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【発明の名称】 エゼクタおよびそれを用いたブレーキブースタ用負圧供給装置
【発明者】 【氏名】河盛 裕

【氏名】西谷 勤

【氏名】伊藤 嘉樹

【氏名】築地 清

【要約】 【課題】所定の大きな(高い)負圧を短い作動時間で得ることができるエゼクタおよびそれを用いたブレーキブースタ用負圧供給装置を提供すること。

【解決手段】流体入口側に設けられたノズル15と、流体出口側に設けられたディフューザ17と、ノズル15とディフューザ17との間に設けられた減圧室16とを有し、ノズル15から噴出された流体によって減圧室16に負圧を発生させるエゼクタ10において、減圧室16内の目標負圧Pを「40kPa<P≦50kPa」に設定し、ディフューザ17の入口断面積SD(入口径D)とノズル15の出口断面積Sd(出口径d)との比SD/Sdを「1.20≦SD/Sd≦4.08−0.047P」となる関係を満たすように設定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体入口側に設けられたノズルと、流体出口側に設けられたディフューザと、前記ノズルと前記ディフューザとの間に設けられた減圧室とを有し、前記ノズルから噴出された流体によって前記減圧室に負圧を発生させるエゼクタにおいて、
前記減圧室内の目標負圧Pが、40kPa<P≦50kPaに設定されており、
前記ディフューザの入口断面積SDと前記ノズルの出口断面積Sdとの比SD/Sdが、
1.20≦SD/Sd≦4.08−0.047P
となる関係を満たすことを特徴とするエゼクタ。
【請求項2】
請求項1に記載するエゼクタにおいて、
前記ノズルの出口と前記ディフューザの入口との距離Lと前記ノズルの出口径dとの比L/dが、
0.50≦L/d≦1.50
となる関係を満たすことを特徴とするエゼクタ。
【請求項3】
流体入口側に設けられたノズルと、流体出口側に設けられたディフューザと、前記ノズルと前記ディフューザとの間に設けられた減圧室とを有し、前記ノズルから噴出された流体によって前記減圧室に負圧を発生させるエゼクタにおいて、
前記減圧室内の目標負圧Pが、40kPa以下に設定されており、
前記ディフューザの入口断面積SDと前記ノズルの出口断面積Sdとの比SD/Sdが、
1.25≦SD/Sd≦2.2
となる関係を満たすことを特徴とするエゼクタ。
【請求項4】
車両に搭載されたブレーキブースタに負圧を供給するブレーキブースタ用負圧供給装置において、
請求項1から請求項3に記載するいずれか1つのエゼクタを有し、
前記減圧室と前記ブレーキブースタとが連通していることを特徴とするブレーキブースタ用負圧供給装置。
【請求項5】
請求項4に記載するブレーキブースタ用負圧供給装置において、
前記エゼクタは、吸気管内を流れる空気の一部をバイパスさせるバイパス通路に配置されており、
前記エゼクタより上流側に配置されて前記バイパス通路を開閉する開閉手段を有することを特徴とするブレーキブースタ用負圧供給装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、負圧を発生させるためのエゼクタおよびそれを用いた負圧供給装置に関する。より詳細には、短時間で目標負圧を得ることができるエゼクタおよびそれを用いたブレーキブースタ用負圧供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から負圧を発生させるためにエゼクタが利用されている。このエゼクタは、ノズルによって噴出された空気によって負圧を発生させるようになっている。そして、エゼクタの性能を向上させるための技術が色々と提案されている。そのうちの1つの技術として、例えば、ノズルの口径に対してスロートの口径を所定の割合で大きくし、かつノズルとスロートとの間の距離を所定値に限定することにより、エゼクタの性能向上を図っている(特許文献1)。
【0003】
また、エゼクタを利用した負圧供給装置としては、例えば車両のブレーキ系を構成するブレーキマスタシリンダに付設されたブレーキブースタに負圧を供給するブレーキブースタ用の負圧供給装置がある。この種の負圧供給装置では、空気入口側に設けられたノズルと、空気出口側に設けられたディフューザと、ノズルとディフューザとの間に設けられた減圧室とを有し、ノズルによって噴出された空気によって発生した負圧が減圧室から取出され、その負圧がブレーキブースタに供給されるようになっている(特許文献2)。
