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【発明の名称】 有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法及びこれを用いた有害微量元素溶出抑制方法
【発明者】 【氏名】引野 健治

【要約】 【課題】燃焼炉を傷害する危険性の少ない有害微量元素溶出抑制方法、及び当該方法において、有害微量元素溶出抑制剤の添加量を定める際に用いる、有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法を提供すること。

【解決手段】石炭火力発電システムにおいて、有害微量元素溶出抑制剤の添加量を算出する有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法であって、有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法は、石炭に有害微量元素溶出抑制剤を所定量添加して燃焼炉で燃焼させたときに、石炭灰に残存する酸化カルシウムの含有量を計測する工程と、有害微量元素溶出抑制剤の添加量から上記酸化カルシウムの含有量を差し引いて、燃焼炉において石炭灰の溶融に寄与するカルシウム元素の量を算出する工程と、上記石炭灰の溶融に寄与するカルシウム量が燃焼炉で石炭灰を溶融させない範囲で、有害微量元素溶出抑制剤の添加量を決定する工程と、を含む、有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭を燃焼させる燃焼炉を備える石炭火力発電システムにおいて、石炭灰に有害微量元素溶出防止のために添加する有害微量元素溶出抑制剤の添加量を算出する有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法であって、
前記有害微量元素溶出抑制剤は、石灰石、生石灰、及び消石灰からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むものであり、
前記有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法は、
前記石炭に前記有害微量元素溶出抑制剤を所定量添加して前記燃焼炉で燃焼させたときに、前記石炭灰に残存する酸化カルシウムの含有量を計測する酸化カルシウム量計測工程と、
前記酸化カルシウム量計測工程で計測した酸化カルシウムの含有量をカルシウム元素量に換算し、前記有害微量元素溶出抑制剤のカルシウム元素換算での添加量からカルシウム元素量に換算した酸化カルシウムの含有量を差し引いて、前記燃焼炉において前記石炭灰の溶融に寄与するカルシウム元素の量を算出する石炭灰溶融寄与カルシウム量算出工程と、
前記石炭灰溶融寄与カルシウム量算出工程で算出した前記石炭灰の溶融に寄与するカルシウム量が前記燃焼炉で前記石炭灰を溶融させない範囲で、前記有害微量元素溶出抑制剤の添加量の上限値を決定する有害微量元素溶出抑制剤添加量決定工程と、を含む、有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法。
【請求項2】
前記有害微量元素溶出抑制剤添加量決定工程において、前記燃焼炉で燃焼させる前記石炭の炭種毎に、前記有害微量元素溶出抑制剤の添加量の上限値を決定する、請求項1に記載の有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法。
【請求項3】
前記燃焼炉が微粉炭燃焼炉であり、前記有害微量元素溶出抑制剤添加量決定工程において、前記石炭灰の融点が1200℃以上となるように前記有害微量元素溶出抑制剤の添加量の上限値を決定する、請求項1又は2に記載の有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法。
【請求項4】
前記有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法は、更に、酸化カルシウム量計測工程で計測した酸化カルシウムの含有量をもとに、石炭灰10質量部を水100質量部に溶解させた際のpHを算出するpH算出工程を含み、
前記有害微量元素溶出抑制剤添加量決定工程において、前記pH算出工程において算出したpHが12以上となる範囲で、前記有害微量元素溶出抑制剤の添加量の下限値を更に決定する、請求項1から3のいずれかに記載の有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法。
【請求項5】
前記有害微量元素溶出抑制剤を、請求項1から4のいずれかに記載の前記有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法により算出された添加量の範囲内で燃焼炉の燃焼部、又はその上流部に添加し、
燃焼炉の燃焼部の下流部及び/又は石炭灰に、生石灰及び/又は消石灰を添加する、有害微量元素溶出抑制方法。
【請求項6】
前記石炭灰100質量部に対して、生石灰及び/又は消石灰を0.3質量部以上50質量部以下の範囲で添加する、請求項5に記載の有害微量元素溶出抑制方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭火力発電システムにおいて燃料となる石炭の燃焼残渣からの有害微量元素の溶出を抑制するために用いる、有害微量元素溶出抑制剤の添加量を算出するための有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法、及びこれを用いた有害微量元素溶出抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭火力発電システムにおいて石炭を燃焼させる方法としては種々の方式があるが、なかでも、石炭を微粉砕した粒子を炉内に吹き込んで燃焼させる、いわゆる微粉炭燃焼方式が主に採用されている。そして、燃焼後の残渣となる石炭灰は、資源の有効利用の観点から、コンクリートや土壌改良材等の土木建築材料として一部が使用されているが、余剰分については埋め立て処分されている。
【0003】
