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【発明の名称】 ダイレクトプレーティング方法
【発明者】 【氏名】金尾 嘉徳

【要約】 【課題】めっき時間が短かく、プラスチックの全面に電気銅めっきした場合であっても無めっきの個数が少なく、また、銅張り積層板等のスルーホールにめっきを行った場合であっても、泥状の粗雑な皮膜の銅めっきとならない優れためっき方法を提供すること。

【構成】被めっき物に触媒を付与し、次いで、銅塩、錯化剤およびアルカリ性物質を含み、前記触媒に対する還元能を有するめっき浴でストライクめっきを行い、その後、電気銅めっきを行うことを特徴とするダイレクトプレーティング方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被めっき物に触媒を付与し、次いで、銅塩、錯化剤およびアルカリ性物質を含み、前記触媒に対する還元能を有するめっき浴でストライクめっきを行い、その後、電気銅めっきを行うことを特徴とするダイレクトプレーティング方法。
【請求項2】
ストライクめっきにおける通電を、被めっき物に対して0.1〜2.0A/dmまたは0.5〜5Vで1〜10分間行うものである請求項1記載のダイレクトプレーティング方法。
【請求項3】
ストライクめっきに用いる浴の温度が、30〜70℃である請求項1または2に記載のダイレクトプレーティング方法。
【請求項4】
触媒が、パラジウム−スズコロイド触媒である請求項1ないし3のいずれかに記載のダイレクトプレーティング方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、めっきにかかる時間が従来よりも短く、しかも、確実に被めっき物にめっきすることのできるダイレクトプレーティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プラスチックめっきとしては、ABS樹脂やポリカ−ボネート/ABS樹脂などの非電導体であるプラスチックに導電化処理した後、電気めっきをして自動車部品や家庭電化製品等とする方法や、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂に銅を貼り付けた銅貼積層板(CCL)に穴を開け、そこを化学的に導電化した後、電気めっきをおこなってスルーホールプリント配線板等を製造する方法が広く知られている。
【0003】
このプラスチックめっきにおける化学的な導電化処理としては、プラスチックに無電解めっきを行う方法と、無電解めっきを利用しないで直接電気めっきを行うダイレクトプレーティング法が知られている。現状では導電化処理の信頼性が高い無電解めっき(銅またはニッケル)が主流となっているが、無電解めっきは処理時間が長く、排水処理負荷が多いため、トータルの処理時間の短縮による生産性の向上や環境負荷の軽減等のメリットのあるダイレクトプレーティング(DP)法が普及しつつある。
【0004】
しかしながら、DP法によるめっきにも次のような問題点が知られている。すなわち、プラスチック全面へめっきをする場合は、
・被めっき物の表面積が大きい場合には、硫酸銅めっき皮膜が完全に被覆されるまでに
時間が掛かる。
・治具の接点構造により被めっき物とのコンタクト度合いにばらつきが発生し、各接点
から被めっき物への硫酸銅めっきの初期析出状態もばらつく。そのため硫酸銅めっき
の膜厚がばらつくことがある。また、治具のステンレス材に銅めっきして電導性を高
める工夫をしても接点部は高濃度のクロム酸および硫酸溶液にも耐えるステンレス材
のままにする必要があり、全く効果が無い。
・被めっき物が小さく、ランナーから通電するために差込み式接点を治具として利用し
て1ラックで多量の被めっき物を処理する場合、被めっき物の総面積に対する接点の
面積比率が高くなる。また、接点数の増大により被めっき物と接点のコンタクト状態
のばらつきが比例して増大するため、接点毎で硫酸銅めっきの初期析出状態に大きな
差として現われ、硫酸銅めっき後極端には無めっきの個数が多くなる等の問題点があ
った。
【0005】
一方、スルーホールめっきの場合には、
・DP法でスルーホールめっきする場合、プラスチックめっきに比べ、非電導体素材は
穴明けされた部分と端面の樹脂部だけにめっきするだけで目的が果たせるため容易で
あるが、高い触媒濃度で処理された後導電化処理した素材に硫酸銅めっきすると銅素
材表面にも触媒が吸着されているため、泥状の粗雑な皮膜の銅めっきになりやすい