【特許文献1】実開昭62−112000号公報
【特許文献2】特開2005−171925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したエゼクタおよびブレーキブースタ用負圧供給装置では、所定の大きな(高い)負圧を短い作動時間(高応答性)で得ることができる諸元が不明であった。つまり、特許文献1および2には、所定の大きな負圧を短時間の作動時間で得ることができるエゼクタおよび負圧供給装置に関して何ら記載されていない。このため、上記したエゼクタおよびブレーキブースタ用負圧供給装置では、所定の大きな負圧を短時間の作動時間で得ることができないという問題があった。
特に、ブレーキブースタ用負圧供給装置に対しては、目標負圧を大きく(高く)設定することができ、かつ目標負圧に達するまでの時間をできるだけ短くすることが要請されている。
【0005】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、所定の大きな(高い)負圧を短い作動時間で発生させることができるエゼクタおよびそれを用いたブレーキブースタ用負圧供給装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するためになされた本発明に係るエゼクタは、流体入口側に設けられたノズルと、流体出口側に設けられたディフューザと、前記ノズルと前記ディフューザとの間に設けられた減圧室とを有し、前記ノズルから噴出された流体によって前記減圧室に負圧を発生させるエゼクタにおいて、前記減圧室内の目標負圧Pが、40kPa<P≦50kPaに設定されており、前記ディフューザの入口断面積SDと前記ノズルの出口断面積Sdとの比SD/Sdが、1.20≦SD/Sd≦4.08−0.047Pとなる関係を満たすことを特徴とする。
【0007】
本出願人は、目標負圧への到達時間を短くするには、ディフューザの入口断面積SDとノズルの出口断面積Sdとの比SD/Sdを最適化すればよいことを実験により見出した。そこで、このエゼクタでは、ディフューザの入口断面積SDとノズルの出口断面積Sdとの比SD/Sdを「1.20≦SD/Sd≦4.08−0.047P」に限定している。これにより、減圧室内の目標負圧Pが「40kPa<P≦50kPa」と大きな(高い)負圧である場合に、短い作動時間で目標負圧Pを得ることができる(図4〜図6参照)。
ここで、SD/Sdを上記の数値範囲にするのは、SD/Sdが1.2未満になると目標負圧に到達するまでの時間が急激に長くなり、またSD/Sdが「4.08−0.047P」を超えても目標負圧に到達するまでの時間が急激に長くなるからである。
【0008】
なお、本発明に係るエゼクタにおいては、ディフューザの入口断面積SDとノズルの出口断面積Sdとの比SD/Sdが、1.25≦SD/Sd≦4.2−0.05Pとなる関係を満たすことがより好ましい。
SD/Sdをこのような数値範囲にすることにより、目標負圧に到達するまでの時間をより短くすることができるからである。
【0009】
本発明に係るエゼクタにおいては、前記ノズルの出口と前記ディフューザの入口との距離Lと前記ノズルの出口径dとの比L/dが、0.50≦L/d≦1.50となる関係を満たすことが望ましい。
【0010】
また、本出願人は、目標負圧への到達時間を短くするには、ノズルの出口とディフューザの入口との距離Lとノズルの出口径dとの比L/dを最適化することも必要であることを実験により見出した。そこで、このエゼクタでは、ノズルの出口とディフューザの入口との距離Lとノズルの出口径dとの比L/dを「0.50≦L/d≦1.50」に限定している。これにより、減圧室内の目標負圧Pが「40kPa<P≦50kPa」と大きな(高い)負圧である場合に、短い作動時間で目標負圧Pを得ることができる(図8〜図10参照)。
ここで、L/dを上記の数値範囲にするのは、L/dが0.50未満になると目標負圧に到達するまでの時間が長くなり、またL/dが1.50を超えても目標負圧に到達するまでの時間が長くなるからである。
【0011】
なお、本発明に係るエゼクタにおいては、前記ノズルの出口と前記ディフューザの入口との距離Lと前記ノズルの出口径dとの比L/dが、0.75≦L/d≦1.20となる関係を満たすことがより好ましい。
L/dをこのような数値範囲にすることにより、目標負圧に到達するまでの時間をより短くすることができるからである。
【0012】