ところで、燃料となる石炭は炭素以外にも、ホウ素、フッ素、セレン、ヒ素、六価クロム等の有害な元素を微量ながら含んでいる。このため、環境への配慮から、石炭灰からの有害微量元素の溶出について、その許容濃度が法律で規定されている。しかしながら、日本に輸出される石炭種は、年間100炭種以上あり、それらの全てが、上記の規制値を満足するわけではない。このため、石炭灰に含まれている有害微量元素の溶出濃度を規制値以下に低減するための技術が検討されている。
【0004】
例えば、石炭灰にキレート剤等の微量元素溶出防止剤を添加する方法や、石炭灰をセメント等により固化処理する方法が行われている(特許文献1から3参照)。
【0005】
更に、特許文献4には、石炭を燃焼炉(A)で燃焼し、その排ガスを電気集塵器で処理し、得られた集塵灰を燃焼炉(B)で、石炭を主燃料とし、カルシウム源を加えて再度燃焼した焼却灰の、平成15年環境庁告示第18号に基づく溶出試験方法によるホウ素量を1.0mg/l以下にする燃焼灰の処理方法が開示されている。この処理方法によれば、石炭灰を、カルシウム源を添加できる燃焼炉で再度燃焼することによって、焼却灰に含まれるホウ素の溶出を抑制することができるので、土壌改良剤として、環境への影響もなく利用できるとされている。
【特許文献1】特開2003−164886号公報
【特許文献2】特開2003−200132号公報
【特許文献3】特開2002−194328号公報
【特許文献4】特開2005−134098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1から特許文献3に記載の従来技術は、燃焼残渣である石炭灰に添加剤を加えることで有害微量元素の溶出濃度を低減するものである。この場合、石炭灰に添加剤を加えて混合するための設備として、サイロ、水タンク、混合装置等が大規模に必要となり、処理コストが高騰し、設備スペースも新たに必要となるという問題がある。
【0007】
また、特許文献1から特許文献3に記載の従来技術では重金属の溶出防止は検討されているものの、ホウ素やフッ素等の軽元素の溶出防止についての検討が不充分であった。
【0008】
特許文献4に記載の処理方法については、燃焼炉で得られた集塵灰を石灰石等とともに再度、燃焼させるものであって、集塵灰の処理コストが高くなる可能性が高い。更に、石灰石を添加する手段については、明らかにされておらず、追加の設備等を要する可能性がある。また、特許文献4に記載の処理方法においては、石炭灰処理時の燃焼温度は700℃から900℃と低く、高温の炉においては好適に実施することができない。加えて、この処理方法は、微粉炭燃焼炉等においても、好適に実施することができない。また、溶出防止の対象となる元素がホウ素に限られており、微量金属一般の溶出防止方法として用いることができるものではない。
【0009】
ところで、カルシウム分を多く含有する石炭を燃焼炉内で燃焼させる場合、石炭灰の融点が低下して、スラッギング、及びファウリング等の問題を引き起こすことが知られていた。このため、特許文献4のように、石炭及び石炭灰と、カルシウム源とを共存させて燃焼させる場合には、生成する石炭灰の融点が低下しすぎないよう、注意を払う必要があった。特許文献4に記載の発明においては、カルシウム源の添加に際して、そのような配慮がなされておらず、燃焼炉を傷害する危険性があった。
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、多額の初期投資が不要で、大規模な追加設備を必要としない、石炭火力発電システムにおける石炭の燃焼残渣からの有害微量元素の溶出を抑制する有害微量元素溶出抑制方法であって、燃焼炉を傷害する危険性の少ない有害微量元素溶出抑制方法、及び当該方法において、有害微量元素溶出抑制剤の添加量を定める際に用いる、有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 石炭を燃焼させる燃焼炉を備える石炭火力発電システムにおいて、石炭灰に有害微量元素溶出防止のために添加する有害微量元素溶出抑制剤の添加量を算出する有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法であって、前記有害微量元素溶出抑制剤は、石灰石、生石灰、及び消石灰からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むものであり、前記有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法は、前記石炭に前記有害微量元素溶出抑制剤を所定量添加して前記燃焼炉で燃焼させたときに、前記石炭灰に残存する酸化カルシウムの含有量を計測し、カルシウム元素量に換算する酸化カルシウム量計測工程と、前記酸化カルシウム量計測工程で計測した酸化カルシウムの含有量をカルシウム元素量に換算し、前記有害微量元素溶出抑制剤のカルシウム元素換算での添加量からカルシウム元素量に換算した酸化カルシウムの含有量を差し引いて、前記燃焼炉において前記石炭灰の溶融に寄与するカルシウム元素の量を算出する石炭灰溶融寄与カルシウム量算出工程と、前記石炭灰溶融寄与カルシウム量算出工程で算出した前記石炭灰の溶融に寄与するカルシウム量が前記燃焼炉で前記石炭灰を溶融させない範囲で、前記有害微量元素溶出抑制剤の添加量の上限値を決定する有害微量元素溶出抑制剤添加量決定工程と、を含む、有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法。
【0012】
石炭に石灰石、生石灰、及び消石灰からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む有害微量元素溶出抑制剤を添加して、燃焼炉で燃焼させた場合、石灰石、消石灰は熱分解して酸化カルシウムを生成する。これらの酸化カルシウム及び生石灰に含まれる酸化カルシウムは、一部は石炭灰中のシリカ、アルミナ等と反応して、低融点化合物を形成する。一方、低融点化合物を形成しないカルシウム成分は、酸化カルシウムとして、そのまま石炭灰中に移行する。
【0013】
ここで、石炭に有害微量元素溶出抑制剤を添加した際に、石炭灰の融点が低下するのは、低融点化合物の形成に依存するものであり、石炭灰中に残存する酸化カルシウムは石炭灰の融点の低下に寄与しない。
