トップ :: E 固定構造物 :: E04 建築物

【発明の名称】 建物架構。
【発明者】 【氏名】菊竹 清訓
【氏名】田中 輝明
【氏名】塚本 二朗
【課題】架構全体として構造的に安定し、かつ各階ごとの平面計画の自由度を格段に向上させた合理的な建物架構を提供する。

【構成】建物の主架構に交差する2方向の斜柱1aを構成要素とする斜材ラーメンを用いる。建物の前面および後面にそれぞれ2方向の斜柱1aを互いに交差させて配置し、その梁間方向の梁1bで結合する。交差部分は剛節とする。前後および上下の斜柱1a間に、大型の耐力壁2を設ける。前後および左右の斜柱1a間に、大型の床版3を設ける。耐力壁2および床版3は、強度、安定性、施工性など面で合理的な設計となるように分散配置する。各階の構造については、基本的には主架構にとらわれず、各階ごと自由な設計が可能である。斜柱1aどうしの交点の上下は共有スペースとしてのスカイガーデン4などに有効利用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の前面および後面にそれぞれ配した交差する2方向の斜柱と、前記前面および後面の斜柱間を任意の高さでつなぐ梁間方向の梁とで、斜材ラーメンを構成し、前記斜材ラーメンと、前後および上下の前記斜柱間を任意の高さでつなぐ鉛直方向の耐力壁と、前後および左右の前記斜柱間を任意の高さでつなぐ水平方向の床版とで建物の主架構を構成し、鉛直荷重および桁行方向の水平力に対しては主として前記斜材ラーメンで抵抗させ、梁間方向の水平力に対しては主として前記斜材ラーメンおよび耐力壁で抵抗させるようにしたことを特徴とする建物架構。
【請求項2】
前記耐力壁は建物の複数階にわたる耐力壁であることを特徴とする請求項1記載の建物架構。
【請求項3】
前記斜柱は鉄骨構造、鉄筋コンクリート構造、または鉄骨鉄筋コンクリート構造である請求項1または2記載の建物架構。
【請求項4】
前記2方向の斜柱が交差する交点の上部または下部の前記斜柱どうしで挟まれる立面が三角形状の部分をスカイガーデンとして利用することを特徴とする請求項1、2または3記載の建物架構。
【請求項5】
前記主架構内に柱および梁を含む副架構を設けてあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の建物架構。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、中高層以上の集合住宅、ホテル、オフィスビルなどに適用される建物架構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の建物における架構は、鉛直方向の柱と水平方向の梁からなる柱梁架構と各階水平床に、必要に応じブレースや耐震壁を組み込んだものが一般的である。
【0003】
その場合、鉛直荷重のスムーズ伝達を考えると、大部分の柱について上下階の柱が平面的に同一またはほぼ同一の位置にくることになるが、各階における平面計画は柱位置に大きく影響されるため、各階ごと平面計画を変えるなど自由な設計が困難である。
【0004】
また、平面計画の自由度を上げるために、柱間のスパンを大きくとる設計が行われることがあるが、鉛直方向の柱間を水平方向の長スパンの梁あるいはスラブで持たせるのは高層になるほど構造的に限界があり、またブレースや耐力壁が必要になることで、かえって設計上の制約受ける面もある。
【0005】
また、特殊なケースとしては、鉛直の柱ではなく、斜めの柱が用いられる場合がある。
【0006】
例えば、特許文献1には、上部が住居となる集合住宅について、下階を事務所、店舗、駐車場などの用途に使用できる設計として、下階の設計の自由度を高めるために、下階の耐震壁を省略し、外周に配した傾斜柱とその間の剛性の大きい梁または骨組み材によって、ラーメン構造体を構成することで、構造的に安定し、かつ下階の設計の自由度が高められた耐震建築構造が記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、建物の要求される形態がもともとピラミッドのような錐体形状あるいは錐台形状の場合について、柱の一部を斜柱とし、斜柱を構成要素とする外周架構と内周架構を床梁、水平ブレースおよび鉛直柱で連結した建物の構造が記載されている。
