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【発明の名称】 無機炭酸塩含有難燃性芳香族ポリアミド繊維
【発明者】 【氏名】高野 恭介
【氏名】石原 繁
【氏名】丸本 泰弘
【課題】簡便な方法によって経済的に難燃性が付与された難燃性芳香族ポリアミド繊維を提供すること。

【構成】アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む平均粒径2μm以下の無機炭酸塩を、全体に対して3質量%以上50質量%以下含む芳香族ポリアミド繊維とする。無機炭酸塩としては炭酸カルシウムが好ましく、芳香族ポリアミドとしては、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタラミドが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む無機炭酸塩を、繊維全体に対して3質量%以上50質量%以下含む芳香族ポリアミド繊維。
【請求項2】
前記芳香族ポリアミド繊維における前記無機炭酸塩の平均粒径は、2.0μm以下である請求項1記載の芳香族ポリアミド繊維。
【請求項3】
前記無機炭酸塩は、炭酸カルシウムである請求項1または2記載の芳香族ポリアミド繊維。
【請求項4】
前記芳香族ポリアミドは、パラ型芳香族ポリアミドを主成分とするものである請求項1から3いずれか記載の芳香族ポリアミド繊維。
【請求項5】
前記パラ型芳香族ポリアミドは、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタラミドである請求項4記載の芳香族ポリアミド繊維。
【請求項6】
限界酸素指数であるLOI値が26以上である請求項1から5いずれか記載の芳香族ポリアミド繊維。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、無機炭酸塩を含有してなる芳香族ポリアミド繊維に関する。さらに詳しくは、簡便な方法によって経済的に難燃性が付与された難燃性芳香族ポリアミド繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芳香族ポリアミド繊維は、耐熱性、機械的特性、および、耐薬品性に優れることから、自動車部品、電気・電子部品、機械部品など、種々の分野において幅広く利用されている。また、最近では、特殊用途に必要とされる特性について、さらなる向上が求められており、難燃性の向上もそのひとつである。
【0003】
芳香族ポリアミド繊維を難燃化する方法としては、水で膨潤させた繊維に難燃剤を含浸させ、その後、乾燥処理を施す方法が知られている(特許文献1から3参照)。特許文献1および特許文献2においては、繊維に含浸させる難燃剤として、リン酸エステル系の難燃剤が開示されている。また、特許文献3においては、酸化アンチモン、高臭素化合物、リン化合物、高塩素化合物が、繊維に含浸させる難燃剤として例示されている。
【0004】
また、芳香族ポリアミド繊維を難燃化する別の方法として、水で膨潤させた繊維に難燃剤を含浸させ、その後、超臨界流体で処理する方法も知られている(特許文献4参照)。
さらに別の方法として、繊維に高熱が付与された場合には、粒子の化合物層が燃焼を阻害する保護膜を形成し、これにより難燃性が付与される難燃性付与用の粒子を、繊維の表面に複合化する方法も提案されている(特許文献5参照)。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−145416号公報
【特許文献2】特開平05−230711号公報
【特許文献3】特開平07−197317号公報
【特許文献4】特開2001−348785号公報
【特許文献5】特開2001−131863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1から3においては、芳香族ポリアミド繊維に難燃剤を含浸せねばならないことから、繊維の製造工程が煩雑となってしまう上、堅牢性に欠けるという問題が生じていた。
【0007】
また、特許文献4においては、超臨界処理を施さねばならないことから、高価な装置が必要となり、容易に実施することは困難であった。
