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【発明の名称】 高低変位調整用レール締結装置
【発明者】 【氏名】常松 伸章

【氏名】吉村 隆

【氏名】内田 秀明

【氏名】阿部 則次

【氏名】若月 修

【氏名】三宅 正太郎

【氏名】田島 正人

【要約】 【課題】高低変位を高さ調整用パッドにより調整しても、さらに、その調整高さを変化させても確実にレールを締結できる高低変位調整用レール締結装置を提供すること。

【解決手段】レール底部に係合する段部111を一端に備え、他端にクリップ受台200に当接するように円弧面112を備えたクリップ110と、このクリップ110の上面に配置される可変座金120と、軌道スラブ等の支持体に可変座金120を介してクリップ110を取り付ける締結ボルト190及び締結ナット180とを備えたレール締結装置100であって、クリップ110は、上面に円弧状の座金受部113と、この座金受部113に締結具190を挿通させる長孔114を備えるとともに、可変座金120は、平坦な上面121と、座金受部113に合致する円弧状の底面122と、クリップ110の長孔114に対応する長孔123を備えている高低変位調整用レール締結装置100。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール底部に係合する段部を一端に備え、他端にクリップ受台に当接する円弧面を備えたクリップと、該クリップの上面に配置される可変座金と、軌道スラブ等の支持体に前記可変座金を介して前記クリップを取り付ける締結ボルトまたは締結ボルト及び締結ナットからなる締結手段とを備えた高低変位調整用レール締結装置であって、
前記クリップが、上面に円弧状の座金受部と該座金受部に前記締結ボルトを挿通させる長孔とを備えているとともに、
前記可変座金が、平坦な上面と前記座金受部に合致する円弧状の底面と、前記クリップの長孔に対応する長孔とを備えていることを特徴とする高低変位調整用レール締結装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、レールを軌道スラブやコンクリート製まくらぎ等の支持体に締結するためのレール締結装置に関し、特に、高低変位を調整するように、パッドを敷設して高さを調整したレールを締結するための高低変位調整用レール締結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軌道スラブやコンクリート製まくらぎ等の支持体を用いた鉄道軌道では、レールの締結装置として、バネクリップとこのバネクリップを支持体に取り付ける締結ボルトとを用いた締結装置が使用されており、このバネクリップは、板バネの中間部を円弧状に屈曲させて上下二重構造とするとともに、締結ボルトによって支持体に取り付けできるように、上部を平坦部として、その上面が締結時に締結ボルトの軸線と直交する、すなわち、水平となるようにしている。
そして、中間部を支持体に設けた楔形のクリップ受台の円弧状のクリップ受面に当接させ、上部端部または上部端部及び下部端部をレールの底部上面及び側面に係合させて締結ボルトを締め付けることによって、レールを支持体に締結するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実用新案登録2511764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、地震等による路盤の変動によって、軌道スラブ等の支持体も上下及び左右方向にずれて、大きな高低変位や通り変位が発生し、列車の運行が困難となる。
そのため、このような変位を調整する必要があるが、通り変位は楔形のクリップ受台の位置を変えることによって調整し得るとしても、高低変位を調整するには、軌道スラブ等の支持体を復旧させなければならず、このような復旧工事は大工事となるため長期間を要し、早期の運転再開は困難であることから、復旧を早めるように、軌道スラブ等の支持体はそのままにして、上下変位を調整するように、高さ調整用パッドをレールの下に敷設してレールの高さを調整することも考えられるが、前述したバネクリップを用いた締結装置では、締結ボルトにより支持体に取り付けることができるように、締結時にバネクリップの上面が水平になるように構成しているため、レール高さが変わると、バネクリップ上面が傾斜した配置となるため使用することができないという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、地震等による