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【発明の名称】 部分めっき方法
【発明者】 【氏名】芳賀 孝吉

【要約】 【課題】コネクタ端子の接点部などに微細に硬質金めっきをすることが可能な部分めっき方法を提供すること。

【構成】めっき液を接触させた被めっき材34のめっきする部分に、波長が330nm以上450nm以下であるレーザ光を照射して部分めっきをする。このとき、めっき液中に被めっき材34を搬送すると良い。このめっき液中を搬送される被めっき材34の動きにレーザ光を一定時間同期させて被めっき材34のめっきする部分に照射する。被めっき材34の同一のめっきする部分を一定時間照射した後は、レーザ光を走査開始位置に復帰させるようにする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液を接触させた被めっき材のめっきする部分に、波長が330nm以上450nm以下であるレーザ光を照射してめっきすることを特徴とする部分めっき方法。
【請求項2】
前記被めっき材は、前記めっき液中を搬送されるとともに、前記レーザ光は、走査開始位置から、このめっき液中を搬送される被めっき材の動きに一定時間同期して走査され、この被めっき材の同一のめっきする部分を一定時間照射した後、前記走査開始位置に復帰する動きをすることを特徴とする請求項1に記載の部分めっき方法。
【請求項3】
前記レーザ光は、ポリゴンミラーやガルバノミラーなどの可動ミラーで反射して走査されることを特徴とする請求項2に記載の部分めっき方法。
【請求項4】
前記レーザ光は、前記めっき液中を搬送される被めっき材に対向させた、レーザ光源またはレーザ光源を含む光源光学系のレーザ光出射端の、前記めっき液中を搬送される被めっき材の動きに一定時間同期した後前記走査開始位置に復帰する並進往復運動により走査されることを特徴とする請求項2に記載の部分めっき方法。
【請求項5】
前記被めっき材は、前記めっき液中を搬送されるとともに、前記被めっき材のめっきする部分が前記レーザ光の照射位置にきたときに一定時間停止することを特徴とする請求項1に記載の部分めっき方法。
【請求項6】
前記レーザ光は、複数のレーザ光源またはレーザ光源を含む光源光学系の複数のレーザ光出射端から複数出射されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の部分めっき方法。
【請求項7】
前記めっき液は、前記被めっき材を搬送する方向および前記レーザ光を照射する方向とは異なる方向に流動されることを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載の部分めっき方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、被めっき材表面の所定領域に選択的にめっきする部分めっき方法に関し、特に、コネクタ端子などの接点へのめっきに好適に用いられる部分めっき方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被めっき材を部分的にめっきする方法としては、マスキングテープやゴム質の絶縁体、ポリマレジストなどで被めっき材表面のめっきしない部分をマスクしてめっきする方法や、被めっき材に通電しながらめっきする部分にめっき液を噴流してめっきする方法などが広く行なわれている。
【0003】
しかしながら、マスクを用いた部分めっき方法は被めっき材表面をマスクすることなどから、また、噴流による部分めっき方法は噴流径の大きさなどから、被めっき材へのめっきを微細化することが難しい。
【0004】
これらの方法に対し、被めっき材へのめっきの微細化が可能なめっき方法として、レーザ光を用いためっき方法が知られている。
【0005】
例えば特許文献1には、特定範囲の強度を有するエネルギービームを金属めっきする選択範囲に指向させ加熱する電気めっき方法が開示されている。このように、金属めっきする選択範囲にレーザ光を照射すれば、選択範囲が局所的に加熱されるので、この部分でのめっき速度が向上し、選択範囲を部分的にめっきすることができる。このようなレーザめっき方法は、レーザ光を微小面積に収束して局所的にレーザ照射するので、被めっき材へのめっきの微細化が可能となる。
【0006】
このとき、レーザ光源としては、主にアルゴンイオンレーザが使われている。アルゴンイオンレーザは、金属に吸収される500nm付近に波長を有するので、金属で構成される被めっき材を局所的に加熱するのに好適であり、また、高出力が得られる。
