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【発明の名称】 III族窒化物半導体基板
【発明者】 【氏名】大島 祐一
【課題】高品質なIII族窒化物半導体基板を提供する。

【解決手段】III族窒化物単結晶からなり、25.4mm以上の直径と150μm以上の厚みを有する基板の外形寸法の温度変化から算出された線膨張係数αと前記基板の格子定数の温度変化から算出された線膨張係数αとの差α―αをΔαとしたとき、Δα/αが0.1以下であり、主面と前記主面と最も平行度の高い格子面とのなす角度のばらつきが、前記基板の主面内で中心値±0.03度以下とする。また、刃状成分をもつ転位の密度が2×106cm−2以下であり、電気的に活性な不純物の総量を1×1019cm−3以下とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
III族窒化物単結晶からなり、25.4mm以上の直径と150μm以上の厚みを有する基板の外形寸法の温度変化から算出された線膨張係数αと前記基板の格子定数の温度変化から算出された線膨張係数αとの差α―αをΔαとしたとき、Δα/αが0.1以下であることを特徴とするIII族窒化物単結晶基板。
【請求項2】
前記基板は、主面と前記主面と最も平行度の高い格子面とのなす角度のばらつきが、前記基板の主面内で中心値±0.03度以下であることを特徴とする請求項1に記載のIII族窒化物単結晶基板。
【請求項3】
前記基板は、刃状成分をもつ転位の密度が2×10cm−2以下であることを特徴とする請求項1に記載のIII族窒化物半導体基板。
【請求項4】
前記基板は、電気的に活性な不純物の総量が1×1019cm−3以下であることを特徴とする請求項1に記載のIII族窒化物半導体基板。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物半導体基板に関し、特に高品質なIII族窒化物半導体基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化ガリウムアルミニウム(AlGaN)等のGaN系化合物半導体は、青色発光ダイオード(LED)やレーザーダイオ−ド(LD)用材料として、脚光を浴びている。さらに、GaN系化合物半導体は、耐熱性や耐環境性が良いという特徴を活かして、電子デバイス用素子への応用開発も始まっている。
【0003】
現在広く実用化されているGaN成長用の基板はサファイアであり、単結晶サファイア基板の上に有機金属気相成長法(MOVPE法)等でGaNをエピタキシャル成長させる方法が一般に用いられている。
【0004】
しかしながら、サファイア基板は、GaNと格子定数が異なるため、サファイア基板上に直接GaNを成長させたのでは、単結晶膜を成長させることができない。
【0005】
また、有機金属気相成長法は、高温でないと気相反応が起こらず、GaNの単結晶がエピタキシャル成長した後、温度を下げると、サファイア基板とGaNの熱膨張係数の違いによってGaNに反りが生じる等の欠陥が生じる。
【0006】
そこで従来の技術として、サファイア基板上に一旦低温でAlNやGaNのバッファ層を成長させ、この低温成長バッファ層で格子の歪みを緩和させてからその上にGaNを成長させる方法が知られている。この低温成長窒化物層をバッファ層として用いることで、GaNの単結晶エピタキシャル成長を可能にしている。(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
しかし、この方法では、サファイア基板とエピタキシャル成長させた結晶の格子のずれは如何ともし難く、上記の方法でエピタキシャル成長させたGaNは、無数の欠陥を有している。この欠陥は、GaN系LDや高輝度LEDを製作する上で障害となることが予想される。
【0008】
上記のような理由から、GaN自立基板の出現が切に望まれてきた。GaNは、SiやGaAsのように融液から大型のインゴットを引き上げることが困難であるため、例えば超高温高圧法、フラックス法、ハイドライド気相エピタキシャル法(HVPE法)等の種々の方法が試みられている。
【0009】
HVPE法によるGaN基板は、この中でも最も開発が進んでいる。HVPE法によるGaN基板は、徐々にではあるが市場への流通も始まっており、LD用途はもちろん、高輝度LED向けや電力変換素子としても大きな期待が寄せられている。
【特許文献1】特開2003−37288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
今後ますます高出力化が予想されるIII族窒化物半導体デバイスにおいては、転位密度はもちろん、空孔型欠陥濃度を抑制することが非常に重要と考えられる。空孔型欠陥は、酸素等の他の不純物との複合体を形成し、結晶の熱力学特性や光学特性に悪影響を及ぼすからである。
