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【発明の名称】 工業炉の燃焼方法
【発明者】 【氏名】上尾 英孝

【氏名】上島 啓利

【要約】 【課題】燃焼生成排ガスに適正酸素量を添加した混合ガスに、更に空気を混合したものを燃焼用ガスとして使用することにより、燃焼生成排ガス量を低減しつつ、燃燃焼生成排ガス中のNOの発生量を低下させることが可能な工業炉の燃焼方法を提供する。

【解決手段】バーナー10を備え加熱対象物を加熱処理する工業炉11から排出された燃焼生成排ガスを大気中に排出するに際し、大気へ排出する前の燃焼生成排ガスの一部を抽出し、これに酸素と空気を添加して燃焼用ガスとし、燃焼用ガスを燃料とともにバーナー10へ供給して燃焼させる工業炉の燃焼方法であって、燃焼用ガス中の酸素濃度を11体積%以上21体積%未満の範囲とした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナーを備え加熱対象物を加熱処理する工業炉から排出された燃焼生成排ガスを大気中に排出するに際し、大気へ排出する前の前記燃焼生成排ガスの一部を抽出し、これに酸素と空気を添加して燃焼用ガスとし、該燃焼用ガスを燃料とともに前記バーナーへ供給して燃焼させる工業炉の燃焼方法であって、
前記燃焼用ガス中の酸素濃度を11体積%以上21体積%未満の範囲としたことを特徴とする工業炉の燃焼方法。
【請求項2】
請求項1記載の工業炉の燃焼方法において、前記酸素量を、前記工業炉へ供給する燃料量、および前記空気量から決定し、更に前記抽出する燃焼生成排ガス量を、前記大気へ排出する燃焼生成排ガス中のNO量に基づいて決定することを特徴とする工業炉の燃焼方法。
【請求項3】
請求項1および2のいずれか1項に記載の工業炉の燃焼方法において、前記空気量は、前記工業炉から大気へ排出する前記燃焼生成排ガス量に基づいて決定することを特徴とする工業炉の燃焼方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、鋼材の加熱に適した工業炉の燃焼方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼材は、熱間で圧延を行うために、工業炉内で予め約1200℃まで加熱処理されている。この熱源は、工業炉内に設けられたバーナーに、例えば、コークス炉ガス(以下、COGともいう)または都市ガスのような燃料と燃焼用ガスを供給し燃焼させることで得ている。なお、燃焼用ガスは、空気を用いることが一般的であった。
このような工業炉としては、例えば、図2に示すように、燃焼に使用する燃料(ガス)をバーナー90に導入するとともに、燃焼用ガスとして使用する空気をブロワ91で昇圧しレキュペレータ92で予熱した後、バーナー90に供給するものがある。なお、この工業炉から排出される燃焼生成排ガスの保有熱を、燃焼用ガス(空気)の熱源として利用するため、燃焼生成排ガスを、熱交換機能をなすレキュペレータ92に通過させた後、煙突93のドラフトにより排気している。
これにより、燃焼用ガス(約30℃)は熱量を得て、約500℃に昇温された後に工業炉に供給され、一方、レキュペレータ92で熱交換された後の燃焼生成排ガスは熱量を奪われ、約300℃まで降温された後に煙突93を経由して系外へ排出されている。
【0003】
この系外に排出される燃焼生成排ガスの顕熱を削減することは、省エネルギー的に有効な手段である。この顕熱を削減するには、燃焼生成排ガスの温度と量を低減する方法がある。
しかし、燃焼生成排ガスの温度を低下させるには、燃焼生成排ガス中の硫黄による低温腐食の問題と、熱交換効率の低下とから限界があるので、この燃焼生成排ガスの量を低減することが有効である。
更に、光化学スモッグ防止の観点から、燃焼生成排ガス中のNOを低減することも重要である。
【0004】
