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【発明の名称】 液圧緩衝器,該液圧緩衝器を用いた補強装置及び制振装置
【発明者】 【氏名】前田 正志

【氏名】沢井 誠二

【要約】 【課題】半永久的に高周波微振動を含む広範な振動を低減でき、車両の乗り心地や操縦安定性を温度条件や経時変化に左右されずに安定的に確保できる液圧緩衝器を提供する。

【構成】作動流体が充填されたシリンダ4と、該シリンダ4内に摺動自在に配置されたピストンと、該ピストンに一端部が接続され、他端部が上記シリンダ4の一端に設けられた端板12から外方に突出するピストンロッド6とを備えた液圧緩衝器1において、上記緩衝器構成部品の少なくとも一部が、制振合金により構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が充填されたシリンダと、該シリンダ内に摺動自在に配置されたピストンと、該ピストンに一端部が接続され、他端部が上記シリンダの一端に設けられた端板から外方に突出するピストンロッドとを備えた液圧緩衝器において、
緩衝器構成部品の少なくとも一部が、制振合金により構成されていることを特徴とする液圧緩衝器。
【請求項2】
請求項1において、上記ピストンロッドの一端部は上記ピストンを貫通し、該貫通部はワッシャとナットによりピストンに固定されており、上記ワッシャは上記制振合金により構成されていることを特徴とする液圧緩衝器。
【請求項3】
請求項1において、上記液圧緩衝器は、上記シリンダと、上記ピストンと、該ピストンに固定され上記シリンダの一端に設けられた端板から外方に突出するメインロッドと上記ピストンに固定され反端板側に延びるガイドロッドとからなるピストンロッドと、上記ガイドロッドに軸方向移動可能に装着されたガイドピストンと、該ガイドピストンを上記ピストン側に付勢するコイルばねとを備えており、
上記シリンダと上記端板と上記ピストンとで囲まれた空間が第1油室とされ、上記シリンダと上記ピストンと上記ガイドピストンとで囲まれた空間が第2油室とされ、該第1,第2油室を連通するとともに減衰力を発生させる減衰力発生部が上記ピストンに形成されていることを特徴とする液圧緩衝器。
【請求項4】
請求項3において、上記ガイドロッドは、制振合金により構成されていることを特徴とする液圧緩衝器。
【請求項5】
作動流体が充填されたシリンダと、該シリンダ内に摺動自在に配置されたピストンと、該ピストンに一端部が接続され、他端部が上記シリンダの一端に設けられた端板から外方に突出するピストンロッドとを備えた液圧緩衝器と、上記ピストンロッドにその一端が接続された延長部材とを備え、該延長部材の他端が一方の被補強部材に接続され、上記シリンダが他方の被補強部材に接続された補強装置において、
上記延長部材の少なくとも一部は、制振合金により構成されていることを特徴とする補強装置。
【請求項6】
請求項5において、上記液圧緩衝器の構成部品の少なくとも一部は、制振合金により構成されていることを特徴とする補強装置。
【請求項7】
作動流体が充填されたシリンダと、該シリンダ内に摺動自在に配置されたピストンと、該ピストンに一端部が接続され、他端部が上記シリンダの一端に設けられた端板から外方に突出するピストンロッドとを備えた液圧緩衝器と、上記ピストンロッドにその一端が接続され、その他端が懸架装置の揺動アームに接続されたリンク機構と備えた制振装置において、
上記リンク機構の少なくとも一部は、制振合金により構成されていることを特徴とする制振装置。
【請求項8】
請求項7において、上記液圧緩衝器の構成部品の少なくとも一部は、制振合金により構成されていることを特徴とする制振装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の懸架装置等に採用される液圧緩衝器、車両の車体等の補強のために採用される上記液圧緩衝器を用いた補強装置、及び懸架装置に採用される上記液圧緩衝器を用いた制振装置に関し、詳細には、高周波微振動に対する制振効果を改善できるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の懸架装置等に採用される油圧緩衝器は、路面からの振動が車体に直接伝達されるのを防止するためものである。この種の油圧緩衝器は、作動油が充填されたシリンダと、該シリンダ内に摺動自在に配置されたピストンと、該ピストンに一端部が接続され、他端部が上記シリンダの一端に設けられた端板から外方に突出するピストンロッドとを備えたものが一般的である。
