トップ :: G 物理学 :: G01 測定;試験

【発明の名称】 圧電単結晶振動子および圧電振動ジャイロ
【発明者】 【氏名】岡本 幸一

【氏名】大島 亜希子

【氏名】水野 豪

【氏名】池田 義秋

【要約】 【課題】圧電単結晶振動子の実装信頼性を確保しつつ、小型、低コストな圧電単結晶振動子およびこの圧電単結晶振動子を用いて構成された圧電振動ジャイロを提供することにある。

【構成】圧電単結晶振動子1の導電接着剤塗布部の外縁部にある基準電位電極19aの近傍において、駆動電極15a、15bおよび、検出電極17a、18aを覆うように形成されている絶縁膜11により、他電極との短絡不良の発生を防ぐことができ、信頼性を高めつつ、歩留のを向上を可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電単結晶材料から成る圧電単結晶板の表裏両面の主面上に複数の電極が形成されており、前記電極の少なくとも1つは導電接着剤によって、回路基板と電気的に導通し、かつ機械的に固定されてなる圧電単結晶振動子であって、前記導電接着剤を塗布する前記電極とは、異なる他の前記電極の少なくとも一部が絶縁膜で覆われていることを特徴とする圧電単結晶振動子。
【請求項2】
前記絶縁膜は、SiO2、Si34、TiO2、Al23、ポリイミド、フォトレジストから選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1に記載の圧電単結晶振動子。
【請求項3】
前記請求項1または2に記載の圧電単結晶振動子を用いて構成されたことを特徴とする圧電振動ジャイロ。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電単結晶材料を用いた圧電単結晶振動子およびそれを用いて構成された圧電振動ジャイロに関するもので、特に圧電単結晶振動子の構造および実装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電振動子は、センサ、発振器、表面弾性波フィルタ、超音波モータ、音響素子、トランスなど、幅広い分野に用いられている。圧電振動子に用いられる圧電材料の中でも、特に圧電単結晶材料は、一般に機械的品質係数(以下、Qmと表す)が高く、温度変化に対する特性変化が小さく、材料が均一で信頼性が高く、材料の量産性が優れている等の特徴があり、特にセンサ、発振器、表面弾性波フィルタなど、電子部品向けの振動子としてよく用いられている。
【0003】
これらの圧電単結晶材料を用いた圧電振動子を大量生産する場合の一例として、以下のような製法が用いられる。まず、圧電単結晶のウエハーに電極となる金属薄膜をスパッタや真空蒸着等で成膜し、いわゆるフォトリソグラフでレジストをパターニングした後、金属薄膜をエッチングして電極パターンを形成する。その後、再びフォトリソグラフでレジストをパターニングして、圧電単結晶をエッチング処理したり、またはサンドブラストで研削したりして所望の振動子形状に加工し、最後にダイシングソーで振動子を個片に切り分けることで、1枚のウエハーから多数の圧電単結晶振動子を得ている。
【0004】
携帯電話、携帯オーディオ、デジタルカメラなどの携帯機器の市場が益々大きくなっていく中で、それに使用される電子部品の小型化、高機能化、低コスト化が強く要求されている。圧電単結晶振動子を用いた電子部品の場合、圧電単結晶振動子の振動を阻害することなく圧電単結晶振動子を回路基板上に固定し、かつ所望の機能を働かせるために圧電単結晶振動子と回路基板を電気的に接続する実装手段が必要となる。これらの圧電単結晶振動子を信号処理回路が配線された回路基板に実装する方法として、ワイヤーボンディング法、GGI法(Gold to Gold Interconnection)、あるいは導電接着剤を用いた方法で実装配線し、最後に封止して製品としている。
【0005】
特許文献1には、ワイヤーボンディング法により接続された圧電デバイスの例が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、電極とICチップとをGGI法により電気的に接続した磁気センサの例が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、電極と圧電基板とを導電接着剤を用いて接着した表面弾性波フィルタの例が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2005−094461号公報
【特許文献2】特開2005−003477号公報
【特許文献3】特開平11−251867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示されているワイヤーボンディング法を使用する場合、圧電単結晶振動子を回路基板に接着剤で固定し、圧電単結晶振動子の電極と回路基板の電極とにワイヤーを引き回して電気的な接続を取る際、ワイヤーを引き回すための空間が必要となり、また圧電単結晶振動子の電極と回路基板の電極との距離がある程度必要といった問題があり、小型化に不利であった。また、実装が接着固定、配線と2段階の工程となるので製造コストが高くなってしまうという問題もあった。
