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【発明の名称】 アクリル系繊維およびその製造方法
【発明者】 【氏名】西田 宗平

【氏名】三好 正明

【要約】 【課題】低温で染色可能で、染色後も高い収縮率を有し、かつテンター工程前後の色差が見られないアクリル系繊維を得る事。

【構成】低温での染色性を向上させる為に、アクリロニトリル40〜95重量%とハロゲン含有モノマー5〜60重量%およびスルホン酸基含有モノマー0〜3重量%を含有する重合体(A)50〜80重量部に、アクリロニトリル5〜70重量%とアクリル酸エステル20〜94重量%とスルホン酸基含有モノマー1〜5重量%を含有する重合体(B)を20〜50重量部を混合した重合組成物を含有する紡糸原液から繊維を作成する事により、上記課題を解決した、低温染色可能で、テンター工程前後の色差が見られないアクリル系繊維が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体(A)と重合体(B)の総量が100重量部であり、アクリロニトリル40〜95重量%とハロゲン含有モノマー5〜60重量%およびスルホン酸基含有モノマー0〜3重量%を含有する重合体(A)50〜80重量部に、アクリロニトリル5〜70重量%とアクリル酸エステル20〜94重量%とスルホン酸基含有モノマー1〜5重量%を含有する重合体(B)20〜50重量部を混合した重合組成物を含有する紡糸原液から製造されるアクリル系繊維であって、スルホン酸基含有モノマー由来の硫黄原子含量として0.1〜0.4重量%を重合体(A)と重合体(B)とを混合した重合体組成物中に含有するアクリル系繊維。
【請求項2】
60℃〜80℃で30〜120分における染色時の相対飽和値が0.8以上である事を特徴とする、請求項1に記載のアクリル系繊維。
【請求項3】
重合体(B)のスルホン酸基含有モノマーが、スチレンスルホン酸ソーダ、メタリルスルホン酸ソーダ、イソプレンスルホン酸ソーダ、2−アクリルアミド−2−メチルプロピルスルホン酸ソーダからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のアクリル系繊維。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、低温での染色が可能で、染色後の発色性も良好で、且つ染色後とパイル加工のテンターでの加熱後の繊維の色変化が少ないアクリル系高繊維及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系繊維は、獣毛様風合いを有し、その特徴から玩具、衣料等の立毛商品に用いられている。なかでも、立毛感、天然調の外観を持たせるために、ダウンヘアー部を収縮繊維、ガードヘアー部を非収縮繊維で構成する例が多い。パイル布帛には、天然近似の外観が要求されるため、使用する繊維には様々な色相が求められるが、収縮繊維は染色工程で受ける熱履歴により収縮するため、紡糸工程であらかじめ着色されており、限定された色相の繊維しか存在しなかった。そこで、特許文献1で、上記の問題を解消し、低温での染色を可能とし、染色後においても高収縮率を有し、かつ発色性が良好なアクリル系縮繊維を得る技術として、アクリロニトリル40〜80重量%とハロゲン含有モノマー5〜60重量%およびスルホン酸基含有モノマー0〜5重量%を含有する重合体(A)50〜99重量部に、アクリロニトリル5〜70重量%とアクリル酸エステル20〜94重量%とメタリルスルホン酸ソーダ0.01〜10重量%及びメタリルスルホン酸ソーダ以外のスルホン酸基含有モノマーを1〜40重量%を含有する事で低温染色性を向上させる機能を有する重合体(B)1〜50重量部を混合した重合組成物をアセトンに溶解して得られた紡糸原液を用いて紡糸する事を特徴とするアクリル系収縮繊維の製造方法が示された。
【0003】
