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【発明の名称】 合成枕木
【発明者】 【氏名】峰 岸 健

【要約】 【課題】(1)繊維束を積層した場合に上下左右方向に離して配置できる形状とし、(2)繊維束の突出部の下側への突出量が突出部の厚さに依存しないようにし、(3)母材樹脂が硬化して発泡し膨張しても、繊維束が互いに離れて疎とならず均一な分布状態が得られる、合成枕木を提供する。

【構成】本発明による合成枕木は、複数本の強化繊維からなる繊維束を分散させて、その周囲を母材樹脂で硬化させた合成枕木であって、繊維束は、繊維束の長手方向に湾曲され扁平状に押し潰された膨出部が所定の間隔で設けられており、繊維束が枕木製造用の金型に製品仕様の高さ以上に積層され、母材樹脂である発泡剤を含む硬質ウレタン液を所定量投入後、製品仕様の高さまで圧縮して成形される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の強化繊維からなる繊維束を分散させて、その周囲を母材樹脂で硬化させた合成枕木であって、前記繊維束は、前記繊維束の長手方向に湾曲され扁平状に押し潰された膨出部が所定の間隔に設けられており、前記繊維束が枕木製造用の金型に製品仕様の高さ以上に積層され、母材樹脂である発泡剤を含む硬質ウレタン液を所定量投入後、前記製品仕様の高さまで圧縮して成形されることを特徴とする合成枕木。
【請求項2】
前記繊維束を長手方向に湾曲させる所定の半径の凸部が、前記繊維束の長手方向と直交する方向に伸びる上加圧駒と、前記凸部に対応する凹部を有する下加圧駒が、相互に係合して押圧されることにより、前記膨出部が成形されることを特徴とする請求項1に記載の合成枕木。