【0010】
特許文献2に開示しているGGI法を使用する場合、固定と電気的接続を同時にできるが、金(Au)を使用するために材料コストの高騰、さらにGGI法だけでは接続強度が不足するため、一般的に補強のためのシリコーン等によるアンダーフィル材が必要となり、そのために材料コスト、製造コストが高くなってしまうという問題もあった。
【0011】
また、特許文献3に開示している導電接着剤を用いた場合、固定と電気的接続が同時にできるので製造コストを抑えることができ、また金(Au)よりも価格的に安い銀(Ag)を一般的に用いるので材料コストも抑えることができ、接着強度を確保しながら接着剤塗布面積を小さくすれば製品の小型化にも対応が可能となる。このように、ワイヤボンディング法やGGI法と比較して、導電接着剤を使用する方法はあらゆる面で有利な実装方法といえる。
【0012】
しかしながら、圧電単結晶振動子の小型化に伴い、導電接着剤の塗布部に電極配線が密集する部分ができてしまい、その際、導電接着剤の塗布する電極と近接する異なる電位をもつ別の電極配線とが、導電接着剤の塗布のしかたによっては短絡するおそれがあり、実装工程の歩留を低下させる問題があった
【0013】
本発明は、従来の課題を解決すべくなされたもので、圧電単結晶振動子の実装信頼性を確保しつつ、小型、低コストな圧電単結晶振動子およびこの圧電単結晶振動子を用いて構成された圧電振動ジャイロを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前記課題の解決のため、圧電単結晶材料から成る圧電単結晶板の表裏両面の主面上に複数の電極が形成されており、前記電極の少なくとも1つは導電接着剤によって、回路基板と電気的に導通し、かつ機械的に固定されてなる圧電単結晶振動子であって、前記導電接着剤を塗布する電極とは、異なる他の前記電極の少なくとも一部が絶縁膜で覆われていることを特徴とする圧電単結晶振動子である。なお、絶縁膜を施すのは、前もって導電接着剤を塗布する電極の近傍にある電極のみであってもよい。また、導電接着剤を塗布する電極と絶縁膜を施す電極は、少なくとも異なる電位を有している。
【0015】
また、絶縁膜は、SiO2、Si34、TiO2、Al23、ポリイミド、フォトレジストから選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする圧電単結晶振動子である。
【0016】
さらに、圧電単結晶振動子を用いて構成されたことを特徴とする圧電振動ジャイロである。
【発明の効果】
【0017】
従って、本発明によれば、圧電単結晶振動子の実装信頼性を確保しつつ、小型、低コストな圧電単結晶振動子およびこの圧電単結晶振動子を用いて構成された圧電振動ジャイロを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係わる圧電単結晶振動子の導電接着剤塗布部(基準電位電極19aの近傍)の拡大図である。本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。圧電単結晶振動子1の外縁部にある基準電位電極19aの近傍には絶縁膜11が駆動電極15a、15b、検出電極17a、18aを覆うように形成され、導電接着剤12が基準電位電極19aを覆うように塗布されている。
【0019】
絶縁膜11によって駆動電極15a、15b、検出電極17a、18aが覆われているので、もし塗布工程のばらつきによって塗布位置がずれ、検出電極18aに導電接着剤12を塗布されたとしても、検出電極18aは絶縁膜11に覆われており、電位の異なるこれらの電極同士が短絡することがない。このように、絶縁膜の形成により、導電接着剤塗布工程において、他電極との短絡不良の発生を防ぐことができ、信頼性を高めつつ、歩留を向上させることができる。
【0020】
また、絶縁膜11の材質は、SiO2、Si34、TiO2、Al23、ポリイミド、フォトレジストのいずれかであることが好適であるが、これらに限らず、絶縁性のある材質であれば使用可能である。
【0021】
図2は、本発明の実施の形態に係わる圧電単結晶振動子の外形を示した上面図である。図3は、本発明の実施の形態に係わる圧電単結晶振動子の上面の電極配置図である。図4は、本発明の実施の形態に係わる圧電単結晶振動子の下面の電極配置図である。本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。この圧電単結晶振動子は、2軸の角速度が検出可能な圧電振動ジャイロとなっている。以下、説明の便宜上、図2、図3、図4に示したように、圧電単結晶振動子の厚み方向をX軸、図面上の縦方向をY軸、図面上の横方向をZ軸とする。
【0022】
圧電単結晶振動子1は矩形状板に貫通加工をして、矩形状板の一部を打ち抜くことにより、内部に振動部である4つの付加質量部13a、13b、13c、13dを保持する構造体が一体物として形成されている。また、圧電単結晶振動子1は圧電振動ジャイロとして機能させるための電極、および振動効率および検出効率を向上させるための表裏両面に電極が形成されている。図3の上面の電極配置図より、上面には駆動電極14a、14b、15a、15b、検出電極17a、17b、18a、18b、基準電位電極19a、19bが形成されている。図4の下面の電極配置図より、下面には駆動電極14c、14d、16a、16b、検出電極17c、17d、18c、18d、基準電位電極19c、19dが形成されている。各電極は圧電単結晶振動子1の外縁部まで引き回して配線されている。
