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【発明の名称】 カチオン可染性ポリエステル複合繊維とその製造方法、並びに繊維製品
【発明者】 【氏名】白井 剛

【氏名】福井 寿悦

【氏名】市川 団一

【要約】 【課題】確実でかつ安定した製法により、鮮明性に優れたカチオン染料可染性で、かつ常圧染色が可能であり、同時に強伸度特性に優れたカチオン可染性ポリエステル複合繊維と同繊維を含む製品を提供する。

【構成】主たる繰り返し単位がポリエチレンテレフタレートであり、ジカルボン酸成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸が1.0〜3.0mol%、及びアジピン酸が3.0〜10.0mol%共重合され、かつ固有粘度が0.46〜0.63である変性ポリエステルを鞘部とし、95mol%以上がエチレンテレフタレートであり、かつ固有粘度が0.73〜0.83の未変性ポリエステルを芯部とした芯鞘型の複合紡糸繊維である。芯部/鞘部の体積比が1/1〜4/1で、破断強度(DS)が4.0cN/dtex以上、破断伸度(DE)が40%以上を同時に満たし、かつDS×(DE)1/2 が27以上であるカチオン可染性ポリエステル複合繊維である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主たる繰り返し単位がポリエチレンテレフタレートから構成され、ジカルボン酸成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸が1.0〜3.0mol%、及びアジピン酸が3.0〜10.0mol%共重合され、かつ固有粘度が0.46〜0.63である変性ポリエステルを鞘部に配し、芯部に95mol%以上がエチレンテレフタレートの繰り返し単位から構成され、かつ固有粘度が0.73〜0.83の未変性ポリエステルを配した芯鞘型の複合紡糸繊維であって、
芯部/鞘部の体積比が1/1〜4/1で、破断強度(DS)が4.0cN/dtex以上、破断伸度(DE)が40%以上を満たし、かつDS×(DE)1/2が27以上であるカチオン可染性ポリエステル複合繊維。
【請求項2】
主たる繰り返し単位がポリエチレンテレフタレートから構成され、ジカルボン酸成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸が1.0〜3.0mol%、及びアジピン酸が3.0〜10.0mol%共重合され、かつ固有粘度が0.46〜0.63である変性ポリエステルを鞘部に配し、95mol%以上がエチレンテレフタレートの繰り返し単位から構成され、かつ固有粘度が0.73〜0.83の未変性ポリエステルを芯部に配し、芯部/鞘部の体積比が1/1〜4/1の芯鞘型複合紡糸の未延伸糸とした後に、次の1)〜6)を満たす条件で延伸、および緩和熱セットを施す、カチオン可染性ポリエステル複合繊維の製造方法。
1)1.0<DR1<1.20
2)75≦HR1≦95
3)MDR×0.60<DR2<MDR×0.80
4)100≦HR2≦170
5)150≦HP≦200
6)0.85<DR3<1.00
ここで、DR1 :第1段延伸域での延伸倍率
MDR :予熱温度80〜85℃で測定した最大延伸倍率
HR1 :第1段延伸域の引取ロ−ラ−の表面温度(℃)
DR2 :第2段延伸域での延伸倍率
HR2 :第2段延伸域の引取ロ−ラ−の表面温度(℃)
HP :第3段延伸域の熱板の表面温度(℃)
DR3 :第3段延伸域での延伸倍率
【請求項3】
請求項1記載のカチオン可染性ポリエステル複合繊維を少なくとも一部に含んでなる繊維製品。
【請求項4】
