度になるように、車両に取付けるのが好ましい。
【0038】
本実施形態では、以下の効果を有する。
(6)パッケージ40内で、第1実施形態で示した台91を用いる必要がなく、ジャイロセンサモジュール300を薄型化できる。
【0039】
(第4実施形態)
図7は、本実施形態におけるジャイロセンサモジュール400を示す概略斜視図である。
ジャイロセンサモジュール400は、第1のジャイロセンサ19と第2のジャイロセンサ18と回路30と矩形の設置面83を有する基板82とを備えている。
【0040】
第1のジャイロセンサ19および第2のジャイロセンサ18は、音叉型の振動子が矩形の実装面16を備えたパッケージに実装されたものである。
第1のジャイロセンサ19の第1検出軸17および第2のジャイロセンサ18の第2検出軸15は、実装面16の長辺に平行にパッケージされている。
第1検出軸17と第2検出軸15とのなす角度は、鋭角θ12になるように配置されている。
なお、第3実施形態と同様に、車両が水平な状態で、地上水平面70に対して、図3に示したθ22とθ23とが同じ角度になるように、車両に取付けるのが好ましい。
回路30は、第1実施形態と同様の回路を用いることができる。
本実施形態では、第2実施形態の効果に加えて第3実施形態の効果を得ることができる。
【0041】
(第5実施形態)
図8は、ソフトウェア処理を用いた信号処理ブロック図である。
本実施形態では、前述の各実施形態において、回路30,31を含まないジャイロセンサモジュール100,200,300,400を用いて角速度を計算する。
第1のジャイロセンサ10,12,19と第2のジャイロセンサ20,14,18,22とで検出された、第1角速度ω1および第2角速度ω2のアナログ信号は、ADC(Analog Digital Converter)によってデジタル信号に変換される。ADCは、ジャイロセンサモジュール100,200,300,400に設けてもよいし、ジャイロセンサモジュール100,200,300,400とは別にジャイロセンサモジュール100,200,300,400を備えた装置、例えばナビゲーションシステム101に設けてもよい。
変換されたデジタル信号を用いたCPUによるソフトウェア処理により、センサ出力補正、2乗和平均演算、乗算、符号判定、調整係数演算、車両位置測定を行い角速度ωを検出することができる。
ソフトウェア処理は、センサ出力補正、2乗和平均演算、乗算、符号判定、調整係数演算、車両位置判定の処理のうち1つか複数行ってもよい。このとき、ソフトウェア処理を行う処理の前にはADCを設ける。
【0042】
以下、本実施形態の効果を記載する。
(7)センサ出力補正、角速度ωの算出、誤差Δθの算出または感度調整信号A1,A2の算出の処理のうち、1つまたは複数のソフトウェア処理で処理を行うので、ジャイロセンサモジュール100,200,300,400が組み込まれたナビゲーションシステム101のCPU(Central Processing Unit)での処理が可能になる。したがって、ジャイロセンサモジュール100,200,300,400を小型にできる。
【0043】
本発明のジャイロセンサモジュールおよび角速度検出方法は、車両としての二輪車にも使用できる。以下に、二輪車に使用する場合を図2に基づいて説明する。
二輪車に使用するには、第1検出軸11と第2検出軸21とを含む平面を、二輪車の進行方向と直交するようにジャイロセンサモジュール100,200,300,400を取付ける。
二輪車は、地上水平面70に対しバンク角θ22,θ23で傾き曲がる。第1検出軸11と第2検出軸21とを含む平面を、二輪車の進行方向と直交するように取付けることによって、角速度ω’は、バンク角θ22,θ23が変化しても、下式に基づいて第1角速度ω1’と第2角速度ω2’との合成で求めることができる。
ω’=√(ω1’2+SA2
SA=(ω2’−ω1’cosθ12)/sinθ12
【0044】
また、車両から取り外して携帯可能なナビゲーション装置においては、車両に再び取付けるごとに取付角度が変化するため、本発明のジャイロセンサモジュールおよび角速度検出方法を有効に活用できる。
【0045】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、1つのジャイロセンサが第1検出軸と第2検出軸を備え、1つのジャイロセンサで第1角速度および第2角速度を検出する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態におけるジャイロセンサモジュールの組み込まれたナビゲーションシステムを移動体である車両に取り付けた状態を示す模式図。
【図2】ジャイロセンサモジュールを示す概略斜視図。
【図3】第1検出軸、第2検出軸および被検出軸と地上水平面との位置関係を示す図。
【図4】回路の信号処理ブロック図。
【図5】本発明の第2実施形態におけるジャイロセンサモジュールを示す概略斜視図。
【図6】本発明の第3実施形態におけるジャイロセンサモジュールを示す概略斜視図。
【図7】本発明の第4実施形態におけるジャイロセンサモジュールを示す概略斜視図。
【図8】本発明の第5実施形態におけるソフトウェア処理を用いた信号処理ブロック図。
【符号の説明】
【0047】
10,12,19…第1のジャイロセンサ、14,18,20,22,…第2のジャイロセンサ、11,17…第1検出軸、15,21…第2検出軸、30,31…回路、32…センサ出力補正回路、33…演算回路、36…第1のオフセット調整回路、37…第2のオフセット調整回路、38…第1の感度調整回路、39…第2の感度調整回路、100,200,300,400…ジャイロセンサモジュール、101…ナビゲーションシステム、102…移動体である車両、351…車両位置測定回路、352…調整係数演算回路。

特許の図
【出願人】 【識別番号】000003104
【氏名又は名称】エプソントヨコム株式会社
【出願日】 平成19年2月5日(2007.2.5)
【代理人】 【識別番号】100095728
【弁理士】
【氏名又は名称】上柳 雅誉

【識別番号】100127661
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 一彦
【公開番号】 特開2008−190980(P2008−190980A)
【公開日】 平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願番号】 特願2007−25138(P2007−25138)