【0008】
その他、耐震要素としては、例えば、特許文献3に記載されるようにエネルギー吸収用の座屈拘束斜め柱を含む傾斜柱枠を構成し、交差位置に梁材を介在させたものも提案されている。
【0009】
【特許文献1】特開平11−036651号公報
【特許文献2】特開2002−121820号公報
【特許文献3】特開平09−317001号公報
【特許文献4】特開2000−291270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来、一般的な鉛直柱による建物架構は、各階の平面計画を規格化するなど意図的に統一したい場合にはそれなりのメリットがある。また、規格化により各階の施工が全く同じ作業の繰り返しとなること、既存の計算プログラムで設計できることといった面でもメリットがある。しかしながら、構造的には無駄が多く、合理的ではない。また、上述のように設計の自由度は大きく制約される。
【0011】
特許文献1記載の発明は、部分的に構造の合理化、設計の自由度の向上を図ったものであるが、建物全体についてみると従来の鉛直柱によるものとほとんど変わらない。
【0012】
特許文献2記載のものは、もともと形態上の制約を受ける場合であり、汎用性がなく、構造的にも必ずしも合理的であるとは言えない。
【0013】
特許文献3記載のものは耐震要素としての斜め柱の利用にとどまり、そのまま建物の主架構に利用できるものではない。
【0014】
本発明は、建物の主架構に交差する2方向の斜柱を構成要素とする斜材ラーメンを用いたものであり、架構全体として構造的に安定し、かつ各階ごとの平面計画の自由度を格段に向上させた合理的な建物架構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願の請求項1に係る建物架構は、建物の前面および後面にそれぞれ配した交差する2方向の斜柱と、前記前面および後面の斜柱間を任意の高さでつなぐ梁間方向の梁とで、斜材ラーメンを構成し、前記斜材ラーメンと、前後および上下の前記斜柱間を任意の高さでつなぐ鉛直方向の耐力壁と、前後および左右の前記斜柱間を任意の高さでつなぐ水平方向の床版とで建物の主架構を構成し、鉛直荷重および桁行方向の水平力に対しては主として前記斜材ラーメンで抵抗させ、梁間方向の水平力に対しては主として前記斜材ラーメンおよび耐力壁で抵抗させるようにしたことを特徴とするものである。
【0016】
この場合、床の水平剛性は主として前後および左右の前記斜柱間を任意の高さでつなぐ水平方向の床版によって確保する。
【0017】
鉛直の柱の場合、柱間をつなぐ他の構造材が介在しない限り、柱間の応力の伝達ができないのに対し、本発明では交差する2方向の斜柱と建物の前面および後面の斜柱間をつなぐ梁とから構成される斜材ラーメンで鉛直荷重も水平荷重も直接伝達されるため、非常にシンプルで無駄のない合理的な構造となる。
【0018】
また、建物の居住性の面から採光や眺望を考えた場合、平面的には特定方向(桁行方向)に長く、幅方向(梁間方向)に短い建物が好まれるが(その場合も、桁行方向については直線に限らず、弧状に延びる場合、折れ線状に延びる場合など、各種の設計が考えられる)、本発明では建物の前面と後面に交差する2方向の斜柱を面状に配し、その間をつなぐ梁間方向の梁とで立体的な斜材ラーメンを構成し、この斜材ラーメンと耐力壁および床版で建物の主架構を形成させていることで、そのような桁行方向に長く、梁間方向に短い建物に適用した場合においても建物全体としての構造的安定性が高い。
【0019】
なお、梁間方向(短辺方向)の距離が大きい場合には、前面および後面に加え、その間にも同様に交差する2方向の斜柱を面状に配した構造を介在させることが考えられる。
【0020】
また、本発明は、建物各階の平面計画の統一を図ったものではなく、むしろその自由度の向上を図ったものであることと、柱が鉛直方向に揃わないことから耐力壁や床版の設置位置は任意であり、むしろ平均的に分散させることで、設計上バランスのよい設計が可能となる。
