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【発明の名称】 ポリエステル微細繊維およびその繊維製品
【発明者】 【氏名】千田 みゆき

【氏名】神山 三枝

【要約】 【課題】優れた吸湿性を有し、かつポリエステル繊維が本来有する形態安定性・耐熱性の良好なポリエステル微細繊維を提供する。

【構成】ポリエチレンテレフタレートを主体とし、繊維径50nm以上800nm以下、強度が1.5〜6.0cN/dtex、伸度が15〜60%、かつ35℃,95%での吸湿率が1.5%以上であるポリエステル微細繊維。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレートを主体とし、繊維径50nm以上800nm以下、強度が1.5〜6.0cN/dtex、伸度が15〜60%、かつ35℃,95%での吸湿率が1.5%以上であることを特徴とするポリエステル微細繊維。
【請求項2】
繊維構造中の(010)面の見かけの結晶サイズが60Å以上であり、かつ(100)面の見かけの結晶サイズが45Å以上である請求項1記載のポリエステル微細繊維。
【請求項3】
溶融粘度が高い易溶解成分と、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする溶融粘度が低い難溶解成分とを、前者を海成分とし後者を島成分として紡糸速度1,500〜6,000m/分で溶融紡糸した後、得られた海島型複合未延伸糸を温度60〜220℃で配向結晶化延伸させて海島型複合繊維となし、この海島型複合繊維から、海成分を抽出除去して島成分がポリエチレンテレフタレートを主体とする微細繊維として得られたものである請求項1または2に記載のポリエステル微細繊維。
【請求項4】
海島型複合繊維の伸度が5%〜35%である請求項3記載のポリエステル微細繊維。
【請求項5】
海島型複合繊維において、海成分と島成分の溶融粘度比(海/島)が1.1〜2.0であり、海成分と島成分の重量比率(海:島)が40:60〜5:95である請求項3または4に記載のポリエステル微細繊維。
【請求項6】
海島型複合繊維の海成分が5−ナトリウムスルホイソフタル酸を6〜12モル%および分子量4,000〜12,000のポリエチレングリコールを3〜10重量%共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートを主成分とする請求項3〜5いずれかに記載のポリエステル微細繊維。
【請求項7】
海島型複合繊維の海成分がポリアミドであり、ギ酸に可溶である請求項3〜5いずれかに記載のポリエステル微細繊維。
【請求項8】
請求項1〜7いずれかに記載のポリエステル微細繊維を含む繊維製品。
【請求項9】
織編物、フェルトもしくは不織布、または組紐状糸もしくは短繊維からなる紡績状糸である請求項8記載の繊維製品。
【請求項10】
衣料・インテリア製品、産業資材製品、生活資材製品、環境資材製品、または医薬・衛生製品である請求項8記載の繊維製品。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた吸湿性を有し、かつ、形態安定性・耐熱性の良好なポリエステル微細繊維に関するものである。さらに詳しくはインナー、中衣、スポーツ衣料などの衣料用素材、産業資材製品、生活資材製品、環境資材製品、医薬・衛生製品に好適に使用することができる高吸湿性のポリエステル微細繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステルは、耐熱性、耐薬品性などに優れており、合成繊維、ビデオやオーディオ用の2軸延伸テープ、そして食品容器としての透明ボトルなどに広く用いられている。合成繊維では、衣料繊維用途、そしてタイヤコードなどの産業資材用途がある。特に、衣料繊維用途では、ウオッシュ・アンド・ウェア(W&W)性、形状記憶安定性などに優れるため、大きいシェアを持っている。しかし、ポリエステル繊維は、羊毛、綿などの天然繊維に比べて吸湿性が低いため、インナー、スポーツ衣料など肌に触れるあるいは肌側に近い状態で着用される用途で、発汗によるムレ、ベタツキなどが生じ、快適性の点で天然繊維よりも劣っている。
【0003】
