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【発明の名称】 熱交換器及び熱交換器を備えたガスレーザ装置
【発明者】 【氏名】前田 道徳

【氏名】和泉 貴士

【要約】 【課題】多板式の熱交換器において、第1流路に対する流体の導入又は導出方向に関わらず、第1流路の複数の第1室に流体を、その圧力損失を削減しつつ可及的均等に流す。

【解決手段】熱交換器10は、複数の第1室12を含む第1流路14と、複数の第2室16を含む第2流路18とを備える。それら第1室と第2室とは、伝熱壁20を介して互いに隣接かつ分離した状態で、交互に並んで配置される。第1流路14は、複数の第1室12に流体f1を導入する第1導入路22と、それら第1室12から流体f1を導出する第1導出路24とをさらに含む。第1導入路22及び第2導出路24の各々は、伝熱壁20の熱交換表面20aに交差する方向へ流体f1を案内する構造を有する。第1導入路22及び第1導出路24の少なくとも一方が、流体f1を複数の第1室12に対し、所望の流量ずつ分配して円滑に案内する整流分配部材30を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1室を含む第1流路と、複数の第2室を含む第2流路とを備え、該第1流路の該複数の第1室と該第2流路の該複数の第2室とが、伝熱壁を介して互いに隣接かつ分離した状態で、交互に並んで配置される、熱交換器において、
前記第1流路は、前記複数の第1室に流体を導入する導入路と、該複数の第1室から該流体を導出する導出路とをさらに含み、該導入路及び該導出路の各々は、前記伝熱壁の熱交換表面に交差する方向へ該流体を案内する構造を有し、
前記導入路及び前記導出路の少なくとも一方が、前記流体を前記複数の第1室に対し、所望の流量ずつ分配して円滑に案内する整流分配部材を備えていること、
を特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記整流分配部材は、前記第1流路の前記導入路及び前記導出路の少なくとも一方の流路断面積を、前記複数の第1室に対して分配される前記流量の比に従って分割する案内壁を有する、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記第1流路の前記導出路が前記整流分配部材を備えている、請求項1又は2に記載の熱交換器において、該導出路の該整流分配部材は、複数の異なる方向から該導出路へ前記流体が流れ込むときに、該流体同士の衝突を回避する障壁を有する、請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項4】
媒質ガスを励起してレーザビームを生成する発振部と、該発振部に接続され、媒質ガスが圧力下で流動する媒質回路を形成する循環路と、該循環路に設置され、媒質ガスを該媒質回路内で強制的に高速循環させる送風機と、該送風機の上流側及び下流側で該循環路に設置される一対の熱交換器とを具備するガスレーザ装置において、
前記一対の熱交換器の各々が、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱交換器であり、該熱交換器の前記第1流路が前記循環路に接続されること、を特徴とするガスレーザ装置。
【請求項5】
前記一対の熱交換器の少なくとも一方は、前記送風機に接続される前記導入路及び前記導出路のいずれか一方に、該送風機の翼の回転方向に対応する方向へ螺旋状に媒質ガスを案内する案内部材を備えている、請求項4に記載のガスレーザ装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関する。本発明はさらに、媒質ガスを適温に維持するための熱交換器を備えたガスレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ媒質を含有する混合ガス(本願で媒質ガスと称する)を用いるガスレーザ装置は、比較的単純な構造で高出力が得られることから、加工、医療、計測等の分野で広く用いられている。ガスレーザ装置のレーザ発振機構は、一般に、媒質ガスを励起(放電、光、熱、化学反応等による)してレーザビームを生成(光共振による)する発振部と、発振部に接続され、媒質ガスが圧力下で流動する媒質回路を形成する循環路と、循環路に設置され、媒質ガスを媒質回路内で強制的に高速循環させる送風機と、送風機の上流側及び下流側で循環路に設置され、媒質回路を流動する媒質ガスを適温に維持する一対の熱交換器とを備えて構成される。
【0003】
