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【発明の名称】 熱交換器のパイプ取付け部の製造方法およびそのパイプ取付け部構造
【発明者】 【氏名】佐藤 穣治

【要約】 【課題】プレス加工による一対のプレート4を有し、そのプレート4の凹部1と縁2との間を断面半円状の溝部3で連通し、その溝部3に出入口パイプ5を嵌着してろう付け固定した熱交換器において、出入口パイプ5の外周と溝部3との液密性を確保すること。

【解決手段】第1プレス金型20により、溝部3の軸線に平行な開口縁部3aを周縁部1aの平面より僅かに立ち上げて、そこに凸縁部18を形成する。次いで、第2プレス金型21によりプレート4の開口縁部3aを塑性変形して、凸縁部18を周縁部1aの平面に面一に且つ、その凸縁部18を開口縁部3aに移動して、その開口縁部3aをシャープエッジ19に形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス金型により、周縁部(1a)を残して全体に浅い凹部(1)を形成すると共に、その周縁部(1a)の一部に前記凹部(1) とその縁(2)とを連通する断面半円状の溝部(3)を設けて、互いに整合する一対のプレート(4)を形成するプレス工程と、
それぞれの凹部(1)および溝部(3)を対向して両プレート(4)を重ね合わせると共に、前記溝部(3) に出入口パイプ(5)を嵌着して熱交換器を組み立てる組立て工程と、
それら各部品の各接触部間を互いに液密にろう付け固定するろう付け工程と、を有する熱交換器の製造方法において、
前記プレート(4)を形成するプレス工程は、第1プレス金型(20)により、前記溝部(3)の軸線に平行な一対の溝部開口縁部(3a)を前記周縁部(1a)の平面より僅かに立ち上げて、そこに凸縁部(18)を形成する第1プレス工程と、
ついで、第2金型(21)により前記プレート(4)の前記溝部(3)を塑性変形して、前記凸縁部(18)を前記周縁部(1a)の平面に面一に且つ、その凸縁部(18)の材料分を前記開口縁部(3a)に移動して、その断面の曲率を極めて小としたシャープエッジ(19)に形成する第2プレス工程と、を具備する熱交換器のパイプ取付け部の製造方法。
【請求項2】
請求項1により製造されたプレート(4)のパイプ取付け部構造。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、主として水冷ヒートシンクとして用いられる熱交換器のパイプ取付け部の製造方法およびそのパイプ取付け部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
パワートランジスター等の発熱量の大きな電子部品または電子機器を冷却する水冷ヒートシンクとして、皿状に形成された一対のプレートと、その端部に設けられた一対の冷却水出入口パイプとを有するものが下記特許文献として知られている。この一対のプレートは、プレス成形加工により周縁部を残して全体に浅い凹部が形成されると共に、その周縁部の一部に凹部とその縁とを連通する断面半円形の溝部が形成されている。そしてその溝部には、図7に示す如く出入口パイプ5が嵌着され、各部品間が一体にろう付け固定される。
【0003】
【特許文献1】特開昭63−223498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のプレス加工による熱交換器の出入口パイプの取付け部は、図7に示す如く、その出入口パイプ5と一対のプレート4との間に隙間13が形成され、そこにろう付け不良が生じる。これは溝部3の縁が断面R状に形成されるためである。即ち、通常のプレス加工では溝部3の縁の外R部分を最小にしようとしても板厚に応じたRが形成されてしまう。
そこで本発明は、係る問題点を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、プレス金型により、周縁部(1a)を残して全体に浅い凹部(1)を形成すると共に、その周縁部(1a)の一部に前記凹部(1) とその縁(2)とを連通する断面半円状の溝部(3)を設けて、互いに整合する一対のプレート(4)を形成するプレス工程と、
それぞれの凹部(1)および溝部(3)を対向して両プレート(4)を重ね合わせると共に、前記溝部(3) に出入口パイプ(5)を嵌着して熱交換器を組み立てる組立て工程と、