【0011】
しかし、様々な結晶性向上技術によって高品質化が進んできたとはいえ、III族窒化物半導体の結晶品質はSiやGaAs等の従来の半導体に比べるとまだまだ雲泥の差がある。
【0012】
空孔型欠陥濃度もまた、従来の高品質な半導体結晶に比べると非常に多いと考えられる。空孔は、ある熱平衡濃度で結晶中に存在しており、特に、温度上昇の大きい高出力デバイスでは、従来のデバイスに比べて濃度増加が大きいことが懸念される。
【0013】
空孔型欠陥濃度を減らすためには、結晶の成長方法や条件によってそれがどのように変化するのかを迅速に測定する必要がある。結晶中の空孔型欠陥濃度を見積もる方法としては、陽電子消滅法が知られている。
【0014】
陽電子消滅法は、結晶中に陽電子を打ち込んだとき、空孔の位置では電子の存在確率が、正常な部分に比べて小さいため、陽電子の寿命が長くなる。陽電子消滅法は、これを利用して空孔型欠陥濃度を見積もることができる。
【0015】
しかしながら、陽電子消滅法を行うための陽電子消滅実験には、特殊な装置を用いる必要があり、どこでもできる評価手法ではない。また、陽電子消滅法は、間接的な測定であり、測定精度も必ずしも充分とはいえない。
【0016】
さらに、陽電子消滅法は、極めて局所的な評価であるため、実際の結晶成長に用いられるような、大きな面積にわたって評価することは困難であり、従って、空孔型欠陥濃度の減少を主眼においた検討はこれまで殆ど行われたことが無かった。
【0017】
従って、本発明の目的は、上記の問題を解決し、高品質なIII族窒化物半導体基板を提供することにある。
【0018】
また、本発明のIII族窒化物半導体基板を用いてLED素子を形成した場合に、素子寿命の信頼性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は上記目的を達成するため、III族窒化物単結晶からなり、25.4mm以上の直径と150μm以上の厚みを有する基板の外形寸法の温度変化から算出された線膨張係数αと前記基板の格子定数の温度変化から算出された線膨張係数αとの差α―αをΔαとしたとき、Δα/αが0.1以下であることを特徴とするIII族窒化物単結晶基板を提供する。
【0020】
本発明の特徴は、III族窒化物単結晶基板において、主面と前記主面と最も平行度の高い格子面とのなす角度のばらつきが、基板の主面内で中心値±0.03度以下で、刃状成分をもつ転位の密度が2×10cm−2以下であり、電気的に活性な不純物の総量が1×1019cm−3以下の条件を満たす場合に、温度上昇に伴う空孔型欠陥濃度の増大を抑えることを見い出した点にある。空孔型欠陥濃度の増加は、試料の外形寸法すなわち試料サイズの温度変化から算出された線膨張係数αと、格子定数の温度変化から算出された線膨張係数αとの差Δαを指標として大面積にわたって簡便に評価することができる。
【0021】
本発明によれば、Δαの小さい、すなわち温度上昇による空孔型欠陥濃度の増加が小さく、高温動作特性の優れたデバイスを作製可能なIII族窒化物半導体基板が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高品質なIII族窒化物半導体基板を提供することが可能になる。また、本発明のIII族窒化物半導体基板を用いてLED素子を形成すると、素子寿命の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明のIII族窒化物半導体基板の実施の形態を図面を参考にして詳細に説明する。なお、図4から図7については、各結晶の大きさが極端に違うので、実際のサイズと異なる概略図としている。
【0024】
[第1の実施の形態]
(空孔型欠陥濃度の評価とΔα/αについて)
図1は、Δα/αのC軸方位分布依存性の調査結果を示す図であり、図2は、Δα/αの刃状成分を持つ転位密度に対する依存性の調査結果を示す図であり、図3は、Δα/αの不純物添加量(Si)に対する依存性の調査結果の図である。
【0025】
上記したように、空孔型欠陥濃度を測定する方法として、陽電子消滅法がある。しかし、陽電子消滅法を行うための陽電子消滅実験には、特殊な装置を用いる必要があり、簡便に空孔型欠陥濃度を評価することができない。
【0026】
そこで、試料サイズの温度変化から算出された線膨張係数αと、格子定数の温度変化から算出された線膨張係数αとの差Δα(=α―α)を指標として大面積にわたって簡便に評価する方法について以下に説明する。
【0027】
一般に、物質の熱膨張は、格子間距離の増大と、空孔の熱平衡濃度の増加によって引き起こされる。試料サイズの温度変化から得られた線膨張係数αは、それらの両方の情報を含んでいると考えられる。線膨張係数αは、TMA(Thermal Mechanical Analisys)法やレーザ干渉法によって試料サイズの温度変化を直接測定することによって得られる。
【0028】
