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【発明の名称】 ポリオキシメチレン樹脂繊維の製造方法
【発明者】 【氏名】大川 秀俊

【要約】 【課題】ポリオキシメチレン樹脂からなり優れた諸特性を有する極細繊維を、そのための紡糸性、延伸性に優れた生産効率の良好な製造方法により提供する。

【構成】オキシメチレン繰返し単位100mol当たり1.5〜8.0molの特定のオキシアルキレン単位を含み、メルトインデックス(190℃、荷重2160g)が1〜120g/10分であるポリオキシメチレン樹脂(A)と、アルカリ分解性樹脂(B−1)、水溶性樹脂(B−2)及び有機溶媒可溶性樹脂(B−3)から選ばれた熱可塑性樹脂(B)とを複合紡糸して複合繊維を調製した後、該複合繊維をアルカリ処理、水処理又は有機溶媒処理して熱可塑性樹脂(B)を分解除去又は溶解除去したポリオキシメチレン樹脂繊維を製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシメチレン繰返し単位100mol当たり1.5〜8.0molの下記一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位を含み、メルトインデックス(190℃、荷重2160g)が1〜120g/10分であるポリオキシメチレン樹脂(A)と、アルカリ分解性樹脂(B−1)、水溶性樹脂(B−2)及び有機溶媒可溶性樹脂(B−3)から選ばれた熱可塑性樹脂(B)とを複合紡糸して複合繊維を調製した後、該複合繊維をアルカリ処理、水処理又は有機溶媒処理して熱可塑性樹脂(B)を分解除去又は溶解除去することを特徴とするポリオキシメチレン樹脂繊維の製造方法。
【化1】


(式中、R1、R2は、水素、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基を有する有機基、フェニル基、フェニル基を有する有機基から選ばれ、R1、R2は同一でも異なっていてもよい。mは2〜6の整数を示す。)
【請求項2】
アルカリ分解性樹脂(B−1)がポリエステル樹脂である請求項1に記載のポリオキシメチレン樹脂繊維の製造方法。
【請求項3】
水溶性樹脂(B−2)がポリビニルアルコールである請求項1に記載のポリオキシメチレン樹脂繊維の製造方法。
【請求項4】
有機溶媒可溶性樹脂(B−3)がポリスチレンである請求項1に記載のポリオキシメチレン樹脂繊維の製造方法。
【請求項5】
ポリオキシメチレン樹脂(A)が、オキシメチレン繰返し単位100mol当たり1.8〜5.0molの前記一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位を含むポリオキシメチレン共重合体である請求項1〜4の何れか1項に記載のポリオキシメチレン樹脂繊維の製造方法。
【請求項6】
ポリオキシメチレン樹脂(A)が、オキシメチレン繰返し単位100mol当たり2.0〜4.0molの前記一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位を含むポリオキシメチレン共重合体である請求項1〜4の何れか1項に記載のポリオキシメチレン樹脂繊維の製造方法。
【請求項7】
ポリオキシメチレン樹脂繊維の断面形状が円形、多角形または中空である請求項1〜6の何れか1項に記載のポリオキシメチレン樹脂繊維の製造方法。
【請求項8】
ポリオキシメチレン樹脂繊維の繊度が2dtex以下である請求項1〜7の何れか1項に記載のポリオキシメチレン樹脂繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオキシメチレン樹脂からなる極細繊維の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂製極細繊維として、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等からなる極細繊維が知られている。その製造方法としては、これらの樹脂と、溶解性・分解性等の異なる他の樹脂とを複合紡糸して海島構造を有する複合繊維を形成した後、海構造を形成している成分を溶解又は分解させ、島構造を形成していた成分からなる極細繊維を得る方法が提案されている(特許文献1〜7)。かかる極細繊維は粒子の濾過効果が高く、濾過布、エアーフィルター、抄紙用カンバスなど、濾過用途の産業資材などに利用されている。また、極細繊維の短繊維を用いた湿式不織布は均一性が高く高密度であり、低目付で濾過機能の高いフィルターを得ることができるため、産業用途で種々の応用が期待されている。
