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【発明の名称】 スラブ式軌道における補修方法
【発明者】 【氏名】小澤 元

【氏名】村田 吉隆

【要約】 【課題】充填層や路盤や駆動スラブに対する補修充填材の付着性を良くし、劣化した充填材の削り取り量を少なくしても補修した充填材が外側へ飛び出さず環境保護に適するものにし、作業能率を向上させる。

【構成】劣化したセメントアスファルトモルタル32を除去し、軌道スラブ14の側方を剥離シート42を介して型枠36で囲み、型枠36の軌道スラブ14に対向する面に設けた上方に開く切欠き40に剥離シート42を押し広げることにより注入口48を形成し、注入口48からラジカル硬化性を有する合成樹脂を基材とし無機系骨材を混合し前記基材の硬化剤を添加した補修用充填材50を注入し、注入後に型枠36の切欠き40に埋め板36Bを上から挿入して養生硬化し、型枠36および剥離シート42を取外す。またプライマーを用いることにより、雨天下での補修用充填材50の注入作業を可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート路盤にセメントアスファルトモルタルを挟んで軌道スラブを固定し、前記軌道スラブに軌道レールを保持したスラブ式軌道における補修方法において、
(a)劣化した前記セメントアスファルトモルタルを前記軌道スラブの周囲から水平方向の適宜深さまで除去することにより空隙を形成する:
(b)前記空隙を側面から塞ぐように前記軌道スラブの側方を剥離シートを介して型枠で囲む;
(c)前記型枠の前記軌道スラブに対向する面に設けた上方に開く切欠きに前記剥離シートを押し広げることにより剥離シートと軌道スラブ側面との間に上方に向かって開く注入口を形成する;
(d)前記注入口から前記空隙に、ラジカル硬化性を有する合成樹脂を基材とし無機系骨材を混合し前記基材の硬化剤を添加した補修用充填材を注入し、注入後に前記型枠の切欠きに埋め板を上から挿入して養生硬化し、
(e)前記補修用充填材の硬化後に前記型枠および剥離シートを取外す、
以上の工程a〜eの工程を順に行うことを特徴とするスラブ式軌道における補修方法。
【請求項2】
請求項1の工程(a)の次に以下の工程(a−1)、
(a−1)コンクリート路盤の軌道スラブ側面下方付近を削って凹部を形成する;
を加えるスラブ式軌道における補修方法。
【請求項3】
請求項1の工程(a)の次に以下の工程(a−2)、
(a−2)前記空隙の内面にプライマーを塗布する;
を加えるスラブ式軌道における補修方法。
【請求項4】
請求項1の工程(a)の次に以下の工程(a−1)および(a−2′)、
(a−1)コンクリート路盤の軌道スラブ側面下方付近を削って凹部を形成する;
(a−2′)前記空隙の内面および前記凹部にプライマーを塗布する;
を加えるスラブ式軌道における補修方法。
【請求項5】
請求項1において、工程(d)のラジカル硬化性を有する合成樹脂はポリエステルアクリレートを主成分とする合成樹脂であるスラブ式軌道における補修方法。
【請求項6】
請求項1の工程(d)で用いる補修用充填材は、ポリエステルアクリレートと、その硬化剤と、無機系骨材とを混練したものであるスラブ式軌道における補修方法。
【請求項7】
補修用充填材は、ラジカル硬化性合成樹脂と無機骨材とを重量比で100:50〜200の比率で含む請求項1のスラブ式軌道における補修方法。
【請求項8】
一対の軌道レールは1つの軌道スラブに対してそれぞれ少なくとも6個の締結具で締結され、請求項1の工程(b)で用いる型枠は前記軌道スラブの両端から2番目の締結具付近に設けた2つの注入口とこれらの間に設けた1〜2個の注入口とを有する請求項1のスラブ式軌道における補修方法。
【請求項9】
補修用充填材は、その粘度が20℃において2000mPa・s以下で、可使時間が10分以上である請求項1のスラブ式軌道における補修方法。
【請求項10】
プライマーはウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ラジカル硬化性を有する合成樹脂のいずれかである請求項3または4のスラブ式軌道における補修方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリート構造物の路盤上にセメントアスファルトモルタルを挟んで軌道スラブを固定し、この軌道スラブに軌道レールを保持したスラブ式軌道において、セメントアスファルトモルタルが劣化によって割れ、剥離、脱落するのを補修するスラブ式軌道における補修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートで構築した高架建造物とか、地下構造物や橋梁などを路盤とし、このコンクリート路盤上にセメントアスファルトモルタルを挟んでコンクリート製の軌道スラブを固定し、この軌道スラブに軌道レールを直結した構造のスラブ式軌道が広く採用されている。
【0003】
図11はスラブ式軌道の構造を一部断面して示す斜視図である。この図11において符号10はコンクリート路盤であり、この路盤10の上面には、レール敷設方向に沿って所定間隔(例えば5m間隔)ごとに円柱形の突起12が突出している。符号14は軌道スラブであり、これら軌道スラブ14の端部に形成した半円形の切欠き部16を前記突起12に位置合わせしながら順次並べられる。そしてこの軌道スラブ14を専用の器具で持ち上げ位置調整した後、路盤10と軌道スラブ14との間にセメントアスファルトモルタル(以下CAモルタルともいう)を注入充填し充填層18とするものである。
【0004】
CAモルタルは、セメントとアスファルト乳剤と、細骨材とを混合したものである。このCAモルタルは、路盤10の突起12と軌道スラブ14の切欠き部16との間にも充填されている。軌道スラブ14の上面には軌道レール20が締結具22により固定される。左右の軌道レール20は1つの軌道スラブ14に対しそれぞれ8個ずつの締結具22で固定される。
【0005】
充填層18には、軌道レール20の温度変化による伸縮応力が軌道スラブ14を介して加わり、列車の通過や遠心力による外力が軌道スラブ14を介して加わる。このため充填層18の劣化・疲労が進む。また寒冷地では充填層18にしみ込んだ水が凍結・融解するため、その繰り返しにより充填層18は劣化が進み、その周辺の露出部分から割れや剥離や脱落が発生する。このため比較的短期間のうちに充填層18の補修が必要になる。
【0006】
従来より、充填層の劣化部分を削り取った後、ポリウレタン系樹脂補修材料を充填する補修方法が提案されている。例えば、財団法人鉄道総合研究所の編集・発行に係る「スラブ軌道各部補修の手引き」(平成10年5月1日第2版)、第II章(合成樹脂によるてん充層および突起周辺部補修の手引き)には、この従来方法が示されている。
【0007】
しかしこの方法で用いる補修材料は特に湿潤時に、路盤と軌道スラブの間に残っている充填層や、路盤および軌道スラブとの付着性が悪く、補修した充填材(以下補修充填材ともいう)が路盤と軌道スラブの間から外側へ飛び出してくるという問題があった。特に劣化した充填材を軌道スラブの外側から浅く削り取った(除去した)場合、例えば50mm程度の深さまで削り取った場合には、補修した充填材が外へ飛び出し易い。この補修充填材の飛び出しは確実に防止しなければならない。
【0008】
このため充填層は劣化していない部分を含めて十分に深く(例えば100mm以上)削り取る必要が生じる。しかし削り取った充填材は産業廃棄物となるために、この廃棄物処理量が増えるばかりでなく、補修する充填材の使用量も増えることになり望ましくない。また充填層の削り取る量が増えるので削り取り(除去)の作業時間が長くなり、作業効率も低下する。
【0009】
【特許文献1】特開2002−129503
【0010】
特許文献1には、軌道スラブの側面から斜め下方に、軌道スラブと填充層を貫通し路盤コンクリートに至る孔(モルタル注入口、空気抜き口)を形成し、この孔から二液室温硬化型ラジカル重合性樹脂を注入する補修方法が示されている。この方法は軌道スラブ下方の填充層の全面に渡って補修材を流入させるものであり、硬化した補修材は孔に係合しているので軌道スラブの外側へ飛び出すのは防止できると思われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしこの引用文献1に示された方法では軌道スラブ下にできる隙間と孔の位置とが必ずしも対応していないから、充填材を隙間に正確に注入できるわけではない。また軌道スラブに側面から斜め下方に孔を形成するため、軌道スラブの強度低下を招くおそれがあり、孔の加工作業が面倒でもある。