そのため、従来より、ポリエステル繊維に吸湿性を付与するための研究が行われてきた。例えば、原糸改質する方法と後加工段階で吸湿性を付与する方法が考えられる。前者では、熱可塑性樹脂を芯部とし、繊維形成性ポリエステル樹脂を鞘部とする芯鞘型複合繊維であって、該芯部を形成する熱可塑性樹脂がポリエーテルエステルアミドであり、かつ芯部の比率が複合繊維全重量の5〜30重量%である芯鞘型複合繊維が特許文献1で、吸湿性成分(ポリアルキレンオキサイドとポリオールおよび脂肪族ジイソシアネート化合物との反応によって得られたポリアルキレンオキサイド変性物)と、主としてPPT(ポリプロピレンテレフタレート)ポリマーとから構成されているポリエステル繊維が特許文献2に提案されている。しかし、染色などの熱水処理時に芯部の吸湿率が高いので芯部と鞘部との水膨潤差により繊維表面にひびや割れが生じて吸湿性成分の流出などの問題点がある。
【0004】
また、後者としては、ポリエステル繊維にアクリル酸やメタクリル酸などをグラフト重合し、繊維内部にアルカリ金属で置換されたカルボキシル基を導入する方法や、アクリルアミドなどのようなアミド系化合物を多量にグラフト重合するなどが知られており、特許文献3に提案されている。このアルカリ金属で置換されたカルボキシル基の導入量を多くすれば吸湿特性は増大し、木綿以上の吸湿特性が得られる。しかしながら、該手法のような後加工法によって吸湿性を付与した布帛は、多量の吸湿成分が繊維表面に存在するために染色斑を生じやすいという問題点がある。
【特許文献1】特開平2−99612号公報
【特許文献2】特開2000−96343号公報
【特許文献3】特開昭47−33192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題点を克服し、優れた吸湿性を有し、かつ、形態安定性・耐熱性の良好なポリエステル微細繊維を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリエチレンテレフタレートを主体とし、繊維径50nm以上800nm以下、強度が1.5〜6.0cN/dtex、伸度が15〜60%、かつ35℃,95%での吸湿率が1.5%以上であることを特徴とするポリエステル微細繊維に関する。
ここで、上記ポリエステル微細繊維は、繊維構造中の(010)面の見かけの結晶サイズが60Å(オングストローム)以上であり、かつ(100)面の見かけの結晶サイズが45Å以上であることが好ましい。
本発明のポリエステル微細繊維は、溶融粘度が高い易溶解成分と、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする溶融粘度が低い難溶解成分とを、前者を海成分とし後者を島成分として紡糸速度1,500〜6,000m/分で溶融紡糸した後、得られた海島型複合未延伸糸を温度60〜220℃で配向結晶化延伸させて海島型複合繊維となし、この海島型複合繊維から、海成分を抽出除去して島成分がポリエチレンテレフタレートを主体とする微細繊維として得られる。
上記海島型複合繊維においては、海成分と島成分の溶融粘度比(海/島)が1.1〜2.0であり、海成分と島成分の複合重量比率(海:島)が40:60〜5:95であることが好ましい。
また、海島型複合繊維の海成分は、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を6〜12モル%および分子量4,000〜12,000のポリエチレングリコールを3〜10重量%共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートを主成分とするものが好ましい。
また、海島型複合繊維の海成分は、ポリアミドであり、ギ酸に可溶であるものも好ましい。
次に、本発明は、以上のポリエステル微細繊維からなる繊維製品に関する。
ここで、上記繊維製品の具体例としては、織編物、フェルトもしくは不織布、または組みひも状糸もしくは短繊維からなる紡績状糸が挙げられる。
また、上記繊維製品の用途としては、衣料・インテリア製品、産業資材製品、生活資材製品、環境資材製品、または医薬・衛生製品が挙げられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた吸湿性を有し、かつ、ポリエステル繊維が本来有する形態安定性・耐熱性の良好なポリエステル微細繊維を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明のポリエステル微細繊維は、溶融粘度が高い易溶解成分とポリエチレンテレフタレートを主成分とする溶融粘度が低い難溶解成分とを、前者を海成分とし後者を島成分として紡糸速度1,500〜6,000m/分で溶融紡糸した後、得られた海島型複合未延伸糸を温度60〜220℃で配向結晶化延伸する海島型複合繊維から、海成分を抽出除去して得られる。
