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【発明の名称】 航法システム
【発明者】 【氏名】中久喜 健司

【要約】 【課題】計算能力の低い飛しょう体においても位置精度が非常に良いCPDGPS計算結果を利用できるようにするとともに、リアルタイムに飛しょう体の軌跡および到達ポイントを指令局側で正確に把握することが可能な航法システムを得る。

【解決手段】飛しょう体に搭載された航法装置1によるGPS受信機の観測データを、飛しょう体の監視および制御を行う指令局8へ送信し、指令局8側でGPS基準局11のデータと組み合わせてCPDGPS計算を実行する。その計算結果はテレメトリを通じて飛しょう体に再送信され、航法計算機によるGPSとINSの複合航法計算の自己位置計算の補正に使用する。また、この過程で、指令局8が飛しょう体の軌跡を精度良く把握することが可能となるため、ターゲット座標へ正確に誘導されたかどうかを把握することが可能になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛しょう体に搭載された航法装置と前記航法装置と通信を行う指令局とを備えた航法システムであって、
前記航法装置は、
GPS観測データを受信するための飛しょう体側GPS受信手段と、
前記飛しょう体側GPS受信手段により観測された前記GPS観測データを前記指令局に送信するための飛しょう体側送信手段と、
前記指令局から送信されてくる飛しょう体の位置を示す位置座標データを受信する飛しょう体側受信手段と、
INSデータを取得するための慣性誘導手段と、
前記INSデータと、前記飛しょう体側受信手段により受信した前記位置座標データとを用いて、GPSとINSによる複合航法計算を行う航法計算手段と
前記複合航法計算による計算結果に基づいて、飛しょう体の誘導制御を行う誘導制御手段と
を備え、
前記指令局は、
前記飛しょう体側送信手段から送信されてくる前記GPS観測データを受信する指令局側受信手段と、
GPS基準局からのGPS観測データを受信するGPS基準局データ受信手段と、
前記指令局側受信手段によって受信した前記飛しょう体の航法装置によって観測された前記GPS観測データと、前記GPS基準局からのGPS観測データとを用いて、CPDGPS計算を行い、前記GPS基準局からの飛しょう体への相対位置ベクトルを計算する相対位置ベクトル演算手段と、
計算された前記相対位置ベクトルを、前記GPS基準局の座標を用いて、絶対位置座標に変換する絶対位置座標演算手段と、
得られた前記絶対位置座標を、前記位置座標データとして、前記航法装置の前記飛しょう体側受信手段に送信する指令局側送信手段と
を備えていることを特徴とする航法システム。
【請求項2】
前記航法装置は、
前記飛しょう体側受信手段により受信した前記位置座標データの送信による時間遅れ分の誤差を修正する誤差修正手段
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の航法システム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は航法システムに関し、特に、航法システムにおける飛しょう体の誘導等に必要となる自己位置標定技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飛しょう体の誘導に必要となる自己位置座標の標定において、従来は慣性装置による自己位置計算が主流であった。慣性装置による自己位置計算では、自己位置の初期値のズレを補正する手段がないこと、飛しょう時間が長くなるにつれ誤差が蓄積していくことが問題であった。そこで、GPS(Global Positioning System)を用いて自己位置を補正する方法が考案され、飛しょう体ではすでにGPSを使った航法計算を行うものが実用化されている。例えば、米国の精密誘導爆弾JDAM(正式名称 GBU-29/-30/-31/-32)では、GPSおよびINS(慣性誘導装置:Inertial Navigation System)を使った誘導を行い、終末誘導ではシーカーを用いて命中精度を向上させるものが考案されている。GPSとINSを組み合わせた飛しょう体の誘導方法としては、他にもいくつかの方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
GPSとは、一般によく知られているように、複数打ち上げられているGPS衛星から衛星の軌道と、GPS衛星に搭載された原子時計からの時刻データとを含む電波信号をGPSアンテナにより受信し、GPS受信機により、受信した電波の時間差によりそれぞれの衛星との相対的な距離差を算出し、その軌跡である双曲面の交点を求めることで現在地情報を得るものである。3個の衛星の電波を捉えれば地球上の平面での位置がわかり(2次元測位)、4個以上の衛星の電波を捉えればさらに高度の情報を得ることができる(3次元測位)。