【0023】
また、図1と同様、図3において、圧電単結晶振動子1の外縁部にある基準電位電極19bの近傍には駆動電極14a、14b、検出電極17b、18bを覆うように絶縁膜11が形成され、導電接着剤12が基準電位電極19bを覆うように塗布されている(図示せず)。また、図4において、基準電位電極19cの近傍には駆動電極14c、14d、検出電極17c、18cを覆うように絶縁膜11が形成され、導電接着剤12が基準電位電極19cを覆うように塗布されている。基準電位電極19dの近傍には駆動電極16a、16b、検出電極17d、18dを覆うように絶縁膜11が形成され、導電接着剤12が基準電位電極19dを覆うように塗布されている(図示せず)。
【0024】
この圧電単結晶振動子の製造プロセスの一例を説明する。圧電単結晶材料としては、水晶、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ランガサイト、酸化亜鉛のいずれかが用いられる。これらのウエハーに電極としてCrを下地としてAuをスパッタもしくは真空蒸着で成膜する。次に、フォトリソグラフによりレジストを所望のパターンに形成し、エッチングによりAuおよびCrを除去し、さらにレジストを除去して、電極を形成する。反対面も同様な工程により、表裏両面に電極が形成される。次にフォトリソグラフによりレジストを所望のパターンに形成し、エッチングもしくはサンドブラストによって貫通加工を行い、レジストを除去して圧電単結晶振動子が得られる。
【0025】
こうして得られた圧電単結晶振動子1は、回路基板(図示せず)に導電接着剤12で固定かつ電気的接続をとって実装される。この時、駆動電極14aと14c、14bと14d、検出電極17aと17c、17bと17d、18aと18c、18bと18d、基準電位電極19aと19c、19bと19dは各々導電接着剤12で電気的に接続される。
【0026】
上面において、駆動電極14aおよび14bと駆動電極15aおよび15bとの間に交流電圧を印加し、下面では、前記駆動電極とは逆位相で、駆動電極14cおよび14dと駆動電極16aおよび16bとの間に交流電圧を印加する。その結果、付加質量部13aおよび13cがX軸方向に振動し、それとは逆位相に13bおよび13dがX軸方向に振動する。この振動状態でY軸まわりに回転角速度が印加されるとコリオリ力により、Z軸方向の振動が励振されるので、検出電極17aおよび17cと17bおよび17dとから電気的に検出することができる。Z軸まわりに回転角速度が印加されるとY軸方向の振動が励振されるので、検出電極18aおよび18cと18bおよび18dとから電気的に検出することができる。これらの検出信号を信号処理して出力することで、2軸の角速度が検出できる圧電振動ジャイロを得ることができる。
【実施例】
【0027】
次に、実施例を挙げ、本発明の圧電単結晶振動子および圧電振動ジャイロについて、さらに詳しく説明する。
【0028】
圧電単結晶材料としてニオブ酸リチウムを用い、外形寸法が4mm×4mm×厚み0.25mm、各付加質量部大きさを0.75mm×1mm、付加質量部に形成されたスルーホールは0.1mm×0.1mmの大きさとなる図2で示した形状の圧電単結晶振動子を作製し、絶縁膜にはポリイミドを使い厚み4μmの絶縁膜を形成した。
【0029】
この圧電単結晶振動子に1.5Vpp(ピークトゥーピーク)で駆動した場合、X軸方向の振動の共振周波数はおよそ20kHzとなり、圧電振動ジャイロとしての感度は、信号処理回路の増幅率が200倍の時でY軸回りの回転角速度およびZ軸回りの回転角速度共におよそ0.3mV/゜/秒が得られ、1つの圧電単結晶振動子で、2軸の角速度が検出可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態に係わる圧電単結晶振動子の導電接着剤塗布部(基準電位電極の近傍)の拡大図。
【図2】本発明の実施の形態に係わる圧電単結晶振動子の外形を示した上面図。
【図3】本発明の実施の形態に係わる圧電単結晶振動子の上面の電極配置図。
【図4】本発明の実施の形態に係わる圧電単結晶振動子の下面の電極配置図。
【符号の説明】
【0031】
1 圧電単結晶振動子
11 絶縁膜
12 導電接着剤
13a〜13d 付加質量部
14a〜14d 駆動電極
15a、15b 駆動電極
16a、16b 駆動電極
17a〜17d 検出電極
18a〜18d 検出電極
19a〜19d 基準電位電極
【出願人】 【識別番号】000134257
【氏名又は名称】NECトーキン株式会社
【出願日】 平成18年6月26日(2006.6.26)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−3017(P2008−3017A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−174740(P2006−174740)