しかし、経済性を考えて、製造コストを抑えるには、重合体(B)の添加量を極力少なくする必要があるが、重合体(B)の添加量を低減しても上記効果を発揮するように、重合体(B)を設計すると、重合体(B)の含有するスルホン酸基含有モノマーを15重量%以上とする必要がある。特許文献1における重合体(B)において、スルホン酸基含有モノマーを15重量%以上含むアクリル系収縮繊維を、80℃以下の温度で染色し、パイル布帛に加工した場合、テンター前後でパイル布帛に色差が生じる。テンター前後でパイル布帛に色差が生じると、ユーザーにおいてパイル布帛の外観管理が非常に困難になるため好ましくない。この原因は明らかになっていないが、特許文献1における重合体(B)において、スルホン酸基の量が多くなりすぎると、親水性が高くなりすぎ重合体(A)との相分離が著しくなる事や、スルホン酸基同士の立体障害などで、染料との結合が困難になる事が考えられる。さらに、染料は、重合体(B)との結合の有無で発色性が異なる傾向にある。この様な現象より、特許文献1における、スルホン酸基含有モノマーを15重量%以上含む重合体(B)を用いてなる繊維を、80℃以下の低温で染色した場合、この程度の熱エネルギーでは、重合体(B)と染料との結合反応が十分に進まない為、染色工程では重合体(B)と染料は十分に結合されないが、パイル布帛への加工工程のテンター工程で、染色より高い熱エネルギーが繊維に与えられると、重合体(B)と染料との結合反応が進みやすくなる。この結果、染料は重合体(B)と結合前後で発色が異なり、テンター工程前後で発色が異なってしまうと推測される。
【特許文献1】国際公開2006/008990号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、テンター前後で染色したパイル布帛の色相が変化しないアクリル系繊維を得る事にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、こうした課題を解決するために、アクリロニトリル40〜95重量%とハロゲン含有モノマー5〜60重量%およびスルホン酸基含有モノマー0〜3重量%を含有する重合体(A)50〜80重量部に、スルホン酸基含有モノマーの含有量を少なくし、染料との結合性を良好にした、アクリロニトリル5〜70重量%とアクリル酸エステル20〜94重量%とスルホン酸基含有モノマー1〜5重量%を含有する重合体(B)を20〜50重量部を混合した重合組成物を含有する紡糸原液から繊維を作成する事により、テンター前後に染色された繊維の色相が変化しないアクリル系繊維が得られる事を見出した。
すなわち、本発明は、
1)重合体(A)と重合体(B)の総量が100重量部であり、アクリロニトリル40〜95重量%とハロゲン含有モノマー5〜60重量%およびスルホン酸基含有モノマー0〜3重量%を含有する重合体(A)50〜80重量部に、アクリロニトリル5〜70重量%とアクリル酸エステル20〜94重量%とスルホン酸基含有モノマー1〜5重量%を含有する重合体(B)20〜50重量部を混合した重合組成物を含有する紡糸原液から製造されるアクリル系繊維であって、スルホン酸基含有モノマー由来の硫黄原子含量として0.1〜0.4重量%を重合体(A)と重合体(B)とを混合した重合体組成物中に含有するアクリル系繊維、
2)60℃〜80℃で30〜120分における染色時の相対飽和値が0.8以上である事を特徴とする、1)に記載のアクリル系繊維、
3)重合体(B)のスルホン酸基含有モノマーが、スチレンスルホン酸ソーダ、メタリルスルホン酸ソーダ、イソプレンスルホン酸ソーダ、2−アクリルアミド−2−メチルプロピルスルホン酸ソーダからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする1)または2)のいずれかに記載のアクリル系繊維、
に関するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のアクリル系繊維は、低温での染色が可能であり、従来課題であったパイル布帛の加工工程のテンター工程前後で染色後の繊維の色相が変化するという課題を解決し、容易に色管理が可能で、かつ使用可能な染料の種類も多く、経済的に容易且つ安定的に衣料、玩具(ぬいぐるみ等)及びインテリア用等の広範囲に活用可能なパイル商品企画を可能とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の重合体(A)において、アクリロニトリルを40〜95重量%用いる事が好ましいが、アクリロニトリルの含有量が40重量%未満では、得られる繊維の耐熱性が低くなる。また、アクリロニトリルの含有量が95重量%を超えると、耐熱性が高くなり十分な染色性、収縮率が得られない。
