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【発明の名称】 難燃性複合繊維
【発明者】 【氏名】青山 雅俊

【氏名】鈴木 俊行

【氏名】望月 克彦

【要約】 【課題】燃焼時にドリップが無く、難燃性能に優れた複合繊維であって、高速紡糸等の過酷な成形加工条件においても糸切れ等が無い工程安定性に優れた難燃性複合繊維を提供する。

【構成】芯部A、鞘部Bともにポリエステルからなる芯鞘複合繊維であって、芯部Aまたは鞘部BのポリエステルがRSiO1.5(Rは有機基)で示される構造単位を含むシリコーン系化合物を含有し、かつポリエステルに対する配合比が1wt%以上、10wt%未満であり、該シリコーン系化合物を含有する層の比率が50%以上であることを特徴とする難燃性複合繊維。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯部A、鞘部Bともにポリエステルからなる芯鞘複合繊維であって、芯部Aまたは鞘部BのポリエステルがRSiO1.5(Rは有機基)で示される構造単位を含むシリコーン系化合物を含有し、かつポリエステルに対する配合比が1wt%以上、10wt%未満であり、該シリコーン系化合物を含有する層の比率が50%以上であることを特徴とする難燃性複合繊維。
【請求項2】
シリコーン系化合物のシラノール基量が重量比で全シリコーン系化合物に対して2%以上10%以下であることを特徴とする請求項1記載の難燃性複合繊維。
【請求項3】
芯部Aまたは鞘部Bにイミド構造を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1または2記載の難燃性複合繊維。
【請求項4】
イミド構造を有する化合物のTgが130℃以上300℃以下である請求項3記載の難燃性複合繊維。
【請求項5】
イミド構造含有化合物がポリエーテルイミドである請求項3または4記載の難燃性複合繊維。
【請求項6】
シリコーン系化合物が鞘部Bに含有されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の難燃性複合繊維。
【請求項7】
イミド構造を有する化合物が鞘部Bに含有されていることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項記載の難燃性複合繊維。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は難燃素材、特に熱可塑性素材が燃焼時にドリップ(溶融滴下)がなく、かつ難燃性を発現することのできる難燃繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、易燃焼性樹脂、易燃焼性繊維などの素材の難燃化手法として、含塩素系難燃剤、含臭素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤、またはハロゲン系難燃剤とアンチモン系難燃剤を含有させた素材が数多く提案されている。しかしながら、これらの素材は難燃性には優れるもののハロゲン系難燃剤は燃焼時にハロゲン化ガスを発生する懸念があるなどの問題があり、これらの問題を解決するために数多くの検討がなされている。
【0003】
例えばハロゲン元素やアンチモン元素を含まない、リン系難燃剤を含有した素材が数多く提案されているが、難燃性はハロゲン系、アンチモン系難燃剤よりも低く、難燃性能は不十分である。
【0004】
また、ハロゲン元素、アンチモン元素、リン元素を含まないシリコーン系化合物を使用した検討も行われている。
【0005】
このシリコーン系化合物とは1官能性のRSiO0.5(M単位)、2官能性のRSiO1.0(D単位)、3官能性のRSiO1.5(T単位)、4官能性のSiO2.(Q単位)で示される構造単位のいずれかから構成されるものである。
【0006】
このシリコーン系化合物を利用して難燃性を付与する例として、非シリコーンポリマーとモノオルガノシロキサンとの混練物からなる溶融加工可能なポリマー組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
確かにこの例はハロゲン元素やアンチモン元素、リン元素を含まず、ある程度の難燃性を発現することが可能であるが、難燃性を発現するためには非シリコーンポリマーとモノオルガノシロキサンの配合比を10:1乃至1:5の範囲にすることが必要であり、モノオルガノシロキサンの添加量が多く、コストアップや非シリコーンポリマーの物性低下を招く問題がある。また、ドリップを抑制できないといった課題がある。
【0008】
また、高分子量の線状ポリエステルにポリエーテルイミドとオルガノシロキサンのコポリマーと含有した難燃性の熱可塑性成型用組成物が提案されている(特許文献2参照)。
【0009】
確かにこの例はある程度の難燃性を発現することは可能であるが、耐熱性に劣るため、難燃性やドリップ抑制の効果が低いといった課題がある。
【0010】
また、官能基を側鎖に有するシリコーンオイルを4重量%以下含有し、かつ燃焼時に溶融滴下しない繊維用ポリエステル系樹脂組成物が提案されている(特許文献3参照)。
【0011】
確かにこの例はある程度の難燃性やドリップ抑制の効果を発現するが、耐熱性に劣るため、難燃性が低いといった課題があり、未だドリップを抑制し、かつ充分な難燃性を発現する技術の確立はできていないのが現状である。
【0012】
また、特許文献4、5では、フェニル基を含有し3官能性のRSiO1.5(T単位)を構成単位に有するシリコーン系化合物を用いた検討が行われている。確かにこのようなシリコーン系化合物を用いるとある程度高い難燃性とドリップ抑制効果が得られるが、紡糸あるいは糸加工時の安定性が不十分であり、特に高速紡糸や仮撚加工工程において糸切れが多くなるなどの課題を有していた。