【0003】
この種の油圧緩衝器は、作動油が上記ピストンに設けられた減衰バルブを流動する際に発生する減衰力により路面からの振動を吸収するものである。しかしこの作動油の流動による減衰力は、路面からの高周波微振動に対して十分に対応できないため、この種の高周波微振動を有効に低減することは困難である。
【0004】
そこで路面からの高周波微振動を低減することを目的として、シリンダ側に摩擦部材を取り付け、該摩擦部材をピストンロッドに弾接させることにより摩擦力を付与するように構成された油圧緩衝器が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−325997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし上記従来の油圧緩衝器は、単にピストンロッドに摩擦力を付与するものであるため、ピストンロッドやシリンダの弾性変形や、これらの固有振動数での振動に対して有効に減衰が行われないため、上述の高周波微振動に対する制振効果が十分でないといった問題がある。
【0006】
また本来必要とされる以上の摩擦力を付与することになるため、高周波微振動以外の通常の振動に対する乗り心地が犠牲になるといった問題があり、また温度条件や経時変化による影響を受け易いといった問題もある。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、半永久的に高周波微振動を含む広範な振動を低減でき、車両の乗り心地や操縦安定性を温度条件や経時変化に左右されずに安定的に確保できる液圧緩衝器,該緩衝器を用いた補強装置及び制振装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、作動流体が充填されたシリンダと、該シリンダ内に摺動自在に配置されたピストンと、該ピストンに一端部が接続され、他端部が上記シリンダの一端に設けられた端板から外方に突出するピストンロッドとを備えた液圧緩衝器において、
該液圧緩衝器の構成部品の少なくとも一部が、制振合金により構成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、上記ピストンロッドの一端部は上記ピストンを貫通し、該貫通部はワッシャとナットによりピストンに固定されており、上記ワッシャは上記制振合金により構成されていることを特徴としている。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1において、上記液圧緩衝器は、上記シリンダと、上記ピストンと、該ピストンに固定され上記シリンダの一端に設けられた端板から外方に突出するメインロッドと上記ピストンに固定され反端板側に延びるガイドロッドとからなるピストンロッドと、上記ガイドロッドに軸方向移動可能に装着されたガイドピストンと、該ガイドピストンを上記ピストン側に付勢するコイルばねとを備えており、
上記シリンダと上記端板と上記ピストンとで囲まれた空間が第1油室とされ、上記シリンダと上記ピストンと上記ガイドピストンとで囲まれた空間が第2油室とされ、該第1,第2油室を連通するとともに減衰力を発生させる減衰力発生部が上記ピストンに形成されていることを特徴としている。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3において、上記ガイドロッドは、制振合金により構成されていることを特徴としている。
【0012】
請求項5の発明は、作動流体が充填されたシリンダと、該シリンダ内に摺動自在に配置されたピストンと、該ピストンに一端部が接続され、他端部が上記シリンダの一端に設けられた端板から外方に突出するピストンロッドとを備えた液圧緩衝器と、上記ピストンロッドにその一端が接続された延長部材とを備え、該延長部材の他端が一方の被補強部材に接続され、上記シリンダが他方の被補強部材に接続された補強装置において、
上記延長部材の少なくとも一部は、制振合金により構成されていることを特徴としている。
【0013】
請求項6の発明は、請求項5において、上記液圧緩衝器の構成部品の少なくとも一部は、制振合金により構成されていることを特徴としている。
【0014】
請求項7の発明は、作動流体が充填されたシリンダと、該シリンダ内に摺動自在に配置されたピストンと、該ピストンに一端部が接続され、他端部が上記シリンダの一端に設けられた端板から外方に突出するピストンロッドとを備えた液圧緩衝器と、上記ピストンロッドにその一端が接続され、その他端が懸架装置の揺動アームに接続されたリンク機構と備えた制振装置において、