【0004】
また、INSとは、ジャイロで方角を、加速度計で加速度を求め、それらを積分することで速度が求められ、速度を積分すれば自分が移動した距離が求められるので、それを原理とした慣性誘導装置である。INSでは、最初に自分がいた位置を入力しておけば、当該原理により、移動し始めても自分の位置と速度を常に計算して把握することができる。但し、長い距離を移動すると、誤差が累積されて精度が落ちるため、GPS誘導やドップラーレーダー航法装置などによる補正を加えて使用することが多い。
【0005】
これらの従来技術は、飛しょう体等の移動体に搭載されたGPS受信機の観測値のみを用いて自己位置標定を行うものであるため、どうしても誤差が発生してしまい、自己位置標定精度は数メートルから十数メートル程度である。
【0006】
これに対して、高精度なGPS測位手法として一般的に知られているCPDGPS(Carrier Phase Differential GPS)などの相対測位手法を用いれば、数センチから数十センチの精度で測位計算が可能となる。これは、移動体の他に、位置の分かっているGPS基準局(固定局)でもGPS電波を受信し、誤差を消去する方法である。そのため、飛しょう体でCPDGPSの計算を行うには、飛しょう体自身により得られるGPS観測データだけではなく、座標が正確に分かっているGPS基準局で受信したGPS観測データも必要となるため、そのデータをGPS基準局から飛しょう体に送信する必要があることや、その計算負荷などが問題となる。
【0007】
【特許文献1】特表2006−514258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、飛しょう体の自己位置計算を精度よく行うためには、CPDGPS計算を利用することが望ましいが、CPDGPS計算には、座標が正確に分かっているGPS基準局のGPS観測データも必要であるため、その観測データを飛しょう体に送信して飛しょう体側でCPDGPS計算を行うしか方法が、一般に、飛しょう体に搭載されている計算機の能力は低いため、当該観測データの送信の問題とその計算負荷とが大きな問題点となっている。
【0009】
また、別の問題として、従来の飛しょう体では、指令局側で、飛しょう体の軌跡を把握する方法がなく、また、ターゲットとして設定した座標(ターゲット座標)へどの程度の精度で飛しょう体が到達したかを高精度に知る方法がないため、飛しょう体によるミッションが成功したかどうかを正確に把握することができないという問題点があった。
【0010】
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、計算能力の低い飛しょう体においても位置精度が非常に良いCPDGPS計算結果を利用できるようにするとともに、リアルタイムに飛しょう体の軌跡および到達ポイントを指令局側で正確に把握することが可能な航法システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、飛しょう体に搭載された航法装置と前記航法装置と通信を行う指令局とを備えた航法システムであって、前記航法装置は、GPS観測データを受信するための飛しょう体側GPS受信手段と、前記飛しょう体側GPS受信手段により観測された前記GPS観測データを前記指令局に送信するための飛しょう体側送信手段と、前記指令局から送信されてくる飛しょう体の位置を示す位置座標データを受信する飛しょう体側受信手段と、INSデータを取得するための慣性誘導手段と、前記INSデータと、前記飛しょう体側受信手段により受信した前記位置座標データとを用いて、GPSとINSによる複合航法計算を行う航法計算手段と前記複合航法計算による計算結果に基づいて、飛しょう体の誘導制御を行う誘導制御手段とを備え、前記指令局は、前記飛しょう体側送信手段から送信されてくる前記GPS観測データを受信する指令局側受信手段と、GPS基準局からのGPS観測データを受信するGPS基準局データ受信手段と、前記指令局側受信手段によって受信した前記飛しょう体の航法装置によって観測された前記GPS観測データと、前記GPS基準局からのGPS観測データとを用いて、CPDGPS計算を行い、前記GPS基準局からの飛しょう体への相対位置ベクトルを計算する相対位置ベクトル演算手段と、計算された前記相対位置ベクトルを、前記GPS基準局の座標を用いて、絶対位置座標に変換する絶対位置座標演算手段と、得られた前記絶対位置座標を、前記位置座標データとして、前記航法装置の前記飛しょう体側受信手段に送信する指令局側送信手段とを備えた航法システムである。