【0014】
(1)に記載の発明によれば、酸化カルシウム量計測工程において、石炭に所定量の有害微量元素溶出抑制剤を添加して燃焼させたときに、石炭灰中に含まれる酸化カルシウムの含有量をあらかじめ計測し、石炭灰溶融寄与カルシウム量算出工程において、有害微量元素溶出抑制剤の添加量からこの酸化カルシウム量を差し引いて、有害微量元素溶出抑制剤添加量決定工程において、有害微量元素溶出抑制剤の添加量の上限値を決定するため、石炭灰の融点の低下に寄与する要素のみを抽出して有害微量元素溶出抑制剤の添加量の上限値を決定することができる。このため、石炭に添加しうる有害微量元素溶出抑制剤の正確な値を算出することができ、燃焼炉に悪影響を与えずに、有害微量元素の溶出を最大限抑制できる有害微量元素溶出抑制剤の添加量を容易に決定することができる。
【0015】
(2) 前記有害微量元素溶出抑制剤添加量決定工程において、前記燃焼炉で燃焼させる前記石炭の炭種毎に、前記有害微量元素溶出抑制剤の添加量の上限値を決定する、(1)に記載の有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法。
【0016】
一般に石炭中に含まれるカルシウム分の含有量は、石炭の炭種毎に異なっており、このカルシウム分もまた、石炭灰の融点の低下に寄与している。(2)に記載の発明によれば、石炭の炭種毎に有害微量元素溶出抑制剤の添加量の上限値を決定するので、より正確な添加量を算出することができる。
【0017】
(3) 前記燃焼炉が微粉炭燃焼炉であり、前記有害微量元素溶出抑制剤添加量決定工程において、前記石炭灰の融点が1200℃以上となるように前記有害微量元素溶出抑制剤の添加量の上限値を決定する、(1)又は(2)に記載の有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法。
【0018】
一般に微粉炭燃焼炉においては、微粉炭燃焼部の温度は1300℃から1500℃に及ぶ。(3)に記載の発明によれば、石炭灰の融点が1200℃以上となるように有害微量元素溶出抑制剤の添加量の上限値を決定するので、微粉炭燃焼炉においても石炭灰がスラッギングやファウリングを起こす程度にまで、過剰に溶融することがなく、燃焼炉を傷害することがない。
【0019】
(4) 前記有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法は、更に、酸化カルシウム量計測工程で計測した酸化カルシウムの含有量をもとに、石炭灰10質量部を水100質量部に溶解させた際のpHを算出するpH算出工程を含み、前記有害微量元素溶出抑制剤添加量決定工程において、前記pH算出工程において算出したpHが12以上となる範囲で、前記有害微量元素溶出抑制剤の添加量の下限値を更に決定する、(1)から(3)のいずれかに記載の有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法。
【0020】
(4)に記載の発明によれば、石炭灰10質量部を水100質量部に溶解させた際のpHが12以上となる範囲内で有害微量元素溶出抑制剤の添加量の下限値を決定することができる。有害微量元素の多くは、高pH条件下では、溶出が抑制されるという性質を有するため、(4)に記載の発明によれば、有害微量元素溶出抑制剤の添加量を、有害微量元素の溶出を効果的に抑制しうる範囲で決定することができる。
【0021】
(5) 前記有害微量元素溶出抑制剤を、(1)から(4)のいずれかに記載の前記有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法により算出された添加量の範囲内で燃焼炉の燃焼部、又はその上流部に添加し、燃焼炉の燃焼部の下流部及び/又は石炭灰に、生石灰及び/又は消石灰を添加する、有害微量元素溶出抑制方法。
【0022】
(5)に記載の発明によれば、(1)から(4)のいずれかに記載の有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法により算出された添加量で、有害微量元素溶出抑制剤を添加するので、燃焼炉への悪影響を最小限にとどめつつ、生成する石炭灰からの有害微量元素の溶出を最小限に抑えることができる。
【0023】
また、(5)に記載の発明においては、石炭に有害微量元素溶出抑制剤を添加し、石炭灰に生石灰及び/又は消石灰を添加するのみで、石炭灰からの有害微量元素の溶出を十分に抑制することができるので、石炭灰からの有害微量元素の溶出防止のために要するコストを最小限に抑えることができ、更に、新たな設備投資等も最小限に抑えることができる。
【0024】
(6) 前記石炭灰100質量部に対して、生石灰及び/又は消石灰を0.3質量部以上50質量部以下の範囲で添加する、請求項5に記載の有害微量元素溶出抑制方法。
【0025】
(6)に記載の発明によれば、石炭灰100質量部に対して、石炭灰に添加する生石灰及び/又は消石灰の添加量が0.3質量部以上であるため、生石灰及び/又は消石灰を添加する効果を有効に得ることができる。また、生石灰及び/又は消石灰の添加量が50質量部以下であるため、これらの添加剤を溶出防止効果に必要とされる量を超えて添加することがなく、経済的である。
【発明の効果】
【0026】
本発明の有害微量元素溶出抑制方法によれば、石炭灰からの有害微量元素の溶出の抑制のために要するコストを最小限に抑えることができ、更に、新たな設備投資も最小限に抑えることができる。また、この有害微量元素溶出抑制方法を行う際に、本発明の有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法を用いているため、燃焼炉への悪影響を最小限に抑えつつ、石炭灰からの有害微量元素の溶出を最小限に抑えることができる。
【0027】
更に、本発明の有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法は、石炭灰の融点の低下に寄与しない酸化カルシウムの量を差し引いて算出したものであるため、石炭に添加しうる有害微量元素溶出抑制剤の添加量を正確に算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一例を示す実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、本実施形態においては、石炭火力発電システムの一例である微粉炭燃焼炉を例にとって説明する。