【0008】
本発明の重合体(A)において、ハロゲン含有モノマーとは塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン等に代表されるハロゲン化ビニル及びハロゲン化ビニリデン類等が好ましく、単独もしくは2種以上混合して用いる事ができる。このハロゲン含有モノマーは重合体(A)において、繊維にがさつきを生じず触感を良くするために5重量%以上であることが好ましく、疎水性を低くし十分な染色性を得るために60重量%以下である事がこのましいため、5〜60重量%用いる事が好ましい。本発明の重合体(A)においてスルホン酸基含有モノマーとは、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸またはこれらの金属塩類およびアミン塩類等が好ましく、単独もしくは2種以上混合して用いる事ができる。本発明の重合体(A)において、繊維にボイドや膠着が生じ強度が低下する事を防ぐため、スルホン酸基含有モノマーの含有量を3重量%以下用いる事が好ましい。
【0009】
本発明の重合体(B)において、アクリロニトリルの含有量は、繊維の耐熱性を維持するため5重量%以上にする事が好ましく、繊維中のボイド発生を抑制するために70重量%以下にする事が好ましく、5〜70重量%用いる事が好ましい。本発明の重合体(B)において、アクリル酸エステルとは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等が好ましく、これらのモノマーを単独もしくは2種以上混合して用いる事ができる。本発明の重合体(B)において、アクリル酸エステルは、十分な染色性を得るため20重量%以上であることが好ましく、繊維にボイドや膠着が生じるのを防ぐため94重量%以下である事が好ましく、20〜94重量%である事が好ましい。本発明の重合体(B)において、スルホン酸基含有モノマーとは、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸またはこれらの金属塩類およびアミン塩類等が好ましく、単独もしくは2種以上混合して用いる事ができる。本発明の重合体(B)において、スルホン酸基含有モノマー含有量は、染色性を低くしないため1重量%以上含まれる事が好ましい。また、スルホン酸基含有モノマー量が多くなりすぎると、染料との結合が困難になる傾向にあり、テンター工程前後のパイル布帛の色相が異なるため、重合体(B)において、スルホン酸基含有モノマー含有量は、5重量%以下含まれる事が好ましい。
【0010】
本発明の重合体(A)及び重合体(B)は、重合開始剤として概知の化合物、例えばパーオキシド系化合物、アゾ系化合物、または各種のレドックス系化合物を用い、乳化重合、懸濁重合、溶液重合等一般的なビニル重合方法により得る事ができる。
【0011】
本発明の重合体(B)を重合する際にはジメチルホルムアミド(DMF)やアセトンなどの既知の溶媒を使用することが可能であるが、生産性の観点から重合時の固形分濃度を20〜40重量%とすることが好ましい。また、水と既知の溶媒との比率を調節することにより、重合後の組成を均一に溶解させる事が好ましい。具体的には、前記固形分濃度の範囲において、水と既知の溶媒との重量比率(水/既知の溶媒)は、重合の終了時において重合体(B)が重合系から析出しない点から20/80以下であることが好ましい。
また、重合の初期においてスルホン酸基含有モノマーが可溶となる点から1/99以上であることが好ましく、重合の初期から終了時まで重合系中が均一とする場合には、水と既知の溶媒との重量比率が、1/99〜20/80の範囲であることが好ましい。さらに、スルホン酸基含有モノマーの溶解度の点から、水と既知の溶媒との重量比率は、スルホン酸基含有モノマーが重合体(B)中で1重量%以上3重量%未満の範囲では2/98〜15/85、スルホン酸基含有モノマーが重合体(B)中で3重量%以上5重量%以下の範囲では5/95〜20/80であることが好ましい。
【0012】
