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【発明の名称】 炭素繊維パッケージの製造方法
【発明者】 【氏名】小西 克典

【氏名】鷲山 正芳

【要約】 【課題】

【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイジング剤が付与された炭素繊維束をボビンに巻き取るに際し、該炭素繊維束の水分率を0.2〜10重量%とした後にサイジング剤を付与し乾燥させてからボビンに巻き取ることを特徴とする炭素繊維パッケージの製造方法。
【請求項2】
サイジング剤を付与する直前の炭素繊維束の張力を0.5〜6.5gf/Texとすることを特徴とする請求項1記載の炭素繊維パッケージの製造方法。
【請求項3】
炭素繊維束へのサイジング剤の付着量が0.2〜5重量%の範囲であることを特徴とする請求項1または2記載の炭素繊維パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、サイジング剤が付与された炭素繊維パッケージの製造方法に関し、さらに詳しくは、本発明は、サイジング剤が付与された炭素繊維束の糸幅を常時一定としたまま、パッケージ不良を発生させることなく安定して炭素繊維パッケージを製造するサイジング剤が付与された炭素繊維パッケージの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維束は、そのままでは単繊維切れや毛羽立ちが起こりやすく、また、加工性や取扱性もよくないため、サイジング剤を付与して用いられる。具体的には一般的に公知の表面処理工程や水洗工程などで濡れた水分率20〜80重量%程度の炭素繊維束を乾燥させた後にサイジング剤を付与して集束性や耐擦過性を与え、これらの不都合を起こりにくいようにしている。また、特に高次加工時に炭素繊維とマトリックス樹脂との接着特性を向上させるために、エポキシ樹脂系やウレタン樹脂系等のサイジング剤が好ましく用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
このようにサイジング剤が付与された炭素繊維束は、その取り扱い性を考慮して一旦ボビンに巻き取られ、パッケージとしたものが多く使用されているが、このようなパッケージは、巻き取り装置で炭素繊維束がボビンに巻き取られて製造される。
【0004】
炭素繊維束のボビンへの巻き取りは、一般的に炭素繊維束に綾振振動を付与しながら行なわれるが、この綾振振動時、特にボビン端部の折り返しポイントにおいて、走行糸の糸道が変動するとパッケージ端面での糸位置が変動し、パッケージ端面から糸が一部飛び出したり、パッケージ端面が段形状になるなどして、巻き上げ製品の端面形状が凸凹になるという問題があった。
【0005】
このような巻き上げ製品の端面形状が凸凹になったパッケージは、プリプレグや織物の製造等の高次加工時においてボビンから糸を引き出す際に、綾落ちや糸取られにより糸切れが多発したり、糸割れや毛羽発生により製品品質が悪化したりすることがあった。このため、ユーザーからのボビン端面形状の向上が求められており、さらにパッケージ生産時においては、端面形状不良製品を出荷しないように、端面形状不良品を屑扱いにしたりするなどし、大きく生産性を低下させる原因ともなっており、強く改善が求められてきた。このような中、端面形状崩れを防止するための技術として、これまで走行糸の糸道を安定化させる技術が広く提案されてきた(特許文献2および特許文献3参照)。
【0006】
しかしながら、これらの走行糸道安定化技術では、確かに糸道安定効果は非常に高いものの、特にサイジング剤を付与した炭素繊維束を巻き上げる場合、糸道が安定していてもボビン巻き上げ中に走行糸の糸幅が変化してしまい、同じ糸道でも走行糸幅の端部走行位置が異なってしまい、パッケージ端面から糸が一部飛び出したり、パッケージ端面が段形状になるなどし、巻き上げ製品の端面形状が悪化して端面凸凹が発生するという問題があった。
【0007】
このため、特にサイジング剤が付与された炭素繊維パッケージの端面形状を安定化させるためには、ワインダーでのボビン巻き取り時の糸幅を安定化させる技術が必要であった。