【0029】
<A:石炭火力発電システムにおける微粉炭燃焼施設の構成>
図1は、石炭火力発電システムにおける微粉炭燃焼施設1を示すブロック図である。ここで、図1に示すように、微粉炭燃焼施設1は、石炭を供給する石炭供給部12と、供給された石炭を微粉炭にする微粉炭生成部14と、微粉炭を燃焼する微粉炭燃焼部16と、微粉炭の燃焼により生成された石炭灰を処理する石炭灰処理部18と、を備える。また、図2は、微粉炭燃焼部16における燃焼炉161付近の拡大図である。
【0030】
<A−1:石炭供給部>
石炭供給部12は、石炭を貯蔵する石炭バンカ121と、この石炭バンカ121に貯蔵された石炭を供給する給炭機122と、を備える。石炭バンカ121は、給炭機122へ供給する石炭を貯蔵する。給炭機122は、石炭バンカ121から供給された石炭を連続して石炭微粉炭機141へ供給するものである。また、この給炭機122は、石炭の供給量を調整する装置を備えており、これにより、石炭微粉炭機141に供給される石炭量が調整される。また、これら石炭バンカ121と給炭機122との境界には石炭ゲートが設けられており、これにより、給炭機からの空気が石炭バンカへ流入するのを防いでいる。
【0031】
<A−2:微粉炭生成部>
微粉炭生成部14は、石炭を微粉炭燃焼が可能な微粉炭にする石炭微粉炭機141(ミル)と、この石炭微粉炭機141に空気を供給する空気供給機142と、を備える。
【0032】
石炭微粉炭機141は、給炭機122から給炭管を介して供給された石炭を、微細な粒度に粉砕して微粉炭を形成するとともに、この微粉炭と、空気供給機142から供給された空気とを混合する。このように、微粉炭と空気とを混合することにより、微粉炭を予熱及び乾燥させ、燃焼を容易にする。形成された微粉炭には、エアーが吹きつけられて、これにより、微粉炭燃焼部16に微粉炭を供給する。
【0033】
石炭微粉炭機141の種類としては、ローラミル、チューブミル、ボールミル、ビータミル、インペラーミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく微粉炭燃焼で用いられるミルであればよい。
【0034】
<A−3:微粉炭燃焼部>
微粉炭燃焼部16は、微粉炭生成部14で生成された微粉炭を燃焼する燃焼炉161と、この燃焼炉161を加熱する加熱機162(熱交換ユニット)と、燃焼炉161に空気を供給する空気供給機163と、を備える。
【0035】
燃焼炉161は、加熱機162(熱交換ユニット)により加熱されて、石炭微粉炭機141から微粉炭管を介して供給された微粉炭を、空気供給機163から供給された空気とともに燃焼する。微粉炭を燃焼することにより石炭灰が生成され、排ガスとともに石炭灰処理部18に排出される。
【0036】
図2を参照して、燃焼炉161について詳しく説明すると、図2において、燃焼炉161は全体として略逆U字状をなしており、図中矢印に沿って燃焼ガスが逆U字状に移動した後、再度小さくU字状に反転し、燃焼炉161の出口(図2における矢印の最後)は、図1における脱硝装置181、集塵機182に接続されている。本実施形態に係る微粉炭燃焼施設1においては、燃焼炉161の高さは30mから70mであり、排ガスの流路の全長は300mから1000mに及ぶ。
【0037】
燃焼炉161の下方には、燃焼炉161内のバーナーゾーン161a’付近で微粉炭を燃焼するためのバーナ161aが配置されている。また、燃焼炉161内のU字頂部付近には、火炉上部分割壁161b、最終過熱器161b’、第1の再熱器161f(いずれも熱交換ユニット)が配置されており、更にそこから横置き1次過熱器161c(熱交換ユニット)が続いて配置されている。更に、横置き1次過熱器161cと平行して第2の再熱器161f’が設けられており、横置き1次過熱器161cの終端付近からは、1次節炭器161d(熱交換ユニット)、2次節炭器161e(熱交換ユニット)が2段階に設けられている。ここで、節炭器(ECOとも呼ばれる)は、燃焼ガスの保有する熱を利用してボイラ給水を予熱するために設けられた伝熱面群である。なお、本実施形態においては、燃焼炉161中、1次節炭器161dと2次節炭器161eとは、2段階に分離して設置されているが、このような形態に限定されない。即ち、燃焼炉161は単一の節炭器のみを有するものであってもよい。
【0038】
<A−4:石炭灰処理部>
石炭灰処理部18は、微粉炭燃焼部16から排出された排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置181と、排ガス中の煤塵を除去する集塵機182と、この集塵機182で収集された石炭灰を一次貯蔵する石炭灰回収サイロ183と、を備える。
【0039】
脱硝装置181は、排ガス中の窒素酸化物を除去するものである。即ち、比較的高温(300℃〜400℃)の排ガス中に還元剤としてアンモニアガスを注入し、脱硝触媒との作用により排ガス中の窒素酸化物を無害な窒素と水蒸気に分解する、いわゆる乾式アンモニア接触還元法が好適に用いられる。
【0040】
集塵機182は、排ガス中の石炭灰を電極で収集する装置である。この集塵機182により収集された石炭灰は、石炭灰回収サイロ183に搬送される。また、石炭灰が除去された排ガスは、図示しない脱硫装置を介した後に煙突から排出される。
【0041】
石炭灰回収サイロ183は、集塵機182により収集された石炭灰を一次貯蔵する設備である。
【0042】
<B:本発明の有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法>