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、飛しょう体に搭載された航法装置と前記航法装置と通信を行う指令局とを備えた航法システムであって、前記航法装置は、GPS観測データを受信するための飛しょう体側GPS受信手段と、前記飛しょう体側GPS受信手段により観測された前記GPS観測データを前記指令局に送信するための飛しょう体側送信手段と、前記指令局から送信されてくる飛しょう体の位置を示す位置座標データを受信する飛しょう体側受信手段と、INSデータを取得するための慣性誘導手段と、前記INSデータと、前記飛しょう体側受信手段により受信した前記位置座標データとを用いて、GPSとINSによる複合航法計算を行う航法計算手段と前記複合航法計算による計算結果に基づいて、飛しょう体の誘導制御を行う誘導制御手段とを備え、前記指令局は、前記飛しょう体側送信手段から送信されてくる前記GPS観測データを受信する指令局側受信手段と、GPS基準局からのGPS観測データを受信するGPS基準局データ受信手段と、前記指令局側受信手段によって受信した前記飛しょう体の航法装置によって観測された前記GPS観測データと、前記GPS基準局からのGPS観測データとを用いて、CPDGPS計算を行い、前記GPS基準局からの飛しょう体への相対位置ベクトルを計算する相対位置ベクトル演算手段と、計算された前記相対位置ベクトルを、前記GPS基準局の座標を用いて、絶対位置座標に変換する絶対位置座標演算手段と、得られた前記絶対位置座標を、前記位置座標データとして、前記航法装置の前記飛しょう体側受信手段に送信する指令局側送信手段とを備えた航法システムであるので、計算能力の低い飛しょう体においても位置精度が非常に良いCPDGPS計算結果を利用できるようにするとともに、リアルタイムに飛しょう体の軌跡および到達ポイントを指令局側で正確に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
以下、図を用いて、この発明の実施の形態1にかかる航法システムについて説明する。本実施の形態1においては、飛しょう体として、予め設定された固定の座標値(ターゲット座標)を目標として発射されるものを前提とし、飛しょう体側のGPS観測データをテレメトリによって指令局へ送信し、指令局側で計算負荷の高い処理を実行する航法システムについて説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態1による高精度自己位置評定を可能にする航法システムの構成を示したものである。図1において、1は、飛しょう体(移動体)に搭載された航法装置(移動局)であり、8は、航法装置1と通信を行う指令局(固定局または移動局)である。
【0015】
航法装置1には、図1に示すように、GPSおよびINS複合の航法計算を行うための航法計算機2と、当該航法計算に用いるGPS観測データ(GPS衛星の軌道とGPS衛星に搭載された原子時計からの時刻データを含む)を少なくとも2以上のGPS衛星から受信するためのGPSアンテナ3と、GPSアンテナ3により受信されたGPS観測データが入力されて、それに基づく自己位置座標を取得するGPS受信機4と、航法計算機2による航法計算で用いられるINSデータを得るための慣性センサ(INS:Inertial Navigation System)5とが設けられ、これらによってGPSおよびINS複合の航法系を構成することが可能になっている。以上の構成のみでもGPSとINSによる複合航法を行うことはできるが、さらに精度を上げるためにCPDGPS計算を実行するためには、航法装置1に、テレメトリ送受信機7を追加し、指令局8へ飛しょう体で観測したGPS観測データを送信する。
【0016】
指令局8には、当該GPS観測データを飛しょう体の航法装置1から受信するためのテレメトリ送受信9と、座標が正確に分かっているGPS基準局11(固定局)からのGPS観測データを取得して、当該GPS観測データと飛しょう体からのGPS観測データとの両方を用いてCPDGPS計算を行う計算機10とが設けられている。当該構成において、指令局8においては、飛しょう体により得られたGPS観測データをテレメトリ送受信機9により受信するとともに、位置の分かっているGPS基準局11で取得したGPS観測データを受信して、それらを用いてCPDGPS計算を行う。具体的には、計算機10では、飛しょう体により得られたGPS観測データとGPS基準局11で取得したGPS観測データとに基づいて、GPS基準局11からの飛しょう体への相対位置ベクトルを計算する。なお、指令局8は地上の施設に設置するだけではなく、航空機や船舶等の移動体に設置してもよい。その計算精度は、計算に使用するGPS信号の周波数の数や、観測値の誤差の大きさ、観測時間に応じて決まり、十分な数のGPS衛星数が確保できれば数センチから数十センチの精度で相対位置ベクトルを計算することが可能である。
【0017】
