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【発明の名称】 炭素繊維及びその製造方法、並びにそれを用いた固体高分子型燃料電池用カソード及び固体高分子型燃料電池
【発明者】 【氏名】杉山 秀夫

【氏名】豊澤 真一

【氏名】杉 信一郎

【氏名】福島 敦

【氏名】鈴木 欽也

【要約】 【課題】導電性が高い上、高い酸素還元性を有し、固体高分子型燃料電池のカソードの触媒層に用いることが可能な炭素繊維及びその製造方法を提供する

【構成】芳香環を有する化合物を電解重合してフィブリル状ポリマーを生成させる工程と、前記フィブリル状ポリマーにホウ素含有化合物を添加する工程と、前記フィブリル状ポリマーとホウ素含有化合物との混合物を焼成して炭素繊維を生成させる工程とを含む炭素繊維の製造方法、並びに該方法で製造された炭素繊維である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香環を有する化合物を電解重合してフィブリル状ポリマーを生成させる工程と、
前記フィブリル状ポリマーにホウ素含有化合物を添加する工程と、
前記フィブリル状ポリマーとホウ素含有化合物との混合物を焼成して炭素繊維を生成させる工程と
を含む炭素繊維の製造方法。
【請求項2】
前記炭素繊維が酸素還元性を有することを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維の製造方法。
【請求項3】
前記芳香環を有する化合物がベンゼン環又は芳香族複素環を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維の製造方法。
【請求項4】
前記芳香環を有する化合物が、アニリン、ピロール、チオフェン及びそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項3に記載の炭素繊維の製造方法。
【請求項5】
前記ホウ素含有化合物が、B23及びH3BO3からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維の製造方法。
【請求項6】
前記焼成を非酸化性又は弱酸化性雰囲気中で行うことを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の方法で製造された炭素繊維。
【請求項8】
請求項7に記載の炭素繊維を含む固体高分子型燃料電池用カソード。
【請求項9】
請求項8に記載の固体高分子型燃料電池用カソードを備えた固体高分子型燃料電池。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維及びその製造方法、並びに該炭素繊維を用いた固体高分子型燃料電池用カソード及び固体高分子型燃料電池に関し、特に高い酸素還元性を有し、固体高分子型燃料電池のカソードに用いることが可能な炭素繊維の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、発電効率が高く、環境への負荷が小さい電池として、燃料電池が注目を集めており、広く研究開発が行われている。燃料電池の中でも、出力密度が高く作動温度が低い固体高分子型燃料電池は、小型化や低コスト化が他のタイプの燃料電池よりも容易なことから、電気自動車用電源、分散発電システム、家庭用のコージェネレーションシステムとして広く普及することが期待されている。
【0003】
一般に固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質膜及び該固体高分子電解質膜の両側に配置された電極(アノード及びカソード)からなる膜電極接合体(MEA)と、該膜電極接合体の外側に配置された導電性のセパレータとを備える。ここで、電極は、固体高分子電解質膜に隣接する触媒層と、該触媒層の外側に配置されたガス拡散層とからなる。該電極の触媒層は、カーボンブラック等の粒状炭素材料からなる担持体上にPt等の貴金属を、電気メッキや無電解メッキ等の湿式法、スパッタや真空蒸着等の乾式法で担持し、更に任意に高分子電解質を塗布して形成されており、アノードの触媒層においては、水素等の燃料ガスが酸化されて、プロトンが発生し(例えば、2H2→4H++4e-)、一方、カソードの触媒層では、酸素が還元され、アノードの触媒層で発生したプロトンと反応して水が生成する(例えば、O2+4H++4e-→2H2O)。
【0004】
しかしながら、一般に、カソードの触媒層における酸素の還元反応が進行し難いため、高価なPt等の貴金属を使用せざるを得ないのが現状である。また、固体高分子型燃料電池を自動車等に用いる場合は、Pt等の貴金属が多量に必要となるため、資源の枯渇の問題も発生する。そのため、昨今、担体として使用されている炭素材料自体に酸素還元性を付与する技術の開発が求められている。
【0005】
例えば、炭素材料に酸素還元性を付与する技術として、炭素材料にホウ素をドープする方法が知られている。より具体的に、二段法としては、炭素含有化合物を焼成して作製した炭素材料にB23等のホウ素化合物を添加し、再焼成する方法等が報告されており(下記特許文献1参照)、また、一段法としては、アセチレンと有機ホウ素化合物とを含む混合ガスを燃焼させる方法等が報告されている(下記特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2005−281690号公報