【0012】
この発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、充填層や路盤や駆動スラブに対する補修充填材の付着性が良く、特に補修箇所が湿っている場合(湿潤時)にも付着性がよく、施工条件(雨天など)の影響を受けることなく安定した付着性を得ることができ、そのため劣化した充填材の削り取り量を少なくしても補修した充填材が外側へ飛び出さず、削り取り量を少なくすることにより産業廃棄物量を少なくし、補修充填材の使用量を少なくして環境保護に適するものにすると共に、作業能率を向上させることができ、また軌道スラブに孔を加工することによる軌道スラブの強度低下を招くおそれもない補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明によればこの目的は、コンクリート路盤にセメントアスファルトモルタルを挟んで軌道スラブを固定し、前記軌道スラブに軌道レールを保持したスラブ式軌道における補修方法において、(a)劣化した前記セメントアスファルトモルタルを前記軌道スラブの周囲から水平方向の適宜深さまで除去することにより空隙を形成する:(b)前記空隙を側面から塞ぐように前記軌道スラブの側方を剥離シートを介して型枠で囲む;(c)前記型枠の前記軌道スラブに対向する面に設けた上方に開く切欠きに前記剥離シートを押し広げることにより剥離シートと軌道スラブ側面との間に上方に向かって開く注入口を形成する;(d)前記注入口から前記空隙に、ラジカル硬化性を有する合成樹脂を基材とし無機系骨材を混合し前記基材の硬化剤を添加した補修用充填材を注入し、注入後に前記型枠の切欠きに埋め板を上から挿入して養生硬化し、(e)前記補修用充填材の硬化後に前記型枠および剥離シートを取外す、以上の工程a〜eの工程を順に行うことを特徴とするスラブ式軌道における補修方法、により達成される。
【発明の効果】
【0014】
補修用の充填材として用いるラジカル硬化性を有する合成樹脂は流動性に富み、路盤と軌道スラブと、これらの間に挟まれたセメントアスファルトモルタルの充填層との接着力が非常に強く湿潤時の接着力も十分大きい。このため充填層(CAモルタル)の劣化した部分を周囲から削り取る(除去する)場合に、削り取り深さを浅くして削り取り量を少なくしても補修した充填材が外側へ飛び出すことがない。
【0015】
また削り取る量が少なくてすむので産業廃棄物量が少なくなり、補修に使う充填材の使用量も少なくなる。このため環境保護に適することになる。さらに削り取り量が少なく、補修する充填量も少なくなるので、作業能率の向上にも適することになる。
【0016】
この方法は削り取りによりできた空隙を側面から剥離シートを介して型枠で囲み、型枠の内面(軌道スラブに対向する面)に設けた上向きに開く切欠きに剥離シートを押し広げて注入口とし、この注入口から間隙内に補修用充填材を注入する。このため、軌道スラブに孔を加工する必要がなく、軌道スラブの加工による強度低下を招くおそれもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
請求項1において、工程(a)の次に以下の工程(a−1)、
(a−1)コンクリート路盤の軌道スラブ側面下方付近を削って凹部を形成する;
を加えることができる(請求項2)。この場合には補修用充填材の一部がこの凹部に流入して硬化するから、硬化した充填材とコンクリート路盤との機械的な結合強度が増大する。このため路盤および軌道スラブと充填材との接着力の増大と共にこの充填材と凹部の機械的結合力の増大とが図れることになり、補修した充填材の飛び出しを一層確実に防止することができる。
【0018】
請求項1において、工程(a)の次に以下の工程(a−2)、
(a−2)空隙の内面にプライマーを塗布する;
を加えることもできる(請求項3)。この場合に用いるプライマーとしては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ラジカル硬化性を有する合成樹脂のいずれかが適する(請求項10)。このプライマーにはセメント粉を混合したものであってもよいが、充填材との付着性が良好で、作業性の良い一液湿気硬化型ウレタン樹脂が最適である。このように充填材の注入前にプライマーを塗布することにより、この空隙を形成する路盤および軌道スラブの表面が雨水や夜露などで漏れている場合にも充填材との接着強度を十分に増大させることができる。