次に、計算機10は、計算された相対位置ベクトルをGPS基準局11の座標を使って絶対位置座標に変換し、飛しょう体の位置座標データとして、テレメトリ送受信機9を介して、飛しょう体の航法装置1のテレメトリ送受信機7に送信する。このような形態をとる場合、計算された絶対位置座標データが飛しょう体に送信されるまでの間の時間遅れが問題となるが、飛しょう体側で過去の自己位置標定結果の座標を記憶装置(図示省略)に記憶しておき、その座標値と指令局8から送信されてきた座標値との差分を航法計算機2で計算することで自己位置の誤差を計算して補正する。通常、GPSとINSとの複合航法系を構成している場合、位置誤差はランダムに変化するものではなく、ある程度の時定数をもって緩やかに変化していくものであるため、1〜2秒の時間遅れがあったとしても、自己位置座標の誤差修正は有効に行うことができる。なお、上記記憶装置と航法計算機2とは、テレメトリ送受信機7により受信した絶対位置座標データの送信による時間遅れ分の誤差を修正する誤差修正手段を構成している。このようにして誤差修正を行った位置座標データをGPS観測データとし、慣性センサ5のINSデータとともに用いて、航法計算機2でGPSとINSとを用いた航法計算を行って、自己位置標定結果が得る。航法計算機2は、計算した自己位置標定結果を、航法装置1に設けられている誘導装置6に入力し、誘導装置6が、それに基づいて飛しょう体の誘導制御を行なう。
【0018】
以上のように、本実施の形態においては、飛しょう体のGPS受信機4のGPS観測データを、飛しょう体の監視および制御を行う指令局8へ送信し、指令局8側でGPS基準局11からのGPS観測データと組み合わせてCPDGPS計算を実行し、その計算結果をテレメトリを通じて飛しょう体に再送信し、自己位置計算の補正に使用するようにしたので、計算能力の低い飛しょう体においても位置精度が非常に良いCPDGPS計算結果を利用することができ、精度の良い飛しょう体の自己位置標定結果に基づく飛しょう体の誘導制御を行うことができる。
【0019】
また、飛しょう体のGPS受信機4のGPS観測データを指令局8へ送信する構成としたので、当該過程で、指令局8が飛しょう体の軌跡を精度良く把握することが可能となるため、ターゲット座標へ正確に誘導されたかどうかを把握することが可能になる。そのため、指令局8において、飛しょう体が目標座標へ到達したかどうかだけでなく、その到達精度まで知ることが可能となる。
【0020】
なお、上記の説明においては、指令局8でCPDGPS計算を実行し、その計算結果をテレメトリを通じて飛しょう体に再送信して自己位置計算の補正に使用する例について説明したが、その場合に限らず、例えば、通信異常等の原因により、指令局8との通信が行えない場合には、航法計算機2が、GPS受信機4により取得したGPS観測データと、慣性センサ5により取得したINSデータとを用いて、GPSとINSによる複合航法を行い、自己位置標定結果が得て、誘導装置6がそれに基づいて飛しょう体の誘導制御を行なうようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施の形態1に係る航法システムの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0022】
1 飛しょう体の航法装置、2 航法計算機、3 GPSアンテナ、4 GPS受信機、5 慣性センサ、6 誘導装置、7 テレメトリ送受信機、8 指令局、9 テレメトリ送受信機、10 計算機、11 GPS基準局。
【出願人】 【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【出願日】 平成19年3月26日(2007.3.26)
【代理人】 【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治

【識別番号】100084010
【弁理士】
【氏名又は名称】古川 秀利

【識別番号】100094695
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 憲七

【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順

【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏

【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一


【公開番号】 特開2008−241079(P2008−241079A)
【公開日】 平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願番号】 特願2007−79382(P2007−79382)