トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F24 加熱;レンジ;換気

【発明の名称】 アウトガス拡散防止用カバー
【発明者】 【氏名】山本 八郎

【要約】 【課題】簡易な構造によって、クリーンルーム等の室内に設置された配管や配線等からのアウトガスの拡散を防止することができるアウトガス拡散防止用カバーを提供する。

【構成】室外2よりも正圧に保持されるとともに、アウトガスを発生する配管・配線4aが設置された室内1aに設置されて、配管・配線4aからのアウトガスの拡散を防止するためのカバー7であって、少なくとも外周部が、アウトガスの発生量が室内1aに許容される上限値以下である素材からなり、室内1aにおける全長にわたって配管・配線4aを排気流路となる間隙9aを介して気密的に覆うとともに、室内1aに連通する開口部7aが形成され、かつ端部が室外2に開口することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外よりも正圧に保持されるとともに、アウトガスを発生する配管・配線が設置された室内に設置されて、上記配管・配線からのアウトガスの拡散を防止するためのカバーであって、
少なくとも外周部が、アウトガスの発生量が上記室内に許容される上限値以下である素材からなり、上記室内における全長にわたって上記配管・配線を排気流路となる間隙を介して気密的に覆うとともに、上記室内に連通する開口部が形成され、かつ端部が上記室外に開口することを特徴とするアウトガス拡散防止用カバー。
【請求項2】
内部に、上記配管・配線との間の上記間隙を保持する形状保持部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアウトガス拡散防止用カバー。
【請求項3】
一端部が上記配管・配線が接続されている機器類の当該配管・配線の導入部に接続されることにより、上記機器類の内部を通じて上記室内に連通するとともに、他端部が室外に開口していることを特徴とする請求項1または2に記載のアウトガス拡散防止用カバー。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルーム等の室内に設置された配管や配線等から発生したアウトガスが、当該室内へ拡散することを防止するためのアウトガス拡散防止用カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体や液晶パネルの製造工場あるいは医薬品等の製造工場等においては、空気中の微粒子に起因するコンタミネーションや異物混入を防止するために、室内の空気中に含まれる微粒塵埃の数を一定値以下に抑えたクリーンルームが設けられている。
【0003】
このクリーンルームは、要求される空気清浄度に応じて、単位時間当たりに所定の回数の換気を行うことが要求されるために、例えば天井の上方空間に形成したプレナムチャンバ内の空気を、多数のファンフィルターユニットによって清浄化して下方の作業空間となるクリーンルームに送気し、所定のクリーン環境を保持するとともに、当該クリーンルーム内の空気を、床下方のリターンエリアに送り、さらにリターンダクトから上記プレナムチャンバに循環供給する構造等が採用されている。
【0004】
ところで、半導体や液晶パネルの製造工場においては、近年における集積度の向上によって、上記微粒塵埃に加えて、微量のガス成分が半導体基板やシリコンウエハに吸着し、この結果ゲート酸化膜における膜質の劣化や絶縁不良などを生じて、製造歩留まりの低下を招く一因となることが判明している。そして、このような製造環境で問題となるガスとしては、脂肪族炭化水素、有機カルボン酸エステル類、フェノール類、アミン類等の有機物が知られている。
【0005】
一方、上記クリーンルームには、内部に設置されている半導体や液晶パネルの製造装置に、ユーティリティとしての純水や特殊ガスを供給するための各種配管や、電源供給や制御信号をやり取りするための電線が接続されている。ここで、上記配管は、その素材として塩化ビニルやポリプロピレン等の合成樹脂が使用されており、常温においても上記有機物を含む微量のガス成分(以下、アウトガスと称する。)が発生する。また、電線についても、その被覆材に含有されている可塑剤、酸化防止剤、難燃剤、滑剤から、同様にアウトガスが発生することが知られている。
【0006】
ところが、上記ファンフィルターユニットに組み込まれているULPAフィルターは、上記微粒塵埃を捕集するためのものであって、上記アウトガスを除去することができないために、当該アウトガスがクリーンルーム内に拡散して、上記半導体等の製造に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0007】
このため、上記ULPAフィルターとは別に、クリーンルーム内の空気の循環系に、有機ガス成分を除去するための活性炭を用いたケミカルフィルターを設置する方法も提案されているが、当該ケミカルフィルターによっては、上記アウトガスのような低濃度の有機ガス成分を除去することは、極めて非能率であってコスト的にも実現性が乏しいという問題点がある。