ガスレーザ装置に装備される熱交換器の一例として、複数の第1室を含む第1流路と、複数の第2室を含む第2流路とを備え、第1流路の複数の第1室と第2流路の複数の第2室とが、伝熱壁を介して互いに隣接かつ分離した状態で交互に並んで配置される、いわゆる多板式(或いはプレート式)の構成を有する熱交換器が知られている。この熱交換器は、第1流路を循環路に接続することでガスレーザ装置に設置される。そして、ガスレーザ装置の媒質回路を流動する媒質ガスは、熱交換器の第1流路を流れる間に、第2流路を流れる冷却用流体との間で伝熱壁を介して熱交換することにより、適宜冷却されて適温に維持される。
【0004】
ガスレーザ装置においては、レーザビームを安定して連続的に発振できるようにするために、媒質ガスの温度を一定に維持する必要が有り、また、ガスレーザ装置の出力が高まるに伴い、発振部における媒質ガスの温度上昇も大きくなるので、優れた冷却能力を有する熱交換器を装備することが要求される。特に、上記した多板式の熱交換器をガスレーザ装置に装備する場合には、熱交換器の第1流路の複数の第1室に、媒質ガスを、その圧力損失を削減しつつ可及的均等に流すことで、媒質ガスを効率良く冷却できることが判っている。
【0005】
このような観点で、例えば特許文献1は、多板式の熱交換器において、第1流路の個々の第1室に設けられる流体の入口及び出口に、流体の流れを整流する整流板を設置した構成を開示する。この熱交換器では、第1流路に対する流体の導入方向及び導出方向が、各第1室内での流体の主たる流動方向に略直交する方向となっているので、流動方向が局所的に変化する領域に整流板を設置することで、第1流路における流体(例えば媒質ガス)の圧力損失を削減することができる。
【0006】
【特許文献1】特開2002−318095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した特許文献1に記載される熱交換器は、第1流路に対する流体の導入方向及び導出方向が、第1流路の複数の第1室と第2流路の複数の第2室との間に介在する伝熱壁の熱交換表面に平行な方向となっているから、全ての第1室に対して均一な圧力で流体の導入及び導出を行なうことができる。しかし、例えば複数の第1室の入口及び出口に、流体を第1流路に対して伝熱壁の熱交換表面に交差(特に直交)する方向に導入又は導出する流体案内構造を設けた場合には、個々の第1室に対する流体の導入圧力又は導出圧力に差が生じるので、複数の第1室に流体を一様な流量で流すことが困難になる危惧がある。特に、そのような構造の熱交換器をガスレーザ装置に装備した場合には、媒質回路における媒質ガスの流動圧力が一般にさほど高くないので、媒質ガスに対する冷却能力が不足することが懸念される。
【0008】
本発明の目的は、第1流路の複数の第1室と第2流路の複数の第2室とが伝熱壁を介して互いに隣接かつ分離した状態で交互に並んで配置される多板式の熱交換器において、第1流路を流れる流体の流動圧力が比較的低い場合にも、第1流路に対する流体の導入方向や導出方向に関わらず、複数の第1室に流体を、その圧力損失を削減しつつ可及的均等に流すことができ、以って流体を効率良く冷却できる熱交換器を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、媒質ガスを適温に維持するための熱交換器を媒質回路に装備したガスレーザ装置において、優れた冷却能力を有する熱交換器を装備して、高出力のレーザビームを安定して連続的に発振できるガスレーザ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、複数の第1室を含む第1流路と、複数の第2室を含む第2流路とを備え、第1流路の複数の第1室と第2流路の複数の第2室とが、伝熱壁を介して互いに隣接かつ分離した状態で、交互に並んで配置される、熱交換器において、第1流路は、複数の第1室に流体を導入する導入路と、複数の第1室から流体を導出する導出路とをさらに含み、導入路及び導出路の各々は、伝熱壁の熱交換表面に交差する方向へ流体を案内する構造を有し、導入路及び導出路の少なくとも一方が、流体を複数の第1室に対し、所望の流量ずつ分配して円滑に案内する整流分配部材を備えていること、を特徴とする熱交換器を提供する。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の熱交換器において、整流分配部材は、第1流路の導入路及び導出路の少なくとも一方の流路断面積を、複数の第1室に対して分配される流量の比に従って分割する案内壁を有する、熱交換器を提供する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、第1流路の導出路が整流分配部材を備えている、請求項1又は2に記載の熱交換器において、導出路の整流分配部材は、複数の異なる方向から導出路へ流体が流れ込むときに、流体同士の衝突を回避する障壁を有する、熱交換器を提供する。
【0013】