【0019】
このため例えば工程(a)で古い劣化したセメントアスファルトモルタルを削り取る作業中や削り取った作業後に雨が降り出したり、モルタルの削り取り作業日より後の充填材を流入する予定日に雨が降る場合にも、充填材の流入作業日を変更することなく予定通り施行することが可能になる。すなわち本発明に用いる補修用充填材は基本的に路盤および軌道スラブとの湿潤時の接着力が大きいものであるが、接着面に雨水が付着しているなどの場合には接着強度がある程度低下するのは止むを得ない。しかしプライマーを塗布することにより、この接着強度の低下を十分に抑制することができる。
【0020】
また請求項1において、工程(a)の次に以下の工程、
(a−1)コンクリート路盤の軌道スラブ側面下方付近を削って凹部を形成する;
(a−2′)前記空隙の内面および前記凹部にプライマーを塗布する;
を加えることもできる(請求項4)。この場合には、プライマーによって充填材と路盤および軌道スラブとの接合強度を増大すると共に、路盤に形成した凹部と充填材との物理的、機械的な係合を強くすることにより、充填材の飛び出しを一層確実に防ぐことができる。
【0021】
請求項1における工程(d)のラジカル硬化性を有する合成樹脂は、ポリエステルアクリレートを主成分とする合成樹脂が適する(請求項5)。このポリエステルアクリレートは、より具体的には、無溶剤型ビニルエステル樹脂や変性MMA(メチルメタアクリレート)が最適である。接着力が強く耐久性も向上するからである。ポリエステルアクリレートを主成分とする合成樹脂としてポリエステルアクリレートのみを用いてもよい(請求項6)。
【0022】
補修用充填材は、ラジカル硬化性合成樹脂と無機骨材とを重量比で100:50〜200の比率で含むものがよい(請求項7)。この場合は圧縮強度およびばね特性を所定条件を満たすのに適し、しかも耐久性に優れ、比較的安価でもある。無機骨材は硅砂が望ましい。硅砂はラジカル硬化反応を阻害せず、入手し易く安価であるからである。なお無機系骨材としては、硅砂に代えてあるいは硅砂と共に混ぜて、ボーキサイト等の天然鉱産物、磁器やセラミックス等の焼成物、貝殻などを粉砕したもの、高炉スラッグなどを用いることができる。
【0023】
型枠に設ける注入口の数は1つの軌道スラブの一側に対して3〜4個とするのがよい。例えば軌道スラブに対して各レールを6個以上の締結装置で締結する場合には、軌道スラブの長手方向の両端から2番目の締結装置付近にそれぞれ設けた注入口と、その間に設けた1〜2個の注入口とする(請求項8)。このようにすると軌道スラブの下に充填材が円滑かつ均一に注入することが解った。
【0024】
なお補修用充填材粘度が、20℃において2000mPa・s以下とすれば注入時の流動性が良くスラブの下に円滑に流入する。またこの時の可使時間、すなわち硬化が始まるまでであって施工可能な時間を10分以上とすれば、施工に都合がよい(請求項9)。
【0025】
軌道スラブの外周を型枠で囲む前に、充填層の劣化した部分を削り取った(除去した)空隙をガスバーナなどのバーナーによって加熱し、空隙内の除湿処理を行ってもよい。注入する補修用充填材と、空隙内の路盤、軌道スラブおよび充填層(CAモルタル)との接着強度を一層向上させ、また空隙内の加熱により注入した補修用充填材の硬化をさらに促進させることができるからである。
【実施例1】
【0026】
図1は補修方法の概念を示す平面図、図2は劣化した充填層の削り取り(除去)例を示す平面図、図3は削り取り作業例を示す図、図4の(A)〜(C)は型枠の配置と補修用充填材の注入工程の説明図、図5の(A)〜(B)は補修液の養生工程の説明図である。また図6は作業工程図である。
【0027】
図1においては前記図11と同一部分に同一符号を付した。硬化したCAモルタルからなる充填層18は外周から劣化が進むので、軌道スラブ14の外側から劣化した充填材を削り取る。図1で斜線部分32がこの劣化した充填材の除去範囲である。
【0028】
