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【発明の名称】 カーボンナノファイバの構成単位物および該カーボンナノファイバ
【発明者】 【氏名】華園 雅信

【氏名】石井 一久

【氏名】持田 勲

【氏名】尹 聖昊

【要約】 【課題】カーボンナノファイバの構成単位であるディスク状の構成単位物において、電子放出源として必要な形状およびサイズを備えた構成単位物を提供する。

【構成】本構成単位物は、カーボンナノファイバを構成する構成単位物であって、厚さが4−6nmでありかつ辺長さが4−150nmである六角形、あるいは、厚さが2−10nmでありかつ一辺の長さが2−30nm、該一辺に隣り合う他辺の長さが2−10nmの長方形、あるいは厚さが4−150nmでありかつ辺の長さが4−150nmの正方形のディスク状である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノファイバを構成する構成単位物であって、当該構成単位物の形状が、厚さ4−6nmで、辺長さ4−150nmの六角形のディスク状である、ことを特徴とするカーボンナノファイバの構成単位物。
【請求項2】
カーボンナノファイバを構成する構成単位物であって、当該構成単位物の形状が、長方形のディスク状である、ことを特徴とするカーボンナノファイバの構成単位物。
【請求項3】
厚さが2−10nmであり、一辺の長さが2−30nm、該一辺に隣り合う他辺の長さが2−10nmの長方形のディスク状である、請求項2に記載のカーボンナノファイバの構成単位物。
【請求項4】
カーボンナノファイバを構成する構成単位物であって、当該構成単位物の形状が、正方形のディスク状である、ことを特徴とするカーボンナノファイバの構成単位物。
【請求項5】
厚さが4−150nmであり、辺の長さが4−150nmの正方形のディスク状である、請求項4に記載のカーボンナノファイバの構成単位物。
【請求項6】
上記請求項1ないし5のいずれかに記載の構成単位物が繊維軸に対して垂直に配列された、ことを特徴とするカーボンナノファイバ。
【請求項7】
上記請求項1ないし5のいずれかに記載の構成単位物が繊維軸に対して傾斜して配列された、ことを特徴とするカーボンナノファイバ。
【請求項8】
上記請求項1ないし5のいずれかに記載の構成単位物が繊維軸に沿うように配列された、ことを特徴とするカーボンナノファイバ。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノファイバ(炭素ナノ繊維)を構成する構成単位物およびこの構成単位物を積層して構成されるカーボンナノファイバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、繊維径が1−数10nmで長さが数10−数μmの大きなアスペクト比と鋭い先端とを持つため、冷陰極電子源の電子放出材料として開発が進められてきている。カーボンナノチューブは、先端に電界集中して電子放出するために、多数のカーボンナノチューブがほぼ同等の高さで密集すると電界集中しにくくなって電子放出特性が低下すること、断面積が小さいために抵抗値が大きく先端での電子放出に伴う発生熱量が増大したり発生熱の放熱特性に劣ったりすること、先端消耗が促進されて寿命特性が低下すること、基板との電気的コンタクト面積が小さいために電子放出特性が安定しにくいこと、などの課題がある。
【0003】
本発明者は、冷陰極電子源の電子放出材料として、上記課題があるカーボンナノチューブに代えて、カーボンナノファイバに着目して鋭意研究を進めてきた。この研究での課題は、カーボンナノファイバが電子放出材料に適用することができる形状やサイズを備えていることである。
【0004】
カーボンナノファイバの先行技術として、特開2003−342839号公報には一方向に伸びる中心軸を有する炭素六角網面を2ないし12層積層してなるロッド状炭素ナノ繊維素を積層した炭素ナノ繊維素群を構成単位物としたカーボンナノファイバが開示されている。
【0005】
このように複数の構成単位物からなるカーボンナノファイバには、同公報には開示されていないが、ロッド状の構成単位物を繊維軸に対して垂直に配列してなるプレートレット(Platelet)構造のカーボンナノファイバ、前記繊維軸に対して傾斜して配列してなるヘリングボーン(Herringbone)構造のカーボンナノファイバ、および、繊維軸に沿うように配列してなるチューブラ(Tubular)構造のカーボンナノファイバがある。
【0006】
また、2005年2月10日受付、2005年4月7日オンライン利用可能な定期刊行物Carbon43(2005)1828−1838頁において、その1832頁のFig.3(a)には六角ディスク状の構成単位物からなるプレートレット構造のカーボンナノファイバが開示されている。
