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【発明の名称】 電気式点火器及びその製造方法
【発明者】 【氏名】藤井 広之

【氏名】松田 直樹

【要約】 【課題】安全性の高い電気式点火器の製造方法の提供。

【構成】収容室16内に乾燥状態の第1火工材料を先に充填して、ブリッジワイヤ14上に第1層17を形成した後、第1層17の上にスラリー状の第2火工材料を充填して第2層18を形成する。少量の第1火工材料を先に充填するため、充填時等に収容室16から第1火工材料がこぼれて着火するおそれがない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により発熱する発熱体と、前記発熱体が底面において露出して配置されている収容室と、前記収容室に収容されている火工材料を含む電気式点火器であって、
前記火工材料が、前記発熱体側の第1層と、前記第1層の上層となる第2層を有しており、
前記第1層が、乾燥状態の第1火工材料が収容されてなるものであり、前記第2層が、湿潤状態の第2火工材料が収容されてなるものである電気式点火器。
【請求項2】
前記第2火工材料が、燃料、酸化剤、バインダーを含んでいる請求項1記載の電気式点火器。
【請求項3】
通電により発熱する発熱体と、前記発熱体が底面において露出して配置されている収容室と、前記収容室に収容されている火工材料を含む電気式点火器の製造方法であって、
前記収容室が開口部を有するものであり、前記開口部から前記火工材料を充填するとき、乾燥状態の第1火工材料を先に充填して、前記発熱体上に第1層を形成した後、前記第1層の上に湿潤状態の第2火工材料を充填して第2層を形成する工程を含む電気式点火器の製造方法。
【請求項4】
前記第2火工材料が、燃料、酸化剤、バインダーを含んでいる請求項3記載の電気式点火器の製造方法。