さらに、特許文献5においては、特殊な構造の難燃性付与用の粒子が必要である上、繊維への複合化の工程を別途実施する必要があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術を背景になされたものであり、その目的とするところは、簡便な方法によって経済的に難燃性が付与された難燃性芳香族ポリアミド繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、芳香族ポリアミド繊維にアルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む無機炭酸塩を、繊維全体に対して3質量%以上50質量%以下含有させることにより、簡便な方法によって経済的に難燃性を付与することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む無機炭酸塩を、繊維全体に対して3質量%以上50質量%以下含む芳香族ポリアミド繊維である。
【0011】
また、本発明者らはさらに、芳香族ポリアミド繊維において、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む無機炭酸塩の含有量および当該無機炭酸塩の繊維における平均粒径を適宜制御することにより、芳香族ポリアミドが本来有する引張強度、引張弾性率などの機械的強度を保持し、かつ、紡糸工程における生産安定性を良好とすることができることを見出した。
【発明の効果】
【0012】
本発明の芳香族ポリアミド繊維は、簡便な方法によって経済的に難燃性が付与された繊維となる。さらに、無機炭酸塩の含有量および無機炭酸塩の繊維における平均粒径を適宜制御することにより、芳香族ポリアミドが本来有する引張強度、引張弾性率などの機械的強度を保持し、かつ、紡糸工程における生産安定性を良好とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<芳香族ポリアミド繊維>
本発明の芳香族ポリアミド繊維は、無機炭酸塩を含むものである。以下に、本発明の芳香族ポリアミド繊維の構成成分、原料、製造方法、および物性などについて説明する。
【0014】
[芳香族ポリアミド]
本発明の繊維を構成する芳香族ポリアミドとは、1種または2種以上の2価の芳香族基が、アミド結合により直接連結されたポリマーである。また、芳香族基には、2個の芳香環が酸素、硫黄、または、アルキレン基を介して結合されたもの、あるいは、2個以上の芳香環が直接結合したものも含む。さらに、これらの2価の芳香族基には、メチル基やエチル基などの低級アルキル基、メトキシ基、クロル基などのハロゲン基などが含まれていてもよい。なお、2価の芳香族基を直接連結するアミド結合の位置は限定されず、パラ型、メタ型のいずれであってもよい。
【0015】
このような、芳香族ポリアミドとしては、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、ポリメタフェニレンイソフタルアミド、テレフタル酸成分と3,4’−ジアミノジフェニルエーテル成分およびパラフェニレンジアミン成分とが共重合されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド、テレフタル酸成分とフェニルベンゾイミダゾール骨格を有する芳香族ジアミン成分およびパラフェニジレンジアミン成分とが共重合されたコポリパラフェニレン・フェニルベンゾイミダゾール・テレフタルアミドなどを挙げることができる。
また、本発明に用いられる芳香族ポリアミドとしては、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0016】
本発明の繊維を構成する芳香族ポリアミドとしては、機械的特性に優れる観点から、パラ型芳香族ポリアミドを主成分とするものが好ましい。ここで、「主成分」とは、繊維を構成する芳香族ポリアミド全体に対して、50質量%より大きく100質量%の範囲となることを意味する。なお、本発明においては、パラ型芳香族ポリアミドが100質量%であることが特に好ましい。
【0017】
さらに、本発明においては、機械的強度が特に優れていることから、ポリパラフェニレンテレフタルアミドまたはコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミドを用いることが好ましく、さらに成形加工性の観点から、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミドを用いることが最も好ましい
【0018】
〔芳香族ポリアミドの原料〕
本発明の繊維を構成する芳香族ポリアミドは、芳香族ジカルボン酸クロライド成分と芳香族ジアミン成分とを原料として用い、これらを反応せしめることにより得ることができる。
【0019】
(芳香族ジカルボン酸クロライド)
