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【発明の名称】 有害微量元素溶出抑制方法
【発明者】 【氏名】引野 健治

【要約】 【課題】多額の初期投資が不要で、大規模な追加設備を必要としない、石炭火力発電システムにおける石炭の燃焼残渣からの有害微量元素の溶出を抑制する有害微量元素溶出抑制方法であって、燃焼炉の機能を害さずに、有害微量元素の溶出を十分に抑制する方法を提供すること。

【解決手段】石炭火力発電システムにおいて燃料となる石炭を燃焼させたときに生じる石炭灰から、有害微量元素の溶出を抑制する有害微量元素溶出抑制方法であって、前記石炭又はこれを燃焼させる燃焼炉内に、生石灰、石灰石、消石灰からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む石炭添加用溶出防止剤を添加すると共に、生石灰、消石灰からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む石炭灰添加剤を石炭灰に添加することを特徴とする有害微量元素溶出抑制方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭火力発電システムにおいて燃料となる石炭を燃焼させたときに生じる石炭灰から、有害微量元素の溶出を抑制する有害微量元素溶出抑制方法であって、
前記石炭又はこれを燃焼させる燃焼炉内に、生石灰、石灰石、及び消石灰からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む石炭添加用溶出防止剤を添加すると共に、生石灰、及び消石灰からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む石炭灰添加剤を前記石炭灰に添加することを特徴とする有害微量元素溶出抑制方法。
【請求項2】
前記石炭添加用溶出防止剤1質量部に対し、前記石炭灰添加剤を0.1質量部以上500質量部以下の範囲で添加することを特徴とする請求項1に記載の有害微量元素溶出抑制方法。
【請求項3】
前記石炭100質量部に対して、前記石炭添加用溶出防止剤を0.1質量部以上10質量部以下の範囲で添加することを特徴とする請求項1又は2に記載の有害微量元素溶出抑制方法。
【請求項4】
前記石炭灰100質量部に対して、前記石炭灰添加剤を0.3質量部以上50質量部以下の範囲で添加することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の有害微量元素溶出抑制方法。
【請求項5】
前記石炭火力発電システムが微粉炭燃焼方式の発電システムであり、
前記石炭灰添加剤を、集塵機で回収された石炭灰に添加することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の有害微量元素溶出抑制方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭火力発電システムにおいて燃料となる石炭の燃焼残渣からの有害微量元素の溶出を抑制する有害微量元素溶出抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭火力発電システムにおいて石炭を燃焼させる方法としては種々の方式があるが、なかでも、石炭を微粉砕した粒子を炉内に吹き込んで燃焼させる、いわゆる微粉炭燃焼方式が主に採用されている。そして、燃焼後の残渣となる石炭灰は、資源の有効利用の観点から、コンクリートや土壌改良材等の土木建築材料として一部が使用されているが、余剰分については埋め立て処分されている。
【0003】
ところで、燃料となる石炭は炭素以外にも、ホウ素、フッ素、セレン、ヒ素、六価クロム等の有害な元素を微量ながら含んでいる。このため、環境への配慮から、石炭灰からの有害微量元素の溶出について、その許容濃度が法律で規定されている。しかしながら、日本が輸入する石炭種は、年間100炭種以上あり、それらのすべてが、上記の規制値を満足するわけではない。このため、石炭灰に含まれている有害微量元素の溶出濃度を規制値以下に低減するための技術が検討されている。
【0004】
例えば、石炭灰にキレート剤等の微量元素溶出防止剤を添加する方法や、石炭灰をセメント等により固化処理する方法が行われている(特許文献1から3参照)。