【特許文献2】特開2005−126499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のホウ素含有炭素材料は、一般に粒状であるため、炭素材料同士の接触が不十分であると電気的導通が十分にとれず、電極に用いた場合、電極の内部抵抗が増加する原因となりうる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、導電性が高い上、高い酸素還元性を有し、固体高分子型燃料電池のカソードの触媒層に用いることが可能な炭素材料及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、芳香環を有する化合物を電解重合してフィブリル状ポリマーを生成させ、該フィブリル状ポリマーにホウ素含有化合物を添加及び焼成して得られる炭素繊維が、高い酸素還元性と高い導電性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明の炭素繊維の製造方法は、
芳香環を有する化合物を電解重合してフィブリル状ポリマーを生成させる工程と、
前記フィブリル状ポリマーにホウ素含有化合物を添加する工程と、
前記フィブリル状ポリマーとホウ素含有化合物との混合物を焼成して炭素繊維を生成させる工程と
を含むことを特徴とし、また、本発明の炭素繊維は、かかる方法で製造されたことを特徴とする。
【0011】
本発明の炭素繊維の製造方法において、前記芳香環を有する化合物としては、ベンゼン環又は芳香族複素環を有する化合物が好ましく、アニリン、ピロール、チオフェン及びそれらの誘導体が更に好ましい。また、本発明の炭素繊維の製造方法において、前記ホウ素含有化合物としては、B23及びH3BO3が好ましい。更に、本発明の炭素繊維の製造方法においては、前記焼成を非酸化性又は弱酸化性雰囲気中で行うことが好ましい。
【0012】
また、本発明の固体高分子型燃料電池用カソードは、上記炭素繊維を含むことを特徴とし、本発明の固体高分子型燃料電池は、該固体高分子型燃料電池用カソードを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、芳香環を有する化合物を電解重合してフィブリル状ポリマーを生成させ、該フィブリル状ポリマーにホウ素含有化合物を添加して焼成することで、高い酸素還元性と高い導電性とを有する炭素繊維を製造することができる。また、該炭素繊維は、酸素還元性及び導電性に優れるため、固体高分子型燃料電池のカソードに好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<炭素繊維及びその製造方法>
以下に、本発明の炭素繊維及びその製造方法を詳細に説明する。本発明の炭素繊維の製造方法は、芳香環を有する化合物を電解重合してフィブリル状ポリマーを生成させる工程と、前記フィブリル状ポリマーにホウ素含有化合物を添加する工程と、前記フィブリル状ポリマーとホウ素含有化合物との混合物を焼成して炭素繊維を生成させる工程とを含むことを特徴とし、本発明の炭素繊維は、かかる方法で製造されたことを特徴とする。本発明の製造方法で得られる炭素繊維は、カーボン全体が3次元に連続した構造を有するため、粒状カーボンよりも導電性が高い。また、本発明の製造方法で得られる炭素繊維は、フィブリル状ポリマーとホウ素含有化合物との混合物を焼成して作製されるため、理由は明確ではないが、原子価の異なった異種元素が含まれることで触媒活性が生じるものと思われ、高い酸素還元性を有する。
【0015】
本発明において原料として用いる芳香環を有する化合物は、ベンゼン環を有する化合物、芳香族複素環を有する化合物を挙げることができる。ここで、ベンゼン環を有する化合物としては、アニリン及びアニリン誘導体が好ましく、芳香族複素環を有する化合物としては、ピロール、チオフェン及びこれらの誘導体が挙げられる。これら芳香環を有する化合物は、一種単独で用いてもよいし、二種以上の混合物として用いてもよい。
【0016】
本発明において、電解重合で生成するフィブリル状ポリマーは、直径が30nm〜数百nmの範囲であることが好ましく、40nm〜500nmの範囲であることが更に好ましく、また、長さが0.5μm〜100mmの範囲であることが好ましく、1μm〜10mmの範囲であることが更に好ましい。
【0017】
本発明の炭素繊維の製造方法では、作業性及び取り扱いの観点から、上記芳香環を有する化合物の電解重合を導電性基板上で行い、該導電性基板上にフィブリル状ポリマーを生成させることが好ましい。ここで、導電性基板としては、多孔質なものが好ましく、多孔質な導電性基板としては、カーボンペーパー、多孔質カーボン布等が挙げられる。
【0018】
上記電解重合においては、原料の芳香環を有する化合物と共に、酸を混在させることが好ましく、酸を二種以上混在させることが更に好ましい。この点について更に詳述すると、例えば、原料の芳香環を有する化合物としてアニリンを用い、酸としてHBF4を用いた場合、電解重合して得られるポリアニリンは、通常、下記式(A)〜(D):
【化1】


