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【発明の名称】 ロータリ可変ダンパ、チェックリンク機構及び開度保持装置
【発明者】 【氏名】鈴木 珠城

【要約】 【課題】回転運動を任意に抑制できるロータリ可変ダンパ、これを用いたチェックリンク機構及び、車両等のドアの開度を任意に抑制できる開度保持装置を提供。

【構成】ロータリ可変ダンパ5は、内部に粘性流体1を収容した作動空間31を有するハウジング部材33と、ハウジング部材33に対して相対回転可能な回転部材4とを有する。作動空間31内に収容された粘性流体1は、磁界に依存して粘性が変化する流体である。ハウジング部材33は、粘性流体1に磁界を付与しかつ磁界の強さを可変し得る磁界発生部6を持つ。チェックリンク機構は、ロータリ可変ダンパ5の一端に固定された回転ギヤ51と、回転ギヤ51とかみ合うラックギヤを有するアームとを持つ。開度保持装置は、アームの一端を連結する車両の車体と、ハウジング部材33を保持するドアとを持つ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に粘性流体を収容する作動空間を有するハウジング部材と、前記作動空間内に回転可能に収容されたロータを有し該ハウジング部材に相対回転可能に支持された回転部材とを持ち、前記ハウジング部材の前記作動空間内で回転する前記ロータに作用する前記粘性流体の抵抗により前記回転部材を減速させ得るロータリ可変ダンパであって、
前記粘性流体は磁界に依存して粘性が変化する流体であり、かつ前記ハウジング部材には前記作動空間内の前記粘性流体に磁界を付与しかつ磁界の強さを可変とする磁界発生部を持つことを特徴とするロータリ可変ダンパ。
【請求項2】
前記磁界発生部は、界磁コイルと、該界磁コイルの中心に挿着された軟磁性部材とを有することを特徴とする請求項1に記載のロータリ可変ダンパ。
【請求項3】
前記磁界発生部は、前記回転部材と同軸上に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロータリ可変ダンパ。
【請求項4】
前記ロータは、軟磁性材料からなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のロータリ可変ダンパ。
【請求項5】
前記磁界発生部は、軟磁性材料からなるケースの内部に装着されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のロータリ可変ダンパ。
【請求項6】
前記ケースは、前記ハウジング部材の側壁部を囲むように延設されていることを特徴とする請求項5に記載のロータリ可変ダンパ。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の前記ロータリ可変ダンパと、該ロータリ可変ダンパの前記回転部材の一端に固定された回転ギヤと、該回転ギヤとかみ合うラックギアを有するアームとを持つことを特徴とするチェックリンク機構。
【請求項8】
請求項7に記載の前記チェックリンク機構の前記アームの一端を連結する第1開閉部材と、前記チェックリンク機構の前記ハウジング部材を保持する第2開閉部材とからなることを特徴とする開度保持装置。
【請求項9】
前記第1開閉部材は車両の車体であり、前記第2開閉部材はドアであることを特徴とする請求項8に記載の開度保持装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、回転運動を抑制できるロータリ可変ダンパ、これを用いたチェックリンク機構及び、車両等のドアの開閉を抑制できる開度保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両のドア開度保持装置は、特許文献1に示されるようなチェックリンク機構が用いられている。チェックリンク機構は、図7、図8に示すように、一端を車体側ブラケット86に連結されたアーム8と、ドア84に固定されアーム8の長手方向に直線運動するケース体7とを有する。アーム8の側面には、数段の溝84が形成されている。ケース体7の内部には、弾性部材91と、弾性部材91により押されて溝84に食い込むように挟むガイド部材92とを有する。アーム8の一端801には、ドア最大開度を規定するストッパ83が装着されている。アーム8の他端部802は、ピン88により水平方向に揺動可能に車体側ブラケット86に連結されている。ケース体7は、ボルト77によりドア84に固定されている。ドアを開閉するときに、中間開度でガイド部材92がアーム8の中間の溝84に食い込み、開閉速度が一旦減速または停止する。これにより、ドアを中間開度で保持する。