【0008】
そこで、上記配管材料や電線の被覆材として、アウトガスを発生しないか、あるいは発生量が微量のものを用いようとすると、配管内部を流れる流体の種類や電線の耐水性保持等の兼ね合いや、材料からのアウトガス発生量を測定するために多大の手間を要する等の理由から、その選択作業が複雑になるとともに、高価な素材を多量に使用することになるために、全体としての設備コストが高騰化するという問題点もあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、簡易な構造によって、クリーンルーム等の室内に設置された配管や配線等からのアウトガスの拡散を防止することができるアウトガス拡散防止用カバーを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、室外よりも正圧(加圧状態)に保持されるとともに、アウトガスを発生する配管・配線が設置された室内に設置されて、上記配管・配線からのアウトガスの拡散を防止するためのカバーであって、少なくとも外周部が、アウトガスの発生量が上記室内に許容される上限値以下である素材からなり、上記室内における全長にわたって上記配管・配線を排気流路となる間隙を介して気密的に覆うとともに、上記室内に連通する開口部が形成され、かつ端部が上記室外に開口することを特徴とするものである。
【0011】
ここで、上記カバーの少なくとも外周部は、アウトガスを全く発生しない金属等で形成することが好ましく、仮にアウトガスを発生する合成樹脂等を用いた場合においても、可塑剤等の添加剤によって、当該アウトガスの発生量が上記室内に許容される上限値以下にまで低減化された素材を用いる必要がある。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、当該カバーの内部に、上記配管・配線との間の上記間隙を保持する形状保持部材が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、一端部が上記配管・配線が接続されている機器類の当該配管・配線の導入部に接続されることにより、上記機器類の内部を通じて上記室内に連通するとともに、他端部が室外に開口していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1または2に記載のアウトガス拡散防止用カバーによれば、室外よりも加圧された室内に連通する開口部が形成されるとともに、端部が上記室外に開口しているために、当該カバーと内部に気密的に収納した配管・配線との間の間隙に、常時、室内から室外へと向かう排気流路が形成される。このため、上記配管・配線から発生したアウトガスも、上記流路から排気される室内の空気とともに室外に排出されてゆく。このため、別途排気用のエネルギーや機器類を要することなく、容易かつ確実に上記アウトガスを室外へと排出することができる。
【0015】
また、当該カバー自体も、少なくともその外周部が、アウトガスの発生量が上記室内に許容される上限値以下である素材によって構成されているために、当該カバーの外周部から室内に有害となるアウトガスが発生することもない。
この結果、極めて簡易な構造によって、クリーンルーム等の室内に設置された配管や配線等からのアウトガスの拡散を防止することができる。したがって、配管材料や配線の被覆材として、高価なアウトガス対策品を用いる必要がないために、経済性に優れるとともに、素材選択に多大の手間を要することが無く、計画の自由度が増すという効果も得られる。
【0016】
この際に、配管や配線が曲線状に敷設されており、かつ上記カバーとして可撓性のある合成樹脂等を用いた場合には、特に曲線部分において、上記排気流路となる間隙が狭くなって円滑な排気がなされないおそれがある。
【0017】
この点、請求項2に記載の発明によれば、当該カバーの内部に、上記配管・配線との間の上記間隙を保持する形状保持部材を設けているために、確実にカバー内で発生したアウトガスを室内の空気とともに室外に排出させることができる。
【0018】
さらに、上記室内に設置されるとともに、上記配管や配線が接続されている補機器類、配電盤、制御盤等の機器類においては、内部に組み込まれた機械部品や電子部品から当該機器類の内部にアウトガスが発生するおそれもある。
【0019】
このような場合には、請求項3に記載の発明のように、上記配管や配線の外周を室内に露出する全長にわたって気密的に覆うとともに、一端部を当該配管や配線が接続されている機器類の導入部に接続し、他端部を室外に開口させるように設ければ、先ず加圧状態にある室内からの空気が上記機器類の内部に流入し、当該機器類の内部で発生したアウトガスを上記カバー内の間隙から上記配管や配線から発生したアウトガスと共に室外へと排出することができる。この結果、一層確実に、上記室内へのアウトガスの拡散を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1および図2は、本発明に係るアウトガス拡散防止用カバーの一実施形態を示すものであり、図3および図4は、その変形例を示すものである。
