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【発明の名称】 デッキプレートによる屋根構造及び床構造
【発明者】 【氏名】河合 良道
【氏名】清水 信孝
【課題】ブレースを用いることなく面内せん断剛性、耐力を確保することが可能なデッキプレート並びに屋根構造又は床構造を提供する。

【構成】水平な上フランジ11と下フランジ12がウエブ13を介して形成され、下フランジ12の幅は、上フランジ11の幅の1〜2倍で構成され、下フランジ12は、屋根構造又は床構造を支持するための梁24の上方に取り付けられ、互いに接合すべき当該デッキプレート1の上フランジ11間が互いに重ね合わされている重ね合わせ部35が形成されているとともに、当該重ね合わせ部35上面には、断熱材25がドリルねじ31により取り付けられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平な上フランジと下フランジがウエブを介して形成されているデッキプレートによる屋根構造及び床構造において、
上記下フランジの幅(2e)と上記上フランジの幅(f)の比率が、2e/f(=β)≧1を満足すること
を特徴とするデッキプレートによる屋根構造及び床構造。
【請求項2】
前記デッキプレートの板厚(t)としたとき、さらに(2e/t)/((βt/(1+β))0.5≦437を満足すること
を特徴とする請求項1記載のデッキプレートによる屋根構造及び床構造。
【請求項3】
前記デッキプレートの下フランジにリブを有し、隣接するリブ間並びにリブとウエブの間の幅が、(2e/t)/((βt/(1+β))0.5≦437であること
を特徴とする請求項2に記載の屋根構造及び床構造。
【請求項4】
請求項1から3のうちいずれか1項記載のデッキプレートを上下反転させて、上部よりコンクリートを充填することにより、屋根及び床の合成スラブとして適用されること
を特徴とするデッキプレート。
【請求項5】
請求項1から4のうちいずれか1項記載のデッキプレートが配設される屋根構造及び床構造において、
互いに接合すべき当該デッキプレートの上フランジ間が互いに重ね合わせ部を形成し、当該重ね併せ部には、仕上げ材又は断熱材が取り付けられること
を特徴とするデッキプレートによる屋根構造及び床構造。
【請求項6】
前記デッキプレートの上フランジ間の重ね合わせ部は、ドリルねじにより接合されていること
を特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のデッキプレートによる屋根構造及び床構造。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、水平な上フランジと下フランジがウエブを介して形成されているデッキプレート、及びビルや工場等の建物の屋根を形成するための屋根構造及び床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にデッキプレートは、水平な上フランジ及び下フランジと、この上フランジ及び下フランジの間に連なる傾斜部としてのウエブとから構成されている。鉄骨構造物の屋根や床に対してデッキプレートを形枠の代替として敷設し、これにコンクリートを充填することにより施工する場合がある。このようなデッキプレート合成構造は、充填されたコンクリートが硬化した後、デッキプレートとコンクリートが一対となって作用荷重を負担することになる。即ち、デッキプレート合成構造とすることにより、少なくとも面外方向の曲げ剛性、耐力を向上させることが可能となる。
【0003】
一方、このデッキプレートを合成構造とすることなく、デッキプレート単体にて屋根面を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0004】
特許文献1に記載のデッキ型耐火構造屋根は、デッキプレートの下面側に耐火被覆無しの母屋が取り付けられ、その母屋が耐火被覆の施された建物の梁に取り付けられている。これにより、施工時におけるデッキプレートのハンドリング性を向上させることができ、耐火被覆の有利性を担保しつつデッキプレートの取り付け施工性を向上させることが可能となる。
【0005】
また、特許文献2に記載の屋根材では、耐火性能や飛び火性能の高い屋根を構成する観点から、デッキプレート等の屋根下地に、無機質シートを介装させた断熱材並びに防水シートからなる屋根材を敷設した構成が開示されている。
【特許文献1】特開2005−282190号公報
【特許文献2】特開2003−268932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1、2は、デッキプレートを屋根材又は床材として利用する際に、面内方向のせん断剛性、耐力を確保する点につき、何ら意図するものではなく、またこれについて作用効果を奏するものではない。即ち、これら特許文献1、2の開示技術では、あくまで面外方向の曲げ剛性、耐力を確保することを念頭においたものである。
【0007】
一般に、この面内方向のせん断剛性、耐力を確保する観点から、例えば図6(a)、(b)に示すようにブレースを配置することによりこれを実現する方法が提案されている。図6(a)は、この屋根構造の側面図であり、図6(b)はブレース61の正面図を表している。屋根構造は、この図6(a)に示すように天井63、野縁62上に配設されてなるとともに、屋根65を支持するための梁64が設置されているが、ブレース61は、この梁64により囲まれる空間60内に対して配置されていくことになる。