【特許文献1】特開2004−332189号公報
【特許文献2】特開2004−142945号公報
【特許文献3】国際公開第05/073118号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解消し、サイジング剤が付与された炭素繊維束の糸幅を安定化させたまま、ボビンに巻き取ることにより、パッケージ端面形状を安定化させ、プリプレグや織物等の高次加工性を向上せしめ、さらには、炭素繊維ボビンの屑発生を抑制し生産ロスを削減することが可能なサイジング剤が付与された炭素繊維パッケージの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するため、本発明は下記の構成を有するものである。
【0010】
(1)サイジング剤が付与された炭素繊維束をボビンに巻き取るに際し、該炭素繊維束の水分率を0.2〜10重量%とした後にサイジング剤を付与し乾燥させてからボビンに巻き取ることを特徴とする炭素繊維パッケージの製造方法。
【0011】
(2)サイジング剤を付与する直前の炭素繊維束の張力を0.5〜6.5gf/Texとすることを特徴とする前記(1)記載の炭素繊維パッケージの製造方法。
【0012】
(3)炭素繊維束へのサイジング剤の付着量が0.2〜5重量%の範囲であることを特徴とする前記(1)または(2)記載の炭素繊維パッケージの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、サイジング剤が付与された炭素繊維束を巻き取る際の走行糸の糸幅が安定化するため、炭素繊維束をワインダーで巻き取ったパッケージの端面形状に凸凹がなく、著しく端面形状の安定した炭素繊維パッケージを製造することができる。さらには、パッケージ端面形状が安定するため、糸幅が安定しプリプレグや織物等の製造時における高次加工性が向上するばかりか、炭素繊維パッケージ生産時の屑発生を抑制し生産ロスを大幅に削減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明者らは、上記課題について、鋭意検討を重ねた結果、サイジング剤が付与された炭素繊維束の巻き取り中の糸幅変動が、サイジング剤を付与する直前の炭素繊維束の糸幅変動に依存することを見いだし、該炭素繊維束の水分率さらには張力を制御することにより、走行糸の糸幅が大幅に安定化し、端面形状に凸凹の少ない炭素繊維パッケージを製造できることを見いだしたものである。
【0015】
具体的には、これまで炭素繊維束にサイジング剤を付与する際、表面処理工程や水洗工程などで濡れた水分率20〜80重量%程度の炭素繊維束においては、炭素繊維を十分に乾燥させてサイジング剤を付与し、また、表面処理工程や水洗工程などで炭素繊維束に水分を付与しない場合は、炭素繊維束が十分乾燥していることから、そのままサイジング剤を付与することが一般的である。
【0016】
しかしながら、炭素繊維束内の単繊維同士は非常にさばけやすいため、炭素繊維束を完全に乾燥させた状態で取り扱うと単繊維切れや毛羽立ちが発生し、単繊維同士が絡んだり、ローラーに単繊維の巻き付きが発生したりすることにより、炭素繊維束の糸幅が変動してしまう。その糸幅が変動している炭素繊維束にサイジング剤が付与され、そのまま乾燥されるため、最終的にサイジング剤が付与された炭素繊維束の糸幅が変動してしまい、端面形状に凸凹の発生する端面形状崩れに直結する。
【0017】
この端面形状の崩れとは、具体的には、サイジング剤が付与された炭素繊維束のスクウェアーエンドパッケージ(紙管軸に対し端面が直角な巻形状)の端面において、端面凸凹の距離差が炭素繊維束の平均糸幅の30%以上発生するものであり、もちろん凸部には炭素繊維束の飛び出しも含むものである。すなわち、パッケージの形状としては、上述のパッケージの端面凸凹の距離差は、好ましくは30%未満であり、より好ましくは20%未満であり、さらに好ましくは10%未満である。凸凹がなく平坦であるほど、高品位の炭素繊維パッケージとなる。なお、端面凸凹の距離差の測定は、次のようにして行うものである。