【0005】
更に、特許文献4には、石炭を燃焼炉(A)で燃焼し、その排ガスを電気集塵器で処理し、得られた集塵灰を燃焼炉(B)で、石炭を主燃料とし、カルシウム源を加えて再度燃焼した焼却灰の、平成15年環境庁告示第18号に基づく溶出試験方法によるホウ素量を1.0mg/l以下にする燃焼灰の処理方法が開示されている。この処理方法によれば、石炭灰を、カルシウム源を添加できる燃焼炉で再度燃焼することによって、焼却灰に含まれるホウ素の溶出を抑制することができるので、土壌改良剤としての環境への影響もなく利用できるとされている。
【特許文献1】特開2003−164886号公報
【特許文献2】特開2003−200132号公報
【特許文献3】特開2002−194328号公報
【特許文献4】特開2005−134098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1から特許文献3に記載の従来技術は、燃料残渣である石炭灰に添加剤を加えることで有害微量元素の溶出濃度を低減するものであるが、これらの従来技術においては、重金属の溶出防止は検討されているものの、ホウ素やフッ素等の軽元素の溶出防止についての検討が不充分であった。
【0007】
特許文献4に記載の処理方法については、燃焼炉で得られた集塵灰を石灰石等と共に再度、燃焼させるものであって、集塵灰の処理コストが高くなる可能性が高い。更に、石灰石を添加する手段については、明らかにされておらず、追加の設備等を要する可能性がある。また、特許文献4に記載の処理方法においては、石炭灰処理時の燃焼温度は700℃から900℃と低く、高温の炉においては好適に実施することができない。加えて、この処理方法は、微粉炭燃焼炉等においても、好適に実施することができない。また、溶出防止の対象となる元素がホウ素に限られており、微量金属一般の溶出防止方法として用いることができるものではない。
【0008】
また、燃焼炉へのカルシウム成分の投入は、石炭灰の融点の低下を招き、燃焼炉の壁面に石炭灰が付着する障害を起こすことが知られており、石灰石の燃焼炉への投入に際しては、このような問題を解決する必要があった。
【0009】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、石炭火力発電システムにおける、石炭の燃焼残渣からの有害微量元素の溶出を抑制する有害微量元素溶出抑制方法であって、多額の初期投資が不要で、大規模な追加設備を必要とせず、燃焼炉の機能を害さずに有害微量元素の溶出を十分に抑制できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、石炭火力発電システムにおいて、石炭又はこれを燃焼させる燃焼炉内に生石灰、石灰石、及び消石灰からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む石炭添加用溶出防止剤を添加し、更に、石炭灰に生石灰、及び消石灰からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む石炭灰添加剤を添加したとき、燃焼炉への障害を最小限に抑えつつ、石炭の燃料残渣からの有害微量元素の溶出を抑制できることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0011】
具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0012】
(1) 石炭火力発電システムにおいて燃料となる石炭を燃焼させたときに生じる石炭灰から、有害微量元素の溶出を抑制する有害微量元素溶出抑制方法であって、前記石炭又はこれを燃焼させる燃焼炉内に、生石灰、石灰石、及び消石灰からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む石炭添加用溶出防止剤を添加すると共に、生石灰、及び消石灰からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む石炭灰添加剤を石炭灰に添加することを特徴とする有害微量元素溶出抑制方法。
【0013】
