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【発明の名称】 鉄道レールの制音構造
【発明者】 【氏名】島崎 俊也

【氏名】高山 桂一

【氏名】宇和野 良亮

【氏名】長沢 勤

【氏名】秋山 哲也

【要約】 【課題】ランニングコストが不要で、構造簡単な鉄道レールの制音構造を提供する。

【解決手段】遮音シート12と遮音カバー14とを積層してなる第1の遮音部材16を、鋼材からなる鉄道レール腹部10aの側面に当接しないように間隔を置いて対面し、かつ鉄道レール10の長さ方向に沿って配設した。遮音シート12は肉厚1.8mm程度の、ゴム状弾性を有するゴム又はプラスチック製シートである。遮音カバー14は、肉厚0.8mm〜1.2mmの鋼板を所定形状に折曲げ成形されてなる。遮音カバー14は、遮音シート12の形状を保持する役割もある。遮音シート12は、鉄道レール腹部10aの側面に対面する内側に配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮音シートと遮音カバーとを積層してなる第1の遮音部材を、鋼材からなる鉄道レールの腹部側面に当接しないように間隔を置いて対面し、かつ鉄道レールの長さ方向に沿って配設したことを特徴とする鉄道レールの制音構造。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道レールの制音構造において、
遮音シートと遮音カバーとを積層してなる第2の遮音部材を、前記鉄道レールの底部下面に当接し、かつ前記鉄道レールの長さ方向に沿って配設したことを特徴とする鉄道レールの制音構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の鉄道レールの制音構造において、
前記第1の遮音部材と前記第2の遮音部材とを一連続に連結したことを特徴とする鉄道レールの制音構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の鉄道レールの制音構造において、
前記第1の遮音部材および又は前記第2の遮音部材の遮音カバーの外面を押える固定具を配設したことを特徴とする鉄道レールの制音構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の鉄道レールの制音構造において、
前記第1の遮音部材の遮音カバーと前記鉄道レールの頂部との間に、ゴム緩衝部材を介在させたことを特徴とする鉄道レールの制音構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の鉄道レールの制音構造において、
前記鉄道レールの底部と、前記鉄道レールを枕木を介して支承している地面との間に、遮音シートと遮音カバーとを積層してなる第3の遮音部材を配設したことを特徴とする鉄道レールの制音構造。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、列車の急曲線通過時に発生する高周波のきしり音を低減するのに好適な鉄道レールの制音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、列車の急曲線通過時に発生する高周波のきしり音が問題になっており、その低減が望まれている。きしり音は、鉄道レールと列車の車輪が特殊な状況下におかれたときに発生するものであるが、現状ではその現象を明快に説明できる理論は出現していない。従来からきしり音を低減するための対策が講じられているが、決定的なきしり音低減手段がなかった。例えば、比較的有効な手段としてレール塗油器の設置があり、これは広く採用されている。また、鉄道レールの側部側面に防音材を長さ方向に沿って貼着することにより鉄道騒音を減少する方法も考えられている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−152801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記レール塗油器はその設置に費用がかかり、設置後はメンテナンスが必要でランニングコストがかかることから、容易に設置できない。また、塗油器は列車の運転に支障をきたすおそれがあるため急勾配区間や駅付近などでの使用が制限されており、設置できない区間も多い。また、鉄道レールの側部側面に防音材を貼り付ける方法は、防音効果があまりよくなく所定の騒音防止効果を出すためには防音材の構成が複雑になりコストアップになる。
【0004】
本発明は以上の点に着目してなされたもので、ランニングコストが不要で、構造簡単な鉄道レールの制音構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の各実施例においては、それぞれ次のような構成により上記の課題を解決する。
〈構成1〉
遮音シートと遮音カバーとを積層してなる第1の遮音部材を、鋼材からなる鉄道レールの腹部側面に当接しないように間隔を置いて対面し、かつ鉄道レールの長さ方向に沿って配設したことを特徴とする鉄道レールの制音構造。
【0006】
第1の遮音部材を、鉄道レールの腹部側面に当接しないように間隔を置いて配設していることにより、鉄道レールの腹部の振動音を遮音するので良好な制音効果が得られる。特に、列車の急曲線通過時に発生する高い高周波のきしり音を低減するのに効果的である。
【0007】
〈構成2〉
構成1に記載の鉄道レールの制音構造において、遮音シートと遮音カバーとを積層してなる第2の遮音部材を、上記鉄道レールの底部下面に当接し、かつ上記鉄道レールの長さ方向に沿って配設したことを特徴とする鉄道レールの制音構造。
