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【発明の名称】 ジャック
【発明者】 【氏名】有北 礼治
【課題】簡単な構成で、摺動方向に対して横方向の力でバットが傾斜しても、針溝の側方との接触圧力を低下させて、摩耗を減少させることが可能なジャックを提供する。

【解決手段】ジャック31,41では、編成用バット34,44と目移し用バット35,45との間のつなぎ部36,46を、ばね部37,47の延長上よりも、図の上方にずれた位置に設ける。この位置は、ジャック31,41を編針の一部として針溝内に収容するときに、側壁となるニードルプレートの上縁に近い。編成用バット34,44または目移し用バット35,45がカムの作用で針溝内を摺動変位する際に、横方向の力も受けて傾斜する際に、つなぎ部36,46がニードルプレートに接触し、接触面積を増やして接触圧力を低下させ、摩耗を減少させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横編機の針溝内で摺動変位する編針のうち、針溝の一方側に配置される針本体と、針溝の他方側に配置される選針部材との間に配置され、選針部材側には尾端が針溝の底部に摺接するばね部を有し、針本体側では先端が針本体の尾端に係合し、中間には間隔をあけて針溝から突出する2つのバットを有するジャックにおいて、
2つのバット間をつなぐ部分は、ばね部の延長上から針溝の表面寄りの位置にずれる形状を有することを特徴とするジャック。
【請求項2】
前記つなぐ部分は、前記ばね部と同等の断面積であることを特徴とする請求項1記載のジャック。
【請求項3】
前記2つのバットのうち、前記選針部材側のバットは、該選針部材に対向する側面に、抉りを有することを特徴とする請求項1または2記載のジャック。
【請求項4】
前記2つのバットのうちの前記針本体側のバットと前記先端との間に、針溝の表面付近まで突出する突起部が設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のジャック。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、横編機の針溝に収容される編針で、フックが設けられる針本体と組合わされ、針本体をキャリッジに搭載されるカム機構で案内駆動するために針溝から突出させるバットを有するジャックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、横編機では、針床に一定のピッチで針溝を形成し、各針溝内に編針を収容して、針床に沿って走行するキャリッジに搭載するカムで、各編針のバットを駆動して編地の編成を行っている。
【0003】
図4は、従来のジャック1の形状を示す(たとえば、特許文献1参照。)。ジャック1は、本発明を説明する点に関し、特許文献1の第2図に開示されているジャックと同等である。ジャック1は、大略的に、図では右方の先端2から左方の尾端3までの緩く湾曲した線状のばねであり、中間付近に編成用バット4を有する。ジャック1は、先端2付近に、目移し用バット5も有する。編成用バット4と目移し用バット5との間は間隔があけられ、つなぎ部6となっている。編成用バット4と尾端3との間は、ばね部7となっている。つなぎ部6は、ばね部7の延長上に位置して、実質的に1本の線ばねとなっている。ジャック1が編針の一部として針溝内に収容されると、編成用バット4は、紙面に垂直な方向に走行するキャリッジに搭載されるカムの作用を受けて図の左右方向に駆動されるとともに、紙面に垂直な力も受ける。この力を受ける結果、編成用バット4は針溝の側壁に接触して、接触圧を受ける。つなぎ部6で、編成用バット4の近傍に、補強用突起8を有するようにすれば、編成用バット4が針溝内での傾斜で針溝の側壁から受ける接触圧の分散を図ることができる。
【0004】
ただし編成用バット4や目移し用バット5は、キャリッジに搭載されるプレッサで図の上方から下方へ押圧されると、針溝内に沈むように、つなぎ部6やばね部7が撓む必要がある。また、カムにはキャリッジの地板面からの高さが変化して、押圧状態が変化するような斜面部分が設けられることがある。これらの押圧を編成用バット4や目移し用バット5が受けるときも、つなぎ部6やばね部7が撓む必要がある。
【0005】
図5は、図4に示すジャック1を有する編針10に関する全体的な構成を示す。編針10では、ジャック1と針本体11とが組合されている。針本体11は、針幹の先端側にフック12と、フック12を開閉するべら13とを有する。針本体11の針幹の中間付近には目移し用の羽根14が設けられる。針本体11の尾端側は、ジャック1の先端2が係合する係合部15を有する。ジャック1は、先端2を針本体11の係合部15に係合させる。