【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道線路用の枕木に係り、より詳細には、複数本の強化繊維からなる繊維束を積層し、これを母材樹脂で固めた合成枕木に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道線路用の枕木は、木材やコンクリートのものが広く使用されている。しかし、木材は雨などに対する耐久性に劣り、コンクリートは耐久性に優れるが、重くて防振性や防音性に劣る。そこで、木材やコンクリートに替わる枕木として、硬質ウレタン樹脂などを母材樹脂として、ガラス長繊維の繊維束で強化した合成枕木が製品化されている。合成枕木及びその製造方法は特許文献1に詳しい。
【0003】
繊維束は、例えば強化繊維の1つであるガラス長繊維(直径は約20μm)、約5000TEXが、バインダ樹脂で束ねられたものである。TEXとは長さ1mあたりの重量で単位はmg/mである。5000TEXは、約5g/mとなる。繊維束の断面は、円形状で外径は約2mm程度である。繊維束は、母材樹脂の中に均一に分散させる必要がある。均一でないと、打ち込んだ犬くぎを引き抜く試験において強度不足となる。また、枕木の角の部分など、繊維束が行き渡らないと、強度不足で割れたり欠けたりする場合がある。
【0004】
従来においては、図9に示すように、繊維束10には、長手方向に所定の間隔で突出部11が設けられる。この突出部11は、板状の2つの加圧体で繊維束10を挟み、押圧することで成形する。図10は、このような繊維束10が積み重ねられた場合を示す。図10において、繊維束10の直径を2mmとし、突出部11の厚みを1mmとした場合、突出部11の横幅は3mm程度となり、繊維束10の外径からの突出量は0.5mm程度となる。このような形状は、上下方向には突出部11がないから、繊維束10を上下方向に密に積み重ねることを狙ったものである。
【0005】
図10に示すように、繊維束10の間隔が突出部11によって広げられ、繊維束10の間隔は繊維束10の直径より大きなものとなり、この隙間に母材樹脂が入り込む。しかし、突出部11は、繊維束10と繊維束10を左右方向に広げるが、上下方向には繊維束が互いに接触してしまう場合が多く、母体樹脂が繊維束10の1つ1つを囲むようにできないから、強度面で弱い場合がある。
【0006】
従来の製造法によれば、繊維束10が密に積層できるから、金型に繊維束10を積層して母材樹脂で固める場合、圧力はかけていない。例えば、製品としての枕木寸法が、横230mm、縦140mm、奥行き2200mmの場合、枕木製造用の金型の寸法は、横230mm、縦144mm、奥行き2300mmとされる。奥行き方向の両端は繊維束が均一でないので50mmづつカットされ廃棄される。ここで、繊維束が、金型の上下方向(深さ方向)に積層される高さ(嵩高)は、128mmとされる。例えば母材樹脂として硬質ウレタン樹脂には発泡剤が含まれており、硬化する過程で膨張するので128mmがちょうど140mmとなる。しかしながら、繊維束10は全体として12mm分だけ疎になるから、その分強度も低下する。
【特許文献1】特開2002−21002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、(1)繊維束を積層した場合に上下左右方向に離して配置できる形状とし、(2)繊維束の突出部の下側への突出量が突出部の厚さに依存しないようにし、(3)母材樹脂が硬化して発泡し膨張しても、繊維束が互いに離れて疎とならず均一な分布状態が得られる、合成枕木を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、請求項1記載の発明による合成枕木は、複数本の強化繊維からなる繊維束を分散させて、その周囲を母材樹脂で硬化させた合成枕木であって、前記繊維束は、前記繊維束の長手方向に湾曲され扁平状に押し潰した膨出部が所定の間隔で設けられており、前記繊維束が枕木製造用の金型に製品仕様の高さ以上に積層され、母材樹脂である発泡剤を含む硬質ウレタン液を所定量投入後、前記製品仕様の高さまで圧縮して成形されることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明であって、前記繊維束を長手方向に湾曲させる所定の半径の凸部が、前記繊維束の長手方向と直交する方向に伸びる上加圧駒と、前記凸部に対応する凹部を有する下加圧駒が、相互に係合して押圧されることにより、前記膨出部を成形することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明による請求項1の合成枕木及びその製造方法によれば、繊維束の膨出部は、扁平状に押し潰したから繊維束の外周より外側の例えば左方向と右方向に、また湾曲させたから下方向に、すなわち3つの方向に突出させることができる。従って、従来の突起部とは異なり、繊維束を左右方向にも上下方向にも離して配置することができる。また、繊維束を枕木製造用の金型に製品仕様の高さ以上に積層し、所定量の母材樹脂を投入後、製品仕様の高さまで圧縮するから、圧縮された分は、繊維束の上下方向の密度が向上する。母材樹脂に含まれる発泡剤によって生じる気泡も、圧力によって小さな形状に抑制されるから、合成枕木をより強度のあるものにできる。
【0011】
本発明による請求項2によれば、繊維束の外周から下側に突出させる突出量は、膨出部の厚さではなく下加圧駒の型の精度で決めることができる。すなわち、下加圧駒の凹部の深さで、突出量を決めることができる。従って、所定の嵩高を得るための積層する繊維束の本数を正確に決めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明による合成枕木を説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明による合成枕木に使用する繊維束の斜視図である。図1に示すように繊維束10(この例では径は約2mm)には、長手方向に所定の間隔(10〜50cm)で膨出部20が設けられる。膨出部20は繊維束10の長手方向に湾曲させている。図2は、図1のA−A断面をZ方向(長手方向)から見た断面図である。膨出部20は、斜線のある断面部は、扁平状に押し潰された形状をしている。膨出部20は、左右にも下側へも突出している。下側への突出量tは、加圧駒の凹部の深さで正確な値に成形できる。左右の突出量は、下側の突出量よりもやや大きい。膨出部20は、元の繊維束10の形状を加熱し押圧して変形させたものである。突出量の大きさが、隣接する繊維束10との間隔を決めるものとなる。特に、下側の突出量tは、繊維束10を金型に入れた時の嵩高を決めるものとなる。一定量の繊維束10を金型に投入する必要があるとして、140mmの高さの製品で、t=0.2mmの場合、嵩高は148mmとなる。突出量tを大きくすれば、嵩高が増えて金型も大きくなるから、費用対効果により突出量は、0.2mm以上で1mm以下が望ましい。
【0014】
図3は、図1の繊維束が積層された状態を示す側面図である。図1の繊維束10を長手方向(図1のZで示す)から見た図である。繊維束10は左右方向にも、上下方向にも離されて、間隔が設けられることがわかる。母材樹脂として、ここでは硬質ウレタン液21を使用した。投入された硬質ウレタン液21は、繊維束10の間の隙間に入り込んで0.5〜2.0時間かけて硬化される。引き出し円の中に示すように、繊維束10は、多数のガラス長繊維19がバインダ樹脂で束ねられたものである。
【0015】
図4は上加圧駒と下加圧駒の斜視図である。繊維束10を挟んで、約165℃に加熱して、押圧することにより膨出部20成形する。繊維束10は、上加圧駒12の凸部14は、繊維束10の長手方向とは直交する方向に配置される。下加圧駒13には凸部14に対応した位置に凹部15が設けられる。不飽和ポリエステル液を含んだ繊維束を圧縮するので、オープンモールドが好ましい。図5は、図4のB−B断面をY方向から見た断面図である。上加圧駒12の中央部には、凸部14があり、これに係合するように下加圧駒13に凹部15がある。凸部14のR(半径)は15mmで、高さは3mmである。このR(半径)が膨出部20の湾曲度を決めるものとなる。凹部15の幅は、20mmで、深さは3mmである。凹部15の深さが突出量tの大きさを決めるものとなる。図6は、図4のC−C断面をX方向から見た断面図である。繊維束10の上部が、押圧され下側に伸ばされるような形になる。
【0016】
図7は、合成枕木の金型の外観図である。金型18に図1に示す繊維束10を積層して落し蓋17で加圧する。例えば、製品としての枕木寸法が、横230mm、縦140mm、奥行き2200mmの場合、金型18の内側の寸法は、例えば横230mm、縦164mm、奥行き2250mmとすることができる。この場合、縦の型寸法が高ければ高いほど、繊維束は製品仕様高さより大きな嵩高とすることができ、繊維束の分散の度合いも向上するが、製品規格の満足度と金型費用が見合わない。製品厚み140mmに対して、金型18の高さは、160〜180mmが望ましい。
【0017】
図8は、図7の金型に繊維束が積層された状態を示す図である。高さL3は合成枕木の製品仕様の高さ140mmである。繊維束10を積層して高さL3に等しいか、繊維束10が最大に積層される高さL4、ここでは148mmまで積層する。高さL5は金型18の高さ164mmである。次に、硬質ウレタン液21を所定量投入する。硬質ウレタン液21は、浸透速度があり、最後は、高さL3の140mmまで液上りした段階で、落し蓋17で圧縮する。液上りが製品仕様の厚みより高くなると、落とし蓋でつぶしてしまうようにする。すなわち、硬質ウレタン液21の発泡剤が硬化する過程で膨張するが、製品仕様高さL3以上にならないようにする。これにより、繊維束10は、硬質ウレタン液21が発泡しても流動しないし、L4まで積層した場合は、L4からL3まで圧縮されることになる。
【0018】
従来の板状の突起部が設けられた繊維束が積層された場合と、膨出部が設けられた繊維束が積層された場合の硬化時間を比較した。金型は230×140×2200mmの枕木用を使用し、どちらも所定量の繊維束と所定量の硬質ウレタン液を投入した。表1は、硬化時間の比較である。硬化したかどうかは、脱型直後の「割れ」や「膨れ」がないかで判定した。これによれば、硬化時間が1.5hから1.0hとなって33%改善されている。これは、硬質ウレタン液が塊にならず、繊維束の間に均等に浸透したためである。
【0019】
【表1】