上記問題点を解決するためになされた本発明に係る別形態のエゼクタは、流体入口側に設けられたノズルと、流体出口側に設けられたディフューザと、前記ノズルと前記ディフューザとの間に設けられた減圧室とを有し、前記ノズルから噴出された流体によって前記減圧室に負圧を発生させるエゼクタにおいて、前記減圧室内の目標負圧Pが、40kPa以下に設定されており、前記ディフューザの入口断面積SDと前記ノズルの出口断面積Sdとの比SD/Sdが、1.25≦SD/Sd≦2.2となる関係を満たすことを特徴とする。
【0013】
このエゼクタでは、減圧室内の目標負圧Pが40kPa以下に設定されており、上記したものよりも目標負圧が小さい(低い)。このような場合には、SD/Sdの最適範囲が、上記したように目標負圧Pの値によって変化することなく一定となる。また、SD/Sdの最適範囲が広くなる。そこで、減圧室内の目標負圧Pが40kPa以下に設定されているエゼクタでは、SD/Sdの数値範囲を「1.25≦SD/Sd≦2.2」にすることにより、短い作動時間で目標負圧Pを得ることができる(図3、図4参照)。
【0014】
そして、本発明に係るブレーキブースタ用負圧供給装置においては、上記したいずれかのエゼクタを有し、前記減圧室と前記ブレーキブースタとが連通していることを特徴とする。
【0015】
ブレーキブースタ用負圧供給装置に上記したいずれかのエゼクタを用いることにより、減圧室内を目標負圧にすることができる。そして、このようなエゼクタの減圧室とブレーキブースタとを連通することにより、ブレーキブースタに大きな負圧を短時間で供給することができる。
【0016】
また、本発明に係るブレーキブースタ用負圧供給装置においては、前記エゼクタは、吸気管内を流れる空気の一部をバイパスさせるバイパス通路に配置されており、前記エゼクタより上流側に配置されて前記バイパス通路を開閉する開閉手段を有することが望ましい。
【0017】
このような開閉手段を設けることにより、ブレーキブースタへの負圧供給が必要な場合にのみエゼクタを作動させることができる。すなわち、吸気管負圧が小さくなる状況において開閉手段によりバイパス通路を開けるようにすることにより、吸気管負圧が小さくなる状況においてのみエゼクタを作動させてブレーキブースタを作動させるのに十分な負圧を供給することができる。これにより、吸気管負圧が小さくなる状況においてのみエゼクタが作動するため、通常時は開閉手段によりバイパス流路が閉鎖され、エンジンの空燃比制御における空気流量制御を正確に行うことができる。
【0018】
なお、開閉手段としては、例えば、ソレノイドバルブ、ダイアフラムバルブ、あるいは感温媒体を用いたバルブなどを使用することができる。特に、感温媒体を用いたバルブを用いることにより、ブレーキブースタ用負圧供給装置の構成を簡素化するとともに小型化を図ることができる。感温媒体としては、例えば、バイメタルや形状記憶合金などを使用することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るエゼクタおよびそれを用いた負圧供給装置によれば、上記した通り、所定の大きな(高い)負圧を短い作動時間で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明のエゼクタを具体化した最も好適な実施の形態について図面に基づいて詳細に説明する。そこで、実施の形態に係るエゼクタについて、図1および図2を参照しながら説明する。図1は、実施の形態に係るエゼクタの概略構成を示す断面図である。図2は、図1に示すA部の拡大図である。
【0021】
エゼクタ10は、図1に示すように、流体が流れ込む流入口11と、流体が流れ出す流出口12と、負圧供給対象に接続される接続口13とがハウジング14内に形成されている。このハウジング14には、流入口11、流出口12、接続口13の他、ノズル15と、減圧室16と、ディフューザ17と、連通路18と、吸引室19とが形成されている。
【0022】
ノズル15は、流入口11に連通し、テーパ状の内壁面によって通路断面積が漸次減少する絞り形状をなし、流入口11から流入した流体の速度を高めるようになっている。このようなノズル15は、減圧室16を介してディフューザ17に連通している。
ディフューザ17は、ノズル15とは逆に、テーパ状の内壁面によって通路断面積が漸次増大する末広がり形状をなしており、ノズル15から噴出される流体の流れ損失を小さくしてノズル15における流速の低下を防止するようになっている。そして、ディフューザ17の他端が流出口12に連通している。これにより、流入口11からエゼクタ10内に流れ込んだ流体は、ノズル15、減圧室16の一部(ノズル15およびディフューザ17との連通部分)、およびディフューザ17を通過して流出口12から流れ出るようになっている。
