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【発明の名称】 更生水路の構造、水路の更生方法
【発明者】 【氏名】伊藤 義一

【氏名】徳永 文男

【氏名】東 俊司

【要約】 【課題】作業性を低下させることなく水路の更生を行うことができる更生水路の構造を提供する。

【構成】本発明の更生水路1は、既設水路90の内面を覆うように板状部材10が配置され、既設水路90と板状部材10との間には固定部材11が設けられている。そして、固定部材11は板状部材10の固定位置に応じた厚みのものを用いており、板状部材10の位置決めを行うことができる。また、板状部材10は、固定部材11を介して既設水路90に固定されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設水路の内面を覆うように板状部材が配置され、既設水路と板状部材との間には固定部材が設けられ、既設水路と固定部材とが固定され、固定部材と板状部材とが固定されるものであり、
固定部材は板状部材の固定位置に応じた厚みのものを用いて板状部材の位置決めを行うものであることを特徴とする更生水路の構造。
【請求項2】
板状部材は複数のものが用いられ、板状部材の端部同士を合わせて合わせ目が形成されており、固定部材は板状部材の合わせ目に配置されるものであることを特徴とする請求項1に記載の更生水路の構造。
【請求項3】
板状部材は平板状であって湾曲することが可能なものであり、板状部材を湾曲した状態で既設水路の曲部に固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の更生水路の構造。
【請求項4】
板状部材は長尺板状であり、板状部材の長尺方向を湾曲させて水路の流れ方向に沿う状態で固定されていることを特徴とする請求項3に記載の更生水路の構造。
【請求項5】
既設水路と板状部材との隙間には、充填剤が充填されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の更生水路の構造。
【請求項6】
既設水路を請求項1〜5のいずれかに記載の更生水路の構造とすることにより更生する水路の更生方法であって、
固定部材の内側が板状部材の固定位置に合うように固定部材を既設水路に固定する工程と、固定部材に板状部材を固定する工程を有することを特徴とする水路の更生方法。
【請求項7】
既設水路の曲部に、平板状の板状部材を湾曲させた状態で既設水路の内面を覆うように位置決めしながら配置して、板状部材を固定することを特徴とする請求項6に記載の水路の更生方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば農業用水路等の既設水路を更生した水路である更生水路の構造や、水路の更生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、農業用水路等に代表される三面水路(トラフ型水路)は、現場打ちコンクリートやプレキャストコンクリート部材の組み合わせなどによって形成される。そして、このような水路には、底面部と、底面部の両端に立設された壁面部とを備えている。
【0003】
そして、この種の水路では、長期間に亘って使用している間にコンクリートの経年劣化や地震等の影響によって底部や立ち上がり部に凹みや割れが生じて漏水する虞がある。このため、定期的な改修が必要である。
【0004】
このような水路を改修し、更生する方法としては、底面部及び壁面部に、ポリウレタン樹脂塗料やエポキシ樹脂塗料を吹き付ける方法がある。このような方法では、流水や紫外線の影響によって短期間のうちに塗料が剥がれ落ちてしまう可能性が高く、再度の改修作業が必要になってしまうものであった。
【0005】
また、特許文献1に開示されているようなライニング板を使用して更生する方法がある。そして、特許文献1には、FRP(繊維強化プラスチック)製のライニング板を既設三面水路の底面部及び壁面部にスペーサを介して対向配置し、これらライニング板と既設三面水路との間に裏込材として無収縮モルタルを充填することが開示されている。
【0006】
この種の改修工法に使用されるライニング板としては、例えば下記の特許文献2に開示されているような金属製のもの(例えば鋼板にタールエポキシ樹脂を塗装したものやステンレス製のもの)も使用されている。
【特許文献1】特開2003−96750号公報
【特許文献2】特開2003−278135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
改修の対象となる既設水路が、現場でコンクリートを打って製作されたものの場合、寸法精度が良くないことがある。また、長年使用されることによって部分的な腐食や摩耗などが発生している場合がある。かかる場合には、既設水路の内面を基準としてライニング板を取り付けることができない。