炭素繊維パッケージを水平な平面に縦置き(スクウェアーエンドパッケージの端面を上下)にし、上部側紙管の端部を基準として、上部側端面の最大凸部(端面から炭素繊維束が飛び出している部分も含む)および最大凹部までの距離をノギスを用いて測定し、その差を平均糸幅で除して算出する。ここで平均糸幅は、炭素繊維パッケージ表面から炭素繊維束を糸幅が変化しないように、100mの長さの炭素繊維束を手でゆっくり引き出した際にパッケージ表面から炭素繊維束が離れる直前の糸幅を、1ボビンについて0.1mごとに0.1mm単位で合計1000点測定した際の平均値を取るものとする。以下、本発明のサイジング剤が付与された炭素繊維パッケージの製造方法の好ましい態様について、さらに詳しく説明する。
【0018】
本発明のサイジング剤が付与された炭素繊維パッケージの製造方法は、サイジング剤を付与する直前の炭素繊維束の水分率を0.2〜10重量%とした後にサイジング剤を付与し乾燥させてからその炭素繊維束をボビンに巻き取るものであり、炭素繊維束の水分率はより好ましくは0.2〜5重量%であり、さらに好ましくは0.2〜2重量%である。炭素繊維束の水分率が0.2重量%よりも小さい場合は、上述のように炭素繊維束のさばけや単繊維切れ、毛羽立ちが発生し、単繊維同士が絡んだり、ローラーに単繊維の巻き付きが発生したりすることにより、炭素繊維束の糸幅が変動してしまう。逆に、炭素繊維束の水分率が10重量%よりも大きい場合は、炭素繊維束内で部分的に単繊維同士が接着したりし、炭素繊維束の糸幅が変動したり、炭素繊維束自身の水分により、炭素繊維へのサイジング付着ムラが発生したり、サイジング付与時のサイジング剤の濃度が大きく変動し調整が難しい。
【0019】
サイジング剤を付与する直前の炭素繊維束の水分率の調整方法は、水分率が10重量%よりも大きい場合は、自然乾燥、熱風乾燥方式およびホットドラム乾燥方式等の公知のどのような方法でも用いることができるが、短時間で炭素繊維束を痛めることなく連続生産可能な入口と出口を有する熱風乾燥機を用いることが好ましく、炭素繊維束の単繊維径や単繊維数および走行速度により乾燥度合いが異なるため、目標とする水分率となるように適時、乾燥温度や乾燥機滞留時間等の条件を調整すればよい。乾燥温度は、空気雰囲気中100℃〜400℃であることが好ましい。乾燥温度が100℃より低くなると、水分が十分に蒸発しないため所望する水分率を得ることができない場合があり、逆に400℃より高くなると、官能基が熱分解により消失し、樹脂との接着性が低下する傾向が発生する。また、乾燥機滞留時間は、10秒〜300秒であることが好ましい。乾燥機滞留時間が10秒より短いと、水分が蒸発し始める前に乾燥が終了し所望する水分率を得ることができない場合があり、逆に300秒より長くなると、特に連続する炭素繊維束を乾燥させる場合には設備が大きくなり設備費がかかる。
【0020】
逆に、水分率が0.2重量%よりも小さい場合は、加湿機や水噴霧機等の公知のどのような方法でも用いることができるが、水分率ムラを抑えることが可能な入口と出口を有する加湿機を用いることが好ましく、炭素繊維束の単繊維径や単繊維数および走行速度により含水度合いが異なるため、目標とする水分率となるように適時、加湿機内の湿度や滞留時間等の条件を調整すればよい。加湿機滞留時間は、10秒〜300秒であることが好ましい。加湿機滞留時間が10秒より短いと、炭素繊維束全体が含水する前に終了し、所望する水分率を得ることができない場合があり、逆に300秒より長くなると、特に連続生産時には設備が大きくなり設備費がかかる。
【0021】
サイジング剤を付与する直前の炭素繊維束の水分率は、走行している炭素繊維束をカットしてサンプリングして、測定を繰り返すことにより確認、調整を実施することが好ましい。例えば、入口と出口を有する熱風乾燥機を用いて走行糸を乾燥させ、水分率が低い場合には、乾燥機内の温度を低下させ、逆に、水分率が高い場合には、乾燥機内の温度を上昇させることが好ましい。さらに、熱風乾燥機に加え、加湿機を備える場合に、水分率が低い場合は、加湿機内の湿度を上昇させ、水分率が高い場合には、加湿機内の湿度を低下させることにより、水分率の調整を実施することが精密な調整が可能となることからさらに好ましい。