【0023】
減圧室16は、ノズル15およびディフューザ17に連通する一方で、第1チェックバルブ21を介して吸引室19に接続されている。この吸引室19は、第2チャックバルブ22を介して連通路18にも接続されている。そして、このような吸引室19が接続口13に連通している。
【0024】
このようなエゼクタ10では、流入口に流体が流れ込むと、ノズル15を通過する流体の流れによって減圧室16に負圧が発生して、その負圧が第1チェックバルブ21に作用し第1チェックバルブ21が開き、減圧室16から吸引室19および接続口13を通じて、減圧室16に発生した負圧が負圧供給対象に供給されるようになっている。
【0025】
そして、本出願人は、目標負圧への到達時間を短くするには、ディフューザの入口断面積SDとノズルの出口断面積Sdとの比SD/Sdを最適化すればよいことを実験により見出した。そこで、本実施の形態に係るエゼクタ10においては、図2に示すディフューザ17の入口断面積SD(入口径D)とノズル15の出口断面積Sd(出口径d)との比SD/Sdが、「1.20≦SD/Sd≦4.08−0.047P」となる関係を満たすように設定されている。この関係式におけるPは、減圧室19で発生させる目標負圧値であり、「40kPa<P≦50kPa」に設定されている。
【0026】
ここで、SD/Sdを変化させたときの目標負圧Pに到達するまでのエゼクタ10の作動開始からの時間(目標負圧到達時間)を計測した結果を図3〜図6に示す。なお、目標負圧到達時間は、初期状態の負圧を25kPaとして、初期状態から目標負圧に到達するまでの時間である。図3は、目標負圧が30kPaである場合のSD/Sdと目標負圧到達時間との関係を示すグラフである。図4は、目標負圧が40kPaである場合のSD/Sdと目標負圧到達時間との関係を示すグラフである。図5は、目標負圧が45kPaである場合のSD/Sdと目標負圧到達時間との関係を示すグラフである。図6は、目標負圧が50kPaである場合のSD/Sdと目標負圧到達時間との関係を示すグラフである。
【0027】
図3から、SD/Sdが1.25未満になると目標負圧に到達するまでの時間が急激に長くなることがわかる。また、SD/Sdが2.2を超え始めると目標負圧に到達するまでの時間が急激に長くなることがわかる。このことから、目標負圧PがP=40kPaの場合には、目標負圧到達時間を短くするには、SD/Sdを「1.20≦SD/Sd≦2.2」の範囲に設定すればよいことがわかる。これにより、目標負圧到達時間を4秒程度(従来技術では5秒程度)にすることができる。
【0028】
図4から、SD/Sdが1.2未満になると目標負圧に到達するまでの時間が急激に長くなることがわかる。また、SD/Sdが2.2を超え始めると目標負圧に到達するまでの時間が急激に長くなることがわかる。このことから、目標負圧PがP=40kPaの場合には、目標負圧到達時間を短くするには、SD/Sdを「1.20≦SD/Sd≦2.2」の範囲に設定すればよいことがわかる。これにより、目標負圧到達時間を4秒程度(従来技術では5秒程度)にすることができる。
【0029】
図5から、SD/Sdが1.2未満になると目標負圧に到達するまでの時間が急激に長くなることがわかる。また、SD/Sdが2.0を超え始めると目標負圧に到達するまでの時間が急激に長くなることがわかる。このことから、目標負圧PがP=45kPaの場合には、目標負圧到達時間を短くするには、SD/Sdを「1.20≦SD/Sd≦2.0」の範囲に設定すればよいことがわかる。これにより、目標負圧到達時間を7秒程度(従来技術では8秒程度)にすることができる。
【0030】
図6から、SD/Sdが1.2未満になると目標負圧に到達するまでの時間が急激に長くなることがわかる。また、SD/Sdが1.75を超え始めると目標負圧に到達するまでの時間が急激に長くなることがわかる。このことから、目標負圧PがP=50kPaの場合には、目標負圧到達時間を短くするには、SD/Sdを「1.20≦SD/Sd≦1.75」の範囲に設定すればよいことがわかる。これにより、目標負圧到達時間を12秒程度(従来技術では13秒程度)にすることができる。
【0031】
そして、減圧室16の目標負圧Pが「40kPa<P≦50kPa」に設定されていることから、図4〜図6に着目すると、40kPa<P≦50kPaの範囲においては、SD/Sdが1.2未満になると目標負圧に到達するまでの時間が急激に長くなる。従って、SD/Sdの下限値を1.2にすれば、図4〜図6から明らかなように、目標負圧に到達するまでの時間を短くすることができる。
