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【発明の名称】 製織システムとジャカード織物の製造方法
【発明者】 【氏名】白井 康生

【要約】 【課題】擦れて剥がれにくい多色の模様を有する薄く柔らかい織物を製織できると共に、高級なジャカード織機を使うことなく多色の織物を作ることができ、小ロットの生産に対応できる製織システム等を提供する。

【構成】製織システム1は、糸2が巻かれた多数のボビン3を回転自在に保持するクリル4と、クリル4から糸を引っ張ってくる中間機5と、糸2の下地加工を行う下地加工機6と、糸2の染色を行う染色手段であるインクジェット機7と、インクを定着させる定着手段8と、糸2を織るジャカード織機9とからなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャカード織機を用いて経糸と緯糸を織り出す製織システムであって、
前記ジャカード織機の前工程に、前記経糸の長さ方向の所望の箇所に所望の色を染色する染色手段を有することを特徴とする製織システム。
【請求項2】
前記染色手段は、インクジェット又は捺染である請求項1記載の製織システム。
【請求項3】
前記染色前に下地加工をする下地加工手段を有する請求項1又は2記載の製織システム。
【請求項4】
前記染色後に染料インクを定着させる定着手段を有する請求項1又は2記載の製織システム。
【請求項5】
ジャカード織機を用いて経糸と緯糸を織り出す製織システムによるジャカード織物の製造方法であって、
前記ジャカード織機の前工程に、前記経糸の長さ方向の所望の箇所に所望の色が染色される工程を有することを特徴とするジャカード織物の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャカード織機を用いた製織システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、繊維業界では、需要者の個性的な商品へのニーズが増したことにより、様々な趣向を凝らした絵柄、文様を有する繊維製品が考案されている。
【0003】
その絵柄、文様の製法は、様々であり、例えば、インクジェット方式の印写機を用いて、Tシャツなどに所望の図柄をプリントする方法が考案されている。この方法によれば、比較的容易に、布地の表面に様々な絵柄や文様を印写することができる。
【0004】
また、特許文献1には、インクジェットで糸に模様を印写する例が示されている。この例によれば、様々な模様を糸に計画的に印写できるので、その糸を用いた個性的な織物を得ることができる。
【0005】
さらに、ジャカード織りで様々な模様を有する織物を織ることも考えられる。このジャカード織りでは、チーズ染めされた数百〜数万もの経糸を使用し、それらをジャカード織機で操作して、糸の織り出しにて絵柄を製織する。布地の表面にプリントしたものとは違い、高級感があって、一般的に高価である。
【特許文献1】特開平7−70952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、Tシャツなどに所望の図柄をプリントする方法は、布地の表面にプリントするため、プリントが擦れて剥がれやすい。また、特許文献1の方法は、糸の周囲を規則的に区分した領域で糸の着色を行うというものであり、糸を多色に染めあげるという目的で行われるものではない。また、糸に多色の着色を施そうとしたときには、着色を行った部分にさらに別の噴射工程による着色を施し、混合色を作る。したがって、例えば、256色の色彩を得ようとした場合には、膨大な数の噴射工程を設ける必要がある。また、ジャカード織りは、多色の模様を織ろうとすると、それに応じて多数の色糸が必要であり、そのためにジャカード本数のより多い高級ジャカード織機を使う必要があった。また、ジャカード織物は、多色の模様を織ろうとすると、使用する経糸の本数が増大し、織物が厚く、堅くなってしまう。また、多色の模様を織ろうとすると、多数の色糸を使用するため、クリルに用意する色糸の量が増え、小ロットの生産に対応するのが難しかった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、擦れて剥がれにくい多色の模様を有する薄く柔らかい織物を製織できると共に、高級なジャカード織機を使うことなく多色の織物を作ることができ、小ロットの生産に対応できる製織システム等を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
係る目的を達成すべく、本発明は、ジャカード織機を用いて経糸と緯糸を織り出す製織システムであって、前記ジャカード織機の前工程に、前記経糸の長さ方向の所望の箇所に所望の色を染色する染色手段を有する構成を採用した。
【0009】
これにより、ジャカード織機に導入する糸の必要な箇所に必要な色を染色することができるので、多色の織物を織るために、多数の色糸を用意する必要がない。また、多数の色糸を使用する必要がないので、ジャカード織物を薄く、柔らかくできる。また、多数の色糸を用意する必要がないということにより、ジャカード本数を増やす必要がなくなるので、ジャカード本数のより多い、高級なジャカード織機を使わずして多色の製品を作ることができる。さらに、ジャカード織機に導入する段階で糸を染色するので、多数の色糸を使用する必要がなく、小ロットの生産も可能である。
【0010】
また、本発明は、前記染色手段は、インクジェット又は捺染である構成とすることができる。インクジェット又は捺染により、糸に染料を染み込ませることができるので、糸が擦れて表面の染料が剥がれることがない。