【0003】
特許文献2に示すドア開度保持装置は、図9に示すように、流動学的な媒体98が充填されたピストンシリンダユニットを備えている。ピストンシリンダユニットは、シリンダ96とシリンダ96の内部を長手方向に往復し得るピストン97とを有する。ピストン97の一端971、シリンダ96の他端961は、それぞれ車体側またはドア側の一方に連結されている。ピストン97の周囲には、流動学的の媒体98が充填されている。この媒体98は、電圧により粘性が変化し、ピストン97の直線運動を減速させる。
【0004】
特許文献3に示すドアヒンジは、図10に示すように、ピストン975と、ピストン975によって区画される作動室981を内部に持つシリンダ965を有する。シリンダ965は車体側に固定され、ピストン975はドア側に固定されている。作動室981の中には、磁界の強さに基づいてその粘度を変更可能な媒体980が充填されている。シリンダ965の外側には、その周方向の所定範囲に磁石99が配置されている。媒体981がピストン975によって周方向に移動して、磁石を配置した部分に近づくと、媒体981の粘度が高くなり、ロック状態となる。
【特許文献1】特開2000−27521号公報
【特許文献2】特開平6−81536号公報
【特許文献3】特許3434770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のドア開度保持装置は、ドアを保持する開度が、アーム8に設けた溝84の位置で規定されている。また、特許文献3は、ドアが所定の角度のときに磁力により粘性が硬くなる作動媒体を用いている。このため、引用文献1,3では、任意な開度でドアを保持することができない。
【0006】
特許文献2では、ドアが任意な角度のときに、電圧により媒体が流れなくなるまで粘性を高めることにより、ドアが保持される。しかし、チェックリンク機構の既存車両にピストンシリンダユニットを後付けする場合、ドア側の固定部分を大幅に改造する必要がある。このため、ドア強度低下やドア内装物干渉といった不具合が生じることがある。
【0007】
また、特許文献3では、ヒンジ構造である。このため、チェックリンク機構の既存車両にヒンジを後付けする場合、大幅な改造が必要である。
【0008】
発明者は鋭意研究し、ドアのチェックリンク機構の直線運動をロータリ可変ダンパにより抑制することに着目した。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、回転運動を任意に抑制できるロータリ可変ダンパ、これを用いたチェックリンク機構及び、車両等のドアの開度を任意に抑制できる開度保持装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、内部に粘性流体を収容する作動空間を有するハウジング部材と、作動空間内に回転可能に収容されたロータを有しハウジング部材に相対回転可能に支持された回転部材とを持ち、ハウジング部材の作動空間内で回転するロータに作用する粘性流体の抵抗により回転部材を減速させ得るロータリ可変ダンパであって、粘性流体は磁界に依存して粘性が変化する流体であり、かつハウジング部材には作動空間内の粘性流体に磁界を付与しかつ磁界の強さを可変とする磁界発生部を持つことを特徴とする。
【0011】
このように構成することにより、回転部材をハウジング部材に対して相対的に回転させると、回転部材の中のロータが、粘性流体を充填した作動空間の中で回転する。このため、粘性流体は作動空間内を流通する。このとき、作動空間を形成しているハウジング部材の内周面とロータの外周面との隙間に、粘性流体による剪断力が発生する。ロータは粘性流体の剪断抵抗を受けて、回転部材の回転運動が減速する。
【0012】
