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【発明の名称】 アンボンドブレース
【発明者】 【氏名】吉田 競人
【課題】座屈の完全拘束によらず、芯ブレース2が容易に高次モードに移行しやすく、よって端部座屈が生じにくい、安価にまた効率よくその性能を発揮するアンボンドブレースを提供する。

【構成】軸力を負担する芯ブレース2と、この芯ブレース2が挿通され座屈を制御する筒状の補剛材1と、この芯ブレース2の座屈モードが高次へ容易に移行するように、3次以上の高次モード座屈の波形の山と谷の部分で、前記芯ブレース2の外表面に設けた突起3と、この突起3と前記補剛材1との間の隙間と、を有することを特徴とするアンボンドブレースである。また、突起3は、補剛材1の内表面に設けてもよい。また、突起3を設ける代わりに、芯ブレース2自体を略波形に屈曲させてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸力を負担する芯ブレースと、この芯ブレースが挿通され座屈を制御する筒状の補剛材と、この芯ブレースの座屈モードが高次へ容易に移行するように、3次以上の高次モード座屈の波形の山と谷の部分で、前記芯ブレースの外表面に設けた突起と、この突起と前記補剛材との間の隙間と、を有することを特徴とするアンボンドブレース。
【請求項2】
軸力を負担する芯ブレースと、この芯ブレースが挿通され座屈を制御する筒状の補剛材と、この芯ブレースの座屈モードが高次へ容易に移行するように、3次以上の高次モード座屈の波形の山と谷の部分で、前記補剛材の内表面に設けた突起と、この突起と前記芯ブレースとの間の隙間と、を有することを特徴とするアンボンドブレース。
【請求項3】
軸力を負担する芯ブレースと、この芯ブレースが挿通され座屈を制御する筒状の補剛材と、この芯ブレースの座屈モードが高次へ容易に移行するように、3次以上の高次モード座屈の波形の山と谷の部分で、前記芯ブレース自体を略波形に屈曲させた初期不整と、この初期不整の波形の山と谷の部分と前記補剛材との間の隙間と、を設けたことを特徴とするアンボンドブレース。
【請求項4】
複数の突起あるいは初期不整の波形の山と谷の部分と補剛材との間の隙間は、中央のものが一番大きく、端へ行くに従い順に小さくなることを特徴とする請求項1、2、又は3に記載のアンボンドブレース。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、建築物その他の構造物において、地震力又は風力等の水平力に抵抗させる構造要素として使用する制振用座屈拘束部材であるアンボンドブレースの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図11に示すように、従来、建築物その他の構造物に使用するアンボンドブレースとしては、鉄筋コンクリートや、鋼管により補強された座屈拘束用コンクリート部材を筒状の補剛材1として、その内部に鋼製軸力部材が芯ブレース2として挿通され、その軸力部材の表面とコンクリート部材との間を非付着状態とした構造のものが知られている。非付着状態とすることで、補剛材が軸力を負担しないので、引張軸力に弱いコンクリートの弱点をなくせる。しかも、通常は座屈に弱い鋼製軸力部材が座屈を拘束され、圧縮軸力に対し高い剛性と耐力を得る。
このため、圧縮軸力に対する剛性と耐力が、引張り軸力に対する場合と、ほぼ等しくなる。よって、力−変位グラフ(図示せず)における履歴特性が紡錘形となり、耐震性に優れた部材となる。
【0003】
また、内部での座屈を生じさせない技術としては、ボルトの先端で、芯ブレースを支持し、長手方向の各部分に分割されたごとき、座屈長さを短くし、座屈を拘束する技術がある(下記特許文献1、2)。これは、補剛材に充填材を充填しなくてもよく製作が容易で補剛材が軽量になることを狙ったものである。なお、発明者は、下記の非特許文献1、2に論文を発表している。
【特許文献1】特許公開平11−029987アンボンドブレース
【特許文献2】特許公開平11−029978アンボンドブレース
【非特許文献1】「鉄筋コンクリート補剛材によるアンボンドブレースの必要剛性に関する研究」、日本建築学会構造系論文報告集No.521,pp.141-147、1999年 7月、吉田競人、他 著