請求項4に記載の発明は、媒質ガスを励起してレーザビームを生成する発振部と、発振部に接続され、媒質ガスが圧力下で流動する媒質回路を形成する循環路と、循環路に設置され、媒質ガスを媒質回路内で強制的に高速循環させる送風機と、送風機の上流側及び下流側で循環路に設置される一対の熱交換器とを具備するガスレーザ装置において、一対の熱交換器の各々が、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱交換器であり、熱交換器の第1流路が循環路に接続されること、を特徴とするガスレーザ装置を提供する。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のガスレーザ装置において、一対の熱交換器の少なくとも一方は、送風機に接続される導入路及び導出路のいずれか一方に、送風機の翼の回転方向に対応する方向へ螺旋状に媒質ガスを案内する案内部材を備えている、ガスレーザ装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、導入路及び導出路の少なくとも一方に整流分配部材を備えることにより、第1流路を流れる流体の流動圧力が比較的低い場合にも、第1流路に対する流体の導入方向や導出方向に関わらず、複数の第1室に流体を、その圧力損失を削減しつつ可及的均等に流すことができ、その結果、流体を効率良く冷却することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、整流分配部材の案内壁の形状及び相対位置関係を適当に設計することにより、個々の第1室における流体の流れ易さの度合いに応じて、流体の流量の分割比を容易かつ正確に調整することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、導出路に設置した整流分配部材の障壁が、複数の異なる方向から導出路へ流れ込む流体に対し、流体同士の衝突を回避するように作用するから、第1流路内での流体の圧力損失が、効果的に削減される。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱交換器が奏する前述した格別の作用効果により、高出力のレーザビームを安定して連続的に発振できる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、熱交換器から排出される媒質ガスが送風機に円滑に吸入されるようになり、或いは、送風機から吐出される媒質ガスが熱交換器に円滑に吸入されるようになるから、送風機の効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図面を参照すると、図1は、本発明の第1の実施形態による熱交換器10の全体構成を概略で示す縦断面図、図2は、熱交換器10の全体構成を概略で示す斜視図、図3は、熱交換器10の内部構造を概略で示す横断面図である。
【0021】
熱交換器10は、複数の第1室12を含む第1流路14と、複数の第2室16を含む第2流路18とを備え、第1流路14の複数の第1室12と第2流路18の複数の第2室16とが、伝熱壁20を介して互いに隣接かつ分離した状態で交互に並んで配置される、いわゆる多板式(或いはプレート式)の構成を有する。第1流路14は、複数の第1室12に第1の流体f1を導入する第1導入路22と、複数の第1室12から第1の流体f1を導出する第1導出路24とをさらに含む(図3(a))。また、第2流路18は、複数の第2室16に第2の流体f2を導入する第2導入路26と、複数の第2室16から第2の流体f2を導出する第2導出路28とをさらに含む(図3(b))。
【0022】
図示のように、熱交換器10では、第1流路14の複数の第1室12はいずれも同一の流路断面積を有し、第2流路18の複数の第2室16はいずれも同一の流路断面積を有する。また、第1導入路22と第1導出路24とは互いに同一の流路断面積を有し、第2導入路26と第2導出路28とは互いに同一の流路断面積を有する。さらに、第1流路14の第1導入路22の入口22a及び第1導出路24の出口24a、並びに第2流路18の第2導入路26の入口26a及び第2導出路28の出口28aが、いずれも熱交換器10の同一側で、最も外側の第2室16に隣接して形成されており、それにより、第1及び第2の流体f1、f2の流れの方向は、導入側と導出側とで互いに反対方向(図示矢印)となっている。
【0023】