【0013】
また、加えて、特許文献5では、一旦、繊維とした後、後加工により繊維表層に難燃剤や炭化性樹脂を設ける検討がなされているが、加工工程が増えることによるコストアップや製品の風合い低下などの課題があった(特許文献4,5参照)。
【特許文献1】特開昭54−036365号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平07−166040号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平08−209446号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2005−097819号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開2005−264417号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は前記した現状に鑑み、燃焼時のドリップが改善され、かつ難燃性が発現するポリエステル系繊維であって、特に製糸性や糸加工性に優れた繊維を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記の課題を解決するため、以下の構成を採用する。
「芯部A、鞘部Bともにポリエステルからなる芯鞘複合繊維であって、芯部Aまたは鞘部BのポリエステルがRSiO1.5(Rは有機基)で示される構造単位を含むシリコーン系化合物を含有し、かつポリエステルに対する配合比が1wt%以上、10wt%未満であり、該シリコーン系化合物を含有する層の比率が50%以上であることを特徴とする難燃性複合繊維。」
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、難燃繊維素材として、具体的には、産業用途、衣料用途、非衣料用途などに用いることが可能な、ドリップによる素材の溶融滴下が無く、かつ、難燃性を発現することが可能なポリエステル繊維を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0018】
本発明のポリエステルは特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびポリ乳酸から選ばれたものが好ましい。また、これらのポリエステルに種々の公知の共重合成分が含まれていても良い。
【0019】
本発明のポリエステルには、本発明の目的とするドリップ抑制の効果、難燃性、繊維の物性、加工特性などの低下が無い範囲で、他の有機ポリマーや無機化合物とのブレンド、アロイ、コンポジットなどを用いることも可能である。また、繊維構造物に用いる場合、他の樹脂からなる繊維との混紡や混繊なども可能である。
【0020】
また、本発明のポリエステルには、ヒンダートフェノール系、アミン系、ホスファイト系、チオエステル系などの酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、シアノアクリレート系などの紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、シアニン系、スチルベン系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリノン系、キナクリドン系などの有機顔料、無機顔料、蛍光増白剤、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン等の粒子、抗菌剤、静電剤などの添加剤が含有されても良い。
【0021】
本発明のシリコーン系化合物とは、RSiO1.5(Rは有機基)で示される構造単位を少なくとも含むシリコーン系化合物である。
【0022】
一般に、シリコーン系化合物とはRSiO0.5(M単位)、RSiO1.0(D単位)、RSiO1.5(T単位)、SiO2.0(Q単位)の構造単位からなるが、本発明はRSiO1.5(T単位)の構造単位を少なくとも含むシリコーン系化合物である。T単位単独で構成されていても良く、MT単位、DT単位、TQ単位などの複数の構造単位からなっていても良いが、シリコーン系化合物の耐熱性の点から、好ましくはRSiO1.5(T単位)の構造単位をシリコーン系化合物全体に対してモル比で87.5%以上含有することが好ましく、さらに好ましくは90%以上である。シリコーン系化合物にT単位をこのような範囲で含むことで、シリコーン系化合物の耐熱性が向上し、燃焼時にシリコーン系化合物の分解が抑制され、樹脂組成物の難燃性を向上することができる。
【0023】
また、シリコーン系化合物中のシラノール基量は重量比でシリコーン系化合物の全体の重量に対して2%以上10%以下であることが好ましく、3%以上8%以下であることがさらに好ましい。ここで、シラノール基量とは、シリコーン系化合物中のSiに結合したOH基の重量のことである。シラノール基量がこの範囲であると、燃焼時にポリエステル系樹脂とシリコーン系化合物が架橋構造を形成しやすく、ポリエステル系樹脂の炭化を促進するため、ドリップ抑制効果が大きくなる。また、ポリエステルと反応してゲル化することが少なく、物性の低下や加工特性の低下が回避できる。
【0024】
シラノール基量は、29Si−NMRにおいてシラノール基を含有しない構造由来のSiO2.0、RSiO1.5、RSiO1.0、RSiO0.5のピークの面積(積分値)とシラノール基を含有する構造由来のSi(OH)、SiO0.5(OH)、SiO1.0(OH)、SiO1.5(OH)、RSi(OH)、RSiO0.5(OH)、RSiO1.0(OH)、RSi(OH)、RSiO0.5(OH)、RSi(OH)のピークの面積(積分値)の比から算出することが可能である。
