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【発明の名称】 有道床軌道の補修方法及びそれに使用される補修材充填装置
【発明者】 【氏名】村本 勝己

【氏名】中村 貴久

【要約】 【課題】道床にまくらぎが支持された有道床軌道において、セメントと粒状体が予め混合されている場合のような材料の分離を解消し、細粒土混入率の高い道床においても、軌道を効果的に補修する。

【解決手段】道床2にまくらぎ3が支持された有道床軌道において、道床2とまくらぎ3との間に、セメント5と粒状体6、及び水7を個別に送り込み、まくらぎ3の下においてセメント5と粒状体6、及び水7を混合する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道床にまくらぎが支持された有道床軌道において、前記道床と前記まくらぎとの間に、セメントと粒状体、及び水を個別に送り込み、前記まくらぎの下において前記セメントと粒状体、及び水を混合することを特徴とする有道床軌道の補修方法。
【請求項2】
セメントと粒状体を、水との混合前に混合し、その後、水と混合することを特徴とする請求項1に記載の有道床軌道の補修方法。
【請求項3】
前記まくらぎの下において、予め混合されたセメントと粒状体を噴射すると共に、水を噴射することを特徴とする請求項2に記載の有道床軌道の補修方法。
【請求項4】
請求項2、もしくは請求項3に記載の方法に使用される補修材充填装置であり、セメント、粒状体、及び水をそれぞれ貯留するセメントタンク、粒状体タンク及び水タンクと、それぞれに接続され、前記セメント、粒状体、及び水を前記まくらぎの下に供給するセメント移送管、粒状体移送管及び水移送管とを備え、前記セメント移送管と粒状体移送管はいずれか一方の先端の手前で合流し、一本化していることを特徴とする補修材充填装置。