請求項1記載のカチオン可染性ポリエステル複合繊維と、カチオン可染性ポリエステル繊維とから構成される繊維製品。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン染料の染色性、および強伸度特性に優れたポリエステル複合繊維とその製造方法、並びに同複合繊維を含んだ繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンブロイダリーレース分野においては種々の異なる素材が使用されている。例えば、刺繍糸は主にレーヨン又は綿が使用され、刺繍の裏糸であるコップ糸には主にナイロンが使用されている。そして刺繍の基布となるチュールレース、オーガンジーにはナイロンや絹が使用されてきた。
【0003】
エンブロイダリー分野においてはこのように種々の繊維素材が混用されているため、染色に当っては、常圧染色が必須であるとともに、それぞれの糸に先染工程が必要であり、染色工程が複雑であるといった問題があった。
【0004】
この問題点を改善すべく、常圧染色が可能で、かつ鮮明性に優れたカチオン染料可染性ポリエステル繊維を刺繍糸、基布のすべてに使用することが試みられ、このカチオン染料常圧可染型ポリエステル繊維の導入により、刺繍工程後の一段階染色、および鮮明性に優れたエンブロイダリー製品の要求が高まっている。
【0005】
しかしながら、カチオン染料可染性ポリエステル繊維のように、通常のポリエステル繊維と比較して強伸度特性が低い場合に、刺繍工程時で刺繍糸の進入に対して基布が耐え切れずに破断しやすく、穴あきが多発し、工程通過性、および商品性に問題が発生した。
【0006】
例えば、特開平06−166910号公報(特許文献1)には、その対策として主たる繰り返し単位がポリエチレンテレフタレートから構成され、5−ナトリウムスルホイソフタル酸1.5〜3.5mol%及びアジピン酸2.0〜7.0mol%が共重合された変性ポリエステルを鞘部に、95mol%以上がポリエチレンテレフタレートである未変性ポリエステルを芯部に配し、繊維断面に占める芯部と鞘部との面積比が4/1〜1/4の範囲であり、繊度3デニール以下、破断強度(DS)が4.0g/デニール以上、破断伸度(DE)が30%以上のエンブロイダリー用ポリエステル繊維が記載されている。
【0007】
しかしながら、近年のエンブロイダリーマシンの高速化が進むようになり、従来のエンブロイダリー用ポリエステル繊維を用いた場合、基布の穴あきが目立つようになり、問題であった。
【0008】
また、特開平04−174748号公報(特許文献2)には、繊度が50デニール以下で、引張破断伸度が45〜75%、初期引張抵抗度が950kg/mm2 以上である刺繍レース用マルチフィラメントからなる基布が記載され、さらに特開2004−277909号公報(特許文献3)には、繊度が55dtex以下で、単糸繊度が、3.0〜7.0dtex、引張破断伸度が45〜75%、初期引張抵抗度が800kg/mm2 以上、940kg/mm2 未満で、沸水収縮率が5%以下である刺繍レース用マルチフィラメントからなる基布が記載されている。
【0009】
しかしながら、これら特許文献2及び3に記載された刺繍レースは穴あきを改善できるものの、染色性が劣るため、染色に当っては、常圧染色が必須であるとともに、それぞれの糸に先染工程が必要であり、染色工程が複雑であるといった問題があった。
【特許文献1】特開平06−166910号公報
【特許文献2】特開平04−174748号公報
【特許文献3】特開2004−277909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、確実でかつ安定した製法により、鮮明性に優れたカチオン染料可染性で、かつ常圧染色が可能であり、同時に強伸度特性に優れたカチオン可染性ポリエステル複合繊維を提供するとともに、同繊維を含む繊維製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本件の第1発明の基本的な構成は、主たる繰り返し単位がポリエチレンテレフタレートから構成され、ジカルボン酸成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸が1.0〜3.0mol%、及びアジピン酸が3.0〜10.0mol%共重合され、かつ固有粘度が0.46〜0.63である変性ポリエステルを鞘部に配し、芯部に95mol%以上がエチレンテレフタレートの繰り返し単位から構成され、かつ固有粘度が0.73〜0.83の未変性ポリエステルを配した芯鞘型の複合紡糸繊維であって、芯部/鞘部の体積比が1/1〜4/1で、破断強度が4.0cN/dtex以上、破断伸度が40%以上を満たし、DS×(DE)1/2 が27以上であるカチオン可染性ポリエステル複合繊維である。