特に、水路の曲部でライニング板を湾曲させて取り付けを行う場合には、正確な位置決めをしなければ、無理な力がかかった状態で固定されたりするので、うまく改修することができない。
【0008】
そこで、本発明は、作業性を低下させることなく水路の更生を行うことができるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、上記した目的を達成するための請求項1に記載の発明は、既設水路の内面を覆うように板状部材が配置され、既設水路と板状部材との間には固定部材が設けられ、既設水路と固定部材とが固定され、固定部材と板状部材とが固定されるものであり、固定部材は板状部材の固定位置に応じた厚みのものを用いて板状部材の位置決めを行うものであることを特徴とする更生水路の構造である。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、既設水路の内面を覆うように板状部材が配置され、既設水路と板状部材との間には固定部材が設けられて、固定部材は板状部材の固定位置に応じた厚みのものを用いて板状部材の位置決めを行うものであるので、板状部材の固定作業の作業性が良い。
【0011】
請求項2に記載の発明は、板状部材は複数のものが用いられ、板状部材の端部同士を合わせて合わせ目が形成されており、固定部材は板状部材の合わせ目に配置されるものであることを特徴とする請求項1に記載の更生水路の構造である。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、板状部材の端部同士を合わせた合わせ目に、固定部材が配置されているので、合わせ目のシール性をより向上させることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、板状部材は平板状であって湾曲することが可能なものであり、板状部材を湾曲した状態で既設水路の曲部に固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の更生水路の構造である。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、板状部材は平板状であって湾曲することが可能なものであり、板状部材を湾曲した状態で既設水路の曲部に固定されているものであるので、湾曲に加工する必要が無く、板状部材の加工を行いやすい。
【0015】
請求項4に記載の発明は、板状部材は長尺板状であり、板状部材の長尺方向を湾曲させて水路の流れ方向に沿う状態で固定されていることを特徴とする請求項3に記載の更生水路の構造である。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、板状部材の長尺方向を湾曲させて水路の流れ方向に沿う状態で固定されているので、既設水路に板状部材を固定する際に、板状部材の湾曲作業が行いやすい。
【0017】
既設水路と板状部材との隙間に、充填剤を充填することができる(請求項5)。
【0018】
請求項6に記載の発明は、既設水路を請求項1〜5のいずれかに記載の更生水路の構造とすることにより更生する水路の更生方法であって、固定部材の内側が板状部材の固定位置に合うように固定部材を既設水路に固定する工程と、固定部材に板状部材を固定する工程を有することを特徴とする水路の更生方法である。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、固定部材の内側が板状部材の固定位置に合うように固定部材を既設水路に固定する工程と、固定部材に板状部材を固定する工程を有するものであるので、板状部材の固定作業を行いやすく、
【0020】
請求項7に記載の発明は、既設水路の曲部に、平板状の板状部材を湾曲させた状態で既設水路の内面を覆うように位置決めしながら配置して、板状部材を固定することを特徴とする請求項6に記載の水路の更生方法である。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、既設水路の曲部に、平板状の板状部材を湾曲させた状態で既設水路の内面を覆うように位置決めしながら配置して、板状部材を固定するものであるので、曲部を有する既設水路の更生が行いやすい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、作業性を低下させることなく水路の更生を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下さらに本発明の具体的実施例について説明する。