芳香族ポリアミドの原料となる芳香族ジカルボン酸クロライド成分は、特に限定されるものではなく、一般的に公知なものを用いることができる。このような芳香族ジカルボン酸クロライド成分としては、例えばイソフタル酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド、2−クロロテレフタル酸ジクロライド、2,5−ジクロロテレフタル酸ジクロライド、2,6−ジクロロテレフタル酸ジクロライド、3−メチルテレフタル酸ジクロライド、4、4’−ビフェニルジカルボン酸ジクロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロライドなどを挙げることができる。これらのなかでは、原料の汎用性並びに得られる繊維の耐熱性の観点から、テレフタル酸ジクロライドまたはイソフタル酸ジクロライドを用いることが好ましい。さらに、得られる繊維の耐熱性および機械的特性の観点から、パラ型の芳香族ポリアミドを得ることのできるテレフタル酸ジクロライドを用いることが特に好ましい。
【0020】
(芳香族ジアミン)
芳香族ポリアミドの原料となる芳香族ジアミン成分としては、特に限定されるものではなく、一般的に公知なものを用いることができる。また、芳香族ジアミン成分の芳香環は、置換されていても、あるいは非置換であってもよい。
【0021】
このような芳香族ジアミン成分としては、例えば、p−フェニレンジアミン、2−クロル−p−フェニレンジアミン、2,5−ジクロル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジクロル−p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォンなどを挙げることができる。
また、本発明の繊維を構成する芳香族ポリアミドは、芳香族ジアミン成分が1種単独で用いられるものであっても、あるいは2種以上が併用されるものであってもよい。
【0022】
これらの中では、原料の汎用性並びに得られる繊維の耐熱性の観点からは、m−フェニレンジアミンを用いることが好ましい。また、得られる繊維の耐熱性および機械的特性の観点からは、パラ型フェニレンジアミン、パラ型ビフェニレンジアミンなどのパラ型芳香族ジアミンから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、なかでも、p−フェニレンジアミンの単独、あるいは、p−フェニレンジアミンと3,4’−ジアミノジフェニルエーテルとの併用が特に好ましい。
【0023】
〔芳香族ポリアミドの製造方法〕
本発明の繊維の構成成分となる芳香族ポリアミドは、従来公知の方法にしたがって製造することができる。具体的には、例えば、溶媒中において、上記の芳香族ジカルボン酸クロライド成分と芳香族ジアミン成分とを、低温溶液重合、または界面重合することにより得ることができる。
【0024】
ここで、重合に用いられる溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、ジメチルイミダゾリジノンなどの有機極性アミド系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの水溶性エーテル化合物、メタノール、エタノール、エチレングリコールなどの水溶性アルコール系化合物、アセトン、メチルエチルケトンなどの水溶性ケトン系化合物、アセトニトリル、プロピオニトリルなどの水溶性ニトリル化合物などを挙げることができる。これらの溶媒は1種単独であっても、また、2種以上の混合溶媒として使用することも可能である。なお、用いられる溶媒は、脱水されていることが望ましい。
【0025】
また、得られる芳香族ポリアミドの溶媒への溶解性を向上させる目的で、一般に公知の無機塩を適当量添加することが好ましい。無機塩の添加時期は特に限定されるものではなく、重合の開始前、途中、あるいは重合終了時など、任意の時期に添加することができる。添加可能な無機塩としては、例えば、塩化リチウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。
【0026】
芳香族ポリアミドの原料となる上記の芳香族ジカルボン酸クロライド成分と芳香族ジアミン成分との比は、芳香族ジアミン成分に対する芳香族ジカルボン酸クロライド成分のモル比として、0.90以上1.10以下の範囲とすることが好ましく、0.95以上1.05以下の範囲とすることがより好ましい。
【0027】
また、本発明に用いられる芳香族ポリアミドは、少なくとも一方の末端が封止された芳香族ポリアミドであってもよい。芳香族ポリアミドの末端の封止は、末端封止剤を用いて行うことができ、末端封止剤としては、例えば、フタル酸クロライドおよびその置換体、アニリンおよびその置換体などを挙げることができる。
【0028】
さらに、一般に、酸クロライドとジアミンの反応においては、生成する塩化水素のごとき酸を捕捉するために、脂肪族や芳香族のアミン、第4級アンモニウム塩を併用することも可能である。