【0006】
ジャック1のばね部7の中間付近は、セレクトジャック16の先端に臨む。セレクトジャック16のバットは、セレクタ17によって選択的に位置が変更される。セレクタ17は、選択用バット18を有し、キャリッジに搭載されるアクチュエータの選択作用を受ける。選択用バット18は、たとえば破線で示す6のうちの1つが備えられる。針床で隣接する編針10は、セレクタ17に設けられる選択用バット18の位置を異ならせておく。
【0007】
編針10は、針床20に間隔をあけて立設されるニードルプレート21の間に形成される針溝22に収容されて、図の左右方向に摺動する。ニードルプレート21は、針床20に形成される挿入用の溝に挿入され、紙面に垂直な方向に貫通する締付けワイヤ23で締付けられて固定される。同様に、紙面に垂直な方向に貫通する部材として、ストッパワイヤ24,25,26、位置決めワイヤ27、押えワイヤ28および押え金29などが設けられる。ストッパワイヤ24,25,26は、針溝22内での摺動変位の範囲を制限する。たとえばストッパワイヤ24によって、セレクトジャック16の右方への前進と、ジャック1の左方への後退とが規制される。位置決めワイヤ27は、セレクトジャック16の位置を、たとえば3つのポジションに規制する。
【0008】
ジャック1が針溝22に収容される際には、ばね部7が変形する。図4に示すような負荷が掛らない状態で、ジャック22は図5で二点鎖線で示すような形状となるけれども、針溝22に収容される際には実線で示すように変形する。この反作用として、ジャック1に設けられる編成用バット4および目移し用バット5は、針溝22から図の上方に突出する。セレクタ17およびセレクトジャック16への選択作用の結果、セレクトジャック16の先端がジャック1のばね部7を針溝22の上方から押圧すると、ばね部7およびつなぎ部6が撓むことによるジャック1の先端2を中心とする揺動変位で、編成用バット4は針溝22内に沈む。セレクトジャック16の先端がばね部7を押圧しなければ、編成用バット3は針溝22から突出する。目移し用バット5は、揺動変位の支点となる先端2付近に設けられるので、揺動変位の振幅は小さくなって影響がなくなり、常に針溝22から突出する。ジャック1の編成用バット4や目移し用バット5が針溝22から突出すると、キャリッジに搭載されるカムやプレッサの作用を受ける。
【0009】
キャリッジは紙面に垂直な方向に走行するので、針溝22から突出する編成用バット4や目移し用バット5も、紙面に垂直な方向の力を受ける。ジャック1は、針溝22内で図の左右方向に摺動変位するので、摺動方向を基準にすると、横方向の力を受けることになる。摺動を可能にするために、ニードルプレート21の間隔である針溝22の幅は、ジャック1の幅よりも大きい。ジャック1の側面とニードルプレート21の側面との間には隙間があるので、ジャック1が横方向の力を受ければ、ジャック1は針溝22内で傾斜してしまう。
【特許文献1】特公平2−10262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示されているような編針10では、ジャック1の編成用バット4または目移し用バット5にキャリッジに搭載されるカムが作用して、編成用バット4または目移し用バット5が傾斜し、側面がニードルプレート21の側面に接触する可能性がある。編成用バット4または目移し用バット5の側面とニードルプレート21の側面とが接触すると、編成用バット4または目移し用バット5は摺動方向の長さが短いので、接触部分では大きな圧力が発生し、長時間にわたる使用で摩耗する可能性が生じる。
【0011】
ジャック1では、編成用バット4の近傍に補強用突起8を設けて、接触圧力の分散を図ることがある。しかしながら、補強用突起8を設けることで、接触圧力はある程度抑えることができても充分とはいえなかった。
【0012】
本発明の目的は、簡単な構成で、摺動方向に対して横方向の力でバットが傾斜しても、針溝の側方との接触圧力を低下させて、摩耗を減少させることが可能なジャックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、横編機の針溝内で摺動変位する編針のうち、針溝の一方側に配置される針本体と、針溝の他方側に配置される選針部材との間に配置され、選針部材側には尾端が針溝の底部に摺接するばね部を有し、針本体側では先端が針本体の尾端に係合し、中間には間隔をあけて針溝から突出する2つのバットを有するジャックにおいて、
2つのバット間をつなぐ部分は、ばね部の延長上から針溝の表面寄りの位置にずれる形状を有することを特徴とするジャックである。
【0014】
また本発明での前記つなぐ部分は、前記ばね部と同等の断面積であることを特徴とする。