【0003】
しかしながら、これらの樹脂からなる極細繊維は耐アルカリ性、耐加水分解性、耐溶剤性、強度、伸長変形の回復性等の性能が必ずしも十分であるとは言えず、これらの特性が必要とされる利用分野においては、その要求に応えることができない。
【0004】
これに対し、ポリオキシメチレン樹脂は耐溶剤性、耐アルカリ性、耐加水分解性、強度、繊維の伸長回復性等に優れており、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等の繊維よりも高機能の繊維用素材として期待されるものである。
【0005】
しかしながら、ポリオキシメチレン樹脂は結晶化度が高く且つ結晶化速度が速いが故に、その溶融紡糸性や延伸加工性は他の樹脂、例えば前記のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等に比べて著しく劣るものであり、繊維への加工は極めて難しいと考えられてきた。このため、極細繊維の製造についても、前記特許文献1〜7等には、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等からなる極細繊維の製造は開示されているものの、ポリオキシメチレン樹脂からなる極細繊維については全く開示されていない。
【0006】
このように、ポリオキシメチレン樹脂は優れた諸特性を有し、その極細繊維は産業用途を中心に多くの用途が期待されることから、ポリオキシメチレン樹脂からなる極細繊維の効率的・経済的な製造方法の開発が切望されていた。
【特許文献1】特公昭44−18369号公報
【特許文献2】特公昭47−37648号公報
【特許文献3】特公昭48−28005号公報
【特許文献4】特開昭52−88619号公報
【特許文献5】特開昭52−88622号公報
【特許文献6】特開昭55−128038号公報
【特許文献7】特開平5−71006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記のような課題を解決し、ポリオキシメチレン樹脂からなる優れた諸特性を有する極細繊維を提供すること、そのための紡糸性、延伸性に優れた生産効率の良好な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、結晶化特性を制御した特定のポリオキシメチレン共重合体を用いることにより紡糸性、延伸性が良好になること、ポリオキシメチレン樹脂からなる極細繊維の製造においては複合紡糸法の利用が極めて好適に作用すること、等を見出し本発明に到達した。
【0009】
即ち本発明は、オキシメチレン繰返し単位100mol当たり1.5〜8.0molの下記一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位を含み、メルトインデックス(190℃、荷重2160g)が1〜120g/10分であるポリオキシメチレン樹脂(A)と、アルカリ分解性樹脂(B−1)、水溶性樹脂(B−2)及び有機溶媒可溶性樹脂(B−3)から選ばれた熱可塑性樹脂(B)とを複合紡糸して複合繊維を調製した後、該複合繊維をアルカリ処理、水処理又は有機溶媒処理して熱可塑性樹脂(B)を分解除去又は溶解除去することを特徴とするポリオキシメチレン樹脂繊維の製造方法である。
【0010】
【化2】


【0011】
(式中、R1、R2は、水素、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基を有する有機基、フェニル基、フェニル基を有する有機基から選ばれ、R1、R2は同一でも異なっていてもよい。mは2〜6の整数を示す。)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポリオキシメチレン樹脂からなり優れた諸特性を有する極細繊維を、効率的に製造することができる。
【0013】
本発明において利用する複合紡糸法によれば、ポリオキシメチレン樹脂の高結晶化度、高結晶化速度に伴う紡糸性、延伸性の欠点が緩和されるという特徴も生じる。