【0007】
【特許文献1】特公昭59−1797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、コネクタ端子の接点部など耐摩耗性が要求されるものには高い接続信頼性が要求されるものもあり、硬質金めっきが施されることがある。そして、硬質金めっきをするための金めっき液には、アルゴンイオンレーザの光を吸収するコバルトイオンが含まれている。
【0009】
そのため、従来のレーザめっき方法により、例えばコネクタ端子の接点部などに微細に硬質金めっきをしようとする場合には、アルゴンイオンレーザから照射されたレーザ光は、金めっき液に含まれるコバルトイオンに吸収され、被めっき材であるコネクタ端子表面に達する前に減衰するので、コネクタ端子と金めっき液との界面が加熱不足になり、めっきが不十分となるおそれがある。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、コネクタ端子の接点部などに微細に硬質金めっきをすることが可能な部分めっき方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明に係る部分めっき方法は、めっき液を接触させた被めっき材のめっきする部分に、波長が330nm以上450nm以下であるレーザ光を照射してめっきを行うことを要旨とする。
【0012】
この場合、前記被めっき材は、前記めっき液中を搬送されるとともに、前記レーザ光は、走査開始位置から、このめっき液中を搬送される被めっき材の動きに一定時間同期して走査され、この被めっき材の同一のめっきする部分を一定時間照射した後、前記走査開始位置に復帰する動きをすることが望ましい。
【0013】
このとき、前記レーザ光は、ポリゴンミラーやガルバノミラーなどの可動ミラーで反射して走査されることを好適な例として示すことができる。
【0014】
また、前記レーザ光は、前記めっき液中を搬送される被めっき材に対向させた、レーザ光源またはレーザ光源を含む光源光学系のレーザ光出射端の、前記めっき液中を搬送される被めっき材の動きに一定時間同期した後前記走査開始位置に復帰する並進往復運動により走査されることを好適な例として示すことができる。
【0015】
一方、前記被めっき材は、前記めっき液中を搬送されるとともに、前記被めっき材のめっきする部分が前記レーザ光の照射位置にきたときに一定時間停止するものであっても良い。
【0016】
そして、前記レーザ光は、複数のレーザ光源またはレーザ光源を含む光源光学系の複数のレーザ光出射端から複数出射されるものであっても良い。
【0017】
また、前記めっき液は、前記被めっき材を搬送する方向および前記レーザ光を照射する方向とは異なる方向に流動されることが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る部分めっき方法によれば、波長が330nm以上450nm以下であるレーザ光を照射してめっきを行うので、例えばコネクタ端子の接点部などの被めっき材のめっきする部分に硬質金めっきをする場合、金めっき液に含まれるコバルトイオンにレーザ光がほとんど吸収されないため、コネクタ端子表面に達する前にレーザ光が減衰することはなく、コネクタ端子と金めっき液との界面は十分に加熱される。これにより、コネクタ端子の接点部などに確実に硬質金めっきをすることができる。
【0019】
また、本発明に係る部分めっき方法は、被めっき材表面のめっきしない部分をマスクするものではなく、また、めっきする部分にめっき液を噴流するものでもなく、レーザ光を照射してめっきを行うものである。そのため、レーザ光を微小面積に収束して局所的にレーザ照射するので、被めっき材のめっき部分の微細化が可能となる。
【0020】
この場合、前記被めっき材を前記めっき液中に搬送するようにすれば、連続的に被めっき材をめっきすることができる。そして、前記レーザ光が、走査開始位置から、このめっき液中を搬送される被めっき材の動きに一定時間同期して走査され、この被めっき材の同一のめっきする部分を一定時間照射した後、前記走査開始位置に復帰する動きをするときには、被めっき材をめっき液中に搬送する速度を確保しつつ、各々の被めっき材のめっきする部分に照射するレーザ光量を十分に確保することができる。これにより、被めっき材のめっき速度を速くすることができる。