本発明の更生水路1は、図1に示されるような既設水路90に、図2に示されるように、板状部材10を固定することにより既設水路90が更生されたものである。
【0024】
本実施形態で更生される既設水路90は、図1、図2に示されるように、底面部91と、底面部91の両側に形成される2ヵ所の壁面部92を有している。また、既設水路90には、曲部96を有しており、曲部96は上から見るとカーブして、曲部96の壁面部92は曲面状となっている。
既設水路90には、上から見ると直線状となっている図示しない直線部を有しており、曲部96と同様な方法で更生することができる。なお、本発明で更生される既設水路90は、他の形状のものでもよく、例えば、直線部だけのものや曲部96だけのものなどを更生してもよい。
【0025】
本発明で更生される既設水路90の用途は、特に限定されるものでなく、農業用水路、下水道用水路、工業用水の水路などに適用することができ、これらの既設水路90の更生を行うことができる。
【0026】
板状部材10は長方形の長尺板状であり、更生水路1には複数の板状部材10が用いられている。そして、板状部材10を固定する際には、既設水路90の内面を覆うように並べられて、板状部材10の端部を合わせて合わせ目44が形成されるように行われ、板状部材10が敷き詰められた状態となっている。また、板状部材10の配置は、長尺方向を更生水路1の流れ方向となるように配置されており、合わせ目44も更生水路1の流れ方向に向いている。
【0027】
また、曲部96の壁面部92に配置される板状部材10は平板状であるが、曲部96の曲がり方に合わせて湾曲させた状態で固定されている。そのため、既設水路90に直線部がある場合には、この直線部の壁面部92に用いられるものと同じものを用いることが可能であり、板状部材10の加工や更生水路1の施工作業を容易に行うことができる。
【0028】
本実施形態の板状部材10の材質は、ポリウレタン発泡樹脂を繊維強化したものが用いられている。そして、この繊維はガラス長繊維が用いられている。そのため、通常の木材と同様な加工を行うことができ、また、上記のように湾曲も可能であり、さらに、水が使用される場所で使用しても腐食しにくいものである。
また、板状部材10のガラス繊維の配向方向は、板状部材10の長尺方向となっている。
なお、板状部材10の材質は、限定されるものではなく、他のものを使用することができる。
【0029】
板状部材10の固定は、固定部材11を用いて行われる。固定部材11は、既設水路90と板状部材10との間に配置されるものであり、板状部材10は固定部材11を介して既設水路90に固定されている。本実施形態では、図4に示されるように、固定部材11と既設水路90とは、アンカーボルト20によって固定され、一方、固定部材11と板状部材10とはねじや釘など締結部材22によって固定されている。
【0030】
固定部材11は、図3に示されるように、所定の厚みを有する棒状の部材であり、複数のものが用いられている。また、固定部材11の厚みは、板状部材10の固定位置に応じた厚みのものが使用されており、固定部材11の内側の面が板状部材10の固定位置に合うように固定部材11を既設水路90に固定する。そのため、既設水路90の内面に凹みなどがあって、既設水路90の表面の位置に、ばらつきなどがあっても、板状部材10の位置合わせを容易に行うことができる。
【0031】
この固定部材11の厚みを変える方法は、厚みの異なる固定部材11を準備し、現場で選定することによって行うことができる。
また、固定部材11の材質は特に限定されるものでないが、板状部材10と同様に、ポリウレタン発泡樹脂を繊維強化した材料が用いられている。
【0032】
図3に示すように、壁面部92に固定される固定部材11は、長尺方向が縦方向となるように配置されている。そして、壁面部92を覆うように固定される板状部材10は、長尺方向が更生水路1の流れ方向に沿って配置されるので、板状部材10の長尺方向と固定部材11の長尺方向が交差する状態となっている。そのため、1個の固定部材11に、複数の板状部材10を固定することができる。
【0033】
また、図4に示されるように、固定部材11には貫通孔11aが設けられており、貫通孔11aにアンカーボルト20を挿入することによって固定部材11が既設水路90に固定される。具体的には、貫通孔11aと連通するように既設水路90にハンマードリルなどで穿孔し、既設水路90に形成された孔にカットアンカー21を挿入する。そして、固定部材11の内側からアンカーボルト20を挿入してカットアンカー21と螺合して固定部材11が固定される。
【0034】
この固定を行う場合、固定状態でアンカーボルト20の頭部20aが、固定部材11よりも突出しないように、貫通孔11aが段付き孔となっており、頭部20aが段部分に隠れて板状部材10の固定に邪魔にならないようになっている。なお、アンカーボルト20やカットアンカー21は、従来公知のものを用いることができる。