路盤変動に基づく大きな高低変位を、高さ調整用パッドにより調整しても、さらに、その調整高さを変化させても確実にレールを締結できる高低変位調整用レール締結装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、レール底部に係合する段部を一端に備え、他端にクリップ受台に当接する円弧面を備えたクリップと、該クリップの上面に配置される可変座金と、軌道スラブ等の支持体に前記可変座金を介して前記クリップを取り付ける締結ボルト及び締結ナットとを備えた高低変位調整用レール締結装置であって、前記クリップが、上面に円弧状の座金受部と該座金受部に前記締結ボルトを挿通させる長孔とを備えているとともに、前記可変座金が、平坦な上面と、前記座金受部に合致する円弧状の底面と前記クリップの長孔に対応する長孔とを備えていることにより、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、クリップが、上面に円弧状の座金受部と該座金受部に前記締結ボルトを挿通させる長孔を備え、可変座金が、平坦な上面とクリップの座金受部に合致する円弧状の底面とクリップの長孔に連通する長孔を備えているので、可変座金は、クリップの取り付け角度に関わらず、上面が常に軌道スラブと平行、すなわち、締結ボルトの軸線と直交する方向となるように、円弧面に沿って変位できるため、高さ調整用パッドの敷設により高低変位を調整しても、さらに、厚みの異なる高さ調整用パッドの使用によって調整高さを変化させても確実にレールを締結できる。
また、クリップ受台に対向するクリップの当接面を、クリップ受台のクリップ受面に対応した円弧面としているので、クリップの取り付け角度が変化しても、クリップ受面の全面に当接できるため、クリップを介して加わるレールからの横圧を確実に受け止めることができる。
さらに、締結ナットの締め付けによる押圧力は、可変座金をクリップの座金受部を滑らせて上面が水平になるように移動させるため、精緻に可変座金をクリップ上に配置する必要がなく作業性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、レール底部に係合する段部を一端に備え、他端にクリップ受台に当接する円弧面を備えたクリップと、このクリップの上面に配置される可変座金と、軌道スラブ等の支持体に可変座金を介してクリップを取り付ける締結ボルトまたは締結ボルト及び締結ナットからなる締結手段とを備えた高低変位調整用レール締結装置であって、クリップが上面に円弧状の座金受部と、この座金受部に締結ボルトを挿通させる長孔を備えるとともに、可変座金が平坦な上面と、クリップの座金受部に合致する円弧状の底面と、クリップの長孔に対応する長孔を備えていることにより、地震等による路盤変動に基づく大きな高低変位を高さ調整用パッドにより調整しても、さらに、その調整高さを変化させても確実にレールを締結できれば、その具体的態様は如何なるものであっても構わない。
【0008】
すなわち、軌道スラブ等の支持体に可変座金を介してクリップを取り付ける締結手段は、六角ボルトのような締結ボルト単独であってもよく、また、植え込みボルトのような締結ボルトと締結ナットとの組み合わせであってもよい。
【0009】
クリップに設ける円弧状の座金受部と可変座金の円弧状の底面は、レール締結時に、クリップの取り付け角度に関わらず可変座金がレールに対して直交方向に変位して、その上面が上軌道スラブ等の支持体と平行、すなわち、締結ボルトの軸線と直交する方向となるようにできれば、その大きさや曲率半径は如何なるものであってもよいが、可変座金の円弧状底面を、クリップの座金受部よりも長くすると、可変座金がクリップの座金受部上を大きく変位しても、座金受部に対する当接面積の減少が抑制できるので、確実なレール締結を達成し得る。
また、クリップおよび可変座金に設ける長孔は、可変座金をクリップに配置した際に、これら長孔が連通してレール締結時に締結ボルトの挿通を阻害しなければ、その形状は長円状や長方形等何れのものであってもよく、その長さも任意であるが、可変座金の長孔をクリップの長孔よりも長くすると、クリップが大きく傾斜して取り付けられても、レールの締結が可能となるので、汎用性が向上する。
【0010】