【0007】
しかしながら、上記公開公報や刊行物に開示されているカーボンナノファイバの構成単位物では、そのサイズが示されていないために、冷陰極電子源の電子放出材料として直ちに適用することができない。
【特許文献1】特開2003−342839号公報
【非特許文献1】Carbon43(2005)1828−1838頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、カーボンナノファイバの構成単位物において、電子放出源として必要な形状およびサイズを備えた構成単位物を提供し、かつ、そのディスク状の構成単位物を用いたカーボンナノファイバを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明第1によるカーボンナノファイバの構成単位物は、カーボンナノファイバを構成する構成単位物であって、当該構成単位物は、厚さが4−6nmであり、辺長さが4−150nmである六角形のディスク形状を有することを特徴とするものである。
【0010】
なお、上記のディスクは、厚さに対してディスクの辺長さが短い場合もディスクに含む。
【0011】
本発明第2によるカーボンナノファイバの構成単位物は、カーボンナノファイバを構成する構成単位物であって、形状が長方形のディスク状である、ことを特徴とするものである。好ましくは、この構成単位物は、厚さが2−10nmであり、一辺の長さが2−30nm、該一辺に隣り合う他辺の長さが2−10nmの長方形ディスク状の構成単位物である。
【0012】
本発明第3によるカーボンナノファイバの構成単位物は、カーボンナノファイバを構成する構成単位物であって、形状が正方形のディスク状である、ことを特徴とするものである。好ましくは、この構成単位物は、厚さが4−150nmであり、辺の長さが4−150nmの正方形のディスク状の構成単位物である。
【0013】
本発明に係る構成単位物は、上記形状およびサイズを有するものであるから、当該構成単位物を積層してなるカーボンナノファイバは、カーボンナノチューブとは異なり、基板との接触面積が大きく基板との電気的コンタクト性に優れ、かつ、面内密度が大きいために放熱性に優れ熱損失を抑制することができ、加えて、構成単位物の角部が電界集中しやすい電子放出点を構成するため、カーボンナノファイバ1本当たりの電子放出点の数がカーボンナノチューブと比較して多くなり電子放出性能が向上する。
【0014】
更に、本発明に係る構成単位物からなるカーボンナノファイバによれば、上記多数の電子放出点を有するので、電界集中がカーボンナノチューブのように特定少数の電子放出点への電界集中が緩和されることにより、ジュール熱や蒸発によって電子放出点が劣化するといったことも抑制され、寿命特性が向上する。
【0015】
以上のような本発明に係る構成単位物によりプレートレット構造、ヘリングボーン構造、チューブラ構造にそれぞれ構成されたカーボンナノファイバは安定した電子放出が可能な電子放出材料を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、電子放出材料として必要な形状およびサイズを備えたカーボンナノファイバの構成単位物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施の形態に係るカーボンナノファイバの構成単位物を説明する。
【0018】
(プレートレット構造のカーボンナノファイバ)
図1(a)にプレートレット構造のカーボンナノファイバの「As−prepared」状態のSTM(走査型トンネリング顕微鏡)による撮影写真(以下、STM写真)、図1(b)に同カーボンナノファイバの「Graphitized」状態のSTM写真、図1(c)に同カーボンナノファイバの模式図、図1(d)に図1(c)のカーボンナノファイバの構成単位物の模式図を示す。
【0019】
プレートレット構造のカーボンナノファイバは、その構成単位物が繊維軸に対して垂直な方向に積層して配列したものである。
【0020】
「As−prepared」状態とは製造したままの状態で末端がループ状となっていないカーボンナノファイバであり、「Graphitized」状態とは高温熱処理した状態のカーボンナノファイバである。「axis」とはカーボンナノファイバの繊維軸を示す。
【0021】
図1(a)で示す「As−prepared」状態のカーボンナノファイバ11では「axis」方向に直交する方向に構成単位物12がディスク状になって積層している状態を確認することができる。「As−prepared」状態のカーボンナノファイバは、黒鉛化度が比較的高く、構成単位物の角部が鋭く強調される結果、電界集中しやすく、電界放射特性がよい。加えて、熱的・化学的にも安定している。