【0035】
板状部材10は、固定部材11に重ねるようにして、既設水路90の内面を覆うように配置される。そして、板状部材10は、長尺方向が流れ方向になるよう配置されており、長尺方向や長尺方向に垂直な方向に縦横に並べるように複数の板状部材10が配列している。板状部材10と固定部材11はコンクリートでなく、ポリウレタン発泡樹脂同士であるので、これらの固定には、ねじや釘などの締結部材22が用いられている。
【0036】
また、板状部材10同士の間は、ほぼ隙間無く配置され、板状部材10の端部同士の間に合わせ目44が形成されている。そして、この板状部材10同士の間の合わせ目44の位置が、固定部材11の位置に合わせられている。すなわち、板状部材10の長尺方向の両端の位置に合わせて、固定部材11が配置されている。
したがって、板状部材10が固定されると、固定部材11によって、板状部材10の合わせ目44部分のシール性を向上させることができ、更生水路1の耐久性を向上させることができる。
【0037】
板状部材10が固定されると、板状部材10と既設水路90との間に隙間25aが形成される。そして、この隙間25aに充填剤25が充填される。
【0038】
さらに、固定部材11は、板状部材10の固定やシール性の向上のためだけでなく、更生水路1が完成した後には、板状部材10の補強部材として機能するので、適宜、固定部材11を配置させることができる。
【0039】
底面部91での板状部材10の固定についても、壁面部92と同様な方法を採用することができる。
【0040】
次に、既設水路90を更生し、更生水路1を形成する方法について説明する。
まず、底面部91に板状部材10を固定し、その後に、壁面部92にも板状部材10を固定する。そして、これらの固定には、既設水路90に固定された固定部材11が用いられ、この固定部材11は厚みを合わせたものが用いられる。
【0041】
既設水路90の底面部91や壁面部92に板状部材10に固定した後に、底面部91や壁面部92と、板状部材10との間の隙間25aに充填剤25を充填する。この充填剤25は、裏込材等とも呼ばれるものであり、エアモルタルや無収縮モルタルなどが用いられる。なお、この充填剤25は他の材質のものを用いることができる。
【0042】
充填剤25は、底面部91及び壁面部92に板状部材10を配置した後に、底面部91や壁面部92に形成される隙間に充填しても良い。また、底面部91に板状部材10を配置した時点で、底面部91の隙間25aに充填剤25を充填し、その後、壁面部92に板状部材10を配置して壁面部92の隙間25aに充填剤25を充填することもできる。
【0043】
そして、充填剤25が固化し、壁面部92と壁面部92を覆うように配置される板状部材10の上側を覆うように、上面板26を固定して、更生水路1が完成する。
この上面板26は、板状部材10と同じ材質のものが用いられており、更生水路1の外観を見た目を綺麗にするものである。なお、上面板26は、板状部材10と同じ材質でなくてもよく、異なる外観のものを用いることができる。
【0044】
このように既設水路90を更生する方法では、既設水路90の内面の寸法精度が良くない場合にも、作業性が優れるものであり、更生水路1として使用することができる。特に、曲部96を有する既設水路90の場合に、板状部材10を湾曲させて取り付ける場合に有効な方法である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施形態の更生水路の更生前の既設水路を示した断面斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の更生水路を示した断面斜視図である。
【図3】図2に示す更生水路の一部を破断した斜視図である。
【図4】図3におけるA−A断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 更生水路
10 板状部材
11 固定部材
25 充填剤
25a 隙間
44 合わせ目
90 既設水路
96 曲部
【出願人】 【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
【出願日】 平成18年7月20日(2006.7.20)
【代理人】 【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆


【公開番号】 特開2008−25177(P2008−25177A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−198180(P2006−198180)