【0012】
また、本件の第2発明の基本的な構成は、主たる繰り返し単位がポリエチレンテレフタレートから構成され、ジカルボン酸成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸を1.0〜3.0mol%、及びアジピン酸を3.0〜10.0mol%共重合され、かつ固有粘度が0.46〜0.63である変性ポリエステルを鞘部に配し、95mol%以上がエチレンテレフタレートの繰り返し単位から構成され、かつ固有粘度が0.73〜0.83の未変性ポリエステルを芯部に配し、芯部/鞘部の体積比が1/1〜4/1の芯鞘型複合紡糸の未延伸糸とした後に、次の1)〜6)を満たす条件で延伸、および緩和熱セットを施す、カチオン可染性ポリエステル複合繊維の製造方法である。
【0013】
1)1.0<DR1<1.20
2)75≦HR1≦95
3)MDR×0.60<DR2<MDR×0.80
4)100≦HR2≦170
5)150≦HP≦200
6)0.85<DR3<1.00
ここで、DR1 :第1段延伸域での延伸倍率
MDR :予熱温度80〜85℃で測定した最大延伸倍率
HR1 :第1段延伸域の引取ロ−ラ−の表面温度(℃)
DR2 :第2段延伸域での延伸倍率
HR2 :第2段延伸域の引取ロ−ラ−の表面温度(℃)
HP :第3段延伸域の熱板の表面温度(℃)
DR3 :第3段延伸域での延伸倍率
また、本件の第3発明の基本的な構成は、請求項1に記載されたポリエステル複合繊維を少なくとも一部に含んでなる繊維製品にある。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、カチオン染料可染性で、かつ常圧染色が可能で、かつ強伸度特性が向上したカチオン可染性ポリエステル複合繊維であり、このカチオン可染性ポリエステル複合繊維を用いた水着、スポーツインナー、ランジェリー、ファンデーション等の繊維製品は、鮮やかな染色性と良好な強伸度特性を有したものとなる。特に、該ポリエステル繊維を用いたエンブロイダリーレースは、刺繍工程での穴あきの発生がなく、かつ染め品位も良好な製品となる。さらに、刺繍糸と基布の両方をカチオン可染性とすることにより、刺繍工程後の一段階染色も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の複合繊維について詳細に説明する。
本発明において鞘部に配する変性ポリエステルは、カチオン染料で染色可能であり、かつ常圧可染性を示すものであり、主たる繰り返し単位がポリエチレンテレフタレートから構成され、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を1.0〜3.0mol%及びアジピン酸を3.0〜10.0mol%共重合され、かつ固有粘度が0.46〜0.63としたものである。
【0016】
5−ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合量が1.0mol%未満であると、カチオン可染性が低下する。3.0mol%を超えると、繊維の強伸度特性が低下し、基布の穴あきが多発する。アジピン酸の共重合量が3.0mol%未満であると、常圧染色における染色性が低下する。10.0mol%を超えると、融点が低下し、加工工程での200℃程度の熱セットに耐えられなくなり、穴あきが発生する。
【0017】