(1)に記載の発明によれば、生石灰、石灰石、及び消石灰からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む石炭添加用溶出防止剤を石炭又はこれを燃焼させる燃焼炉内に添加するので、石炭灰の融点が低下して、石炭灰が燃焼炉内で溶融固化を起こし、有害微量元素を溶融した石炭灰の内部に封じ込めることができる。一方、石炭灰に生石灰、及び消石灰からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む石炭灰添加剤を添加するので、石炭灰中の有害微量元素と難溶性化合物を形成し、有害微量元素の種類に関わりなく、その溶出を抑制することができる。
【0014】
また、(1)に記載の発明は、石炭や石炭灰に添加剤を添加するのみで有害微量元素の溶出を抑制できるため、必ずしも追加の設備を必要とするものではない。更に、生石灰、石灰石、及び消石灰は安価であるので、コストも低く抑えることができる。
【0015】
加えて、(1)に記載の発明は、高温の燃焼炉においても好適に実施しうるものであり、微粉炭燃焼炉においても実施することができる。
【0016】
ここで、上述の通り、石炭又はこれを燃焼させる燃焼炉内への石炭添加用溶出防止剤の添加により、石炭灰の融点の低下が引き起こされるが、石炭灰の融点が低下しすぎることにより燃焼炉の壁面等に石炭灰が付着するおそれがある。(1)に記載の発明においては、石炭添加用溶出防止剤と、石炭灰添加剤とを添加場所を振り分けて添加しているため、石炭又はこれを燃焼させる燃焼炉に、石炭添加用溶出防止剤を過剰に加えすぎることがなく、石炭灰の融点を低下させすぎてしまうおそれがない。このため、燃焼炉内に添加することができる石炭添加用溶出防止剤の上限値に関わりなく、微量元素の溶出防止のために必要とされる量の石炭添加用溶出防止剤、又は石炭灰添加剤を添加することができる。これにより、石炭灰からの有害微量元素の溶出を、効率的に抑制することができる。
【0017】
(2) 前記石炭添加用溶出防止剤1質量部に対し、前記石炭灰添加剤を0.1質量部以上500質量部以下の範囲で添加することを特徴とする(1)に記載の有害微量元素溶出抑制方法。
【0018】
(2)に記載の発明によれば、石炭灰添加剤の添加量が、石炭添加用溶出防止剤の添加量の0.1倍以上500倍以下であるため、燃焼部又はその上流部に石炭添加用溶出防止剤を添加しすぎることがなく、燃焼炉に傷害を起こすことを防止することができる。
【0019】
(3) 前記石炭100質量部に対して、前記石炭添加用溶出防止剤を0.1質量部以上10質量部以下の範囲で添加することを特徴とする(1)又は(2)に記載の有害微量元素溶出抑制方法。
【0020】
(3)に記載の発明によれば、石炭100質量部に対し、燃焼部又はその上流部において添加する石炭添加用溶出防止剤の添加量が0.1質量部以上であるため、石炭添加用溶出防止剤を添加する効果を有効に得ることができる。また、石炭添加用溶出防止剤の添加量が10質量部以下であるため、石炭添加用溶出防止剤を添加しすぎることによる燃焼炉への影響を最小限に抑えることができる。
【0021】
(4) 前記石炭灰100質量部に対して、前記石炭灰添加剤を0.3質量部以上50質量部以下の範囲で添加することを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の有害微量元素溶出抑制方法。
【0022】
(4)に記載の発明によれば、石炭灰100質量部に対して、石炭灰に添加する石炭灰添加剤の添加量が0.3質量部以上であるため、石炭灰添加剤を添加する効果を有効に得ることができる。また、石炭灰添加剤の添加量が50質量部以下であるため、石炭灰添加剤を溶出防止効果に必要とされる量を超えて添加することがなく、経済的である。
【0023】
(5) 前記石炭火力発電システムが微粉炭燃焼方式の発電システムであり、前記石炭灰添加剤を、集塵機で回収された石炭灰に添加することを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の有害微量元素溶出抑制方法。
【0024】