ここで、粘性流体は磁界の強さの変化によって粘性が変化する。このため、ハウジング部材に当接して磁界発生部を設け、粘性流体に磁界を付与し変化させることにより、粘性を変化させることができる。たとえば、磁界を強くすると、粘性流体の粘性は高くなり、剪断抵抗力が強くなり、回転部材の回転運動は減速される。磁界を弱くすると、粘性流体の粘性は低くなり、剪断抵抗力は弱くなり、回転部材の回転運動の減速度合いは、磁界が強いときよりも軽減される。このように、磁界の強さにより粘性流体の粘性を変化させて剪断抵抗力を変化させることにより、ハウジング部材に対する回転部材の減速度合いを任意に調整することができる。
【0013】
磁界発生部は、界磁コイルと、界磁コイルの中心に挿着された軟磁性部材とを有することが好ましい。軟磁性部材は透磁率が高いため、透磁率が低い材料と比べて界磁コイルで発生した磁界が強くなる。
【0014】
磁界を変化させるには、界磁コイルに流す電流を調整する。
【0015】
磁界発生部は、回転部材と同軸上に配置されていることが好ましい。磁界発生部を回転部材と同軸上に配置すると、磁界発生部から発する磁界が、回転部材の周囲に収容されている粘性流体の周方向に均一に作用する。このため、粘性部材の粘性を調整しやすくなる。
【0016】
ロータは、軟磁性材料からなることが好ましい。軟磁性材料は、透磁率が大きく、磁束密度が比較的高い材料である。このため、磁束が軟磁性のロータを通過し、ハウジング内周とロータ外周との間の磁界が強くなる。従って、ハウジング部材内周とロータ外周との間に収容された粘性流体の粘性を効果的に変化させることができる。
【0017】
磁界発生部は、軟磁性材料からなるケースの内部に装着されていることが好ましい。これにより、磁束が軟磁性のケースを集中して通過するため界磁コイル中心の軟磁性部材に効率よく集めることができ、粘性流体の粘性を効果的に変化させることができる。
【0018】
軟磁性部材、軟磁性材料からなるロータ、軟磁性材料からなるケースは、透磁率の高い材質であれば特に限定せず、たとえば、鉄、ニッケル、コバルトなどの金属を用いることができる。
【0019】
ケースは、ハウジング部材の側壁部を囲むように延設されていることが好ましい。磁束は、軟磁性材料からなるケースを集中して通るため、ケースの外部に流れ出ることが少なくなる。このため、ハウジング部材内部に収容されている粘性流体に磁界が効果的に働き、粘性を効果的に変化させることができる。
【0020】
ここでハウジング部材は、軟磁性材料に比べて、透磁率の低い部材であることが好ましく、更に望ましくは非磁性部材である。このような透磁率が低いハウジング部材は、透磁率が低く、磁界発生部から発生する磁束が通過しにくい。そのため、磁束は、磁界発生部からハウジング部材を通って磁界発生部またはそのケース円筒部に向けて短絡することがなくなり、ロータを有効に通過する。このため、ハウジング部材と回転部材との間の前記隙間に存在する粘性流体に対して、効果的に磁界の作用をおよぼすことができる。
【0021】
前記ロータリ可変ダンパを用いたチェックリンク機構は、ロータリ可変ダンパと、ロータリ可変ダンパの回転部材の一端に固定された回転ギヤと、回転ギヤとかみ合うラックギアを有するアームとを持つことを特徴とする。
【0022】
このように構成することにより、アームは、ロータリ可変ダンパに対して相対的に直線運動する。アームの直線運動は、アームに設けたラックギヤと回転部材に設けた回転ギヤによって回転運動に変換されて、ロータリ可変ダンパの回転部材に伝達される。ロータリ可変ダンパは、前記のように、回転部材の減速度合いを任意に調整する。このため、回転部材に伝達された回転運動は、任意に減速される。減速された回転運動は、回転ギヤとラックギヤを通じてアームの直線運動に変換される。したがって、アームの直線運動は、ロータリ可変ダンパによって任意に減速することができる。
【0023】
前記チェックリンク機構を用いた開度保持装置は、チェックリンク機構のアームの一端を連結する第1開閉部材と、チェックリンク機構のハウジング部材を保持する第2開閉部材とからなることを特徴とする。
【0024】
チェックリンク機構のアームは、前述のように、ロータリ可変ダンパに対して相対的に直線運動する。そこで、アームの一端を第1開閉部材に連結し、ロータリ可変ダンパのハウジング部材を第2開閉部材に保持する。これにより、第1開閉部材と第2開閉部材との開度を任意に調整することができる。
【0025】