本発明の重合体(A)と重合体(B)の混合割合は、重合体(B)が20%未満では、十分な染色性が得られず、50%を超えると、繊維にボイドや膠着が生じ、強度、染色性が低下するので好ましくない。本発明の重合体(A)と重合体(B)とを混合した重合体組成物中に含有する、スルホン酸基含有モノマー由来の硫黄原子含量は0.1〜0.4重量%である事が好ましい。上記スルホン酸基含有モノマー由来の硫黄原子含量は、十分な染色性を得る為に0.1重量%以上が好ましく、繊維にボイドや膠着が生じ強度が低下する事を防ぐため、0.4重量%以下が好ましい。
【0013】
本発明のアクリル系繊維の製造方法は、ジメチルホルムアミド(DMF)やアセトン中における常法の湿式紡糸あるいは乾式の紡糸法でノズルより紡出し、延伸、乾燥を行う。また必要に応じ更に延伸、熱処理を行ってもよく、得られた繊維を70〜140℃で1.3〜4.0倍に延伸して繊維を得る事ができる。これらの中でも、本発明のアクリル系繊維は、重合体(A)及び重合体(B)をアセトンに溶解させて紡糸原液とする事が好ましい。この紡糸原液に、酸化チタンまたは着色用顔料のような無機及び/又は有機の顔料、防鎮、着色紡糸、耐候性等に効果のある安定剤等を紡糸に支障をきたさない限り使用する事も可能である。
【0014】
本発明のアクリル系繊維を染色する場合、アクリル系繊維用の一般的なカチオン染料の三原色を用いて染色する。 実用的な染色例としては、Maxilon Red GRL、Blue GRL、Yellow GL(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ株式会社製)を目的とする配合色に混合し、 トータルで約0.5%omfの染料に調合する。更に、ウルトラMT#100(ミテジマ化学株式会社製)0.5g/Lの染色助剤を用いて70℃で60分間染色する。このときの染色の相対飽和値は0.8以上であることが、好ましい。一般的にアクリル系繊維、例えば「カネカロン(登録商標)」SE 3.3dtex 38mm(株式会社カネカ製)がMaxilon Red GRL 200%(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ株式会社製) 0.5%omf程度の染料を吸尽した場合の発色を淡色、1%omf程度の染料を吸尽した場合の発色を中濃色、2%omf程度の染料を吸尽した場合の発色を濃色とした場合、本発明のアクリル系繊維は相対飽和値が0.8以上で濃色にまで染色可能となり、市場で使用されている、ほとんどの色に染色可能となる。従って、本発明のアクリル系繊維の80℃以下の相対飽和は0.8以上が好ましい。
【0015】
(相対飽和値の測定)
本発明でいう染色の相対飽和値とは、繊維の染色能力の指標であり、繊維を所定の温度で60分間、過飽和な量のMalachite Greenを用いて染色し飽和染着量を求め、飽和染着量より相対飽和値を求めた。飽和染着量、相対飽和値は下記の式より求めた。
飽和染着量=((Ao−A)/Ao)×2.5)
A:染色後の染浴の吸光度(618nm)
Ao:染色前の染浴の吸光度(618nm)
相対飽和値=飽和染着量×400/463
上記吸光度の測定は、紫外可視分光光度計(株式会社、島津製作所製、UV−2550)を用いて行った。
【0016】
(色相差の評価)
テンター前後のパイル布帛の色相変化を評価する方法として、実際にパイル布帛のテンター前後の色相差を評価する事が好ましいが、定量化が困難な為、70℃で60分間染色した後の繊維2gをテンター工程と同条件の乾熱乾燥機中、130℃で5分間熱処理を行い、熱処理前後の色相差で評価する事にした。熱処理前後の色相差は、それぞれ解繊した繊維2gを、日本電色工業製の測色機(RS−232C)を用いて、L値、a値、値を測定し、ハンター色差式によりハンター式差(ΔE)を算出し、ΔEで評価した。ΔEは70℃で60分間染色した繊維と、70℃で60分間染色した繊維を130℃で5分間熱処理した繊維を、それぞれ日本電色工業製の測色機(RS−232C)を用いて測色したL値、a値、b値を次のとおりとした時、下記式により表される。
・染色後の繊維の測色値 = L値:L,a値:a,b値:b
・染色後の繊維を熱処理した繊維の測色値 = L値:LH,a値:aH,b値:bH
ΔE=((L−LH)2+(a−aH)2+(b−bH)21/2