【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は道床にまくらぎが支持された有道床軌道において、道床、もしくは道床を支持する路盤に沈下が生じたときに、まくらぎ下に発生した空隙に補修材を充填することにより軌道を補修する有道床軌道の補修方法、及びそれに使用される補修材充填装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道床(バラスト)上にまくらぎが支持された有道床軌道では、繰り返される輪荷重により道床、もしくは道床を支持する路盤に沈下が生じたときに、まくらぎ、またはまくらぎが直接載るてん充層と路盤との間に空隙が発生するため、この空隙を埋めることが必要になる。道床の沈下は路盤を構成する土粒子がせん断強度を失い、滑りを生ずることによって起こり、土粒子が小さい(細粒土混入率が高い)程、発生し易い。
【0003】
通常は空隙に砕石やコンクリート等を充填することが行われるが、空隙を完全に塞ぐことはできないことから、帯水時にてん充層が水みちを通じて流出する可能性があり、空隙の発生が繰り返されるため、効果的な補修方法とは言えない。
【0004】
これに対し、空隙にベントナイト等の高塑性材料を充填すると共に、セメントアスファルトモルタルを充填することにより、路盤上に路盤表面保護層を形成し、その上に空隙充填層を形成する方法を出願人は先に提案している(特許文献1参照)。この方法はベントナイトが空隙に面している道床中の砂をコーティングすることにより砂にせん断強度を付与し、空隙表面の崩壊を防止し、路盤表面保護層と併せて空隙の成長を阻止することを目的としている(段落0013〜0016)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−344475号公報(請求項2、段落0012〜0016、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は路盤表面保護層の形成により路盤土の流出を防止し、空隙充填層の形成によって空隙の成長を阻止する方法であるが、ベントナイトの粘着力では砂に十分な強度を付与することができないため、軌道沈下を防止するための有効な方法とは言い難い。実際に、特許文献1に記載の方法によりベントナイトコーティング砂を用い、道床への細粒土混入率の高い軌道の補修をしたところ、道床中の砂に強度を付与することができず、軌道沈下を長期的に防止する効果を得るに至らないことが判明した。これはベントナイト自体に固結性がないことによると考えられる。
【0007】
そこで、ベントナイトに代えてセメントを使用すれば、まくらぎ下に充填した砂が固結することが想定されるため、砂に長期的な耐久性を付与できると考えられる。但し、例えば砂とセメント及び水を混合し、スラリー状態でまくらぎの下に充填するとすれば、スラリーは固結しない限り、軌道を支持することができないため、一定(数日〜1ヶ月程度)の硬化時間の経過を待たなければならない。従って列車間合を利用し、短時間の内に施工を完了させることは難しく、硬化不良が生じたときの危険性が高い。
【0008】
移送管を通じて乾燥した砂とセメントを混合しながら、まくらぎ下に充填した後に、水を注入することも考えられる。この方法によれば、セメントが硬化するまでの間、砂粒子のせん断強度のみで、十分に軌道を支持することが可能であるため、短時間での列車間合でも安全に作業を遂行することができる。
【0009】
しかしながら、粒子形状や比重等の相違する砂とセメント粉体の混合物は分離し易く、移送管での圧送中に混合比にむらが生じ易いため、均一な混合比を保ったまま混合物を空圧で圧送することは困難である。移送管での圧送前に混合物を混合しておいても、圧送中にむらが生じることに変わりはない。
【0010】
特許文献1では砂粒子の表面にベントナイト粉末をコーティングする(付着させる)ことでこれらの問題を解決しているが、コーティングには水が不可欠となり、水を使用すればセメントが水と混合された時点で水和反応を起こし、砂と混合される前に単独で硬化し始める可能性がある。この場合、砂とセメントの充填後に両者の混合物に十分なせん断強度を発揮させることができなくなる。砂とセメントを乾燥状態で充填した後に水を散布しても、水を砂とセメントの混合物の内部にまで水を完全に浸透させることは難しいため、硬化不良や強度不足が生ずる恐れがある。
【0011】
本発明は上記背景より、細粒土混入率の高い道床においても、軌道を効果的に補修できる有道床軌道の補修方法及びそれに使用される補修材充填装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明の有道床軌道の補修方法は、道床にまくらぎが支持された有道床軌道において、前記道床と前記まくらぎとの間に、セメントと粒状体、及び水を個別に送り込み、前記まくらぎの下において前記セメントと粒状体、及び水を混合することを構成要件とする。粒状体には主に砂が使用されるが、固結により砂と同等の強度を発揮する材料全般が含まれる。セメントと粒状体、及び水の混合物である固結体が、まくらぎ下に発生した空隙に充填される補修材となる。
【0013】
道床とまくらぎとの間に、セメントと粒状体、及び水を個別に送り込むことで、まくらぎ下でセメントと粒状体が混合される。セメントはこの混合物の状態で水と反応して固結体を形成するため、セメントと粒状体が予め混合された状態でまくらぎ下に圧送される場合のような、粒子形状や比重等の相違による材料の分離がなくなる。
【0014】
