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【発明の名称】 軌道用通り整正装置
【発明者】 【氏名】宇都木 禎

【氏名】簗瀬 和清

【氏名】久慈 聡

【氏名】畠 良記

【氏名】阿部 貞雄

【要約】 【課題】小返りの発生を防止して効率的に精度よく整正作業を行える起動用通り整正装置を提供する。

【構成】基準側レール把持片を有する基準側レール把持部材11と、整正側レール把持片を有する整正側レール把持部材12とがそれぞれ取り付けられた整正装置本体10と、該整正装置本体10に設けられ、先端部を整正側レール把持片に連結したピストンロッド14aを往復動させる油圧シリンダ14とを有する軌道用通り整正装置において、整正側レール把持片は、その先端部で整正側レール底部2bを両側から把持するようにしたものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準側レール把持片を有する基準側レール把持部材と、整正側レール把持片を有する整正側レール把持部材とがそれぞれ取り付けられた整正装置本体と、該整正装置本体に設けられ、先端部を整正側レール把持片に連結したピストンロッドを往復動させる油圧シリンダとを有する軌道用通り整正装置において、
前記整正側レール把持片は、その先端部で整正側レール底部を両側から把持するようにしたことを特徴とする軌道用通り整正装置。
【請求項2】
前記基準側レール把持片は、その先端部で基準側レール底部を両側から把持するようにしたことを特徴とする請求項1記載の軌道用通り整正装置。
【請求項3】
前記ピストンロッドの整正側レール把持片への連結位置は、把持片先端部より上部側にあり、整正側レール把持部材は、直動ガイドを介して整正装置本体に取り付けられていることを特徴とする請求項1または2記載の軌道用通り整正装置。
【請求項4】
両端にレール上を移動するための走行車輪を有する車軸が整正装置本体に平行に2本のアームを介して連結されるとともに、2本のアームに伸縮移動ハンドルがそれぞれ取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の軌道用通り整正装置。
【請求項5】
補助車輪の取り付け部が、レール把持片のレール頭部及びレール底部に対応する位置に設けられ、該取り付け部に補助車輪が着脱自在に取り付け可能であることを特徴とする請求項4記載の軌道用通り整正装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道軌道の軌間及び通りの狂いを整正する軌道用通り整正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軌道の通り整正を行う場合、予め検測車による計測走行によって得られた左右一対のレールの通りデータに基づいて、その整正地点を把握し、軌間ゲージによる計測を行いながら、人手により2.5mの間隔で±数mmの軌間通りの整正を行っていたが、人手による整正作業では、多人数の労力を必要とし、限られた時間内での作業には限界があった。
【0003】
この対策として、レール上を走行しながら通り整正する装置が提案されているが、装置が大型化して大重量となり、整正地点までの搬送等に問題があった。そこで、通り整正用の各種機構を搭載し、かつ装置全体の小型化を計り、レール上を走行しながら通り整正する装置を本出願人は既に提案している(特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−314101号報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の整正装置のように小型化を図ったとは言え、レール上を走行しながら通り整正を行う従来の装置では、新幹線のような高架線が多い軌道内への搬入箇所は、例えば20kmに1箇所程度と限られてしまっていた。
【0005】
また、従来の装置では、レール頭部を把持して油圧シリンダでレールを動かし、整正を行っているため、レールの小返りが発生する場合があり、精度よく通り整正できないという問題があった。この点について、図3により説明する。
図3はレール上を走行する整正装置による通り整正を説明する図である。
図3(a)において、基準側レール1は計測データに基づいた整正作業で正しい位置にあるものとする。この基準側レール1と整正側レール2に跨がって整正装置3をセットし、フック3aで基準側レール1の頭部を、フック3bで整正側レール2の頭部を掴むようにする。フック3a、3bでレール頭部を把持するのは、整正装置がレール上を走行した時にフック3a、3bがレールの両側にあるレール締結装置4、固定用ボルト5等に当たらないようにするためである。このようにフックでレール頭部を掴むことにより、走行しながらの整正作業を可能にしている。
【0006】
