Warning: copy(htaccessbak): failed to open stream: No such file or directory in /home/jtokkyo/public_html/header.php on line 10
ポリ乳酸複合繊維 - 特開2008−13887 | j-tokkyo
トップ :: D 繊維 紙 :: D01 天然または人造の糸または繊維;紡績

【発明の名称】 ポリ乳酸複合繊維
【発明者】 【氏名】下ノ村 建

【氏名】千塚 健史

【要約】 【課題】生分解性を有し、環境負荷が少ないポリ乳酸樹脂を構成成分として、かつ、強度が高く、耐摩耗性(耐屈曲摩耗性)が向上したポリ乳酸複合繊維を提供する。

【構成】分子量の異なる2種類のポリ乳酸からなる複合繊維であって、繊維の長手方向に対して垂直に切断した断面の形状が芯鞘形状を呈しており、芯部を構成するポリ乳酸Bの重量平均分子量が鞘部を構成するポリ乳酸Aの重量平均分子量よりも大きいポリ乳酸複合繊維。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量の異なる2種類のポリ乳酸からなる複合繊維であって、繊維の長手方向に対して垂直に切断した断面の形状が芯鞘形状を呈しており、芯部を構成するポリ乳酸Bの重量平均分子量が鞘部を構成するポリ乳酸Aの重量平均分子量よりも大きいことを特徴とするポリ乳酸複合繊維。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、分子量の異なる2種類のポリ乳酸からなる芯鞘型の複合繊維であって、強度及び耐摩耗性に優れ、衣料用途、産業資材用途に好適なポリ乳酸複合繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脂肪族ポリエステルからなるポリ乳酸は、植物から抽出した澱粉を発酵することにより得られる乳酸を原料としたポリマーであり、バイオマス利用の生分解性ポリマーの中では力学特性、耐熱性、コストのバランスが最も優れ、使用後には微生物が多数存在する環境下や海水、淡水の存在する環境下に放置すると完全に分解消失する性質を持った画期的なポリマーである。そして、これを利用した樹脂製品、繊維、フィルム、シート等の開発が行われている。
【0003】
ポリ乳酸繊維の開発としては、生分解性を活かした農業資材や土木資材等が先行しているが、それに続く用途として衣料用途、カーテン、カーペット等のインテリア用途、車両内装用途、産業資材用途、土木資材用途への応用も期待されている。
【0004】
しかしながら、ポリ乳酸繊維は、表面摩擦係数が高いことにより耐摩耗性や耐屈曲摩耗性に劣るという欠点があり、このため、生産工程においては、プレートやガイド類との摩擦によって単糸毛羽や糸切れ等が起こりやすく、工程通過性や製品品位が低下するといった問題があった。
【0005】
従って、産業資材用途、土木資材用途、衣料用途、インテリア用途、車両内装材用途といった高強度で耐摩耗性を要求される分野への用途展開がなかなか進んでいないのが現状である。
【0006】
ところで、樹脂製品やフィルム、シート等の分野では、その製造工程において、チップや溶融ポリマーのアンチブロッキング性、あるいは金型やローラからの成形体の剥離性を向上させるためにポリマーに添加剤や滑剤を添加する場合がある。しかしながら、繊維の分野においては、添加剤や滑剤のブレンド斑等による操業性の悪化や製品品質の低下といった問題が発生しやすいため、これまでこのような添加剤や滑剤を用いることは極力避けられる傾向にあった。
【0007】
添加剤や滑剤を添加して、耐摩耗性や工程通過性を向上させた繊維については、極めて少ない例ではあるが、例えば、ポリ乳酸繊維に脂肪酸ビスアミド及び/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを繊維全体に対して0.1〜5.0質量%含有したポリ乳酸を溶融紡糸し、脂肪酸エステル、多加アルコールエステル、エーテルエステル、シリコーン、鉱物油から選ばれる平滑剤を少なくとも1種類含有する紡糸油剤を付与した繊維(特許文献1)が提案されている。
【0008】
しかしながら、このような繊維であっても摩擦抵抗を十分に低下させることができないばかりでなく、紡糸時におけるローラ延伸の過程で多量の毛羽が発生し、紡糸操業性が著しく不良となるという問題があった。このため、依然として、紡糸、延伸、加工時における摩擦、摩耗による工程通過性、製品品位の低下を抑制することができず、未だに耐摩耗性に優れたポリ乳酸繊維は提案されていないのが現状である。