上記リンク機構の少なくとも一部は、制振合金により構成されていることを特徴とている。
【0015】
請求項8の発明は、請求項7において、上記液圧緩衝器の構成部品の少なくとも一部は、制振合金により構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、液圧緩衝器の構成部品の少なくとも一部を、制振合金、例えばNi−Ti合金、Mn−Cu合金によって構成している。そのため、路面からの高周波微振動が該液圧緩衝器に入力されると、上記制振合金製構成部品が、例えば双晶変形により振動エネルギーを吸収する。その結果、緩衝器自体の減衰力や摩擦力をむやみに高くすることなく高周波微振動を低減でき、乗り心地や操縦安定性を改善できる。
【0017】
上記制振合金による減衰特性は、経時変化がほとんどなく、また温度依存性も小さいので、常に一定の安定した制振効果を得ることができる。
【0018】
請求項2の発明よれば、上記ピストンロッドの一端部をピストンに固定するワッシャを上記制振合金製としている。このワッシャは、円形環状の平板といった単純な形状をなしており、加工が簡単であり、緩衝器構成部品を制振合金製とすることによるコスト増加を抑制できる。
【0019】
請求項3の発明によれば、コイルばねによりガイドピストンを介して作動油を常に所定の圧力となるように加圧したので、緩衝器の作動や作動油の温度変化による作動油の体積変化時に、第1,第2油室が負圧となって作動油の内部に気泡が生じるのを防止でき、従って緩衝器の減衰力特性を安定的に保つことができる。
【0020】
また、従来の、作動油をガス圧によりフリーピストンを介して加圧する構造の場合、このガスのシールが必要となるが、本発明の場合、コイルばねによりガイドピストンを介して作動油を加圧するものであるから、上記シールは不要であり、構成を簡素化することができる。
【0021】
請求項4の発明によれば、メインロッドとガイドロッドを備えたいわゆるダブルロッド(スルーロッド)型緩衝器の場合に、ガイドロッドのみを制振合金により構成したので、液圧緩衝器の構成部分の一部を制振合金製とする場合に、強度不足の問題あるいは大型化するといった問題が生じるのを回避できる。
【0022】
即ち、上記スルーロッド型緩衝器の場合、ガイドロッドにはあまり大きな荷重は作用しないので、比較的強度の小さい制振合金を用いてガイドロッドを構成する場合であってもガイドロッドを大径にする必要がない。仮に、大きな荷重が採用するメインロッドを制振合金製にすると、必要な強度を確保するために大径化するおそれがあり、それにともなって緩衝器全体の外径も大きくなることが考えられる。
【0023】

請求項5の発明によれば、補強装置の構造を、延長部材に液圧緩衝器を連結したものとしたので、液圧緩衝器による減衰作用により、補強装置の軸方向の変形速度や変形のオーバーシュートを抑制でき、車両の操縦安定性や乗り心地を高めることができる。また液圧緩衝器を用いる方法であるので、補強装置全体としての減衰特性の設定上の自由度が高いとともに、減衰特性の安定化を図ることができる。
【0024】
また本発明の補強装置は、液圧緩衝器の減衰力を利用する方法であって補強部材自体の剛性を高める方法ではないので、補強部材の重量増加や取付部の応力集中の問題が生じることもない。
【0025】
そして上記補強装置において、上記延長部材を制振合金で構成したので、被補強部からの高周波微振動についても有効に吸収でき、車両の操縦安定性や乗り心地をより一層改善できる。また上記延長部材は単純な棒状をなしているので、加工が簡単であり、補強装置の一部を制振合金製とすることによるコスト上昇を抑制できる。
【0026】
請求項6の発明によれば、補強装置を構成する上記緩衝器の構成部品の少なくとも一部を、制振合金により構成したので、被補強部からの高周波微振動をより一層確実に吸収でき、車両の操縦安定性や乗り心地を改善できる。
【0027】
請求項7の発明によれば、制振装置を、液圧緩衝器のピストンロッドにリンク機構の一端を接続し、該リンク機構の他端を懸架装置の揺動アームに接続した構成とし、上記リンク機構の少なくとも一部を、制振合金により構成したので、懸架装置の揺動アームを介して入力された路面からの高周波微振動についても有効に吸収でき、車両の操縦安定性や乗り心地を一層改善できる。また上記リンク機構は、単純な形状のリンク部材をピン結合してなる構造を有しているので、加工が簡単であり、制振装置の一部を制振合金製とすることによるコスト上昇を抑制できる。