【0032】
一方、SD/Sdの上限値について検討すると、図4〜図6に示すように、40kPa<P≦50kPaの範囲においては、SD/Sdが「2.2」、「2.0」、「1.75」と小さくなっている。そこで、これらの関係を直線的に近似することにより、目標負圧に到達するまでの時間を短くすることができるSD/Sdの上限値を決定することができ、本発明では、40kPa<P≦50kPaの範囲においては、SD/Sdの上限値を「1.20≦SD/Sd≦4.08−0.047P」と設定した。これにより、目標負圧PがP=40kPaのときにはSD/Sd=2.2となり、P=45kPaのときにはSD/Sd=1.965となり、P=50kPaのときにはSD/Sd=1.73となる。従って、SD/Sdの上限値を「1.20≦SD/Sd≦4.08−0.047P」と設定すれば、図4〜図6から明らかなように、目標負圧に到達するまでの時間を短くすることができる。
【0033】
なお、SD/Sdの範囲は、「1.25≦SD/Sd≦4.2−0.05P」とすることがより好ましい。SD/Sdをこのような数値範囲にすることにより、目標負圧到達時間をより短くすることができるからである。
【0034】
このように、SD/Sdを、「1.20≦SD/Sd≦4.08−0.047P」となるようにエゼクタを設計することにより、減圧室で発生させる目標負圧Pが「40kPa<P≦50kPa」という大きい値であっても、短時間で目標負圧を発生させることができる。
【0035】
なお、減圧室で発生させる目標負圧Pが、「P≦40kPa」に設定されている場合には、図3および図4からわかるように、SD/Sdの最適範囲が、目標負圧Pの値によって変化することなく一定となる。すなわち、目標負圧に関係なく、SD/Sdが1.25未満になると目標負圧に到達するまでの時間が長くなり、またSD/Sdが2.2を超え始めると目標負圧に到達するまでの時間が長くなることがわかる。このため、減圧室内の目標負圧Pが40kPa以下に設定されている場合には、SD/Sdの数値範囲を「1.25≦SD/Sd≦2.2」にすることにより、短い作動時間で目標負圧Pを得ることができる。
【0036】
さらに、本出願人は、目標負圧到達時間を短くするには、ノズル15の出口とディフューザ17の入口との距離Lとノズルの出口径dとの比L/dを最適化することも必要であることを実験により見出した。そこで、本実施の形態に係るエゼクタ10においては、L/dを「0.50≦L/d≦1.50」となる関係を満たすように設定されている。
【0037】
ここで、L/dを変化させたときの目標負圧Pに到達するまでのエゼクタ10の目標負圧到達時間を計測した結果を図7〜図10に示す。図7は、目標負圧が30kPaである場合のL/dと目標負圧到達時間との関係を示すグラフである。図8は、目標負圧が40kPaである場合のL/dと目標負圧到達時間との関係を示すグラフである。図9は、目標負圧が45kPaである場合のL/dと目標負圧到達時間との関係を示すグラフである。図10は、目標負圧が50kPaである場合のL/dと目標負圧到達時間との関係を示すグラフである。なお、図7〜図10に示す面積比はSD/Sdを意味する。
【0038】
図7〜図10を見ると、目標負圧Pが大きくなるにしたがって、目標負圧到達時間を短くするためのL/dの最適範囲が小さくなることがわかる。具体的には、図7から、L/dが変化しても、目標負圧到達時間はほとんど変化しないことがわかる。従って、目標負圧Pが30kPa程度であれば、L/dは目標負圧到達時間にほとんど影響を与えないと考えられる。これに対して、図8〜図10から、L/dが変化すると、目標負圧到達時間が変化することがわかる。従って、目標負圧Pが40kPaより大きい場合には、L/dを最適化することにより、目標負圧到達時間をより短くすることができると考えられる。
【0039】
そこで、図8〜図10においてL/dの最適範囲を検討する。まず、図8から、L/dが0.5未満になると目標負圧到達時間が長くなることがわかる。また、L/dが1.70を超え始めると目標負圧到達時間が長くなることがわかる。このことから、目標負圧PがP=40kPaの場合には、目標負圧到達時間を短くするには、L/dを「0.5≦L/d≦1.7」の範囲に設定すればよいことがわかる。
【0040】