【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエアバッグ用インフレータやシートベルトプリテンショナー用ガス発生器に使用できる電気式点火器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車のエアバッグやプリテンショナーに用いられる電気式点火器であって、ブリッジワイヤ(発熱体)に対して、スラリー状のプライマー(又はスラリー状のプライマーとフラッシュチャージ)と、パウダー状のアウトプットチャージが順次供給され、2層構造又は3層構造の火工材料が充填されている電気式点火器の製造方法が開示されている。
【0003】
特許文献2には、ブリッジワイヤ(発熱体)が内部に配置されているキャビティ(点火器の収容部)に点火薬を圧填することで、ブリッジワイヤと点火薬との密着状態を高め、プライマーを省略した構造の電気式イニシエータ及びそれを用いた電気式イニシエータ組立体、並びにそれらの製造方法が開示されている。
【特許文献1】USP5,648,634
【特許文献2】WO01/031282
【特許文献3】US6,698,356 B2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電気式点火器の製造方法では、静電気や発熱に対する着火感度の高い点火薬(プライマー、フラッシュチャージ)をスラリー状態にして用いることで、点火薬が静電気により着火する危険性を低下させて、製造時の安全性を高めることができる。
【0005】
しかしながら、スラリー状点火薬は、乾燥時にボイドが生じやすく、ブリッジワイヤと点火薬との間にボイドが生じると、点火薬の着火遅れなどの点火不良が生じるおそれがある。なお、この乾燥時のボイド発生を解消するため、特許文献3の電気式点火器の製造方法では、点火薬の収容部を軸周りに回転させながらスラリー状点火薬を充填し、乾燥させることでボイドの発生を抑制する方法が開示されているが、回転操作を要する点で煩雑である。
【0006】
特許文献2の電気式点火器の製造方法では、点火薬をキャビティ内に充填することによって、ブリッジワイヤと点火薬との密着状態を高めている。しかしながら、乾燥状態の点火薬を圧填するとき(特に点火薬が充填されたキャビティに圧子を出し入れするとき)には、キャビティの上縁部から点火薬がこぼれ落ちやすく、点火薬の充填量が多くなるほど(充填された点火薬の上部がキャビティ上縁に近づくほど)、こぼれ落ちやすくなる。
【0007】
絶乾状態の点火薬は、粉塵爆発や静電気による着火のおそれがあり、製造工程の安全管理上、こぼれ落ちた点火薬を回収する作業が頻繁に生じ、そのたびに製造設備を停止せざるを得ないため、生産性に悪影響が生じる。
【0008】
また増量された点火薬を一度に圧填するときは、キャビティに掛かる荷重が大きくなるため、キャビティの耐圧強度を増すために、より高強度の構造材料を使用したり、より肉厚の構造材料を使用したりする必要が生じ、点火器の材料コストや重量・大きさの増大を招く。
【0009】
また乾式の点火薬を取り扱う製造設備は、静電気による着火防止などの安全対策仕様の追加により、安全対策仕様のない製造設備に比べて高価である。点火器当たりの点火薬充填量の増量に対応するために充填回数を複数に分けて充填する場合は、充填工数が増え、連続して処理するときには、多段圧填仕様や複数台の充填設備が必要であり、製造コストの増大を招くおそれもある。
【0010】
本発明の課題は、安全でかつ生産性よく製造できる電気式点火器及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、課題の解決手段として、
通電により発熱する発熱体と、前記発熱体が底面において露出して配置されている収容室と、前記収容室に収容されている火工材料を含む電気式点火器であって、
前記火工材料が、前記発熱体側の第1層と、前記第1層の上層となる第2層を有しており、
前記第1層が、乾燥状態の第1火工材料が収容されてなるものであり、前記第2層が、湿潤状態の第2火工材料が収容されてなるものである電気式点火器を提供する。
【0012】
また本発明は、他の課題の解決手段として、
通電により発熱する発熱体と、前記発熱体が底面において露出して配置されている収容室と、前記収容室に収容されている火工材料を含む電気式点火器の製造方法であって、
前記収容室が開口部を有するものであり、前記開口部から前記火工材料を充填するとき、乾燥状態の第1火工材料を先に充填して、前記発熱体上に第1層を形成した後、前記第1層の上に湿潤状態の第2火工材料を充填して第2層を形成する工程を含む電気式点火器の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電気式点火器は、第1層を形成する乾燥状態の第1火工材料の充填量を少なくできるため、収容室への充填時や押圧時において、第1火工材料が収容室からこぼれ出ることが防止され、作業安全性が高くなる。
【0014】
本発明の電気式点火器は、第2層を形成する第2火工材料が湿潤状態のものであるため、第2火工材料の充填時に収容室から溢れ出た場合でも着火せず、乾燥状態の第1火工材料と比べると作業安全性が高くなる。
【0015】
本発明の電気式点火器は、第2火工材料を充填後に乾燥処理して、第2層にボイドが発生した場合でも、第1層は点火器の発熱体に圧接されているので、発熱体と火工材料全体との密接状態は維持されており、優れた着火性も維持されている。
【0016】