図2(A)の斜線部分は基本的な除去範囲32Aを示し、図2(B)の斜線部分は部分的な除去範囲32Bを示す。除去範囲32(32A、32B)は軌道スラブ14の4隅付近で深く、隅以外で浅い。劣化充填材の削り取り(除去)作業は、図3に示すように行うことができる(図6のステップS100)。この図3は、作業者が先端に切削ビットを取付けた振動式削り機(ハツリ機)を用いて先端を充填層18を外側から削り取る(ハツリ)様子を示すものである。
【0029】
削り量(ハツリ量)は、現場の劣化状況にあわせて決める。図2(A)は側面に沿って通常の深さ(100mm)に削り、隅付近をさらに深く削るものである。図2(B)は、4隅付近を通常より浅い深さ約50mmに削り、劣化の少ない側面を約10〜50mmの深さに削る。劣化した充填材(劣化CAモルタル)を削り取り除去した後にできる空隙34(図4のA参照)は補修用充填材の注入部となる。
【0030】
次にこの空隙(注入部)34を清掃し、ガスバーナーを用いて乾燥させる(ステップS102)。そして軌道スラブ14の側面に型枠36を当てて固定する(ステップS104)。この型枠36の設置に先立って、軌道スラブ14の側面に養生ガムテープ38を貼り付け、後記する補修用充填材が付着するのを防ぐ。型枠36は2枚の木材の板36A、36Bを重ねて密着させたものであり(図4(A)参照)、内側の板36Bは図1に示すように3ヶ所が切欠かれ、これらの切欠き40が後記する注入口48となるものである。
【0031】
軌道レール20は軌道スラブ14の長さ範囲内で6個以上好ましくは8個の締結具22(図11参照)で締結されるが、この場合には、切欠き40は、軌道スラブ14の両端から2番目の締結具22付近と、これらの2つの締結具22の間に1または2ヶ所設けるのがよい。図1の実施例では片側の型枠36に対して3つの切欠き40を設ける。型枠36は剥離シート42を挟んで例えば軌道スラブ14や路盤10に固定された治具(図示せず)によって軌道スラブ14の側面に密着するように固定される。剥離シート42は、例えばポリエチレンシートであり、後記する補修用充填材50が型枠36に付着するのを防ぐ。
【0032】
型枠36の下縁にはウレタンスポンジ44が取付けられ、型枠36の設置によりこのウレタンスポンジ44が剥離シート42を路盤10の上面に強く押し付けられ、補修用充填材50が漏れ出るのを防いでいる。なお型枠36は、その内面が軌道スラブ14の側面に密着するように設置される。またレール20の長手方向に隣接する軌道スラブ14の間隙には、注入する補修用充填材50が流入して軌道スラブ14同士が固着されないようにエラスタイト(商品名)などの分離板46(図1)を挟んでおく。
【0033】
このようにして型枠36の設置を行う一方、補修用の充填材50とするためにビニルエステル樹脂とその硬化剤と骨材とを混練し攪拌しておく(ステップS106)。ビニルエステル樹脂は、例えば出願人が販売する「アレンロックS」(商品名)が適する。この場合硬化剤としては、出願人が販売する「パーカドックスCH−50L」(商品名)が適する。骨材としては硅砂8号が適する。これらは重量比で、ビニルエステル樹脂と硬化剤と骨材の混合比が約100:3:100となるようにするのがよい。この場合には混練物である補修用充填材50は20℃で10〜15分で硬化する。この硬化時間(可使時間)を考慮して樹脂の準備と型枠36の設置とを併行して行う。
【0034】
一方型枠36の切欠き40には、離型シート42を外側へ引き上げて押し広げることによって、剥離シート42と軌道スラブ14との間に上方に向かって開く注入口48を形成する(図4の(B)参照)。このように上方に開いた注入口48に前記のように予めまたは併行して混練しておいた補修用充填材50を注入する(ステップS108)。この時注入口48付近の剥離シート42で流れ方向を案内しながら、補修用充填材50を空隙34に導く。また注入口48から、補修用充填材50が軌道スラブ14の外周全体に亘って注入されていることを確認する。図4(A)、(B)で50は注入した未硬化の補修用充填材を示す。
【0035】