図3に示すように、本発明の有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法は、石炭火力発電システムにおいて、石炭灰に微量元素溶出防止のために添加する有害微量元素溶出抑制剤の添加量を算出する有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法であって、上記有害微量元素溶出抑制剤は、石灰石、生石灰、及び消石灰からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むものであり、上記有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法は、石炭に有害微量元素溶出抑制剤を所定量添加して燃焼炉で燃焼させたときに、石炭灰に残存する酸化カルシウムの含有量を計測する酸化カルシウム量計測工程S110と、酸化カルシウム量計測工程S110で計測した酸化カルシウムの含有量をカルシウム元素換算に換算し、有害微量元素溶出抑制剤のカルシウム元素換算での添加量からカルシウム元素量に換算した酸化カルシウムの含有量を差し引いて、燃焼炉161において石炭灰の溶融に寄与するカルシウム元素の量を算出する石炭灰溶融寄与カルシウム量算出工程S120と、石炭灰溶融寄与カルシウム量算出工程S120で算出した石炭灰の溶融に寄与するカルシウム量が燃焼炉161で石炭灰を溶融させない範囲で、有害微量元素溶出抑制剤の添加量の上限値を決定する有害微量元素溶出抑制剤添加量決定工程S130と、を含むものである。
【0043】
更に、本発明の有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法においては、必要に応じて、酸化カルシウム量計測工程S110で計測した酸化カルシウムの含有量をもとに、石炭灰10質量部を水100質量部に溶解させた際のpHを算出するpH算出工程S120’を含み、有害微量元素溶出抑制剤添加量決定工程S130において、pH算出工程S120’において算出したpHが12以上となる範囲で、前記有害微量元素溶出抑制剤の添加量の下限値を決定してもよい。
【0044】
<酸化カルシウム量計測工程S110>
酸化カルシウム量計測工程S110は、石炭に有害微量元素溶出抑制剤を所定量添加して燃焼炉161で燃焼させたときに、石炭灰に残存する酸化カルシウムの含有量を計測するものである。
【0045】
(石炭への有害微量元素溶出抑制剤の添加(S111))
石炭へ有害微量元素溶出抑制剤を添加する方法としては、後述する有害微量元素溶出抑制方法において実施しうるものであれば特に限定されない。即ち、有害微量元素溶出抑制剤は、例えば微粉炭燃焼施設1であれば、石炭供給部12と微粉炭生成部14との間の移送路や、微粉炭生成部14と微粉炭燃焼部16との間の移送路等で行われてもよい。また、有害微量元素溶出抑制剤を加熱した空気とともに、燃焼炉161に直接添加してもよいし、あらかじめ粉末にした石炭と有害微量元素溶出抑制剤とを混合することにより添加してもよい。このような添加方法は、有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法の精度を高めるという点から、実際に有害微量元素溶出抑制方法において採用する添加方法と同一の方法、あるいはそれに近似した方法で行うことが好ましい。
【0046】
(石炭の燃焼炉での燃焼(S112))
有害微量元素溶出抑制剤を添加した石炭を燃焼させる方法としては、特に限定されない。即ち、有害微量元素溶出抑制剤を石炭と混合して実際に微粉炭燃焼施設1において燃焼さてもよいし、横置き鋼鉄製炉筒ボイラ、及びドロップチューブファーネス炉等の試験炉において燃焼させてもよい。ここで、有害微量元素溶出抑制剤を添加した石炭を燃焼させる際には、燃焼温度が、実際に有害微量元素溶出抑制方法を実施する燃焼炉内の燃焼温度と同程度であることが好ましい。例えば、微粉炭燃焼施設1で有害微量元素溶出抑制方法を実施する場合には、燃焼温度は1300℃以上1500℃以下であることが好ましい。有害微量元素溶出抑制剤を添加した石炭を燃焼させる燃焼炉としては、試験に要するコスト、安全性の確保、及び実施の容易性等の観点から試験炉で行うことが好ましく、ドロップチューブファーネス炉(燃焼温度800℃以上1600℃以下)で行うことが更に好ましい。
【0047】
(石炭灰の採取(S113))
有害微量元素溶出抑制剤を添加した石炭を燃焼させた後は、燃焼により生じた石炭灰の採取を行う。酸化カルシウムの含有量を測定するために試験炉において石炭を燃焼させる場合には、石炭灰の生成条件に関わりなく、生成した石炭灰をできうる限り全て採取し、全ての石炭灰を平均化した試料を分取することが好ましい。また、微粉炭燃焼施設1等において石炭を燃焼させた場合には、バーナーゾーン161a’の直下に落下するクリンカアッシュ、節炭器付近に落下するシンダアッシュ、集塵機182で捕集されるフライアッシュを、その生成量に応じた割合で採取・混合し、平均化した後に分取することが好ましい。
【0048】
(石炭灰中の酸化カルシウム量の計測(S114))
酸化カルシウム量の計測は、セメント協会標準試験方法(JCAS)の「遊離酸化カルシウムの定量方法 A法」(エチレングリコール法)、及び「遊離酸化カルシウムの定量方法 B法」(グリセリン−アルコール法)等の公知の手法により行うことができる。酸化カルシウム量の算出は、有害微量元素溶出抑制剤の添加量を複数設定し、当該添加量と測定量との関係から、公知の方法により回帰曲線を求めることにより行うことが好ましい。特に、微粉炭燃焼施設1等において石炭の燃焼を行う場合には、石炭に多量の有害微量元素溶出抑制剤を添加することができないため、比較的少量の添加量の場合について石炭灰中の酸化カルシウムの含有量を測定し、回帰直線を求めて、多量の有害微量元素を添加したときの酸化カルシウムの含有量を推定することが有効である。
【0049】
以上の操作は、異なる炭種の石炭について行うことが好ましい。即ち、炭種によっては、石炭中に含まれるカルシウム分の含有量が異なるため、有害微量元素溶出抑制剤を添加したときのカルシウム成分の挙動も、異なることが予測される。このため、有害微量元素溶出抑制方法を実際に実施する対象となる炭種の石炭、又はこれに類似する炭種の石炭について石炭灰中の酸化カルシウムの含有量を計測し、それぞれについて有害微量元素溶出抑制剤の最適な添加量を決定することが好ましい。また、石炭を、カルシウム分やアルミナ、シリカ、及びその他の化合物の含有量、その他、産出地域についての情報等を元に複数のグループに分類し、それぞれのグループを代表する炭種の石炭についてのみ、石炭灰中の酸化カルシウム量の計測を行ってもよい。
【0050】