【非特許文献2】「鉄筋コンクリート補剛材によるアンボンドブレース端部のせん断応力に関する研究」、日本建築学会構造系論文報告集、No.521,pp.149-156、1999年 7月、吉田競人、他 著
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
理論上は、アンボンドブレースが圧縮軸力を負担し(図12(A−1))、この軸力を増加させ、1次モード座屈を起こす軸力となると、初期変位のために始めに中の芯ブレースがたわみ(図12(A−1))、中央部分が補剛材に接する(図12(A−2))。軸力の増加につれ芯ブレース中央の接触部分が広がり始める(図12(A−3))。ある程度接触すると、理論上はエネルギー量の低い形状への移行、すなわち高次モード座屈へ移行が始まることになる(図12(A−4))。この場合は3次モードである。
【0005】
しかし、実際には芯ブレース及び補剛材の初期不整が少なく表面が滑らかであることが多いので、途中までは同じ挙動であるが(図12(B−1)〜(B−3))、高次モーへの移行のきっかけが得られないまま、接触面が広がるだけとなり、やがて補剛材の両端部付近において芯ブレースが座屈することとなる(図12(B−4))。この端部座屈が生じると、圧縮軸力に対する剛性と耐力は、低下する。
【0006】
圧縮軸力に対する剛性と耐力は、1次モード座屈、端部座屈、高次のモード座屈、座屈の完全拘束、の順に高くなっていく。高次のモード座屈における剛性と耐力は、高く、座屈の完全拘束におけるものとほぼ同じである。
【0007】
また、特許文献1、2の技術では、補剛材の内表面に設けた多数のボルトにより、芯ブレースを支持している。
これにより、補剛材に充填材を充填しなくてもよく製作が容易で補剛材が軽量になることを狙ったものである。そのボルト数の多さ、及びボルトと芯ブレースの間に隙間を設けていないことから、芯ブレースの撓みを完全に抑制し内部での座屈防止(座屈の完全拘束)を図るものであることは明らかである。
【0008】
ところが、高次のモード座屈へ移行ができないと、前述したように、端部座屈が生じやすくなるのと同じように 特許文献1、2の技術のように座屈の完全拘束を図る構造にすると、やはり端部座屈が生じやすくなる。また、これを防止するために、補剛材から露出した芯ブレースの長さを非常に短くすることは、この露出部分に建物への取り付け部分があるなどのことから、困難である。このため圧縮軸力に対し、芯ブレースはほとんど変形せず(図12(C−1)(C−2))、やがて補剛材の両端部付近において芯ブレースが座屈することとなる(図12(C−3))。
【0009】
端部座屈をするとアンボンドブレースの所要の性能(圧縮時と引っ張り時の剛性が等しい)が得られなくなるため、端部での座屈は避けなければならない。そのためにはこれまでは、端部でのプレートによる補強やブレース端部における断面の増大などの措置が行われてきた。これらの補強は端部での座屈を防止するために、補剛材内部まで行う必要があるため、ブレースの製作や補剛材の加工が必要となってしまい、アンボンドブレースの製造コストを高めてしまう。
【0010】
そこで、この発明は、座屈の完全拘束によらず、芯ブレースが容易に高次モードに移行しやすく、よって端部座屈が生じにくい、安価にまた効率よくその性能を発揮するアンボンドブレースを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するために、第一発明は、軸力を負担する芯ブレースと、この芯ブレースが挿通され座屈を制御する筒状の補剛材と、この芯ブレースの座屈モードが高次へ容易に移行するように、3次以上の高次モード座屈の波形の山と谷の部分で、前記芯ブレースの外表面に設けた突起と、この突起と前記補剛材との間の隙間と、を有することを特徴とするアンボンドブレースである。
第二発明は、軸力を負担する芯ブレースと、この芯ブレースが挿通され座屈を制御する筒状の補剛材と、この芯ブレースの座屈モードが高次へ容易に移行するように、3次以上の高次モード座屈の波形の山と谷の部分で、前記補剛材の内表面に設けた突起と、この突起と前記芯ブレースとの間の隙間と、を有することを特徴とするアンボンドブレースである。