【0021】
このとき、前記レーザ光が、ポリゴンミラーやガルバノミラーなどの可動ミラーで反射して走査されるようにすれば、確実に、被めっき材をめっき液中に搬送する速度を確保しつつ、各々の被めっき材のめっきする部分に照射するレーザ光量を十分に確保することができる。
【0022】
また、前記レーザ光が、前記めっき液中を搬送される被めっき材に対向させた、レーザ光源またはレーザ光源を含む光源光学系のレーザ光出射端の、前記めっき液中を搬送される被めっき材の動きに一定時間同期した後前記走査開始位置に復帰する並進往復運動により走査されるようにすれば、確実に、被めっき材をめっき液中に搬送する速度を確保しつつ、各々の被めっき材のめっきする部分に照射するレーザ光量を十分に確保することができる。
【0023】
一方、前記被めっき材が、前記めっき液中を搬送され、前記被めっき材のめっきする部分が前記レーザ光の照射位置にきたときに一定時間停止するようにしても、確実に、被めっき材をめっき液中に搬送する速度を確保しつつ、各々の被めっき材のめっきする部分に照射するレーザ光量を十分に確保することができる。
【0024】
そして、前記レーザ光が、複数のレーザ光源またはレーザ光源を含む光源光学系の複数のレーザ光出射端から複数出射される構成とするときには、例えば、複数のレーザ光で同一部分を照射する場合には、被めっき材のめっきする部分に照射するレーザ光量が増えるので、めっきするのに必要な照射時間が短くなり、めっき速度を速くすることができる。
【0025】
また、例えば、複数のレーザ光で異なる部分を照射する場合には、形状が異なる複数のめっきする部分や位置が異なる複数のめっきする部分を同時にめっきすることができる。
【0026】
さらに、例えば、複数のレーザ光の照射角度を変える場合には、端子周りへのめっきなど、平面的部分だけでなく立体的形状を有する部分へのめっきを一度に行なうことができる。
【0027】
そして、前記めっき液を流動させるときには、被めっき材のめっきする部分に常時金属イオン濃度の高い新鮮なめっき液が供給されるので、金属イオン濃度の低下によりめっき速度が低下するのを防止できる。このとき、前記めっき液が、前記めっき材を搬送する方向および前記レーザ光を照射する方向とは異なる方向に流動するようにすれば、被めっき材上のめっき液の厚さを薄くしたり石英ガラス窓を設けることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明に係る部分めっき方法について図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
本発明に係る部分めっき方法は、波長が330nm以上450nm以下であるレーザ光を用いる。より好ましくは波長が350nm以上420nm以下のものである。波長が330nm以上450nm以下であるレーザ光は、紫外から青色のレーザ光であり、レーザ光の光源として半導体レーザなどを用いることができる。
【0030】
本発明に係る部分めっき方法において、レーザ光の波長を330nm以上450nm以下としているのは、コネクタ端子の接点部など耐摩耗性が要求される部分などに微細に硬質金めっきをすることが可能となるからである。その理由を以下に説明する。
【0031】
図1に、硬質金めっきに使用する金めっき液の吸光スペクトルを示す。測定に使用した金めっき液は、田中貴金属製の硬質金めっき液マルチブライト16Cであり、1cmセルを用いて測定した。
【0032】
硬質金めっきに使用する金めっき液には、金めっきの硬度を高くするためにコバルトイオンが含まれている。そのため、図1に示すように、300nm前後に強い吸収を有するほか、500nm前後にも吸収を有し、330nmから450nmまでは吸収が弱くなっている。一方、コネクタ端子の接点部などの被めっき材は、一般的にCuやCu合金材上にNi下地めっきが施される。Cu、Ni、Auなどの金属では、300nmから波長が長くなるに従って、徐々に反射が増加し、吸収が減少する。
【0033】
そのため、硬質金めっきに使用する金めっき液が接触する被めっき材のめっきする部分をレーザ光で効率よく加熱するためには、金めっき液に吸収されにくく、被めっき材に吸収されやすいレーザ光を用いると良い。つまり、金めっき液に吸収されにくくするには、図1より、330nmから450nmまでの範囲と、600nm以上の波長を有するレーザ光にすると良く、一方、被めっき材により吸収されやすくするには、波長のより短いレーザ光が良い。よって、本発明に係る部分めっき方法で使用するレーザ光の波長は、330nmから450nmまでの範囲としている。