【0008】
鉄道レールの底部下面から地面の深さ方向に出る振動音を効果的に遮音する。
【0009】
〈構成3〉
構成1又は2に記載の鉄道レールの制音構造において、上記第1の遮音部材と上記第2の遮音部材とを一連続に連結したことを特徴とする鉄道レールの制音構造。
【0010】
遮音部材の取付け手間を短縮でき、さらに良好な制音効果を発揮する。
【0011】
〈構成4〉
構成1〜3のいずれかに記載の鉄道レールの制音構造において、上記第1の遮音部材および又は上記第2の遮音部材の遮音カバーの外面を押える固定具を配設したことを特徴とする鉄道レールの制音構造。
【0012】
〈構成5〉
構成1〜4のいずれかに記載の鉄道レールの制音構造において、上記第1の遮音部材の遮音カバーと上記鉄道レールの頂部との間に、ゴム緩衝部材を介在させたことを特徴とする鉄道レールの制音構造。
【0013】
ゴム緩衝部材により、鉄道レールから遮音カバーに振動音が伝わることを防止できると共に雨水等の水の浸入を防止できる。
【0014】
〈構成6〉
構成1〜5のいずれかに記載の鉄道レールの制音構造において、上記鉄道レールの底部と、上記鉄道レールを枕木を介して支承している地面との間に、遮音シートと遮音カバーとを積層してなる第3の遮音部材を配設したことを特徴とする鉄道レールの制音構造。
【0015】
各枕木間の空洞から側方に出る、鉄道レールの振動音を効果的に遮音する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を実施例ごとに詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は本発明の鉄道レールの制音構造の一実施例を示す断面図、図2は同実施例の側面図である。
これらの図において、符号10は、鋼材からなる鉄道レールを示している。鉄道レール10の腹部10aの両側面に、遮音シート12と遮音カバー14とを積層してなる第1の遮音部材16が鉄道レール10の長さ方向に沿って配設されている。
【0018】
第1の遮音部材16は、2組用意され、それぞれ遮音シート12を内側、遮音カバー14を外側にして、かつ鉄道レールの腹部10aの側面に当接しないように間隔を置いて対面するように配置されている。さらに、第1の遮音部材16と同じ構造の第2の遮音部材20が、鉄道レール10の底部下面に当接し、かつ鉄道レール10の長さ方向に沿って配設されている。
【0019】
第1の遮音部材16および第2の遮音部材20の各遮音シート12としては、肉厚1.8mmの合成ゴム板が使用されている。遮音カバー14としては、遮音シート12を覆うコ字状に折曲げ成形した肉厚1.2mmの鋼板が用いられている。
【0020】
遮音シート12は合成ゴム以外のゴム、又はゴム状弾性を有するプラスチックの板体でもよい。また、遮音カバー14は、例えば、肉厚0.8mm〜1.2mmの鋼板を所定形状に折曲げ成形したもので、鉄道レールの腹部10aからの振動音を遮音すると共に、遮音シート12の形状を保持する役割もある。
なお、遮音シート12および遮音カバー14の各肉厚は、上記の数値にこだわらない。適宜必要な肉厚に設計される。第1の遮音部材16および第2の遮音部材20としては、複数枚の遮音シート12と遮音カバー14を交互に積層して構成したものでもよい。
【0021】
第1の遮音部材16、および又は第2の遮音部材20の遮音カバー14の外面は、固定具22により押えられている。固定具22は、鋼板等からなる板体を遮音カバー14の外面に合わせて折曲げ成形したもので、鉄道レール10の長さ方向に適当な間隔を置いて配置され、ビス24により遮音カバー14に固定されている。
【0022】
第1の遮音部材16の遮音カバー14と鉄道レール10の頂部との間に、必要に応じてゴム緩衝部材26が介装されている。ゴム緩衝部材26は、遮音カバー14と鉄道レール10に密着され、鉄道レール10から遮音カバー14に振動音が伝わることを防止すると共に、第1の遮音部材16の内側に雨水等の水が浸入するのを防止する。
【0023】
上記実施例1によれば、第1の遮音部材16を鉄道レールの腹部側面に当接しないように間隔を置いて配設していることにより、鉄道レールの腹部の振動音を遮音するので良好な制音効果が得られる。特に、列車の急曲線通過時に発生する高い周波数のきしり音を低減するのに効果的である。
【実施例2】
【0024】
図3は本発明の第2の実施例を示す断面図である。図1に示した部分と共通する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
この実施例では、2組の第1の遮音部材16のうち、一方(図中左側)の第1の遮音部材16と第2の遮音部材20とが一連続に連結されている。これは、鉄道レール頂部10bの側面から鉄道レール底部10cの側面に延在し、さらに同底部10cの下面に当接するように配置されている。さらに、第2の遮音部材20の一端部と、他方(図中右側)の第1の遮音部材16の下端部が接合され、ビス34で止められている。従って、遮音カバー14は図1の固定具22と同一機能を奏する。
【0025】
第1の遮音部材16は鉄道レールの腹部10aの側面に当接しないように間隔を置いて対面している。第1の遮音部材16と第2の遮音部材20とは鉄道レール10の長さ方向に沿って配設されている。第1の遮音部材16と第2の遮音部材20とを一連続に連結したことにより、遮音部材の取付け手間を短縮できる。
【0026】