【0025】
例えば、シリコーン系化合物がRSiO1.5とRSiO1.0(OH)のみからなる場合は、RSiO1.5とRSiO1.0(OH)の積分値の比が1.5(RSiO1.):1.0(RSiO1.0(OH))であれば下記式1の通り求めることができる。
(式1)
シラノール基量(wt%)
={(17×RSiO1.0(OH)の積分値の比)/(RSiO1.0(OH)の分子量×RSiO1.0(OH)の積分値の比+RSiO1.5の分子量×RSiO1.5積分値の比)}×100
={(17×1.0)/(138×1.0+129×1.5)}×100
=5.13
また、シリコーン系化合物はQ単位の構造単位のみからなる場合を除いて、Si元素と結合する有機基を含有している。ここでいう有機基としては水素基、水酸基、炭化水素基、芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0026】
炭化水素基の具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ビニル基、アリル基、メタクリル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としてはフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0027】
シリコーン系化合物の汎用性や耐熱性の観点から有機基は水酸基、メチル基およびフェニル基から選ばれた基が好ましく、さらに好ましくはフェニル基である。フェニル基の含有量は、シリコーン系化合物中に含まれる全有機基に対してモル比で85%以上であることが好ましい。
【0028】
また、シリコーン系化合物は、ポリエステル系樹脂組成物への分散性の観点から、GPCで測定されポリスチレン換算で求められる重量平均分子量が500以上100000以下の範囲が好ましく、さらに好ましくは1000以上10000以下の範囲である。
【0029】
シリコーン系化合物の配合比は、ポリエステルに対して1wt%以上、10wt%未満である。配合比がこの範囲より少ないと十分なドリップ抑制の効果および難燃性は発現せず、また配合比がこの範囲を超えると紡糸安定性や加工性などの工程通過性が低下する。
【0030】
シリコーン系化合物は、一般的な重縮合によって製造することができる。例えばRSiOCl(トリオルガノクロロシラン)、RSiOCl(ジオルガノジクロロシラン)、RSiOCl(モノオルガノトリクロロシラン)、SiOCl(テトラクロロシラン)をモノマーとして用い、酸もしくはアルカリの触媒下で縮合せしめ、シリコーン系化合物を合成する。目的とするM、D、T、Q単位のモル比に応じて、原料のRSiOCl(M単位に相当)、RSiOCl(D単位に相当)、RSiOCl(T単位に相当)、SiOCl(Q単位に相当)のモル比を調整する。
【0031】
また、シリコーン系化合物に含有される有機基Rの含有量は、前記したモノマーにおける有機基Rの含有量に支配される。したがって、シリコーン系化合物に含有されるフェニル基の含有量は、前記したモノマーのRを所望の量だけフェニル基で置換することにより調整することができる。
【0032】
また、シリコーン系化合物に含有されるシラノール基の含有量は、反応時間によって制御可能である。また、封鎖剤としてRSiOClやRSiOHをシラノール基と反応させることでシラノール基の含有量を制御することも可能である。シラノール基の含有量は、前記したとおり29Si−NMRにより測定可能である。
【0033】
また、シリコーン系化合物の重量平均分子量は、製造時の反応時間によって制御可能である。分子量の測定はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定し、ポリスチレン換算で算出することができる。
【0034】
このシリコーン系化合物は複合繊維の芯部Aまたは鞘部Bのいずれかに含有されており、ドリップ抑制効果及び難燃性の観点から、該シリコーン系化合物が含まれる層の比率が50%以上であることが必要である。さらには60%以上が好ましい。ただし、85%を越えると逆に高速紡糸時の糸切れが増加するなど加工時の安定性が低下してくる場合がある。ここでシリコーン系化合物が含まれる層の比率とは、繊維断面において全体の断面積に対する当該シリコーン系化合物含有層の面積の割合をいう。
【0035】
また、本発明のシリコーン系化合物が鞘部Bに含まれる難燃性複合繊維とすると特にドリップ抑制効果が大きくなり好ましい。
【0036】
本発明では芯部Aまたは鞘部Bにイミド構造を有する化合物が含有されていると、繊維とした時のノンドリップ性、難燃性がさらに向上し好ましい。
【0037】
本発明におけるイミド構造を有する化合物とは、分子構造中に−CO−NR’−CO−(R’は有機基)の構造を有する化合物のことである。
【0038】
イミド構造を有する化合物としては、熱可塑性を有するものが加工性の点から好ましい。ガラス転移温度が130℃以上300℃以下であることが好ましく、130℃以上250℃以下であることがより好ましい。
【0039】
イミド構造を有する化合物として、具体的にはポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどが挙げられる。
【0040】
このイミド構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式で示されるような構造単位を含有するものが好ましい。
【0041】
【化1】