(5)に記載の発明によれば、集塵機で回収された石炭灰に石炭灰添加剤を添加するので、既存の設備を利用することができ、設備投資等に要するコストを低く抑えることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、石炭添加用溶出防止剤と石炭灰添加剤とを、分配して添加するので、燃焼炉への影響を最小限に抑えつつ、有害微量元素の溶出を抑制することができる。更に、本発明の方法は、既存の設備を有効に利用するものであるので、多額の設備投資を行うことなく、有害微量元素の溶出を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一例を示す実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、本実施形態においては、石炭火力発電システムの一例である微粉炭燃焼施設について説明する。
【0027】
<A:石炭火力発電システムにおける微粉炭燃焼施設の構成>
図1は、石炭火力発電システムにおける微粉炭燃焼施設1を示すブロック図である。ここで、図1に示すように、微粉炭燃焼施設1は、石炭を供給する石炭供給部12と、供給された石炭を微粉炭にする微粉炭生成部14と、微粉炭を燃焼する微粉炭燃焼部16と、微粉炭の燃焼により生成された石炭灰を処理する石炭灰処理部18と、を備える。また、図2は、微粉炭燃焼部16における燃焼炉161付近の拡大図である。
【0028】
<A−1:石炭供給部>
石炭供給部12は、石炭を貯蔵する石炭バンカ121と、この石炭バンカ121に貯蔵された石炭を供給する給炭機122と、を備える。石炭バンカ121は、給炭機122へ供給する石炭を貯蔵する。給炭機122は、石炭バンカ121から供給された石炭を連続して石炭微粉炭機141へ供給するものである。また、この給炭機122は、石炭の供給量を調整する装置を備えており、これにより、石炭微粉炭機141に供給される石炭量が調整される。また、これら石炭バンカ121と給炭機122との境界には石炭ゲートが設けられており、これにより、給炭機からの空気が石炭バンカへ流入するのを防いでいる。
【0029】
<A−2:微粉炭生成部>
微粉炭生成部14は、石炭を微粉炭燃焼が可能な微粉炭にする石炭微粉炭機141(ミル)と、この石炭微粉炭機141に空気を供給する空気供給機142と、を備える。
【0030】
石炭微粉炭機141は、給炭機122から給炭管を介して供給された石炭を、微細な粒度に粉砕して微粉炭を形成すると共に、この微粉炭と、空気供給機142から供給された空気とを混合する。このように、微粉炭と空気とを混合することにより、微粉炭を予熱及び乾燥させ、燃焼を容易にする。形成された微粉炭には、エアーが吹きつけられて、これにより、微粉炭燃焼部16に微粉炭を供給する。
【0031】
石炭微粉炭機141の種類としては、ローラミル、チューブミル、ボールミル、ビータミル、インペラーミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく微粉炭燃焼で用いられるミルであればよい。
【0032】
<A−3:微粉炭燃焼部>
微粉炭燃焼部16は、微粉炭生成部14で生成された微粉炭を燃焼する燃焼炉161と、この燃焼炉161を加熱する加熱機162(熱交換ユニット)と、燃焼炉161に空気を供給する空気供給機163と、を備える。
【0033】
燃焼炉161は、加熱機162(熱交換ユニット)により加熱されて、石炭微粉炭機141から微粉炭管を介して供給された微粉炭を、空気供給機163から供給された空気と共に燃焼する。微粉炭を燃焼することにより石炭灰が生成され、排ガスと共に石炭灰処理部18に排出される。
【0034】
図2を参照して、燃焼炉161について詳しく説明すると、図2において、燃焼炉161は全体として略逆U字状をなしており、図中矢印に沿って燃焼ガスが逆U字状に移動した後、再度小さくU字状に反転し、燃焼炉161の出口(図2における矢印の最後)は、図1における脱硝装置181、集塵機182に接続されている。本実施形態に係る微粉炭燃焼施設においては、燃焼炉161の高さは30mから70mであり、排ガスの流路の全長は300mから1000mに及ぶ。
【0035】
燃焼炉161の下方には、燃焼炉161内のバーナーゾーン161a’付近で微粉炭を燃焼するためのバーナ161aが配置されている。また、燃焼炉161内のU字頂部付近には、火炉上部分割壁161b、最終過熱器161b’、第1の再熱器161f(いずれも熱交換ユニット)が配置されており、更にそこから横置き1次過熱器161c(熱交換ユニット)が続いて配置されている。更に、横置き1次過熱器161cと平行して第2の再熱器161f’が設けられており、横置き1次過熱器161cの終端付近からは、1次節炭器161d(熱交換ユニット)、2次節炭器161e(熱交換ユニット)が2段階に設けられている。ここで、節炭器(ECOとも呼ばれる)は、燃焼ガスの保有する熱を利用してボイラ給水を予熱するために設けられた伝熱面群である。なお、本実施形態においては、燃焼炉161中、1次節炭器161dと2次節炭器161eとは、2段階に分離して設置されているが、このような形態に限定されない。即ち、燃焼炉161は単一の節炭器のみを有するものであってもよい。
