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【発明の名称】 糸条加熱ヒーター
【発明者】 【氏名】森 秀茂

【氏名】梅岡 利成

【要約】 【課題】複数の糸条を異なる温度で加熱できる糸条加熱ヒーターを提供する。

【解決手段】複数の糸条を異なる温度で加熱するための糸条加熱ヒーター1であって、低熱伝導率の断熱部2と、断熱部2の内部に設けられた発熱部3と、断熱部2に対して接触又は近接した状態で、複数の糸条を糸走行方向Yaへ案内するための複数の糸走行路4とを備え、発熱部3の熱が断熱部2を介して各糸走行路4へ伝達され、各糸走行路4がそれぞれ異なる温度で加熱されるように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の糸条を異なる温度で加熱するための糸条加熱ヒーターであって、低熱伝導率の断熱部と、前記断熱部の内部に設けられた発熱部と、前記断熱部に対して接触又は近接した状態で、複数の糸条を糸走行方向へ案内するための複数の糸走行路とを備え、前記発熱部の熱が前記断熱部を介して前記各糸走行路へ伝達され、前記各糸走行路がそれぞれ異なる温度で加熱されるように構成されていることを特徴とする糸条加熱ヒーター。
【請求項2】
前記発熱部が、前記断熱部の中心に対して偏心して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の糸条加熱ヒーター。
【請求項3】
前記断熱部が、熱伝導率0.01〜1.0W/(m・K)の固体物質からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の糸条加熱ヒーター。
【請求項4】
前記断熱部は、複数の領域に区画されており、前記各領域毎における前記断熱部の熱伝導率が、前記各糸走行路に対する加熱温度に応じて設定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の糸条加熱ヒーター。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の糸条を異なる温度で加熱するための糸条加熱ヒーターに関する。
【背景技術】
【0002】
合繊糸等の糸条を加工処理するための糸条加工機として、例えば仮撚機がある(特許文献1等参照)。仮撚機は、給糸パッケージからフィラメント糸を解除し、延伸しながら加撚等して延伸加撚糸に加工する。また、仮撚機は、糸条を加熱して加工するためのヒーターを備えている(特許文献1、図5、符号H1等参照)。このヒーターは、各給糸パッケージから供給される糸数に対応するヒーターユニットが多数設けられている。そして、仮撚機で生成される加撚糸の品質が一定になるように、ヒーターの温度は、各ユニットでバラつきがないように均一に設定されている。
【特許文献1】特許第2850792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのため、仮撚機(糸条加工機)は、ヒーターの設定温度を種々変更することによって、異なる品質(染色度合いや風合等)の加撚糸を加工できる。本発明は、このような加工機(仮撚機等)で合繊糸等を加工処理する前に、予め、種々の異なる温度で糸条を加熱して、様々な温度で加熱した糸条について、染色度合いや風合い等を試験して、最も好ましい加熱温度を決定するのに好適なヒーターを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、複数の糸条を異なる温度で加熱するための糸条加熱ヒーターであって、低熱伝導率の断熱部と、断熱部の内部に設けられた発熱部と、断熱部に対して接触又は近接した状態で、複数の糸条を糸走行方向へ案内するための複数の糸走行路とを備え、発熱部の熱が断熱部を介して各糸走行路へ伝達され、各糸走行路がそれぞれ異なる温度で加熱されるように構成されている。
【0005】
好ましくは、発熱部が、断熱部の中心に対して偏心して設けられている。
【0006】
更に好ましくは、断熱部が、熱伝導率0.01〜1.0W/(m・K)の固体物質からなる。
【0007】
更に好ましくは、断熱部は、複数の領域に区画されており、各領域毎における断熱部の熱伝導率が、各糸走行路に対する加熱温度に応じて設定されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る糸条加熱ヒーターは、上記の通り、断熱部の内部に発熱部が設けられ、断熱部に対して接触又は近接した状態で、複数の糸条を案内する複数の糸走行路を備えている。そして、この糸条加熱ヒーターでは、発熱部の熱が断熱部を介して各糸走行路へ伝達されることにより、各糸走行路がそれぞれ異なる温度で加熱される。
【0009】
そのため、糸条加熱ヒーターは、複数の糸条を、異なる温度の糸走行路に走行させて、同時に異なる温度で加熱することができる。従って、異なる加熱温度に応じた数の熱源を用いる必要がない。また、必要な熱源が1つでもよいので、非常にコンパクトでシンプルな構成になっており、生産コスト及び生産効率に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づいて、本発明に係る糸条加熱ヒーターについて詳細に説明する。