という問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、上記問題点を解決することのできる新しいダイレクトプレーティング法の提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、被めっき物に触媒を付与した後、特定のめっき浴を使用し、ストライクめっきを行うと同時に化学的な還元を行うことにより、触媒の還元と同時に銅を共析させて被めっき物の導電性を高めることができること、しかも、この処理により、その後の電気銅めっきの付き回り速度を飛躍的に改善できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は被めっき物に触媒を付与し、次いで、銅塩、錯化剤およびアルカリ性物質を含み、前記触媒に対する還元能を有するめっき浴でストライクめっきを行い、その後、電気銅めっきを行うことを特徴とするダイレクトプレーティング方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のダイレクトプレーティング方法によれば、被めっき物に触媒を付与後、特定のめっき浴でストライクめっきを行うだけの簡便な方法で、触媒の還元と同時に銅を共析させることができ、被めっき物の導電性を高めると同時にその後の電気銅めっきの付き回り速度を飛躍的に改善できる。
【0010】
従って、本発明のダイレクトプレーティング方法は、めっき時間が短縮されるだけでなく、プラスチックの全面に電気銅めっきした場合であっても無めっきの個数が少なく、また、銅張り積層板等のスルーホールにめっきを行った場合であっても、泥状の粗雑な皮膜の銅めっきとならない優れた方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のダイレクトプレーティング方法(以下、「本発明方法」という)は、被めっき物に触媒を付与後、銅塩、錯化剤およびアルカリ性物質を含み、触媒に対する還元作用を有するめっき浴でストライクめっきを行う以外は、従来より公知のダイレクトプレーティング方法と同様にして行うことができる。
【0012】
本発明方法でダイレクトプレーティングされる被めっき物としては、ABS等のプラスチック等を原料とするものが挙げられる。これらプラスチックを原料とする被めっき物としてはプラスチックの成型品や、これらプラスチックに銅を接着剤等により貼り付けた銅張り積層板等が挙げられる。
【0013】
この被めっき物に触媒を付与するには、従来公知の方法に従い、被めっき物を、触媒を含有する溶液に浸漬すればよい。被めっき物に付与する触媒としては還元性金属触媒が挙げられ、これらの中でも特にパラジウム−スズコロイド触媒が好ましい。この触媒を被めっき物に付与する条件としては公知の条件で良い。また、被めっき物に触媒を付与する前に、常法に従い界面活性剤含有のアルカリ溶液等による脱脂、カチオン性を有するアミン類等によるコンディショニング、無水クロム酸と硫酸含有のエッチング液等によるエッチング等の処理を行っても良い。
【0014】
上記のようにして触媒が付与された被めっき物は、次に、銅塩、錯化剤およびアルカリ性物質を含み、触媒に対する還元作用を有するめっき浴に浸漬し、ストライクめっきを行う。このストライクめっきにおける通電の条件としては、被めっき物に対して0.1〜2.0A/dmで、好ましくは0.1〜1.0A/dmまたは0.5〜5Vで、好ましくは0.5〜3Vで、1〜10分間、好ましくは3〜6分間めっきする条件が挙げられる。また、この通電は多種の被めっき物に対応させるため初期電流密度を低くし、それから上記時間内まで直線的に電流密度を上昇させるソフトスタートを行ってもよい。なお、被めっき物に対して2.0A/dmを超える電流密度を利用して通電すると、接点からアルカリミストを含んだ水素ガスの発生により銅の電析が阻害されることがある。このような条件でストライクめっきを行うと、接点および接点に装着された被めっき物への電流密度のばらつきが極端となり、銅めっきで被覆された部分とそうでない部分の両方が発生して、硫酸銅めっきの電流分布が1ラック中で大きな差として現れ、最悪の場合無めっきの個数が増えることがあるので好ましくない。また、このストライクめっきに用いる浴(以下、「ストライク浴」という)は、液温を30〜70℃、好ましくは40〜60℃程度にすることが好ましい。
【0015】
上記のストライク浴に含まれる銅塩としては、硫酸銅、酢酸銅、塩化銅等の無機銅塩であれば特に制限されないが、次の工程で硫酸銅めっきを行う場合には、共通塩である硫酸銅を利用するのが経済的および性能上有利なため好ましい。また、ストライク浴は、その銅塩の濃度が1g/L以上から、銅塩が析出するまでの濃度で使用することができるが、浴中の銅塩の濃度に比例して錯化剤の濃度も増加させる必要があること、均一電着性能の保持、くみ出しによる排水処理負担等の環境への影響および経済的理由により、1〜10g/Lが好ましい。