この燃焼生成排ガス量およびNOを低減する手段として、図3に示すように、燃焼用ガス(空気)に酸素を添加した酸素富化空気を使用する燃焼方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、この方法では、燃焼用ガス中の酸素濃度が高くなるとバーナーの燃焼火炎温度が高くなり、NOの発生が著しく増加するという問題があった。
そこで、図4に示すように、燃焼生成排ガスを混合したガスを、燃焼用ガスとして空気に混入させて使用し燃料を燃焼させることで、燃焼火炎温度を低下させる方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開昭57−41521号公報
【特許文献2】特開昭52−14225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に開示されている方法は、燃焼火炎温度を低下させることは可能であるが、燃焼生成排ガス量が増大して環境上問題があった。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、燃焼生成排ガスに酸素と空気を適正量添加して燃焼用ガス中の酸素濃度を規定することにより、燃焼生成排ガス量を低減しつつ、燃焼生成排ガス中のNOの発生量を低下させることが可能な工業炉の燃焼方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するためのものであり、その手段(1)は、バーナーを備え加熱対象物を加熱処理する工業炉から排出された燃焼生成排ガスを大気中に排出するに際し、大気へ排出する前の前記燃焼生成排ガスの一部を抽出し、これに酸素と空気を添加して燃焼用ガスとし、該燃焼用ガスを燃料とともに前記バーナーへ供給して燃焼させる工業炉の燃焼方法であって、
前記燃焼用ガス中の酸素濃度を11体積%以上21体積%未満の範囲とした。
【0009】
手段(2)は、手段(1)において、前記酸素量を、前記工業炉へ供給する燃料量、および前記空気量から決定し、更に前記抽出する燃焼生成排ガス量を、前記大気へ排出する燃焼生成排ガス中のNO量に基づいて決定する。
手段(3)は、手段(1)および手段(2)のいずれか1において、前記空気量は、前記工業炉から大気へ排出する前記燃焼生成排ガス量に基づいて決定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る工業炉の燃焼方法は、燃焼用ガス中の酸素濃度を、空気の酸素濃度未満である11体積%以上21体積%未満に規定するので、火炎温度の過剰な上昇を抑制し、従来よりもNOの生成量を低減できるとともに、安定した燃焼が可能となる。
また、本発明に係る工業炉の燃焼方法において、酸素量を、燃料量および空気量から決定し、更に抽出する燃焼生成排ガス量を、NO量に基づいて決定すると、工業炉の操業状況に応じて燃焼生成排ガス量を調整でき、更にこの酸素が添加される燃焼生成排ガス量を増減させることで、酸素濃度を変えて火炎温度を調整でき、発生するNOの制御を容易にできるので好ましい。
そして、本発明に係る工業炉の燃焼方法において、空気量を、工業炉から大気へ排出する燃焼生成排ガス量に基づいて決定すると、燃焼生成排ガスの発生量を抑制できるので好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の一実施の形態に係る工業炉の燃焼方法を示す説明図である。
【0012】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る工業炉の燃焼方法は、バーナー10を備え鋼材(加熱対象物の一例)を加熱処理する工業炉11から排出された燃焼生成排ガスを大気中に排出するに際し、大気へ排出する前の燃焼生成排ガスの一部を抽出し、これに酸素と空気を添加して燃焼用ガスとし、燃焼用ガスを燃料とともにバーナー10へ供給して燃焼させる方法である。
まず、本発明の一実施の形態に係る工業炉の燃焼方法を適用する設備構成について説明した後、工業炉の燃焼方法について説明する。
【0013】