【0020】
次に従来の合成枕木の作り方、板状の突起部が設けられた繊維束を2637本積層し、所定量の硬質ウレタン液を投入し圧力をかけないで硬化する場合と、膨出部が設けられた繊維束2637本を積層し、所定量の硬質ウレタン液を投入し、圧縮して硬化する場合の密度と分散性を比較した。得られた合成枕木の密度(g/cc)は、従来が0.79、本発明が0.78であった。合成枕木の端部から50mmの断面を縦に3分割(上層、中層、下層)し、横にそれぞれを4分割(1〜4、5〜8、9〜12)して、それぞれの領域で繊維束の本数を比較した。表2は、繊維束の本数を比較したものである。繊維本数の合計は、上下面を仕上げのため削っているので、2637本より少ない値となっている。
【0021】
【表2】


【0022】
従来の合成枕木は、合成枕木の上層ほど繊維束の本数が多く、下層との差も大きい。これは、繊維束の硬質ウレタンの発泡過程で、繊維束が上層に持ち上げられるからである。本発明では、繊維束が上層に偏ることがなく、上層、中層、下層とも繊維束本数のばらつきが少ない。これは、型締め段階で落し蓋により上から圧縮するからである。これにより繊維束が拘束され、発泡過程で上層に押し上げられることがない。なお、枕木の両端は、落し蓋の加圧で繊維束が均一に分布することもあり、両端とも25mmの切断で済む。
【0023】
表2で作成した合成枕木の物性の比較を表3に示す。「材料の品質」と「製品の品質」は、サンプルの大きさが異なる試験である。
【0024】
【表3】


【0025】
表3によれば、繊維束の本数を同じにして試験したため、材料の品質面ではあまり変化はない。製品の品質面では、繊維束の分散性に影響を受ける項目である「曲げ強さ」、「ねじくぎ引抜き強さ」、「犬釘引抜き強さ」のいずれも、より優れた値となっていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)製品の1つであるから、鉄道線路用以外の吊橋などにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による合成枕木に使用する繊維束の斜視図である。(実施例1)
【図2】図1のA−A断面をZ方向から見た断面図である。(実施例1)
【図3】図1の繊維束が積層された状態を示す側面図である。(実施例1)
【図4】本発明による上加圧駒と下加圧駒の斜視図である。(実施例1)
【図5】図4のB−B断面をY方向から見た断面図である。(実施例1)
【図6】図4のC−C断面をX方向から見た断面図である。(実施例1)
【図7】合成枕木の金型の外観図である。(実施例1)
【図8】図7の金型に繊維束が積層された状態を示す図である。(実施例1)
【図9】従来の繊維束の斜視図である。
【図10】図9の繊維束が積層された状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0028】
10 繊維束
11 突出部
12 上加圧駒
13 下加圧駒
14 凸部
15 凹部
17 落し蓋
18 枕木の金型
19 強化長繊維
20 膨出部
21 硬質ウレタン液
L3 枕木の製品仕様の高さ
L4 繊維束が積層される最大の高さ
L5 金型の高さ
t 繊維束の外周からの突出量
【出願人】 【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発条株式会社
【出願日】 平成18年7月27日(2006.7.27)
【代理人】 【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所


【公開番号】 特開2008−31708(P2008−31708A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−205273(P2006−205273)