また、固有粘度が0.46未満での場合は、芯成分との粘度差が大きくなり過ぎ、均一な芯鞘複合断面が安定して得られ難くなる。固有粘度が0.63を超えると、5−ナトリウムスルホイソフタル酸の増粘作用により溶融粘度が高くなり過ぎて、製糸性が悪化する。
【0018】
芯部に配する未変性ポリエステル重合体としては、共重合成分が5mol%未満で、かつ固有粘度が0.73〜0.83のポリエチレンテレフタレートである。共重合成分が5mol%を超えると、充分な繊維の強伸度特性が得られ難くなる。固有粘度が0.73未満での場合も同様に繊維の強伸度特性が得られ難くなる。固有粘度が0.83を超えると、鞘成分との粘度差が大きくなり過ぎ、均一な芯鞘複合断面が安定して得られ難くなる。
【0019】
芯鞘型繊維断面に対する芯/鞘の体積比は、1/1から4/1の範囲にする必要がある。芯成分の比率がこの範囲より低下すると、繊維の強伸度特性が低下し、刺繍工程での穴あきが発生する。逆に、芯成分の比率がこの範囲を超えると、均一な芯鞘複合断面を安定して得られ難くなり、また、繊維の常圧カチオン可染性が低下する。
【0020】
本発明のカチオン可染性ポリエステル複合繊維の強伸度特性は、破断強度が4.0cN/dtex以上、破断伸度が40%以上を満たし、DS×(DE)1/2 が27以上を満足している必要があり、破断強度が4.0cN/dtex未満である場合や、破断伸度が40%未満である場合、さらに、DS×(DE)1/2 が27未満である場合は、刺繍工程時で糸の進入に対して糸が耐え切れず、得られるエンブロイダリーレースに穴あきが発生してしまう。
【0021】
次に、本発明のポリエステル系複合繊維の製造方法について詳細に説明する。まず、紡糸については、主たる繰り返し単位がポリエチレンテレフタレートから構成され、ジカルボン酸成分として5−ナトリウムスルホイソフタール酸が1.0〜3.0mol%、及びアジピン酸が3.0〜10.0mol%共重合され、かつ固有粘度が0.46〜0.63である変性ポリエステルを鞘部に配し、95mol%以上がエチレンテレフタレートの繰り返し単位から構成された未変性ポリエステルを芯部に配し、芯部/鞘部の体積比が1/1から4/1の芯鞘型の複合紡糸とする。このとき、芯部のポリエステルの固有粘度は、0.73〜0.83とする必要がある。
【0022】
次いで、3段延撚機を用い、未延伸糸を次のように延伸することで得られる。まず、第1段延伸域での延伸倍率は、糸がたるまない程度の倍率である、1.0倍を超え、1.2倍未満の範囲とする。次に、75〜95℃に加熱した第1段延伸域の引取ローラーで加熱して第2延伸域でMDRの0.60倍を超え、0.80倍未満の範囲の倍率で延伸し、100〜170℃に加熱した第2延伸域の引取ローラーで熱セットをする。この後さらに、第3段延伸域で、0.85倍を超え、1.00倍未満の範囲で緩和しつつ、150〜200℃の熱板に接触させて熱セットを施す。
【0023】
第1段延伸域の延伸倍率が、1.0倍以下であると、糸弛みが発生して、ローラーへの巻き付きが発生する。また、1.2倍以上であると、延伸斑が発生して染色後の品位が低下する。
【0024】
第1段延伸域の引取ロ−ラ−の表面温度は、ポリマーのガラス転移温度が比較的高い芯成分のポリエステルのガラス転移温度〜(ガラス転移温度+20℃)までの範囲、すなわち、75℃以上、95℃以下とする。第1段延伸域の引取ロ−ラ−の表面温度がこの範囲外であると、延伸斑が発生して染色後の品位が低下する。
【0025】
第2段延伸域の延伸倍率がMDRの0.60倍以下であると、繊維の破断強度が過度に低下し、DS×(DE)1/2 が27以上を維持できない。逆に、MDRの0.80倍以上であると、繊維の破断伸度が過度に低下し、DS×(DE)1/2 が27以上を維持できなくなる。
【0026】
第2段延伸域の引取ローラーの表面温度は、100〜170℃とする。100℃未満であると繊維の糸斑が悪くなり、染め品位も劣る。170℃を超えると、緩和領域での糸ゆれがひどくなり、糸切れが発生しやすくなる。