【0036】
<A−4:石炭灰処理部>
石炭灰処理部18は、微粉炭燃焼部16から排出された排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置181と、排ガス中の煤塵を除去する集塵機182と、この集塵機182で収集された石炭灰を一時貯蔵する石炭灰回収サイロ183と、を備える。
【0037】
脱硝装置181は、排ガス中の窒素酸化物を除去するものである。即ち、比較的高温(300〜400℃)の排ガス中に還元剤としてアンモニアガスを注入し、脱硝触媒との作用により排ガス中の窒素酸化物を無害な窒素と水蒸気に分解する、いわゆる乾式アンモニア接触還元法が好適に用いられる。
【0038】
集塵機182は、排ガス中の石炭灰を電極で収集する装置である。この集塵機182により収集された石炭灰は、石炭灰回収サイロ183に搬送される。また、石炭灰が除去された排ガスは、図示しない脱硫装置を介した後に煙突から排出される。
【0039】
石炭灰回収サイロ183は、集塵機182により収集された石炭灰を一次貯蔵する設備である。
【0040】
<B:本発明の有害微量元素溶出抑制方法>
本発明の有害微量元素溶出抑制方法は、石炭火力発電システムにおいて燃料となる石炭を燃焼させたときに生じる石炭灰から、有害微量元素の溶出を抑制する有害微量元素溶出抑制方法であって、石炭又はこれを燃焼させる燃焼炉161内に、生石灰、石灰石、消石灰からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む石炭添加用溶出防止剤を添加すると共に、生石灰、消石灰からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む石炭灰添加剤を石炭灰に添加することを特徴とする有害微量元素溶出抑制方法であるが、これを、上記の微粉炭燃焼施設1を用いて説明する。
【0041】
有害微量元素溶出抑制方法は、石炭を供給する石炭供給工程S10と、供給された石炭を粉砕して微粉炭を生成する微粉炭生成工程S20と、この微粉炭を燃焼して石炭灰を生成する微粉炭燃焼工程S30と、この石炭灰を集塵しこれを収容する石炭灰処理工程S40とを含み、これら各工程は、それぞれ、上述の微粉炭燃焼施設1の石炭供給部12、微粉炭生成部14、微粉炭燃焼部16、及び石炭灰処理部18、において行われる。そして、本発明の特徴である石炭添加用溶出防止剤添加工程S50は、上記の石炭供給部12、微粉炭生成部14、及び微粉炭燃焼部16のいずれかに対して行われ、石炭灰添加剤添加工程S60は、上記の石炭灰処理部18に対して行われる。
【0042】
<石炭供給工程S10>
まず、石炭供給工程S10では、石炭バンカ121に貯蔵された石炭が、給炭機122により、石炭微粉炭機141に供給される。なお、この石炭微粉炭機141に供給される石炭は、具体的には瀝青炭、亜瀝青炭、又は褐炭等であるが、これらの石炭に限定されるものではなく微粉炭燃焼が行える石炭であればよい。
【0043】
<微粉炭生成工程S20>
次に、微粉炭生成工程S20では、給炭機122から供給された石炭が石炭微粉炭機141により粉砕されて、これにより、微粉炭が生成される。生成された微粉炭は、燃焼炉161に供給される。このとき、この微粉炭生成工程で粉状に形成された微粉炭の平均の粒度は、微粉炭燃焼で一般的に用いられる粒径範囲であればよく、一般的には、74μmアンダー80wt%以上の粉砕度である。なお、この範囲は石炭添加用溶出防止剤が添加された場合にも適用できる。
【0044】
<微粉炭燃焼工程S30>