図3(b)に示すように、整正位置において、整正装置3に設けられた図示しない手動ポンプで油圧シリンダを駆動し、レール頭部のみ掴んでフック3bを押し引きすると、必ずしもレール全体が平行移動せずにレール頭部が傾く小返りが発生し、精度よく通り整正することができない。整正に際しては整正側レール2の締結装置は緩めるものの、レール自体の弾性、レール底面に設けられた弾性ゴムパッド等のために小返りが発生する。レールを2mm移動させたい場合に、油圧シリンダで3mm移動させたことを計測器で確認した後、油圧を解除して締結装置を締めると、例えば、小返り分で2mm程戻ってしまい、結局、1mmしか移動したことにならず、そのため、さらに整正作業をやり直さなければならない。従来では経験的に小返り分を考慮して手動による油圧駆動で多めにレールを移動させて最終的に目標範囲におさまるようにしているが、熟練を必要とするとともに、整正作業に時間がかかってしまうことになる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決しようとするもので、装置の軽量化を図るとともに、小返りの発生を防止して熟練を必要とせずに効率的に精度よく整正作業を行えるようにすることを目的とする。
本発明は、基準側レール把持片を有する基準側レール把持部材と、整正側レール把持片を有する整正側レール把持部材とがそれぞれ取り付けられた整正装置本体と、該整正装置本体に設けられ、先端部を整正側レール把持片に連結したピストンロッドを往復動させる油圧シリンダとを有する軌道用通り整正装置において、前記整正側レール把持片は、その先端部で整正側レール底部を両側から把持するようにしたことを特徴とする。
また、本発明は、前記基準側レール把持片が、その先端部で基準側レール底部を両側から把持するようにしたことを特徴とする。
また、本発明は、前記ピストンロッドの整正側レール把持片への連結位置が、把持片先端部より上部側にあり、整正側レール把持部材は、直動ガイドを介して整正装置本体に取り付けられていることを特徴とする。
また、本発明は、両端にレール上を移動するための走行車輪を有する車軸が整正装置本体に平行に2本のアームを介して連結されるとともに、2本のアームに伸縮移動ハンドルがそれぞれ取り付けられていることを特徴とする。
また、本発明は、補助車輪の取り付け部が、レール把持片のレール頭部及びレール底部に対応する位置に設けられ、該取り付け部に補助車輪が着脱自在に取り付け可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、構成の簡単化と軽量金属の採用によって軽量化を図り、高架線に対しても階段から搬入可能となり、また、レール底部を両側から把持して整正するようにしたため小返りが発生せず、レール頭部から底部までが平行に移動して熟練を必要とせずに効率的に精度よく整正作業を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の整正装置を説明する図で、図1(a)は平面図、図1(b)は正面図である。
整正装置本体10は両側に基準側レール把持部材11、整正側レール把持部材12がそれぞれ取り付けられるとともに、油圧シリンダ14を有している。基準側レール把持部材11は基準側レール1の頭部1aからレール両側に垂下する把持片でレール底部1bを両側から把持するフック11aを有しており、その根本部分はボルト等により整正装置本体10に固定されている。整正側レール把持部材12は、整正側レール2の頭部2aからレール両側に垂下する把持片でレール底部2bを両側から把持するフック12aを有しており、その根本部分はスライドベリング等からなる直動ガイド13を介して整正装置本体10に取り付けられており、全体にアルミ等の軽量金属を使用し、レール把持部材等の力のかかる部分はジュラルミン製として、本実施例では装置全体として30kg程の超軽量化を達成している。この程度の重量であれば、新幹線のような高架線の場合でも、階段から軌道内へ搬入することが可能であり、従来のように軌道内へ搬入する箇所が限定されてしまうことはない。また、整正装置本体10は絶縁部材19を境にその両側間を絶縁してレール間を電気的に短絡しないようにしている。
【0010】
油圧シリンダ14により往復動するピストンロッド14aの先端は、フック12aのレール内側の把持片に対して、その先端部より上側の位置で連結されている。これはレール底部にはタイプレートやコンクリート等があるために、少なくともこれらを避けられる高さ分だけ上側の位置としている。そのためピストンロッド14aのフック12aに対する連結位置(力点)と、レール底部を把持する把持片先端(作用点)との間には所定の距離があるため、油圧シリンダ14でピストンロット14aを押し引きしたときに、把持片に曲げモーメントが加わり、ひいてはピストンロッド14aに対しても曲げ負荷が加わる。油圧シリンダは曲げ力に対して弱いため、整正側レール把持部材12は直動ガイド13を介して整正装置本体に取り付けられており、曲げようとする力が働いても整正側レール把持部材12は直動ガイド13に対して滑るため油圧シリンダに対して曲げ負荷が加わらないようにしている。
【0011】
油圧シリンダ14は、ポンプ操作ハンドル16を矢印で示すように上下動させて圧力メータ18で圧力をチェックしながら手動で油圧ポンプ15を駆動することで動作し、前後進切り換えバルブ17の切り換えに応じてピストンロッドが往動または復動する。なお、油圧ポンプ15は所定圧力以上の圧力は逃がすリリーフバルブ内蔵のものである。
【0012】
整正装置本体10の前側には、平行に車軸30が2本のアーム32で整正装置本体10に連結され、車軸30の両端にはレール上を移動するための走行車輪31が取り付けられている。また、2本のアーム32には、それぞれ伸縮移動ハンドル33が取り付けられ、このハンドルを伸ばした状態でハンドルを持ち上げると、フック11a、12aがレールから外れて締結装置4などによる障害なしに走行車輪31によりレール上を移動可能となり、また、ハンドルは縮めて納められるようになっている。なお、この車軸にも絶縁部材34が設けられてレール間を電気的に短絡しないようにしている。