<石炭灰溶融寄与カルシウム量算出工程S120>
石炭灰溶融寄与カルシウム量算出工程S120は、酸化カルシウム量計測工程S110で計測した酸化カルシウムの含有量をカルシウム元素量に換算し、有害微量元素溶出抑制剤のカルシウム元素換算での添加量からカルシウム元素量に換算した酸化カルシウムの含有量を差し引いて、燃焼炉161において石炭灰の溶融に寄与するカルシウム元素の量を算出するものである。上述した通り、有害微量元素溶出抑制剤には、石灰石、生石灰、及び消石灰からなる群より選ばれる少なくとも一種が含まれるが、石炭灰溶融寄与カルシウム量算出工程S120においては、有害微量元素溶出抑制剤に含まれるこれらカルシウム元素の含有量から、上記酸化カルシウム量計測工程S110で計測し、カルシウム元素量に換算した酸化カルシウムの含有量を差し引けばよい。
【0051】
(カルシウム元素量への換算)
酸化カルシウム量のカルシウム元素量への換算にあたっては、計測された酸化カルシウム量を酸化カルシウムの分子量で除算し、カルシウムの原子量で積算すればよい。即ち、酸化カルシウム量をXとすれば、X÷56.08×40.08の計算式により計算すればよい。
【0052】
<pH算出工程S120’>
pH算出工程S120’においては、酸化カルシウム量計測工程S110で計測した酸化カルシウム量をもとに、石炭灰10質量部を水100質量部に溶解させた際のpHを算出する。具体的なpHの算出方法については、シミュレーションを用いてもよいし、複数の試験結果をもとに、回帰直線を求めて算出してもよい。水溶液中においては、ほぼ全ての酸化カルシウムが、水酸化カルシウムに変換される。このため、シミュレーションを用いる場合に、酸化カルシウムは全てが水酸化カルシウムへと変換されたものと仮定してpHの算出が行なわれる。水酸化カルシウムのpHへの寄与は、下記(1)式により計算される。
【数1】


[式(1)中、pKbは水酸化カルシウムの塩基解離定数を表し、[Ca2+]、及び[Ca(OH)]はそれぞれ、水溶液中におけるカルシウムイオン、及び水酸化カルシウムの濃度である。]
【0053】
実際のpHの計算にあたっては、石炭灰中に含まれる他の成分もpHの変動に影響するため、これらの成分も考慮に入れてpHを算出するとよい。具体的には、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、及び酸化鉄等は、pHを上昇させる傾向があり、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、及び硫黄酸化物等は、pHを低下させる傾向を有する。これらの化合物がpHに与える寄与の計算に当たっては、酸化カルシウムと同様の手法を用いることができる。
【0054】
<有害微量元素溶出抑制剤添加量決定工程S130>
有害微量元素溶出抑制剤添加量決定工程S130は、石炭灰溶融寄与カルシウム量算出工程S120で算出した石炭灰の溶融に寄与するカルシウム量が燃焼炉161で石炭灰を溶融させない範囲で、有害微量元素溶出抑制剤の添加量の上限値を決定するものである。有害微量元素溶出抑制剤の添加量の決定にあたっては、石炭灰溶融寄与カルシウム量算出工程S120で算出した石炭灰の溶融に寄与するカルシウム量のほかにも、石炭灰中の各種成分の含有量から所与のカルシウム量における石炭灰の融点を予測し、石炭灰の融点が所定の値を下回らない範囲で有害微量元素溶出抑制剤の添加量を決定すればよい。
【0055】
また、有害微量元素溶出抑制剤添加量決定工程S130においては、更に、pH算出工程S120’において算出したpHが12以上となるように、有害微量元素溶出抑制剤の添加量の下限値を決定するとよい。
【0056】
[有害微量元素溶出抑制剤の添加量の上限値の決定S131]
(石炭灰の融点の算出方法)
石炭灰の融点の算出方法としては、特に限定されず、公知のシミュレーション等を利用することができる。即ち、石炭灰の溶融点は、石炭灰の構成成分により大きく左右され、石炭灰中に酸化鉄(III)、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム等が多量に存在するときには、石炭灰の溶融点が相対的に低くなる傾向にあり、石炭灰中に、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン等が多量に存在するときには、石炭灰の融点が相対的に高くなる傾向にある。石炭灰の融点のシミュレーションにおいては、石炭灰中に含まれるこれらの成分の含有量と、石炭灰溶融寄与カルシウム量算出工程S120で算出した石炭灰の溶融に寄与するカルシウム量から、石炭灰の融点を概算すればよい。
【0057】
石炭灰の融点を算出する際に用いる上記化合物の含有量の値については、従来公知の石炭灰の成分組成データを用いることができる。また、各炭種の石炭について、定量法、原子吸光法、ICP法、及び蛍光X線分析法等の手法で、各成分の含有量の計測を行うことによっても取得することができる。
【0058】
シミュレーションにおいては、燃焼の結果生成する石炭灰の融点が1200℃以上となるように設定することが好ましく、1300℃以上となるように設定することが更に好ましい。石炭灰の融点が1200℃以上であるので、石炭に有害微量元素溶出抑制剤を添加したときに燃焼炉161内部で石炭灰が過剰に溶融し、スラッギングやファウリングが発生することを防止することができる。更に、石炭灰の融点が1300℃以上である場合には、このようなスラッギングやファウリングの発生の防止の効果をより強く得ることができる。
【0059】
[有害微量元素溶出抑制剤の添加量の下限値の決定S132]
有害微量元素溶出抑制剤の添加量は、pH算出工程S120’において算出したpHが12以上となるように、その下限値を設定する。上記pHは12.5以上であることが好ましく、13.0以上であることが更に好ましい。
【0060】
<C:本発明の有害微量元素溶出抑制方法>