反応の終了後には、必要に応じて塩基性の無機化合物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウムなどを添加して、中和反応を実施することが好ましい。
【0029】
芳香族ジカルボン酸クロライド成分と芳香族ジアミン成分との反応条件は、特に限定されるものではない。酸クロライドとジアミンとの反応は一般に急速であり、反応温度としては、例えば、−25℃以上100℃以下の範囲とすること好ましく、−10℃以上80℃以下の範囲とすることが更に好ましい。
【0030】
上記のように重合して得られる芳香族ポリアミドは、アルコール、水などの非溶媒に投入して沈殿せしめ、パルプ状にして取り出すことができる。取り出された芳香族ポリアミドを再度他の溶媒に溶解し、その後に成形に供することもできるが、重合反応によって得られたポリマー溶液を、そのまま成形用溶液に調整して用いることも可能である。一度取り出してから再度溶解させる際に用いる溶媒としては、芳香族ポリアミドを溶解するものであれば特に限定されるものではないが、上記した芳香族ポリアミドの重合に用いられる溶媒とすることが好ましい。
【0031】
[無機炭酸塩]
本発明において使用される無機炭酸塩は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含むものである。本発明に用いられる無機炭酸塩は、無毒性であり、火災時に有毒ガスや腐食性ガスを発生させることなく、低発煙性のものであることが望ましく、このような無機炭酸塩としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ベリリウムなどが挙げられる。また、無機炭酸塩は1種単独でも、あるいは2種類以上を併用することもできる。これらの中では、取扱い性および粒子の微細化が安易な点から、炭酸カルシウムを用いることが好ましい。
【0032】
〔無機炭酸塩の含有量〕
本発明の芳香族ポリアミド繊維における無機炭酸塩の含有量は、繊維全体に対して3質量%以上50質量%以下の範囲である。含有量が3質量%未満である場合には、十分な難燃性の向上がみられず、一方で、含有量が50質量%を超える場合には、紡糸工程において生産安定性を維持することが困難となる。無機炭酸塩の含有量は、繊維全体に対して10質量%以上50質量%以下の範囲とすることがに好ましく、20質量%以上50質量%以下の範囲とすることがさらに好ましい。
【0033】
〔無機炭酸塩の平均粒径〕
本発明の芳香族ポリアミド繊維における無機炭酸塩の平均粒径は、2.0μm以下であることが好ましい。繊維における平均粒径が2.0μm以下である場合には、少量の添加であっても十分な難燃性の向上がみられ、また、紡糸工程における生産安定性も良好となる。芳香族ポリアミド繊維における無機炭酸塩の平均粒径は、1.5μm以下であることがさらに好ましく、1.0μm以下であることが特に好ましい。
【0034】
本発明の芳香族ポリアミド繊維が高い難燃性を示すのは、繊維に含まれる無機炭酸塩の加熱による吸熱分解反応によるためである。本発明において、繊維に含まれる無機炭酸塩の平均粒子径を小さくすると、粒子の表面積が増加することから、限界酸素指数(LOI値)が大きく向上すると考えられる。芳香族ポリアミド繊維に含まれる無機炭酸塩の平均粒径を2.0μm以下に制御すれば、少ない添加量で高い難燃性が得られるとともに、紡糸工程での安定生産を実現することができる。さらには、無機炭酸塩の添加量を増加させた場合であっても良好な製糸性を維持することが可能となり、更なる限界酸素指数(LOI値)の向上が可能となる。
【0035】
芳香族ポリアミド繊維における無機炭酸塩の平均粒径を2.0μm以下に制御する方法は、特に限定されるものではない。例えば、十分に小さい粒子径を有する無機炭酸塩を芳香族ポリアミド溶液に含有させて紡糸用溶液(ドープ)を調整する方法、あるいは、紡糸用溶液(ドープ)となる溶媒に、ビーズミルなどを用いて十分に小さい粒子径となるよう無機炭酸塩を予め粉砕分散させ、得られたスラリー(分散液)と芳香族ポリアミド溶液とを混合して紡糸用溶液(ドープ)を調製する方法などを挙げることができる。
【0036】
なお、本発明の芳香族ポリアミド繊維に含まれる無機炭酸塩の平均粒径は、該芳香族ポリアミド繊維を繊維軸に対して垂直方向に切断し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてその切片を観察することにより得ることが可能である。
【0037】
[その他成分]