【0011】
また、本発明は、前記染色前に下地加工をする下地加工手段を有することが好ましい。これにより、インクが滲んでしまうことがなく、より好適に糸を染めあげることができる。
【0012】
また、本発明は、前記染色後に染料インクを定着させる定着手段を有することが好ましい。これにより、染料インクがより好適に糸に定着するので、インクが擦れて剥がれにくくなる。
【0013】
さらに、本発明は、ジャカード織機を用いて経糸と緯糸を織り出す製織システムによるジャカード織物の製造方法であって、前記ジャカード織機の前工程に、前記経糸の長さ方向の所望の箇所に所望の色が染色される工程を有する構成とすることができる。これにより、ジャカード織機に導入する糸の必要な箇所に必要な色を染色することができるので、多色の織物を織るために、多数の色糸を用意する必要がない。そして、多数の色糸を使用する必要がないので、薄く、柔らかいジャカード織物を提供できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る製織システムは、ジャカード織機を用いて経糸と緯糸を織り出す製織システムであって、前記ジャカード織機の前工程に、前記経糸の長さ方向の所望の箇所に所望の色を染色する染色手段を有するので、擦れて剥がれにくい多色の模様を有する薄く柔らかい織物を製織できると共に、高級なジャカード織機を使うことなく多色の織物を作ることができ、小ロットの生産に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
ジャカード織機を用いて経糸と緯糸を織り出す製織システムであって、前記ジャカード織機の前工程に、前記経糸の長さ方向の所望の箇所に所望の色を染色する染色手段を有する。
【実施例】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る製織システムの実施の形態を示す構成図である。図2は、インクジェットの染色装置を示す図であり、図2(a)はその斜視図、図2(b)は糸を部分的に染色する例、図2(c)は染色した糸を示す図である。図3は、ジャカード織機で織り出される糸の状態を示す図であり、図3(a)は経糸が2本の例、図3(b)は芯糸が上方に織り出される例、図3(c)は下側の経糸が上方に織り出される例である。
【0017】
図1には、本発明に係る製織システム1の一例が示されている。製織システム1は、糸2が巻かれた多数のボビン3を回転自在に保持するクリル4と、クリル4から糸を引っ張ってくる中間機5と、糸2の下地加工を行う下地加工機6と、糸2の染色を行う染色手段であるインクジェット機7と、インクを定着させる定着手段8と、糸2を織るジャカード織機9とからなる。なお、この例では、染色手段としてインクジェットの例を示すが、本発明はこれに限定されるものではなく、捺染等で染色することもできる。また、この例では、下地加工機6とインクジェット機7を中間機5の後工程に配置したが、中間機5とクリル4との間に配置することもできる。ただし、下地加工機6とインクジェット機7を中間機5の後工程に配置する方がジャカード織機9で織り出す直前に染色できるので、染色の精度を高めることができる。
【0018】
クリル4には、糸2が巻かれた数百個のボビン3が回転自在に保持されている。糸2は、経糸であり、緯糸は、ジャカード織機9に配置されている。糸2は、綿やポリエステルなど、染料がよく染み渡る材質からなっている。ボビン3に巻かれた糸2は、必要な本数だけ中間機5に手繰り寄せられる。
【0019】
中間機5には多数のローラ5aが設けられており、糸2を手繰り寄せることができる。中間機5に手繰り寄せられた糸2は、さらに、ジャカード織機9に手繰り寄せられる。
【0020】
この例では、中間機5の後工程には、下地加工機6が配置されている。下地加工機6には、例えば、アルカリ性物質が備えられており、そのアルカリ性物質が糸2に含浸される。この前処理を施すことにより、染料インクがより効果的に糸2に染み込むと共に、糸2の長さ方向に滲みにくくなる。
【0021】
下地加工機6の後工程には、糸2の染色を行う染色手段であるインクジェット機7が配置されている。インクジェット機7は、例えば、図2(a)に示すように、糸2上に配置された箱状の筐体7aからなる。筐体7aには、染料インクを備えるインクヘッドが配置されている。この筐体7aは、駆動装置(図示せず)により糸2と一定の距離を保ちつつ、糸2と略直角方向に制御される。
【0022】
インクジェット機7には、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、黒の4色の染料インクが備えられている。これら4原色毎にインクヘッドが設けられ、各インクヘッドから吹きつけられたインクドットの組合せによって、例えば256色からなる多様な色彩が表現される。
【0023】
図2(a)に示すように、インクヘッドは所定のドットピッチでインクを噴射しながら糸2の表面を走査する。インクヘッドは複数個のノズルを有し1走査で所定幅の帯領域を染色する。同一の帯領域が各色のインクヘッドで順番に走査されインクドットの色の組合せが形成される。このとき、図2(b)に示すように、糸2を区分けて染色することもできる。この場合には、区分けられたそれぞれの束ごとに違う色に染色できる。区分け方は、後述するように、原画データからフィードバックされたデータから必要本数を計算して行われる。
【0024】