パイル布帛のテンター工程前後の色差を有識者5名により目視判定したところ、色差を感じないと評価されたパイル布帛に用いた繊維のΔE値は3.0以下であった。したがって、本発明において、染色後の繊維と、染色後の繊維を熱処理した繊維のΔEが3.0以下である事が好ましい。
【実施例】
【0017】
以下に実施例を記す。
(1)アクリル系繊維の製造例
(製造例1) 内容積20Lの耐圧重合反応装置にイオン交換水12000g、ラウリル硫酸ナトリウム54g、亜硫酸25.8g、亜硫酸水素ナトリウム13.2g、硫酸鉄0.06g、アクリロニトリル(以下ANと記す。)294g、塩化ビニル(以下VCと記す。)3150gを投入し、窒素置換した。重合機内温を50℃に調整し、開始剤として過硫酸アンモニウム2.1gを投入し、重合を開始した。途中、AN2526g、スチレンスルホン酸ナトリウム(以下3Sと記す。)30g、過硫酸アンモニウム13.8gを追加しながら、重合時間5時間10分で重合した。その後、未反応VCを回収し、ラテックスを重合機より払い出し、塩析、熱処理、ろ過、水洗、脱水、乾燥し、組成AN/VCM/3S=50/49.5/0.5の重合体1を得た。次に、内容積5Lの耐圧重合反応装置にアセトン2100g、水230g、AN300g、MA680g、メタリルスルホン酸ソーダ(以下MXと記す。)20gを投入し、窒素置換した。重合機内温度を55℃に調整し、開始剤として2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5gを投入し重合を開始した。途中、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)10gを追加しながら16時間重合し、その後70℃に昇温し6時間重合させ重合体濃度30重量%の組成AN/MA/MX=30/68/2の重合体2の溶液を得た。重合体1が30重量%になるようにアセトンを加え溶解した重合体1の溶液に、重合体2の溶液を重合体の重量比が重合体1:重合体2=70:30の比率になるように混合した物を紡糸原液とした。得られた、紡糸原液を0.08mmφ、8500孔の口金を通して25℃、30重量%のアセトン水溶液中に吐出し、さらに25℃、20重量%アセトン水溶液中で2.0倍に延伸した後60℃で水洗した。ついで130℃で乾燥、更に105℃で1.5倍に延伸し、4.5dtexの繊維を得た。
【0018】
(製造例2)
内容積5Lの耐圧重合反応装置にアセトン2100g、水230g、AN300g、MA670g、MX30gを投入し、窒素置換した。重合機内温度を55℃に調整し、開始剤として2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5gを投入し重合を開始した。途中、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)10gを追加しながら16時間重合し、その後70℃に昇温し6時間重合させ重合体濃度30重量%の組成AN/MA/MX=30/67/3の重合体3の溶液を得た。製造例1に示す重合体1が30重量%になるようにアセトンを加え溶解した重合体1の溶液に、重合体3の溶液を重合体の重量比が重合体1:重合体3=70:30の比率になるように混合した物を紡糸原液とした。得られた紡糸原液を、製造例1と同様に処理して、4.5dtexの繊維を得た。
【0019】
(製造例3)
内容積5Lの耐圧重合反応装置にアセトン1400g、水930g、AN300g、MA400g、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(以下SAMと記す。)300gを投入し、窒素置換した。重合機内温度を55℃に調整し、開始剤として2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5gを投入し重合を開始した。途中、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)10gを追加しながら16時間重合し、その後70℃に昇温し6時間重合させ重合体濃度30重量%の組成AN/MA/SAM=30/40/30の重合体4の溶液を得た。製造例1に示す重合体1が30重量%になるようにアセトンを加え溶解した重合体1の溶液に、重合体4の溶液を重合体の重量比が重合体1:重合体4=96:4の比率になるように混合した物を紡糸原液とした。得られた紡糸原液を、製造例1と同様に処理して、4.5dtexの繊維を得た。