に示した4種のポリアニリンが混在した状態、即ち、ベンゾノイド=アミン状態(式A)、ベンゾノイド=アンモニウム状態(式B)、ドープ=セミキノンラジカル状態(式C)及びキノイド=ジイミン状態(式D)の混合状態になる。なお、重合の際に混在させる酸としては、上記HBF4に限定されるものではなく、種々のものを使用することができ、HBF4の他、H2SO4、HCl、HClO4等を例示することができる。また、重合溶液中の酸の濃度は、0.1〜3mol/Lの範囲が好ましく、0.5〜2.5mol/Lの範囲が更に好ましい。
【0019】
上記各状態の混合比率は特に制限されるものではないが、ドープ=セミキノンラジカル状態(式C)を多く含んでいる方がキノイド=ジイミン状態(式D)が大部分であるよりも最終的に得られる炭素繊維の導電率が高くなる。該ドープ=セミキノンラジカル状態(式C)の含有割合(ドーピングレベル)は、適宜調節することができ、ドーピングレベルを高くすることにより得られる炭素繊維の導電率が高くなる。なお、特に限定されるものではないが、ドープ=セミキノンラジカル状態(式C)の含有割合(ドーピングレベル)は、通常0.01〜50%の範囲とすることが好ましい。
【0020】
上記電解重合工程では、例えば、芳香環を有する化合物を含む重合溶液中に、上記導電性基板からなる作用極及び対極を浸漬し、両極間に前記芳香環を有する化合物の酸化電位以上の電圧を印加するか、又は該芳香環を有する化合物が重合するのに充分な電圧が確保できるような条件の電流を通電すればよく、これにより導電性基板(作用極)上にフィブリル状ポリマーが生成する。なお、対極としては、白金、ステンレススチール、カーボン等の良導電性物質からなる板や多孔質支持体等を用いることができる。
【0021】
電解重合によるフィブリル状ポリマーの合成方法の一例としては、H2SO4、HBF4等の酸とアニリン等の芳香環を有する化合物とを含む重合溶液中に、カーボンペーパー等の導電性基板からなる作用極とPt等からなる対極とを浸漬し、両極間に0.1〜1000mA/cm2、好ましくは0.2〜100mA/cm2の電流を通電して、作用極側にフィブリル状ポリマーを重合析出させる方法を例示することができる。ここで、重合溶液中の芳香環を有する化合物の濃度は、0.05〜3mol/Lの範囲が好ましく、0.25〜1.5mol/Lの範囲が更に好ましい。なお、上記重合溶液には、上記成分に加え、pHを調製するために可溶性塩等を適宜添加してもよい。
【0022】
次に、上記電解重合で生成したフィブリル状ポリマーにホウ素含有化合物を添加する。ここで、該ホウ素含有化合物としては、ホウ素を含有する限り特に制限はなく、例えば、B23、H3BO3等を挙げることができる。これらホウ素含有化合物は、一種単独で用いてもよいし、二種以上の混合物として用いてもよい。上記ホウ素含有化合物の添加は、例えば、フィブリル状ポリマーにホウ素含有化合物溶液を含浸することで実施できる。ここで、含浸させるホウ素含有化合物溶液の濃度は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0023】
本発明においては、ホウ素含有化合物の添加前に、上記フィブリル状ポリマーを水や有機溶剤等の溶媒で洗浄してもよい。また、ホウ素含有化合物の添加前後に、上記フィブリル状ポリマー又はフィブリル状ポリマーとホウ素含有化合物との混合物を乾燥してもよい。ここで、乾燥方法としては、特に制限されるものではないが、風乾、真空乾燥の他、流動床乾燥装置、気流乾燥機、スプレードライヤー等を使用した方法を例示することができる。
【0024】
次に、上記フィブリル状ポリマーとホウ素含有化合物との混合物を焼成し炭化することで、3次元連続状の炭素繊維が得られる。ここで、焼成条件としては、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜設定すればよいが、特に高導電率を必要とする場合は、好ましくは温度500〜3000℃、より好ましくは600〜2800℃で、0.5〜6時間焼成することが好ましい。なお、本発明の製造方法では、焼成工程を非酸化性又は弱酸化性雰囲気中で行うことが好ましく、非酸化性雰囲気としては、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、ヘリウム雰囲気等を挙げることができ、場合によっては水素雰囲気とすることもできる。
【0025】