【0011】
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態の糸条加熱ヒーターを示しており、(a)は斜視図、(b)は(a)のI−I線断面図である。図2は、第一実施形態の糸条加熱ヒーターの加熱原理を説明するための断面図である。
【0012】
図1に示す通り、糸条加熱ヒーター1は、糸走行方向Yaに延設されている。糸条加熱ヒーター1は、断面円状になっている。糸条加熱ヒーター1は、断熱部2を備えている。断熱部2は、低熱伝導率の物質からなっている。本実施形態では、断熱部2は、ロックウールやガラスウールの無機繊維系、耐熱樹脂等で構成されている。なお、断熱部2は、下記の通り、発熱部3からの加熱温度を低下して伝達するものであればよい。
【0013】
糸条加熱ヒーター1は、発熱部(熱源)3を備えている。本実施形態では、発熱部3は、所定の温度に設定できるシーズヒーター等で構成されている。発熱部3は、パイプの内部に高温流体を配置したもの等でもよい。発熱部3は、断熱部2の内部に配置されている。発熱部3は、断面円状であって、糸走行方向Yaに延設されている。
【0014】
糸条加熱ヒーター1は、糸走行方向Yaに延設されたカバープレート20を備えている。カバープレート20は、糸条加熱ヒーター1の外枠を構成する。本実施形態では、カバープレート20の内部は、ロックウール等の断熱部2で埋められており、さらに、断熱部2の内部に、発熱部3が配置されている。
【0015】
糸条加熱ヒーター1は、外周に複数の糸走行路4を備えている。糸走行路4は、糸走行方向Yaに延設されている。糸走行路4は、カバープレート20の外周に設けられた円弧状の溝21で形成されている。図1(b)に示す通り、6つの糸走行路4が、等間隔に配置されている。
【0016】
発熱部3の中心線3aは、糸条加熱ヒーター1の中心線1aから距離hを置いて略平行に延設されている。即ち、発熱部3は、糸条加熱ヒーターの中心から偏心して設けられている。
【0017】
図2に示す通り、発熱部3は断面円形なので、発熱部3からの熱は、断熱部2を介して放射状に伝達される。断熱部2が低熱伝導率の物質なので、発熱部3からの加熱温度は、徐々に低下しながら周囲へ伝達される。
【0018】
従って、発熱部3の加熱温度Toのとき、発熱部3に最も近い糸走行路4aは、円状の等高線(コンター)C1上の温度T1(<To)で加熱され、糸走行路4b,4bは、等高線C2上の温度T2(<T1)で加熱され、糸走行路4c,4cは、等高線C3上の温度T3(<T2)で加熱され、発熱部3に最も遠い糸走行路4dは、等高線C4上の温度T4(<T3)で加熱される。
【0019】
そして、それぞれの糸走行路4に沿って、糸条Yが、カバープレート20(断熱部2)に近接又は接した状態で、糸走行方向Yaへ案内される。上述の通り、各糸走行路4の加熱温度(T1>T2>T3>T4)は、それぞれ異なっているので、複数の糸条Yを異なる温度で加熱できる。
【0020】
ここで、本実施形態では、発熱部3と糸条加熱ヒーター1とが共に断面円形なので、発熱部の中心線3aが、糸条加熱ヒーターの中心線1a上にあると、各糸走行路4それぞれと発熱部3との間の距離が同一となり、全糸走行路4は、均一に加熱されてしまう。即ち、断面において、各糸走行路4それぞれと発熱部3との距離が異なっていればよい。
【0021】
また、断熱部2が低熱伝導率なので、上記のように、1つの発熱部3で、複数の糸走行路4をそれぞれ異なる温度で加熱できる。即ち、本実施形態では、発熱部3が、糸走行方向Yaの全域にわたって延設されているので、一つの糸走行路4は、糸走行方向Yaの全域にわたって均一に加熱され、各糸走行路4それぞれは異なる温度で加熱される。なお、発熱部3は、糸走行方向Yaの全域にわたって延設される必要はなく、一部分であってもよい。
【0022】
そして、断熱部2の熱伝導率が高いと、発熱部3からの熱は、殆ど温度変化(温度低下)することなく糸走行路4へ伝達されるので、糸走行路4への加熱温度が均一になる。
即ち、「低」熱伝導率とは、発熱部3からの熱が断熱部2を介して伝達される際に、所定の温度低下が生じ得る熱伝導率である。なお、断熱部2の熱伝導率は、0.01〜1.0W/(m・K)であることが好ましい。この熱伝導率は、発熱部3の温度や糸Yへの加熱温度によって決定する。そして、断熱部2を、固体物質にすることによって、糸走行路4を安定した温度で加熱できる。
【0023】
図3は、糸条加熱ヒーターを備えた試験装置を示す斜視図である。この試験装置は、上記の糸条加熱ヒーター1を備えている。糸条加熱ヒーター1の一方側に供給部8が、他方側に巻取部9が設けられている。供給部8は、6つの給糸パッケージ80を備えている。各給糸パッケージ80から糸条Yが繰り出され、糸条Yは、案内ローラー81を介して糸条加熱ヒーター1へ案内される。
【0024】
供給部8から繰り出された6本の糸条Yは、糸条加熱ヒーター1のそれぞれの糸走行路4に沿って、糸走行方向Yaへ案内されて走行する。これにより、各糸条Yは、上記したように、それぞれ異なる温度(T1,T2,T3,T4)で加熱される。そして、加熱された各糸条Y’は、巻取部9へ送られる。
【0025】