TMA法は、石英ガラス等の参照試料と被測定試料との熱膨張の差を差動トランスによって検出する方法である。
【0029】
一方、X線回折や電子線回折によって格子定数の温度変化から線膨張係数αを見積もった場合、空孔型欠陥濃度の増加の情報は含まれない。従って、αとαとの差Δα=α−αをとることによって、空孔型欠陥濃度の増加の影響を抽出することができる。
【0030】
大型結晶が存在しなかったIII族窒化物半導体では、αの高精度な測定が難しく、これまでαを測定することは困難であった。つまり、空孔型欠陥濃度の指標は無いに等しく、従ってその改善検討も困難であった。
【0031】
しかし近年、直径50.8mm(2インチ)以上の面積を有する大型GaN結晶がHVPE法によって作製できるようになってきた。そこで、発明者らはいち早くαの測定とΔαの効率の良い低減検討に取り組んだ。鋭意検討の結果、その物理的なメカニズムの解明は必ずしも充分ではないものの、次のような方策が有効であることを見出した。
【0032】
(1)マクロな応力の低減
一般に、HVPE法によって作製されたGaN基板は、Ga極性面を内側にした反りを有する。これは、成長初期過程における結晶粒界密度の変化に起因する内部応力によるものと考えられている。
【0033】
図1は、Δα/αをGaN基板の反りの曲率半径、すなわち、以下に説明する基板の主面と、主面と最も平行度の高い格子面とのなす角度のばらつき(方位分布)に対してプロットしたものである。なお、刃状成分をもつ転位の密度を2×10cm−2、電気的に活性な不純物の総量を1×1019cm−3と一定にした。反りを低減し、内部応力を小さくすることによって、Δα/αが低減する傾向が見られた。
【0034】
通常、GaN基板は、その両面を研磨して用いる。その際、外形は平坦化するが、格子面の反りが戻るわけではないので、GaN基板の主面と格子面とのなす角度は、GaN基板の面内位置によって変化する。研磨前の反りが小さいほど、この角度変化は小さい。反り(内部応力)を低減し、研磨後のGaN基板の主面と、主面と最も平行度の高い格子面とのなす角のばらつきが、GaN基板面内換算で中心値±0.03度以下にすることによって、Δα/αは、顕著に低減される。
【0035】
(2)ミクロな応力の低減
上記の「マクロな応力」のほかにも、空孔発生に寄与すると考えられる応力の原因が、存在する。それは、刃状成分をもつ転位の存在である。刃状転位の周辺には、転位芯からの距離に反比例する応力場が存在し、これが空孔型欠陥濃度の増加に寄与していると考えられる。
【0036】
図2は、Δα/αを刃状成分をもつ転位の密度に対してプロットしたものである。なお、方位分布をGaN基板面内換算で中心値±0.03度、電気的に活性な不純物の総量を1×1019cm−3と一定にした。Δα/αは、当該の転位密度が小さいほど低減し、転位密度2×10cm−2以下のときに顕著な効果が得られることがわかった。
【0037】
(3)電気的に活性な不純物総量の抑制
GaN基板は、充分な導電性を確保するために、通常はn型の不純物を添加する。不純物は、Si、GeおよびOが代表的である。GaN基板は、これら電気的に活性な不純物を添加されると、電荷の中性条件の要請から空孔の形成エネルギーが低下し、小さなエネルギーでも空孔が形成されるようになるため、空孔が発生しやすくなることが知られている。
【0038】
図3は、Δα/αをSi添加量に対してプロットしたものである。なお、方位分布をGaN基板面内換算で中心値±0.03度、刃状成分をもつ転位の密度を2×10cmと一定にした。Δα/αはSi濃度とともに増大し、Δα/αの増加を抑制するためにはSi濃度を1×1019cm−3以下に抑えることが有効であることがわかった。
【0039】
図4は、比較例に係るGaN基板の製造方法の説明図である。
【0040】
GaN薄膜2は、直径2インチのC面サファイア基板1上に有機金属気相成長(MOVPE)法によって、厚さ3μmまでエピタキシャル成長した後、サファイア基板1と共にハイドライド気相成長(HVPE)炉にセットされ、GaClとNHとを原料として厚さ600μmのGaN厚膜3となるまでエピタキシャル成長する。成長温度は1073℃、成長圧力は97kPaとした。原料ガスは、SiHClガスを0.6μmol/minの割合で添加し、Siドープの結晶とした。
【0041】
サファイア基板1上にエピタキシャル成長したGaN厚膜3は、レーザ剥離法を用いてサファイア基板1が除去され、両面が研磨されることによって直径2インチ、厚さ430μmの第1のGaN基板としてのGaN自立基板4になる。
【0042】
このGaN自立基板4のC軸の面内ばらつきは、X線回折法によって調べたところ、中心値に対して±0.18度と大きかった。
【0043】
また、SIMS分析によって測定した結晶中のSi濃度は、1.5×1019cm−3であった。
【0044】
さらに、(10−10)X線ロッキングカーブ半値幅から見積もった、刃状成分をもつ転位の密度は、1×10cm−2であった。