補修用充填材50が軌道スラブ14の全周に亘って空隙34に流入したことを確認してから、剥離シート42の外側から注入口48に埋め板52を埋める(図5の(A)参照、ステップS110)。この埋め板52は型枠36の切欠き40に上方から挿入されて型枠36の内面(軌道スラブ14の側面に対向する面)を平滑にする。この状態で補修用充填材50が硬化するのを待つ(ステップS112)。図5(A)で50Aは硬化した補修用充填材50が空隙34(図4(A)参照)を埋めた状態を示している。この硬化した補修用充填材50Aは、図1、図2(A)、(B)に斜線で示した空隙32、32A、32Bを埋める。補修用充填材50の硬化を待って、型枠36を取外し(ステップS114)、周囲を清掃する(ステップS116)。
【実施例2】
【0036】
図7は本発明の他の実施例の作業工程図である。この実施例は、前記実施例1における工程S102とS104の間に次の工程、すなわち空隙(注入部)34の内面にプライマーを刷毛などで塗布する工程(S103)を加えたものである。
【0037】
ここに用いるプライマーとしてはウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ラジカル硬化性を有する合成樹脂のいずれか、またはこれにセメント粉を混合したものが適する。なおこの場合補修用充填材は前記実施例1で用いたもの、すなわちビニルエステル樹脂とその硬化剤と骨材とを混練し攪拌したものである。以下の工程S104〜S116は前記実施例1と同じである。
【0038】
この実施例2によれば、補修用充填材50Aの接触面に予めプライマーが塗布されているので、充填材の注入後に雨が降ったり結露により空隙(注入部)34内面に水が付着していても、コンクリート路盤10および軌道スラブ14に塗布されたプライマーについた水は、比重の重い補修用充填材50Aで押しのけられてプライマーと一体化するため、補修用充填材50Aと空隙34の内面すなわちコンクリート路盤10および軌道スラブ14との結合強度が低下しない。このため補修した充填材が外側へ飛び出すおそれがない。
【実施例3】
【0039】
図8は本発明の他の実施例を説明するための一部破断平面図、図9はそのIX-IX線断面位置での施工方法を示す図、図10は作業工程図である。この実施例は、前記実施例1における工程S100の次に次の工程、すなわちコンクリート路盤の軌道スラブ側面下方付近を削って凹部60を形成する工程S101と、工程S102の次に次の工程、すなわち前記空隙(注入部)34の内面および前記凹部60にプライマーを塗布する工程(S103A)とを追加したものである。
【0040】
工程S101において凹部60は、図3に示すように、劣化CAモルタル(充填層)18の削り作業(S100)に続けて、先端に切削ビットを取付けた振動式削り機を用いて路盤10の表面を削ることにより形成する。凹部60は図8に示すように、軌道スラブ14の左右両側面下方付近にそれぞれ3箇所ずつ設ける。凹部60の数はもっと多くてもよく、左右両側に例えば4箇所ずつ設けてもよい。
【0041】
工程S102では空隙(注入部)34の内面および凹部60に残る削りくずを清掃し、ここを乾燥する。そして工程S103Aではこの注入部34の内面および凹部60にプライマーを塗布する。ここで用いるプライマーは実施例2と同様にウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ラジカル硬化性を有する合成樹脂のいずれか、またはこれにセメント粉を混合したものが適する。以下の工程S104〜S116は前記実施例1,2と同じである。
【0042】
すなわち図9に示すように、養生ガムテープ38,剥離シート42,型枠36などを設け、図示しない注入口48(図4(B)参照)から補修用充填材50を注入する。この補修用充填材50は空隙34および凹部60に注入して硬化する。補修用充填材50が硬化してから型枠36などを除去する。
【0043】
この実施例3によれば、空隙34および凹部60にプライマーを塗布してから補修用充填材50を注入するので、プライマーを塗布した状態で1日の工事を終わらせ、後日補修用充填材50を注入する時に雨が降っていたり、空隙34や凹部60に雨水や結露が付着していても、空隙34や凹部60に補修用充填材50が強い接合力で接合する。また硬化した補修用充填材50は凹部60に機械的に係合している。このため硬化した補修用充填材50は前記実施例1,2よりも一層強く空隙34内に保持され、一層外へ飛び出しにくくなる。
【実験例1】
【0044】