【0020】
製造例1〜3で得られた繊維の重合体組成を表1に示す。
【0021】
【表1】


【0022】
(2)繊維の染色
繊維は、オーバーマイヤー染色機を用いて下記の通りに灰色に染色した。まず、染色機に繊維1kgと水10Lを仕込み、2℃/minの昇温速度で加熱し、40℃になった所で、染料(Maxilon Yellow GL 200%=0.1%omf、Maxilon Red GRL 200%=0.03%omf、MaxilonBlue GRL 300%=0.07%omf、(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ株式会社製))を添加した。さらに、2℃/minの昇温速度で70℃まで加熱し、70℃で60min保持した。その後、冷水で30℃まで冷却し、染色液を排水した後、綿を染色機より取り出し、脱水機にて、脱水処理して、40℃で乾燥した。
【0023】
(3)パイル布帛の作成
製造例1〜5で製造し、さらに前記(2)の手順で染色した繊維と、後述する非収縮繊維を後述する割合で混合し、混綿・調湿した後、Kodama Tech Co.Ltd.製オープナー、Howa Machinery Ltd.Nagoya製カードを用いてスライバーを作成した。次いでMayer社製ハイパイル編織機でスライバーニッティングを行い、岩倉精機社製シャーリングマシーンでパイル部をカットしてパイル長を一定に揃えた後、パイルの裏面にアクリル酸エステル系接着剤を付着させ、Hirano Tecseed社製テンターを用いて130℃、5分で接着剤を乾燥させると共に収縮性繊維を収縮させた。その後、岩倉精機社製ポリッシャーマシーン、シャーリングマシーンでポリッシャー仕上げ及びシャーリングを行ってパイル布帛に仕上げた。
【0024】
(実施例1、2)
製造例1、2で得られた繊維について、70℃相対飽和値、染色した繊維の熱処理前後の色差(ΔE)を表2に示す。
【0025】
【表2】


【0026】
さらに、製造例1、2で得られた繊維を染色し、染色後の繊維と市販の非収縮繊維であるアクリル系繊維「カネカロン(登録商標)」AH(R/W)3.3dtex、38mm(株式会社カネカ製)をそれぞれ60%/40%の重量比率で混綿し、パイル長12mmのパイル布帛を作成した。このパイル布帛を作成する時の、テンター工程前後の色相差を有識者5名で目視評価した。製造例1、2で得られた繊維は、どの繊維についても、パイル布帛への加工工程のテンター工程前後において色差は見られなかった。さらに、染色した繊維の熱処理前後のΔEは3.0以下であり、かつ70℃の相対飽和値は0.8以上と染色性も良好であった。
【0027】
(比較例1)
製造例3で得られた繊維について、70℃相対飽和値、染色した繊維の熱処理前後の色差(ΔE)を表2に示す。
さらに、製造例3で得られた繊維を染色し、染色後の繊維と市販の非収縮繊維であるアクリル系繊維「カネカロン(登録商標)」AH(R/W)3.3dtex、38mm(株式会社カネカ製)をそれぞれ60%/40%の重量比率で混綿し、パイル長12mmのパイル布帛を作成した。このパイル布帛を作成する時の、テンター工程前後の色相差を有識者5名で目視評価した。製造例3で得られた繊維は、どの繊維についても、70℃の相対飽和値は0.8以上と染色性も良好であったが、パイル布帛への加工工程のテンター工程前後において色差が見られた。さらに、染色した繊維の熱処理前後のΔEも3.0以上となり不良であった。
【出願人】 【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
【出願日】 平成18年6月30日(2006.6.30)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−7909(P2008−7909A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−182123(P2006−182123)