【0042】
上記式中のArは6〜42個の炭素原子を有する芳香族基であり、R’は6〜30個の炭素原子を有する芳香族基、2〜30個の炭素原子を有する脂肪族基、および4〜30個の炭素原子を有する脂環族基からなる群より選択された2価の有機基である。
【0043】
上記一般式において、Arとしては、例えば、
【0044】
【化2】


【0045】
【化3】


【0046】
を挙げることができる。R’としては、例えば、
【0047】
【化4】


【0048】
【化5】


【0049】
(式中、nは2〜30である)
を挙げることができる。
【0050】
これらは、本発明の効果を阻害しない範囲内で、1種あるいは2種以上一緒にポリマー鎖中に存在してもよい。
【0051】
イミド構造を有する化合物は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂との溶融成形性や取り扱い性などの点から、好ましい例として、下記一般式で示されるように、ポリイミド構成成分にエーテル結合を含有するポリエーテルイミドを挙げることができる。
【0052】
【化6】


【0053】
ただし、上記式中Rは、2〜30個の炭素原子を有する芳香族基、脂肪族基、および脂環族基からなる群より選択された2価の有機基であり、Rは、前記R’と同様の2価の有機基である。
【0054】
上記R、Rの好ましい例としては、下記式群に示される芳香族基
【0055】
【化7】


【0056】
を挙げることができる。
【0057】
ポリエステルとの相溶性、溶融成形性等の観点から、下記式で示される構造単位を有する、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミン、またはp−フェニレンジアミンとの縮合物が好ましい。
【0058】
【化8】


【0059】
この構造単位を有するポリエーテルイミドは、“ウルテム”(登録商標)の商標名で、ジーイープラスチックス社より入手可能である。例えば、m−フェニレンジアミン由来の単位を含む構造単位(化7の式)を有するポリエーテルイミドとして、“ウルテム(登録商標)1010”および“ウルテム(登録商標)1040”が挙げられる。また、p−フェニレンジアミン由来の単位を含む構造単位(化8の式)を有するポリエーテルイミドとして、“ウルテム(登録商標)CRS5000”が挙げられる。
【0060】
また、イミド構造を有する化合物の他の好ましい例として、ポリエステルとの溶融成形性や取り扱い性などの点から、前記一般式中のArが、
【0061】
【化9】