熱交換器10の第1流路14には、例えば後述するガスレーザ装置の媒質ガスのような、冷却対象となる第1の流体f1が送給される。また第2流路18には、第1の流体f1に対して冷媒となる第2の流体f2が送給される。第1の流路14と第2の流路18とは、図示しない気密封止構造によって、互いに流体流通不能に分離される。外部の流体回路(図示せず)から第1流路14の第1導入路22を介して複数の第1室12に導入された高温の第1の流体f1は、それら第1室12を流れる間に、外部の冷媒回路(図示せず)から第2流路18の第2導入路26を介して複数の第2室16に導入された第2の流体f2との間で、伝熱壁20を介して熱交換することにより、適宜冷却されて適温に維持される。熱交換により冷却された第1の流体f1は、第1導出路24を介して複数の第1室12から外部の流体回路へ導出される。また、熱交換により昇温した第2の流体f2は、第2導出路28を介して複数の第2室16から外部の冷媒回路へ導出される。
【0024】
伝熱壁20は、ステンレス、アルミニウム等の、流体f1及びf2に対して化学的に安定で、かつ優れた伝熱性を有する材料から作製される。伝熱壁20は、複数段に渡って隣り合う第1室12と第2室16との間に個々に介在して、それら第1及び第2室12、16を画定する。第1室12及び第2室16の内部空間に露出する各伝熱壁20の両表面20aは、熱交換表面20aとして機能し、凹凸面等の多様な面構造を有することができる。
【0025】
第1流路14の第1導入路22及び第1導出路24の各々は、伝熱壁20の熱交換表面20aに交差する方向(図では直交する方向)へ第1の流体f1を案内する構造を有する。より具体的には、図4(a)に拡大して示すように、第1導入路22は、複数段(図では6段)の第2室16の各々を画定する一対の伝熱壁20を、それぞれの熱交換表面20aに直交する方向へ、第2室16に対し気密封止された状態で貫通して延びる円筒状の通路要素22bを含む。そして、複数段の第2室16を貫通する複数(図では6個)の通路要素22bが、それぞれの軸線方向へ同軸に整列して配置されることで、複数段(図では5段)の第1室12の全てに連通する実質的円筒状の第1導入路22が形成される。同様に、図4(b)に拡大して示すように、第1導出路24は、複数段(図では6段)の第2室16の各々を画定する一対の伝熱壁20を、それぞれの熱交換表面20aに直交する方向へ、第2室16に対し気密封止された状態で貫通して延びる円筒状の通路要素24bを含む。そして、複数段の第2室16を貫通する複数(図では6個)の通路要素24bが、それぞれの軸線方向へ同軸に整列して配置されることで、複数段(図では5段)の第1室12の全てに連通する実質的円筒状の第1導出路24が形成される。
【0026】
なお、図示しないが、第2流路18の第2導入路26及び第2導出路28は、上記した第1流路14の第1導入路22及び第1導出路24と同様の、伝熱壁20の熱交換表面20aに交差する方向(図では直交する方向)へ第2の流体f2を案内する構造を有する。ただし、第2流路18の第2導入路26及び第2導出路28は、複数段(図では6段)の第2室16の全てに連通する一方で、複数段(図では5段)の第1室12の全てに対し気密封止される。
【0027】
本発明の特徴的構成として、第1流路14の第1導入路22及び第1導出路24の各々は、第1の流体f1を、複数の第1室12に対し、所望の流量ずつ分配して円滑に案内する整流分配部材30を備えている(図4)。それら第1導入路22及び第1導出路24のそれぞれに設置される整流分配部材30は、互いに同一の構造を有し、熱交換器10内で互いに鏡像的な位置及び姿勢関係に配置される。
【0028】
さらに詳述すれば、図5に示すように、各整流分配部材30は、略半円筒状に延びる外壁32と、外壁32の内側に固定的に設置され、径方向及び軸線方向へ互いにずれて配置される複数(図では3個)の案内壁34、36、38とを有する。それら外壁32及び案内壁34、36、38は、第1導入路22(又は第1導出路24)の流路断面積を所望比で複数に分割(図では3分割)するような所定の相対位置関係の下に、互いに組み合わされる。
【0029】
第1導入路22の入口22a(又は第1導出路24の出口24a)に最も近接して配置される第1の案内壁34は、外壁32の軸線方向へ延びる平板状の部分34aと、部分34aから3次元的に湾曲して延び、外壁の径方向外方へ突出する部分34bとを、一体に有する。同様に、中間位置に配置される第2の案内壁36は、外壁32の軸線方向へ延びる平板状の部分36aと、部分36aから3次元的に湾曲して延び、外壁の径方向外方へ突出する部分36bとを、一体に有する。第1及び第2の案内壁34、36はいずれも、全体として角の無い滑らかな表面(すなわち案内面)を有する。他方、第1導入路22の入口22a(又は第1導出路24の出口24a)から最も離れて配置される第3の案内壁38は、外壁32に対し3次元的に湾曲して延び、外壁の径方向外方へ突出する。第3の案内壁38は、外壁32の内面が実質的接平面となるような、全体として角の無い滑らかな表面(すなわち案内面)を有する。
【0030】