次に接着面が濡れている場合にプライマを用いることによる接着力増大効果について説明する。コンクリート板の上に各種湿潤状態で補修用充填材を填充し、付着強度を測定した。試験体は表面の乾燥状態(湿潤状態)の違いによって次の4種類作成した。
a.表面が乾燥している状態
b.表面が濡れているが水は溜まっていない状態
c.表面に水浮きがある状態
d.表面に10mm程度水が溜まった状態
【0045】
ここで用いる補修用充填材は例えば、ポリエステルアクリレートと、その硬化剤と、無機系骨材とを前記実施例1で示した混合比で混合したものを用いる。
【0046】
【表1】


【0047】
表1はプライマーを用いず、またコンクリート表面に凹部を形成しない場合(前記実施例1に対応する)の引張り強度の実測例を示す。破壊状態としては補修用充填材は乾燥状態aではコンクリートとの素地破壊となり表面から剥がれることはないが、湿潤状態(b〜d)ではコンクリート表面に水がしみこんでいるため表面からの界面破壊となっている。強度の低下については乾燥状態のaに比較してb、cの状態では85〜80%程度の付着強度を保持している。dの状態では水と置換して下地と付着しているが約55%の付着力保持となっている。
【実験例2】
【0048】
次に前記実験例1において、コンクリート板の表面にプライマーを塗布してから補修用充填材を填充した場合の付着強度を測定した。すなわちコンクリート板上に各種湿潤状態でプライマーを塗布し、硬化後に付着強度を測定した。
【0049】
【表2】


【0050】
この表2の実験では、コンクリート表面が湿潤状態でプライマーを塗布したものであり、この時には付着強度は小さく、特に補修用充填材をプライマーなしで直接施工したものとのメリットは得られない。そこで乾燥状態でプライマーを塗布し、湿潤状態で補修用充填材を填充した時の付着性を検討することとした。
【0051】
乾燥状態のコンクリート表面に各種プライマーを塗布し、硬化後水を10mm溜めた状態で充填材を填充し付着強度を測定した。表3はその結果を示す。
【0052】
【表3】


【0053】
以上の結果からプライマーの利点としては、事前にCAモルタルハツリ作業時に降雨がなければ、プライマーを塗布しておけば当日降雨によりコンクリート表面が濡れた状態でも下地との付着力を十分確保できる施工が可能と考えられる。この場合のプライマーとしては、下地破壊となり最も強い強度を示す特殊ウレタンプライマーが最適である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】空隙の深さおよび型枠の設置状態を示す平面図
【図2】劣化充填層の削り取り状況を示す平面図
【図3】劣化した充填層の削り取り作業例を示す図
【図4】型枠の配置と補修用充填材の注入工程の説明図
【図5】補修液の養生工程の説明図
【図6】作業工程図
【図7】実施例2の作業工程図
【図8】実施例3の凹部の位置を示す一部断面平面図
【図9】図8におけるIX-IX線位置での型枠配置説明図
【図10】実施例3の作業工程図
【図11】スラブ式軌道の構造を示す一部断面斜視図
【符号の説明】
【0055】
10 路盤
14 軌道スラブ
18 充填層(セメントアスファルトモルタル)
20 軌道レール
22 締結具
32(32A、32B) 劣化した充填材の除去範囲
34 空隙
36 型枠
40 切欠き
42 剥離シート
48 注入口
50 補修用充填材
50A 硬化した補修用充填材
52 埋め板
60 凹部
【出願人】 【識別番号】595006762
【氏名又は名称】株式会社アレン
【識別番号】000192844
【氏名又は名称】神東塗料株式会社
【出願日】 平成19年8月3日(2007.8.3)
【代理人】 【識別番号】100082223
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 文雄

【識別番号】100094282
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 洋資


【公開番号】 特開2008−57318(P2008−57318A)
【公開日】 平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願番号】 特願2007−203106(P2007−203106)