【0062】
から選ばれたものであり、R’が、
【0063】
【化10】


【0064】
から選ばれたものであるポリマーを挙げることができる。
【0065】
このポリエーテルイミドは、公知の方法によって製造することができる。例えば、上記Arを誘導することができる原料であるテトラカルボン酸および/またはその酸無水物と、上記R’を誘導することができる原料である脂肪族一級ジアミンおよび/または芳香族一級ジアミンよりなる群から選ばれる一種もしくは二種以上の化合物とを脱水縮合することにより得られる。具体的には、ポリアミド酸を得て、次いで、加熱閉環する方法を例示することができる。または、酸無水物とピリジン、カルボジイミドなどの化学閉環剤を用いて化学閉環する方法、上記テトラカルボン酸無水物と上記R’を誘導することのできるジイソシアネートとを加熱して脱炭酸を行って重合する方法なども例示することができる。
【0066】
イミド構造を有する化合物とシリコーン系化合物とを樹脂組成物中に含有することで、燃焼時にシリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物と母材であるポリエステルとが効率よく炭化層を形成することが可能であり、シリコーン系化合物またはイミド構造を有する化合物をそれぞれ単独で含有した場合よりもドリップ抑制の効果や難燃性を著しく向上することができる。
【0067】
イミド構造を有する化合物の含有量はドリップ抑制の効果、難燃性の観点からシリコーン化合物との重量比で5(シリコーン系化合物):95(イミド構造を有する化合物)〜95:5の範囲が好ましく、さらに好ましくは10:90〜90:10の範囲が好ましい。
【0068】
シリコーン系化合物、イミド構造を有する化合物を繊維に付与する方法としては、繊維とするポリエステルの重合時に添加する方法、ポリエステルとこれらの化合物を溶媒に添加して混合した後、乾燥する方法、ポリエステルとこれらの化合物を2軸押出機やバンバリーミキサー等の混練機で溶融混合する方法などが挙げられるが、これらに限るものではない。
【0069】
シリコーン系化合物およびイミド構造を有する化合物については、これらが十分に分散されたポリエステルを安定的に製造できる点から、ポリエステルとこれらの化合物を2軸押出機やバンバリーミキサー等の混練機で溶融混合する方法が好ましい。
【0070】
また本発明の難燃性複合繊維は、フィラメントもしくはステープルのいずれの形態でも有用に用いることができる。例えば衣料用途のフィラメントとしては、単糸繊度が0.1dtexから十数dtexの範囲であり、総繊度として50dtexから300dtexでフィラメント数が10から100本のマルチフィラメントが好適に用いられる。
【0071】
また、例えば産業用途のフィラメントとしては、単糸繊度が十数Dtexから数百Dtexの範囲であり、総繊度として数百Dtexから数千Dtexでフィラメント数が10から100本の範囲のマルチフィラメントが好適に用いられる。
【0072】
また、繊維構造物としては、織物、編み物、不織布などの種々の布帛形態で用いることが可能である。
【0073】
例えば衣料用途の場合には、上記のフィラメントを、例えば一重組織である三原組織や変化組織、二重組織であるよこ二重組織やたて二重組織などの織物に製織すればよい。このときの織物の質量は50g/m以上500g/m以下の範囲が好ましい。
【0074】
また、産業用途のフィラメントについても、衣料用途と同様に織物に製織して用いることができる。このときの繊維構造物の質量は300g/m以上1500g/m以下の範囲である。
【0075】
また、本発明の難燃性複合繊維は後加工による影響を受けないため、様々な後加工をすることができる。例えば、浴中加工、吸尽加工、コーティング加工、Pad−dry加工、Pad−steam加工などにより撥水性、親水性、制電性、消臭性、抗菌性、深色性などの機能を付与することができる。
【0076】
本発明の難燃性複合繊維は、繊維製品として特にドリップ抑制の効果や難燃性が必要な繊維製品、例えばカーシートやカーマットなどの車両内装材、カーテン、カーペット、椅子張り地などのインテリア素材、衣料素材などでドリップが抑制され、かつ難燃性を発現する繊維製品とするのに好適に用いることができる。
【0077】
本発明の難燃性複合繊維は、ドリップ抑制の効果、難燃性、樹脂組成物の物性、加工特性などの低下が無い範囲で、他の繊維との混紡や混繊などが可能であるが、繊維構造物中に主成分として含有していることが好ましく、繊維構造物に対して重量比で70%以上含有していることがより好ましい。
【0078】
本発明の難燃性複合繊維の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば以下に示す方法を採用することができる
まず、芯部A及び芯部Bに用いるポリエステルを選択する。尚、このうちいずれかのポリエステルには上記した方法により、シリコーン系化合物、場合によってはさらにイミド構造を有する化合物を添加する。
【0079】
芯部A、鞘部Bを形成するポリエステルはそれぞれ、別々に溶融・計量し、紡糸ブロックに導き、紡糸ブロックに内蔵された紡糸パックに送り、パック内でポリマーを濾過した後、紡糸口金で芯鞘構造に貼り合わせた後、吐出した糸条を得る。紡出された糸条は一旦冷却、固化されたあと、給油ガイドで油剤を付与され、交絡装置で適度な交絡を与えられた後、ゴデットロールで引き取られ、巻き取られる。
【実施例】
【0080】
まず、実施例および比較例におけるシリコーン系化合物の調製を下記の通り行い、表1に示すシリコーン系化合物A−Dを得た。
【0081】
<M、D、T、Q単位の割合の調製>
SiOCl(RSiO0.5に相当)、RSiOCl(RSiO1.0に相当)、RSiOCl(RSiO1.5に相当)、SiOCl(SiO2.0に相当)を所定のモル比にて混合した後、水にて加水分解し、発生する塩酸はメタノールによって取り除いた。次いで、水酸化カリウムを触媒として縮合し、RSiO0.5、RSiO1.0、RSiO1.5、SiO2.0の構造単位の割合が異なるシリコーン系化合物を製造した。
【0082】
尚、R部分は全てフェニル基の原料を用いた。
【0083】
<シラノール基の含有量の測定>
シリコーン系化合物を縮合する際の反応時間を各々調整して、シリコーン系化合物を得た。得られたシリコーン系化合物を29Si−NMRにより溶媒としてCDCl、標準物質としてTMS(テトラメチルシラン)用いて、積算回数256回で測定した。シラノール基を含有しない構造由来のSiO2.0、RSiO1.5、RSiO1.0、RSiO0.5のピークの面積(積分値)とシラノール基を含有する構造由来のSi(OH)、SiO0.5(OH)、SiO1.0(OH)、SiO1.5(OH)、RSi(OH)、RSiO0.5(OH)、RSiO1.0(OH)、RSi(OH)、RSiO0.5(OH)、RSi(OH)のピークの面積(積分値)の比からシラノール基量(wt%)を算出した。
【0084】
<重量平均分子量の測定>
シリコーン系化合物を縮合する際の反応時間を各々調整し、得られたシリコーン系化合物をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、離溶液としてクロロホルム、サンプル濃度1wt%、検出器RIで測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量を算出した。
【0085】
【表1】