【0028】
請求項8の発明によれば、制振装置を構成する液圧緩衝器の構成部品の少なくとも一部を、制振合金により構成したので、路面からの高周波微振動をより一層確実に吸収でき、車両の操縦安定性や乗り心地を改善できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0030】
図1は、本発明の第1実施形態を説明するための油圧緩衝器の断面側面図である。
【0031】
図において、1は油圧緩衝器であり、該油圧緩衝器1の上端部は車体2に取り付けられ、下端部は図示しない懸架装置の上下動アーム3に連結されている。
【0032】
上記油圧緩衝器1は、作動油Wが充填されたシリンダ4と、該シリンダ4内に摺動自在に配置されたピストンユニット5と、該ピストン5に連結されたピストンロッド6と、上記シリンダ4内に軸方向に移動可能に配置されたガイドピストン7と、該ガイドピストン7を該緩衝器1の圧縮側(ピストンユニット5側)に付勢する金属製コイルばね8と、該緩衝器1と車体2との間に介在された緩衝用金属製コイルばね9とを備えている。
【0033】
上記シリンダ4は、円筒体からなるシリンダ本体10と、該シリンダ本体10の、下端開口部に固着されて該開口を閉塞する連結部材11と、上端開口内に挿入され、サークリップで軸方向に固着されて該上端開口を閉塞するガイド部材(端板)12とを備えている。
【0034】
上記シリンダ本体10の上部に笠状のばね受けプレート10aが取り付けられており、該ばね受けプレート10aと上記車体2に固定された車体側ばね受けプレート2aとの間に上記緩衝用コイルばね9が所定の初期荷重が負荷された状態で介在されている。
【0035】
また上記ガイド部材12は、軸心部に上記ピストンロッド6が挿通するロッド孔12dを有する。なお、12aは該緩衝器1の最圧縮時に上記ピストンユニット5に当接するダンパ、12bは上記ロッド孔12dとピストンロッド6との隙間をシールするシール部材、12eはガイド部材12とシリンダ本体10と間をシールするシール部材、12cはシリンダ本体10の上端開口に嵌着されたキャップである。
【0036】
上記ピストンロッド6は、メインロッド6aと、これに連結されたガイドロッド6bとを備えた、いわゆるダブルロッド(スルーロッド)構造とされている。なお、メインロッド6aとガイドロッド6bは同一外径に設定されている。
【0037】
上記メインロッド6aの下端部には上記ピストンユニット5が固定され、上部は上記ガイド部材12のロッド孔12dを通って外方に突出している。該メインロッド6aの上端部には雄ねじ部6cが形成されており、該雄ねじ部6cが上記車体側のばね受けプレート2aにナット6d及びカラー6gにより締め付け固定されている。
【0038】
上記ピストンユニット5は、上側,下側ピストン5a,5bと、該両ピストンの5a,5bの上下に配置された円形環状板であるワッシャ5c,5cと、該両ピストンの間に介在された同じく円形環状板である中間プレート5dと、該両ピストンと上下のワッシャとの間及び中間プレートとの間に介在された弁板5eとを有する。また上側,下側ピストン5a,5bには細孔が5f形成されており、作動油が上記弁板5eを押し開いて上記該細孔5fを流動する際に減衰力が発生する。
【0039】
上記メインロッド6aの下端部は上記両ピストン5a,5bを貫通して下方に突出し、該突出部に形成された雄ねじ部6eにナット6fが螺装され、これにより上記ピストンユニット5はメインロッド6aの下端部に固定されている。
【0040】
上記ガイドロッド6bの上端部は上記メインロッド6aの雄ねじ部6eに螺装されており、該ガイドロッド6bの軸方向中間部に上記ガイドピストン7が同軸をなすようにかつ軸方向に移動可能に装着されている。なお、7aは該緩衝器1の最圧縮時に上記ピストンユニット5が当接するダンパ、7bはガイドロッド6bとガイドピストン7との間をシールするシール部材、7cは該ガイドピストン7と上記シリンダ本体10との間をシールするシール部材である。
【0041】
上記連結部材11に形成されたばね座11bと上記ガイドピストン7の下面側に装着されたばね座8aとの間に上記コイルばね8が介在されている。これによりガイドピストン7が後述する第1,第2油室a,b内に充填された作動油Wを常時所定の圧力となるよう加圧している。
【0042】