なお、炭素繊維束をカットしてサンプリングし、水分率を測定する際に、水分率の測定に長時間を要する場合があるため、この際は、単位長さあたりの水分を含有した炭素繊維束の重量のみを繰り返し測定し、乾燥炭素繊維束の重量は設定値と仮定して計算することにより、簡易的に糸の乾燥状態を把握し調整をした後に、別途以下に示す炭素繊維束の水分率測定により確認することが好ましい。炭素繊維の水分率測定は、以下のように行う。予め炭素繊維束を入れるガラス瓶とその蓋をよく洗浄し、130℃×1,800秒間、乾燥機の中でガラス瓶とその蓋を乾燥させた後、乾燥機内でガラス瓶に蓋をする。その後、蓋をしたままガラス瓶を乾燥機から取り出し、シリカゲル等を充填した乾燥用のデシケータ内で2,400秒間冷却した後、ガラス瓶と蓋を合わせた重さW1×10-3(kg)を測定する。さらに、これに炭素繊維束を入れ、重さW2×10-3(kg)を測定する。次に、炭素繊維束をガラス瓶に入れたまま、蓋を開けて130℃×7,200秒間、乾燥機の中で乾燥させた後、乾燥機内でガラス瓶に蓋をする。乾燥機からガラス瓶を取り出し、シリカゲル等を充填した乾燥用のデシケータ内で2,400秒間冷却した後、重さW3×10-3(kg)を測定し、上記の値を用いて、次式により水分率を求める。なお測定はN=5で実施し、その平均値を採用する。
水分率(重量%)={(W2−W3)/(W3−W1)}×100。
【0022】
また、炭素繊維束へのサイジング剤付与方法としては、ディップローラー方式やキスローラー方式等の公知の方法を用いることができるが、安定してサイジング剤を供給できるディップローラー方式を用いることが好ましい。かかるディップローラーと走行糸との接触時間(サイジング液中のローラーとの接触時間)は0.2秒以上であることが好ましい。接触時間が0.2秒よりも短いと炭素繊維束に十分サイジング剤が付着しない場合がある。
【0023】
炭素繊維束に付与するサイジング剤は、炭素繊維束の集束性や耐擦過性を向上させるもので、エポキシ樹脂系サイジング剤、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。
【0024】
また、炭素繊維束へのサイジング剤の付着量は、好ましくは0.2〜5重量%の範囲であり、より好ましくは0.5〜3重量%の範囲内である。付着量が0.2重量%よりも少ないと耐擦過性が低下して毛羽を生じやすくなり、付着量が5重量%よりも多いとCFRPとしたときにマトリックス樹脂との接着性が低下してCFRPの物性が悪くなる場合や、炭素繊維束が硬くなり、開繊性や拡幅性が悪くなる場合がある。
【0025】
なお、サイジング剤の付着量とは、サイジング剤が付着した炭素繊維糸条を秤量(W1)した後、電気炉等を用いてサイジング剤を完全に熱分解し、再度、サイジング剤を含まない状態での炭素繊維糸条を秤量(W2)し、次式により求めることができるものである。
【0026】
サイジング付着量(%)=[ W1(g)− W2(g) ]/[ W1(g) ]×100
また、サイジング剤が付与された後の炭素繊維束の乾燥方法においても、熱風乾燥方式やホットドラム乾燥方式等の公知の方法を用いることができるが、多量に発生する油剤成分の炭素繊維束への再付着が少ない熱風乾燥方式を用いることが好ましい。
【0027】
炭素繊維束の単繊維径や単繊維数および走行速度によりサイジング付着具合や乾燥度合いが異なるため、目標とするサイジング剤の付着量となるように適時、温度や乾燥機滞留時間等の条件を調整すればよい。乾燥温度は、空気雰囲気中100℃〜300℃であることが好ましい。乾燥温度が100℃より低くなると、十分な乾燥ができないために、高次加工の際、サイジング剤の粘着による糸切れや、コンポジット特性低下の原因となる。乾燥温度が300℃を超えるとサイジング剤の熱分解が進行し、乾燥装置内を汚し長期連続運転が不可能になる。また、乾燥機滞留時間は、10秒〜300秒であることが好ましい。乾燥機滞留時間が10秒より短いと、サイジング剤が蒸発し始める前に乾燥が終了し所望するサイジング付着量を得ることができない場合があり、逆に300秒より長くなると、特に連続するサイジング剤が付着した炭素繊維束を乾燥させる場合には設備が大きくなり設備費がかかる。
【0028】