それら各部品の各接触部間を互いに液密にろう付け固定するろう付け工程と、を有する熱交換器の製造方法において、
前記プレート(4)を形成するプレス工程は、第1プレス金型(20)により、前記溝部(3)の軸線に平行な一対の溝部開口縁部(3a)を前記周縁部(1a)の平面より僅かに立ち上げて、そこに凸縁部(18)を形成する第1プレス工程と、
ついで、第2金型(21)により前記プレート(4)の前記溝部(3)を塑性変形して、前記凸縁部(18)を前記周縁部(1a)の平面に面一に且つ、その凸縁部(18)の材料分を前記開口縁部(3a)に移動して、前記開口縁部(3a) の断面の曲率を極めて小としたシャープエッジ(19)に形成する第2プレス工程と、を具備する熱交換器のパイプ取付け部の製造方法である。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、請求項1により製造されたプレート(4)のパイプ取付け部構造である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のパイプ取付け部の製造方法は、第1プレス金型20によりプレート4の溝部3の開口縁部3aを凸縁部18に形成する第1プレス工程を経て、第2プレス金型21によりその溝部3の凸縁部18を平坦にして、その開口縁部3aをシャープエッジ19に形成するものである。即ち、凸縁部18を平坦にするとき、その材料分が開口縁部3aの断面R部を埋め、そこをシャープエッジ19にする。それにより、出入口パイプ5を一対のプレート4の溝部3に嵌着したとき、一対のプレート4の重ね合わせ部と出入口パイプ5外周との間に隙間が生ぜず、それらの間のろう付けが確実に行われ、熱交換器の信頼性が向上する。それと共に、体裁がよく且つろう付け時にろう材が外部に流出することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
図1(A)(B)は、本発明の熱交換器のプレート4の第1プレス工程と第2プレス工程とを順に示す断面説明図である。また、図2は本発明の方法によって製造された熱交換器の要部分解図、図3は同組立て状態を示す要部斜視図、図4は図3のIV−IV矢視断面図、図5は図4のV−V矢視断面図である。さらに、図6は同熱交換器の平面図である。
この発明の対象とする熱交換器は、水冷ヒートシンクとして用いるものであり、図2および図6に示す如く、一対のプレート4と両プレート4間に介装されるインナーフィン11および出入口パイプ5を具備する。
【0009】
プレート4はプレス金型により成形加工され、周縁部を残して全体に浅い凹部1が形成されると共に、そのプレート4の幅方向の両側に凹部1と縁2とを連通する断面半円形の溝部3が、図2,図6の如く一対形成されている。そしてその長手方向中央部には、凹部1の存在しない仕切部15が設けられている。
なお、一対の溝部3をプレートの長手方向の両端部に配置してもよい。その場合には、上記仕切部は不要である。
【0010】
一対のプレート4は、互いに整合する形状を有するようにプレス金型によってプレス加工される。その際、凹部1と溝部3とは同時にプレス成形され、その溝部3は図1の(A)に示す如く、雄型20aと雌型20bとからなる第1プレス金型20によりプレス成形し、その溝部3の軸線に平行な一対の開口縁部3aを周縁部1aの平面より僅かに上方に立ち上げて、そこに凸縁部18を形成する。そのために、第1プレス金型20の雄型20aは、凸縁部18が突出する分だけ、そこが予め凹んだ形状とし、雌型20bは、プレート4の凸縁部18の裏面側が僅かに凹陥する分だけ、それに対応する部分を凸条に形成している。
【0011】
係る第1プレス工程の次に、同図(B)の如く、第2プレス金型21により、開口縁部3aの凸縁部18を平坦にし、その開口縁部3aにシャープエッジ19を形成する。これは、雄型21aと雌型21bとからなる第2プレス金型21によって、プレス成形するものである。この雄型21aは、開口縁部3aのシャープエッジ19に整合するようにその横断面をシャープに形成しておく。同様にその雌型21bの溝部3成形用の縁部もシャープにしてある。このようにすることにより、第2プレス加工の際に、凸縁部18の材料分が開口縁部3aに移動して、プレート4の溝部3はその縁部を含め完全な半円形となる。そしてこのようなプレート4を互いに対向させて重ね合わせることにより、その溝部3の縁部における重ね合わせ部は互いに接触して、それに挟持された出入口パイプ5の外周を完全に被嵌する。
