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【発明の名称】 電解めっき装置および電解めっき方法
【発明者】 【氏名】柴田 覚

【氏名】森田 恵美

【氏名】瀧本 桂子

【要約】 【課題】被めっき面への気泡の滞留を確実に防止することができる電解めっき装置および電解めっき方法を提供する。

【構成】半導体基板100を支持する保持体104とめっき液102とを水平方向に相対的に移動させる。これにより、半導体基板100の表面に、半導体基板100の表面に沿った力を作用させることができる。このため、半導体基板100の被めっき面に存在する気泡を排出することができ、均一なめっき膜を安定して形成することができる。なお、保持体104とめっき液102との相対的な移動は、例えば、保持体104を水平方向に移動させる、あるいは、半導体基板100の中心以外に位置する軸心周りに保持体104を回転させることにより行うことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被めっき面を下方に向けた状態で基板をめっき液に浸漬し、前記被めっき面にめっき膜を形成する電解めっき装置において、
めっき液を収容するめっき槽と、
被めっき面を下方に向けた状態で基板を支持する保持体と、
前記保持体に支持された基板の被めっき面に導通可能に接続するカソードと、
前記めっき槽内に配置されたアノードと、
前記めっき液に浸漬された被めっき面に向けて、めっき液を噴出するめっき液供給部と、
前記めっき槽に対して前記保持体を昇降させる昇降機構と、
前記保持体に支持された基板の中央部に位置する鉛直軸心周りに、前記保持体を回転させる回転機構と、
前記被めっき面が前記めっき液に浸漬された状態で、被めっき面の全面とめっき液とを水平方向に相対的に移動させる移動機構と、
を備えたことを特徴とする電解めっき装置。
【請求項2】
前記移動機構は、前記保持体を水平方向に揺動させる請求項1記載の電解めっき装置。
【請求項3】
前記移動機構は、前記回転機構の回転軸と異なる鉛直軸心周りに、前記保持体を回転させる請求項1記載の電解めっき装置。
【請求項4】
被めっき面を下方に向けた状態で基板をめっき液に浸漬し、前記被めっき面にめっき膜を形成する電解めっき方法において、
基板の被めっき面をめっき液に浸漬する工程と、
前記被めっき面が前記めっき液に浸漬した状態で、前記被めっき面の全面とめっき液とを水平方向に相対的に移動させ、前記被めっき面とめっき液との間に存在する気泡を排除する工程と、
前記被めっき面に導通可能に接続するカソードと、前記めっき液を収容するめっき槽内に配置されたアノードとの間に電流を通電し、前記被めっき面にめっき膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする電解めっき方法。
【請求項5】
前記気泡排除が、前記基板を水平方向に揺動させることにより行われる請求項4記載の電解めっき方法。
【請求項6】
前記気泡排除が、前記基板の中央部以外に位置する鉛直軸心周りに前記基板を回転させることにより行われる請求項4記載の電解めっき方法。
【請求項7】
前記水平方向の相対的な移動により、被めっき面に接するめっき液に、めっき液1mLあたり0.047mJを超える水平方向の相対的な運動エネルギーが付与される請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の電解めっき方法。
【請求項8】
前記水平方向の相対的な移動が、前記被めっき面に向かうめっき液の上昇流を前記めっき槽内に生成した状態で行われる請求項7記載の電解めっき方法。
【請求項9】
前記めっき膜は、前記基板の中央部に位置する鉛直軸心周りに当該基板を回転させた状態で形成される請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の電解めっき方法。
【請求項10】
前記めっき膜は、前記被めっき面に向かうめっき液の上昇流に、前記基板中央部を対向させた状態で形成される請求項9記載の電解めっき方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路装置等の製造工程において、基板上に薄膜を形成する電解めっき装置および電解めっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路装置の配線材料として、アルミニウムに代えて、低抵抗であり、かつ高エレクトロマイグレーション耐性を有する銅が使用されている。このような銅配線の形成には、銅がドライエッチングによるパターン形成が困難な材質であることから、化学機械研磨法(CMP:Chemical Mechanical Polishing)が利用される。
【0003】
上述の銅配線の形成工程では、まず、半導体基板上の配線の被形成面である層間絶縁膜に、配線パターンに対応する溝が形成される。続いて、電解めっき法によって、銅が基板表面のほぼ全面に成膜され、前記溝が埋め込まれる。そして、被めっき面に対してCMPによる研磨を行って、余剰な銅を除去することで銅配線が完成される。
【0004】
以下、このような配線形成工程で用いられている従来の電解めっき装置について、半導体基板上に銅めっきを行う場合を例として図14、図15および図16を参照しながら説明する。
【0005】
図14は従来の電解めっき装置の全体構成を示す概略構成図である。また、図15は、図14に示す保持体104の断面図であり、図16は、図15の保持体104をめっき液102内に浸漬させた状態を示す断面図である。
【0006】