【0009】
このポリエステル繊維は、繊維径50nm以上800nm以下、強度が1.5〜6.0cN/dtex、伸度が15〜60%であり、35℃,95%での吸湿率が1.5%以上であることに最大の特徴がある。35℃,95%での吸湿率が1.5%以上となるために、繊維の構造は、特に、(010)面の見かけの結晶サイズが60Å以上であり、(100)面の見かけの結晶サイズが45Å以上であることが重要である。
【0010】
ここで、繊維径は、50〜800nm、好ましくは100〜500nmの範囲とする必要がある。繊維径を上記範囲とすることにより、本発明の海島型複合繊維から海成分を溶解除去して得られる直径50〜800nmの微細繊維の強度を1.5〜6.0cN/dtex、好ましくは2.5〜5.0cN/dtexで、伸度を15〜60%、好ましくは20〜40%とすることができる。
特に、本発明のポリエステル微細繊維の強度は、1.5cN/dtex以上であることが重要である。強度がこれよりも低いと目的とする微細繊維が得られない。
また、伸度が15%未満では、繊維構造自身が不安定で物性や繊維形態が不安定となりやすく好ましくない。一方、60%を超えると、高収縮となるために形態安定性が悪くなり好ましくない。
さらに、本発明のポリエステル微細繊維の35℃,95%での吸湿率は、1.5%以上、好ましくは1.5〜10%である。1.5%未満では、得られる繊維の吸湿性が劣り、目的とするポリエステル微細繊維は得られない。
【0011】
本発明のポリエステル微細繊維の構造は、特に(010)面の見かけの結晶サイズが60Å以上であり、(100)面の見かけの結晶サイズが45Å以上であることが好ましい。(010)面の見かけの結晶サイズが60Å未満、かつ(100)面の見かけの結晶サイズが45Å未満の場合には、目的とする吸湿率の高い微細繊維が得られない。ポリエチレンテレフタレートを主体とする繊維であることを考慮すると、(010)面の見かけの結晶サイズは85Åまで、(100)面の見かけの結晶サイズは90Åまでが好ましい。
【0012】
繊維が細くなればなるほど、見かけの結晶サイズは大きくなる傾向があり、この繊維構造を取ることにより、吸湿性が高くなる。これは、従来には見られなかったナノファイバー特有の現象である。繊維を細くしていくことで、限りなく高分子集合体単位を少なくすることにより、同じポリエステルという材料でも、従来にない性能向上や新機能の発現が得られることが判明した。ちなみに、一般的なテキスタイル繊維の繊維径は20μmであり、それを構成するポリマー本数は8.7億本であり、一方、繊維径100nmの場合には、数百〜数千のポリマーから構成されている。
【0013】
上記の繊維を得るためには、溶融粘度が高い易溶解成分とポリエチレンテレフタレートを主成分とする溶融粘度が低い難溶解成分とを、前者を海成分とし後者を島成分として、紡糸速度が好ましくは1,500〜6,000m/分で溶融紡糸した後、得られた海島型複合未延伸糸を温度が好ましくは60〜220℃で配向結晶化延伸させて海島型複合繊維となし、この海島型複合繊維から海成分を抽出除去して島成分がポリエチレンテレフタレートを主体とする微細繊維として得ることが好ましい。
【0014】
本発明の海島型複合繊維を構成するポリマーは、海成分ポリマーが島成分ポリマーよりも溶解性が高い組合せであれば任意であるが、特に溶解速度比(海/島)は、好ましくは500以上、さらに好ましくは800〜3,000である。かかる溶解速度比が500未満の場合には、繊維断面中央部の海成分を溶解させている間に繊維断面表層部の島成分の一部も溶解されるため、海成分を完全に溶解除去するためには、島成分の何割かも減量されてしまうことになり、島成分の太さ斑や溶剤浸食による強度劣化が発生して、毛羽やピリングなどの品位に問題が生じやすくなる。
なお、ここで溶解速度とは、4%NaOH水溶液で95℃にて、減量時間に対する減量率(不溶解重量分率=1−減量率)と処理時間、繊維半径から溶解速度定数を下記式より算出する。
【0015】
【数1】


【0016】
ここで、kは溶解速度定数、Rは不溶解重量分率、tは処理時間、r0は繊維半径である。
海成分ポリマーは、好ましくは島成分との溶解速度比が500以上であればいかなるポリマーであってもよいが、特に繊維形成性のポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエチレンなどが好ましい。例えば、アルカリ水溶液易溶解性ポリマーとしては、ポリ乳酸、超高分子量ポリアルキレンオキサイド縮合系ポリマー、ポリエチレングルコール系化合物共重合ポリエステル、ポリエチレングリコール系化合物と5−ナトリウムスルホン酸イソフタル酸の共重合ポリエステルが好適である。