図1に示すように、工業炉11には、複数のバーナー10が設けられ、このバーナー10には、燃料ガスを供給するための燃料ガス供給用配管12と、燃焼用ガスを供給するための燃焼用ガス供給用配管13とが設けられている。また、工業炉11には、炉内で生成した燃焼生成排ガスを炉外へ放出するための煙道14と、この下流側端部に設けられた煙突15が設けられている。
この煙道14の途中位置には、熱交換を行うためのレキュペレータ16が設けられ、工業炉11から排出された燃焼生成排ガスの熱を、燃焼空気用ブロワ17で昇圧されバーナー10へ送られる空気へ与えることが可能な構成となっている。これにより、空気は、工業炉11から排出された燃焼生成排ガスの熱によって予め昇温される。
【0014】
煙道14に設けられたレキュペレータ16と煙突15との間には、燃焼用ガス供給用配管13に接続される循環排ガス用配管18、および排ガス中のNO量を測定するNO計19が設けられている。この循環排ガス用配管18には、工業炉11から排出された燃焼生成排ガスを所定量抽出し、循環排ガスとしてバーナー10へ送られる空気へ混入させるための循環排ガス抽出用ブロワ20が設けられている。また、この循環排ガス用配管18には、循環排ガスに酸素を供給するための酸素供給用配管21が接続されている。
これにより、バーナー10に供給される燃焼用ガスは、空気、循環排ガス、および酸素の混合ガスとなる。
【0015】
以上に示した燃料ガス供給用配管12、燃焼用ガス供給用配管13、循環排ガス用配管18、および酸素供給用配管21には、各配管内の流量を検出する流量センサー22〜25と、流量調整を行う流量制御弁26〜29とが、それぞれ設けられている。
次に、各流量制御弁26〜29の開度を制御して、燃料ガスE、空気C、酸素A、および循環排ガスF−Gの各流量を調整する方法について説明する。
まず、工業炉11の目標炉温T0と、この工業炉11の炉内に設けた温度計(図示せず)の測定温度T1を温度制御装置(TIC)30に入力して、その温度差ΔTを求める。そして、流量制御装置(FIC)31は、この温度差ΔTが入力されると、その温度を得るための燃料ガス増減量を求め、その燃料ガス増減量を基にして、流量センサー22の測定値を監視しつつ流量制御弁26を制御し、燃料ガス量を調整する。
【0016】
また、空気量および酸素量決定部32は、前記流量制御装置31から燃料ガス量が入力され、この量の燃料ガスを燃焼するための理論酸素量を求める。そして、この理論酸素量と予め設定している目標大気排出燃焼生成排ガス量から、空気Cと酸素Aの流量を求めて、流量制御装置33、34に出力する。
そして、流量制御装置33は、空気流量が入力された空気量となるように、流量センサー23の測定値を監視しつつ流量制御弁27を制御して空気量を調整する。また、流量制御装置34は、酸素流量が入力された酸素量となるように、流量センサー25の測定値を監視しつつ流量制御弁29を制御して酸素量を調整する。
【0017】
一方、循環排ガス量決定部35には、煙道14に設けたNO計19で測定したNO値が入力され、この測定したNO値と予め設定している目標NO値から、循環排ガス調整量ΔQを求め、これを流量制御装置36に出力する。
この流量制御装置36は、入力された循環排ガス調整量ΔQを基にして、流量センサー24の測定値を監視しつつ、流量制御弁28を制御して循環排ガス量を調整する。
なお、目標NO値は、燃焼用ガス中の酸素割合が11体積%以上21体積%未満で得られるNO量の範囲の値とする。
【0018】
次に、本発明の一実施の形態に係る工業炉の燃焼方法について、図1を参照しながら説明する。
図1に示すように、気体燃料である燃料ガスEは、温度制御装置30と流量制御装置31を備えた炉温度制御系統から指示された流量でバーナー10へ供給され、空気Cは、燃焼空気用ブロワ17で昇圧され、レキュペレータ16で予熱された後に、所用流量に制御されてバーナー10へ供給され燃焼する。なお、燃料ガスは、コークス炉(図示しない)の各炭化室から回収されるコークス炉ガス、液化天然ガス、および液化石油ガスのいずれか1を単独で、または2以上を混合して使用できるが、液体燃料を使用してもよい。