【0022】
図1(b)で示す「Graphitized」状態のカーボンナノファイバ11では「axis」方向に複数の構成単位物12がディスク状に積層している状態を明確に確認することができる。「Graphitized」状態のカーボンナノファイバは、黒鉛化度が高くて結晶性が良いため、電気抵抗が低く、電界放射特性が向上している。加えて、耐熱性も良い。
【0023】
図1(c)に、図1(b)のSTM写真で示すカーボンナノファイバ11を構成する複数の構成単位物12を模式的に示す。図1(c)で示すようにこの構成単位物12は、上記「axis」方向に厚みがあり該「axis」方向にほぼ直交する方向に六角形ディスク状に広がっている。構成単位物12は、「axis」方向に積層することによりプレートレット構造のカーボンナノファイバを構成している。
【0024】
図1(d)では図1(c)の複数の構成単位物12のうちの1枚を示しており、この構成単位物12は、厚さ(t1)が4−6nmであり、辺長さ(d1)が4−150nmのほぼ正六角形のディスク状をなしている。
【0025】
以上の構成を有するカーボンナノファイバ11の製造例を説明すると、このカーボンナノファイバ11は、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)に代表する純粋な遷移金属の合金を触媒とし、400℃から1200℃の温度範囲で一酸化炭素またはメタン(CH4)、エチレン(C26)、プロパン(C38)等の炭化水素を、水素分圧0%ないし90%の混合ガス中で一定時間触媒に接触することによって合成される。なお、本発明は上記製造例に限定されない。
【0026】
(ヘリングボーン構造のカーボンナノファイバ)
図2(a)にヘリングボーン構造のカーボンナノファイバの「As−prepared」状態のSTM写真、図2(b)に同カーボンナノファイバの「Graphitized」状態のSTM写真、図2(c)に同カーボンナノファイバの模式図、図2(d)に図1(c)のカーボンナノファイバの構成単位物の模式図を示す。ヘリングボーン構造のカーボンナノファイバは、その構成単位物が繊維軸に対して傾斜した方向に積層して配列したものである。
【0027】
図2(a)で示す「As−prepared」状態のカーボンナノファイバ21では構成単位物22が配列している状態を確認することができる。
【0028】
図2(b)で示す「Graphitized」状態のカーボンナノファイバ21では「axis」方向に直交する方向に構成単位物22がディスク状に積層している状態を明確に確認することができる。
【0029】
図2(c)では図2(b)のカーボンナノファイバ21を模式図で示している。この模式図で示されているように、このカーボンナノファイバ21は複数の構成単位物22が「axis」方向に斜め方向にディスク状に配列したヘリングボーン構造になっている。
【0030】
図2(d)で示すように構成単位物22は、積層方向の厚さ(t2)が4−6nmであり、積層方向に直交する方向の平面形状が辺長さ(d2)が4−150nmの六角形である。
【0031】
(チューブラ構造のカーボンナノファイバ)
図3(a)にチューブラ構造のカーボンナノファイバの「Graphitized」状態のSTM写真、図3(b)に同カーボンナノファイバの模式図、図3(c)に図3(b)のカーボンナノファイバの構成単位であるディスク状構成単位物の模式図を示す。チューブラ構造のカーボンナノファイバは、その構成単位物が繊維軸に対して平行な方向に積層して配列したものである。
【0032】
図3(a)で示す「Graphitized」状態のカーボンナノファイバ31では構成単位物32が配列している状態が明確に確認することができる。
【0033】
図3(b)で示すように、このカーボンナノファイバ31は複数のディスク状構成単位物32が「axis」方向に積層しかつ「axis」周りに積層しチューブ状に配列してチューブラ構造になっている。
【0034】
図3(c)で示すようにこの構成単位物32は、厚さ(t3)が2−10nmであり、「axis」方向の一辺の長さ(d3)が2−30nm、該一辺に隣り合う他辺の長さ(d4)が2−10nmの長方形のディスク状になっている。
【0035】
なお、ディスク状の構成単位物には、上記構成単位物12,22,32以外に、図4で示すように、厚さ(t4)が4−150nm、辺長さ(d5)が4−150nmの正方形の形状をなす構成単位物42を挙げることができる。
【0036】