本発明の芳香族ポリアミド繊維においては、繊維に機能性等を付与する目的で、本発明の要旨を超えない範囲において、無機炭酸塩以外の添加剤など、その他の任意成分を適宜含有させることができる。本発明に用いられる任意成分としては、例えば、繊維状、あるいは、板状、鱗片状、粒状、不定形状、破砕品などの非繊維状の形状を有する充填剤が挙げられ、具体的には、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、全芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属酸化物、カーボンナノチューブ、カーボン粉末、黒鉛、カーボンフレーク、鱗片状カーボンなどを挙げることができる。また、本発明の芳香族ポリアミド繊維においては、上記のようなその他成分は、1種単独のみならず2種以上を併用して使用することもできる。
【0038】
また、その他成分となる充填剤は、公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、あるいはその他の表面処理剤によって、その表面が処理されたものであってもよい。
【0039】
[芳香族ポリアミド繊維の製造方法]
本発明の芳香族ポリアミド繊維の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を用いて製造することができ、例えば、芳香族ポリアミド、無機炭酸塩、および、溶媒を含む紡糸用溶液(ドープ)を調製し、得られた紡糸用溶液(ドープ)をノズルから吐出する方法が挙げられる。
【0040】
芳香族ポリアミド、無機炭酸塩、および、溶媒を含む紡糸用溶液(ドープ)を調整する方法は特に限定されるものではなく、例えば、芳香族ポリアミドの溶液に無機炭酸塩を加える方法、芳香族ポリアミドの溶液と無機炭酸塩の分散液(スラリー)とを混合する方法、無機炭酸塩の分散液(スラリー)に芳香族ポリアミドを添加し溶解する方法、重合時に無機炭酸塩が添加された芳香族ポリアミドを溶媒に溶解する方法などを挙げることができる。
【0041】
紡糸用溶液(ドープ)の調製に用いられる溶媒としては、上記した芳香族ポリアミドの重合に用いられる溶媒であって、芳香族ポリアミドおよび無機炭酸塩を溶解および分散させることのできる溶媒を使用することが好ましい。また、用いられる溶媒は1種単独であっても、2種以上の溶媒を混合した混合溶媒であってもよい。
【0042】
また、繊維に機能性等を付与する目的で、本発明の要旨を超えない範囲において添加剤等のその他の任意成分を配合する場合には、ドープの調整において導入することができる。その他の任意成分としては、上記した任意成分や、酸化防止剤、耐候剤、染料、帯電防止剤、導電性ポリマー、その他の重合体などを挙げることができる。また、導入の方法は特に限定されるものではなく、例えば、ドープに対してルーダーやミキサ等を使用して導入することができる。
【0043】
なお、紡糸用溶液(ドープ)におけるポリマー濃度、すなわち芳香族ポリアミドの濃度は、0.5質量%以上30質量%以下の範囲とすることが好ましく、1質量%以上25質量%以下の範囲とすることがより好ましい。紡糸用溶液(ドープ)におけるポリマー濃度が0.5質量%未満の場合には、ポリマーの絡み合いが少ないことから紡糸に必要な粘度が得られない。一方で、ポリマー濃度が30質量%を超える場合には、ノズルから吐出する際に不安定流動が起こりやすくなり、安定的に紡糸することが困難となる。
【0044】
調整された紡糸用溶液(ドープ)からは、湿式法、半乾半湿式法などにより繊維を成形し、溶媒を除去した後に乾燥することで、本発明の芳香族ポリアミド繊維を得ることができる。例えば、半乾半湿式法においては、紡糸用溶液(ドープ)をノズルから吐出し、貧溶媒からなる凝固浴中で凝固させて未延伸糸を得て、次に、得られた未延伸糸を必要に応じて延伸することにより配向糸を得て、引き続き、水洗・乾燥工程を経ることにより繊維を得ることができる。
【0045】
延伸の方法としては、凝固糸状態での水洗延伸、沸水延伸のみならず、乾燥糸状態での加熱延伸なども行うことができる。延伸倍率については特に制限はないが、1.05倍以上であることが好ましく、1.1倍以上であることがさらに好ましい。延伸倍率を制御することにより、得られる芳香族ポリアミド繊維の伸度および強度を制御することができる。
【0046】
[芳香族ポリアミド繊維の物性]
本発明の芳香族ポリアミド繊維は、難燃性を有するとともに、無機炭酸塩の含有量および無機炭酸塩の繊維における平均粒径を適宜制御することにより、芳香族ポリアミドが本来有する引張強度、引張弾性率などの機械的強度を保持し、かつ、紡糸工程における生産安定性が良好となるものである。本発明の芳香族ポリアミド繊維は、以下の物性を有することが好ましい。
【0047】
〔限界酸素指数(LOI値)〕
本発明の芳香族ポリアミド繊維は、無機炭酸塩を含有していない繊維と比較して、限界酸素指数(LOI値)を5%以上向上させることが可能である。本発明の芳香族ポリアミド繊維の限界酸素指数(LOI値)は、26以上であることが好ましく、28以上であることがさらに好ましい。限界酸素指数(LOI値)が26未満である場合には、難燃性繊維としての芳香族ポリアミド繊維の特徴がなくなるため好ましくない。