【0027】
第3段延伸域の熱板の表面温度は、150〜200℃とする。150℃未満であると緩和領域での張力低下による糸揺れがひどくなり、糸切れが発生しやすくなる。200℃を超えると、繊維の強伸度特性が低下し、DS×(DE)1/2 が27以上を維持できなくなり、さらにケバが発生する。
【0028】
第3段延伸域での延伸倍率は、0.85倍を超え、1.00倍未満の範囲、すなわち緩和領域とする必要がある。この緩和状態で、熱板を用いて熱セットすることによって、繊維の破断強度を下げることなく、破断伸度を上げることができる。第3段延伸域での延伸倍率が、0.85倍以下であると、張力低下が大きくなり巻取りが不安定となる。また、1.00倍以上であると、破断強度は維持されるものの、破断伸度が低下することとなり、本発明の効果を得られない。
【0029】
また、本発明のカチオン可染性ポリエステル系複合繊維を含む水着、スポーツインナー、ランジェリー、ファンデーション、エンブロイダリーレース等の繊維製品は、本発明のポリエステル系複合繊維を単独で用いても、また他繊維を含んでいても良いが、基布の穴あきを少なく、染め品位を良好にするためには、エンブロイダリーレースを構成する基布中に本発明のポリエステル系複合繊維を、50質量%以上含んでいることが好ましい。
【0030】
さらに、本発明のカチオン可染性ポリエステル系複合繊維を使用した基布と、カチオン可染性ポリエステル系繊維を用いた刺繍糸との組み合わせにより、刺繍工程後の一段階染色も可能となる。
【0031】
以下、実施例1〜5及び比較例1〜3を挙げて本発明を具体的に説明する。なお各評価は以下の方法に従った。
(ポリマーの固有粘度[η])
ポリマーをフェノールとテトラクロロエタンの1:1の混合溶媒に溶解し、ウベローデ粘度計により25℃において測定した。
【0032】
(ポリマーの融点、ガラス転移温度)
セイコー電子工業社製DSC220を用いて、昇温速度10℃/分で測定した。
【0033】
(繊維の破断強度、および破断伸度)
島津製作所製オートグラフSD−100−Cを用いて、試長200mm、引張速度200mm/分で応力伸長曲線を測定し、繊維の破断点の強度および伸度を求めた。
【実施例1】
【0034】
芯部に融点256℃の未変性ポリエステルを配し、鞘部に5−ナトリウムスルホイソフタール酸を2.25mol%、及びアジピン酸5mol%を共重合した融点242℃の変性ポリエステルを配して芯部/鞘部=2/1(体積比)とし、287℃にて芯鞘型複合紡糸を行なって未延伸糸を得た。このときの未変性ポリエステルの固有粘度は0.76、変性ポリエステルの固有粘度は0.52であった。次に、該未延伸糸を図1に示すような3段延撚機を用いて、下記条件で延伸し、緩和熱セットを施し、40dtex/8f、破断強度4.25cN/dtex、破断伸度46.8%、DS×(DE)1/2 =29.1の延伸糸を得た。
【0035】
このときの、
DR1 =1.011
HR1 =82℃
DR2 =2.627(MDR×0.65)
HR2 =130℃
HP =185℃
DR3 =0.954
ただし、DR1 :第1段延伸域での延伸倍率
MDR :予熱温度80〜85℃で測定した最大延伸倍率
HR1 :第1段延伸域の引取ロ−ラ−の表面温度(℃)
DR2 :第2段延伸域での延伸倍率
HR2 :第2段延伸域の引取ロ−ラ−の表面温度(℃)
HP :第3段延伸域の熱板の表面温度(℃)
DR3 :第3段延伸域での延伸倍率
である。
【0036】
次に、この延伸糸を用いて、経編機にてチュールレース用基布を作製し、カチオン可染性ポリエステルフィラメント(135dtex/48フィラメント)の2本合撚糸と、高速エンブロイダリーマシン(Saurar社 UNICA)を用いて刺繍を施し、長さ35cm、巾14mのチュールレースを3反作製した。得られたチュールレース3反全エリア中の穴開き数を検査しところ、穴開きは確認されなかった。
【0037】