本発明の有害微量元素溶出抑制方法を微粉炭燃焼施設1を用いて説明すると、有害微量元素溶出抑制方法は、燃焼炉161の燃焼部、又はその上流部に、有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法により算出された添加量の範囲内で有害微量元素溶出抑制剤を添加するとともに、燃焼炉161の燃焼部の下流部及び/又は石炭灰に、生石灰及び/又は消石灰を添加することにより、前記石炭の燃焼残渣からの有害微量元素の溶出を抑制する有害微量元素溶出抑制方法であって、有害微量元素溶出抑制剤として、石灰石、消灰石、生石灰より選択される一種以上を主成分として含む有害微量元素溶出抑制剤を用いるものである。
【0061】
本実施形態にかかる有害微量元素溶出抑制方法は、石炭を供給する石炭供給工程S210と、供給された石炭を粉砕して微粉炭を生成する微粉炭生成工程S220と、この微粉炭を燃焼して石炭灰を生成する微粉炭燃焼工程S230と、この石炭灰を集塵しこれを収容する石炭灰処理工程S240とを含み、これら各工程は、それぞれ、上述の微粉炭燃焼施設1の石炭供給部12、微粉炭生成部14、微粉炭燃焼部16、及び石炭灰処理部18、において行われる。そして、有害微量元素溶出抑制剤を燃焼炉161の燃焼部、又はその上流部に添加する有害微量元素溶出抑制剤添加工程S250は、好ましくは上記の石炭供給部12、微粉炭生成部14、及び微粉炭燃焼部16のいずれかで行われ、生石灰及び/又は消石灰を燃焼炉161の下流部及び/又は石炭灰に添加する石炭灰添加剤添加工程S260は、石炭灰処理部18等において行われる。
【0062】
<石炭供給工程S210>
まず、石炭供給工程S210では、石炭バンカ121に貯蔵された石炭が、給炭機122により、石炭微粉炭機141に供給される。なお、この石炭微粉炭機141に供給される石炭は、具体的には瀝青炭、亜瀝青炭、又は褐炭等であるが、これらの石炭に限定されるものではなく微粉炭燃焼が行える石炭であればよい。
【0063】
<微粉炭生成工程S220>
次に、微粉炭生成工程S220では、給炭機122から供給された石炭が石炭微粉炭機141により粉砕されて、これにより、微粉炭が生成される。生成された微粉炭は、燃焼炉161に供給される。このとき、この微粉炭生成工程で粉状に形成された微粉炭の平均の粒度は、微粉炭燃焼で一般的に用いられる粒径範囲であればよく、一般的には、74μmアンダー80wt%以上の粉砕度である。なお、この範囲は有害微量元素溶出抑制剤が添加された場合にも適用できる。
【0064】
<微粉炭燃焼工程S230>
次に、微粉炭燃焼工程S230では、石炭微粉炭機141で生成された微粉炭が、燃焼炉161により燃焼される。図2に示すように、バーナーゾーン161a’においては微粉炭が燃焼されるが、このときの温度は1300℃から1500℃に及び、燃焼によって生成される石炭灰は、矢印の方向に沿って上昇して排ガスとともに火炉上部分割壁161b、最終過熱器161b’、第1の再熱器161f、第2の再熱器161f’、横置き1次過熱器161c(いずれも熱交換ユニット)を通過し、1次節炭器161d(熱交換ユニット)、2次節炭器161e(熱交換ユニット)を順次通過する。この熱交換ユニット付近は、450℃から900℃前後が維持されている領域であり、この燃焼ガスの保有する熱を利用してボイラ給水を予熱するために設けられた伝熱面群を通過することによって熱交換され、温度が低下する。排ガスがバーナーゾーン161a’から節炭器付近まで到達するまでに要する時間は、おおむね5秒から10秒である。そして、その後、後段の脱硝装置181、集塵機182に送られる。この微粉炭燃焼工程で生成される石炭灰は、通常、その平均の粒度が1μmから100μmの範囲内の粉末状である。
【0065】
<石炭灰処理工程S240>
その後、微粉炭を燃焼することにより生成された石炭灰は、排ガスとともに脱硝装置181に排出され、集塵機182を経て石炭灰回収サイロ183に送られる。この集塵機182は複数段設けられていることが好ましい。
【0066】
<有害微量元素溶出抑制剤添加工程S250>
有害微量元素溶出抑制剤を添加する工程である有害微量元素溶出抑制剤添加工程S250は、図1に示すように、好ましくは上記の石炭供給部12、微粉炭生成部14、及び微粉炭燃焼部16のいずれかに対して行われる(それぞれ、図1におけるS251、S252、及びS253)。
【0067】
なお、有害微量元素溶出抑制剤の添加場所は、石炭の状態であれば特に限定されず、例えば、石炭供給部12と微粉炭生成部14との間の移送路や、微粉炭生成部14と微粉炭燃焼部16との間の移送路等で行われてもよい。
【0068】
具体的には、例えば、給炭機122から石炭微粉炭機141に輸送する際の移送中のベルトコンベア上に有害微量元素溶出抑制剤を供給して混合する方法、有害微量元素溶出抑制剤を石炭微粉炭機141の石炭ホッパー(図示せず)に直接投入する方法、石炭微粉炭機141と燃焼炉161の間の配管に剤投入口を設けて供給する方法、燃焼炉161へ燃焼用空気とともに直接投入する方法等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。このように、本発明の方法は新たな設備を必要とせず、既存の設備の軽微な改良で適用可能であるため、既存設備を有効利用することができ、コスト的にも有利である。
【0069】
本発明の有害微量元素溶出抑制剤は、石灰石(CaCO)、消灰石(Ca(OH))、生石灰(CaO)等カルシウム化合物からなる群より選択される一種以上を含むものである。また、有害微量元素溶出抑制剤は粒状又は粉末状であることが好ましく、具体的には、平均粒径が10μmから100μmであることが好ましく、10μmから80μmであることがより好ましく、10μmから60μmであることが更に好ましい。平均粒径が10μm未満である場合には、平均粒径が細かすぎ、有害微量元素溶出抑制剤として実用的ではない。平均粒径が100μmを超える場合には、平均粒径を調整することによる効果を殆ど得ることができない。また、平均粒径を80μm以下とする場合には、石炭微粉炭機141を用いて有害微量元素溶出抑制剤の粒径を調整することができ、効率的である。更に、平均粒径を60μm以下とする場合には、脱硫装置に用いる石灰石粉末をそのまま利用することができるため、経済的であり、且つ、有害微量元素溶出抑制剤の粒径を調整することによる効果を十分に得ることができる。
【0070】