【0034】
なお、従来のレーザめっき方法で用いられていたアルゴンイオンレーザのレーザ光の波長は約500nmであるため、この硬質金めっきのための金めっき液がアルゴンイオンレーザのレーザ光を強く吸収する。そのため、従来のレーザめっき方法では、被めっき材に硬質金めっきをするのに好適ではない。
【0035】
本発明に係る部分めっき方法においては、めっき液を接触させた被めっき材のめっきする部分に、波長が330nm以上450nm以下であるレーザ光を照射してめっきを行う。
【0036】
めっき金属としては、上述するように硬質金めっきに使用するコバルトイオンを含有させた金が特に好適であり、その他には、ニッケル添加金、金、銀、白金、パラジウムなどの貴金属や、ニッケル、錫など、一般的な金属めっきに使用されるめっき金属を用いることができる。
【0037】
被めっき材は、上述するようにコネクタ端子の接点部など耐摩耗性が要求されるものが特に好適であるが、これに限定されるものではなく、上記めっき金属によりめっきするものであれば良い。
【0038】
めっき方法は、めっき液を用いた湿式めっきであり、電解めっき、無電解めっきのいずれであっても良い。レーザ光を用いるので、いずれの方法においても、めっきするに際してめっき液を予め加熱しておく必要はなく、レーザ光によってめっき可能な温度までめっき液を局部的に加熱できるという利点がある。もちろん、レーザ光の加熱を補助するために、めっき液を予備加熱しても構わない。
【0039】
本発明に係る部分めっき方法においては、レーザ光の照射による局部的な加熱でめっきを促進しているので、レーザ光の照射スポットが得られるならば、平面的な部分だけでなく、レーザ光の走査方向に対して傾きを持った面部分にもめっきすることができる。
【0040】
本発明に係る部分めっき方法においては、めっき液中に被めっき材を搬送して連続的にめっきすると良い。以下、本発明に係る部分めっき方法を説明するために、好適に用いられるレーザめっき装置の一例について説明する。
【0041】
図2は、本発明に係る部分めっき方法に好適に用いられるレーザめっき装置の一例を表す正面模式図であり、図3は、めっき槽部分を拡大して表した平面模式図である。また、図4は、複数のファイバを束ねたファイバアレイの出射端を表す模式図である。
【0042】
図2および図3に示すように、レーザめっき装置10は、多チャンネルのレーザダイオード制御回路12と接続される複数の紫外ないし青色光をレーザ発振する半導体レーザモジュール(レーザ光源)14を備え、これら複数の半導体レーザモジュール14の出射先には、コリメータレンズ16を介してマルチモード光ファイバ18が配置されている。マルチモード光ファイバ18に入射するレーザ光は、ファイバ内で全反射を繰り返して導かれるので、マルチモード光ファイバ18から出射されるレーザ光は、ファイバの径方向全体に均一な強度分布となっている。複数のマルチモード光ファイバ18は、稠密に束ねられてファイバアレイ20を形成しており、半導体レーザを多数集積することで、めっきするのに必要な加熱を与える出力が得られるようになっている。
【0043】
なお、図2において、複数の半導体レーザモジュール(レーザ光源)14のそれぞれに複数のコリメータレンズ16を介して複数のマルチモード光ファイバ18が配置されているが、1つの半導体レーザモジュール(レーザ光源)14を、ハーフミラーなどの光学分割器を用いてレーザ光源からのレーザ光を分割して、複数のマルチモード光ファイバ18に入射させるものであっても良い。
【0044】
ファイバアレイ20の出射端は、図4に示すように、複数のマルチモード光ファイバ18が稠密に束ねられ、その周囲を樹脂などの被覆材22で固定された構造をしている。ファイバアレイ20の出射端には、出射端からのレーザ光をレーザ照射スポットとして結像する結像レンズ24を備えており、結像レンズ24は、めっき液が流動するめっき槽26と対向して配置されている。
【0045】
以上により、レーザ光源を含む光源光学系が構成されている。なお、出射端からのレーザ光の出射形状やビームプロファイルは、半導体レーザ14個別のON/OFF調整や出力調整、ファイバアレイ20の束ね方で変更可能であり、めっきスポット形状の最適化が可能になっている。
【0046】