上記構成を有する整流分配部材30は、個々の案内壁34、36、38が、第1導入路22(又は第1導出路24)の流路断面積を所望比で複数に分割する一方で、第1の流体f1に関する第1導入路22(又は第1導出路24)の本来の案内方向(すなわち伝熱壁20の熱交換表面20aに直交する方向)を、個々の第1室12の主たる延長方向(すなわち伝熱壁20の熱交換表面20aに平行な方向)へと、円滑に湾曲する案内面を経て略90°転換するように作用する。したがって、第1の流体f1は、第1導入路22を通って複数の第1室12に導入される間、及び複数の第1室12から第1導出路24を通って導出される間に、整流分配部材30の各案内壁34、36、38が発揮する分流及び整流作用を受けて、うずの発生による滞留が抑制され、かつ流路壁面による摩擦が低減された状態で流動する。その結果、第1流路14内での第1の流体f1の圧力損失が、効果的に削減される。
【0031】
また、整流分配部材30においては、外壁32及び案内壁34、36、38の形状や相対位置関係を適宜変更することにより、第1導入路22(又は第1導出路24)の流路断面積の分割比を所望比に調整できる。したがって、第1導入路22や第1導出路24の構造に起因して、第1流路14の個々の第1室12に対する第1の流体f1の導入圧力や導出圧力に差が生じている場合には、そのような圧力差を予め考慮して外壁32及び案内壁34、36、38の形状や相対位置関係を設計することで、複数の第1室12に第1の流体f1を一様な流量で流すことが可能になる。
【0032】
このように、熱交換器10では、第1流路14の第1導入路22及び第1導出路24の各々が、伝熱壁20の熱交換表面20aに交差(直交)する方向へ第1の流体f1を案内する基本構造を有するにも関わらず、第1導入路22及び第1導出路24に整流分配部材30を設置したことで、個々の第1室12に対する第1の流体f1の導入圧力の差及び導出圧力の差をいずれも相殺するように第1の流体f1の流れを分割して、複数の第1室12に第1の流体f1を一様な流量で流すことができる。したがって、熱交換器10によれば、第1流路14を流れる第1の流体f1の流動圧力が比較的低い場合にも、第1流路14に対する流体f1の導入方向や導出方向に関わらず、複数の第1室12に流体f1を、その圧力損失を削減しつつ可及的均等に流すことが可能になり、その結果、第1の流体f1を効率良く冷却することが可能になる。そして、このような格別の作用効果を奏する熱交換器10は、媒質回路における媒質ガスの流動圧力が一般にさほど高くないガスレーザ装置に装備した場合にも、媒質ガスに対する高い冷却能力を発揮することができる。
【0033】
特に、図示実施形態では、整流分配部材30が、第1流路14の第1導入路22(又は第1導出路24)の流路断面積を、複数の第1室12に分配される第1の流体f1の流量の比に対応して分割する案内壁34、36、38を有しているから、それら案内壁34、36、38の形状及び相対位置関係を適当に設計することにより、個々の第1室12における第1の流体f1の流れ易さの度合いに応じて、第1の流体f1の流量の分割比を容易かつ正確に調整することができる。
【0034】
例えば、図示の熱交換器10において、第1導入路22に整流分配部材30を設置しない状態では、個々の第1室12への第1の流体f1の流れ込み易さは、第1導入路22内での流れの圧力の差により、入口22aに近いほど悪化する。したがって、第1導入路22に設置される整流分配部材30は、第1導入路22の入口22aから最も近い第1の案内壁34と、その次に近い第2の案内壁36とが、それぞれ2段ずつの第1室12に流体f1を分配する一方、最も遠い第3の案内壁38が、1段のみの第1室12に流体f1を分配するように構成されており、それら各段の第1室12の流量を均等にするべく、第1導入路22の流路断面積を概ね2:2:1の比で3分割する位置に、案内壁34、36、38が配置されている。さらに、第1導出路24に設置される整流分配部材30においても同様に、第1の案内壁34、第2の案内壁36及び第3の案内壁38が、第1導出路24の流路断面積を概ね2:2:1の比で3分割する位置に配置されている。このような構成により、第1流路14の複数の第1室12における流体の流れ易さに差が有る場合にも、それら第1室12のそれぞれに、第1の流体f1を一様な流量で安定して流すことができる。
【0035】
図示の熱交換器10において、上記したように第1流路14の個々の第1室12における第1の流体f1の流れ易さを考慮する場合には、流れ難い位置(すなわち第1導入路22の入口22aに近い位置)にある第1室12の流路断面積が、流れ易い位置(すなわち第1導入路22の入口22aから遠い位置)にある第1室12の流路断面積よりも大きくなるように、複数の第1室12を設計することで、それら第1室12を個々に流れる第1の流体f1の流量を互いに実質的に等しくすることができる。同様に、第2流路18の個々の第2室16における第2の流体f2の流れ易さを考慮する場合には、流れ難い位置(すなわち第2導入路26の入口26aに近い位置)にある第2室16の流路断面積が、流れ易い位置(すなわち第2導入路26の入口26aから遠い位置)にある第2室16の流路断面積よりも大きくなるように、複数の第2室16を設計することで、それら第2室16を個々に流れる第2の流体f2の流量を互いに実質的に等しくすることができる。