【0048】
なお、本発明における「限界酸素指数(LOI値)」とは、繊維製品の燃焼性を示す指標であり、JIS L 1091 E法に基づき、以下の条件で測定して得られる値をいう。
(測定条件)
試験片の区分 :E−2号
布帛の作成方法 :丸編生地(23ウェール/インチ、18コース/インチ)
点火器の熱源の種類:JIS K2240 1種1号(LPガス)
なお、以下の(a)もしくは(b)の早いほうで限界酸素指数を決定
(a)限界酸素指数を決定する際の燃焼長さ:50mm
(b)限界酸素指数を決定する際の燃焼時間:180秒
【0049】
〔引張強度〕
本発明の芳香族ポリアミド繊維は、無機炭酸塩の含有量および無機炭酸塩の繊維における平均粒径を適宜制御することにより、無機炭酸塩を含有していない繊維と同等な引張強度を保持することができる。本発明の芳香族ポリアミド繊維の引張強度は、15.0cN/dtex以上であることが好ましく、20.0cN/dtex以上であることがさらに好ましい。引張強度が15.0cN/dtex未満である場合には、高強力繊維としての芳香族ポリアミドとしての特徴がなくなるため好ましくない。
【0050】
なお、本発明における「引張強度」とは、ASTM法 D885に基づき、以下の条件で測定して得られる値をいう。
(測定条件)
測定試料長 :500mm
チャック引張速度:250mm/min
初荷重 :0.2cN/dtex
試験スタート法 :スラックスタート法
【0051】
〔紡糸工程における生産安定性〕
本発明の芳香族ポリアミド繊維は、無機炭酸塩の含有量および無機炭酸塩の繊維における平均粒径を適宜制御することにより、紡糸工程における生産安定性を良好とすることができる。本発明における「紡糸工程における生産安定性」とは、24時間連続の紡糸テストにおいて、紡糸用溶液(ドープ)をノズルから吐出する際の糸切れの頻度が少ないことを意味する。本発明の芳香族ポリアミド繊維は、糸切れをほとんど発生することなく連続生産することができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、その要旨を超えない限りこれらに何ら限定されるものではない。
【0053】
<測定・評価方法>
実施例および比較例においては、以下の項目について、以下の方法によって測定・評価を実施した。
【0054】
[引張強度(cN/dtex)]
引張試験機(オリエンテック社製、商品名:テンシロン万能試験機、型式:RTC−1210A)を用いて、ASTM D885の手順に基づき、以下の条件にて測定を実施した。
(測定条件)
測定試料長 :500mm
チャック引張速度:250mm/min
初荷重 :0.2cN/dtex
試験スタート法 :スラックスタート法
【0055】
[限界酸素指数(LOI値)]
JIS L 1091 E法に基づき、以下の条件にて測定を実施した。
(測定条件)
試験片の区分 :E−2号
布帛の作成方法 :丸編生地(23ウェール/インチ、18コース/インチ)
点火器の熱源の種類:JIS K2240 1種1号(LPガス)
なお、以下の(a)もしくは(b)の早いほうで限界酸素指数を決定
(a)限界酸素指数を決定する際の燃焼長さ:50mm
(b)限界酸素指数を決定する際の燃焼時間:180秒
【0056】
[紡糸工程における生産安定性]
24時間連続の紡糸テストにおいて、紡糸用溶液(ドープ)をノズルから吐出する際の糸切れの頻度につき、以下の基準によって評価を行った。
(評価基準)
◎:0〜1回
○:2〜4回
△:5回以上
×:紡糸不可
【0057】
[繊維における無機炭酸塩の平均粒径]
芳香族ポリアミド繊維を繊維軸と垂直方向に切断して厚み90nmの切片を作成し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて得られた切片を観察し、10μm×10μmの範囲を無作為に20箇所選択し、存在する粒子の粒子径を測定し、その平均値を求めた。
【0058】
<実施例1>
無機炭酸塩としては、炭酸カルシウム(宇部マテリアル株式会社製、商品名:CS・3N−A)を使用した。
【0059】
[炭酸カルシウム分散液の調整]
浅田鉄工社製ビーズミル(商品名:Nano Grain Mill)を用いて、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に6質量%となるように、炭酸カルシウムのNMP分散液(スラリー)を調整した。この時、メディアとしては、0.3mmのジルコニアビーズを使用した。
【0060】
[紡糸用溶液(ドープ)の調整]