またセメントと粒状体がまくらぎ下への充填時、または充填直前に水と混合されることで、セメントは粒状体との混合と同時に、またはほぼ同時に水和反応を起こすことができる。このため、セメントが粒状体と混合される前にセメントが水和反応を起こし、固結することによる硬化不良や強度不足の問題も解消される。
【0015】
セメントが粒状体と混合されると同時に、まくらぎ下で水と反応して固結体を形成することで、固結体が道床の一部となり、道床を構成する砕石と共にまくらぎを支持する能力を発揮する。請求項1では道床中の細粒土をセメントと水によって固結させるのではなく、補修材の充填と固結によって空隙を補修するため、細粒土混入率の高低に関係なく、軌道を効果的に補修することが可能になる。
【0016】
セメントは水と混合されることで水和反応を起こすことから、粒状体の強度を確実に発揮させる上では、水と混合される前に粒状体と十分に混合されていることが適切である。またまくらぎ下において、セメントと粒状体、及び水の三者が同時に混合されるとすれば、水がセメントと粒状体の混合物中に満遍なく行き渡るとは限らないため、セメントが固結する以前に粒状体と分離する可能性がある。
【0017】
そこで、請求項2に記載のようにセメントと粒状体を、水との混合前に混合し、その後に水と混合することにより、セメントと粒状体の分離が極力回避されるため、まくらぎ下に充填されたときに、セメントと粒状体が一体となった状態で両者の混合物を固結させることが可能になる。
【0018】
セメントと粒状体、及び水はまくらぎ下への充填時、または充填直前に混合されるため、セメントと粒状体が一体となった状態で固結するまでに時間を要することが想定される。これに対しては、請求項3に記載のようにまくらぎの下において、まくらぎ下へ向けて予め混合されたセメントと粒状体を噴射すると共に、水を噴射することによりセメントを粒状体と一体となった状態で早期に固結させることが可能になる。水が噴射されることで、混合物はスラリー状態にはならないため、固結までに数日〜1ヶ月の時間を要することはなく、混合物の固結を早めることが可能である。
【0019】
請求項2、もしくは請求項3に記載の方法は請求項4に記載の補修材充填装置によって実施される。
【0020】
補修材充填装置はセメント、粒状体、及び水をそれぞれ貯留するセメントタンク、粒状体タンク及び水タンクと、それぞれに接続され、前記セメント、粒状体、及び水を前記まくらぎの下に供給するセメント移送管、粒状体移送管及び水移送管とを備え、セメント移送管と粒状体移送管がいずれか一方の先端の手前で合流し、一本化している。セメント移送管と粒状体移送管がいずれか一方の先端の手前で合流し、一本化することで、セメントと粒状体を、水との混合前に混合し、その後、水と混合することが行われ、セメントと粒状体が十分に混合された状態で両者の混合物を固結させることになる。
【発明の効果】
【0021】
道床とまくらぎとの間に、セメントと粒状体、及び水を個別に送り込むため、セメントと粒状体が予め混合されている場合のような材料の分離を解消することができる。またセメントと粒状体はまくらぎ下への充填時、または充填直前に水と混合されるため、セメントが粒状体と混合される前に固結することによる硬化不良や強度不足の問題も解消することができる。
【0022】
まくらぎ下にセメントと粒状体、及び水を個別に送り込み、これらの混合物である固結体をまくらぎ下に形成することで軌道を補修するため、細粒土混入率の高低に関係なく、軌道を効果的に補修することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0024】
図1はバラスト等の道床2にまくらぎ3が支持された有道床軌道において、道床2とまくらぎと3の間に、セメント5と砂等の粒状体6、及び水7を個別に送り込み、まくらぎ3の下においてセメント5と粒状体6、及び水7を混合する有道床軌道の補修方法の施工要領を示す。道床2は路盤1に支持され、まくらぎ3上にレール4が固定されている。
【0025】
図1はまた、この方法に使用される補修材充填装置8を用い、道床2とまくらぎ3間に発生した空隙に、セメント1と粒状体6、及び水7を混合しながら充填をしている状況を示している。
【0026】
補修材充填装置8はセメント5、粒状体6、及び水7をそれぞれ貯留するセメントタンク9、粒状体タンク10及び水タンク11と、それぞれに接続され、前記セメント5、粒状体6、及び水7を前記まくらぎ3の下に供給するセメント移送管12、粒状体移送管13及び水移送管14とを備える。セメント移送管12と粒状体移送管13のいずれか一方は他方の先端の手前で合流し、一本化する。図1ではセメント移送管12の先端が粒状体移送管13の途中に接続し、粒状体移送管13に合流しているが、逆の場合もある。
【0027】
セメントタンク9、粒状体タンク10及び水タンク11にはコンプレッサー15から、それぞれに接続されたホース16を通じて圧縮空気が供給される。セメントタンク9、粒状体タンク10及び水タンク11内には空気が存在し、この空気中に圧縮空気が送り込まれることによりそれぞれからセメント5、粒状体6及び水7がセメント移送管12、粒状体移送管13及び水移送管14中へ排出される。
【0028】
圧縮空気の圧力は各ホース16に接続された圧力調整弁17によって調整されるが、セメント5等がまくらぎ3下へ供給されるまでの間に圧力の損失が生じないようにする上では、各移送管12、13、14の長さは1〜数mが適切である。
【0029】