また、海成分ポリマーとして、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン612、ナイロン11およびナイロン12などのポリアミドが例示され、とりわけナイロン6およびナイロン66などのポリアミドが好ましい。ナイロン6よりも繰返し単位中の炭素数が小さい、例えばナイロン4の場合、界面エネルギーが大きくなり、共重合ポリエチレンナフタレートとの親和性が不充分であり、高温での熱分解が発生し易いため好ましくない。ポリアミドは、ギ酸溶解性があり、ポリスチレン・ポリエチレンはトルエンなど有機溶剤に非常によく溶ける。
【0017】
なかでも、アルカリ易溶解性と海島断面形成性とを両立させるため、ポリエチレンテレフタレートを主体とするポリマーとしては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を6〜12モル%と分子量1,000〜12,000のポリエチレングルコール(PEG)を3〜10重量%共重合させた固有粘度(o−クロロフェノール中、35℃で測定)が0.4〜0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルが好ましい。ここで、5−ナトリウムイソフタル酸は親水性と溶融粘度向上に寄与し、ポリエチレングリコール(PEG)は親水性を向上させる。
【0018】
ここで、5−ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合量が6モル%未満では、島に対する溶解速度が不十分であり、目的とする繊維が得られず、一方12モル%を超えると、溶融粘度が高くなるために紡糸性が悪くなるので好ましくない。5−ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合量は、好ましくは7〜11モル%である。
また、PEGの分子量は、1,000未満では、共重合ポリエステルの耐熱性が低下し、一方、12,000を超えると、その高次構造に起因すると考えられる親水性増加効果が大きくなるが、反応性が悪くなってブレンド系になるため、耐熱性・紡糸安定性などの点から好ましくない。さらに、PEGの共重合量が3重量%未満では、アルカリ易溶解性が不十分であり、目的とする繊維が得られず、一方10重量%を超えると、本来、溶融粘度低下作用があるので、本発明の目的を達成することが困難になる。したがって、上記の範囲で、両成分を共重合することが好ましい。PEGの共重合量は、好ましくは3〜8重量%である。
【0019】
一方、島成分ポリマーは、海成分との溶解速度差があり、特に繊維形成性のポリエチレンテレフタレートを85モル%以上構造単位にもつポリエステルが好ましい。
例えば、本発明において、島成分に用いるポリエステルは、構成する酸成分の85モル%以上がテレフタル酸からなり、少なくとも1種のグリコール、好ましくはエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールから選ぶことができる。かかるポリエステルには、本発明の目的を阻害しない範囲で従来公知の共重合成分が含まれていてもよく、例えば、かかるポリエステルには、本発明の目的を阻害しない範囲内、好ましくは15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下の範囲内で従来公知の共重合成分が含まれていてもよく、例えば、イソフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、ρ−オキシ安息香酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの芳香族、脂肪族、脂環族の二官能性カルボン酸を挙げることができる。また、上記グリコール以外のジオール化合物としては例えばシクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジオール化合物およびポリオキシアルキレングリコールなどをあげることができる。また、必要に応じて、適宜艶消し剤、制電剤、安定剤などの添加剤などを含むことができる。
【0020】