【0014】
また、ポリオキシメチレン樹脂は耐アルカリ性、耐溶剤性等に優れるため、複合紡糸を利用した極細繊維の製造における複合紡糸相手樹脂として、アルカリ分解性樹脂、水溶性樹脂、溶剤可溶性樹脂等の中から広く選択可能であり、相手樹脂の選択幅が広いという特徴もある。さらに、ポリオキシメチレン樹脂は他の樹脂との相溶性に欠けることが有利に作用し、複合紡糸において相手樹脂と相溶化し難く、ポリオキシメチレン樹脂からなる繊維状単位が安定して形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明は、前述の如く、特定のポリオキシメチレン樹脂(A)と、アルカリ分解性樹脂(B−1)、水溶性樹脂(B−2)又は有機溶媒可溶性樹脂(B−3)とを複合紡糸して複合繊維を調製した後、該複合繊維をアルカリ処理、水処理又は有機溶媒処理してアルカリ分解性樹脂(B−1)、水溶性樹脂(B−2)又は有機溶媒可溶性樹脂(B−3)を分解除去又は溶解除去してポリオキシメチレン樹脂繊維を得ることを特徴とするものである。
【0017】
本発明において使用する特定のポリオキシメチレン樹脂(A)とは、主としてオキシメチレン単位の繰り返しからなるポリマー鎖中に、オキシメチレン単位100mol当たり1.5〜8.0molの前記一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位を含むポリオキシメチレン共重合体である。好ましくはオキシメチレン単位100mol当たり1.5〜5.0molの一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位を含むポリオキシメチレン共重合体であり、特に好ましくはオキシメチレン単位100mol当たり2.0~4.0molの一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位を含むポリオキシメチレン共重合体である。
【0018】
一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位の割合が少なくなるとポリオキシメチレン共重合体の結晶化速度が早くなり、複合紡糸による繊維製造工程における断糸の発生が増大するばかりでなく、紡糸直後の結晶化度が増大することにより延伸性も低下する傾向が生じる。逆にオキシアルキレン単位の割合が過剰になると、繊維の強度等が不十分なものになる。
【0019】
また、本発明で使用するポリオキシメチレン樹脂(A)は、ASTMD-1238に従い、190℃、2160gの荷重下で測定されるメルトインデックス(MI)が1〜120g/10分のものであり、好ましくは2.5〜100g/10分であり、更に好ましくは5.0〜90g/10分である。
【0020】
メルトインデックス(MI)の過大なものは、ポリオキシメチレン樹脂が低分子量であるために紡糸及び延伸時に断糸し易くなり製造が不安定なものとなる。またメルトインデックス(MI)が過小のポリオキシメチレン樹脂では、高粘度のため紡糸時の負荷が増大し、紡糸が困難となるばかりでなく延伸応力が増大することにより延伸が困難となる。
【0021】
本発明で使用する上記の如きポリオキシメチレン樹脂(A)の製造方法は特に限定されるものではなく、一般的にはトリオキサンとコモノマーである環状エーテル化合物或いは環状ホルマール化合物とを、主としてカチオン重合触媒を用いて塊状重合させる方法で得ることができる。重合装置としては、バッチ式、連続式等の公知の装置が何れも使用できる。
【0022】
前述した一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位の導入割合は、共重合させるコモノマーの量により、また、メルトインデックス(MI)は、重合時に使用する連鎖移動剤、例えばメチラール等の添加量により調整することができる。
【0023】
コモノマーとして用いられる環状エーテル化合物或いは環状ホルマール化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフラン、トリオキセパン、1,3−ジオキソラン、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール等が挙げられ、その中でもエチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマールが好ましい。また、ポリオキシメチレン共重合体は、分岐又は架橋構造を有するものであってもよい。