第1開閉部材は車両の車体であり、前記第2開閉部材はドアであることが好ましい。これにより、車両用ドアの開度を任意に保持できる。このため、坂道や強風時のドアの開閉の際に、ドアが開きすぎて隣車と干渉したり、ドアが戻り閉じたりすることを防止できる。したがって、ドア開閉時の利便性が向上する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、回転運動を任意に抑制できるロータリ可変ダンパ、これを用いたチェックリンク機構及び、車両等のドアの開度を任意に保持できる開度保持装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(実施形態例1)
以下、本発明の実施形態例1について図1〜図5を用いて説明する。
図1は本実施形態例の車両用ドア開度保持装置の断面図、図2は車両用ドア開度保持装置に用いられるロータリ可変ダンパの断面図、図3はロータリ可変ダンパの展開斜視図、図4はロータリ可変ダンパの径方向断面図、図5はロータリ可変ダンパの軸方向断面図である。
【0028】
本例の車両用ドア開度保持装置は、図1に示すように、ラックギヤ82を側面に設けたアーム8と、ラックギヤ82とかみ合う回転ギヤ51を一端に固定したロータリ可変ダンパ5とを有する。アーム8の一端は、ピン88及び車体側ブラケット86により、第1開閉部材としての車体のドア開口部87に連結されている。アーム8の他端には、ドア84の最大開度を規定するストッパ83が装着されている。
【0029】
図2、図3に示すように、ロータリ可変ダンパ5は、内部に粘性流体1を収容した作動空間31を有するハウジング部材33と、ハウジング部材33に対して相対回転可能な回転部材4とを有する。作動空間31内に収容された粘性流体1は、磁界の強さに依存して粘性が変化する流体である。ハウジング部材33は、粘性流体1に磁界を付与しかつ磁界の強さを可変し得る磁界発生部6を持つ。
【0030】
図1に示すように、アーム8の一端には、アーム8の径方向に取付穴80が開口している。アーム8の一端は、断面コ字状の車体側ブラケット86により挟持されている。車体側ブラケット86及びアーム8にそれぞれ設けた穴部860,80に抜け止め用のピン88を装着することにより、アーム8が車体側ブラケット86に対して水平方向に揺動可能に保持されている。車体側ブラケット86は、車体のドア開口部87に図示しないボルトにて固定されている。
【0031】
アーム8の他端は、ストッパ83が抜け止め用の係止具832にて固定されている。ストッパ83は、ドア84を最大に開けたときにドア84の内部に装着したロータリ可変ダンパ5のケース7と当接して、ドア84の最大開度を規定する。ここで、ロータリ可変ダンパ5はケース7に対して回動しないよう、ボルト、フランジなどの構造体により固定されている(図示省略)。
【0032】
アーム8は、長尺状の板状体である。アーム8の上面及び下面には、それぞれアーム8の長手方向にラックギヤ82、82が形成されている。図1,図2に示すように、各ラックギヤ82,82には、アーム8の上面及び下面を挟持するように、一対の回転ギヤ51,51が装着されている。各回転ギヤ51の外周面には、ラックギヤ82とかみ合う歯52が等間隔に形成されている。各回転ギヤ51の中心部には、ロータリ可変ダンパ5の回転軸42が一体装着されている。
【0033】
図2に示すように、一対のロータリ可変ダンパ5,5及び回転ギヤ51,51はともに、ケース7の中に装着されている。ケース7は、ドア84の内面に対して、ボルト、スポット溶接などにより固定されている。
【0034】
図2,図3に示すように、ロータリ可変ダンパ5はダンパ部3と磁界発生部6とからなる。ダンパ部3は、内部に作動空間31を形成する円筒形のハウジング部材33と、ハウジング部材33の軸方向の一端に開口する開口部330を被覆する円形の蓋体35とからなる。ハウジング部材33の軸方向の他端は、上端部332が一体的に形成されている。蓋体35の中心部には、回転部材4の回転軸42を回転自在に挿着する軸穴350を有する。軸穴350の作動空間31の側は、図示しないシール部材が設けられ、作動空間31内を密閉してその中の粘性流体1の漏れを防止している。
【0035】