【0045】
一方、TMA法とX線回折法による線膨張係数測定の結果、このGaN自立基板4のΔα/αの値は、およそ0.15と見積もられた。
【0046】
図5は、図4で説明したGaN基板の製造方法に基づいて作製された自立基板4を用いて作製されたLED素子を示す図である。
【0047】
GaN自立基板4は、GaN基板10として再びMOVPE炉にセットされ、厚みが4μmのn型GaN層11と、厚みが40nmのn型Al0.1Ga0.9N層12と、厚みが13nm(well層3nm barrier層10nm)のIn0.15Ga0.85N/GaN−3−MQW活性層13と、厚さ40nmのp型Al0.1Ga0.9N層14と、厚みが500nmのp型GaN層15とをMOVPE法を用いて順次エピタキシャル成長した。
【0048】
このエピタキシャル成長したエピウェハは、0.3mm角の大きさに切り出され、上下面に上部電極16、下部電極17が形成され、0.3mm角の大きさに切り出されたチップは、銀ペーストを用いてステムに接着され、ワイヤーボンディング、樹脂封入されてLED素子になる。
【0049】
このLED素子は、100mA通電時における信頼性試験の結果、素子寿命は、およそ4000時間程度と見積もられた。このLED素子は、高電流動作時における温度上昇に伴う空孔の発生が多く、熱伝導率の低下や光吸収係数の増大が起こったことが、短寿命の原因と推定される。
【0050】
図6は、本発明の第1の実施の形態に係るGaN基板の製造方法の説明図である。
【0051】
本発明のGaN基板の製造方法で用いる種結晶としてのGaN基板については図4に示すように直径2インチのC面サファイア基板1上に有機金属気相成長(MOVPE)法によって、厚さ3μmまでエピタキシャル成長した後、サファイア基板1と共にハイドライド気相成長(HVPE)炉にセットされ、GaClとNHとを原料として厚さ600μmのGaN厚膜3となるまでエピタキシャル成長する。成長温度は1073℃、成長圧力は97kPaとした。原料ガスは、SiHClガスを0.6μmol/minの割合で添加し、Siドープの結晶とした。ここまでは、上記の比較例のGaN基板の製造方法と同じ工程で作製される。
【0052】
次にサファイア基板1上にエピタキシャル成長したGaN厚膜3は、レーザ剥離法を用いてサファイア基板1を除去され、両面を研磨されることによって直径50.8mm、厚さ200μmのGaN基板となる。このGaN基板を種結晶としてのGaN基板5として用いる。
【0053】
このGaN基板5は、再びHVPE炉にセットされ、厚さが30mmになるまで、さらにエピタキシャル成長を続けた。得られた単結晶のGaNインゴット6は、スライスされることによって、スライスGaNインゴット7になり、スライスGaNインゴット7は、新たに直径2インチ、厚さ430μmの第2のGaN基板としてのGaN自立基板8となる。
【0054】
インゴット先端部付近からスライスされたGaN自立基板8は、面内ばらつきをX線回折法によって調べたところ、中心値に対して±0.01度と非常に小さかった。
【0055】
また、SIMS分析によって測定した結晶中のSi濃度は、1.0×1018cm−3であった。
【0056】
さらに、(10−10)X線ロッキングカーブ半値幅から見積もった、刃状成分をもつ転位の密度は、1×10cm−2であった。
【0057】
一方、TMA法とX線回折法による線膨張係数測定の結果、このGaN自立基板7のΔα/αの値は、0.01(測定下限値)以下と見積もられた。
【0058】
図7は、本発明の第1の実施の形態に係るLED素子構造の模式図であり、GaN自立基板8を用いて、LED素子を作製した場合について説明する。
【0059】
図5で示したLED素子と同じ構造の素子を作製するため、GaN自立基板8は、GaN基板18として再びMOVPE炉にセットされ、厚みが4μmのn型GaN層11と、厚みが40nmのn型Al0.1Ga0.9N層12と、厚みが13nm(well層3nm barrier層10nm)のIn0.15Ga0.85N/GaN−3−MQW活性層13と、厚さ40nmのp型Al0.1Ga0.9N層14と、厚みが500nmのp型GaN層15とをMOVPE法を用いて順次エピタキシャル成長した。なお、図5と同一の構造を有する部分については、同一の符号を使用した。
【0060】
このエピタキシャル成長したエピウェハは、0.3mm角の大きさに切り出され、上下面に上部電極16、下部電極17を形成される。0.3mm角の大きさに切り出されたチップは、銀ペーストを用いてステムに接着され、ワイヤーボンディング、樹脂封入されてLED素子になる。
【0061】
このLED素子は、100mA通電時における信頼性試験の結果、素子寿命は、およそ11000時間と見積もられた。このLED素子は、高電流動作時における温度上昇に伴う空孔の発生が少なく、熱伝導率や光吸収係数の劣化が小さかったことが長寿命化に寄与したものと考えられる。