本発明の電気式点火器は、乾燥状態の第1火工材料の充填量を少なくできるため、作業全体の安全性が高く、充填作業時に収容室に掛かる全体荷重も減少される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔電気式点火器〕
図1は、本発明の電気式点火器の縦断面図、図2は、図1で使用している点火器本体10の縦断面図である。
【0018】
図1に示すように、電気式点火器1は、金属製の点火器カラー21に対して、樹脂22を介して点火器本体10が固定されているものである。24は、コネクタの差し込み空間である。
【0019】
図2に示すように、点火器本体10は、導電ピン13aと接続された金属製のヘッダ部11と、導電ピン13bと接続されたガラス製の絶縁部12とを有しており、導電ピン13bの端面と金属製ヘッダ部11の間には、発熱体となるブリッジワイヤ14が架け渡されている。ブリッジワイヤ14は、抵抗溶接で固定されている。
【0020】
ヘッダ部11の上には、円筒状のチャージホルダ15が配置されている。チャージホルダ15は、一端側の周縁がヘッダ部11上に置かれた状態で超音波溶接で固定されており、他端側は開口され、内部は収容室16となっている。
【0021】
収容室16には、第1火工材料からなる第1層17と、第2火工材料からなる第2層18が形成されている。第1層17はブリッジワイヤ14と圧接されており、第1層17と第2層18は接触している。
【0022】
第1層17は、乾燥状態の第1火工材料が充填されてなるものであり、第2層18は、湿潤状態の第2火工材料が充填されてなるものである。第2火工材料は、充填後に乾燥されていることが好ましい。第1火工材料と第2火工材料は、燃料、酸化剤及び必要に応じて他の添加剤を含有するものであるが、第2火工材料は、他の添加剤としてバインダを含有していることが好ましい。
【0023】
第1火工材料と第2火工材料は、同一組成からなるものでもよいし、異なる組成からなるものでもよい。例えば、第1火工材料として点火感度の高いものを用いることで、第1層17が主として点火機能を発現できるようにすることができ、第2火工材料として高い出力を生じさせるもの(点火感度は第1火工材料よりも低くてもよい)を用いることで、第2層18が主として出力機能を発現できるようにすることができる。
【0024】
第1層17と第2層18の厚さ比率は特に制限されないが、上記したように、第1層17に主として点火機能を付与し、第2層18に主として出力機能を付与する場合には、第2層18の厚みが第1層17の厚みよりも大きい方が好ましく、第2層18の厚みは第1層17の厚みの1〜10倍にすることができる。
【0025】
〔電気式点火器の製造方法〕
図1で示す電気式点火器1の製造方法において、完成された点火器本体10を用いて電気式点火器を製造する方法自体は公知であり(但し、図2で示す点火器本体10は公知ではない)、例えば、特開2004−293835号公報などに記載されている。
【0026】
本発明の製造方法では、点火器本体10の製造に際して、収容室16に火工材料を充填するとき、乾燥状態の第1火工材料を先に充填して、ブリッジワイヤ14上に第1層17を形成した後、第1層17の上に湿潤状態の第2火工材料を充填して第2層18を形成する工程を含むことが特徴であり、他の部分の組立方法は公知である。
【0027】
まず、ヘッダ部11、絶縁体12、2本の導電ピン13a、13b、ブリッジワイヤ14が一体に組み立てられた状態にて、筒状のチャージホルダ15の一端周縁をヘッダ部11上に固定する。
【0028】
次に、収容室16内に所要量の乾燥状態の第1火工材料を充填して、第1層17を形成する。このとき、収容室16の上から押圧して(例えば、圧力10〜200MPaで押圧して)、第1層17とブリッジワイヤ14を圧接させる。
【0029】
第1火工材料の充填量、即ち第1層17の厚みは特に制限されないが、充填時及び押圧作業時において、第1火工材料が収容室16からこぼれ出ることを防止する観点から、収容室16の深さ(ブリッジワイヤ14のある底面からチャージホルダ15の開口部までの間隔)の2/3以下であることが好ましく、1/2以下であることがより好ましく、1/3以下であることが更に好ましい。
【0030】
第1火工材料は、粉末状のものであり、できるだけ水分を含んでいないものが好ましい。また、第1火工材料は、主に点火機能を発現できるものが好ましく、ブリッジワイヤ14の発熱による点火感度が高いものが好ましい。第1火工材料は、燃料と酸化剤を含み、必要に応じて他の公知の添加剤を含むものを用いることができる。
【0031】
燃料は、ジルコニウム、鉄、すず、マンガン、コバルト、ニッケル、タングステン、チタン、マグネシウム、アルミニウム、ニオビウム及びそれらの混合物から選ばれるものを用いることができる。これらの中でもジルコニウムが好ましい。
【0032】
酸化剤は、塩素酸カリウムなどの塩素酸塩、過塩素酸カリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウムなどの過塩素酸塩、硝酸カリウムなどの硝酸塩及びこれらの混合物から選ばれるものを用いることができる。これらの中でも過塩素酸カリウムが好ましい。
【0033】
次に、第1層17上に、湿潤状態の第2火工材料を充填して第2層18を形成する。なお、第2火工材料を充填後、必要に応じて乾燥工程を設けることができる。
【0034】
スラリー状の第2火工材料を充填して、第2層18を形成する方法は、例えば、特開2004−115001号公報(段落37〜段落43、図2(a)〜(d)等)に記載の方法を適用できる。