【0015】
また本発明の前記2つのバットのうち、前記選針部材側のバットは、該選針部材に対向する側面に、抉りを有することを特徴とする。
【0016】
また本発明の前記2つのバットのうち、前記針本体側のバットと前記先端との間に、針溝の表面付近まで突出する突起部が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、横編機の針溝内で摺動変位する編針のうちで、2つのバットを有するジャックは、2つのバット間をつなぐ部分がばね部の延長上よりも針溝の表面寄りの位置にずれる形状を有するので、バットが傾斜するときに、2つのバット間をつなぐ部分が針溝の側面に接触し、接触面積が大きいので接触圧力を分散して、低下させることができる。2つのバット間をつなぐ部分が針溝の表面寄りに位置するようにするだけの簡単な構成で、摺動方向に対して横方向の力でバットが傾斜しても、針溝の側方との接触圧力を低下せて、長時間にわたる使用での摩耗を減少させることができる。
【0018】
また本発明によれが、2つのバット間をつなぐ部分の断面積は、ばね部の断面積と同等であり、ばね部が選針部材によって押圧されて撓む際にはつなぐ部分も同様に撓んで、選針部材側のバットが針溝内に没するようにすることができる。
【0019】
また本発明によれば、2つのバットのうち、セレクトジャックなどの選針部材側のバットは、選針部材に対向する側面に、抉りを有する。抉りによって、ジャックが針溝内で摺動する範囲を拡げ、編針のストロークを大きくすることができる。2つのバット間をつなぐ部分でバットに掛る接触圧力を分散するので、バットに抉りが設けられても、損傷を受けにくくすることができる。
【0020】
また本発明によれば、針本体側のバットとジャックの先端との間に、針溝の表面付近まで突出する突起部が設けられるので、針本体側のバットに掛る接触圧力をさらに分散して、摩耗を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の実施の一形態としてのジャック31および他の形態としてのジャック41の形状を示す。(a)に示すジャック31も、(b)に示すジャック41も、基本的な形状は同等である。ジャック31,41は、図4に示すジャック1の先端2、尾端3、編成用バット4、目移し用バット5、つなぎ部6およびばね部7に対応する先端32,42、尾端33,43、編成用バット34,44、目移し用バット35,45、つなぎ部36,46およびばね部37,47をそれぞれ有する。ただし、図4のジャック1ではつなぎ部6は、ばね部7の延長上に位置しているのに対し、図1のジャック31,41では、つなぎ部36,46は、ばね部37,47の延長上よりも、図の上方にずれた位置に設けられている。
【0022】
なお、ジャック31,41では、目移し用バット35,45と先端32,42との間に、補強用突起38,48がそれぞれ設けられている。また、ジャック41では、編成用バット44のばね部47側面に抉り49が設けられている。
【0023】
図2は、図1(b)に示すジャック41を図5のジャック1に代えて針本体11と組合せた編針50を、針床20の針溝22に収容している構成を示す。図2で図5に対応する部分には同一の参照符を付し、重複する説明を省略する。図2では、図5と比較して、ジャック41のつなぎ部46の位置がニードルプレート21の上縁に近くなっている。これによって、ジャック41が横方向の力を受けてニードルプレート21の上縁付近に接触する際の接触面積が増加し、接触圧力が分散し、圧力の局部的な集中を避けることができる。
【0024】
つなぎ部36,46は、キャリッジに搭載されるカムやプレッサには接触しない範囲で、上方寄りの位置であることが望ましい。つなぎ部36,46の断面積をばね部37,47と同等にすれば、つなぎ部36,46は、編成用バット34,44や目移し用バット35,45がカムやプレッサで押圧されるときに、ばね部36,46と同様に撓むことができるので好ましい。断面積が同等でなくても、違いの程度が小さければ、つなぎ部36,46とばね部37,47との撓みの違いも少ない。つなぎ部36,46の断面積がばね部37,47よりもかなり大きくなると、つなぎ部36,46が撓まなくなってしまう。たとえば、つなぎ部36,46の下部がばね部37,47の延長上にあり、上部が図1の位置にあるような場合は、接触面積の増加による接触圧力の分散の効果は同等であるけれども、編成用バット34,44や目移し用バット35,45の押圧時には撓まなくなってしまう。
【0025】