【0036】
さらに、図示のように熱交換器10を、複数の第1室12及び第2室16が重力方向へ積み重なる姿勢(つまり伝熱壁20が水平方向へ延びる姿勢)で、作業場の床面に設置した場合には、図示の構成に代えて、鉛直上方から第1導入路22に供給された第1の流体f1が、第1導出路24から鉛直下方へ排出される構成とすることが、複数の第1室12における流体f1の流れ易さを一層向上させる観点で有利である。この場合、第1導入路22の入口22a(図1)と第1導出路24の出口24a(図1)とは、熱交換器10の互いに反対側(図で上端及び下端)で、それぞれ最も外側の第2室16に隣接して形成される。
【0037】
図6〜図8は、上記した下方排出型の構造を有する熱交換器であって、冷却能力をさらに向上させた本発明の第2の実施形態による熱交換器40を示す。熱交換器40は、鉛直上方に開口する一対の第1導入路22と鉛直下方に開口する1つの第1導出路24とを備えた点以外は、前述した熱交換器10と実質的同一の構成を有するので、対応する構成要素には共通の参照符号を付してその説明を省略する。
【0038】
熱交換器40では、第1流路14は、複数の第1室12に第1の流体f1を導入する一対の第1導入路22と、複数の第1室12から第1の流体f1を導出する1つの第1導出路24とを含む。両第1導入路22の入口22aと第1導出路24の出口24aとは、熱交換器10の互いに反対側で、それぞれ最も外側の第2室16に隣接して形成されており、それにより、第1及び第2の流体f1、f2の流れの方向は、導入側と導出側とで互いに同一方向(図示矢印)となっている(図6及び図7)。また、第1導出路24は、熱交換器40の略中央に配置され、一対の第1導入路22は、第1導出路24を中心として両側方の対称位置に配置される。その結果、一対の第1導入路22を介して複数の第1室12に導入された第1の流体f1は、それら第1室12を通って異なる方向(主として対向する方向)から第1導出路24に流れ込み、第1導出路24を介して外部に導出されることになる(図8(a))。なお、図6では、各第1導入路22と第1導出路24とが略同一寸法に描かれているが、通常は、第1導出路24の流路断面積は第1導入路22の流路断面積の1.5倍以上である。
【0039】
第1流路14の第1導出路24は、第1の流体f1を、複数の第1室12に対し、所望の流量ずつ分配した状態で円滑に案内する整流分配部材42を備えている(図9)。整流分配部材42は、円環状の一対の外輪壁44と、それら外輪壁44の内側に固定的に設置され、両外輪壁44の中心軸線上で直径に渡って延設される平板状の障壁46と、障壁46の両側で外輪壁44の内側に固定的に設置され、径方向及び軸線方向へ互いにずれて配置される複数組(図では3組)の案内壁48、50、52とを有する(図10)。それら外輪壁44、障壁46及び案内壁48、50、52は、第1導出路24の流路断面積を所望比で複数に分割(図では6分割)するような所定の相対位置関係の下に、互いに組み合わされる。
【0040】
第1導出路24の出口24aに最も近接して配置される一対の第1の案内壁48は、外輪壁44の軸線方向へ延びる平板状の部分48aと、部分48aから3次元的に湾曲して径方向外方へ延びる部分48bとを、それぞれ一体に有する。同様に、中間位置に配置される一対の第2の案内壁50は、外輪壁44の軸線方向へ延びる平板状の部分50aと、部分50aから3次元的に湾曲して径方向外方へ延びる部分50bとを、それぞれ一体に有する。第1及び第2の案内壁48、50はいずれも、全体として角の無い滑らかな表面(すなわち案内面)を有する。他方、第1導出路24の出口24aから最も離れて配置される第3の案内壁52は、外輪壁44及び障壁46に対し3次元的に湾曲して径方向外方へ延びる。第3の案内壁52は、障壁46の表面が実質的接平面となるような、全体として角の無い滑らかな表面(すなわち案内面)を有する。
【0041】
上記構成を有する整流分配部材42は、障壁46及び個々の案内壁48、50、52が、第1導出路24の流路断面積を所望比で複数に分割する一方で、第1の流体f1に関する個々の第1室12の主たる案内方向(すなわち伝熱壁20の熱交換表面20aに平行な方向)を、第1導出路24の本来の案内方向(すなわち伝熱壁20の熱交換表面20aに直交する方向)へと、円滑に湾曲する案内面を経て略90°転換するように作用する。特に、障壁46は、一対の第1導入路22の位置関係に起因して異なる方向から第1導出路24へ流れ込む第1の流体f1に対し、圧力が平衡する中心位置で、流体f1同士の衝突を回避するように作用する。