【0016】
また、ストライク浴に含まれる錯化剤としては、ロッシェル塩等の酒石酸塩、グルコン酸塩、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホニックアシド(HEDP)のアルカリ塩等の廃水処理の負担が少なく、しかも入手が容易なものを使用することができる。これら錯化剤の中でも、廃水処理の点から酒石酸塩、グルコン酸塩が好ましい。これら錯化剤のストライク浴中での濃度は10〜50g/Lであり、好ましくは20〜40g/Lである。
【0017】
更に、ストライク浴に含まれるアルカリ性物質としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。これらのアルカリ性物質の中でも水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムが好ましく、特に水酸化ナトリウム、水酸化リチウムが好ましい。また、上記アルカリ性物質は2種以上を併用してもよく、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムを併用することが好ましい。更に、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムを併用する場合にはこれらの配合割合をモル比で1:2程度とすることが好ましい。これらアルカリ性物質のストライク浴での濃度は20〜200g/Lであり、好ましくは50〜100g/Lである。
【0018】
また更に、ストライク浴には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分の他にノニオン系界面活性剤等を添加しても良い。
【0019】
上述のようにストライクめっきが施された被めっき物は、その後、常法に従って電気銅めっきが行なわれる。この電気銅めっきの条件に、特に制約はないが、例えば、装飾用硫酸銅めっき浴で初期段階の電流操作を変形した条件が好ましい。このような条件としては、3A/dm以上の電流密度で行う条件が挙げられる。また、被めっき物が大きい等の場合には、通常の3A/dm以上の電流密度でめっきを行う前に、30秒間程度の弱電解でめっきを行い、電気接点部でコゲが発生しないようにしてもよい。なお、上記のように被めっき物にストライクめっきが施してあれば、従来のように3A/dm以上の電流密度でめっきを行う前に、1A/dm以下の電流密度で全体に銅が被覆するまで2〜5分間程度弱電解でめっきを行う必要はない。
【0020】
また、本発明方法の被めっき物として、スルーホールのある銅張り積層板(CCL)等を使用し、これにダイレクトプレーティングを行う場合には、被めっき物にアクチベーター処理により触媒を付与した後に、本発明のストライク浴でストライクめっきを行う。その後の処理は常法の無電解銅めっき後の処理に従えばよい。
【0021】
以上説明した本発明方法により電気銅めっきが施された被めっき物は、その状態で最終製品となし得るが、必要により、更に、銅めっき層上に他の金属めっきを施すこともできる。具体的に、被めっき物がプラスチックの場合には、電気銅めっきが施された後、更に、ニッケルめっきやクロムめっき等を施せばよい。また、被めっき物がスルーホールのある銅張り積層板の場合には、電気銅めっきが施された後、イメージング、パターニング等の常法の回路形成方法を施せばよい。
【実施例】
【0022】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0023】
実 施 例 1
プラスチックへのダイレクトプレーティング(1):
試験片として0.2dm/個のランナー付きABS樹脂製成型品を用いた。この試験片8個を差込式接点の治具(ラック)に装着し、表1に示した条件でエッチング、触媒付与、銅ストライクめっき、硫酸銅めっき工程を行った。なお、銅ストライクめっきを行う容器には、陰・陽極の極間距離が200mmにできるポリプロピレン製槽を用いた。また、この工程の間は空気攪拌を行った。更に、陽極材料にはステンレス板に硫酸銅めっきをして通電性を改善させたものを利用した。
【0024】
【表1】


【0025】
この工程で、1ラックの試験片8個全てに硫酸銅めっきが析出し、試験片を完全に銅で被覆した。
【0026】
比 較 例 1
プラスチックへのダイレクトプレーティング:
実施例1と同じ試験片を、実施例1と同様に差込式接点の治具に装着した。これを、実施例1と同様にエッチング、触媒付与まで行った。次いで、銅ストライク浴には通電なしで浸漬を行い、その後硫酸銅めっきを15分間(5分間のソフトスタートを含む)行った。