また上記連結部材11にはブラケット11aが螺着され、該ブラケット11aには上記上下動アーム3に支持される連結部11eが設けられている。なお、上記ガイドロッド6bの下端部は、該緩衝器1の圧縮に伴って、上記連結部材11,ブラケット11aに形成されたガイド孔11c,11d内に進入する。
【0043】
ここで上記シリンダ本体10と上記ガイド部材12及びピストンユニット5で囲まれた空間は第1油室aとなっており、該ピストンユニット5及び上記ガイドピストン7とシリンダ本体10で囲まれた空間は第2油室bとなっている。車両が凹凸のある路面を走行すると該油圧緩衝器1が伸縮し、該伸縮に伴って作動油が第1,第2油室a,b間でピストンユニット5の細孔5fを通って流動し、この際に減衰力が発生する。
【0044】
そして本実施形態の油圧緩衝器1では、該緩衝器構成部品の少なくとも一部が制振合金により構成されている。具体的には、上記ピストンユニット5を構成する上下のワッシャ5c,5c及び中間プレート5dが制振合金によって構成されている。
【0045】
本実施形態における制振合金とは、金属自体が振動を吸収するものであって、具体的には、いわゆる双晶変形による振動エネルギー吸収機構を有する合金、例えばNi−Ti合金、Mn−Cu合金等が採用可能である。
【0046】
なお、本発明における制振合金は、上記双晶変形により振動エネルギーを吸収する合金に限定されるものではない。例えば、固体摩擦によるエネルギー損失によって振動を吸収する片状黒鉛鋳鉄、結晶中の転位と不純物との相互作用によるエネルギー損失によって振動を吸収するマグネシウム合金、磁壁非可逆移動に伴う内部摩擦により振動エネルギーを吸収するFe−Cr−Al等が採用可能である。
【0047】
本実施形態の油圧緩衝器1では、緩衝器構成部品の少なくとも一部、具体的には、上記ピストンユニット5を構成する上下のワッシャ5c,5c及び中間プレート5dが、上述の制振合金、例えばNi−Ti合金、Mn−Cu合金によって構成されている。そのため、路面からの高周波微振動が油圧緩衝器1に入力されると、上記ワッシャ5c,中間プレート5dが双晶変形により振動エネルギーを吸収する。その結果、高周波微振動を低減でき、緩衝器自体の減衰力や摩擦力をむやみに高くする必要がなく、また周波数の変化に対しても全域で有効性を向上できる。
【0048】
また制振合金による減衰特性は経時変化がほとんどなく、また温度依存性も小さいので、常に一定の安定した制振効果を得ることができる。
【0049】
またワッシャ5cと中間プレート15dという円形環状板からなるものを制振合金製としたので、加工が簡単であり、制振合金製とすることによるコスト増加を抑制できる。また場合によっては、特別な摩擦機構や微低速バルブ等を設ける必要がなく、構造の簡略化や部品点数の低減によるコストダウンを図ることができる。
【0050】
また本実施形態の油圧緩衝器1では、作動油を、コイルばね8によりガイドピストン7を介して常に所定の圧力となるように加圧したので、緩衝器1の作動や作動油の温度変化による作動油の体積変化時に、上記第1,第2油室a,bが負圧となって作動油の内部に気泡が生じるのを防止でき、従って緩衝器1の減衰力特性を安定的に保つことができる。
【0051】
また、従来の、作動油をガス圧によりフリーピストンを介して加圧する構造の場合、このガスのシールが必要となるが、本実施形態の場合、付勢ばね8によりガイドピストン7を介して作動油を加圧するものであるから、上記シールは不要であり、構成を簡素化することができる。
【0052】
またシリンダ本体10の下端部に備えられている連結部材11,ブラケット11aにガイド孔11c,11dを形成し、該ガイド孔内にガイドロッド6bの下端部が進入可能としたので、シリンダ本体10内にガイドロッド6bの進入スペースを確保した場合に比較して緩衝器1の全長を短縮でき、配置上の自由度を拡大できる。
【0053】
ここで、上記第1実施形態では、ワッシャや中間プレートを制振合金で構成した場合を説明したが、本発明は油圧緩衝器の構成部品の少なくとも一部を制振合金で構成すればよく、例えばピストンロッド6を制振合金で構成することも可能である。
【0054】
この場合、メインロッド6aとガイドロッド6bのうちガイドロッド6bのみを制振合金製とするのが望ましい。このように構成すると、油圧緩衝器1の構成部分の一部を制振合金製とする場合に、強度不足あるいは大型化の問題生じるのを回避できる。
【0055】