【0019】
ここで、燃料ガス1Nm中に含まれる水素H、一酸化炭素CO、メタンCH、エタンC、エチレンC、その他炭化水素C、酸素O、窒素N、および二酸化炭素COの各容積を[Nm/Nm]とすれば、これらの混合物からなる燃料ガス1Nmの完全燃焼に必要な前記理論酸素量Oは、下記に示す(1)式で求められる。
O=0.5・H+0.5・CO+2・CH+3.5・C+3・C+{x+(y/4)}・C−O[Nm/Nm]・・・(1)
【0020】
なお、この燃料ガスを空気で燃焼させる場合は、大気中の酸素濃度が21体積%であるため、完全燃焼に必要な理論空気量Aは、下記に示す(2)式で求められる。
=O/0.21[Nm/Nm]・・・(2)
また、理論排ガス量Gは、下記に示す(3)式で求められる。
=0.79×A+CO+H+3・CH+5・C+4・C+{x+(y/2)}・C+N+CO[Nm/Nm]・・・(3)
ここで、空気比をmで表すと、実際の燃焼生成排ガス量Gは、下記に示す(4)式で求められる。
=G+(m−1)・A[Nm/Nm]・・・(4)
【0021】
ここで、以上に示した内容を、燃料ガスとして、表1に示す組成(単位%)のコークス炉ガス(COG)を用いた場合(単位:体積%)について説明する。
【0022】
【表1】


【0023】
前記した理論酸素量Oは、(1)式から0.98[Nm/Nm]、空気燃焼の理論空気量Aは、(2)式から4.71[Nm/Nm]であった。更に、空気燃焼において、空気比(m)が1.0で完全燃焼したとすると、理論排ガス量G(=実際の燃焼生成排ガス量G)は、(3)式から5.42[Nm/Nm]となる。このとき、排ガス中のCOは0.44[Nm/Nm]、HOは1.25[Nm/Nm]、Nは3.73[Nm/Nm]となる。
【0024】
本発明は、図1に示すように、工業炉11より排出された燃焼生成排ガスFからその一部を抽出して、循環排ガス(即ち、燃焼生成排ガスFから、煙突15から放出される排ガスGを引いたバーナー10へ供給する燃焼生成排ガス:F−G)とする。そして、この抽出した燃焼生成排ガス、即ち循環排ガスF−Gに対して、前記(1)式で求めた理論酸素量Oになるように、酸素Aおよび空気Cを混合し(循環排ガスF−Gと酸素Aを混合した酸素添加排ガスBに、更に空気Cが混合される)、酸素濃度が11体積%以上21体積%未満(好ましくは、下限を12体積%、更には13体積%、上限を20体積%以下、更に18体積%)の燃焼用ガスDとして、燃料ガスEとともにバーナー10に供給して、燃料ガスを燃焼させる。
このように、本発明は、燃焼用ガスの酸素濃度の最大値を空気より低い21体積%未満とし、NOの上昇を防止したところに特徴がある。即ち、酸素を添加しても空気中の酸素濃度未満であり、酸素添加に起因する火炎温度の過剰な上昇を防止して、NOの生成量を増加させないところに発明のポイントがある。また、前記酸素濃度を、11体積%未満とすると、安定した燃料ガスの燃焼が得られなくなることがある。
【0025】
ここで、前記燃料ガス量、循環排ガス量、更には、この循環排ガスに添加する空気量、および酸素量の決定方法について、具体的に説明する。
燃料ガス量は、工業炉11の炉内温度を目標炉温T0になるように、その発熱量から決定する。そして、この燃料ガスを燃焼するための理論酸素量を演算して求め、この理論酸素量になるように、空気量と酸素量を混合する。
この際、混合する空気量を多くすると、工業炉11で生成する燃焼生成排ガス量が増加するため、予め目標燃焼生成排ガス量を設定しておき、この前記理論酸素量を確保し、かつ目標燃焼生成排ガス量になるように、空気量と酸素量を決定する。この空気量は、前記両者を満足する範囲で、できる限り多くすることがコスト的に好ましい。なお、前記空気量は、該空気中の酸素の燃焼効率を考慮して計算した値より、10体積%(好ましくは5体積%)程度過剰に混合することが好ましい。
【0026】