各インクヘッドの各ノズルからのインクの噴射は原画データに基づいてコンピュータによって制御される。ここで、この原画は、ジャカード織機で織り出された後の完成品である織物の図柄のデータなので、その図柄を、インクジェット機7を通過する際の糸の状態にフィードバックされたものが糸に染色される。つまり、原画データから、各糸の長さ方向の染色範囲と色のデータを割り出して各糸に所定の染色を行う。また、インクヘッドの走査とノズルの噴射の制御は、ジャカード織機の経糸の送りと同期して行われる。
【0025】
図2(c)には、インクジェット機7により染色された糸2が示されている。糸2の長さ方向の一定範囲には、所定の色に染められた染色部2a、2b、2cが設けられている。染色部2aのように長さ方向に比較的長く染色することもできるし、染色部2b、2cのように長さ方向に短く、かつ一定の距離をおいて染色することもできる。なお、糸2の周りに円環状に染料インクを附着させることもできるし、糸2の内部全体にまで染料を染み込ませることもできる。
【0026】
また、インクジェットではなく、捺染によって染色する場合には、所望の色に浸したローラを経糸上に転がし、経糸を染めあげる。多数の色に染める場合には、このローラの本数を増やすことにより対応する。
【0027】
インクジェット機7で染色した後には、定着手段8により、染料インクを定着させるための定着処理を実施する。この定着処理は、例えば、温度約102℃にて湿度98%以上の環境下でスチーミング処理によって行う。
【0028】
インクジェット機7で染色された糸2は、ジャカード織機9で製織される。ジャカード織機9は、ソレノイドを備えた電子ジャカード機でもパンチカード式でもよい。電子ジャカード織機は、パンチカード式に比べ、その構成が簡易化されるとともに織物組織変更が極めて容易になされる。
【0029】
ジャカード織機9では、経糸を1本ずつコントロールして開口することができ、ここに緯糸を織り込み、色とりどりの変化のある紋様の織物を織り出すことができる。この経糸をコントロールする装置に紋様のデータを入力するには、データに基づいて穴が開けられたパンチカードを使ったり、コンピュータから紋様データの指示を出力することができる。
【0030】
図3には、ジャカード織機で織り出される糸の状態が示されている。図3(a)には、上側の経糸21と、下側の経糸22と、両者の間に織り込まれる緯糸23が示されている。この例では、図の両端は、上側の経糸21が上方に織り込まれているので、経糸21の色が織物の表面に見えることとなる。一方、図の中央部は、下側の経糸22が上方に織り込まれているので、経糸22の色が織物の表面に見えることとなる。このように、織物の表面に見える部分を所望の色に染色しておくことにより、経糸21、22以外の色も有するジャカード織物を得ることができる。例えば、この上方に織り込まれる経糸22の図の中央部分を染色しておくことにより、図の中央部分に所望の色を有するジャカード織物ができる。なお、染色するのは、経糸22に限られず、経糸21にも染色しておくこともできる。
【0031】
図3(b)には、上側の経糸24と、下側の経糸26と、経糸24と経糸26の間に配置される芯糸25と、それらに織り込まれる緯糸23が示されている。この例では、図の両端は、上側の経糸24が上方に織り込まれているので、経糸24の色が織物の表面に見えることとなる。一方、図の中央部は、芯糸25が上方に織り込まれているので、芯糸25の色が織物の表面に見えることとなる。
【0032】
図3(c)には、上側の経糸27と、下側の経糸29と、経糸27と経糸29の間に配置される芯糸28と、それらに織り込まれる緯糸23が示されている。この例では、図の両端は、上側の経糸27が上方に織り込まれているので、経糸27の色が織物の表面に見えることとなる。一方、図の中央部は、下側の経糸29が上方に織り込まれているので、経糸29の色が織物の表面に見えることとなる。
【0033】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る製織システム等は、ジャカード織機で糸を織り出してジャカード織物を製織する製織システム等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る製織システムの実施の形態を示す構成図である。
【図2】インクジェットの染色装置を示す図であり、図2(a)はその斜視図、図2(b)は糸を部分的に染色する例、図2(c)は染色した糸を示す図である。
【図3】ジャカード織機で織り出される糸の状態を示す図であり、図3(a)は経糸が2本の例、図3(b)は芯糸が上方に織り出される例、図3(c)は下側の経糸が上方に織り出される例である。
【符号の説明】
【0036】
1・・・・・・・・・・・・・製織システム
2・・・・・・・・・・・・・糸
2a、2b、2c・・・・・・染色部
3・・・・・・・・・・・・・ボビン
4・・・・・・・・・・・・・クリル
5・・・・・・・・・・・・・中間機
5a・・・・・・・・・・・・ローラ
6・・・・・・・・・・・・・下地加工機
7・・・・・・・・・・・・・インクジェット機
7a・・・・・・・・・・・・筐体
8・・・・・・・・・・・・・定着手段
9・・・・・・・・・・・・・ジャカード織機
21、22、24〜29・・・経糸
23・・・・・・・・・・・・緯糸
【出願人】 【識別番号】503223544
【氏名又は名称】株式会社シライテックス
【出願日】 平成18年9月6日(2006.9.6)
【代理人】 【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫


【公開番号】 特開2008−63680(P2008−63680A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2006−241097(P2006−241097)