また、図9から、L/dが0.5未満になると目標負圧到達時間が長くなることがわかる。また、L/dが1.6を超え始めると目標負圧到達時間が急激に長くなることがわかる。このことから、目標負圧PがP=45kPaの場合には、目標負圧到達時間を短くするには、L/dを「0.5≦L/d≦1.6」の範囲に設定すればよいことがわかる。
【0041】
また、図10から、L/dが0.5未満になると目標負圧到達時間が長くなることがわかる。また、L/dが1.5を超え始めると目標負圧到達時間が急激に長くなることがわかる。このことから、目標負圧PがP=50kPaの場合には、目標負圧到達時間を短くするには、L/dを「0.5≦L/d≦1.5」の範囲に設定すればよいことがわかる。
【0042】
以上の検討結果から、減圧室16の目標負圧Pが「40kPa<P≦50kPa」に設定されているエゼクタ10では、L/dを「0.50≦L/d≦1.50」となる関係を満たすように設定することにより、目標負圧到達時間をさらに短くすることができる。
ここで、好ましくは、L/dを「0.75≦L/d≦1.20」となる関係を満たすように設定するのがよい。L/dをこのような数値範囲にすることにより、図8〜図10より明らかなように、目標負圧到達時間を最短にすることができるからである。
【0043】
続いて、上記したエゼクタ10を用いたブレーキブースタ用負圧供給装置について、図11を参照しながら説明する。図11は、実施の形態に係るブレーキブースタ用負圧供給装置の構造を模式的に示す図である。図12は、開閉バルブの弁室の形状を示す平面図である。図13は、エンジン冷間時における開閉バルブ(開弁状態)の概略構成を示す断面図である。図14は、エンジン温間時における開閉バルブ(開弁状態)の概略構成を示す断面図である。図15は、ブレーキブースタ用負圧供給装置が一体化されたスロットルバルブ制御装置の外観図である。図16は、ブレーキブースタ用負圧供給装置が一体化されたスロットルバルブ制御装置の部分断面図である。
【0044】
ブレーキブースタ用負圧供給装置30は、図11に示すように、車両に装備されたブレーキマスタシリンダ31に付設されているブレーキブースタ32にエンジン33の吸気系を構成する吸気管34内の負圧(吸気管負圧)を供給するための装置である。このブレーキブースタ用負圧供給装置30では、吸気管34内を流れる空気の一部をバイパスさせるためのバイパス通路40が形成されている。このバイパス通路40は、エゼクタ10のノズル15、ディフューザ17、および減圧室19の一部で構成されている。そして、エゼクタ10の吸引室19が配管41を介してブレーキブースタ32と連通している。
【0045】
ここで、バイパス通路40は、スロットルボデー37に形成されて吸気管34に連通する連通路37a,37bに接続している。つまり、バイパス通路20および連通路37a,37bにより構成される通路が、本発明の「バイパス通路」に相当する。そして、バイパス通路40の入口(連通路37a)は、吸気管34の先端に装着されたエアクリーナ35と、吸気管34の途中に設けられたスロットルバルブ36との間に配置されている。一方、バイパス通路40の出口(連通路37b)は、スロットルバルブ36とエンジン33との間に配置されている。
【0046】
そして、エゼクタ10の流入口と連通路37aとの間(エゼクタ10の上流側)に、バイパス通路20を開閉してエゼクタ10の作動をオン・オフ制御するための開閉バルブ50が設けられている。この開閉バルブ50は、感温媒体によりバルブ開閉を行うものであり、本実施の形態では感温媒体してバイメタルを使用している。
【0047】
開閉バルブ50には、図12に示すように所定間隔で複数(本実施の形態では8個)の凸部52aが底面に形成された弁室52内に、図13、図14に示すように、弁体である皿形状のバイメタル51が配置されている。なお、図13および図14は、図12に示すA−A線における断面を示している。弁室52の下流側には、バイパス通路40との連通部にバイメタル51が当接または離間する弁座53が形成されている。そして、バイメタル51を挟んで弁座53とは反対側にバネ54が配置されており、このバネ54によってバイメタル51の外縁部を弁室52の底面に所定間隔で形成した凸部52aに押さえ付けることにより、バイメタル51が弁室52内に保持固定されている。
【0048】
これにより、図13に示すように、バイメタル51が弁座53から離間していると、凸部52aの間を介して弁室52の上流側と下流側とが連通するため、開閉バルブ50が開弁状態となる。一方、図14に示すように、バイメタル51が弁座53に当接すると、バイメタル51により弁室52の上流側と下流側とが遮断されるため、開閉バルブ50が閉弁状態となる。