有害微量元素溶出抑制剤の石炭への添加量は、上記有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法により決定された添加量とすることができるが、一般的には、石炭100質量部に対して、有害微量元素溶出抑制剤を0.1質量部以上10質量部未満とすることが好ましい。0.1質量部未満である場合には、有害微量元素溶出抑制剤を添加することによる効果を実質的に得ることができない。一方、有害微量元素溶出抑制剤は、石炭灰の融点を低下させるため、スラッギングやファウリングを防止するという観点から、10質量部未満であることが好ましく、6.0質量部以下であることが更に好ましく、1.0質量部以下であることが更に好ましい。
【0071】
<石炭灰添加剤添加工程S260>
石炭灰添加剤添加工程S260は、燃焼炉161の燃焼部の下流部及び/又は石炭灰に、生石灰及び/又は消石灰を添加することにより行われる。即ち、生石灰及び/又は消石灰は、燃焼炉161の一部を構成する、火炉上部分割壁161b、最終過熱器161b’、第1の再熱器161f、第2の再熱器161f’、横置き1次過熱器161c、等の熱交換ユニット付近に添加されてもよいし、石炭灰処理部18の一部である石炭灰回収サイロ183等に添加されてもよい(例えば、図1におけるS261)。生石灰、及び消石灰は粒状又は粉末状であることが好ましく、具体的には、平均粒径が10μmから100μmであることが好ましく、10μmから70μmであることがより好ましい。
【0072】
生石灰及び消石灰の添加量は、石炭灰100質量部に対して、生石灰及び消石灰の合計量が0.3質量部以上50質量部以下の範囲となるよう添加することが好ましい。石炭灰100質量部に対して、生石灰及び消石灰の合計量が0.3質量部以上であるので、これらの成分を添加する効果を十分に得ることができ、生石灰及び消石灰の合計量が50質量部以下であるので、これらの成分を溶出防止効果に必要とされる量を超えて添加することがなく、経済的である。上記上限は、30質量部であることが更に好ましく、10質量部であることが特に好ましい。上記のような添加量で生石灰及び消石灰を添加することにより、石炭灰中のフリーライム量を所望の範囲内に収めることができる。石炭灰中に存在させるフリーライム量としては、酸化カルシウム量で0.5質量%以上であることが好ましく、3.0質量%以上であることが更に好ましく、10.0質量%以上であることが特に好ましい。
【0073】
生石灰及び消石灰を石炭灰に添加することにより、これらに由来する酸化カルシウムが石炭灰中に存在する酸化セレン、三酸化二ヒ素、及び酸化ホウ素等と反応して、それぞれ亜セレン酸カルシウム、ヒ酸カルシウム、ホウ酸カルシウム等の難溶性又は不溶性の化合物を生成するため、石炭灰中の微量元素の溶出を抑制することができる。
【0074】
更に、酸化カルシウムは水に溶解することにより塩基性を示す。セレン、ホウ素、ヒ素等の元素は、石炭灰のpHが高いほど、石炭灰から溶出しにくいという性質を有する。このため、本発明の石炭灰添加剤を添加することにより、石炭灰が水に溶解したときのpHが高く保たれ、これらの元素が石炭灰から溶出することを有効に抑制することができる。ここで、石炭灰添加剤の添加量は、水100質量部に対して、石炭灰10質量部を添加することにより生成される水溶液のpHが12.0以上となるように添加することが好ましく、12.5以上となるように添加することがより好ましく、13.0以上となるように添加することが更に好ましい。
【0075】
なお、酸化カルシウムは、石炭灰中に多量に存在することにより、水溶液のpHの低下を防止するpH低下防止剤として作用し、酸性土壌中におかれた際にも有害微量元素の溶出を抑制する効果がある。更に、石炭灰中に添加される酸化カルシウムは、石炭灰を溶解させたときのpHに関わりなく有害微量元素の溶出を抑制する効果を持つ。このような効果は、石炭灰中の酸化カルシウムの量が多いほど効率よく得ることができ、酸化カルシウムの存在による水溶液中のpHの上昇の効果が頭打ちになった状態においても、石炭灰中により多くの酸化カルシウムを存在させることにより、よりよい溶出抑制効果を得ることができる。このため、石炭灰中の酸化カルシウムの含有量は多いほうが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施形態を示す石炭火力発電システムにおける微粉炭燃焼施設の概略構成図である。
【図2】図1における燃焼炉付近の拡大図である。
【図3】本発明の有害微量元素溶出抑制剤添加量算出方法の概略を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0077】
1 微粉炭燃焼施設
12 石炭供給部
121 石炭バンカ
122 給炭機
14 微粉炭生成部
141 石炭微粉炭機
142 空気供給機
16 微粉炭燃焼部
16b 第一の熱交換部
16d 第二の熱交換部
161 燃焼炉
161a バーナ
161a’ バーナーゾーン
161b 第一の過熱器
161c 第二の過熱器
161d 一次節炭器
161e 二次節炭器
162 加熱機
163 空気供給機
18 石炭灰処理部
181 脱硝装置
182 集塵機
183 石炭灰回収サイロ
S210 石炭供給工程
S220 微粉炭生成工程
S230 微粉炭燃焼工程
S240 石炭灰処理工程
S250 有害微量元素溶出抑制剤添加工程
S260 石炭灰添加剤添加工程
【出願人】 【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
【出願日】 平成19年1月12日(2007.1.12)
【代理人】 【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之

【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一

【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好

【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志


【公開番号】 特開2008−170110(P2008−170110A)
【公開日】 平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願番号】 特願2007−5239(P2007−5239)