【0024】
重合によって得たポリオキシメチレン共重合体は、触媒の失活化処理、未反応モノマーの除去、重合体の洗浄、乾燥、不安定末端部の安定化処理等を行った後、更に公知の各種安定剤の配合による安定化処理等を行って、実用に供される。代表的な安定剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、窒素含有化合物、アルカリ或いはアルカリ土類金属の水酸化物、無機塩、カルボン酸塩等を上げることができる。
【0025】
更に、本発明で使用するポリオキシメチレン樹脂には、必要に応じて、熱可塑性樹脂に対する一般的な添加剤、例えば染料、顔料等の着色剤、滑剤、核剤、離型剤、帯電防止剤、界面活性剤、或いは有機高分子材料、無機または有機の繊維状、板状、粉粒状の充填剤等の1種または2種以上を、本発明の目的を阻害しない範囲で添加することができる。
【0026】
本発明においては、上記の如きポリオキシメチレン樹脂(A)とアルカリ分解性樹脂(B−1)とを複合紡糸して複合繊維を調製した後、該複合繊維をアルカリ処理してアルカリ分解性樹脂(B−1)を分解除去する方法、上記の如きポリオキシメチレン樹脂(A)と水溶性樹脂(B−2)とを複合紡糸して複合繊維を調製した後、該複合繊維を水処理して水溶性樹脂(B−2)を溶解除去する方法、上記の如きポリオキシメチレン樹脂(A)と有機溶媒可溶性樹脂(B−3)とを複合紡糸して複合繊維を調製した後、該複合繊維を有機溶剤処理して有機溶媒可溶性樹脂(B−3)を溶解除去する方法によって、目的とするポリオキシメチレン樹脂繊維を得ることができる。
【0027】
このように、本発明のポリオキシメチレン樹脂繊維の製造方法は、一旦複合繊維を形成させた後、複合相手樹脂を分解除去又は溶解除去して目的とするポリオキシメチレン樹脂繊維を得ることを基本原理とするものであり、その原理や作用は上記の何れの方法も等価である。
【0028】
ここで、複合繊維を形成させるための相手樹脂としては、各々、アルカリ分解性、水溶性、有機溶媒可溶性の性質を有するものであれば特に限定されるものではないが、アルカリ分解性樹脂(B−1)としてはポリエステル樹脂、水溶性樹脂(B−2)としてはポリビニルアルコール、有機溶媒可溶性樹脂(B−3)としてはポリスチレンが、各々その代表例として例示される。
【0029】
ポリオキシメチレン樹脂(A)と、アルカリ分解性樹脂(B−1)、水溶性樹脂(B−2)又は有機溶媒可溶性樹脂(B−3)とからなる複合繊維は、一般的な溶融紡糸法を適用した複合紡糸により調製することができる。例えば、2つの押出機と複合紡糸用ダイを備えた装置を使用し、各々の押出機で溶融させたポリオキシメチレン樹脂(A)と、アルカリ分解性樹脂(B−1)、水溶性樹脂(B−2)又は有機溶媒可溶性樹脂(B−3)とを複合紡糸ダイに供給し、複合紡糸ダイを通して押出し、これを巻き取ることにより未延伸の複合繊維が得られる。
【0030】
次いで、未延伸の複合繊維は、連続または非連続的に加熱しながら延伸することにより、延伸された複合繊維を得ることができる。
【0031】
延伸加工は、室温からポリオキシメチレン樹脂(A)の融点までの温度範囲で行うことが可能であるが、延伸速度や加熱方法に応じて延伸加工温度を適宜調整するのが望ましい。
【0032】
延伸倍率は、繊維径の均一性や強度の点から3倍以上が好ましく、繊維強度と伸度を考慮すると4倍以上15倍以下が望ましい。
【0033】
延伸処理された複合繊維は、各々、使用された複合相手樹脂(B−1、B−2、B−3)の特性に応じて、アルカリ処理、水処理又は有機溶媒処理を行い、複合相手樹脂(B−1、B−2、B−3)を分解又は溶解除去することにより、所望のポリオキシメチレン樹脂繊維が得られる。
【0034】
処理条件は特に限定されるものではないが、複合相手樹脂がアルカリ分解性のポリエステル樹脂の場合は処理液として水酸化ナトリウム水溶液等を使用し、また複合相手樹脂が水溶性樹脂のポリビニルアルコールの場合は処理液として水を使用し、また複合相手樹脂が有機溶媒可溶性のポリスチレンの場合は処理液としてテトラヒドロフラン等の有機溶媒を使用し、何れの場合も、耐圧容器中、室温〜130℃程度の処理条件で処理する方法をとることができる。かかる複合繊維の処理は、連続した複合繊維に対して行ってもよく、また、複合繊維を適度の長さ、例えば1〜150mmに切断したものに対して行ってもよい。