第三発明は、さらに、軸力を負担する芯ブレースと、この芯ブレースが挿通され座屈を制御する筒状の補剛材と、この芯ブレースの座屈モードが高次へ容易に移行するように、3次以上の高次モード座屈の波形の山と谷の部分で、前記芯ブレース自体を略波形に屈曲させた初期不整と、この初期不整の波形の山と谷の部分と前記補剛材との間の隙間と、を設けたことを特徴とするアンボンドブレース である。
第四発明は、さらに、前記複数の突起あるいは前記初期不整の波形の山と谷の部分と補剛材との間の隙間は、中央のものが一番大きく、端へ行くに従い順に小さくなることを特徴とするアンボンドブレースである。
【発明の効果】
【0012】
第一発明によれば、圧縮軸力を負担し(図1(D−1))、この軸力を増加させると、芯ブレース中央部分の突起が接触し(図1(D−2))、この接触により芯ブレースが軸方向(以下Y方向という)に直角な方向(以下X方向という)へ押され、これをきっかけとして、その後突起の両側の変形が進む(図1(D−3))ことにより、3次モードが形成されることになる。
3次以上の高次モード座屈の波形の山と谷の部分で突起を設けることで、同様の接触と変形の事象が、芯ブレースの突起により次々と生じ、容易に高次モードに移行する。さらに、高次の程度を進ませ、突起の数を多くすることで、芯ブレースの座屈長さは、やがて塑性座屈長さまで短くすることが可能となり、容易にアンボンドブレースの性能を発揮させることができる。
【0013】
同様に第二発明によれば、圧縮軸力を負担し、この軸力を増加させると、補剛材の中央部分の突起が芯ブレースに接触し、この接触により芯ブレースが軸方向(以下Y方向という)に直角な方向(以下X方向という)へ押され、これをきっかけとして、その後突起の両側の変形が進むことにより、3次モードが形成されることになる。
3次以上の高次モード座屈の波形の山と谷の部分で突起を設けることで、同様の接触と変形の事象が、補剛材の突起により次々と生じ、容易に高次モードに移行する。さらに、高次の程度を進ませ、突起の数を多くすることで、芯ブレースの座屈長さは、やがて塑性座屈長さまで短くすることが可能となり、容易にアンボンドブレースの性能を発揮させることができる。
【0014】
同様に第三発明によれば、圧縮軸力を負担し、この軸力を増加させると、補剛材へ、芯ブレースの初期不整の波形の山と谷の部分が接触し、この接触により芯ブレースが軸方向(以下Y方向という)に直角な方向(以下X方向という)へ押され、これをきっかけとして、その後、接触した両側の変形が進むことにより、3次モードが形成されることになる。
3次以上の高次モード座屈の波形の山と谷の部分で屈曲を設けることで、同様の接触と変形の事象が、補剛材の屈曲により次々と生じ、容易に高次モードに移行する。さらに、高次の程度を進ませ、屈曲の数を多くすることで、芯ブレースの座屈長さは、やがて塑性座屈長さまで短くすることが可能となり、容易にアンボンドブレースの性能を発揮させることができる。
【0015】
第四発明によれば、複数の突起(第一又は第二発明)あるいは初期不整の波形の山と谷の部分(第三発明)と補剛材との間の隙間は、中央のものが一番大きく、端へ行くに従い順に小さくなることから、圧縮軸力の負担に伴い、接触は、中央の突起(第一又は第二発明)あるいは波形の山と谷の部分(第三発明)がはじめに接触し、次に端のものが順に接触する。このため順に高次モードの座屈に移行する挙動が、スムーズに行われうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第一実施形態)
この発明の第一実施形態を、図1、図2に示す。
軸力を負担する芯ブレース2は鉄製の矩形断面の棒材である。この芯ブレース2が挿通され、矩形断面の筒状を有する補剛材1も鉄製である。この芯ブレース2が3次の高次モード座屈を起こしたときに、座屈の形状の波形の山と谷の部分になる位置は、芯ブレース2の全長寸法によって決まる。そのW字形の波の山と谷の部分で、従って合計3箇所で、芯ブレース2の外表面に突起3を設ける。この突起3は、細長い円柱状の鉄棒で、芯ブレース2の外表面にそって溶接される。この突起3による接触で高次モードへの移行のきっかけができる。補剛材1は筒内部の断面積が大きめであり、よって、突起3と前記補剛材1との間の隙間を有する。この隙間によりX方向への変位が容易で、高次モードへの移行が行われる。