また、抉り49がセレクトジャック16の先端の前進位置とジャック41の後退位置とを規制するストッパワイヤ24に対応して設けられている。抉り49を設けることによって、ジャック41の後退時に、編成用バット44のセレクトジャック16に臨む側面がストッパワイヤ24に当接する位置を後退させ、編針50のストロークを大きくすることができる。抉り49を設けることによって、編成用バット44の強度は低下するけれども、つなぎ部46によってニードルプレート21への接触時の圧力が減少し、強度低下の影響を受けないようにすることがきる。
【0026】
図3は、図1に示すジャック31,41と図4に示すジャック1とで、横方向の力を受けて針溝22内で傾くときのニードルプレート21への接触状態を比較して示す。(a)に実線で示すように、ジャック31,41の編成用バット34,44がカムの作用によって針溝22内で傾斜すると、ニードルプレート21の上縁付近には、つなぎ部36,46が接触する。つなぎ部36,46の位置は、カムと接触しない範囲で、針溝の上方寄りであることが好ましい。つなぎ部36,46は、紙面に垂直な方向に延びる形状を有しているので、接触面積は大きくなり、カムから編成用バット34,44に作用する力に基づく接触圧力は分散される。(b)に実線で示すように、ジャック1の編成用バット4が傾斜しても、つなぎ部6はニードルプレート21の側面には接触しない。ジャック1に補強用突起8を設けておけば、補強用突起8の先端付近がニードルプレート21の上縁付近に接触し、接触圧力を編成用バット4と分散させることができる。ただし、図4を参照すれば明らかなように、補強用突起8の摺動方向の長さは、つなぎ部6の長さに比較して短い。このため、編成用バット4の接触圧力の低減は(a)に示すジャック31,41に比較して充分ではなく、長時間の使用では摩耗や損傷のおそれがある。
【0027】
以上の説明は、編成用バット34,44と編成用バット4とについてであるけれども、目移し用バット35,45と目移し用バット5とについても、同様に接触圧力の低減を図ることができる。接触圧力の低減で、編成用バット34,44および目移し用バット35,45に力が集中しなくなるので折れ難くなり、ニードルプレート21も摩耗や損傷が生じにくくなり、クラッシュ時の損傷も低減することができる。また、摩耗や損傷が生じにくいことは、キャリッジ走行の高速化も可能にして、編成効率を高めることができる。
【0028】
本発明を適用するジャック31,41では、つなぎ部36,46の位置をニードルプレート21の上縁付近に変更するだけの簡単な形状の違いで、ジャック1に比較して寿命の延長を図ることができる。また、編成用バット34,44や目移し用バット35,45が破損する場合でも、つなぎ部36,46が針溝22の表面近くに位置しているので、破片が針溝22内に入り込むのを防ぐことができる。
【0029】
なお、図1に示すように、ジャック31,41は、目移し用バット35,45と先端32,42との間に補強用突起38,48を設けている。この補強用突起38,48によって、図3(b)と同様な接触圧力分散の効果があるので、目移し用バット35,45付近での接触圧力を低減し、目移し用バット35,45の破損が生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の一形態としてのジャック31および他の形態としてのジャック41の形状を示す側面図である。
【図2】図1(b)に示すジャック41を針本体11と組合せた編針50を、針床20の針溝22に収容している構成を示す側面断面図である。
【図3】図1に示すジャック31,41と従来のジャック1とで、横方向の力を受けて針溝22内で傾くときのニードルプレート21への接触状態を比較して示す簡略化した正面断面図である。
【図4】従来のジャック1の形状を示す側面図である。
【図5】従来のジャック1を針本体11と組合せた編針10を、針床20の針溝22に収容している構成を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0031】
31,41 ジャック
32,42 先端
34,44 編成用バット
35,45 目移し用バット
36,46 つなぎ部
37,47 ばね部
38,48 補強用突起
49 抉り

特許の図
【出願人】 【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
【出願日】 平成18年10月16日(2006.10.16)
【代理人】 【識別番号】100101638
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 峰太郎
【公開番号】 特開2008−95258(P2008−95258A)
【公開日】 平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願番号】 特願2006−281616(P2006−281616)