めっき槽26は、めっき液が流動する流路28に側壁30,30を有する構造であり、図中紙面の表裏方向は開口している。めっき槽26の上面はレーザ光が通過する石英ガラス板32で覆われており、流動するめっき液が結像レンズ24にかからないようになっている。また、石英ガラス板32は、被めっき材34が板状である場合には、被めっき材34表面上のめっき液の厚さを均一にできるので、めっき液表面の反射や屈折などによる照射スポットの乱れを抑えることができる。これにより、レーザめっき装置10において、めっき槽26を垂直にも水平にも配置することができる。
【0047】
めっき槽26内には、窓を有する陽極36がめっき液に浸漬するように配置されており、ファイバアレイ20の出射端から出射されるレーザ光は、陽極36の窓内右端を走査開始位置として、窓内の右端から左端へと走査される。
【0048】
めっき槽26の外側には、流動するめっき液を回収して循環する回収槽40を備えている。回収槽40の底部には、めっき液吸引口42が突出しており、めっき液は、めっき槽26のめっき液出口44から流れ出た後、めっき液吸引口42から回収してポンプ等でめっき槽26のめっき液入口46に循環されるようになっている。
【0049】
被めっき材34は、図3に示すように、長尺のキャリアフレーム48に等間隔に複数の端子金具50,50・・・が連結されたもので構成されており、図示しないリールなどに巻回されている。端子金具50は、銅合金などからなる板材をプレス等で所定の形状に打ち抜いた後、折り曲げ加工することにより所定の形状にされる。長尺のキャリアフレーム48に連結されためっき前の端子金具50は、折り曲げ加工前の展開形状のものであっても良いし、折り曲げ加工後の立体形状のものであっても良い。長尺のキャリアフレーム48には、長尺のキャリアフレーム48に連結された端子金具50を順送りするための位置決め孔52が穿設形成されている。
【0050】
長尺の被めっき材34は、ロール38によりめっき槽26へと誘導され、めっき槽26を流動するめっき液に浸漬するように通過する。ロール38のいずれかは給電ロールになっており、図示しないめっき電源のマイナス側に接続されて陰極を構成している。
【0051】
本発明に係る部分めっき方法において、めっき液中に被めっき材34を搬送すれば、被めっき材34のめっきする部分を連続的にめっきすることができる。この場合、レーザ光は、走査開始位置から、このめっき液中を搬送される被めっき材34の動きに一定時間同期して走査され、この被めっき材34の同一のめっきする部分を一定時間照射した後、走査開始位置に復帰する動きをすると良い。
【0052】
例えば、被めっき材34が等速で移動する場合、走査開始位置から、被めっき材34のめっきする部分の間隔に等しい距離だけ被めっき材34を追尾してレーザ光を走査した後、高速で走査開始位置にレーザ光を復帰させて次の被めっき材34のめっきする部分に移る。これを繰り返すことにより、レーザ光を連続発振させたまま、被めっき材34のめっきする部分に等間隔にめっきすることができる。このように、キャリアフレーム48に等間隔に複数の端子金具50が連結されたものからなる被めっき材34などをめっき液に搬送しながら連続的にめっきするコネクタ端子金具などの量産めっきラインに適用可能である。
【0053】
レーザ光にこのような動きをさせるには、例えば、ファイバアレイ20の出射端とこれに備えられている結像レンズ24に、めっき液中を搬送される被めっき材34の動きに一定時間同期した後走査開始位置に復帰する並進往復運動をさせるようにすると良い。
【0054】
また、結像レンズ24と被めっき材34との間(この場合、被めっき材34の上に石英ガラス板32があるので、結像レンズ24と石英ガラス板32との間が好ましい。)に、ポリゴンミラーなどの回転多面鏡やガルバノミラーなどの平面鏡などの可動ミラーを配置し、結像されたレーザ光を可動ミラーで反射させてレーザ光を走査するものでも良い。このとき、可動ミラーを可動させて、レーザ光を、めっき液中を搬送される被めっき材34の動きに一定時間同期させ、その後、走査開始位置に復帰させるようにする。
【0055】
一方、上述するようにレーザ光を走査させなくても、めっき液中に被めっき材34を搬送して連続的にめっきすることができる。つまり、ファイバアレイ20の出射端とこれに備えられている結像レンズ24を固定しておいて、めっき液中を搬送される被めっき材34に一定の動きをさせるようにする。すなわち、被めっき材34のめっきする部分がレーザ光の照射位置にきたときに被めっき材34を一定時間停止させるようにする。これにより、被めっき材34のめっきする部分への照射光量を確保することができるので、被めっき材34を連続的にめっきすることが可能となる。その後、被めっき材34は移動を再開して、次のめっきする部分がレーザ光の照射位置にくるまで移動する。