かかるポリエステルは任意の方法によって合成したものでよい。例えば、通常、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステルか反応させるか、テレフタル酸ジメチルの如きテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか、またはテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させるかしてテレフタル酸のグリコールエステルおよび/またはその低重合体を生成させる第1段階の反応と、第1段階の反応生成ものを減圧下加圧して所望の重合度になるまで重縮合反応させる第2段階の反応によって製造される。
以上のポリエチレンテレフタレートの固有粘度(o−クロロフェノール中、35℃で測定)は、通常、0.4〜0.8dl/g、好ましくは0.5〜0.7dl/gである。
【0021】
上記の海成分ポリマーと島成分ポリマーからなる本発明の海島型複合繊維は、溶融紡糸時における海成分の溶融粘度が島成分ポリマーの溶融粘度よりも大きいことが必要である。海成分と島成分の溶融粘度比(海/島)は、好ましくは1.1〜2、さらに好ましくは1.2〜1.8である。かかる関係にある場合には、海成分の複合重量比率が40%未満と少なくなっても、島成分の大部分が接合して海島型複合繊維とは異なるものになり難い。
ここで、275℃における海成分ポリマーの溶融粘度は、通常、1,000〜3,000Poise、好ましくは1,200〜2,500Poiseである。
また、同温度における島成分ポリマーの溶融粘度は、通常、500〜3,000Poise、好ましくは1,000〜2,300Poiseである。
【0022】
なお、島数は、多いほど海成分を溶解除去して極細繊維を製造する場合の生産性が高くなり、しかも得られる極細繊維の細さも顕著となって超極細繊維特有の柔らかさ、滑らかさ、光沢感などを表現することができるので、100以上、好ましくは500以上であることが重要である。ここで、島数が100未満の場合には、海成分を溶解除去しても極細繊度の単糸からなるハイマルチフィラメント糸を得ることができず本発明の目的を達成することができない。なお、島数があまりに多くなりすぎると紡糸口金の製造コストが高くなるだけでなく、加工精度自体も低下しやすくなるので1,000以下とするのが好ましい。
【0023】
また、本発明の海島型複合繊維は、その海島重量比率(海:島)は、40:60〜5:95の範囲が好ましく、特に30:70〜10:90の範囲が好ましい。かかる範囲であれば、島間の海成分の厚みを薄くすることができ、海成分の溶解除去が容易となり、島成分の極細繊維への転換が容易になるので好ましい。ここで、海成分の割合が40%を超える場合には海成分の厚みが厚くなりすぎ、一方5%未満の場合には海成分の量が少なくなりすぎて、島間に接合が発生しやすくなる。
【0024】
溶融紡糸に用いられる紡糸口金としては、島成分を形成するための中空ピン群や微細孔群を有するものなど任意のものを用いることができる。例えば、中空ピンや微細孔より押し出された島成分とその間を埋める形で流路を設計されている海成分流とを合流し、これを圧縮することにより海島断面形成がなされるいかなる紡糸口金でもよい。好ましく用いられる紡糸口金例を図1および2に示すが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
なお、図1は、中空ピンを海成分樹脂貯め部分に吐出してそれを合流圧縮する方式であり、図2は、中空ピンのかわりに微細孔方式で島を形成する方法である。
【0025】
吐出された海島型断面複合繊維は、冷却風によって固化され、好ましくは1,500〜6,000m/分で溶融紡糸された後に巻き取られる。より好ましくは2,000〜3,500m/分である。1,500m/分未満では、目的とする微細繊維が得られず、かつ生産性が悪い。一方、6,000m/分を超えると、紡糸安定性が悪い。
【0026】
得られた未延伸糸は、別途延伸工程をとおして所望の強度・伸度特性を有する複合繊維とするか、あるいは、一旦巻き取ることなく一定速度でローラーに引き取り、引き続いて延伸工程を通した後に巻き取る方法のいずれでも構わない。具体的には、60〜220℃、好ましくは60〜190℃、さらに好ましくは75℃〜180℃の予熱ローラー上で予熱し、延伸倍率1.2〜6.0倍、好ましくは2.0〜5.0倍で延伸し、セットローラー120〜220℃、好ましくは130〜200℃で熱セットを実施することが好ましい。予熱温度不足の場合には、目的とする高倍率延伸を達成することができなくなる。セット温度が低すぎると収縮率が高すぎるため好ましくない。また、セット温度が高すぎると該繊維の物性が著しく低下するため好ましくない。