水移送管14はセメント移送管12及び粒状体移送管13とは独立してまくらぎ3の下まで敷設される。セメント移送管12と粒状体移送管13を互いに独立させてまくらぎ3の下にまで敷設することもできるが、図1ではセメント5が水7と反応して固結する前に、セメント5と粒状体6が分離することがないよう、セメント移送管12の先端を粒状体移送管13の途中に接続し、両移送管12、13を一本化させている。
【0030】
セメント移送管12と粒状体移送管13が水移送管14の先端の手前で合流することで、セメント5と粒状体6が、水7との混合前に混合され、その後、水7と混合されることになる。セメント移送管12が粒状体移送管13に合流した箇所から、粒状体移送管13の先端までの距離はセメント5と粒状体6が十分に混合されることを見込んだ大きさが確保され、1〜2m程度が適切である。
【0031】
図1に示すように粒状体移送管13の先端と水移送管14の先端はまくらぎ3下に生じている空隙中に差し込まれる。この各移送管13、14の先端部分の拡大図を図2に示す。図2は特に粒状体移送管13の先端と、水移送管14の先端の位置関係を表す。粒状体移送管13の先端と水移送管14の先端にはそれぞれセメント5と粒状体6の混合物と水7を噴出するためのノズル13a、14aが接続される。
【0032】
粒状体移送管13の先端から噴出されるセメント5と粒状体6の混合物と、水移送管14の先端から噴出される水7がまくらぎ3の下で混合される上では、各移送管13、14先端の位置関係は問われない。
【0033】
但し、水7が粒状体移送管13先端の手前に当たり、ノズル13aの周りに水7が付着することによりノズル13aから噴出した直後に、セメント5と粒状体6の混合物が塊り状態になり、混合物にむらが生ずる可能性がある。このことから、図2では粒状体移送管13の先端を水移送管14の先端より後退させ、セメント5と粒状体6の混合物が、噴出された水7中に噴出されるようにしている。
【0034】
セメント5と粒状体6は全体として必ずしも均等に混合されている必要はなく、後述のように混合物に水が混合されて形成される固結体は破砕されることが想定されているため、固結体に強度の大きい箇所と小さい箇所が混在していても差し支えはない。
【0035】
水7とセメント5の混合比は硬化前後の強度を勘案して決定されるが、まくらぎ3下で混合物が硬化し、固結体となった後の支持能力の面からは3:1〜2:1程度の範囲が最適である。この範囲にあれば、混合物の固結体がまくらぎ3からの振動による衝撃等により適度の大きさ、例えば道床2を構成するバラスト程度の大きさに割れ、バラストと共にまくらぎ3を支持することができるようになる。図3はセメント5として急硬性セメントを使用した場合の、添加率の相違による沈下量の変化の様子を示す。
【0036】
図3に示すようにセメント5の添加率が20%を超える範囲からまくらぎ3の沈下を抑制する効果が表れることが分かる。添加率20%から40%までの曲線の勾配から、40%〜50%程度が理想的な添加量であると考えられる。添加率0は砂のみを充填した場合である。
【0037】
水7の添加量も混合物が充填される軌道の状態によって調整されるが、水移送管14から噴出された後の水7の量が前記した目標の水セメント比を満足するように設定される。
【0038】
セメント5には普通ポルトランドセメントの他、早強、もしくは超早強度セメント等が使用され、混和剤、もしくは混和材が添加されることもある。
【0039】
セメント5と粒状体6の混合物が水7と混合され、硬化してできる固結体は十分な圧縮強度とせん断強度を持つが、曲げと引張に対する強度が小さいことから、前記のようにまくらぎ3とバラストとの間で曲げや引張力を受けることで、適度の大きさに割れるか、破砕する。この結果、バラスト(砕石)の径程度の大きさにまで破砕するため、バラストとして機能することになる。従ってまくらぎ3下に固結体が存在しない通常のバラスト軌道と同様に、タイタンパーによる追加補修(整正)をすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】補修材充填装置を用いた有道床軌道の補修方法の施工要領を示した立面図である。
【図2】粒状体移送管の先端と、水移送管の先端の位置関係を示した図1の一部拡大図である。
【図3】急硬性セメントを使用した場合の、セメントの添加率とまくらぎの沈下量の関係を示したグラフである。
【符号の説明】
【0041】
1………路盤
2………道床
3………まくらぎ
4………レール
5………セメント
6………粒状体
7………水
8………補修材充填装置
9………セメントタンク
10……粒状体タンク
11……水タンク
12……セメント移送管
13……粒状体移送管
13a…ノズル
14……水移送管
14a…ノズル
15……コンプレッサー
16……ホース
17……圧力調整弁


【出願人】 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【出願日】 平成18年12月4日(2006.12.4)
【代理人】 【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之

【識別番号】100124316
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 康弘


【公開番号】 特開2008−138465(P2008−138465A)
【公開日】 平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願番号】 特願2006−326763(P2006−326763)