なお、乾燥機滞留時間とは、走行する炭素繊維束への熱付与が行われている時間のことであり、乾燥機へ走行糸が導入・導出される入口から出口までの長さを炭素繊維束の走行速度により除した時間である。
【0029】
以上の方法により製造されたサイジング剤が付与された炭素繊維束を公知の巻き取り方法でボビン巻き取ることにより、サイジング剤が付与された炭素繊維束の糸幅が安定し、目的とする端面形状に凸凹がなく、著しく端面形状の安定した炭素繊維パッケージを製造することができる。炭素繊維束を走行させるための工程糸道ローラーとしては、炭素繊維束の走行糸幅が強制されず常時安定化可能なように、平ローラーを用いることが好ましい。
【0030】
さらに、本発明の炭素繊維パッケージの製造方法をより効果的にするためには、サイジング剤を付与する直前の炭素繊維束の張力を0.5〜6.5gf/Texとすることが好ましく、張力はより好ましくは1.5〜5.5gf/Texであり、さらに好ましくは2.5〜4.5gf/Texである。炭素繊維束の張力が0.5gf/Texより小さい場合は、炭素繊維束の収束性が低下し、糸幅が変動したり、糸割れが発生したりしてしまうことがある。逆に、張力が6.5gf/Texより大きい場合は、単繊維切れ、毛羽立ちが発生し、単繊維同士が絡んだり、ローラーに単繊維の巻き付きが発生したりすることにより、炭素繊維束の糸幅が変動してしまうことがある。
【0031】
炭素繊維束の張力は、サイジング剤を付与する直前の走行糸を張力計等を用いて測定することにより把握し、サイジング剤を付与する前後のローラー回転トルク等により、適時、調整することができる。
サイジング剤を付与する直前からサイジング剤を付与、乾燥させる間の走行糸の張力は、糸切れや巻き付き等の防止のため一定であることが好ましく、ボビンに巻き取る際には、目的とするパッケージ特性となるように適時調整することが好ましい。また、サイジング剤を付与する直前からサイジング剤を付与し乾燥させてからボビンに巻き取るまでの炭素繊維束の走行速度は、1〜30m/分の間で一定であることが好ましい。
【0032】
本発明のサイジング剤が付与された炭素繊維パッケージの製造方法によれば、炭素繊維束のボビンへの巻き取り中の糸幅が安定し、かつ、糸道が安定化することにより綾振りが安定していて均斉な綾振り巻き取りが可能となり、炭素繊維パッケージの端面形状が一定であって美しく、高次加工性が向上するばかりか、炭素繊維ボビン生産時の屑発生を抑制し生産ロスを大幅に削減することが可能となるサイジング剤の付与された炭素繊維パッケージが得られる。
【0033】
本発明で用いられる炭素繊維束を構成する炭素繊維は、サイジング剤が付与されていればポリアクリロニトリル系およびピッチ系等のいずれの材質からなる炭素繊維であってもよいが、高強度および高弾性率の観点から、ポリアクリロニトリル系の炭素繊維であることが好ましい。また、炭素繊維束は、単繊維数が1000〜100000本の範囲内にあり、総繊度が10〜10000Texの範囲にあるようなものが好ましい。ここでいう炭素繊維束という概念には、より高温で焼成することによって得られる黒鉛化繊維束も含まれる。また、炭素繊維強化複合材料(CFRP)としたときのマトリックス樹脂との接着性を向上させるために、表面処理を施した炭素繊維束からなるものであるのも好ましい。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を用いて本発明の炭素繊維パッケージの製造方法について、より具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。下記に示す実施例および比較例において、炭素繊維束の水分率、炭素繊維パッケージ形状、炭素繊維束の平均糸幅およびパッケージの端面凸凹差は、次のようにして判定および測定をした。
【0035】
<炭素繊維束の水分率>