得られた炭酸カルシウム分散液、およびNMPを、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド(共重合モル比が1:1の芳香族ポリアミド)の濃度6質量%のNMP溶液中に、得られる紡糸用溶液(ドープ)中の炭酸カルシウムの含有量が芳香族ポリアミドの全質量を基準として5質量%となる割合で添加し、温度80℃で4時間撹拌混合することにより、紡糸用溶液(ドープ)を得た。
【0061】
[芳香族ポリアミド繊維の製造]
得られた紡糸用溶液(ドープ)を、孔数667ホールの紡糸口金から吐出し、エアーギャップ約10mmを介してNMP濃度30質量%の水溶液中に紡出して凝固させることにより、未延伸糸を得た(半乾半湿式紡糸法)。引き続き、得られた未延伸糸を水洗、乾燥し、次いで、温度500℃で10倍に延伸した後、巻き取ることにより、炭酸カルシウムが良好に分散した芳香族ポリアミド繊維を得た。
得られた芳香族ポリアミド繊維は、総繊度1100dtex、フィラメント数667フィラメント、単糸繊度1.65detx/フィラメントであった。
【0062】
[測定・評価]
得られた繊維を用いて、上記の測定方法により、引張強度、引張弾性率、限界酸素指数(LOI値)、および、炭酸カルシウムの平均粒径の測定を行った。結果を表1に示す。また、繊維の紡糸工程における生産安定性の評価結果を表1に併せて示す。
【0063】
<実施例2>
炭酸カルシウムの含有量を、芳香族ポリアミドの全質量に対して10質量%となる割合で添加する以外は、実施例1と同様にして炭酸カルシウム含有芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維について、実施例1と同様に各種の測定・評価を実施した。結果を表1に示す。
【0064】
<実施例3>
炭酸カルシウムの含有量を、芳香族ポリアミドの全質量に対して45質量%となる割合で添加する以外は、実施例1と同様にして炭酸カルシウム含有芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維について、実施例1と同様に各種の測定・評価を実施した。結果を表1に示す。
【0065】
<実施例4>
炭酸カルシウムの含有量を、芳香族ポリアミドの全質量に対して10質量%となる割合で添加し、かつ、炭酸カルシウム分散液の調整の際にビーズミルを使用しない以外は、実施例1と同様にして炭酸カルシウム含有芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維について、実施例1と同様に各種の測定・評価を実施した。結果を表1に示す。
【0066】
<比較例1>
炭酸カルシウムを添加しない以外は、実施例1と同様にして炭酸カルシウム含有芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維について、実施例1と同様に各種の測定・評価を実施した。結果を表1に示す。
【0067】
<比較例2>
炭酸カルシウムの含有量を、芳香族ポリアミドの全質量に対して0.1質量%となる割合で添加する以外は、実施例1と同様にして炭酸カルシウム含有芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維について、実施例1と同様に各種の測定・評価を実施した。結果を表1に示す。
【0068】
<比較例3>
炭酸カルシウムの含有量を、芳香族ポリアミドの全質量に対して55重量%となる割合で添加する以外は、実施例1と同様にして紡糸を実施したが、ノズルでの糸切れが多発し、炭酸カルシウム含有芳香族ポリアミド繊維を得ることはできなかった。
【0069】
【表1】


【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の芳香族ポリアミド繊維は、難燃性を有しつつ、芳香族ポリアミドが本来有する引張強度、引張弾性率などの機械的強度を保持し、かつ、紡糸工程における生産安定性にも優れたものとなることから、芳香族ポリアミドが有する各種の特性に加えて、難燃性が求められる分野に好適に用いることができる。本発明の芳香族ポリアミド繊維は、例えば、消防服、防火壁の補強剤、自動車関係の補強剤などの分野(用途)に、好適に用いることができる。

特許の図
【出願人】 【識別番号】303013268
【氏名又は名称】帝人テクノプロダクツ株式会社
【出願日】 平成18年8月3日(2006.8.3)
【代理人】 【識別番号】100099678
【弁理士】
【氏名又は名称】三原 秀子
【公開番号】 特開2008−38274(P2008−38274A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−211966(P2006−211966)