【特許文献1】特開平2004−091968
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記のような問題点を解決し、生分解性を有し、環境負荷が少ないポリ乳酸樹脂を構成成分として、かつ、強度が高く、耐摩耗性(耐屈曲摩耗性)が向上したポリ乳酸複合繊維を提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、分子量の異なる2種類のポリ乳酸からなる複合繊維であって、繊維の長手方向に対して垂直に切断した断面の形状が芯鞘形状を呈しており、芯部を構成するポリ乳酸Bの重量平均分子量が鞘部を構成するポリ乳酸Aの重量平均分子量よりも大きいことを特徴とするポリ乳酸複合繊維を要旨とするものである。
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリ乳酸複合繊維は、分子量の異なる2種類のポリ乳酸からなり、繊維の長手方向に対して垂直に切断した断面の形状が芯鞘形状を呈しており、芯部を構成するポリ乳酸Bの重量平均分子量(MB)が鞘部を構成するポリ乳酸Aの重量平均分子量(MA)よりも大きい。
【0012】
分子量の大きく異なる2種類のポリマーからなる複合繊維を高速紡糸すると、低分子量側のポリマーと高分子量側のポリマーとで分子配向に差が生じやすい。そこで、本発明においては、鞘部を低分子量のポリ乳酸、芯部を高分子量のポリ乳酸とすることで、高速紡糸時に、芯部の高分子量のポリ乳酸の配向は鞘部の低分子量のポリ乳酸の配向に比べて進むため、繊維全体として強度が高く、かつ耐摩耗性に優れたポリ乳酸繊維を得ることができることを見出した。つまり、芯部が配向の進んだポリ乳酸であるため、繊維全体として強度の高い繊維とすることができ、鞘部が配向の進んでいないポリ乳酸であるため、柔軟性を有するものとなり耐摩耗性に優れた繊維とすることができる。
【0013】
一方、芯部が低分子量のポリ乳酸、鞘部が高分子量のポリ乳酸であると、紡糸により鞘部のポリ乳酸の配向が高い繊維が得られる。これにより、強度は高い繊維となるが、剛性の高いポリ乳酸が鞘部に配されているため、摩耗には弱い繊維となり、耐摩耗性に劣った繊維となる。
【0014】
したがって、本発明においては、ポリ乳酸Bの重量平均分子量とポリ乳酸Aの重量平均分子量との差(MB−MA)を大きくすることが好ましく、具体的には10000〜250000であることが好ましく、中でも50000〜250000、さらには100000〜250000であることが好ましい。
【0015】
MB−MAが10000未満であると、ポリ乳酸Aとポリ乳酸Bの分子量の差が小さく、上記したような分子配向の差による強度の向上、耐摩耗性の向上効果は得られにくくなる。一方、MB−MAが250000を超えると、芯部を構成するポリ乳酸Bの分子量を大きくする必要があり、生分解性に劣るようになるため好ましくない。
【0016】
鞘部を構成するポリ乳酸AのMAは、50000以上であることが好ましく、中でも60000〜90000であることが好ましい。MAが50000未満であると、繊維の強度が低下するため好ましくない。一方、MAが90000を超えると、芯部を構成するポリ乳酸Bの重量平均分子量を大きくする必要があり、製糸性が悪くなりやすく、好ましくない。
【0017】
芯部を構成するポリ乳酸BのMBは、60000以上であることが好ましく、中でも100000〜300000であることが好ましい。
【0018】
ポリ乳酸BのMBが60000未満であると、繊維の強度が低下するため好ましくない。一方、MBが300000を超えると、ポリ乳酸特有の生分解性を損なうこととなり、好ましくない。
【0019】
本発明の繊維に用いるポリ乳酸としては、ポリ−D−乳酸と、ポリ−L−乳酸と、D−乳酸とL−乳酸との共重合体と、D−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体と、L−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体と、D−乳酸とL−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体との群から選ばれる重合体、あるいはこれらのブレンド体や、L−乳酸とD−乳酸の混合物(ステレオコンプレックス)が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸を共重合する場合のヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸等が挙げられる。これらの中でも特に、ヒドロキシカプロン酸またはグリコール酸が微生物分解性能および低コストの点から好ましい。