【0056】
長尺の被めっき材34がロール38によりめっき槽26へと誘導され、被めっき材34のめっきする部分が陽極36の窓の下を通過するときに、上記するいずれかの走査方法により、ファイバアレイ20の出射端から結像レンズ24を通ってめっきする部分にレーザ光が照射される。被めっき材34のめっきする部分にレーザ光が照射されると、レーザ照射された被めっき材とめっき液との界面が局所的に加熱され、めっきする部分にめっき54が部分的に形成される。
【0057】
なお、被めっき材34の移動において、光学センサなどを組み合わせれば、非接触での位置決めが可能であり、めっきスポット相互間の距離の偏差を小さくでき、部分めっき54を高位置精度で施すことができる。
【0058】
本発明に係る部分めっき方法において、レーザ光源14またはレーザ光源14を含む光源光学系のレーザ光出射端は、1つに限定されるものではなく、複数あっても良い。
【0059】
レーザ光源14またはレーザ光源14を含む光源光学系のレーザ光出射端が複数ある場合、複数のレーザ光で同じ部分または異なる部分を同時に照射することができる。また、照射角度が異なる複数のレーザ光を同時に照射することができる。
【0060】
複数のレーザ光出射端からの複数のレーザ光で同一部分を照射する場合には、被めっき材34のめっきする部分に照射するレーザ光量が増えるので、めっきするのに必要な照射時間が短くなり、めっき速度を速くすることができる。複数のレーザ光で連続する複数の端子金具50を同時に照射する場合にも、被めっき材34の搬送速度、すなわちめっきラインの生産性を、同時照射スポット数倍だけ向上できる。
【0061】
また、例えば、タブ型のオス端子が挿入されるメス端子において、オス端子タブの一方の面(例えば上側の面)と接触する部分と、他方の面(例えば下側の面)と接触する部分とにめっきする場合、めっきする部分の形状または位置が異なる。このように、めっきする部分の形状または位置が異なる複数のめっきする部分を有するものに対して、複数のレーザ光で異なる部分を照射すれば、これらを同時にめっきすることができる。
【0062】
また、例えば、筒状の端子の周りへリング状にめっきするときには、照射角度を変えて筒状の端子の周りへ複数のレーザ光を照射することによりめっきが可能となり、板状の被めっき材の表面と裏面に同時にめっきする場合には、照射角度を180°ずらした2つの対向するレーザ光源またはレーザ光源を含む光源光学系のレーザ光出射端によりめっきが可能となる。このように、照射角度を変えた複数のレーザ光を用いることで、平面的部分だけでなく立体的形状を有する部分へのめっきを一度に行なうことができる。
【0063】
本発明に係る部分めっき方法において、被めっき材34を搬送する方向およびレーザ光を照射する方向とは異なる方向にめっき液を流動させると良い。図3では、被めっき材34は右から左へと搬送され、レーザ光は紙面表から裏へと照射される。これに対し、めっき液は上から下へと流動するようになっている。つまり、めっき液は、被めっき材34を搬送する方向およびレーザ光を照射する方向の両方向に対して直交する方向に流動するようになっている。
【0064】
被めっき材34を搬送する方向およびレーザ光を照射する方向の両方向に対して完全に直交する方向でなくても良いが、両方向とは異なる方向にめっき液を流動させるようにすれば、被めっき材34上のめっき液の厚さを薄くしたり石英ガラス窓を設けることが可能になる。
【0065】
そして、めっき液中に被めっき材34を搬送して連続的にめっきする場合と非連続的にめっきする場合とに拘らず、めっき液を流動させるようにすれば、被めっき材34のめっきする部分に常時金属イオン濃度の高い新鮮なめっき液が供給されるので、金属イオン濃度の低下によりめっき速度が低下するのを防止できる。
【0066】
なお、従来のレーザめっき方法では、アルゴンイオンレーザを用いているため、金属イオン濃度の高い新鮮なめっき液を被めっき材34のめっきする部分に補給するためにめっき液を流動させると、めっきする際めっき液がレーザ光を吸収しているので、めっき液の流動に伴ってレーザ光のエネルギーがめっきする部分から流出するおそれがあったが、本発明に係る部分めっき方法ではそのおそれもない。