【0027】
この工程では、1ラックの試験片8個のうち6個に硫酸銅めっきが析出しなかった。また、硫酸銅メッキが析出した試験片2個も完全に銅では被覆されていなかった。
【0028】
実 施 例 2
プラスチックへのダイレクトプレーティング(2):
実施例1と同じ試験片5個を差込式接点の治具(ラック)に装着し、実施例1と同様にエッチング、触媒付与まで行なった。次いで、下記の処理浴2に浸漬し、化学的に導電化処理した後、水洗し、下記の処理浴3中、0.4A/dmで3分間の銅ストライクめっきを行なった。その後硫酸銅めっきを15分間(2分のソフトスタートを含む)行った。
【0029】
<処理浴2>
硫酸銅5水塩 10g/L
グルコン酸ナトリウム 30g/L
水酸化カリウム 40g/L
水酸化リチウム 30g/L
<処理浴3>
硫酸銅5水和塩 15g/L
ロッシェル塩 30g/L
水酸化ナトリウム 30g/L
炭酸カリウム 150g/L
【0030】
この工程では、試験片5個全てに硫酸銅めっきが析出し、試験片を完全に銅で被覆した。
【0031】
実 施 例 3
プラスチックへのダイレクトプレーティング(3):
試験片として2dm/個の三菱レーヨン社製ユーピロンPL−2010のPC/ABS樹脂製自動車用ドアハンドルを使用した。この試験片を1個あたり上下2本ずつピン式接点の治具に取り付け、1ラックに2個装着した。実施例1と同様にエッチング、触媒付与まで行なった後、処理浴2中、1.5Vで4分の銅ストライクめっきを行い、その後、2分のソフトスタートを含め15分間硫酸銅めっきを行った。なお、銅ストライクめっきは、0.5Vでスタートし、4分間かけて1.5Vにまで電流が徐々に上昇させた。
【0032】
銅ストライク後、ドアハンドルの約50%の面積に銅めっきが析出していた。また、その後の硫酸銅めっきにより全てのドアハンドルにめっきが析出していた。
【0033】
実 施 例 4
スルーホールへのダイレクトプレーティング:
250mm×250mm×1.6mmのFR−4銅貼積層板に、穴径0.3mm、0.6mmおよび0.8mmの穴をそれぞれ640穴ドリリングしたスルーホールめっき用テストパネルを試験片として用いた。この試験片に、表2に示した条件で脱脂・コンディショニング、ソフトエッチ、プレディップ、アクチベータの各処理を施した。次いで、実施例1で用いた処理浴1を用いて1A/dmで3分間銅ストライクめっきを行った。その後、表2に示した条件でスタビライザー、硫酸銅めっき工程を行った。
【0034】
【表2】


【0035】
銅ストライク後、基板の端面および0.8mmの大きな穴が完全に銅めっきされていることが確認された。また、硫酸銅めっき後、小径の穴を検査したが全穴スルーホールボイドは無かった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のダイレクトプレーティング方法によれば、触媒付与後の被めっき物の導電性を高めると同時にその後の電気銅めっきの付き回り速度を飛躍的に改善することが可能である。
【0037】
従って、本発明のダイレクトプレーティング方法は、プラスチックの成型品や、これに銅を接着剤等により貼り付けた銅張り積層板等に銅めっきを施すに当たり、めっき時間を短縮することができるだけでなく、めっきの付き回りが良く、不良品を大幅に減少させることの方法であり、プラスチック製の自動車部品あるいは電気部品等のめっき方法として好適に用いることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は実施例1で行った試験片へのダイレクトプレーティングの結果を示す図面である。
【図2】図2は比較例1で行った試験片へのダイレクトプレーティングの結果を示す図面である。
【図3】図3は実施例2で行った試験片へのダイレクトプレーティングの結果を示す図面である。
【図4】図4は実施例3で行った試験片へのダイレクトプレーティングの結果を示す図面である。 以 上
【出願人】 【識別番号】000120386
【氏名又は名称】荏原ユージライト株式会社
【出願日】 平成18年7月31日(2006.7.31)
【代理人】 【識別番号】100086324
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 信夫


【公開番号】 特開2008−31536(P2008−31536A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−208040(P2006−208040)