【0017】
図1に示すように、この実施形態では、両端に圧縮軸力を負担し(図1(D−1))、この軸力を増加させると、芯ブレース中央部分の突起3が接触し(図1(D−2))する。この接触により芯ブレース2が軸方向(Y方向)に直角な方向(X方向)へ押され、これをきっかけとして、その後突起3の両側の変形が進み(図1(D−3))、W字形の波形の3次モード座屈が起きる。
【0018】
「比較説明による第一実施形態の効果」
図12と図1とに基づいて、一般的な理論的な座屈と、実際の先行技術による座屈と、芯ブレース2を多数のボルトによって支持した特殊な先行技術による座屈との比較説明により、この第一実施形態の効果を示す。
【0019】
理論的な座屈は、アンボンドブレースが圧縮軸力を負担すると(図12(A−1))、芯ブレース2には製作誤差による初期のたわみが存在する。この軸力を増加させ、1次モード座屈を起こす軸力となると、初期変位のために始めに中の芯ブレース2がたわみ(図12(A−1))、中央部分が補剛材1に接する(図12(A−2))。軸力の増加につれ芯ブレース2中央の接触部分が広がり始め(図12(A−3))、2次モードに移行(分岐)する。ある程度接触すると、理論上はエネルギー量の低い、安定した形状への移行、すなわち3次モード座屈へ移行が始まることになる(図12(A−4)、この場合は3次モード)。
【0020】
実際の先行技術による座屈は、通常は芯ブレース及び補剛材1の初期不整が少なく表面が滑らかであることが多いので、途中までは同じ挙動であるが(図12(B−1)〜(B−3))、3次モーへの移行のきっかけが得られないまま、接触面が広がるだけとなり、やがて補剛材1の両端部付近において芯ブレース2が座屈する端部座屈を生じることとなる(図12(B−4))。
【0021】
特許文献1、2に開示される芯ブレース2を多数のボルトによって支持した特殊な先行技術による座屈は、圧縮軸力に対し、芯ブレース2はほとんど変形せず(図12(C−1)(C−2))、やがて補剛材1の両端部付近において芯ブレース2が座屈することとなる(図12(C−3))。
【0022】
これらに対して、この第一実施形態では、アンボンドブレースが圧縮軸力を負担し(図1(D−1)、芯ブレース2には製作誤差による初期のたわみが存在する)、この軸力を増加させると、芯ブレース中央部分の突起3が接触し(図1(D−2))する。この接触により芯ブレース2が軸方向(以下Y方向という)に直角な方向(以下X方向という)へ押される。これにより、3次モード形状をあらかじめ形成したことになる。
すなわち、突起3による接触で移行のきっかけができる。また、突起3により隙間ができるのでX方向への変位が容易で、移行が可能になる。さらに軸力を増加させると、エネルギー的に安定な形状な3次モードに実際に移行する。
【0023】
このようにして、座屈の完全拘束によらず、芯ブレース2が容易に3次モード座屈へ移行しやすくし、よって端部座屈が生じにくい、安価にまた効率よくその性能を発揮する。
なお、従来のように端部で座屈をするとアンボンドブレースの所要の性能(圧縮時と引っ張り時の剛性が等しい)が得られなくなるため、端部での座屈は避けなければならない。そのためにはこれまでは、端部でのプレートによる補強やブレース端部における断面の増大などの措置が行われてきた。これらの補強は端部での座屈を防止するために、補剛材1内部まで行う必要があるため、ブレースの製作や補剛材1の加工が必要であるが、この実施形態によれば、それらの措置をすることなく或いはきわめて少ない手間でアンボンドブレースの性能を得ることが可能となる。
【0024】
(高次モードの説明)
以上の第一実施形態では、座屈のモードは3次であったが、この発明の実施形態として実施可能な高次モードの座屈は、3次に限らない。図3において例を説明する。
すなわち、図のE-1からE-4は、加力支持条件がピン接合の場合の高次モードを示している。これらの図E-1からE-4はそれぞれ4次モードから7次モードである。加力支持条件が固定接合の場合の高次モードについては、同様にF-1からF-4に示している。ここで、F-1からF-4はそれぞれ3次から6次モードである。図のEとFの違いは、加力点がピン接合の場合は、加力点のモード性状が波形の節であるのに対し、両端固定の場合は、波形の山あるいは谷であることが異なっているだけの違いである。