【0086】
<複合繊維の芯鞘比率の測定>
複合繊維の断面方向の超薄切片をSorvall社製ウルトラミクロトーム(MT6000型)を用いて作製した。この切片を、透過型電子顕微鏡(日立 H800型)を用いて3000倍で観察した。視野を変えて5視野の写真を撮影し、それぞれの写真について芯と鞘部分の部分を切り取り、重量法で芯鞘の割合を算出し、5視野の平均値を芯鞘比率とした。
【0087】
また、各実施例における燃焼評価については下記の通り行った。
【0088】
<ドリップ性及び難燃性の評価方法>
評価する繊維を用いて筒編み地とし、長さ100mm、質量1gの試験片を作製し、JIS L1091(1992) D法に準じて評価した。このとき試料を全て燃焼させるまでに要した接炎回数及び接炎後のドリップの回数を評価した。
【0089】
接炎回数は5回以上を合格、ドリップ回数は0回を合格とした。
【0090】
実施例1〜9、比較例1〜2
母材となるポリエステルとして固有粘度が0.65のポリエチレンテレフタレートを用いた。表1に示すシリコーン系化合物を用いて、ポリエチレンテレフタレート、シリコーン系化合物、イミド構造含有化合物の配合比を種々変更し、混練温度275℃、L/D=30、スクリュー回転数300rpmの条件で2軸押出機を用いて混練を行ない、シリコーン系化合物、イミド構造含有化合物を含有したポリエステル組成物を得た。
【0091】
次に、混練の母材である元のポリエチレンテレフタレート、及び混練で得た各種組成のポリエステル組成物を用い、複合紡糸を行った。各ポリエステルを事前に真空乾燥機で150℃、12時間、2Torrで乾燥した後、それぞれ別々に溶融し、公知の複合紡糸機を用いて、所定の芯鞘複合比、紡糸温度290℃、紡糸速度3000m/分、口金口径0.23mm−24H(ホール)、吐出量40g/分の条件で紡糸を行い未延伸糸を得た。次いで、加工速度400m/分、延伸温度90℃、セット温度130℃の条件で、得られる延伸糸の繊度が85dtex−24フィラメントになるような延伸倍率で延伸を行い、延伸糸を得た。
【0092】
その後、得られた延伸糸を筒編み機で編物の繊維構造物を作製し、ドリップ性及び難燃性の評価方法を行った。
【0093】
尚、比較例1のみ芯鞘複合とせず均一組成の繊維とした。
【0094】
表2のとおり、本発明の範囲内にある難燃性複合繊維は、製糸工程での糸切れがほとんど認められず成形加工時の高い安定性を示した。また、ドリップが無く良好なドリップ抑制効果を発現するとともに、接炎回数が多く難燃性が高いことが確認された。
【0095】
【表2】


【出願人】 【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【出願日】 平成18年7月25日(2006.7.25)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−25067(P2008−25067A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−202248(P2006−202248)