【0020】
いずれの重合体においても、ポリ乳酸としては、ポリ乳酸中のL−乳酸の含有割合(共重合割合や混合割合)が85〜99.5モル%のものとすることが好ましい。L−乳酸の比率は、耐熱性に影響する要因であるため、L−乳酸の含有割合がこの範囲より低いと、融点が低く、耐熱性の劣った繊維となり、製糸性も悪化し、熱延伸がし難くなる。また、L−乳酸の含有割合がこの範囲より高いと、結晶化温度が高くなるため分解速度が低くなり、生分解性に劣った繊維となる。
【0021】
ポリ乳酸の製造方法には、L−乳酸及び/またはD−乳酸を原料として、一旦環状二量体であるラクチドを生成させ、その後開環重合を行う二段階のラクチド法と、L−乳酸及び/またはD−乳酸を原料として溶媒中で直接脱水縮合を行う一段階の直接重合法が知られているが、本発明で用いられるポリ乳酸は、いずれの製法によって得られたポリ乳酸であってもよい。
【0022】
また、本発明においては前述したポリ乳酸重合体に、必要に応じて例えば熱安定剤、結晶核剤、艶消し剤、顔料、耐光剤、耐候剤、酸化防止剤、抗菌剤、香料、可塑剤、染料、界面活性剤、表面改質剤、各種無機及び有機電解質、微粉体、難燃剤等の各種添加剤や結節強度を高める脂肪酸アミド類、例えばメタキシリレンビスステアリルアミド、メタキシリレンビスオレイルアミド、キシレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスステアリン酸アミド等を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0023】
本発明の複合繊維の芯鞘複合比率は、鞘部が繊維表面全体を覆うためには、質量比率(芯/鞘)を10/90〜90/10とすることが好ましく、中でも高強度の繊維を得るためには質量比率(芯/鞘)を70/30〜90/10とすることが好ましい。
【0024】
また、本発明の複合繊維は、繊維の長手方向に対して垂直に切断した断面の形状(横断面形状)が芯鞘形状を呈するものであるが、芯部は1つであっても複数であってもよい。つまり、芯鞘形状としては、芯部が1つである同心芯鞘型や偏心芯鞘型のものや、芯部が複数個である海島型等の複合形態のものが挙げられる。
【0025】
さらには、本発明の複合繊維の横断面形状は、上記のような芯鞘型の複合形状を呈していれば、丸断面に限定されるものではなく、扁平断面、多角形、多葉形、ひょうたん形、アルファベット形(T型、Y型等)、井型等の各種の異形のものであってもよい。また、これらの形状において中空部を有するものでもよい。
【0026】
そして、本発明の複合繊維の上記したような横断面形状は、単繊維形状を示すものであるので、本発明の複合繊維(単繊維)は、複数本集合させたマルチフィラメントとして用いても、複数本集合させることなくモノフィラメントとして用いてもよい。また、長繊維として用いても、繊維をカットして短繊維として用いてもよい。
【0027】
マルチフィラメントの場合、単糸繊度が3〜200dtex、総繊度が36〜2200dtexとすることが好ましく、より好ましくは200〜1500dtexとすることが好ましい。モノフィラメントの場合は、150〜5000dtexとすることが好ましい。
【0028】
そして、本発明のポリ乳酸複合繊維は、紡糸速度3000〜6000m/分として製造することが好ましい。紡糸速度が3000m/分未満であると、上記したような芯部と鞘部の分子配向に大きな差が生じず、耐摩耗性に優れた繊維を得ることが困難となりやすい。一方、紡糸速度が6000m/分を超えると、安定した製造が困難となりやすい。
【0029】