【0025】
また、図のGは特許文献1、2の例によるモードを示す。すなわち、ボルト等により芯ブレース中央を拘束した場合の軸力と変形の関係を模式的に表したものである。この状態で圧縮軸力を載荷すると(G-1)、中央部分の変位が拘束されているために図G-2のようにS字形状となる。いわばモードは2次である。さらに加力しても、補剛材が滑らかなためにモードが高次に分岐することなく、ブレースの接触部分が広がるだけである。(図G-3)。最終的にはG-4のように両側端部が座屈することになる。
【0026】
(第二実施形態)
この発明の第二実施形態による比較実験を、図4〜図7に示す。
この実験は、コンピュータを用いた有限要素法による解析に基づくシミュレーション実験であり、第二実施形態は、その実験モデルで4次モード座屈を起こすためのものである。補剛材1は実際には筒状であるが、解析を容易にするために、図4(C)に示すように、芯ブレース2を補剛する2枚の板材とした。図4中、比較例として従来型の突起3のないものを図4(A)とした。この第二実施形態を図4(B)とし、芯ブレース2が4次モード形状をあらかじめ形成するように突起3を設定する。
【0027】
すなわち、4次モード座屈を起こしたときに、座屈の形状の波形の山と谷の部分になる位置は、芯ブレース2の全長寸法によって決まるので、その各位置で、従って合計5箇所で、芯ブレース2の外表面に突起3を設ける。この突起3は、高さPと幅Dが突起3により異なる。この突起3による接触で4次モードへの移行のきっかけができる。補剛材1は筒内部の断面積が大きめであり、よって、突起3と補剛材1との間の隙間を有する。この隙間によりX方向への変位が容易で、高次モードへの移行が行われる。突起3の高さPは、中央のものP1が一番高く、端へ行くに従いP2、P3と順に低くなる。これにより、これらの突起3と補剛材1との間の隙間は、中央のものが一番大きく、端へ行くに従い順に小さくなる。
【0028】
1.有限要素法による解析により比較実験を行った。
芯ブレース2に突起3を使用した場合と使用しない場合の解析を有限要素法によって行った。解析モデルを図4、図5に示す。
解析は2種類のモデルとした。すなわち
図4(A):突起3なしモデル
図4(B):突起3ありモデル(5箇所)
図の中央のDxB断面を有する部材が芯ブレース2である。各突起3の形状は図(B)において、中央を挟んで左右対称であり、中央から端に向かって順に、P1xD1、P2xD2、P3xD3の形状となる。
【0029】
2「解析概要」
2.1 解析プログラム
本解析では汎用解析コードANSYS8.1を用いた。解析概要は以下の通りである。
2.1.1 材料特性
芯ブレース2の材質にはSS400を想定し図5(A)の特性を有するバイリニアー型を仮定した。補剛材1は芯ブレース2の座屈を十分拘束できるように芯ブレース2の1000倍の剛性を有する弾性体と設定した。
【0030】
2.1.2解析モデル
モデル形状を図4に試験体一覧を図5(B)に掲げる。図4において、比較例の(A)とこの実施形態の(B)とは、材料特性、形状は等しく、その違いは芯ブレース2に付け加えられた突起3である。この突起3は補剛材1と芯ブレース2の不均一性をモデル化したものである((B))。一方(A)タイプは芯ブレース2が初期撓みを有するものの補剛材1と芯ブレース2の表面は全く滑らかなモデルである。(A)タイプは(B)タイプから突起3を取り除くことにより作成している。
【0031】
試験体解析モデル
間隙eは(B)突起モデルの場合は、最大突起(J3)から補剛材1の内側までの距離を、(A)均一モデルの場合は、芯ブレース外端部から補剛材内側までの距離を示す。そのため(B)タイプの補剛材内側の距離eは(A)タイプのモデルと比較して14mmと大きくなっている。これらの突起配置は芯ブレース2の両側に材軸方向の間隔(L2)を均一にして、片面5箇所計10箇所取り付けている。大きさは、中央(J1)がP×D=12mm×18mm、最両端が(J3)4mm×18mm、中間(J2)の2箇所が8mm×18mmと変化させている。
【0032】