本発明の製造方法で得られる炭素繊維は、直径が30nm〜数百nmの範囲であることが好ましく、40nm〜500nmの範囲であることがより好ましく、また、長さが0.5μm〜100mmの範囲であることが好ましく、1μm〜10mmの範囲であることがより好ましく、更に、表面抵抗が106〜10-2Ωの範囲であることが好ましく、104〜10-2Ωの範囲であることがより好ましい。また、該炭素繊維は、残炭率が95〜30%であることが好ましく、90〜40%であることがより好ましい。本発明の製造方法で得られる炭素繊維は、カーボン全体が3次元に連続した構造を有するため、粒状カーボンよりも導電性が高く、また、高い酸素還元性を示すため、固体高分子型燃料電池用カソードの触媒層として好適に使用することができる。なお、本発明の製造方法で得られる炭素繊維は、酸素還元性の観点から、CV(サイクリックボルタンメトリー)測定における電流値が絶対値として8mA/cm2以上であることが好ましく、また、フェルミ準位が絶対値として5.08eV以上であることが好ましい。
【0026】
<固体高分子型燃料電池用カソード>
本発明の固体高分子型燃料電池用カソードは、上記炭素繊維を含むことを特徴とし、上記炭素繊維が上述の多孔質な導電性基板上に配設されてなることが好ましい。カソード中の炭素繊維は、カソード触媒層として機能し、O2+4H++4e-→2H2Oで表される反応に触媒作用を示す。一方、上記導電性基板は、炭素繊維へ酸素や空気等の酸素含有ガスを供給するガス拡散層としての機能と、発生した電子の授受を行う集電体としての機能を担う。なお、上記炭素繊維は、高い酸素還元性を有するため、本発明のカソードは、Pt等の貴金属を担持しなくても、固体高分子型燃料電池のカソードとして機能する。但し、本発明のカソードは、カソードでの反応を促進するために、Pt等の貴金属が担持されていてもよく、その場合は、従来よりも少量の担持量で、従来と同等の活性を示す。
【0027】
本発明の固体高分子型燃料電池用カソードにおいて、上記炭素繊維には更に高分子電解質を含浸させてもよい。該高分子電解質としては、イオン伝導性のポリマーを使用することができ、該イオン伝導性のポリマーとしては、スルホン酸、カルボン酸、ホスホン酸、亜ホスホン酸等のイオン交換基を有するポリマーを挙げることができ、該ポリマーはフッ素を含んでも、含まなくてもよい。該イオン伝導性のポリマーとして、具体的には、ナフィオン(登録商標)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー等が好ましい。該高分子電解質の含浸量は、上記炭素繊維100質量部に対して10〜500質量部の範囲が好ましい。なお、炭素繊維層(触媒層)の厚さは、特に限定されるものではないが、0.1〜100μmの範囲が好ましい。
【0028】
<固体高分子型燃料電池>
次に、本発明の固体高分子型燃料電池を図1を参照しながら説明する。図示例の固体高分子型燃料電池は、膜電極接合体(MEA)1とその両側に位置するセパレータ2とを備える。膜電極接合体(MEA)1は、固体高分子電解質膜3とその両側に位置するアノード(燃料極)4A及びカソード(空気極)4Bとからなる。例えば、燃料として水素を用いた場合は、アノード4Aでは、2H2→4H++4e-で表される反応が起こり、発生したH+は固体高分子電解質膜3を経てカソード4Bに至り、また、発生したe-は外部に取り出されて電流となる。一方、カソード4Bでは、O2+4H++4e-→2H2Oで表される反応が起こり、水が発生する。
【0029】
上記アノード4A及びカソード4Bは、触媒層5A,5B及びガス拡散層6A,6Bからなり、触媒層5A,5Bが固体高分子電解質膜3に接触するように配置されている。ここで、上記カソード4Bは、上述した本発明の固体高分子型燃料電池用カソードからなり、該カソード4Bの触媒層5Bは、上記炭素繊維からなる。また、ガス拡散層6Bとしては、上述の多孔質な導電性基板を使用することができる。一方、アノード4Aは、特に限定されず、公知の固体高分子型燃料電池用のアノードを使用することができ、例えば、カーボンブラック、炭素繊維等の炭素材料にPt等の貴金属を担持した触媒を触媒層5Aとし、該触媒層5Aをカーボンペーパー等からなるガス拡散層6A上に配置した電極等を使用することができる。
【0030】
また、上記セパレータ2としては、表面に燃料、空気及び生成した水等の流路(図示せず)が形成された通常のセパレータを用いることができる。更に、上記固体高分子電解質膜3としては、イオン伝導性のポリマーを使用することができ、該イオン伝導性のポリマーとしては、上記炭素繊維に含浸させることが可能な高分子電解質として例示したものを用いることができる。
【実施例】
【0031】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