以下、本発明を図面の実施例に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の一実施例に係る高低変位調整用レール締結装置によりレールを装着した鉄道軌道の斜視図であり、図2は、一方の高低変位調整用レール締結装置を断面図で示した図1の鉄道軌道の正面図であり、図3は、本実施例の高低変位調整用レール締結装置の一部を示した組立図であり、図4は、本実施例の高低変位調整用レール締結装置の残部を示した組立図であり、図5は、厚い高さ調整用パッドを用いた本発明の高低変位調整用レール締結装置の動作説明図であり、図6は、薄い高さ調整用パッドを用いた本発明の高低変位調整用レール締結装置の動作説明図である。
【0011】
図1に示すように、鉄道軌道は、高低変位を調整するための高さ調整用パッドBPが軌道スラブS上に敷設され、この調整用パッドBP上にレールパッドRPを介してレールRが載置され、このレールRを軌道スラブSに締結するように、本発明の高低変位調整用レール締結装置100が設けられている。
なお、高さ調整用パッドBPは、高低変位の調整量(調整高さ)に応じて、適宜厚みを変えて用いるものである。
【0012】
本発明の高低変位調整用レール締結装置100は、図2に示すように、クリップ110とクリップ110の上面に配置される可変座金120とを備えるものであって、軌道スラブSに設けられた雌ねじ孔(図示せず)に螺着した締結ボルト190に、クリップ110及び可変座金120が挿通され、レール底部を押圧するように配置されている。
また、可変座金120の上面には、カバープレート130、絶縁カラー140、第1の丸座金150、コイルスプリング160、第2の丸座金170が順に配置され、締結ボルト190の先端に螺着した締結ナット180を締め付けることによりレールRを締結している。
【0013】
クリップ110は、図2及び図3に示すように、ブロック体であって、レールRの底部上面R1及び側面R2と係合する段部111を一端に備え、軌道スラブSに配置されている楔状クリップ受台200の円弧状のクリップ受面201に当接する円弧面112を他端に備えており、さらに、上面には、円弧状の座金受部113と、この座金受部113に締結ボルト190を挿通させる長孔114とを備えている。
この長孔114は、クリップ110の傾斜角度や配置が異なっても締結ボルト190が当たって締結不能とならないように長くしたものである。
なお、本実施例のクリップ110は、通り変位も調整できるように、左右のクリップの長さを変えており、図2中、左のクリップ110の長さを右のクリップ110よりも短くしている。
【0014】
クリップ110の上面に配置される可変座金120は、平坦な上面121と、クリップ110の座金受部113に合致する円弧状の底面122とを備え、この底面122は、クリップ110に設けた座金受部113よりも長く形成されている。また、中央には、クリップの長孔114よりも長い長孔123が形成されている。
このように、底面122をクリップ110に設けた座金受部113よりも長く形成し、長孔123をクリップ110の長孔114よりも長くすると、クリップ110の傾斜角度が大きくなって、可変座金120の上面が水平になるように大きく変位しても、締結ボルト190が長孔123に当たることなく、底面122が座金受部113全域に当接できるため、レールRの締結を確実にすることができる。
【0015】
また、可変座金120の上面には、四角形状の開口131を有するカバープレート130を介して絶縁カラー140が配置され、この絶縁カラーは、多角形のフランジ141と中央から垂下した四角筒142とから構成され、この四角筒142は、カバープレート130の四角形状の開口131及び可変座金120の長孔123を挿通してクリップ110の長孔114内に延び、レールRと締結ボルト190の間の絶縁を確実にしている。
【0016】
さらに、図2及び図4に示すように、絶縁カラー140の上面には、レールRからの振動を吸収するように、第1の丸座金150を介してコイルスプリング160が配置されており、このコイルスプリング160は、上面161及び下面162を平坦に形成して安定性を確保している。
【0017】
そして、コイルスプリング160の上面に、第2の丸座金170を介して締結ナット180が締結ボルト190に螺着され、締結ナット180の締め付けにより、これらの部材を介してクリップ110がレールRを押圧して締結するようにしている。
【0018】
次に、本実施例の締結動作を図5及び図6で説明する。
ここで、図5は、大きい高低変位を厚い高さ調整用パッドで調整したものであり、図6は、小さい高低変位を薄い高さ調整用パッドで調整したものである。