突起間隔(L2)は780mmで突起間隔の細長比(λ)は60である。突起付ブレース及び補剛材1とも並進2自由度を有する中間点のある二次元ソリッドを用い、芯ブレース2は幅Bを5層に分割した。芯ブレース2の境界条件は、下端部が完全固定、上端部は端部の回転を拘束するため横方向変位を拘束した幅Bと同じ長さの部材を加え、この上面中央に集中荷重を載荷している。芯ブレース初期不整形状はモデル(A)、(B)共に線形座屈解析の一次モードとし、大きさはその振幅を1mmとした。芯ブレース2への載荷方法は単調載荷とし最終荷重は線形座屈荷重の4倍を想定し1015kNとした。
【0033】
3.解析結果
3.1 突起モデル
弾塑性解析結果によるモードの主要な分岐を示したものを図6(a)から(f)に掲げる。変形の出力にあたっては、芯ブレース2と補剛材1の間隔が600mmになるように約300倍に拡大している。また、図中の数値は解析結果の出力の反作用値を示している。圧縮軸力は、図中順に、(a)90kN(b)393kN(c)522kN(d)792kN(e)987kN(f) 最終、とした。
【0034】
変形の移り変わりは以下のようになった。始めに芯ブレース中央部分が座屈のため横方向変位を生じる(図6(a))。その後、荷重の増加と共に横変位が進展し、中央部分の突起3が補剛材1に接触する(図6(b))。荷重を増加させるにつれて、一度上端部が左側に移動し、ややS字形状を呈した後S字形状の上部分が元に戻り(図6(c))となる。その後、芯ブレース2と補剛材1の接触部分の拡大が広がり始める(図6(d))。ある程度芯ブレースの接触面が広がると中央突起の近傍の両側が突起部分より横方向に変形が進行し「く」の字形状となる。つまり突起3J3により芯ブレース2の変形が不均一となりモードの分岐が生じ始める(図6(e))。このモードに達したのちすぐに最終形状に達した(図6(f))。
なお、これらの突起3と補剛材1との間の隙間は、中央のものが一番大きく、端へ行くに従い順に小さくなるので、中央の突起3(J3)がはじめに接触し、次の突起3(J2)、3(J1)が順に接触する。(a)(b)(c)(d)(e)(f)の順に高次モードの座屈に移行する挙動が、スムーズに行われうる。
【0035】
3.2 均一モデル
補剛材1と芯ブレース2が滑らかで不均一性がないモデル(A)の変形図を図7(a)から(c)に掲げる。これらの変形図の出力にあたっては、芯ブレース2と補剛材1の間隔が600mmになるように約43倍に拡大している。拡大率が(B)モデルと異なっているため芯ブレース上端部の縦方向変形量が大きく異なって見える。圧縮軸力は、図中順に、(a)186 kN(b) 251 kN(c) 最終とした。
【0036】
突起モデル同様、荷重の増加とともに、芯ブレース2中央に存在する初期撓みのために、横方向変位が進み(図7(a))、その後、中央部分が補剛材1に接触する(図7(b))。しかし不均一性がないために、エネルギー的に安定な高次のモードに分岐することなく、荷重の増加にたいして変形は中央部分と補剛材1の接触部分が拡大するのみである。この傾向は最終状況(図7(c))まで続き、接触を考慮しただけでは多くの実験結果を反映した解析とはならないことが判明した。
【0037】
4.まとめ
精緻なアンボンドブレースの挙動を得る目的のために芯ブレース2と補剛材1を有限要素法による接触解析を行った結果以下のことが判明した。(1)補剛材1と芯ブレース2に不均一性がない場合モードの分岐が発生せず、波状の変形(高次モード座屈)とならない。(2)不均一性をモデル化するために芯ブレース2に突起3を設けることにより、モードの分岐が発生し、高次モードを生じ実験結果を反映しているといえる。
【0038】
「他の実施形態」
以上の実施形態では、突起3は、細長い円柱状の鉄棒であったが、他の実施形態では、半球形状でも良い。
以上の実施形態では、芯ブレース2の形状は、矩形断面のプレートであったが、他の実施形態では、円柱状の鉄棒を使用することもできる。その場合には、補剛材1は円筒状、または正方形の筒状とし、突起4は、円柱状の鉄棒の円周を囲むようなリング状の突起とすることが望ましい。
【0039】