【0012】
なお、この例では図2に示す如く、出入口パイプ5はその先端部側から第2突条7と第1突条6とが膨出形成され、その第2突条7に整合するように溝部3に弧状スリット8が設けられる。そして第2突条7が弧状スリット8に嵌着したとき、プレート4の縁2と出入口パイプ5の第1突条6とが当設する。この第1突条6および第2突条7は、ろう付けの際に、そこにろう材のフィレットを形成して、隙間を閉塞し、ろう付けの信頼性を高めるものである。
【0013】
また、下側のプレート4の縁の適宜位置に複数の係止用爪10が立ち上げられ、それに整合して上側のプレート4に複数の欠切部9が形成されている。プレート4の内部に挿入されるインナーフィン11は、その高さが一方のプレート4の凹部1の深さの2倍に形成され且つ、その長さは凹部1の長さよりも僅かに小に形成されている。この例では、仕切部15を挟み、2つのインナーフィン11が各凹部1に嵌着される。
なお、プレート4の形状は図6の形状に限らず、適宜設計変更できる。
【0014】
このようにしてなるプレート4の溝部3に出入口パイプ5が嵌着する。そして溝部3の弧状スリット8に第2突条7が嵌着し、第1突条6が溝部3の縁2に接触した状態で、一対のプレート4が図3の如く組み立てられる。なお、プレート4の内面は予めろう材が被覆されたクラッド材を用いることができる。プレート4の一例としては、アルミニュームのクラッド材を用いることができる。あるいは、前記クラッド材の代わりに箔状のろう材または粉状のろう材を用いてもよい。その場合には、プレート4としてステンレス鋼板等を用いることができる。
【0015】
各部品が組み立てられると、プレート4に設けられた係止用爪10がカシメられて、その組立て状態が保持される。そして全体が高温の炉内に挿入され、被覆されたろう材により各部品間が液密にろう付け固定される。その溝部3と出入口パイプ5とにおけるろう付け状態を示したのが、図4及び図5である。
【0016】
このようにしてなるヒートシンク用熱交換器は、図6に示す如く、一方の出入口パイプ5から冷却水16(または他の冷媒)が熱交換器14内に入り、それが仕切部15の回りをU字状に流通して他方の出入口パイプ5より流出する。そして熱交換器14の外面に取付けられる図示しない電子部品が冷却水16を介して冷却され、暖められた冷却水16は図示しない他の熱交換器によって冷却され、再び一方の出入口パイプ5から熱交換器14内に流入して循環する。
なお、実験によれば図1の(A)(B)の2工程で溝部3を形成すると、その外面側の隅に多少シワが生じ減肉が生じたが、合わせ面には問題が生じなかった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の製造方法によるプレート4の成形を第1プレス金型20および第2プレス金型21で順に行う要部断面図。
【図2】同製造方法により製造された熱交換器の要部分解図。
【図3】同熱交換器の組立て状態を示す要部斜視図。
【0018】
【図4】図3のIV−IV矢視断面図。
【図5】図4のV−V矢視断面図。
【図6】同熱交換器の平面図。
【図7】従来型熱交換器の要部分解図および組立て状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0019】
1 凹部
1a 周縁部
2 縁
3 溝部
3a 開口縁部
4 プレート
5 出入口パイプ
6 第1突条
7 第2突条
8 弧状スリット
【0020】
9 欠切部
10 係止用爪
11 インナーフィン
12 斜面
13 隙間
14 熱交換器
15 仕切部
16 冷却水
17 ろうフィレット
【0021】
18 凸縁部
19 シャープエッジ
20 第1プレス金型
20a 雄型
20b 雌型
21 第2プレス金型
21a 雄型
21b 雌型
【出願人】 【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
【出願日】 平成19年3月13日(2007.3.13)
【代理人】 【識別番号】100082843
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 卓美


【公開番号】 特開2008−224134(P2008−224134A)
【公開日】 平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願番号】 特願2007−62937(P2007−62937)