【0042】
したがって、第1の流体f1は、複数の第1室12から第1導出路24を通って導出される間に、整流分配部材42の障壁46及び各案内壁48、50、52が発揮する分流及び整流作用を受けて、うずの発生による滞留が抑制され、かつ流路壁面による摩擦が低減された状態で流動する。その結果、第1流路14内での第1の流体f1の圧力損失が、効果的に削減される。なお、異なる方向から第1導出路24へ流れ込む第1の流体f1に対しては、複数の案内壁48、50、52が無く、障壁46だけを有する整流分配部材によっても、ある程度の整流作用を確保できることが判っている。
【0043】
また、整流分配部材42においても、障壁46及び案内壁48、50、52の形状や相対位置関係を適宜変更することにより、第1導出路24の流路断面積の分割比を所望比に調整できる。例えば、熱交換器40は、図示しないが、第1流路14の一対の第1導入路22の各々に、前述した熱交換器10が有する整流分配部材30を設置することを前提としている。したがって、第1導出路24に設置される整流分配部材42は、第1導出路24の出口24aから最も遠い第3の案内壁52と、その次に遠い第2の案内壁50とが、第1導入路22の整流分配部材30によって2段ずつの第1室12に分流された流体f1をそれぞれに案内する一方、最も近い第1の案内壁48が、1段のみの第1室12に分流された流体f1を案内するように構成されている。そして、各第1導入路22に設置した整流分配部材30と協働して、各段の第1室12の流量を均等にするべく、整流分配部材42の各一対の案内壁48、50、52は、障壁46によって2等分された第1導出路24の流路断面積を、さらに概ね1:2:2の比で3分割する位置に配置されている。
【0044】
上記構成により、第1流路14の複数の第1室12における流体の流れ易さに差が有る場合にも、それら第1室12のそれぞれに、第1の流体f1を一様な流量で安定して流すことができる。このように、熱交換器40は、前述した熱交換器10と同等の作用効果を奏するものであり、したがって、媒質回路における媒質ガスの流動圧力が一般にさほど高くないガスレーザ装置に装備した場合にも、媒質ガスに対する高い冷却能力を発揮することができる。
【0045】
図11は、上記した熱交換器10、40を装備可能な本発明の一実施形態によるガスレーザ装置60の、特にレーザ発振機構の構成を模式図で示す。
ガスレーザ装置60は、媒質ガスMを励起してレーザビームを生成する発振部62と、発振部62に接続され、媒質ガスMが圧力下で流動する媒質回路を形成する循環路64と、循環路64に設置され、媒質ガスMを媒質回路内で強制的に高速循環させる送風機66と、送風機66の上流側及び下流側で循環路64に設置される一対の熱交換器68とを備える。発振部62は、一対の励起電源70に接続される電極対(図示せず)を有する放電管からなる励起部72と、励起部72の軸線方向両端にそれぞれ固定的に設置されるリアミラー(全反射鏡又は部分透過鏡)74a及び出射ミラー(部分透過鏡)74bを有する光共振部74とから構成される。
【0046】
励起部72の一対の励起電源70は、対応の電極にラジオ周波数領域の交流電圧を印加する。励起電源70が起動されて放電が生じ、励起部72内の媒質ガスMが励起されて光共振部74で増幅されると、出射ミラー74bからレーザビームが出射される。励起部72内の媒質ガスMは、放電を受けて高温になるが、送風機66の上流側に設置した熱交換器68で冷却されて送風機66に吸引される。送風機66は、媒質ガスMを圧力下で吐出側へ送り出す。この圧縮過程により昇温した媒質ガスMは、送風機66の下流側に設置した熱交換器68で再度冷却される。送風機66から送り出された媒質ガスMは、冷却後、循環路64を流動して発振部62に供給される。
【0047】
上記構成において、送風機66の上流側及び下流側に設置される一対の熱交換器68の各々は、前述した本発明の実施形態による熱交換器10(又は熱交換器40)によって構成される。この場合、熱交換器68(10、40)の第1流路14が、ガスレーザ装置60の循環路64に流体流通可能に接続され、第1の流体f1としての媒質ガスMが、第1流路14を流動する間に、第2の流体f2との熱交換により冷却されて適温に維持される。このような構成を有するガスレーザ装置60は、熱交換器10、40が奏する前述した格別の作用効果により、高出力のレーザビームを安定して連続的に発振できる。
【0048】
ガスレーザ装置60において、送風機66の上流側の熱交換器68(10、40)は、送風機66に接続される第1導出路24に、送風機66の翼(図示せず)の回転方向に対応する方向へ螺旋状に媒質ガスMを案内する案内部材76(図12)を備えることができる。また、送風機66の下流側の熱交換器68(10、40)は、送風機66に接続される第1導入路22に、送風機66の翼(図示せず)の回転方向に対応する方向へ螺旋状に媒質ガスMを案内する同様の案内部材76(図12)を備えることができる。