アニリンモノマー 0.5mol/LとH2SO4 0.5mol/LとHBF4 0.5mol/Lとを含む酸性水溶液中に、カーボンペーパー[東レ製]からなる作用極を設置し、対極として白金板を使用し、室温にて15mA/cm2の定電流で4分27秒間(4C/cm2)電解重合を行い、作用極上にポリアニリンを電析させた。得られたポリアニリンをイオン交換水で洗浄し、24時間真空乾燥した後、0.3mol/LのB23溶液を含浸した。次に、B23溶液が含浸されたポリアニリンをカーボンペーパーごと乾燥後、Ar雰囲気中7℃/分の昇温速度で1200℃まで加熱し、その後1200℃で1時間保持し焼成処理して炭素繊維を得た。得られた炭素繊維に対して、以下の方法でCV(サイクリックボルタンメトリー)測定を行った。また、炭素繊維の酸素還元性出現に伴い、電子状態の変化が予想されるため、以下の方法でフェルミ準位の測定を行った。
【0033】
<CV測定>
電極面積1cm2に調製した炭素繊維付きカーボンペーパーを0.5MのH2SO4溶液に浸漬し、対極として白金板を使用し、-0.2V〜1.2VのCV測定を行った。なお、標準電極としてはAg/AgClを用い、O2バブリング雰囲気下、電圧掃引速度:100mV/秒で行った。CV曲線の0.6〜0.4V近辺の負電流が酸素の還元電流に関係すると見なせるため、ここでは、0.4Vにおける負側電流値を酸素還元電流の尺度とした。結果を図2及び表1に示す。
【0034】
<フェルミ準位測定>
測定装置として理研計器製フェルミ準位測定器AC−1を用い、Auの標準試料板を用いて、フェルミ準位の測定を行った。結果を表1に示す。
【0035】
<電池性能の評価>
上記のようにして作製したカーボンペーパー付き炭素繊維をカソードとした。また、カーボンペーパーを、塩化白金酸10gを純水1Lに溶解したメッキ液中で、電流密度10mA/cm2で3分30秒(2.1C/cm2)通電して、Ptを0.32mg/cm2担持したアノードを作製した。該アノードと上記カソード(カーボンペーパー付き炭素繊維)とを5×5cmのサイズにカットし、5wt%のナフィオン溶液を刷毛で塗布し、100℃で30分乾燥した後、アノード及びカソードで厚さ50μmのナフィオン膜を挟み込み、150℃のプレスで5分間加圧、接着して、膜電極接合体(MEA)を作製した。得られた膜電極接合体をエレクトロケミカル社製の試験セル(EFC25−01SP)に組み込んで燃料電池を組み立て、電池性能を評価した。なお、セル温度は80℃とし、燃料ガスとしては水素を用い、水素流量0.3L/分、アノード温度80℃とし、一方、酸化剤ガスとしては酸素を用い、酸素流量0.3L/分、カソード温度75℃とした。作製した燃料電池は、初回測定時の開放端電圧が0.7Vであり、また、0.4Vの電圧で8.4mAの電流値を示した。結果を図3及び図4に示す。
【0036】
(実施例2)
23溶液に代えて0.3mol/LのH3BO3溶液を用いる以外は、実施例1と同様にして炭素繊維を作製した。また、得られた炭素繊維のフェルミ準位を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0037】
(比較例1)
カーボンペーパー単体(ポリアニリンなし)に対し、実施例1と同様にしてCV測定及びフェルミ準位測定を行った。結果を図2及び表1に示す。
【0038】
(比較例2)
重合溶液として、アニリンモノマー 0.5mol/LとH2SO4 1.0mol/Lとを含む酸性水溶液を用いる以外は、実施例1と同様にしてポリアニリンを作製した。また、得られたポリアニリンをイオン交換水で洗浄し、24時間真空乾燥した後、ホウ素含有化合物溶液を含浸することなく、カーボンペーパーごとAr雰囲気中7℃/分の昇温速度で1200℃まで加熱し、その後1200℃で1時間保持し焼成処理して炭素繊維を得た。また、得られた炭素繊維に対して、実施例1と同様にしてCV測定及びフェルミ準位測定を行った。結果を図2及び表1に示す。
【0039】
(比較例3)
重合溶液として、アニリンモノマー 0.5mol/LとHBF4 1.0mol/Lとを含む酸性水溶液を用いる以外は、比較例2と同様にして炭素繊維を作製した。また、得られた炭素繊維に対して、実施例1と同様にしてCV測定及びフェルミ準位測定を行った。結果を図2及び表1に示す。
【0040】
(比較例4)
重合溶液として、アニリンモノマー 0.5mol/LとH2SO4 0.5mol/LとHBF4 0.5mol/Lとを含む酸性水溶液を用いる以外は、比較例2と同様にして炭素繊維を作製した。また、得られた炭素繊維に対して、実施例1と同様にしてCV測定及びフェルミ準位測定を行った。結果を図2及び表1に示す。
【0041】
(比較例5)
重合溶液として、アニリンモノマー 0.5mol/LとH2SO4 0.3mol/LとHBF4 0.7mol/Lとを含む酸性水溶液を用いる以外は、比較例2と同様にして炭素繊維を作製した。また、得られた炭素繊維のフェルミ準位を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】