即ち、上記ダブルロッド型緩衝器1の場合、ガイドロッド6bにはあまり大きな荷重は作用しないので、比較的強度の小さい制振合金を用いてガイドロッド6bを構成する場合であっても該ガイドロッド6bを大径にする必要がない。仮に、大きな荷重が作用するメインロッド6aを制振合金製にすると、必要な強度を確保するために大径化するおそれがあり、メインロッドとガイドロッドを同一外径に設定するというダブルロッド型緩衝器の構造上、ガイドロッドも大径となり、結局緩衝器全体の外径も大きくなることが考えられる。
【0056】
また上記第1実施形態では、ピストンロッド6が、メインロッド6aとガイドロッド6bとを備えたいわゆるダブルロッド(スルーロッド)構造を有する場合を説明したが、本発明は、図2に第2実施形態を示すように、ピストンロッド6がメインロッドのみからなるいわゆるシングルロッド構造を有する場合にも勿論適用可能である。
【0057】
図2において図1と同一符号は同一又は相当部分を示す。本第2実施形態では、ピストンロッド6にピストン5a′を固定するためのワッシャ5c,5cが制振合金により構成されている。
【0058】
本第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、路面からの高周波微振動が油圧緩衝器1に入力されると、上記ワッシャ5c,5cがその双晶変形により振動エネルギーを吸収し、その結果、高周波微振動を低減できる。
【0059】
なお、上記第1,第2実施形態では、ワッシャ,中間プレートを制振合金製としたが、本発明においては、緩衝器構成部品の何れであっても制振合金製とすることにより上述の効果が得られる。例えば、シリンダ本体10,ピストンロッド6,ピストン5a,5b、ガイドピストン7の何れをも制振合金製とすることができる。
【0060】
図3〜図6は、本発明の第3実施形態による油圧緩衝器1を用いた補強装置110を説明するための図である。
【0061】
図において、100は自動車であり、該自動車100の車体101の前部にはエンジンルーム102が、後部には荷室103がそれぞれ形成されている。上記エンジンルーム102の左,右壁部に形成されたサスタワー104,104部分に前輪懸架装置109を介して前輪106が支持されている。なお、上記前輪懸架装置109は、車体101のエンジンルーム102に軸支され、前端部で前輪106用ハブ106aを支持するサスアーム109bと、該サスアーム109bと上記サスタワー104との間に配置された油圧緩衝器109aとを有する。
【0062】
上記荷室103の左,右壁部に形成されたサスタワー105,105部分に後輪懸架装置(図示せず)を介して後輪107が支持されている。
【0063】
そして上記前輪用サスタワー104,104同士、及び後輪用サスタワー105,105同士は、本実施形態に係る補強装置110で連結されている。この補強装置110は、上記第1実施形態における油圧緩衝器1と、該油圧緩衝器1のピストンロッド6に連結された延長部材112と、該延長部材112に連結された取付ブラケット113とを備えている。上述のように、上記油圧緩衝器1においては、ワッシャ5c,5c及び中間プレート5dは上記制振合金により構成されている。なお、上記油圧緩衝器1の代わりに、上記第2実施形態における油圧緩衝器1′を採用することも可能である。
【0064】
上記油圧緩衝器1のシリンダ本体10に固定された連結部11eは左側のサスタワー104の上面に連結ピン11fを介して連結されている。また上記取付ブラケット113は右側のサスタワー104の上面に連結ピン11gを介して連結されている。
【0065】
車体101の主として剛性向上を目的として、例えば上記サスタワー同士を金属製補強部材により接続し、車体の変形を防止するように構成したものが従来から提案されている。しかしこの構造の場合、車体101の変形によるエネルギーが補強部材にその略そのまま蓄積され、この蓄積されたエネルギーが反発力として再び開放される現象が発生し、補強部材が振動的な変形を繰り返すために動的な変形速度が大きくなり、車両の操縦安定性や乗り心地が損なわれるといった問題があった。
【0066】
また補強部材自体の変形の絶対量を小さくするために補強部材の剛性を高めた場合、補強装置の重量増加の問題や、取付部に応力集中が発生するといった問題が生じる。
【0067】
本実施形態では、補強装置110は、丸棒からなる延長部材112に油圧緩衝器1が連結された構造となっている。従って、油圧緩衝器1による減衰作用により、補強装置110の軸方向の変形速度や変形のオーバーシュートを抑制でき、車両の操縦安定性や乗り心地を高めることができる。油圧緩衝器1を用いる方法であるので、補強装置全体としての減衰特性の設定上の自由度が高いとともに、減衰特性の安定化を図ることができる。