さらに、このチュールレースをカチオン染料(保土ケ谷化学社製AIZEN CATHILON MARINEBLUE GPLH)にて98℃×60分染色したところ、鮮明性および均染性に優れたエンブロイダリー製品が得られた。
【実施例2】
【0038】
芯部と鞘部の体積比を3/1に変更した以外は、実施例1と同様のポリマーを使用して延伸糸を得た。得られた延伸糸の強伸度特性は良好であった。この延伸糸を用いてチュールレースを作製したところ、実施例1と同様に穴開きは確認されなかった。さらに、このチュールレースを実施例1と同様に染色したところ、鮮明性および均染性に優れたエンブロイダリー製品が得られた。
【実施例3】
【0039】
芯成分である未変性ポリエステルの固有粘度を0.80に変更した以外は、実施例1と同様のポリマーを使用して延伸糸を得た。得られた延伸糸の強伸度特性は良好であった。この延伸糸を用いてチュールレースを作製したところ、実施例1と同様に穴開きは確認されなかった。さらに、このチュールレースを実施例1と同様に染色したところ、鮮明性および均染性に優れたエンブロイダリー製品が得られた。
【実施例4】
【0040】
鞘成分である変性ポリエステルに対する5−ナトリウムスルホイソフタル酸の変性量を1.5mol%に変更した以外は、実施例1と同様にして延伸糸を得た。このときの未変性ポリエステルの固有粘度は0.57であった。
【0041】
得られた延伸糸の強伸度特性は良好であった。この延伸糸を用いてチュールレースを作製したところ、実施例1と同様に穴開きは確認されなかった。さらに、このチュールレースを実施例1と同様に染色したところ、鮮明性および均染性に優れたエンブロイダリー製品が得られた。
【実施例5】
【0042】
鞘成分である変性ポリエステルに対するアジピン酸の変性量を10mol%に変更した以外は、実施例1と同様にして延伸糸を得た。このときの未変性ポリエステルの固有粘度は0.54であった。得られた延伸糸の強伸度特性は良好であった。この延伸糸を用いてチュールレースを作製したところ、実施例1と同様に穴開きは確認されなかった。さらに、このチュールレースを実施例1と同様に染色したところ、鮮明性および均染性に優れたエンブロイダリー製品が得られた。
【0043】
[比較例1]
芯部と鞘との体積比を1/2に変更した以外は、実施例1と同様のポリマーを使用して延伸糸を得たが、延伸糸の破断強度が3.31と低く、DS×(DE)1/2 も22.5と低い値となった。この延伸糸を用いて実施例1と同様にチュールレースを作製したところ、16箇所の穴開きが確認された。
【0044】
[比較例2]
芯成分の未変性ポリエステルの固有粘度を0.65に変更した以外は、実施例1と同様にして延伸糸を得たが、延伸糸の破断強度が3.72と若干低く、DS×(DE)1/2 も24.9と低い値となった。この延伸糸を用いて実施例1と同様にチュールレースを作製したところ、7箇所の穴開きが確認された。
【0045】
[比較例3]
実施例1と同様にして未延伸糸を得た。次に、該未延伸糸を図2に示すような2段延撚機を用いて下記条件で延伸し、40dtex/8f、破断強度4.30cN/dtex、破断伸度35.2%、DS×(DE)1/2 =25.5の延伸糸を得たが、延伸糸の破断伸度が若干低く、DS×(DE)1/2 も低いレベルであった。この延伸糸を用いて実施例1と同様にチュールレースを作製したところ、5箇所の穴開きが確認された。
【0046】
このときの、
DR1 =1.011
HR1 =82℃
DR2 =2.627(MDR×0.65)
HP =160℃
ただし、DR1 :第1段延伸域での延伸倍率
MDR :予熱温度80〜85℃で測定した最大延伸倍率
HR1 :第1段延伸域の引取ロ−ラ−の表面温度(℃)
DR2 :第2段延伸域での延伸倍率
HP :第3段延伸域の熱板の表面温度(℃)
であった。
【0047】
[比較例4]