【0049】
例えば、送風機66の上流側の熱交換器68として熱交換器40を用いる場合、案内部材76は、その軸線76a(図12(a))が、第1導出路24の整流分配部材42を通って熱交換器40から排出される媒質ガスMの流れの軸線に合致する位置関係で、整流分配部材42の下流側に設置される。このような構成によれば、熱交換器40から排出される媒質ガスMが送風機66に極めて円滑に吸入されるようになるから、送風機66の効率を向上させることができる。
【0050】
以上、本発明の幾つかの好適な実施形態を説明したが、本発明は図示構成に限定されず、特許請求の範囲の開示内で様々な修正を施すことができる。例えば、図示の熱交換器10では、第1流路14の第1導入路22及び第2導出路24の双方に整流分配部材30が設置されているが、この構成に限定されず、第1導入路22及び第2導出路24の少なくとも一方に整流分配部材30を設置すれば、前述した本発明の目的を達成できるものである。また、図示の熱交換器40の類似構成として、鉛直上方に開口する1つの第1導入路22と鉛直下方に開口する一対の第1導出路24とを備える構成では、第1導入路22に、前述した整流分配部材42と同様の障壁付きの整流分配部材を設置することにより、複数の第1室12に対して、第1導入路22から異なる方向(主として離反方向)へ第1の流体f1を均等に分配することができる。さらに、熱交換器10、40における第1流路14の第1室12の個数や形状、第2流路18の第2室16の個数や形状、整流分配部材30、42の案内壁34、36、38、48、50、52の個数や形状は、要求される冷却能力に応じて適当に選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態による熱交換器の全体構成を、概略で示す縦断面図である。
【図2】図1の熱交換器の全体構成を概略で示す斜視図である。
【図3】図1の熱交換器の内部構造を概略で示す図で、(a)線IIIa−IIIaに沿った横断面図、及び(b)線IIIb−IIIbに沿った横断面図である。
【図4】図1の熱交換器の主要部の内部構造を示す図で、(a)第1導入路、及び(b)第1導出路の拡大図である。
【図5】図1の熱交換器に設置される整流分配部材の図で、(a)正面図、及び(b)矢印Vから見た平面図である。
【図6】本発明の第2実施形態による熱交換器の全体構成を、概略で示す縦断面図である。
【図7】図6の熱交換器の全体構成を概略で示す斜視図である。
【図8】図6の熱交換器の内部構造を概略で示す図で、(a)線VIIIa−VIIIaに沿った横断面図、及び(b)線VIIIb−VIIIbに沿った横断面図である。
【図9】図6の熱交換器の主要部の内部構造を示す図で、第1導出路の拡大図である。
【図10】図6の熱交換器に設置される整流分配部材の図で、(a)正面図、及び(b)矢印Xから見た平面図である。
【図11】本発明の一実施形態によるガスレーザ装置の構成を模式図的に示す図である。
【図12】図11のガスレーザ装置の熱交換器に装備される案内部材の図で、(a)正面図、(b)平面図及び(c)斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
10、40、68 熱交換器
12 第1室
14 第1流路
16 第2室
18 第2流路
20 伝熱壁
22 第1導入路
24 第1導出路
26 第2導入路
28 第2導出路
30、42 整流分配部材
34、36、38、48、50、52 案内壁
46 障壁
60 ガスレーザ装置
62 発振部
64 循環路
66 送風機
76 案内部材
【出願人】 【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
【出願日】 平成19年3月1日(2007.3.1)
【代理人】 【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤

【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一

【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎

【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹


【公開番号】 特開2008−215681(P2008−215681A)
【公開日】 平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願番号】 特願2007−51559(P2007−51559)