ダンパ3の回転部材4は、作動空間31の中に回転自在に収容されているロータ41と、ロータ41の中心部を一体に保持する回転軸42とを有する。図3、図4に示すように、ロータ41は、非円形であり、回転軸42を中心とした円弧410と、円弧410の端部を短絡する弦411とにより構成され、回転軸42を中心に軸対象で形成される。ロータ41は、作動空間31を幅が広い幅広空間311,313と幅が狭い幅狭空間312,314とに区画している。すなわち、ロータ41の弦411とハウジング部材33の内面との間には幅広空間311,313、ロータ41の円弧410とハウジング部材33の内面との間には幅狭空間312,314が形成されている。
【0036】
回転部材4の回転軸42は、ハウジング部材33の軸方向に延びて、その一端に回転ギヤ51を一体的に装着している。
【0037】
ハウジング部材33の軸方向の上端部332には、粘性流体1に磁界を付与し磁界の強さを可変し得る磁界発生部6が設けられている。磁界発生部6は、回転部材4と同軸上に配置されている。磁界発生部6は、円筒状に巻回された界磁コイル61と、界磁コイル61の中心に挿着された軟磁性部材62と、界磁コイル61を覆う円筒状のケース63とを有する。ケース63の上端は上底部630により閉じており、下端は開口している。従って、界磁コイル61及び軟磁性部材62は、ハウジング部材33の上端部332に対して直接に当接している。軟磁性部材62は、透磁率の高い鉄心である。界磁コイル61からはリード線610が引き出されている。界磁コイル61は、リード線610を介して制御ユニット612に接続している。
【0038】
磁界発生部6のケース63は、軟磁性材料からなる。蓋体35も含めてハウジング部材33は、軟磁性材料よりも透磁率が低い部材、例えば非磁性部材からなる。ロータ41は、軟磁性材料からなる。軟磁性材料としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルトを用いることができる。軟磁性材料よりも透磁率が低い部材としては、例えば、アルミニウム、樹脂、銅、ステンレスを用いることができる。
【0039】
上記車両のドア保持装置の作動を説明する。
【0040】
図1に示すように、車両のドア84を車体87に対して開いていくと、ドア84に固定されたロータリ可変ダンパ5がチェックリンク機構のアーム8の長手方向に動く。このとき、ロータリ可変ダンパ5の回転ギヤ51が、アーム8の側面に形成されたラックギヤ82とかみ合って回転する。回転部材4は回転ギヤ51と一体的に回転する。これにより、図4に示すように、回転部材4の中のロータ41が、作動空間31の中で回転する。このとき、粘性流体1は作動空間31内を流通し、幅狭空間312,314を通るときに大きな剪断抵抗が生じる。これにより、ハウジング部材33に対してロータ41の回転運動が減速される。
【0041】
本例においては、粘性流体1は、磁界に依存して粘性が変化する性質をもつ。ハウジング部材33に設けられた磁界発生部6は、粘性流体1に磁界を付与し磁界を変化させることができる。このため、強風時や坂道でドアの開度を保持したいときには、制御ユニット612にて電流量を多く磁界発生部6の界磁コイル61に供給する。これにより、図5に示すように、軟磁性部材62から磁束60が多く発生し、粘性流体1の粘性が高くなる。すると、粘性流体1によりロータ41の回転が減速する。粘性流体の粘性が更に高くなり硬くなると、ロータ41の回転は停止する。そして、回転ギヤ51とラックギヤ82とからなるチェックリンク機構を通じて、アーム8の直線運動が停止して、ドアが所定角度で保持される。回転部材の回転力が強く、高い粘度の粘性流体を流通させることができる場合には、ドアの開閉運動は完全には停止せず、低速で開閉する。
【0042】
ドアを閉じたいときには、制御ユニット612にて磁界発生部6への電流供給を停止する。これにより、磁界発生部6からの磁束60の発生は停止し、粘性流体1の粘性が下がる。ロータ41は自在に回転でき、ドアの開閉を自在に行うことができる。
【0043】
また、ドア開閉時の障害物回避のため、車両にセンサを搭載し、公知の制御システムで、障害物衝突間際に界磁コイルに電流を流して磁界を発生させ粘性流体を硬くして自動にドアの開度を保持することもできる。
【0044】
このように、磁界発生部6への電流供給量を多くすると、磁界が強くなり、粘性流体1が硬くなり、ロータ41の回転運動が大きく減速されるか停止して、ドアの開度を保持することができる。逆に、磁界発生部6への電流供給量を少なくすると、磁界が弱くなり、粘性流体の粘性が下がり、ロータ41の回転運動の減速度合いが低くなり、ドアの開閉を自在に行うことができる。