更に、循環排ガス量は、煙道14を流れる燃焼生成排ガス中のNO量が目標NO量以下になるように決定する。即ち、バーナー10での燃焼用ガスの燃焼温度が高くなるほど、発生するNO量が多くなることから、循環排ガスを混合して前記燃料ガスの燃焼温度上昇を防止し、発生するNO量の増加を防止する。なお、NO量の発生量は、例えば、工業炉11で使用しているバーナーの仕様、空気量、および使用する燃料ガスの成分等で異なるため、予めテーブル化しておくことが好ましい。
【0027】
また、工業炉11の炉内温度は、工業炉で設定するバーナー10の火炎温度に応じて、バーナー10へ供給する酸素Aおよび空気Cを添加した後の循環排ガスの酸素濃度、およびバーナー10へ供給する循環排ガス量のいずれか1または2を設定して行う。このとき、工業炉の炉内温度は、燃料ガスとしてコークス炉ガスを使用する場合、理論的に、例えば、1000℃以上2500℃以下程度にできる。
ここで、各ガス量の調整に際しては、まず、目標炉温T0になるように、燃料ガス量を決定し、次に、この燃料ガス量に基づいて、酸素と空気との混合量を決定する。
このとき、この空気量は、添加した酸素だけでは燃料ガスの完全燃焼に不足する酸素量に相当する量(同一量)だけ、循環排ガスと混合してもよいが、例えば、空気中の酸素の燃焼効率を考慮して、前記した相当量の10体積%(好ましくは5体積%)以下程度過剰に、循環排ガスと混合することが好ましい。
【実施例】
【0028】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
表2と表4においては、表1に示す化学成分を有する燃料ガスを燃焼するための燃焼用ガスを構成する酸素添加排ガスと空気を燃焼させるために必要な酸素、および循環排ガスについて、それぞれ分類してガスバランスを示した。
なお、表2〜表5中の各数値は、小数第3位を四捨五入しているため、小計または合計の数値が±0.01の範囲でずれている部分がある(以下の説明についても同様)。
【0029】
【表2】


【0030】
【表3】


【0031】
【表4】


【0032】
【表5】


【0033】
表2、3に示す従来例は、燃料ガスの全量を空気で燃焼させた結果である。即ち、図2に示す方法で燃焼させた結果である。また、表2〜5に示す実施例1〜7は、燃焼用ガス中の酸素割合を本願発明の11体積%以上21体積%未満にした結果であり、表2、3に示す比較例は、燃焼用ガス中の酸素割合を、本願発明の上限を超えた23.8体積%にした結果である。
実施例1〜7はいずれも、従来例に比較して煙突より放散する排ガス量を低減できるとともに、NOの発生も低減することができた。また、比較例は、煙突より放散する排ガス量が、実施例1〜3と同等であるが、NOの発生量が実施例1〜3、従来例より多くなった例である。以下、詳細に説明する。
【0034】
ここで、排ガス発生量の評価は、従来例で発生する排ガス発生量を基準として、どの程度減量できたかで評価した。
また、NO量は、測定器で測定したが、これに代えて理論的に求められる火炎温度により評価してもよい。
前記した特許文献2に記載されているように、NO量は火炎温度に関係する。即ち、火炎温度が高い場合は、NO量が増加し、火炎温度が低い場合は、NO量が減少する。なお、ここでは、下記に示した(5)式の燃料燃焼時の断熱火炎温度を用いてもよい。
Tc=(Qc+Qf+Qa+Qo+Qr)/(cp×Vc)・・・(5)
ただし、Tc:断熱火炎温度、Qc:燃料燃焼熱、Qf:燃料顕熱、Qa:空気顕熱、Qo:酸素顕熱、Qr:循環排ガス顕熱、cp:燃焼生成排ガス比熱、Vc:燃焼生成排ガス量、である。
【0035】
まず、基準となる従来例について説明する。
従来例は、前記したように、燃焼用ガスの全量に空気を使用し、酸素および循環排ガスは使用していない。ここで、燃料ガス1Nmを完全燃焼させるために必要な理論酸素量(理論O量)は、表2に示すように、0.98Nmである。この燃焼用ガスとしては、空気中の酸素を使用するため、空気中に含まれる酸素量が21体積%であることから、また使用する酸素量が0.98Nmであることから、窒素量は3.73Nmとなる。このため、燃焼用ガスとしてバーナーへ供給される燃焼用ガス量、即ち空気量は4.71Nmとなる。