【0013】
また、フック11aのレール頭部1a、フック12aのレール頭部2aに対応する位置には補助車輪取り付け部20が、フック11aのレール底部1b、フック12aのレール底部2bに対応する位置には、補助車輪取り付け部21がそれぞれ設けられていて、補助車輪23が着脱自在に取り付けられるようになっている。補助車輪23がレール頭部の取り付け部に取り付けられた状態では、伸縮移動ハンドル33を水平位置にした状態で走行車輪31と補助車輪23で装置全体がレール上に支持される。補助車輪23をレール底部の取り付け部21に取り付けた状態は、伸縮移動ハンドル33を持ち上げて補助車輪23をレール上に載置すると、フック11a、12aはレールから外れて締結装置4などによる障害なしに走行車輪31と補助車輪23とでレール上を移動可能となる。
【0014】
次に、走行車輪と補助車輪による装置の移動状態を説明する図2を参照しながら本装置の作用について説明する。
図2(a)は伸縮移動ハンドル33を水平位置にして走行車輪31と補助車輪23とで装置全体をレール上に支持した整正作業時を示している。整正作業時には、作業区間の整正側レールの締結装置4をあらかじめ緩めておき、基準側レール1の底部1bと整正側レール2の底部2bをフック11a、12aの把持片先端部でレールの両側から把持し(図1(b))、ポンプ操作ハンドル16により手動でポンプ15を駆動し、油圧シリンダ14によりピストンロッド14aを往動または復動して整正側レールを動かす。このとき、レール底部に力が作用するため従来のように小返りが起こることなく、レールは平行移動して容易に整正位置にもたらされる。なお、この移動量は図示しない計測器とパソコン画面で確認できるようになっている。また、ピストンロッド14aにより連結点でフック12aへに加わる力とレール底部との間に発生する曲げモーメントは直動ガイド13で吸収されて油圧シリンダに曲げ負荷が作用することはない。なお、基準側レールはその締結装置4を緩めることはないので、フック11aによる把持はレール頭部としても可能であるが、整正側レールと同じようにレール底部を把持するようにするのが好ましい。
【0015】
図2(b)はポンプ操作ハンドル16を持ち上げて、フック11a、12aをレールから外して締結装置4などによる障害なしに走行車輪31による移動時を示している。上記したように、ポンプ操作ハンドル16は、整正装置本体10と車軸を連結しているアーム32に取り付けられるため、これを持ち上げることで走行車輪を支点に矢印Aに示すように整正装置本体10を持ち上げることができ、矢印Bに示すようにレール上を移動可能となる。
【0016】
図2(c)は図2(b)の状態で矢印Cに示すように、補助車輪23をレール頭部の取り付け部20からレール底部の取り付け部21に付け替え、ハンドルを少し下ろして走行車輪31と補助車輪23とで移動可能にした状態を示している。この場合もフック11a、12aがレールから外れ、締結装置4などによる障害なしに走行車輪31と補助車輪23とで矢印D方向へ移動でき、この場合はハンドルを持ち上げておく労力は必要とせずに単に押すだけで移動可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明によれば、小返りの発生を防止して効率的に精度よく整正作業を行えるので産業上の利用価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の整正装置を説明する図である。
【図2】走行車輪と補助車輪による移動状態を説明する図である。
【図3】従来のレール上を走行する整正装置による通り整正を説明する図である。
【符号の説明】
【0019】
1…基準側レール、2…整正側レール、10…整正装置本体、11…基準側レール把持部材、12…整正側レール把持部材、11a,12a…フック、13…直動ガイド、14…油圧シリンダ、14a…ピストンロッド、15…油圧ポンプ、16…ポンプ操作ハンドル、23…補助車輪、30…車軸、31…走行車輪、33…伸縮移動ハンドル。
【出願人】 【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
【識別番号】504249905
【氏名又は名称】株式会社畠茂商店
【出願日】 平成18年8月23日(2006.8.23)
【代理人】 【識別番号】100092495
【弁理士】
【氏名又は名称】蛭川 昌信

【識別番号】100119220
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 武彦

【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志

【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣


【公開番号】 特開2008−50790(P2008−50790A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2006−226271(P2006−226271)