溶融紡糸した繊維は冷却固化した後、油剤を付与し、一旦巻き取ることなく、連続して1.5〜4.0倍に延伸した後、巻き取る方法(一工程法)を採用しても、延伸することなく一旦巻き取った後、別工程で延伸を行う方法(二工程法)を採用してもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明のポリ乳酸複合繊維は、生分解性を有し、環境負荷が少ないポリ乳酸樹脂を構成成分としており、かつ、強度が高く、耐摩耗性(耐屈曲摩耗性)にも優れているため、紡糸、延伸、加工工程のいずれにおいても工程通過性が良好であり、品位の高い製品を得ることができる。このため、衣料用途、産業資材用途をはじめ、様々な用途に使用することが可能となる。
【実施例】
【0031】
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、実施例における特性値の測定法等は次のとおりである。
(1)引張強度[cN/dtex]
島津製作所社製オートグラフ AG−1型を用い、試料長25cm、引張速度30cm/min、初荷重を0.05g/dtexとして測定した。
(2)耐屈曲摩耗性
得られた繊維に0.1g/dtexの荷重をかけ、1600番のサンドペーパーを巻きつけた直径20mmの丸断面金属棒に、90度の角度で接触させ、トラバース速度6.7mm/min、ストローク速度35回/minの速度条件で往復摩擦させ、フィラメントが破断に至るまでの回数を測定し、以下の4段階で評価した。
A:3000回以上、B:2000〜2999回、C:1000〜1999、D:999回以下
(3)重量平均分子量
Waters社製のGel Permeation Chromatography(2690)を用い、ポリスチレンを標準として測定した。
【0032】
実施例1
ポリ乳酸Aとして、重量平均分子量62220、L−乳酸を主体とするポリ乳酸樹脂〔L−乳酸の含有割合が97.0モル%のもの〕を用い、ポリ乳酸Bとして、重量平均分子量276320、L−乳酸を主体とするポリ乳酸樹脂〔L−乳酸の含有割合が97.0モル%のもの〕を用いた。
ポリ乳酸Aが鞘部、ポリ乳酸Bが芯部を構成するように、複合溶融紡糸装置に供給して溶融紡糸を行った。このとき、同心芯鞘型となるようにし、複合比(質量比)を芯/鞘=50/50とし、孔径0.35mm、孔数96の紡糸口金(面径230mm)を用いた。そして、紡糸温度220℃、紡糸速度3100m/分で紡出し、糸条を冷却した後、紡糸油剤を付与し、一旦捲き取ることなく、135〜145℃に加熱した熱ローラで延伸倍率が1.8倍になるように熱延伸を施し、総繊度560dtexのマルチフィラメントを得た。
【0033】
実施例2
ポリ乳酸Bとして、重量平均分子量212220、L−乳酸を主体とするポリ乳酸樹脂〔L−乳酸の含有割合が97.0モル%のもの〕を用いた以外は、実施例1と同様にしてマルチフィラメントを得た。
【0034】
実施例3
ポリ乳酸Bとして、重量平均分子量162520、L−乳酸を主体とするポリ乳酸樹脂〔L−乳酸の含有割合が97.0モル%のもの〕を用いた以外は、実施例1と同様にしてマルチフィラメントを得た。
【0035】
実施例4
複合比(質量比)を芯/鞘=8/2とした以外は、実施例1と同様にしてマルチフィラメントを得た。
【0036】
実施例5
複合比(質量比)を芯/鞘=2/8とした以外は、実施例1と同様にしてマルチフィラメントを得た。
【0037】
比較例1
実施例1で用いたポリ乳酸Bのみを用いて、通常の紡糸装置を用いた以外は実施例1と同様にしてマルチフィラメントを得た。
【0038】
比較例2
実施例1で用いたポリ乳酸Aのみを用いて、通常の紡糸装置を用いた以外は実施例1と同様にしてマルチフィラメントを得た。
【0039】
比較例3
実施例1で用いたポリ乳酸Aを芯部に、ポリ乳酸Bを鞘部に配した以外は、実施例1と同様にしてマルチフィラメントを得た。
【0040】
【表1】


【0041】
表1から明らかなように、実施例1〜5の複合繊維は、強度も高く、耐屈曲摩耗性にも優れていた。
一方、比較例1、2の繊維は単一成分型の繊維であったため、比較例3の複合繊維は芯部のポリ乳酸のほうが鞘部のポリ乳酸よりも分子量が小さいものであったため、いずれも耐屈曲摩耗性に劣っていた。
【出願人】 【識別番号】399065497
【氏名又は名称】ユニチカファイバー株式会社
【出願日】 平成18年7月7日(2006.7.7)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−13887(P2008−13887A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−187959(P2006−187959)