このようにして得られる海島型複合繊維の伸度は、好ましくは5〜35%、さらに好ましくは9〜30%である。上記範囲外では、本発明の目的とする微細繊維が得られない。
なお、本発明に用いられる海島型複合繊維の強度は、好ましくは2.0〜6.0cN/dtex、さらに好ましくは3.5〜5.9cN/dtexである。
上記海島型複合繊維の強度・伸度は、紡糸・延伸温度・延伸倍率などの条件をコントロールすることにより調整することができる。
【0027】
本発明のポリエステル微細繊維は、このようにして得られる海島型複合繊維から、海成分を抽出除去して、島成分であるポリエチレンテレフタレートを主体とする微細繊維である。
本発明においては、海島型複合繊維から、海成分を抽出除去するには、上記海島型複合繊維自体、あるいはこれを製織もしくは製編することにより得られた布帛を、加水分解処理によって、海成分を分解除去し、微細繊維を得る。加水分解剤で処理する方法としては、加水分解剤の水溶液中で加熱処理する方法が用いられる。加水分解剤としては、海成分が上記共重合ポリエステルの場合、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムのようなアルカリ金属化合物があるが、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。アルカリ水溶液の濃度および温度は、使用するアルカリ化合物の種類により異なるが、濃度は10〜300g/l、温度は40℃〜180℃、処理時間は2分〜20時間が好ましい。
【0028】
また、海成分がポリアミドの場合には、海成分の抽出除去は、ギ酸で25℃(室温)にて、処理時間は5分〜48時間が好ましい。
【実施例】
【0029】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。
なお、実施例で用いられたポリマーは、表1のとおりである。
















【0030】
【表1】


【0031】
また、各評価項目は下記の方法で測定した。
(1)溶融粘度
乾燥処理後のポリマーを、275℃に設定したオリフィスにセットして5分間溶融保持したのち、数水準の荷重をかけて押し出し、そのときの剪断速度と溶融粘度をプロットし、そのプロットをなだらかに繋いで、剪断速度−溶融粘度曲線を作成し、剪断速度が1000秒−1の時の溶融粘度を見積った。
(2)島数
透過型電子顕微鏡TEMで繊維断面写真を撮影し、島数をカウントした。
【0032】
(3)海島型複合繊維の強度・伸度
海島型複合繊維9,000mの重量をn=3回測定して平均値から繊度を求めた。そして、室温で初期試料長=200mm、引っ張り速度200m/分として得た応力−伸長曲線を測定し、繊維破断点から強度・伸度を求めた。
【0033】
(6)微細繊維の強度・伸度
海島型複合繊維を用いて重量1g以上の筒編みを作成し、海成分を溶解除去し、その後筒編をほどき、室温で初期試料長=100mm、引っ張り速度200m/分として荷重−伸長曲線を求めた。繊度は、JIS-1015に記載の方法に準拠して測定した。強度は破断時の荷重値を算出した繊度で割った値、伸度は破断時の伸長値から求めた。
【0034】
(7)みかけの結晶サイズ
広角X線回折法に拠った。理学電気社製X線発生装置(RAD−3A型)を用い、ニッケルフィルターで単色化したCu−Kα線で散乱強度を測定し、次式で結晶化度を計算した。
結晶化度=結晶部の散乱強度/全散乱強度×100(%)
結晶サイズは反射の半値幅からScherrerの式を用いて計算した。
Scherrerの式 L=λ/β0cosθB
L:結晶サイズ[オングストローム]
λ:X線の波長(1.5418オングストローム)
θB:ブラッグ角、β0:(βE2−βI21/2
βE:半値幅の測定値、βI:装置定数(1.046×10-2
【0035】
(8)吸湿性
1gの試料の絶乾重量を測定した後、35℃、95%の人工気候室に入れ、24時間後の水分率を求めた。
(9)微細繊維径(単糸径)
海島型複合繊維を用いて重量1g以上の筒編みを作成し、海成分を溶解除去した後、表面をSEM観察、10点について繊維径測定し、平均値を算出した。
【0036】
[実施例1]