巻取部9は、6つの巻取パッケージ90を備えている。加熱された各糸条Y’は、案内ローラー92を介して、それぞれの巻取パッケージ90に巻き取られる。
【0026】
そして、各巻取パッケージ90から糸条Y’を繰り出して、糸条Y’を試編機95へ送り込む(図3(b))。試編機95によって、所定量の糸条Y’を試し編みする。加熱温度の異なる糸条Y’で試し編みすることにより、それぞれの加熱温度による、糸条Y’の風合いや染色度合い等の品質を試験することができる。
【0027】
[第二実施形態]
次に、糸条加熱ヒーター1の変形例について説明する。図4は、糸条加熱ヒーターの変形例を示す断面図であって、(a)は第二実施形態、(b)は第三実施形態である。なお、第一実施形態と異なる部分のみ説明する。
【0028】
図4(a)に示す通り、第二実施形態の糸条加熱ヒーター1は、断面矩形状になっている。従って、この糸条加熱ヒーター1は、床面などに安定して設置できる。発熱部3は、糸条加熱ヒーター1の中心に配置されている。即ち、発熱部の中心線3aは、糸条加熱ヒーター1の幅方向及び高さ方向の中央に位置している。
【0029】
複数の糸走行路4は、糸条加熱ヒーター1の上面に等間隔に配置されている。そして、発熱部3は断面円状になっているので、発熱部3の加熱温度は、断熱部2を介して放射状に伝達される。各糸走行路4の加熱温度は、発熱部3から離れるに従って低下する。
【0030】
従って、 発熱部3が温度To’のとき、発熱部3に最も近い糸走行路4a’は、円状の等高線(コンター)C1’上の温度T1’(<To’)で加熱され、糸走行路4b’,4b’は、等高線C2’上の温度T2’(<T1’)で加熱され、糸走行路4c’,4c’は、等高線C3’上の温度T3’(<T2’)で加熱され、発熱部3に最も遠い糸走行路4d’,4d’は、等高線C4’上の温度T4’(<T3’)で加熱される。
【0031】
[第三実施形態]
第三実施形態の糸条加熱ヒーター1は、第二実施形態と同様に、断面矩形状になっているが、第一実施形態と同様に、断面円状でもよい。図4(c)に示す通り、この糸条加熱ヒーター1は、第一及び第二実施形態と異なり、糸条走行路4が、円弧状のガイド40で形成されている。ガイド40は、糸走行方向Yaに沿って所定の間隔を置いて設けられていたり、糸条加熱ヒーター1の全長に渡って設けられている。
【0032】
[第四実施形態]
図5は、糸条加熱ヒーターの第四実施形態を示す断面図である。第四実施形態の糸条加熱ヒーター1は、第一実施形態と同様に、断面円状である。発熱部3の中心線3aは、糸条加熱ヒーター1の中心線1a上に配置されている。従って、発熱部3と各糸走行路4との間の距離は同一である。断熱部2は、各糸走行路4a’’〜4f’’それぞれに対応して、複数の領域が区画されている。断熱部2は、各領域毎に異なる熱伝導率の断熱材2a〜2fで構成されている。
【0033】
これにより、例えば、各断熱材2a〜2fにおける熱伝導率k1〜k6の関係が、k1(2a)<k2(2b)<k3(2c)<k4(2d)<k5(2e)<k6(2f)の場合、各糸走行路4a’’〜4f’’に対する加熱温度T1’’〜T6’’の関係は、T1’’(4a’’)<T2’’(4b’’)<T3’’(4c’’)<T4’’(4d’’)<T5’’(4e’’)<T6’’(4f’’)となる。
【0034】
第一乃至第三実施形態においては、断熱部2が1種類の断熱材で構成されているので、各糸走行路4がそれぞれ異なる温度で加熱されるように、発熱部3と各糸走行路4との間の距離がそれぞれ異なっている。しかし、本実施形態のように、断熱部2を、複数の異なる熱伝導率の断熱材を組み合せて構成することにより、発熱部3と各糸走行路4との間の距離が同一でも、各糸走行路4をそれぞれ異なる温度で加熱できる。
【0035】
なお、上記の糸条加熱ヒーター1は、上記したような試験のために用いる他に、仮撚機等の糸条加工機に設置して、複数の糸条を異なる温度で加熱して加工するためのヒーターとして使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第一実施形態の糸条加熱ヒーターを示しており、(a)は斜視図、(b)は(a)のI−I線断面図。
【図2】第一実施形態の糸条加熱ヒーターの加熱原理を説明するための断面図。
【図3】糸条加熱ヒーターを備えた試験装置を示す斜視図。
【図4】糸条加熱ヒーターの変形例を示す断面図であって、(a)は第二実施形態、(b)は第三実施形態。
【図5】糸条加熱ヒーターの第四実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 糸条加熱ヒーター
2 断熱部
3 発熱部
4 糸走行路
Y 糸条
Ya 糸走行方向
【出願人】 【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
【出願日】 平成19年5月25日(2007.5.25)
【代理人】 【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所


【公開番号】 特開2008−291392(P2008−291392A)
【公開日】 平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願番号】 特願2007−138579(P2007−138579)