【0043】
比較例1のカーボンペーパー単体には酸素還元電流がほとんど認められなかったが、無機酸であるH2SO4及び/又はHBF4を含む重合溶液から作製した比較例2〜5の炭素繊維には酸素還元電流が若干認められた。
【0044】
一方、本発明に従い、電解重合で作製したフィブリル状ポリマーにホウ素含有化合物を添加し、焼成して作製した実施例1及び2の炭素繊維には非常に大きな酸素還元電流が認められ、また、酸素還元電流の値の増大に伴いフェルミ準位の絶対値も大きく増大していた。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の固体高分子型燃料電池の一例の断面図である。
【図2】実施例及び比較例の炭素繊維に対するCV(サイクリックボルタンメトリー)測定の結果を示すグラフである。
【図3】実施例1の固体高分子型燃料電池の電流−電圧カーブを示すグラフである。
【図4】実施例1の固体高分子型燃料電池の電流−出力カーブを示すグラフである。
【符号の説明】
【0046】
1 膜電極接合体(MEA)
2 セパレータ
3 固体高分子電解質膜
4A アノード
4B カソード
5A,5B 触媒層
6A,6B ガス拡散層

【出願人】 【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
【出願日】 平成18年7月7日(2006.7.7)
【代理人】 【識別番号】100072051
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 興作

【識別番号】100107227
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 史朗

【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志

【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸


【公開番号】 特開2008−13889(P2008−13889A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−188136(P2006−188136)