【0067】
本発明に係る部分めっき方法により被めっき材34にめっきする前には、被めっき材34を洗浄・表面活性化する前処理が施され、また、必要に応じて下地めっきする。一方、被めっき材34にめっきを施した後には、めっきされた被めっき材34を洗浄・乾燥等する。
【0068】
以上、本発明に係る部分めっき方法は、波長が330nm以上450nm以下であるレーザ光を照射してめっきを行うので、例えばコネクタ端子の接点部などの被めっき材のめっきする部分に硬質金めっきをする場合、金めっき液に含まれるコバルトイオンにレーザ光がほとんど吸収されないため、コネクタ端子表面に達する前にレーザ光が減衰することはなく、コネクタ端子と金めっき液との界面は十分に加熱される。これにより、コネクタ端子の接点部などに確実に硬質金めっきをすることができる。
【0069】
また、レーザ光を用いるため、レーザ光を用いない場合と比べて格段にめっき析出速度が速くなり、めっきする時間を短くできる。めっきする時間が短くなれば、例えば被めっき材をめっき液に搬送してめっきする場合などにおいて、めっき時間と被めっき材の移動速度の積で決まるめっき槽の長さを短くすることができるので、めっきラインの設置面積を小さくすることができる。このように、めっき槽が小さくなれば、めっき液の量を少なくできる。併せて、めっき液を高温に加熱する必要も無いので、めっき液の維持管理が容易となる。
【0070】
また、レーザ光を微小面積に収束して局所的にレーザ照射するので、被めっき材のめっき部分の微細化が可能となり、めっきに必要な貴金属の量を削減できる。
【0071】
また、被めっき材表面のめっきしない部分をマスクするものではないので、マスクのような消耗品も必要ない。そして、めっき液を狭いマスク内に流す必要がないので気泡残留などによるスポット微細化の障害がない。さらに、ゴム製などのマスクを密着させる場合のような力が被めっき材に加わらないため、端子材などが薄く微細な場合にも被めっき材を変形させることがない。
【0072】
そして、被めっき材をめっき液中に搬送するようにすれば、連続的に被めっき材をめっきすることができる。このとき、レーザ光が、走査開始位置から、このめっき液中を搬送される被めっき材の動きに一定時間同期して走査され、この被めっき材のめっきする同一部分を一定時間照射した後、走査開始位置に復帰する動きをするときには、被めっき材をめっき液中に搬送する速度を確保しつつ、各々の被めっき材のめっきする部分に照射するレーザ光量を十分に確保することができる。これにより、被めっき材のめっき速度を速くすることができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0074】
例えば、図2には、結像レンズとめっき液との間に石英ガラスを設置した場合を示したが、めっき液が結像レンズにかからない場合には、石英ガラス板を設置しなくても良い。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係る部分めっき方法は、例えば、コネクタ端子などの接点へのめっきなどに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】硬質金めっきに使用する金めっき液の吸光スペクトルを表すグラフである。
【図2】本発明に係る部分めっき方法に好適に用いられるレーザめっき装置の一例を表す正面模式図である。
【図3】めっき槽部分を拡大して表した平面模式図である。
【図4】複数のファイバを束ねたファイバアレイの出射端を表す模式図である。
【符号の説明】
【0077】
10 レーザめっき装置
14 半導体レーザモジュール(レーザ光源)
18 マルチモード光ファイバ
20 ファイバアレイ
24 結像レンズ
26 めっき槽
28 めっき液流路
34 被めっき材
48 キャリアフレーム
50 端子金具
【出願人】 【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
【出願日】 平成18年8月7日(2006.8.7)
【代理人】 【識別番号】100095669
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 登


【公開番号】 特開2008−38202(P2008−38202A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−214168(P2006−214168)