【0049】
そして、バイメタル51は、エンジン33の水温が例えば40℃以下の冷間時に対応するスロットルボデー37の温度領域では、図13に示すように上流側に凸となって弁座53から離間し、エンジン33の水温が例えば40℃を超える温間時に対応するスロットルボデー37の温度領域では、図14に示すように下流側に凸となって(反り返って)弁座53に当接するように構成されている。これにより、開閉バルブ50は、エンジン33の冷間時にバイパス通路40を開き、エンジン33の温間時にバイパス通路40を閉じるようになっている。
【0050】
なお、バイパス通路40の開閉を、ソレノイドバルブやダイアフラムバルブによって行うようにしてもよい。しかしながら、上記した開閉バルブ50は、弁室52内に備わるバイメタル51とそれを保持するためのバネ54とで構成されているため、ソレノイドバルブやダイアフラムバルブに比べ、構成部品が少なくて非常に簡単な構成である。このため、開閉バルブ50は、小さくて軽く、しかも安価に製造することができる。
【0051】
そして、ブレーキブースタ用負圧供給装置30は、図15に示すように、エンジン33の吸気管34の一部が形成されたスロットルボデー37と、このスロットルボデー37内に回動自在に支持されたスロットルバルブ36と、このスロットルバルブ36を駆動(開閉)するための駆動機機構(モータおよびギヤなど)等とを備える周知のスロットルバルブ制御装置38に組み付けられて一体化されている。具体的には、図16に示すように、バイパス通路40が、スロットルボデー37に形成された連通路37a,37bに接続するように、ブレーキブースタ用負圧供給装置30がシール部材を介してスロットルボデー37に装着されている。なお、図16における断面部分は、図15に示すB−B線におけるものである。
【0052】
このように、ブレーキブースタ用負圧供給装置30がスロットルボデー37に一体化されていることにより、スロットルボデー37内に設けられている温水配管からの伝熱により開閉バルブ50の作動を制御することができるようになる。従って、開閉バルブ50の開閉制御をエンジン33の状態(冷間時あるいは温間時)に応じて精度良く行うことができる。
【0053】
また、ブレーキブースタ用負圧供給装置30を従来のように単体で設置する必要がないため、従来必要であった固定具が不要になるとともに、ブレーキブースタ用負圧供給装置と吸気管とを接続するための配管も不要になる。このため、ブレーキブースタ用負圧供給装置30の総重量低減およびコスト低減を図ることができる。また、ブレーキブースタ用負圧供給装置30への配管が不要になる結果、バイパス通路40の長さが短くなる分の圧力損失が低減されるのでブレーキブースタ用負圧供給装置30の性能の向上も図ることができる。
【0054】
続いて、上記した構成を有するブレーキブースタ用負圧供給装置30の動作について説明する。まず、エンジン33の冷間時においては、開閉バルブ50内に備わるバイメタル51が上流側に凸になっており弁座53から離間しているため、開閉バルブ50によりバイパス通路40が開状態にされる。このため、エアクリーナ35からスロットルバルブ36に向かって吸気管34内を流れる空気の一部がバイパス通路40を経由してスロットルバルブ36より下流側の吸気管34内に流れる。これにより、エゼクタ10が作動状態になり吸気管負圧が増大される。
【0055】
このとき、増大された吸気管負圧が第1チェックバルブ21に作用して、第1チェックバルブ21が開かれ、増大された吸気管負圧が減圧室16から、吸引室19および配管41を介してブレーキブースタ32に供給される。そして、エゼクタ10が短い作動時間で目標負圧Pを発生させるので、ブレーキブースタ32への増大負圧の供給が応答性良く行われる。
【0056】
このように、ブレーキブースタ用負圧供給装置30によれば、冷間時において、増大された吸気管負圧をブレーキブースタ32に供給することができる。従って、触媒の活性化を高めるために冷間時において点火時期を遅らせているなど吸気管負圧が小さくなっているときでも、ブレーキブースタ32を作動させるのに十分な吸気管負圧を応答性良く(迅速に)供給することができる。
【0057】