【0045】
また、磁界発生部への電流供給量は制御ユニットにて適時変更できる。このため、ドアが任意な開度のときに磁界を発生させて粘性流体の粘性を高め、ドアの開度を保持することができる。
【0046】
粘性流体1は、磁界の強さにより粘性を変化させる。このため、磁界発生部6に流す電流の向きを変えても、磁界の強さが同じであれば、同様の粘性特性を発揮する。本例においては、図3において磁界発生部6を回転部材4と同軸上でハウジング部材33の上側に配置したが、ハウジング部材33の下側に配置してもよい。また、磁界発生部6は、ハウジング部材3の径方向の外側に周方向に沿って配置することもできる。
【0047】
(実施形態例2)
本例は、図6に示すように、磁界発生部6を囲むケース63及びロータ41を鉄などの軟磁性材料としたこと、ケース63の側壁部631を囲むようにその軸方向に延設したこと以外は、実施形態例1と同様である。
【0048】
ケース63の側壁部631の端部632は、ハウジング部材33の側壁部331を経てその蓋体35まで延設されている。ケース63の側壁部631は円筒形であり、円筒形のハウジング部材33と同軸上に配置されている。ケース63の側壁部631はハウジング部材33の側壁部331を囲むようにして、ハウジング部材33の側壁部331と当接している。
【0049】
磁界発生部6の界磁コイル61に通電すると、界磁コイル61の内側に磁界が発生し、軟磁性部材62から磁束60が発生する。本例においては、軟磁性部材のほかに、ケース63及びロータ41も高い透磁率をもつため、磁束60は、透磁率が高いロータ41、粘性流体1及びケース63を通って、軟磁性部材62に戻る。ここで、ケース63は、界磁コイル61の側面611からハウジング部材33に向けて延設され、ハウジング部材33の側壁部331を囲んでいる。このため、粘性流体1は、軟磁性材料のケース63と軟磁性材料のロータ41との間に配置されることになる。ゆえに、粘性流体1に対して磁束60が集中的に流れ、磁界を有効に作用させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のロータリ可変ダンパは、チェックリンク機構のドアだけでなく、ヒンジ構造のドアにも適用できる。たとえば、ロータリ可変ダンパの回転部材を車体側ブラケットに保持し、ハウジング部材をドア側ブラケットに固定することにより、ロータリ可変ダンパの開度規制を自在に行うことができる。また、本発明のロータリ可変ダンパおよびこれを用いたチェックリンク機構は、車両のドアだけでなく、車両のエンジンフード、トランク、ハッチバックゲート、コピー機の蓋体、様式便器の開閉蓋など、開閉の速度を規制あるいは保持し得る構造体のすべてに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施形態例1の車両用ドア開度保持装置の断面図。
【図2】実施形態例1のロータリ可変ダンパの断面図。
【図3】実施形態例1のロータリ可変ダンパの展開斜視図。
【図4】実施形態例1のロータリ可変ダンパの径方向断面図。
【図5】実施形態例1のロータリ可変ダンパの軸方向断面図。
【図6】実施形態例2のロータリ可変ダンパの軸方向断面図。
【図7】車両用ドア開度保持装置の取付け位置を示す説明図。
【図8】従来例の車両のドア開度保持装置の断面図。
【図9】他の従来例の車両のドア開度保持装置の断面図。
【図10】その他の従来例の車両のドア開度保持装置の断面図。
【符号の説明】
【0052】
図中、1は粘性流体、3はダンパ部、31は作動空間、33はハウジング部材、35は蓋体、4は回転部材、41はロータ、42は回転軸、5はロータリ可変ダンパ、51は回転ギヤ、6は磁界発生部、60は磁束、61は界磁コイル、62は軟磁性部材、63はケース、7はケース、8はアーム、82はチェックギヤを示す。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成18年6月29日(2006.6.29)
【代理人】 【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏


【公開番号】 特開2008−8418(P2008−8418A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−179926(P2006−179926)