第1の遮音部材16および第2の遮音部材20の各遮音シート12としては、肉厚1.8mmの合成ゴム板が使用されている。遮音カバー14としては、遮音シート12を覆い、かつ鉄道レール10の寸法に合わせてコ字状に折曲げ成形した、肉厚0.8mmの鋼板が用いられている。
【実施例3】
【0027】
図4は本発明の第3の実施例を示す断面図である。図3に示した部分と共通する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
この実施例は、上記第2の実施例とは、第1の遮音部材16の、鉄道レール10の頂部と接する部分の端部構造が相違している。すなわち、第1の遮音部材16の遮音カバー端部14aをゴム部材で一体に包覆したもので、これが実施例1のゴム緩衝部材26と同一機能を奏する。その他の構成は上記第2の実施例と同様である。
【0028】
第1の遮音部材16および第2の遮音部材20の各遮音シート12としては、肉厚1.8mmの合成ゴム板が使用されている。遮音カバー14としては、遮音シート12を覆うコ字状に折曲げ成形した肉厚0.8mmの鋼板が用いられている。
【実施例4】
【0029】
図5の(a)は本発明の第4の実施例を示す断面図、(b)は同実施例で使用する固定具を示す側面図である。図1に示した部分と共通する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
この実施例は、上記実施例1とは、第1の遮音部材16および第2の遮音部材20の外側を押える固定具の構造が相違している。すなわち、第1の遮音部材16を押える固定具36と第2の遮音部材20の外側を押える固定具38とに分離した構成とされている。
【0030】
固定具36は、第1の遮音部材16の外側に沿う斜面部36aと、この斜面部36aに連なり、かつ鉄道レール底部10cの側面を覆う鉤型端縁部36bとから形成されている。図5(b)に示すように、斜面部36aには、取付ボルト40を取付けるための長孔37が設けられている。取付ボルト40は固定具36と第1の遮音部材16とを貫通し両者を固定する。
【0031】
固定具38は、固定具36の鉤型端縁部36bに嵌合される鉤型端縁部38aと、この鉤型端縁部38aに連なり、かつ第2の遮音部材20の外側に沿う平面部38bと、この平面部38bに連なり、かつ垂直に折り曲げられた垂直端縁部38cとから形成されている。図5(b)に示すように、垂直端縁部38cに、取付ボルト42を取付けるための長孔39が2つ横並びで設けられている。
【0032】
2つの固定具36、38の2組を、鉄道レール10の両側面と底部10cを覆う第1の遮音部材16および第2の遮音部材20の外側に配置し、取付ボルト40と取付ボルト42でそれぞれ締め付けることにより固定される。その他の構成は上記実施例1とほぼ同様である。
【実施例5】
【0033】
図6は本発明の第5の実施例を示す断面図である。
この実施例は、鉄道レール10の底部10cと、鉄道レール10を枕木28を介して支承している地面30との間に、第1の遮音部材16と同様の遮音シート12と遮音カバー14とを積層してなる第3の遮音部材32を配設したものである。第3の遮音部材32は、枕木28によって仕切られる地面30と鉄道レール10との間の空洞(図示せず)を遮蔽するように、鉄道レール10の長さ方向に沿って断続的に配設される。第3の遮音部材32を配設したことにより、各枕木28間の空洞から側方に出る振動音を効果的に遮音する。
【0034】
図7は、制音手段を使わない鉄道レール(従来例)と、遮音部材を施した鉄道レール(上記実施例1〜3)を用意し、残響室にてそれぞれの鉄道レール上面の中央点に剛球を落下し、模擬的騒音を発生させ、発生した騒音レベルを騒音計にて測定し、周波数分析した比較データを示した図である。データは5回試験を行い、その平均値とした。その測定値を図7(a)に示し、それをグラフ化して同(b)に示した。
【0035】
列車の急曲線通過時に発生するきしり音は、1KHz〜10KHzの高い周波数域の音であるが、図7に示すように、実施例1〜3の騒音レベルは、特に6KHz〜8KHzの高い周波数域で、従来例に比べて低下している。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の鉄道レールの制音構造の一実施例を示す断面図である。
【図2】同実施例の側面図である。
【図3】本発明の第2の実施例を示す断面図である。
【図4】本発明の第3の実施例を示す断面図である。
【図5】本発明の第4の実施例を示す断面図である。
【図6】本発明の第5の実施例を示す断面図である。
【図7】本発明の鉄道レールの制音構造と制音手段を使わない鉄道レールの各周波数に対する騒音レベルを示す図である。
【符号の説明】
【0037】
10 鉄道レール
12 遮音シート
14 遮音カバー
16 第1の遮音部材
20 第2の遮音部材
22 固定具
24 ビス
26 ゴム緩衝部材
28 枕木
30 地面
32 第3の遮音部材
【出願人】 【識別番号】306013119
【氏名又は名称】昭和電線デバイステクノロジー株式会社
【識別番号】596025652
【氏名又は名称】埼玉ゴム工業株式会社
【出願日】 平成18年10月13日(2006.10.13)
【代理人】 【識別番号】100102923
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雄二


【公開番号】 特開2008−95408(P2008−95408A)
【公開日】 平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願番号】 特願2006−279406(P2006−279406)