【0062】
(第1の実施の形態の効果)
上記した第1の実施の形態によれば、基板の主面内で中心値が±0.03度以下であり、転位の密度が2×10cm−2以下であり、不純物の総量が1×1019cm−3以下とした結果、高温でも空孔型欠陥濃度の増大が小さい、高品質なGaN自立基板が提供される。それを用いてLED、LD等、特に大電流駆動を行う窒化物半導体装置は、動作効率や素子寿命の顕著な向上を図ることができる。
【0063】
[第2の実施の形態]
図8は、本発明の第2の実施の形態に係るLED素子寿命のΔα/αに対する依存性の調査結果を示す図である。
【0064】
図6に示す、第1の実施の形態で得られた実施例におけるGaN自立基板8は、GaNインゴット6からのスライスされた位置によってそれぞれ異なるΔα/αの値をもっていた。図8は、それらを用いて第1の実施の形態と同様の素子構造を作製し、信頼性試験を行った調査結果であり、LED素子の信頼性は、Δα/αが小さいほど向上し、Δα/αが、おおむね0.1以下において、実用寿命といわれる10000時間をクリアしていることが判ったので、実用性の高い高品質な複数のGaN自立基板8が得られたことになる。
【0065】
(他の応用例、変形例)
上記の実施の形態においてはLED素子の場合のみ記したが、これに限定されず、これ以外にもLDや電力変換素子等、高出力動作が必要な素子に対しても同様に大きな効果を発揮する。また、HVPE法で作製したGaN自立基板8に関してのみ述べたが、これに限定されず、フラックス法やアンモノサーマル法などのほかの方法を用いることも考えられる。
【0066】
なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されず、本発明の技術思想を逸脱あるいは変更しない範囲内で種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】Δα/αのC軸方位分布依存性の調査結果を示す図である。
【図2】Δα/αの刃状成分を持つ転位密度に対する依存性の調査結果を示す図である。
【図3】Δα/αの不純物添加量(Si)に対する依存性の調査結果の図である。
【図4】比較例に係るGaN基板の製造方法の説明図である。
【図5】図4で説明したGaN基板の製造方法に基づいて作製された自立基板4を用いて作製されたLED素子を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るGaN基板の製造方法の説明図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るLED素子構造の模式図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係るLED素子寿命のΔα/αに対する依存性の調査結果を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1・・・サファイア基板、2・・・GaN薄膜、3・・・GaN厚膜、4・・・GaN自立基板、5・・・GaN基板、6・・・GaNインゴット、7・・・スライスGaNインゴット、8・・・GaN自立基板、10・・・GaN基板、11・・・n型GaN層、12・・・n型Al0.1Ga0.9N層、13・・・In0.15Ga0.85N/GaN−3−MQW活性層、14・・・p型Al0.1Ga0.9N層、15・・・p型GaN層、16・・・上部電極、17・・・下部電極、18・・・GaN基板

特許の図
【出願人】 【識別番号】000005120
【氏名又は名称】日立電線株式会社
【出願日】 平成19年2月16日(2007.2.16)
【代理人】 【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄

【識別番号】100099597
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 賢二

【識別番号】100119208
【弁理士】
【氏名又は名称】岩永 勇二

【識別番号】100124235
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 恵子

【識別番号】100124246
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 和光

【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
【公開番号】 特開2008−195594(P2008−195594A)
【公開日】 平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願番号】 特願2007−35643(P2007−35643)