【0036】
この空気を使用して燃料ガスを燃焼させることにより、生成する燃焼生成排ガスは、表3に示すように、CO量が0.44Nm、HO量が1.25Nmとなり、更に反応しない空気中のN量が3.73Nmであるため、5.42Nmとなる。
なお、従来例は、燃焼生成排ガスを循環使用しないため、その全量が排ガスとして煙突から排気される。なお、このときに発生するNO量は、150ppmであり、また理論火炎温度は、前記(5)式より2370℃である。
【0037】
実施例1〜実施例3は、燃料ガス1Nm中の0.2Nm分(即ち、20体積%)を、循環排ガスに酸素を添加したガス中の酸素で燃焼させ、0.8Nm分(即ち、80体積%)を空気中の酸素で燃焼させた結果である。
実施例1では、必要な酸素量が0.78Nmであるため、使用する空気量は3.76Nmとなる。
一方、燃料ガス1Nm中の0.2Nmを、酸素添加排ガスで燃焼させる場合、必要な酸素量は0.2Nmである。ここで、燃焼用ガス中の酸素濃度(O割合)を19.8体積%にするためには、1.04Nmの循環排ガスが必要となり、使用する酸素添加排ガス量は1.24Nmとなる。
【0038】
空気を使用して燃料ガスを燃焼させることにより、生成する燃焼生成排ガスは、表3に示すように、CO量が0.35Nm、HO量が1.00Nmとなり、更に反応しない空気中のN量が2.98Nmであるため、4.33Nmとなる。
また、酸素添加排ガスを使用して燃料ガスを燃焼させることにより、生成する燃焼生成排ガスは、CO量が0.09Nm、HO量が0.25Nmとなり、更に反応しない循環排ガス量が1.04Nmであるため、1.38Nmとなる。
【0039】
なお、実施例1は、燃焼生成排ガスを循環使用するため、空気から発生する排ガス量は4.33Nm、また酸素添加排ガスから発生する排ガス量は0.34Nmとなり、4.67Nmの排ガスが、煙突から排気される。
このように、実施例1では、基準となる従来例と比較して、排ガス量を0.75Nm減少(即ち、排出ガス量が86%)させることができる。また、このときのNO量は146ppm(理論火炎温度は2349℃)であり、前記した従来例よりも低下させることができ、NO量を削減できることを確認できた。
【0040】
また、実施例3は、燃焼用ガス中の酸素濃度(O割合)を14.1体積%とした結果である。この場合、酸素添加排ガスを使用して燃料ガスを燃焼させることにより、生成する燃焼生成排ガスは、CO量が0.09Nm、HO量が0.25Nmとなり、更に反応しない循環排ガス量が3.07Nmとなるため、3.41Nmとなる。
従って、実施例3は、空気から発生する排ガス量が4.33Nm、また、酸素添加排ガスから発生する排ガス量は0.34Nmとなり、4.67Nmの排ガスが、煙突から排気される。
【0041】
このように、実施例3についても、基準となる従来例と比較して、排ガス量を0.75Nm減少させることができる。なお、このときのNO量は55ppm(理論火炎温度は1707℃)であり、前記した従来例よりも低下させることができ、NO量を削減できることを確認できた。
更に、燃焼用ガス中の酸素添加排ガスの割合を、実施例1と実施例3の間に設定した実施例2についても、基準となる従来例と比較して、排ガス量を0.75Nm減少させることができることを確認できた。なお、このときのNO量は99ppm(理論火炎温度は2054℃)であり、前記した従来例よりも低下させることができ、NO量を削減できることを確認できた。
【0042】
また、以上に示した結果は、他の実施例4〜実施例7についても、同様である。なお、実施例4〜7は、燃焼用ガス中の酸素濃度(O割合)を19.8体積%に設定し、循環排ガスに酸素を添加したガス中の酸素で燃焼させる燃料ガスの割合を変化させた結果である。具体的には、実施例4が燃料ガス1Nm中の0.1Nm分を、実施例5が0.39Nm分を、実施例6が0.59Nm分を、実施例7が0.78Nm分を、それぞれ循環排ガスに酸素を添加したガス中の酸素で燃焼させた。