5−ナトリウムスルホイソフタール酸を2.25mol%、及びアジピン酸5mol%を共重合した融点242℃のポリエステルを286℃で単独紡糸を行なって未延伸糸を得た。このときの変性ポリエステルの固有粘度は0.54であった。次に、前記未延伸糸を図1に示すような3段延撚機を用いて、下記条件で延伸し、緩和熱セットを施したが、40dtex/8f、破断強度3.68cN/dtex、破断伸度31.0%、DS×(DE)1/2 =20.5の延伸糸しか得られなかった。
【0048】
このときの、
DR1 =1.011
HR1 =81℃
DR2 =2.919(MDR×0.72)
HR2 =130℃
HP =185℃
DR3 =0.924
ただし、DR1 :第1段延伸域での延伸倍率
MDR :予熱温度80〜85℃で測定した最大延伸倍率
HR1 :第1段延伸域の引取ロ−ラ−の表面温度(℃)
DR2 :第2段延伸域での延伸倍率
HR2 :第2段延伸域の引取ロ−ラ−の表面温度(℃)
HP :第3段延伸域の熱板の表面温度(℃)
DR3 :第3段延伸域での延伸倍率
である。
前記延伸糸を用いて実施例1と同様にチュールレースを作製したところ、30箇所以上の穴開きが確認された。
【0049】
[比較例5]
融点256℃の未変性ポリエステルを293℃で単独紡糸を行って未延伸糸を得た。このときの未変性ポリエステルの固有粘度は0.75であった。次に、前記未延伸糸を図2に示すような2段延撚機を用いて、延伸し、40dtex/8f、破断強度4.42cN/dtex、破断伸度43.8%、DS×(DE)1/2 =29.3の延伸糸を得た。得られた延伸糸の筒編地をカチオン染料(保土ケ谷化学社製AIZEN CATHILON MARINEBLUE GPLH)にて98℃×60分染色したが、ポリマー中にカチオン染料の染着成分がないため染色されなかった。
【0050】
以上の結果を、表1にまとめた。実施例1〜5と比較例1〜5とを比較すると、表1からも明らかなように、チュールレースに穴開きができるか否かに関係する要因の一つとして、破断強度(DS)及び破断伸度(DE)がある。本発明のカチオン可染性ポリエステル複合繊維の強伸度特性について見たとき、破断強度が4.0cN/dtex以上、破断伸度が40%以上を満足する必要はあるが、DS×(DE)1/2 が27以上を満足しないときは、得られたエンブロイダリーレースに穴あきが発生してしまうことが理解できる。
【0051】
また同表1から、前記強伸度特性の他にも、例えば芯部と鞘部との体積比は1/1〜4/1の範囲内ではあるが、特に比較例同士を比較すると比較例1の芯部と鞘部との体積比は1以下であることから、穴開きの数が他の比較例2、3に比べて2〜3倍となっていることから、重要な要因であることが理解できる。
【0052】
【表1】


【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】3段延撚機の全容を示す概略図である。
【図2】2段延撚機の全容を示す概略図である。
【符号の説明】
【0054】
1 未延伸糸
2 供給ローラー
3 第1段延伸域の引取ロ−ラ−
4 第2段延伸域の引取ロ−ラ−
4' 第2段延伸域の熱板
5 第3段延伸域の熱板
6 第3段延伸域の引取ローラー
7 延伸糸
【出願人】 【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
【識別番号】301067416
【氏名又は名称】三菱レイヨン・テキスタイル株式会社
【出願日】 平成18年7月3日(2006.7.3)
【代理人】 【識別番号】100091948
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 武男

【識別番号】100119699
【弁理士】
【氏名又は名称】塩澤 克利


【公開番号】 特開2008−13862(P2008−13862A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−183641(P2006−183641)