【0035】
第2火工材料は、燃料、酸化剤、好ましくはバインダを含有し、必要に応じて更に公知の添加剤を含有するものと溶媒が混合されたスラリー状のものである。
【0036】
第2火工材料はバインダを含有することにより、スラリー状にしたとき、燃料及び酸化剤を均一に分散させることができるほか、好適な粘度範囲に設定できることにより、第2火工材料を収容室16に充填するときの作業性を高めることができ、更に充填後の第2火工材料が収容室16の内壁面に密着できるようになるため好ましい。
【0037】
燃料及び酸化剤は、第1火工材料と同じもののほか、酸化銅などの金属酸化物、シクロトリメチレントリニトラミン(RDX)、ニトログアニジンなどの合成火薬、シングルベース火薬などの混合火薬を用いることができる。
【0038】
バインダは、セルロース系樹脂、ウレタン樹脂、フッ素系ゴム組成物などを挙げることができるが、ヒドロキシプロピルセルロース、ニトロセルロース及びウレタン樹脂が好ましい。第2火工材料中のバインダの含有量は、燃料や酸化剤の種類に応じて異なるが、0.5〜15質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。
【0039】
その他の添加剤として、ガラス粉末、ガラスファイバー、セラミックスファイバー、スチールウール、ベントナイト、カオリナイト及びそれらの混合物からなる添加剤を用いることができる。
【0040】
溶媒は、第1層17を形成する第1火工材料に悪影響を与えないものが好ましく、例えば、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、ヘキサン、酢酸エチルなどの有機溶媒、水などを用いることができる。
【0041】
スラリー状の第2火工材料の粘度は、1〜500Pa・sが好ましく、5〜300Pa・sがより好ましい。
【0042】
本発明の製造方法では、第1層17と第2層18の間に中間層を形成する工程を設けることができる。
【0043】
中間層の形成工程は、第2火工材料に含まれている溶媒が第1層17に悪影響を及ぼすことを防止するため、第1層17上に中間層形成材料を配置して中間層を形成し、前記中間層の上に第2層18を形成する工程である。
【0044】
中間層形成材料としては、第1層17の露出面と同形状の可燃性材料、例えば、紙、不織布、樹脂シート、樹脂フィルム、金属箔などを用いることができる。なお、第2火工材料自体を前記した中間層形成材料で包み込んだものを第1層17上に配置してもよい。
【0045】
次に、第2層18を形成した後、チャージホルダ15とヘッダ部11の側面全体が覆われるようにアルミニウム製のカップ部材20を被せる。カップ部材20とヘッダ部11は、接触部分において溶接一体化して、湿気の侵入を防止する。
【実施例】
【0046】
〔配合例1(スラリー状の第2火工材料の配合例)〕
燃料:ジルコニウム 141g
酸化剤:過塩素酸カリウム 137.6g
バインダ:ヒドロキシプロピルセルロース 2g
溶媒:イソプロピルアルコール 64.2g
〔実施例1〕
図2に示す点火器本体10(但し、収容室16が空のもの)を用意した。円筒状の収容室16の深さは約5mmであった。
【0047】
まず、収容室16内に、第1火工材料(燃料:ジルコニウム55質量%、過塩素酸カリウム43質量%、バインダ2質量%)を充填した。その後、圧子を用いて、圧力9MPaにて上方から押圧して第1層17(厚さ1.5mm)を形成した。収容室16の深さに比べて少ない量の第1火工材料を充填したため、充填時及び押圧時において、収容室16から第1火工材料がこぼれ出ることはなかった。
【0048】
次に、配合例1の第2火工材料を用意し、第1層17の上に、定量ポンプにて滴下した。滴下後、乾燥させて、第2層18(厚さ3mm)を形成した。乾燥時において、第2層18には若干のボイドの発生が見られたが、第1層17が存在しており、火工材料全体とブリッジワイヤ14との接触は維持されているので、着火性には全く影響はない。
【0049】
その後、アルミニウム製のカップ部材20を被せて、ヘッダ部11との接触部分を溶接した。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】電気式点火器の縦断面図。
【図2】図1で用いた点火器本体の縦断面図。
【符号の説明】
【0051】
1 電気式点火器
10 点火器本体
11 ヘッダ部
14 ブリッジワイヤ
15 チャージホルダ
16 収容室
17 第1層
18 第2層


【出願人】 【識別番号】000002901
【氏名又は名称】ダイセル化学工業株式会社
【出願日】 平成18年8月29日(2006.8.29)
【代理人】 【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡

【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦

【識別番号】100091845
【弁理士】
【氏名又は名称】持田 信二

【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌


【公開番号】 特開2008−57805(P2008−57805A)
【公開日】 平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願番号】 特願2006−232212(P2006−232212)