そして、温間時には、開閉バルブ50内に備わるバイメタル51が反り返って下流側に凸となって弁座53に当接する。このため、開閉バルブ50によりバイパス通路40が閉状態にされる。従って、エアクリーナ35からスロットルバルブ36に向かって吸気管34内を流れる空気がバイパス通路40に流入しなくなる。このため、エゼクタ10が作動停止状態になる。このとき、吸気管負圧が第2チェックバルブ22に作用して、第2チェックバルブ22が開かれる。これにより、吸気管負圧がそのまま吸引室19および配管41を介してブレーキブースタ32に供給される。このため、温間時におけるエンジン33への余分な空気の流入を阻止してエンジン33の空燃比制御における空気流量制御の精度低下を防止することができる。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態に係るエゼクタ10では、ディフューザ17の入口断面積SDとノズル15の出口断面積Sdとの比SD/Sdを「1.20≦SD/Sd≦4.08−0.047P」に設定しているので、減圧室17内の目標負圧Pが「40kPa<P≦50kPa」と大きな(高い)負圧であっても、短い作動時間で目標負圧Pを得ることができる。また、このエゼクタ10では、ノズル15の出口とディフューザ17の入口との距離Lとノズル15の出口径dとの比L/dを「0.50≦L/d≦1.50」に設定することにより、目標負圧到達時間をさらに短縮することができる。
【0059】
そして、このようなエゼクタ10を用いたブレーキブースタ用負圧供給装置30によれば、エンジン33の冷間時には、エゼクタ10を作動させて短時間で目標負圧に増大した吸気管負圧をブレーキブースタ12に供給することができる。一方、エンジン33の温間時には、エゼクタ10を作動停止状態とすることができるため、エンジン33への余分な空気の流入を阻止してエンジン33の空燃比制御における空気流量制御の精度低下を防止することができる。
【0060】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施の形態に係るエゼクタの概略構成を示す断面図である。
【図2】図1に示すA部の拡大図である。
【図3】目標負圧が30kPaである場合のSD/Sdと目標負圧到達時間との関係を示すグラフである。
【図4】目標負圧が40kPaである場合のSD/Sdと目標負圧到達時間との関係を示すグラフである。
【図5】目標負圧が45kPaである場合のSD/Sdと目標負圧到達時間との関係を示すグラフである。
【図6】目標負圧が50kPaである場合のSD/Sdと目標負圧到達時間との関係を示すグラフである。
【図7】目標負圧が30kPaである場合のL/dと目標負圧到達時間との関係を示すグラフである。
【図8】目標負圧が40kPaである場合のL/dと目標負圧到達時間との関係を示すグラフである。
【図9】目標負圧が45kPaである場合のL/dと目標負圧到達時間との関係を示すグラフである。
【図10】目標負圧が50kPaである場合のL/dと目標負圧到達時間との関係を示すグラフである。
【図11】実施の形態に係るブレーキブースタ用負圧供給装置の構造を模式的に示す図である。
【図12】開閉バルブの弁室の形状を示す平面図である。
【図13】エンジン冷間時における開閉バルブ(開弁状態)の概略構成を示す断面図である。
【図14】エンジン温間時における開閉バルブ(開弁状態)の概略構成を示す断面図である。
【図15】ブレーキブースタ用負圧供給装置が一体化されたスロットルバルブ制御装置の外観図である。
【図16】ブレーキブースタ用負圧供給装置が一体化されたスロットルバルブ制御装置の一部断面図である。
【符号の説明】
【0062】
10 エゼクタ
11 流入口
12 流出口
13 接続口
14 ハウジング
15 ノズル
16 減圧室
17 ディフューザ
18 連通路
19 吸引室
21 第1チェックバルブ
22 第2チャックバルブ
30 ブレーキブースタ用負圧供給装置
31 ブレーキマスタシリンダ
32 ブレーキブースタ
33 エンジン
34 吸気管
35 エアクリーナ
36 スロットルバルブ
37 スロットルボデー
37a,37b 連通路
38 スロットルバルブ制御装置
40 バイパス通路
41 配管
50 開閉バルブ
【出願人】 【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
【出願日】 平成18年11月23日(2006.11.23)
【代理人】 【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所


【公開番号】 特開2008−128150(P2008−128150A)
【公開日】 平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願番号】 特願2006−316382(P2006−316382)