予め炭素繊維束を入れるガラス瓶とその蓋をよく洗浄し、130℃×1,800秒間、乾燥機の中でガラス瓶とその蓋を乾燥させた後、乾燥機内でガラス瓶に蓋をする。その後、蓋をしたままガラス瓶を乾燥機から取り出し、シリカゲル等を充填した乾燥用のデシケータ内で2,400秒間冷却した後、ガラス瓶と蓋を合わせた重さW1×10-3(kg)を測定する。さらに、これに炭素繊維束を入れ、重さW2×10-3(kg)を測定する。次に、炭素繊維束をガラス瓶に入れたまま、蓋を開けて130℃×7,200秒間、乾燥機の中で乾燥させた後、乾燥機内でガラス瓶に蓋をする。乾燥機からガラス瓶を取り出し、シリカゲル等を充填した乾燥用のデシケータ内で2,400秒間冷却した後、重さW3×10-3(kg)を測定する。上記の値を用いて、次式により水分率を求めた。なお測定はN=5で実施し、その平均値を採用した。
水分率(重量%)={(W2−W3)/(W3−W1)}×100。
【0036】
<パッケージ形状>
サイジング剤が付与された炭素繊維束のスクウェアーエンドパッケージ(紙管軸に対し端面が直角な巻形状)の端面において、端面凸凹の距離差が炭素繊維束の平均糸幅の30%以上ある場合にパッケージ不良「×」とし、端面凸凹の距離差が炭素繊維束の平均糸幅の30%未満の場合を良「○」とした。
【0037】
<炭素繊維束の平均糸幅>
得られた炭素繊維パッケージ表面から炭素繊維束を糸幅が変化しないように、100mの長さの炭素繊維束を手でゆっくり引き出した際にパッケージ表面から炭素繊維束が離れる直前の糸幅を、1ボビンについて0.1mごとに0.1mm単位で合計1000点測定した際の平均値を平均糸幅とした。
【0038】
<パッケージの端面凸凹差>
得られた炭素繊維パッケージを水平な平面に縦置き(スクウェアーエンドパッケージ(紙管軸に対し端面が直角な巻形状)の端面が上下)にし、上部側紙管の端部を基準としてノギスを用いて、上部側端面の最大凸部(端面から炭素繊維束が飛び出している部分も含む)および最大凹部までの距離を測定し、その差を端面凸凹差とした。また、逆端面を測定する際は、ボビン上下を反転させて測定した。
【0039】
<サイジング剤付着量>
約2gの炭素繊維糸条を秤量(W1)した後、50リットル/分の窒素気流中、温度450℃に設定した電気炉(容量120cm)に15分間静置し、サイジング剤を完全に熱分解させた。そして、20リットル/分の乾燥窒素気流中の容器に移し、15分間冷却した後の炭素繊維糸条を秤量(W2)して次式よりサイジング付着量を求めた。なお測定はN=5で実施し、その平均値を採用した。
【0040】
サイジング付着量(%)=[ W1(g)− W2(g) ]/[ W1(g) ]×100
(実施例1)
ポリアクリロニトリル系繊維を前駆体とする炭素繊維束(単繊維径7μm、単繊維数12000本)を入口と出口を有する温度350℃の熱風乾燥機内に滞留時間60秒で連続的に導入、導出し、炭素繊維束の水分率を0.2重量%、張力を3.5gf/Texにした後に、下記の多官能エポキシ樹脂からなるサイジング剤を付与し、入口と出口を有する温度200℃の熱風乾燥機内に滞留時間60秒で連続的に導入、導出させ乾燥させサイジング剤が1.5重量%付着するようにサイジング剤の濃度を調整して処理した。その後、単繊維数12000本あたり650gの張力を付与して10m/分の速度でボビンに巻き上げ、6Kgのスクウェアーエンドパッケージ(紙管軸に対し端面が直角な巻形状)とした。その結果、ボビンの端面形状が一定であって非常に美しく、品位のよい炭素繊維パッケージとなった。結果を表1に示す。
【0041】
[サイジング剤]
(a)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(“エピコート(登録商標)”828、ジャパンエポキシレジン社製):30重量部
(b)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(“エピコート(登録商標)”1001、ジャパンエポキシレジン社製):40重量部
(c)ポリオキシエチレンオレイルエーテル(“EMALEX(登録商標)” 508、日本エマルジョン(株)製:10重量部
(d)ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル(“EMALEX(登録商標)”1815、日本エマルジョン(株)製:20重量部
(実施例2)
サイジング剤付与する直前の熱風乾燥機内の温度を300℃にして、炭素繊維束の水分率を2重量%にし、サイジング剤が1.5重量%付着するようにサイジング剤の濃度を増加方向に調整したこと以外は、すべて実施例1と同様にして炭素繊維パッケージを得た。その結果、ボビンの端面形状が一定であって非常に美しく、品位のよい炭素繊維パッケージとなった。結果を表1に示す。