【0035】
上記の如き本発明のポリオキシメチレン樹脂繊維の製造方法において、得られる繊維の断面形状、繊維径等は、上記複合紡糸工程における複合紡糸ダイの形状を変えることにより調整することができる。また、ポリオキシメチレン樹脂(A)と複合相手樹脂(B−1、B−2、B−3)とで形成する複合繊維の海島構造を変えることによっても、得られるポリオキシメチレン樹脂繊維の断面形状を調整することができる。
【0036】
例えば、図1、図2のように、複合相手樹脂からなる「海」の中に、ポリオキシメチレン樹脂からなる円断面、三角形断面等の複数の「島」が存在する複合繊維を形成した場合、これを後処理して複合相手樹脂を分解又は溶解除去することにより、非常に微細な円断面、三角形断面等を有するポリオキシメチレン樹脂繊維を得ることができる。得られる繊維の断面形状は、複合紡糸ダイの形状設計により、任意に変えることができる。このように、複合相手樹脂を「海」、ポリオキシメチレン樹脂を「島」とする海島構造の複合繊維を形成しこれを処理する方法では、極めて微細な断面のポリオキシメチレン樹脂繊維を得ることができる。このようにして得られる繊維は2dtex以下であるものが好ましく、特に好ましくは1dtex以下である。
【0037】
一方、図3のように、ポリオキシメチレン樹脂からなる「海」の中に、複合相手樹脂からなる複数の「島」が存在する複合繊維を形成した場合、これを後処理して複合相手樹脂を分解又は溶解除去することにより、複雑な異形断面を有するポリオキシメチレン樹脂繊維を得ることができる。得られる繊維の断面形状は、複合紡糸ダイの形状設計により、任意に変えることができる。
【0038】
また、図4の如き構成の複合繊維を形成した場合、これを適当な長さに切断してアルカリや溶剤等で処理することにより、切断面からの分解や溶解除去が可能であり、複合相手樹脂が除去された中空状のポリオキシメチレン樹脂繊維が得られる。
【0039】
上記のようにして得られたポリオキシメチレン樹脂繊維は、連続繊維のまま、或いは
使用目的に応じて適度の繊維長、例えば1mm〜150mm程度に切断して使用される。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<ポリオキシメチレン共重合体の調製法>
実施例および比較例において使用するポリオキシメチレン共重合体の基本的な調製法は以下の通りである。
【0041】
外側に熱(冷)媒を通すジャケットが付き、2つの円が一部重なる断面形状を有するバレルと、パドル付き回転軸で構成される連続式混合反応機を用い、パドルを付した2本の回転軸をそれぞれ150rpmで回転させながら、液状のトリオキサンとコモノマーを加え、更に分子量調節剤としてメチラール、同時に触媒の三フッ化ホウ素50ppm(全モノマーに対し)を重合機に連続的に供給しながら塊状重合を行う。
【0042】
重合機から排出された反応生成物は速やかに破砕機に通しながら、トリエチルアミンを0.05重量%含有する60℃の水溶液に加えて触媒を失活し、さらに、分離、洗浄、乾燥して粗ポリオキシメチレン共重合体を得る。
【0043】
次いで、この粗ポリオキシメチレン共重合体100重量部に対して、トリエチルアミン5重量%水溶液を4重量部、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を0.3重量部添加し、2軸押出機にて210℃で溶融混練し不安定部分を除去する。
【0044】
次いで、ポリオキシメチレン共重合体100重量部に、安定剤としてペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を0.03重量部およびメラミン0.15重量部を添加し、2軸押出機にて210℃で溶融混練し、安定化されたペレット状のポリオキシメチレン共重合体を得る。
実施例1〜 及び 比較例1〜
上記のポリオキシメチレン共重合体の調製法を用いて、実施例において使用するポリオキシメチレン共重合体(POM-1〜POM-6)と、比較例において使用するポリオキシメチレン共重合体(POM-7〜POM-10)を調製した。