図1および図2において、図中符号1は半導体や液晶パネルの製造工場のクリーンルームである。このクリーンルーム1は、外部から区画されるとともに、室外2の清浄度の低い空気の流入を避けるために室内1aが室外2よりも高い圧力に保持されている。
【0021】
そして、この室内1aには、製造機器、補記機、配電盤、制御盤等の機器類3が設置されるとともに、室外2から上記機器類3へと、ユーティリティとしての純水や特殊ガスを供給するための各種配管や、電源供給や制御信号をやり取りするための電線等の配管・配線4a、4bが接続されている。ここで、配管・配線4aは、その素材や被覆材についてアウトガス対策が施されていないものであり、配管・配線4bは、その対策が施されているものである。
【0022】
また、この機器類3内には、アウトガス対策が施されていない機械部品5a、5bや電子部品5c等も組み込まれている。なお、図中符号6は、当該機器類3の壁部に設けられた放熱用あるいは換気用の開口部である。そして、この機器類3から室外へと延出するアウトガス対策が施されていない配管・配線4aの外周に、アウトガス拡散防止用カバー7が設けられている。
【0023】
このアウトガス拡散防止用カバー7は、室内1aに露出する配管・配線4aをその全長にわたって気密的に覆うとともに、一端部7aが機器類3における配管・配線4aの導入口(開口部)に接続され、かつ他端部7bがクリーンルーム1の側壁に接続されることにより室外2に開口されている。ここで、アウトガス拡散防止用カバー7は、配管・配線4aの外径よりも大径の円筒状に形成されており、内部には、その全長にわたって当該内部を2つの空間に区画する隔壁(形状保持部材)8が設けられている。
【0024】
そして、このアウトガス拡散防止用カバー7内の一方の空間に、配管・配線4aが挿通されるとともに、配管・配線4aの外周とアウトガス拡散防止用カバー7の内壁との間に、排気流路となる間隙9aが形成されている。また、他方の空間は、機器類3内と室外2とに連通する排気流路9bとされている。
【0025】
また、上記アウトガス拡散防止用カバー7に代えて、図3に示すアウトガス拡散防止用カバー10を用いることもできる。
このアウトガス拡散防止用カバー10は、配管・配線4aの外径よりも大径の内管10aと、この内管10aよりも大径の外管10bとを有する2重管構造であり、これら内管10aと外管10bとは、円周方向4箇所において長手方向に介装されたスペーサ10cにより互いの間隔が一定に保持されている。
【0026】
そして、内管10aに、配管・配線4aが挿通されている。これにより、内管10aと配管・配線4aとの間の空間に、排気流路となる間隙11aが形成されるとともに、内管10aと外管10bとの間の空間に、機器類3内と室外2とに連通する排気流路11bが形成されている。
【0027】
さらに、図4に示すアウトガス拡散防止用カバー12は、同様に配管・配線4aの外径よりも大径に形成されるとともに、内壁には、配管・配線4aに向けて突出するスペーサ13が円周方向に等間隔をおいた4箇所に形成されている。
これにより、アウトガス拡散防止用カバー12の内壁と配管・配線4aの外周面との間に、排気流路となる所定間隔を有する間隙14が形成されている。
【0028】
これらのアウトガス拡散防止用カバー7、12およびアウトガス拡散防止用カバー10の少なくとも外管10bは、アウトガスを全く発生しないステンレスやアルミニウム等の金属管を採用することが最も好ましい。
また、上記アウトガス拡散防止用カバー7、10、12として、ポリカーボネート、硬質ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン等の伸縮性のない合成樹脂や、シート状加工したポリエチレンテレフタレート(PET)、低密度ポリエチレン、熱可塑性ポリウレタン等の伸縮性を有する合成樹脂を用いることもできる。
【0029】
この場合には、いずれも可塑剤、酸化防止剤、帯電防止剤等の添加剤として、アウトガスの発生量低減化効果を有するものが添加されることにより、外周部からのアウトガスの発生量が、クリーンルーム1の室内1aに許容される上限値以下である素材を用いる必要がある。
このような素材としては、例えば本出願人が先に特許第3288579号において提案した、分子量400以上のカルボン酸エステル、ポリエステル、エポキシ系化合物のうちの1種以上からなる可塑剤を含むポリ塩化ビニル樹脂が好適である。
【0030】