【0042】
(実施例3)
サイジング剤付与する直前の熱風乾燥機内の温度を250℃にして、炭素繊維束の水分率を5重量%にし、サイジング剤が1.5重量%付着するようにサイジング剤の濃度を増加方向に調整したこと以外は、すべて実施例1と同様にして炭素繊維パッケージを得た。その結果、ボビンの端面形状が一定であって美しく、品位のよい炭素繊維パッケージとなった。結果を表1に示す。
【0043】
(実施例4)
サイジング剤付与する直前の熱風乾燥機内の温度を200℃にして、炭素繊維束の水分率を10重量%にし、サイジング剤が1.5重量%付着するようにサイジング剤の濃度を増加方向に調整したこと以外は、すべて実施例1と同様にして炭素繊維パッケージを得た。その結果、ボビンの端面形状が一定であって美しく、品位のよい炭素繊維パッケージとなった。結果を表1に示す。
【0044】
(比較例1)
サイジング剤付与する直前の熱風乾燥機内の温度を450℃にして、炭素繊維束の水分率を0重量%とし、張力を7gf/Texにし、サイジング剤が1.5重量%付着するようにサイジング剤の濃度を減少方向に調整したこと以外は、すべて実施例1と同様にして炭素繊維パッケージを得た。その結果、単糸の毛羽立ちが多発して、ボビンの端面形状が凸凹となり、パッケージ形状が悪く、パッケージ不良が発生した。結果を表1に示す。
【0045】
(比較例2)
サイジング剤付与する直前の熱風乾燥機内の温度を90℃にして、炭素繊維束の水分率を15重量%とし、張力を0.4gf/Texにし、サイジング剤が1.5重量%付着するようにサイジング剤の濃度を増加方向に調整したこと以外は、すべて実施例1と同様にして炭素繊維パッケージを得た。その結果、炭素繊維の糸幅が細く不安定となり、ボビンの端面形状が凸凹となり、パッケージ形状が悪く、パッケージ不良が発生した。結果を表1に示す。
【0046】
(比較例3)
サイジング剤付与する直前の熱風乾燥機内の温度を70℃にして、炭素繊維束の水分率を25重量%にしたこと以外は、すべて比較例1と同様にして炭素繊維パッケージを得た。その結果、炭素繊維から水滴が滴下し、糸幅が非常に細く不安定となりかつサイジング付着ムラが激しく、1.5重量%付着するように処理することができず、ボビンの端面形状が凸凹となり、パッケージ形状が悪く、パッケージ不良が発生した。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】


【0048】
実施例1〜4の通り、サイジング剤付与直前の炭素繊維の水分率を0.2〜10重量%とした場合は、ボビンの端面形状が一定であって非常に美しく、品位のよい炭素繊維パッケージとなった。一方、比較例1〜3の通り、サイジング剤付与直前の炭素繊維の水分率が0.2〜10重量%を外れた場合は、ボビンの端面形状が凸凹となり、パッケージ形状が悪く、パッケージ不良が発生した。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の炭素繊維パッケージの製造方法では、サイジング剤が付与された炭素繊維束を巻き取る際の走行糸の糸幅が安定化するため、炭素繊維束をワインダーで巻き取ったボビンの端面形状に凸凹がなく、著しく端面形状の安定した炭素繊維パッケージを製造することができ、さらには、ボビン端面形状が安定するため、糸幅が安定しプリプレグや織物等の高次加工性が向上するばかりか、炭素繊維ボビン生産時の屑発生を抑制し生産ロスを大幅に削減することが可能となり、有用である。
【出願人】 【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【出願日】 平成19年5月28日(2007.5.28)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−7925(P2008−7925A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2007−140450(P2007−140450)