【0045】
尚、コモノマーとして、POM-5においてはジエチレングリコールホルマール、POM-6においては1,4‐ブタンジオールホルマール、それ以外は1,3‐ジオキソランを使用した。また、オキシメチレン単位100molに対するオキシアルキレン単位(共重合ユニット)の割合は共重合に使用するコモノマー量により調整し、メルトインデックス(MI)は分子量調節剤であるメチラール量の増減により調整した。メルトインデックス(MI)はメチラール量の増により大きく、減により小さく調整できる。
【0046】
調製したポリオキシメチレン共重合体のメルトインデックス(MI)は、ASTMD-1238に従い、190℃、2160gの荷重下で測定した。また、ポリマー組成(共重合ユニットの割合)は、それぞれのポリオキシメチレン共重合体をヘキサフルオロイソプロパノールd2に溶解して1H−NMR測定を行い、各ユニットに対応するピーク面積より定量した。
【0047】
上記で調製したオキシメチレン共重合体(POM-1〜POM-6およびPOM-7〜POM-10)を用い、以下のように、まず複合繊維を調製し、ついで複合相手材を分解除去または溶解することによりポリオキシメチレン樹脂繊維を調製した。
【0048】
まず、複合繊維を調製するにあたり、複合相手材としてポリエステル樹脂(ポリブチレンテレフタレート)を用いた。
【0049】
複合紡糸は2つの押出機と複合紡糸用ダイを備えた装置を使用して行い、一方の押出機(シリンダー設定温度200℃)で上記オキシメチレン共重合体を溶融可塑化し、もう一方の押出機(シリンダー設定温度270℃)でポリエステル(ポリブチレンテレフタレート)を溶融可塑化し、可塑化した両成分を各々ギヤポンプで計量して図1に示す断面形状を有する複合紡糸ダイに供給し、そのノズルより紡糸して引き取ることにより、オキシメチレン共重合体とポリエステル樹脂(ポリブチレンテレフタレート)からなる未延伸の複合繊維を得た。次いで、この未延伸複合繊維を、138℃に設定された熱風加熱炉で加熱しながら7倍に延伸することにより、2.5dtexの延伸された複合繊維を得た。
【0050】
次いで、上記で得られた複合繊維を10%水酸化ナトリウム水溶液中に入れ、耐圧容器中で130℃に加熱することにより、複合繊維の「海」を構成していたポリエステル樹脂(ポリブチレンテレフタレート)を分解除去し、さらに水洗浄、乾燥することによりポリオキシメチレン樹脂からなる極細の繊維を得た。
【0051】
評価は、上記のポリオキシメチレン樹脂繊維の調製、特に複合繊維の調製段階における繊維の加工性によって行った。結果を表1に示す。
【0052】
【表1】


【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】複合紡糸ダイの断面形状の1形態を示す模式図である。
【図2】複合紡糸ダイの断面形状の別の形態を示す模式図である。
【図3】複合紡糸ダイの断面形状の更に別の形態を示す模式図である。
【図4】複合紡糸ダイの断面形状の更に別の形態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0054】
1:ポリオキシメチレン樹脂からなる相を示す。
【0055】
2:ポリオキシメチレン樹脂以外の、アルカリ分解性又は溶剤・水溶解性の樹脂からなる相を示す。
【出願人】 【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
【出願日】 平成18年6月29日(2006.6.29)
【代理人】 【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡

【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦

【識別番号】100091845
【弁理士】
【氏名又は名称】持田 信二

【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌


【公開番号】 特開2008−7892(P2008−7892A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−179948(P2006−179948)