図5及び図6に示すように、厚い高さ調整用パッドBPを用いた図5では、調整されたレールRの高さに応じて、クリップ110の水平軸線L2と締結ボルト190の軸線L1に対する傾斜角度θ1が鋭角となり、図6では、傾斜角度θ2が鈍角となっているように、レール高さが異なると、クリップの取り付け角度も異なるが、本発明のクリップ110は上面に円弧状の座金受部113を備え、可変座金120が、この座金受部113に合致する円弧状の底面122を備えているので、可変座金120の上面121(L3)は、この傾斜角度θ1、θ2に関係せず、常に締結ボルト190の軸線L2に対する角度が90°となるように変位するため、クリップ110の取り付け角度に関わりなくレールRを締結でき、その押圧力も締結ボルト190の軸線L1と平行に作用するため確実な締結を達成することができる。
【0019】
なお、本実施例では、支持体として軌道スラブSを用いているが、短マクラギ、長マクラギ等をコンクリートで固めた、所謂コンクリート直結軌道のような他の支持体を用いた場合においても、変状をきたした際には同様に適用可能である。
また、本実施例では、可変座金120と締結ナット180との間に、カバープレート130、絶縁カラー140、第1の丸座金150、コイルスプリング160、第2の丸座金170を介在させているが、本発明では、これら部材は必ずしも必要とするものではなく、その一部または全部を省略したり他の部材に変更する等、レールの取り付け状況に応じて適宜選択し得るものである。
【0020】
以上、詳述したように、本発明の高低変位調整用レール締結装置は、クリップが、上面に円弧状の座金受部と座金受部に締結ボルトを挿通させる長孔を備えているとともに、クリップ上面に配置する可変座金が、平坦な上面と座金受部に合致する円弧状の底面とクリップの長孔に対応する長孔を備えていることにより、地震等による軌道変動に基づく大きな高低変位を、高さ調整用パッドにより調整しても、さらに、その調整高さが変化しても確実にレールを締結できるので、早期の運転再開を可能とする等の顕著な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例に係る高低変位調整用レール締結装置を用いた鉄道軌道の斜視図。
【図2】一方の高低変位調整用レール締結装置を断面図で示した図1の鉄道軌道の正面図。
【図3】本実施例の高低変位調整用レール締結装置の一部を示した組立図。
【図4】本実施例の高低変位調整用レール締結装置の他部を示した組立図。
【図5】厚い高さ調整用パッドを用いた本発明の高低変位調整用レール締結装置の動作説明図。
【図6】薄い高さ調整用パッドを用いた本発明の高低変位調整用レール締結装置の動作説明図。
【符号の説明】
【0022】
100 ・・・ 高低変位調整用レール締結装置
110 ・・・ クリップ
111 ・・・ 段部
112 ・・・ 端部の円弧面
113 ・・・ 円弧状座金受部
114 ・・・ 長孔
120 ・・・ 可変座金
121 ・・・ 上面
122 ・・・ 円弧状底面
123 ・・・ 長孔
130 ・・・ カバープレート
131 ・・・ 開口
140 ・・・ 絶縁カラー
141 ・・・ フランジ
142 ・・・ 四角筒
150 ・・・ 第1の丸座金
160 ・・・ コイルスプリング
161 ・・・ 上面
162 ・・・ 下面
170 ・・・ 第2の丸座金
180 ・・・ 締結ナット
190 ・・・ 締結ボルト
200 ・・・ 楔状クリップ受台
201 ・・・ 円弧状受面
R ・・・ レール
R1 ・・・ レール底部上面
R2 ・・・ レール底部側面
S ・・・ 軌道スラブ
BP ・・・ 高さ調整用パッド
RP ・・・ レールパッド
【出願人】 【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】000216047
【氏名又は名称】鉄道軌材工業株式会社
【出願日】 平成18年11月6日(2006.11.6)
【代理人】 【識別番号】100111372
【弁理士】
【氏名又は名称】津野 孝

【識別番号】100132997
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 寛治

【識別番号】100119921
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 正之

【識別番号】100112058
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 厚夫


【公開番号】 特開2008−115609(P2008−115609A)
【公開日】 平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願番号】 特願2006−300092(P2006−300092)