【0008】
しかしながら、この空間60は、空調や換気扇等を初めとした設備が設けられるのが一般的であるところ、ブレース61により上下2空間に分断されているこの空間60では、ブレース61の配設位置より下の空間のみしかいわゆる設備スペース66として活用することができず、空間全体をより有効に活用することができないという問題点があった。また、ブレース61を設置することにより施工労力やコストが増大してしまうという問題点もあった。
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、ブレースを用いることなく面内せん断剛性、耐力を確保することが可能なデッキプレート並びに屋根構造及び床構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上述した課題を解決するため、水平な上フランジと下フランジがウエブを介して形成されているデッキプレートにおいて、上記下フランジの幅(2e)と上記上フランジの幅(f)の比率が2e/f(=β)≧1、かつ上記デッキプレートの板厚(t)としたとき、(2e/t)/((βt/(1+β))0.5≦437を満足することにより、局部座屈を防止しつつ、面内せん断剛性を向上させることができることを見出し、下記の構成からなるデッキプレート並びに屋根構造を発明した。
【0011】
即ち、請求項1に係る発明は、水平な上フランジと下フランジがウエブを介して形成されているデッキプレートによる屋根構造及び床構造において、上記下フランジの幅(2e)と上記上フランジの幅(f)の比率が、2e/f(=β)≧1を満足することを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記デッキプレートの板厚(t)としたとき、さらに(2e/t)/((βt/(1+β))0.5≦437を満足することを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の発明において、前記デッキプレートの下フランジにリブを有し、隣接するリブ間並びにリブとウエブの間の幅が、(2e/t)/((βt/(1+β))0.5≦437であることを特徴とする。
【0014】
請求項4に係るデッキプレートは、請求項1から3のうちいずれか1項記載のデッキプレートを上下反転させて、上部よりコンクリートを充填することにより、屋根及び床の合成スラブとして適用されることを特徴とする。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項1から4のうちいずれか1項記載のデッキプレートが配設される屋根構造及び床構造において、互いに接合すべき当該デッキプレートの上フランジ間が互いに重ね合わせ部を形成し、当該重ね併せ部には、仕上げ材又は断熱材が取り付けられることを特徴とする。
【0016】
請求項6に係る発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の発明において、前記デッキプレートの上フランジ間の重ね合わせ部は、ドリルねじにより接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、水平な上フランジと下フランジがウエブを介して形成されているデッキプレートにおいて、下フランジの幅を、上フランジの幅の1倍以上で、かつデッキプレートの板厚をtとしたとき、(2e/t)/((βt/(1+β))0.5≦437で構成し、これを屋根構造及び床構造に配設する。これにより本発明では、デッキプレートにより面内せん断剛性、耐力をともに向上させることができる。このため、面内せん断剛性、耐力を保持すべく、従来のように屋根構造や床構造に対してブレースを配置する必要性もなくなる。その結果、従来においてブレースを配置していた空間をいわゆる設備スペースとして開放することが可能となり、空間全体をより有効に活用することが可能となる。また、ブレースを設置する必要性もなくなることから、施工労力やコストを低減させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態として、水平な上下フランジがウエブを介して接合されているデッキプレートについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
本発明を適用したデッキプレート1は、鋼ストリップを折り曲げ加工することにより作製されるものであり、例えば図1(a)に示すように水平な上フランジ11及び下フランジ12と、この上フランジ11及び下フランジ12の間に形成されているウエブ13とを備えている。即ち、この上フランジ11並びに下フランジ12は、ウエブ13を介して連続となるように形成されている。
【0020】
因みに、この上フランジ11、下フランジ12には、曲げ剛性を向上させる観点等から図示しない溝部が形成されていてもよい。図1(b)は、下フランジ12において、リブ15を形成した例を示している。本発明では、この隣接するリブ15並びに、リブ15とウエブ13間の幅が、板厚tの(2e/t)/((βt/(1+β))0.5≦437であることを必須の要件としている。
【0021】
また、このデッキプレート1では、デッキ底辺としての下フランジ12の幅を上フランジ11の幅に対して拡幅させて構成している。ここで、上フランジ11の幅をfとし、下フランジ12の幅を2eとしたとき、下フランジ12の幅(2e)の上フランジ11の幅(f)に対する比率(2e/f)は、1倍以上である。
【0022】