なお、図1では六角形ディスク状の構成単位物12を積層してなるプレートレット構造のカーボンナノファイバ11であったが、図5(a)に長方形ディスク状の構成単位物52aを積層してなるプレートレット構造のカーボンナノファイバ51a、また図5(b)に正方形ディスク状の構成単位物52bを積層してなるプレートレット構造のカーボンナノファイバ51bを示す。これら長方形ディスク状の構成単位物52a、正方形ディスク状の構成単位物52bのサイズは上記と同様である。
【0037】
なお、図2では六角形ディスク状の構成単位物22を積層してなるヘリングボーン構造のカーボンナノファイバ21であったが、図6(a)に長方形ディスク状の構成単位物62aを積層してなるヘリングボーン構造のカーボンナノファイバ61a、また図6(b)に正方形ディスク状の構成単位物62bを積層してなるヘリングボーン構造のカーボンナノファイバ61bを示す。これら長方形ディスク状の構成単位物62a、正方形ディスク状の構成単位物62bのサイズは上記と同様である。
【0038】
なお、図3では長方形ディスク状の構成単位物32を積層してなるチューブラ構造のカーボンナノファイバ31であったが、図7(a)に正方形ディスク状の構成単位物72aを積層してなるチューブラ構造のカーボンナノファイバ71a、また図7(b)に六角形ディスク状の構成単位物72bを積層してなるチューブラ構造のカーボンナノファイバ71bを示す。これら正方形および六角形ディスク状の構成単位物72a,72bのサイズは上記と同様である。
【0039】
図8にカソード電極や基体部の表面83のカーボンナノファイバ81を示し、円Aにカーボンナノファイバ81の一部を拡大して示す。このカーボンナノファイバ81は、ヘリングボーン構造のカーボンナノファイバであり、このカーボンナノファイバ81はディスク状の構成単位物82が積層されて構成されている。このヘリングボーン構造のカーボンナノファイバ81では、多数の構成単位物82の角部82aを電子放出点として電子を矢印Pのように放出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1(a)はプレートレット構造のカーボンナノファイバの「As−prepared」状態のSTM写真、図1(b)は同カーボンナノファイバの「Graphitized」状態のSTM写真、図1(c)は同カーボンナノファイバの模式図、図1(d)は図1(c)のカーボンナノファイバの構成単位である構成単位物の模式図である。
【図2】図2(a)はヘリングボーン構造のカーボンナノファイバの「As−prepared」状態のSTM写真、図2(b)は同カーボンナノファイバの「Graphitized」状態のSTM写真、図2(c)は同カーボンナノファイバの模式図、図2(d)は図2(c)のカーボンナノファイバの構成単位である構成単位物の模式図である。
【図3】図3(a)はチューブラ構造のカーボンナノファイバの「Graphitized」状態のSTM写真、図3(b)は同カーボンナノファイバの模式図、図3(c)は図3(b)のカーボンナノファイバの構成単位である構成単位物の模式図である
【図4】カーボンナノファイバの構成単位である他の構成単位物の模式図である。
【図5】図5(a)は長方形ディスク状の構成単位物を積層してなるプレートレット構造のカーボンナノファイバを示す図、図5(b)は正方形ディスク状の構成単位物を積層してなるプレートレット構造のカーボンナノファイバを示す図である。
【図6】図6(a)は長方形ディスク状の構成単位物を積層してなるヘリングボーン構造のカーボンナノファイバを示す図、図6(b)は正方形ディスク状の構成単位物を積層してなるヘリングボーン構造のカーボンナノファイバを示す図である。
【図7】図7(a)は正方形ディスク状の構成単位物を積層してなるチューブラ構造のカーボンナノファイバを示す図、図7(b)は六角形ディスク状の構成単位物を積層してなるチューブラ構造のカーボンナノファイバを示す図である。
【図8】図8はカソード電極表面または基体部表面のカーボンナノファイバを示す図である。
【符号の説明】
【0041】
11,21,31,41,51,61,71,81 カーボンナノファイバ
12,22,32,42,52,62,72,82 構成単位物
【出願人】 【識別番号】505044451
【氏名又は名称】ソナック株式会社
【出願日】 平成18年7月14日(2006.7.14)
【代理人】 【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀


【公開番号】 特開2008−19538(P2008−19538A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−194505(P2006−194505)