以上の実施形態では、座屈は、3次モード、又は4次モードであったが、他の実施形態では、5次以上のモードにすることができる(図8参照)。すなわち、5次以上の高次モード座屈の波形の山と谷の部分で突起3を設けることで、上述した接触と変形の事象が、次々と生じ、容易に高次モードに移行させることができる。すなわち、高次のモードを進ませ、突起3の数を多くすることで、芯ブレース2の座屈長さは、やがて塑性座屈長さまで短くすることが可能となり、容易にアンボンドブレースの性能を発揮させることができる。
【0040】
以上の実施形態では、芯ブレース2の外表面に設けた突起3を設けるものであったが、他の実施形態では、図9に示すように、補剛材1の内表面に突起4を設けてもよい。すなわち、図に示すように、軸力を負担する芯ブレース2が挿通され座屈を制御する筒状の補剛材1の内表面に突起4を設ける。この突起4は、この芯ブレース2の座屈モードが高次へ容易に移行するように、3次以上の高次モード座屈の波形の山と谷の部分で設ける。また、突起3と芯ブレース2との間には隙間を有する。
【0041】
また、図10に示すように、芯ブレース2自体を略波形に屈曲させてもよい。すなわち、軸力を負担する芯ブレース2自体に、3次以上の高次モード座屈の波形の山と谷の部分で、略波形に屈曲させた初期不整を形成させる。この初期不整の波形の山と谷の部分と補剛材1との間には隙間を有する。
【0042】
また、以上の実施形態では、突起同士間の間隔は、同じであったが、他の実施形態では、端部近くにおける間隔を一般部分の間隔より短くすることにより、より端部での座屈が生じにくくできる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の第一実施形態に係るアンボンドブレースを示す縦断面図によって、圧縮軸力により座屈変形を起こす挙動を示す連続図である。
【図2】図1のアンボンドブレースの概略を示す分解斜視図である。
【図3】この発明の実施形態として実施可能な高次モードの座屈、及び従来例の座屈のモードを説明する図であり、うち(E−1)〜(E−4)は支持条件がピン接合の場合の理論的な挙動を示す連続図、(F−1)〜(F−4)は支持条件が固定接合の場合の理論的な挙動を示す連続図、(G−1)〜(G−4)は従来例の特許文献1、2のモード次元と挙動を説明する連続図である。
【図4】この発明の第二実施形態に係るアンボンドブレースを、比較実験の比較例とともに示すもので、(A)は比較例の図、(B)は第二実施形態の図、(C)は(A)又は(B)の端面図、(D)は(B)の突起を強調して寸法を示す図である。
【図5】(A)は実験モデルの材質の特性を示す図表、(B)は実験の試験体一覧を示す図表である。
【図6】実験の解析結果を示すCG写真で、第二実施形態に係るアンボンドブレースが、圧縮軸力により座屈変形を起こす様子を示す連続図である。
【図7】実験の解析結果を示すCG写真で、比較例に係るアンボンドブレースが、圧縮軸力により座屈変形を起こす様子を示す連続図である。
【図8】この発明の他の実施形態に係る芯ブレースで、より多くの突起を設け、さらに高次モードの座屈を起こさせるためのものを示す斜視図である。
【図9】この発明の他の実施形態に係るアンボンドブレースで、補剛材の内表面に設けた突起を設けたものの分解斜視図である。補剛材は縦に半割りになって片側が破線で示される。
【図10】この発明の他の実施形態に係るアンボンドブレースで、芯ブレース自体を略波形に屈曲させたものの分解斜視図である。
【図11】従来例のアンボンドブレースの斜視図である。
【図12】従来例のアンボンドブレースを示す縦断面図によって、圧縮軸力により座屈変形を起こす挙動を示す連続図の図表であり、うち(A−1)〜(A−4)は理論的な挙動を示す連続図、(B−1)〜(B−4)通常の挙動を示す連続図、(C−1)〜(C−4)は特許文献1、2のアンボンドブレースの挙動を示す連続図である。
【符号の説明】
【0044】
1…補剛材、2…芯ブレース、3、…突起。

特許の図
【出願人】 【識別番号】506214703
【氏名又は名称】吉田 競人
【出願日】 平成18年6月21日(2006.6.21)
【代理人】 【識別番号】100092989
【弁理士】
【氏名又は名称】片伯部 敏
【公開番号】 特開2008−2106(P2008−2106A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−170974(P2006−170974)