【0068】
また本実施形態は、油圧緩衝器1の減衰力を利用する方法であって補強部材自体の剛性を高める方法ではないので、補強部材の重量増加や取付部の応力集中の問題が生じることもない。
【0069】
さらにまた、本実施形態では、油圧緩衝器1のワッシャ5c,中間プレート5dに加えて、延長部材112についても制振合金で構成したので、車体101からの高周波微振動についても有効に吸収できる。
【0070】
なお、本第3実施形態の場合、油圧緩衝器1の構成部品については制振合金は使用せずに延長部材112のみ制振合金とすることも可能である。このようにした場合は、延長部材112が単に丸棒からなるものであり、機械加工等は最小限で済み、従って製造コストの増加を抑制できる。
【0071】
また、上記第3実施形態では、自動車の車体を補強する場合を説明たが、本発明の補強装置の適用範囲は上記自動車の車体に限定されるものではなく、要は被補強部と被補強部とを連結することにより補強効果が得られる部分に用いることができ、特に高周波微振動が発生する場合に有効である。例えば、自動二輪車の車体の補強にも適用可能である。
【0072】
図7は本発明の第4実施形態に係る自動車用懸架装置の制振装置を説明するための模式図である。
【0073】
図において、120は車輪121を上下揺動自在に支持する懸架装置である。この懸架装置120は、車輪121のホイールハブ部121aを回転自在に支持するナックル122と、該ナックル122を上下揺動自在に支持する上,下揺動アーム123,124とを備えており、該上,下揺動アーム123,124は車体125により軸支されている。
【0074】
そして上記下揺動アーム124と車体125との間に本実施形態に係る制振装置126が配設されている。この制振装置126は、上記第1〜第3実施形態と同様の構造を有する油圧緩衝器1と、該油圧緩衝器1と上記下揺動アーム124とを連結するリンク機構127とを備えている。
【0075】
上記リンク機構127は、軸力が作用する軸力リンク128と、曲げ力が作用する曲げリンク129とを有し、該曲げリンク129は支持ピン129aを介して上記車体125に軸支されている。
【0076】
そして本実施形態では、上記リンク機構127の構成部品である軸力リンク128が上述の制振合金で構成されている。なお、上記曲げリンク129を制振合金で構成しても勿論構わない。
【0077】
本第4実施形態では、リンク機構127の構成部品である軸力リンク128を制振合金で構成したので、路面から車輪121,懸架装置120を介して車体125に伝達される高周波微振動を上記軸リンク128自体の有する制振作用により減衰させることができ、操縦安定性や乗り心地を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の第1実施形態による油圧緩衝器の断面側面図である。
【図2】本発明の第2実施形態による油圧緩衝器の断面側面図である。
【図3】本発明の第3実施形態による補強装置を備えた車体の平面図である。
【図4】上記車体の前輪懸架装置部分の断面正面図である。
【図5】上記前輪懸架装置部分に配置された補強装置の斜視図である。
【図6】上記補強装置の一部断面正面図である。
【図7】本発明の第4実施形態による制振装置を備えた懸架装置部分の模式図である。
【符号の説明】
【0079】
1 油圧緩衝器(液圧緩衝器)
4 シリンダ
5 ピストンユニット
5c ワッシャ
5e,5f 弁板,細孔(減衰力発生部)
6 ピストンロッド
6a メインロッド
6b ガイドロッド
6f ナット
7 ガイドピストン
8 コイルばね
12 ガイド部材(端板)
104,104 左,右のサスタワー(一方,他方の被補強部材)
110 補強装置
112 延長部材
120 懸架装置
126 制振装置
127 リンク機構
a 第1油室
b 第2油室
W 作動油(作動流体)
【出願人】 【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
【出願日】 平成18年6月23日(2006.6.23)
【代理人】 【識別番号】100087619
【弁理士】
【氏名又は名称】下市 努


【公開番号】 特開2008−2594(P2008−2594A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−173321(P2006−173321)