【0043】
各実施例の排ガス量は、基準となる従来例と比較して、実施例4が0.37Nm減少(即ち、排出ガス量が93%)させることができ、実施例5が1.49Nm減少(即ち、排出ガス量が72%)させることができ、実施例6が2.24Nm減少(即ち、排出ガス量が59%)させることができ、更に実施例7が2.98Nm減少(即ち、排出ガス量が45%)させることができた。
また、各実施例の理論火炎温度は、実施例4〜実施例7のいずれについても、前記した従来例よりも低下させることができ、NOの生成量を削減できることを確認できた。
【0044】
次に、比較例について説明する。
比較例は、前記したように、燃焼用ガス中の酸素割合を、本願発明の上限を超えた23.8体積%にした結果であり、この場合、酸素添加排ガスを使用して燃料ガスを燃焼させることにより、生成する燃焼生成排ガスは、CO量が0.09Nm、HO量が0.25Nmとなり、更に反応しない循環排ガス量が0.20Nmとなるため、0.54Nmとなる。
従って、比較例は、空気から発生する排ガス量が4.33Nm、また、酸素添加排ガスから発生する排ガス量は0.34Nmとなり、4.67Nmの排ガスが、煙突から排気される。
【0045】
このように、比較例についても、基準となる従来例と比較して、排ガス量を0.75Nm減少させることができるが、酸素添加排ガス中の酸素濃度が高過ぎる(21体積%超)ため、燃焼生成排ガス中のNO量が高くなる。
なお、酸素添加排ガス中の酸素濃度が低過ぎる(11体積%未満)場合、燃料ガスの燃焼が困難となる。
以上のことから、本発明を適用することで、燃焼生成排ガス量を低減しつつ、燃焼生成排ガス中のNOの発生量を低下させることができることを確認できた。
【0046】
以上、本発明を、一実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部または全部を組合せて本発明の工業炉の燃焼方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、加熱対象物として鋼材を使用した場合について説明したが、燃料と燃焼用ガスを使用して燃料を燃焼させる工業炉を使用するものであれば、これに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施の形態に係る工業炉の燃焼方法を示す説明図である。
【図2】第1の従来例に係る工業炉の燃焼方法を示す説明図である。
【図3】第2の従来例に係る工業炉の燃焼方法を示す説明図である。
【図4】第3の従来例に係る工業炉の燃焼方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0048】
10:バーナー、11:工業炉、12:燃料ガス供給用配管、13:燃焼用ガス供給用配管、14:煙道、15:煙突、16:レキュペレータ、17:燃焼空気用ブロワ、18:循環排ガス用配管、19:NO計、20:循環排ガス抽出用ブロワ、21:酸素供給用配管、22〜25:流量センサー、26〜29:流量制御弁、30:温度制御装置、31:流量制御装置、32:空気量および酸素量決定部、33、34:流量制御装置、35:循環排ガス量決定部、36:流量制御装置
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
【出願日】 平成19年1月18日(2007.1.18)
【代理人】 【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男

【識別番号】100139262
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 和昭


【公開番号】 特開2008−175465(P2008−175465A)
【公開日】 平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願番号】 特願2007−9393(P2007−9393)