島成分にPET1、海成分に改質PET2を使用し、海成分:島成分を30:70の重量比率で、島数900の図1に示す紡糸口金を用いて紡糸温度280℃で溶融吐出させた。溶融吐出糸条は巻取り速度3,000m/分で安定して巻き取ることが可能であった。得られた未延伸糸を、延伸温度90℃、延伸倍率2.8倍でローラー延伸し、次いで150℃で熱セットして巻取り、11dtex/10filの延伸糸を得た。延伸糸の伸度は強度4.0cN/dtex、伸度13.0%であった。延伸糸を丸編みし、編物を作成した後、4%NaOH水溶液で95℃にて30%減量した。ここで、海島成分のアルカリ減量速度差は1,200倍であった。繊維断面を観察したところ、均一な微細繊維群を形成しており、繊維径は306nmであった。これらの微細繊維の物性を測定したところ、強度3.1cN/dtex、伸度30.0%であった。この編物を約1gに切取った後、95℃、35%で吸湿率を測定したところ、5%であった。また、繊維構造中の(010)面の見かけの結晶サイズが65Å、(100)面の見かけの結晶サイズは52Åであった。
【0037】
[実施例2]
島成分にPET1、海成分に改質PET1を使用し、海成分:島成分を30:70の重量比率で、島数800の図1に示す紡糸口金を用いて紡糸温度280℃で溶融吐出させた。溶融吐出糸条は巻取り速度2,500m/分で安定して巻き取ること可能であった。得られた未延伸糸を延伸温度90℃、延伸倍率3.0倍でローラー延伸し、次いで150℃で熱セットして巻取り、50dtex/10filの延伸糸を得た。延伸糸の伸度は強度4.0cN/dtex、伸度22.5%であった。延伸糸を丸編みし、編物を作成した後、4%NaOH水溶液で95℃にて30%減量した。ここで、海島成分のアルカリ減量速度差は1,200倍であった。繊維断面を観察したところ、均一な微細繊維群を形成しており、繊維径は460nmであった。これらの微細繊維の物性を測定したところ、強度3.4cN/dtex、伸度40.4%であった。この編物を約1gに切取った後、95℃、35%で吸湿率を測定したところ、2%であった。また、繊維構造中の(010)面の見かけの結晶サイズが60Å、(100)面の見かけの結晶サイズは47Åであった。
【0038】
[実施例3]
島成分にPET1、海成分に改質PET2を使用し、海成分:島成分を20:80の重量比率で、島数400の図1に示す紡糸口金を用いて紡糸温度280℃で溶融吐出させた。溶融吐出糸条は巻取り速度1,500m/分で安定して巻き取ること可能であった。得られた未延伸糸を延伸温度90℃、延伸倍率3.0倍でローラー延伸し、次いで150℃で熱セットして巻取り、11dtex/10filの延伸糸を得た。延伸糸の伸度は強度3.5cN/dtex、伸度17.4%であった。延伸糸を丸編みし、編物を作成した後、4%NaOH水溶液で95℃にて20%減量した。ここで、海島成分のアルカリ減量速度差は1,200倍であった。繊維断面を観察したところ、均一な微細繊維群を形成しており、繊維径は470nmであった。これらの微細繊維の物性を測定したところ、強度2.0cN/dtex、伸度43.6%であった。この編物を約1gに切取った後、95℃、35%で吸湿率を測定したところ、7.5%であった。また、繊維構造中の(010)面の見かけの結晶サイズが62Å、(100)面の見かけの結晶サイズは50Åであった。
【0039】
〔実施例4〕
島成分にPET2、海成分にNy-6を使用し、海成分:島成分を40:60の重量比率で、島数950の図1に示す紡糸口金を用いて紡糸温度280℃で溶融吐出させた。溶融吐出糸条は巻取り速度2,000m/分で安定して巻き取ることが可能であった。得られた未延伸糸を延伸温度90℃、延伸倍率2.0倍でローラー延伸し、次いで150℃で熱セットして巻取り、5.5dtex/10filの延伸糸を得た。延伸糸の伸度は強度3.5cN/dtex、伸度23.0%であった。延伸糸を丸編みし、編物を作成した後、室温でギ酸で40%海成分を溶解させた。繊維断面を観察したところ、均一な微細繊維群を形成しており、繊維径は185nmであった。これらの微細繊維の物性を測定したところ、強度1.9cN/dtex、伸度29.5%であった。この編物を約1gに切取った後、95℃、35%で吸湿率を測定したところ、6.8%であった。また、繊維構造中の(010)面の見かけの結晶サイズが70Å、(100)面の見かけの結晶サイズは59Åであった。
【0040】
〔比較例1〕