ちなみに、具体的に上記可塑剤としては、フタル酸ジイソノニル、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジラウリル、フタル酸ジミリスチリル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリス−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリノニル、トリメリット酸トリデシル、アジピン酸またはアゼライン酸またはセバチン酸またはフタル酸とグリコールまたはグリセリンとの重縮合により得られるポリエステル、エポキシ脂肪酸エステル、およびエポキシ化大豆油のうちの1種以上が適用可能である。
【0031】
以上の構成からなるアウトガス拡散防止用カバー7、10、12においては、一端部7aが、機器類3の内部から開口部6を介して室外2よりも加圧された室内1aに連通するとともに、他端部7bが室外2に開口しているために、内部に気密的に収納した配管・配線4aとの間の間隙9a、10a、14および排気流路9b、11bに、常時、室内1aから室外2へと向かう空気の流路が形成される。
【0032】
この結果、機器類3内に設置された機械部品5a、5bや電子部品5c等から発生したアウトガスや、機器類3内の配管・配線4aから発生したアウトガスは、上記間隙9a、10a、14および排気流路9b、11bを通じて室内1aの空気とともに室外2へと排出されて行く。また、アウトガス拡散防止用カバー7、10、12内の配線・電線4aから発生したアウトガスも、同様に上記間隙9a、10a、14から室外2へと排出されて行く。
【0033】
したがって、これらアウトガス拡散防止用カバー7、10、12によれば、別途排気用のエネルギーや機器類を要することなく、極めて簡易な構造によって、クリーンルーム1の室内1aに設置された機器類3の内部や配管・配線4aから当該室内1aへアウトガスが拡散することを確実に防止することができる。これにより、配管材料や配線の被覆材として、高価なアウトガス対策品を用いる必要がないために、経済性に優れるとともに、素材選択の自由度が増すという効果が得られる。
【0034】
また、アウトガス拡散防止用カバー7、10、12は、少なくともその外周部におけるアウトガスの発生量が、全くないか、あるいは室内1aに許容される上限値以下の微量である素材によって構成されているために、当該アウトガス拡散防止用カバー7、10、12の外周部から室内1aに有害となるアウトガスが発生するおそれもない。
【0035】
さらに、アウトガス拡散防止用カバー7、10、12の内部に、配管・配線4aとの間の上記間隙9a、10a、14および排気流路9b、11bを保持する隔壁8やスペーサ10c、13等の形状保持部材を設けているために、可撓性のある合成樹脂等を用いた場合においても、配管・配線4aが曲線状に敷設された箇所において、流路が狭くなることが無く、よって確実にアウトガス拡散防止用カバー7、10、12を通じてアウトガスを室内1aの空気とともに室外2に排出させることができる。
【0036】
さらに、配管・配線4aの外周を室内1aに露出する全長にわたって気密的に覆うとともに、一端部7aを配管・配線4aが接続されている機器類3の導入部に接続し、他端部7bを室外2に開口させるように設けているために、機器類3の内部で発生したアウトガスについても、配管・配線4aから発生したアウトガスと共に室外2へと排出することができ、一層確実に室内1aへのアウトガスの拡散を防止することができる。
【0037】
なお、上記実施形態においては、アウトガス拡散防止用カバー7内に、1本の配管や配線4aを挿通した場合についてのみ説明したが、これに限定されるものではなく、複数本の配管や複数本の配線、さらには複数本の配管および配線を1本のアウトガス拡散防止用カバー7内に挿通することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るアウトガス拡散防止用カバーの一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1のa−a線視断面図である。
【図3】図2の変形例を示す断面図である。
【図4】図2の他の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 クリーンルーム
1a 室内
2 室外
3 機器類
4a 配管・配線
7、10、12 アウトガス拡散防止用カバー
7a 一端部(室内1aへの開口部)
7b 他端部
8 隔壁(形状保持部材)
9a、11a、14 間隙(排気流路)
9b、11b 排気流路
10c、13 スペーサ(形状保持部材)
【出願人】 【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
【出願日】 平成18年6月27日(2006.6.27)
【代理人】 【識別番号】100096862
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 千春


【公開番号】 特開2008−8506(P2008−8506A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−176561(P2006−176561)