【0021】
請求項2は、請求項1に係る建物架構において、前記耐力壁が建物の複数階にわたる耐力壁である場合を限定したものである。
【0022】
上述のように耐力壁や床版の設置位置は任意であるが、建物全体の規模にもよるが、複数階にわたる大型の耐力壁を配置することで、設計や施工における簡略化、合理化が可能である。
【0023】
請求項3は、請求項1または2に係る建物架構において、前記斜柱が鉄骨構造、鉄筋コンクリート構造、または鉄骨鉄筋コンクリート構造である場合を限定したものである。
【0024】
本発明は、架構の構造的な面に特徴があり、本来的には材質や規模を限定する必要がないが、請求項3は代表的な材料を列挙したものである。建物の規模が非常に大きい場合は斜柱自体を立体トラス状に組んだ鉄骨などで構成する場合も考えられる。
【0025】
請求項4は、請求項1、2または3に係る建物架構において、前記2方向の斜柱が交差する交点の上部または下部の前記斜柱どうしで挟まれる立面が三角形状の部分をスカイガーデンとして利用する場合を限定したものである。
【0026】
従来の鉛直柱の場合、設計上、耐震ブレースが必要な場合などを除き、柱間はそれなりの間隔が確保されるのに対し、本発明の場合、2方向の斜柱が交差する位置では、柱間の間隔が短くならざるを得ない。しかし、この交点の上部または下部の前記斜柱どうしで挟まれる立面が三角形状の部分を大きく開放してスカイガーデンとすれば、集合住宅やホテル、オフィスビルなどにおける採光性の高い共用スペースとして有効利用することができる。
【0027】
請求項5は、請求項1〜4に係る建物架構において、斜材ラーメンを利用した前記主架構内に柱および梁を含む副架構を設けてあることを特徴とするものである。
【0028】
建物各階の平面計画に関しては、本発明の架構を主架構として、各階の床スラブ、戸境壁などの壁を配置して行けばよく、その場合、SI(スケルトン・インフィル)住宅的な利用形態も考えられるが、建物の規模が大きい場合は、主架構に加え、柱や梁を含む副架構(副架構の柱は鉛直柱でもよい)を構成することで、設計の自由度を損なうことなく、設計、施工の簡略化が可能である。
【発明の効果】
【0029】
従来、一般的な鉛直の柱の場合、柱間をつなぐ他の構造材が介在しない限り、柱間の応力の伝達ができないのに対し、本発明では建物の前面および後面に配された交差する2方向の斜柱によって構成される斜材ラーメンによって、鉛直荷重も水平荷重も直接伝達されるため、非常にシンプルで無駄のない合理的な構造となる。
【0030】
本発明では建物の前面と後面に交差する2方向の斜柱を面状に配してなる立体的な斜材ラーメンと、その間をつなぐ耐力壁や床版で主架構を形成させていることで、特定方向に長く、これと交差する方向に短い建物に適用した場合においても建物全体としての構造的安定性が高い。
【0031】
建物の平面計画における自由度が高く、階ごと異なる自由な設計が可能である。
【0032】
デメリットと考えられる2方向の斜柱が交差する位置については、その部分を三角形状のスカイガーデンに利用することで、逆に多機能の共用スペースとして有効利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1は、本願の建物架構の一実施形態を透視斜視図として示したものである。この例は25階建の集合住宅を想定しており、図1における建物左側側面に示した破線は各階床高さを表わし、5階ごとに主架構の床版3が設けられている。
【0034】
また、図が煩雑となるため、作図上、本発明における斜材ラーメン1を構成する斜柱1aおよび斜柱どうしを梁間方向につなぐ梁1bと、耐力壁2および床版3について、建物前面(仮に、この方向を南側とし、他の方向もこれに対応させて説明する。)の斜柱1aを実線で示し、建物後面(北側)の斜柱1aの一部のみを破線で示し、建物の梁間方向(南北方向)に配した耐力壁2および床版3は前面側を実線で示し、他は部分的に省略するかまたは破線で示している。
【0035】
また、建物内部の各階ごとの床、壁(戸境壁、間仕切り壁等)、補助的な柱、梁等も省略し、原則としては斜材ラーメン1を用いた主架構の構成要素のみを示している。