この上フランジ11の幅fと下フランジ12の幅2eを上述の如く限定した理由について説明をする。
【0023】
図2は、デッキプレート1における上フランジ11の幅に対する下フランジ12の幅の比率(2e/f)に対する面内のせん断剛性耐力の向上比率を計算により求めた結果を示している。この図2に示すように、2e/fが1以上であると、せん断剛性耐力は向上する。
【0024】
即ち、本発明においては、この2e/fの下限を1としている。その理由として、2e/fが1を下回る場合には、図2の傾向に示されるように、せん断剛性耐力の向上が期待できないためである。また、好ましくは、1≦(2e/f)≦2である。
【0025】
また本発明において、図7に示すように、上記下フランジの幅(2e)と板厚(t)との比率は、β=2e/fとしたとき、(2e/t)/((βt/(1+β))0.5≦437としている。その理由として、上フランジ11の幅に対して下フランジ12の幅が上式により幅広であると、当該下フランジ12に対して負荷された荷重により局部座屈が発生してしまい、面内方向のせん断剛性、耐力を確保できなくなるためである。
【0026】
即ち、図7で(2e/t)/((βt/(1+β))0.5≦437になると必要となるせん断力が6以上(単位長さ当りのせん断力)となり、本発明の目的を達することができるからである。
【0027】
また、好ましくは、100≦(2e/t)/((βt/(1+β))0.5≦437である。
【0028】
このようにせん断剛性耐力を向上させることができるデッキプレート1は、例えば図3に示すように建築構造物の屋根構造2又は床構造に対して適用される。
【0029】
屋根構造2又は床構造は、天井23、野縁22上に配設されてなるとともに、屋根26又は床面を支持するための梁24が設置されている。梁24の上方には、デッキプレート1が取り付けられ、このデッキプレート1の上フランジ11には断熱材25又は仕上げ材が取り付けられ、当該断熱材25のさらにその上には屋根26又は床が配設されることになる。なお、この断熱材25又は仕上げ材としては、防水機能を持たせるようにしてもよいし、仕上げ材としての役割を担うようにしてもよい。
【0030】
即ち、このデッキプレート1は、例えば図4に示すように、梁24の長手方向に対して、上フランジ11と下フランジ12とにより形成される山部、谷部の方向が垂直となるように配置される。隣接するデッキプレート1を互いに接合する場合には、図4に示すように隣接する上フランジ11間を互いに重ね合わせることにより、重ね合わせ部35を形成する。そして、この重ね合わせ部35の上面には、断熱材25又は仕上げ材をドリルねじ31により取り付けられている。このドリルねじ31の打ち込み間隔は、ねじの径、上フランジ11の板厚等に基づいて最適となるように設定され、例えば100〜150mmピッチとされていてもよい。因みに、この重ね合わせ部35の幅は、ドリルネジ31の径の5倍以上に亘り形成されていることが望ましい。
【0031】
このように、デッキプレート1の接合をドリルネジ31を利用して行うことにより、当該デッキプレート1に負荷されるせん断応力を隣接する他のデッキプレート1へ効率よく伝達することが可能となる。
【0032】
また、このデッキプレート1により面内のせん断剛性耐力をともに向上させることができる。このため、面内のせん断剛性耐力を保持すべく、従来のように、梁24により囲まれる空間29に対してブレースを配置する必要性もなくなる。その結果、図3に示すように、梁24により囲まれる空間29をいわゆる設備スペースとして開放することが可能となり、空間全体をより有効に活用することが可能となる。また、ブレース61を設置する必要性もなくなることから、施工労力やコストを低減させることが可能となる。
【0033】
なお、図5に示すように、このデッキプレート1を上下反転させてコンクリート71を充填することにより、これを床の合成スラブとして用いるようにしてもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を適用したデッキプレートの斜視図である。
【図2】2e/fに対する面内剛性耐力の向上比率を計算により求めた結果を示す図である。
【図3】本発明に係るデッキプレートを建築構造物の屋根構造又は床構造に対して適用する場合について説明するための図である。
【図4】本発明を適用したデッキプレートの配置方法について説明するための図である。
【図5】本発明を適用したデッキプレートを合成スラブとして適用する場合について説明するための図である。
【図6】従来技術の問題点について説明するための図である。
【図7】本発明の作用効果について説明するための図である。
【符号の説明】
【0035】
1 デッキプレート
2 屋根構造又は床構造
11 上フランジ
12 下フランジ
13 ウエブ
22 野縁
23 天井
24 梁
25 断熱材又は仕上げ材
26 屋根又は床
31 ドリルねじ
35 重ね合わせ部

特許の図
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【出願日】 平成18年6月26日(2006.6.26)
【代理人】 【識別番号】100107250
【弁理士】
【氏名又は名称】林 信之

【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
【公開番号】 特開2008−2240(P2008−2240A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−175693(P2006−175693)