次に、微粉炭燃焼工程S30では、石炭微粉炭機141で生成された微粉炭が、燃焼炉161により燃焼される。図2に示すように、バーナーゾーン161a’においては微粉炭が燃焼されるが、このときの温度は1300℃から1500℃に及び、燃焼によって生成される石炭灰は、矢印の方向に沿って上昇して排ガスと共に火炉上部分割壁161b、最終過熱器161b’、第1の再熱器161f、第2の再熱器161f’、横置き1次過熱器161c(いずれも熱交換ユニット)を通過し、1次節炭器161d(熱交換ユニット)、2次節炭器161e(熱交換ユニット)を順次通過する。この熱交換ユニット付近は、450℃から900℃前後が維持されている領域であり、この燃焼ガスの保有する熱を利用してボイラ給水を予熱するために設けられた伝熱面群を通過することによって熱交換され、温度が低下する。排ガスがバーナーゾーン161a’から節炭器付近まで到達するまでに要する時間は、おおむね5秒から10秒である。そして、その後、後段の脱硝装置181、集塵機182に送られる。この微粉炭燃焼工程で生成される石炭灰は、通常、その平均の粒度が1μmから100μmの範囲内の粉末状である。
【0045】
<石炭灰処理工程S40>
その後、微粉炭を燃焼することにより生成された石炭灰は、排ガスと共に脱硝装置181に排出され、集塵機182を経て石炭灰回収サイロ183に送られる。この集塵機182は複数段設けられていることが好ましい。
【0046】
<石炭添加用溶出防止剤添加工程S50>
本発明の一の特徴であり、石炭添加用溶出防止剤を添加する工程である石炭添加用溶出防止剤添加工程S50は、図1に示すように、石炭供給部12、微粉炭生成部14、及び微粉炭燃焼部16のいずれかに対して行われる(それぞれ、図1におけるS51、S52、及びS53のいずれか)。
【0047】
石炭供給部12、微粉炭生成部14、又は微粉炭燃焼部16において、石炭添加用溶出防止剤を添加する場合、石炭添加用溶出防止剤の添加場所は特に限定されず、例えば、石炭供給部12と微粉炭生成部14との間の移送路や、微粉炭生成部14と微粉炭燃焼部16との間の移送路等で行われてもよい。
【0048】
そのような方法としては、給炭機122から石炭微粉炭機141に輸送する際の移送中のベルトコンベア上に石炭添加用溶出防止剤を供給して混合する方法、石炭添加用溶出防止剤を石炭微粉炭機141の石炭ホッパーに直接投入する方法、石炭微粉炭機141と燃焼炉161の間の配管に剤投入口を設けて供給する方法、及び燃焼炉161へ燃焼用空気と共に直接投入する方法等を挙げることができる。この場合、添加を行うための設備は、既存の設備の軽微な改良で設置することが可能であるため、既存設備を有効利用することができ、コスト的にも有利である。
【0049】
本発明の石炭添加用溶出防止剤は、石灰石(CaCO)、消灰石(Ca(OH))、生石灰(CaO)からなる群より選択される1種以上を含むものである。また、石炭添加用溶出防止剤は粒状又は粉末状であることが好ましく、具体的には、平均粒径が10μmから100μmであることが好ましく、10μmから70μmであることがより好ましい。
【0050】
石炭供給部12、微粉炭生成部14、又は微粉炭燃焼部16においてこれらの石炭添加用溶出防止剤を添加する場合には、石炭添加用溶出防止剤の石炭への添加量は、石炭100質量部に対して、石炭添加用溶出防止剤を0.1質量部以上10質量部以下の範囲で添加することが好ましく、0.1質量部以上6.0質量部以下とすることが更に好ましく、0.1質量部以上1.0質量部以下とすることが特に好ましい。0.1質量部未満である場合には、石炭添加用溶出防止剤を添加することによる効果を実質的に得ることができない。一方、石炭添加用溶出防止剤は、石炭灰の融点を低下させるため、スラッギングやファウリングを防止するという観点から、10質量部以下であることが好ましく、6.0質量部以下であることが更に好ましく、1.0質量部以下であることが更に好ましい。
【0051】
また、燃料として用いる石炭のカルシウム成分の含有量が高い場合には、必要に応じて石炭添加用溶出防止剤を添加しないか、石炭添加用溶出防止剤を過熱器又は節炭器付近のみにおいて、添加することが好ましい。
【0052】
過熱器又は節炭器付近においては、燃焼ガスの温度が450℃から900℃と、比較的低温であるため、石炭添加用溶出防止剤を添加して石炭灰の融点が低下したとしても石炭灰が完全に溶融せず、溶融した石炭灰が燃焼炉161に付着することがない。
【0053】