【0036】
斜材ラーメン1の構成要素としては、建物の前面(南側)および後面(北側)にそれぞれ2方向の斜柱1aを互いに交差させて配置している。交差部分は剛節とする。前面および後面の斜柱1aどうしは、設計上必要な位置おいて梁間方向の梁1bによって接続され、立体的な斜材ラーメン1を形成している。
【0037】
また、前後および上下の斜柱1a間に、この例では奥行き(南北方向)が建物の短辺(梁間方向)の長さに相当し、高さが5階分に相当する大型の耐力壁2を設けている。さらに、前後および左右の斜柱1a間に、奥行き(南北方向)が建物の短辺(梁間方向)の長さに相当する水平な大型の床版3を設けている。
【0038】
耐力壁2および床版3の寸法、位置は任意であり、特に限定されないが、斜材ラーメン1を構成する斜柱1aとともに建物の主架構を形成する上で、強度、安定性、施工性など面で合理的な設計が可能となるように分散配置する。
【0039】
ここで、図示を省略している各階の構造については、上記の斜材ラーメン1を用いた架構を主架構として、既存の柱、梁などを構成要素とする副架構(2次架構)を組み、床、壁などを配置すればよいが、全体構造としての架構は斜材ラーメン1を用いた主架構によって安定性が図れるので、基本的には各階ごと自由な設計が可能である。
【0040】
さらにデザインや機能的な面では、例えば、外壁のうち、前面および後面の外壁に半透明の外壁パネルを使用して採光性を高めたり、共有スペースとして図に示すようなスカイガーデン4を設けることが考えられる。
【0041】
特に、本発明では、建物の前面および後面において、斜柱1aが交差する構造であるため、2方向の斜柱1aが交差する位置では、斜柱1a間の間隔が短くならざるを得ないが、この交点の上部または下部の斜柱1aどうしで挟まれる立面が三角形状の部分を開放することでスカイガーデン4として有効利用することができる。
【0042】
図2はスカイガーデン4を交点の上側に設けた場合、図3は交点の下側に設けた場合の例を示したもので、図中、符号5は各階の床を示している。
【0043】
このようなスカイガーデン4の機能は、以下の通りである。
(1) 自然環境への適切な対応
省エネルギー、換気、採光などへの活用。
(2) 防災、防犯
防災、防犯上の避難小広場、排煙の余裕など。
(3) 高層構造のコミュニティー
コミュニティー広場、オフィスの各室の連絡、共通スペースの確保など。
(4) 外部への共通眺望
スカイガーデンを通しての遠望など。
(5) 採光、ライトアップ
昼間は透過する昼光が北側からよく見えて明るくなる。夜間は各個室の明かりとスカイガーデンの照明、そして全体に配置される照明(常夜灯)で、変化のあるライトアップとなる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の建物架構の一実施形態を示す透視斜視図である。
【図2】スカイガーデンを斜柱の交点の上側に設けた場合のスカイガーデン部分の正面図である。
【図3】スカイガーデンを斜柱の交点の下側に設けた場合のスカイガーデン部分の正面図である。
【符号の説明】
【0045】
1…斜材ラーメン、1a…斜柱、1b…梁、2…耐力壁、3…床版、4…スカイガーデン、5…各階の床

特許の図
【出願人】 【識別番号】506218549
【氏名又は名称】株式会社情報建築
【出願日】 平成18年6月23日(2006.6.23)
【代理人】 【識別番号】100070091
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 知

【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享

【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
【公開番号】 特開2008−2173(P2008−2173A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−173381(P2006−173381)