実施例1と同じポリマーを用いて、海成分:島成分を60:40の重量比率で、島数80の図1に示す紡糸口金を用いて紡糸温度280℃で溶融吐出させた。溶融吐出糸条は巻取り速度2,500m/分で安定して巻き取ること可能であった。得られた未延伸糸を延伸温度90℃、延伸倍率1.6倍でローラー延伸し、次いで150℃で熱セットして巻取り、24.2dtex/10filの延伸糸を得た。延伸糸の伸度は強度2.5cN/dtex、伸度38.9%であった。延伸糸を丸編みし、編物を作成した後、4%NaOH水溶液で95℃にて60%減量した。ここで、海島成分のアルカリ減量速度差は1,200倍であった。繊維断面を観察したところ、均一な微細繊維群を形成しており、繊維径は1.0μmであった。これらの微細繊維の物性を測定したところ、強度1.4cN/dtex、伸度65.4%であった。この編物を約1gに切取った後、95℃、35%で吸湿率を測定したところ、0.7%と低かった。また、繊維構造中の(010)面の見かけの結晶サイズが55Å、(100)面の見かけの結晶サイズは44Åと結晶サイズも小さかった。
【0041】
〔比較例2〕
実施例1と同じポリマーを用いて、海成分:島成分を30:70の重量比率で、島数13の図1に示す紡糸口金を用いて紡糸温度280℃で溶融吐出させた。溶融吐出糸条は巻取り速度1,000m/分で安定して巻き取ること可能であった。得られた未延伸糸を延伸温度90℃、延伸倍率4.6倍でローラー延伸し、次いで150℃で熱セットして巻取り、44dtex/36filの延伸糸を得た。延伸糸の伸度は強度5.4cN/dtex、伸度10.9%であった。延伸糸を丸編みし、編物を作成した後、4%NaOH水溶液で95℃にて30%減量した。ここで、海島成分のアルカリ減量速度差は1200倍であった。繊維断面を観察したところ、均一な微細繊維群を形成しており、繊維径は2.5μmであった。これらの微細繊維の物性を測定したところ、強度4.0cN/dtex、伸度31.4%であった。この編物を約1gに切取った後、95℃、35%で吸湿率を測定したところ、0.5%と低かった。また、繊維構造中の(010)面の見かけの結晶サイズが50Å、(100)面の見かけの結晶サイズは41Åと結晶サイズも小さかった。








【0042】
【表2】


【0043】
【表3】


【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のポリエステル微細繊維は、従来にない特徴のひとつに、微細繊維であるがゆえに比表面積が大きくなるという特徴がある。このため、優れた吸着・吸収特性を持つ。この効果を生かして、例えば、機能性薬剤を吸収させて新たな用途展開が可能となる。機能性薬剤とは、例えばたんぱく質、ビタミン類など健康・美容促進のための薬剤、そのほか抗炎症剤や消毒剤などの医薬品なども用いることができる。一方で、吸収・吸着特性だけではなく、優れた除放特性を持つ。この効果を生かして先述した機能性薬剤を除放させるなど、ドラッグデリバリーシステムをはじめとし、さまざまな医薬・衛生用途に展開可能である。
本発明のポリエステル微細繊維を少なくとも一部に含む繊維製品は、糸、組み紐状糸、短繊維からなる紡績状糸、織物、編物、フェルト、不織布、人工皮革などの中間製品とすることができる。ここで、「少なくとも一部に含む」とは、上記繊維製品の5重量%以上、好ましくは10重量%以上が本発明のポリエステル微細繊維から構成されていることを意味する。
本発明では、これらの中間製品を、ジャケット、スカート、パンツ、下着などの衣料、スポーツ衣料、衣料資材、カーペット、ソファー、カーテンなどのインテリア製品、カーシートなどの車両内装品、化粧品、化粧品マスク、ワイピングクロス、健康用品などの生活用途や研磨布、フィルター、有害物質除去製品、電池用セパレーターなどの環境・産業資材用途や、縫合糸、スキャフォールド、人工血管、血液フィルターなどの医療用途に使うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に用いられる海島型複合繊維を溶融紡糸するための1実施例の紡糸口金の断面構成図である。
【図2】本発明に用いられる海島型複合繊維を溶融紡糸するための他の実施例の紡糸口金の断面構成図である。
【出願人】 【識別番号】302011711
【氏名又は名称】帝人ファイバー株式会社
【出願日】 平成18年6月28日(2006.6.28)
【代理人】 【識別番号】100085224
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 重隆


【公開番号】 特開2008−7870(P2008−7870A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−177448(P2006−177448)