石炭供給部12、微粉炭生成部14又は微粉炭燃焼部16において石炭添加用溶出防止剤を添加することにより、本発明においては、石炭灰中に含まれる有害な微量元素の溶出を、微量元素の種類にかかわりなく抑制できる。具体的に溶出を防止することができる微量元素としては、特に限定されないが、ホウ素、フッ素、セレン、ヒ素、六価クロム等を挙げることができる。この中でも特に、ホウ素、セレン及びヒ素の溶出を、好ましく抑制することができる。この機構は、まず、カルシウムを含む化合物である石炭添加用溶出防止剤の添加によって、石炭灰の溶融温度を低下させる。即ち、燃焼炉161内の1300℃から1500℃という高温の条件においては、シリカ、アルミナを主成分とする石炭灰の表面が軟化(溶融)し、粘性をもった石炭灰粒子が、微量元素と接触して石炭灰の内部に取り込まれて溶出濃度が低下するものと推定される。このように、本発明においては、燃焼までの段階までに石炭添加用溶出防止剤を添加することで、微粉炭燃焼部における燃焼炉の高温を有効利用して、石炭灰からの微量元素の溶出を抑制するものである。
【0054】
また、石炭添加用溶出防止剤として石灰石、消石灰、生石灰を使用した場合には、排ガスの冷却過程において、或いは捕集された石炭灰中において、これらの石炭添加用溶出防止剤に由来する酸化カルシウムが石炭灰中に存在する酸化セレン、三酸化二ヒ素、及び酸化ホウ素等と反応して、それぞれ亜セレン酸カルシウム、ヒ酸カルシウム、ホウ酸カルシウム等の難溶性又は不溶性の化合物を生成するため、石炭灰中の微量元素の溶出を抑制することができる。このような反応は、石炭添加用溶出防止剤を過熱器及び節炭器付近において添加した場合にも起こるため、過熱器又は節炭器において石炭添加用溶出防止剤を添加したときにも、有害微量元素の溶出を有効に抑制することができる。
【0055】
<石炭灰添加剤添加工程S60>
本発明の一の特徴であり、石炭灰添加剤を添加する工程である石炭灰添加剤添加工程S60は、図1に示すように、石炭灰処理部18に対して行われる(図1におけるS61)。
【0056】
石炭灰添加剤を添加する場合、添加する場所は特に限定されない。例えば、石炭灰添加剤は、集塵機182において集塵機ホッパーの上部に開口部を設けて、当該開口部から石炭灰添加剤を添加し、集塵機ホッパー内部において石炭灰と石炭灰添加剤とが混合されるようにしてもよいし、石炭灰回収サイロ183において、石炭灰添加剤を添加してもよい。更には、石炭灰回収サイロ183に回収された石炭灰を石炭灰添加剤と混練する混練機を設けて石炭灰と石炭灰添加剤とを混練するようにしてもよい。石炭灰としては、集塵機182で回収された石炭灰に添加することが好ましい。
【0057】
本発明の石炭灰添加剤は、生石灰(CaO)、消石灰(Ca(OH))からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むものである。また、石炭灰添加剤は粒状又は粉末状であることが好ましく、具体的には、平均粒径が10μmから100μmであることが好ましく、10μmから70μmであることがより好ましい。
【0058】
石炭灰添加剤の添加量は、石炭添加用溶出防止剤の添加量1質量部に対し、0.1質量部以上500質量部以下であることが好ましい。この場合、石炭添加用溶出防止剤の添加量の不足を石炭灰添加剤で補うことができるので、燃焼炉161に石炭添加用溶出防止剤を添加しすぎることがなく、燃焼炉161に障害を引き起こすことを防止することができる。
【0059】
また、石炭灰添加剤の添加量は、石炭100質量部に対して、石炭灰添加剤が0.3質量部以上50質量部以下の範囲となるよう添加することが好ましい。石炭100質量部に対して、石炭灰添加剤が0.3質量部以上であるので、石炭灰添加剤を添加する効果を十分に得ることができ、石炭灰添加剤が50質量部以下であるので、石炭灰添加剤を溶出防止効果に必要とされる量を超えて添加することがなく、経済的である。上記上限は、30質量部であることが好ましく、10質量部であることが更に好ましい。上記のような添加量で生石灰及び消石灰を添加することにより、石炭灰中のフリーライム量を所望の範囲内に収めることができる。石炭灰中に存在させるフリーライム量としては、酸化カルシウム量で0.5質量%以上であることが好ましく、3.0質量%以上であることが更に好ましく、10.0質量%以上であることが特に好ましい。
【0060】
石炭灰添加剤を石炭灰に添加することにより、石炭灰添加剤の成分である酸化カルシウムが石炭灰中に存在する酸化セレン、三酸化二ヒ素、及び酸化ホウ素等と反応して、それぞれ亜セレン酸カルシウム、ヒ酸カルシウム、ホウ酸カルシウム等の難溶性又は不溶性の化合物を生成するため、石炭灰中の微量元素の溶出を抑制することができる。
【0061】
更に、石炭灰添加剤の成分である酸化カルシウムは、水に溶解することにより塩基性を示す。セレン、ホウ素、ヒ素等の元素は、石炭灰のpHが高いほど、石炭灰から溶出しにくいという性質を有する。このため、本発明の石炭灰添加剤を添加することにより、石炭灰が水に溶解したときのpHが高く保たれ、これらの元素が石炭灰から溶出することを有効に抑制することができる。ここで、石炭灰添加剤の添加量は、水100質量部に対して、石炭灰10質量部を添加することにより生成される水溶液のpHが12.0以上となるように添加することが好ましく、12.5以上となるように添加することがより好ましく、13.0以上となるように添加することが更に好ましい。
【0062】
なお、酸化カルシウムは、石炭灰中に多量に存在することにより、水溶液のpHの低下を防止するpH低下防止剤として作用し、酸性土壌中におかれた際にも有害微量元素の溶出を抑制する効果がある。更に、石炭灰中に添加される酸化カルシウムは、石炭灰を溶解させたときのpHに関わりなく有害微量元素の溶出を抑制する効果を持つ。このような効果は、石炭灰中の酸化カルシウムの量が多いほど効率よく得ることができ、酸化カルシウムの存在による水溶液中のpHの上昇の効果が頭打ちになった状態においても、石炭灰中により多くの酸化カルシウムを存在させることにより、よりよい溶出抑制効果を得ることができる。このため、石炭灰中の酸化カルシウムの含有量は多いほうが好ましい。
【0063】
石炭灰添加剤は、石炭灰に添加した後の熱分解を必要としないものである。即ち、石炭灰添加剤に含有される水酸化カルシウム及び酸化カルシウムは、それ自体、水溶液にpHを上昇させる効果を有し、有害微量元素の溶出抑制効果を示す。一方、石炭灰添加剤に含有される酸化カルシウムも、上述の通り、有害微量元素と不溶性化合物を形成する作用を有するため、それ自体で、石炭灰からの有害微量元素の溶出を抑制する効果を示すものである。このように、本発明の石炭灰添加剤を石炭灰に添加することにより、何らの処理を施さなくとも、石炭添加用溶出防止剤を燃焼炉161等に添加したものと同様の効果を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態を示す石炭火力発電システムにおける微粉炭燃焼施設の概略構成図である。
【図2】図1における燃焼炉付近の拡大図である。
【符号の説明】
【0065】
1 微粉炭燃焼施設
12 石炭供給部
121 石炭バンカ
122 給炭機
14 微粉炭生成部
141 石炭微粉炭機
142 空気供給機
16 微粉炭燃焼部
161 燃焼炉
161a バーナ
161a’ バーナーゾーン
161b 火炉上部分割壁
161b’ 最終過熱器
161c 横置き1次過熱器
161d 1次節炭器
161e 2次節炭器
161f 第1の再熱器
161f’ 第2の再熱器
162 加熱機
163 空気供給機
18 石炭灰処理部
181 脱硝装置
182 集塵機
183 石炭灰回収サイロ
S10 石炭供給工程
S20 微粉炭生成工程
S30 微粉炭燃焼工程
S40 石炭灰処理工程
S50 石炭添加用溶出防止剤添加工程
S60 石炭灰添加剤添加工程
【出願人】 【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
【出願日】 平成19年1月12日(2007.1.12)
【代理人】 【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之

【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一

【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好

【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志


【公開番号】 特開2008−170111(P2008−170111A)
【公開日】 平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願番号】 特願2007−5243(P2007−5243)