従来の電解めっき装置は、例えば図14に示すように、上方に開口を有し、めっき液102を収容するめっき槽101と、めっき処理対象の半導体基板100を着脱自在に支持する保持体104とを備えている。保持体104は、昇降可能に構成されたアーム122の先端に回転機構121を介して支持されており、上下方向の昇降と水平面内での回転が可能となっている。半導体基板100は、被めっき面が下方に露出する状態で保持体104に支持され、めっき液102に浸漬される。また、めっき槽101の下部には、例えば銅を主成分とする含リン銅からなるリング状のアノード105が水平に配置されている。
【0007】
図15に示すように、保持体104の下端には載置部104aが形成されており、載置部104aの上面には全周にわたってカソード103が装着されている。半導体基板100の外縁部がカソード103上に載置されると、カソード103は半導体基板100のシード層200と導通状態になる。ここで、シード層200は、スパッタリング法等により半導体基板100の被めっき面に堆積した銅の薄膜であり、めっき液102との電子の受け渡しを行う。なお、保持体104のカソード103の内縁側には、半導体基板100と載置部104aとの間に、リング状のシール部材201が装着されている。シール部材201は、めっき液102に保持体104を浸漬した際に、めっき液102が保持体104内へ進入することを防止する機能を有する。
【0008】
図14および図15に示すように、カソード103とアノード105は配線109を介して電源108に接続されている。半導体基板100の被めっき面がアノード105と対向する状態で、電源108によりカソード103とアノード105間に所定電流が通電されると、半導体基板100の表面に銅めっき膜202が形成される。
【0009】
また、図14に示すように、めっき槽101は、隔膜110により、下室101a(以下、アノード室101aと称す。)と上室101b(以下、カソード室101bと称す。)とに区分されている。アノード105はアノード室101aに配置されている。隔膜110はアノード室101a内で発生した生成物がカソード室101b内へ透過することを防止する機能を有している。また、めっき槽101の底面中央にはめっき液供給管111が接続されており、めっき液102が所定流量の上昇流として保持体104に支持された半導体基板100に向けて供給される。めっき槽101の容量を超えためっき液102は、めっき槽101の上縁からオーバーフローし、めっき槽101の外周に設けられた環状室113に流入する。環状室113に流入しためっき液102は循環配管112を通じて、タンク114に輸送される。タンク114はポンプ115を介してめっき液供給管111と連結されており、めっき液102はめっき槽101に循環供給される。
【0010】
上記構造を有する電解めっき装置においてめっき処理を行う場合、保持体104に支持された半導体基板100は、被めっき面を下方に向けた状態で上方からめっき液102に浸漬される。このような浸漬法では、図16に示すように、半導体基板100の被めっき面に気泡203が付着しやすい。被めっき面に付着した気泡203は、被めっき面への銅めっき膜202の堆積を阻害するため、被めっき面から気泡203を排除する必要がある。
【0011】
この対策として、保持体104は、水平面に対して数度程度傾斜され、かつ回転機構121により回転駆動された状態でめっき液102に浸漬される。これにより、半導体基板100は傾斜した下端側から順次めっき液102に接液するため、半導体基板100が接液する際の大気の巻き込みが抑制される。この結果、被めっき面に生成される気泡203の量を低減することができる。
【0012】
また、被めっき面の全面がめっき液102に接液した後も、回転機構121による保持体104の回転が一定時間継続される。このとき、めっき槽101内では、めっき液供給管111からめっき液102が被めっき面に向けて供給されている。その回転の作用およびめっき液102の流れの作用により、被めっき面に付着した気泡203が排除される(例えば、特許文献1等参照。)。
【0013】
被めっき面には、アノード105とカソード103との間への定電流の通電により、銅めっき膜202が堆積される。当該めっき処理は、めっき槽101内にめっき液102の上昇流を形成した状態で、保持体104を回転させながら行われる。これにより、被めっき面に接触するめっき液102は常に更新され、銅めっき膜202を安定して成長させることができるとされている。
【特許文献1】特開2001−316869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記従来の技術では、気泡203を完全に排除することが困難である。すなわち、半導体基板100の中心部からずれた位置に滞留する気泡203aは容易に排除されるが、半導体基板100の中心部に数十μm程度の大きさの気泡203bがしばしば残留するのである(図16参照)。
【0015】
上述のように、被めっき面に滞留した気泡203は、銅めっき膜202の堆積を阻害し、めっき欠け等の欠陥の原因となる。このような欠陥は、配線抵抗の上昇や配線信頼性の低下、さらには配線の断線という不具合を生じるため、半導体集積回路装置の製造歩留まりを低下させるという問題があった。
【0016】
本発明は、上記従来の事情を鑑みて提案されたものであって、被めっき面への気泡の滞留を確実に防止することができる電解めっき装置および電解めっき方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用している。すなわち、本発明に係る電解めっき装置は、めっき液を収容するめっき槽と、被めっき面を下方に向けた状態で基板を支持する保持体とを備える。カソードは、保持体に支持された基板の被めっき面に導通可能に接続されており、アノードは上記めっき槽内に配置されている。また、めっき槽には、めっき液に浸漬された被めっき面に向けて、めっき液を噴出するめっき液供給部が設けられている。上記保持体は、昇降機構により上記めっき槽に対して昇降し、回転機構により、保持体に支持された基板の中央部に位置する鉛直軸心周りに回転する。さらに、上記保持体は、移動機構により、被めっき面がめっき液に浸漬した状態で、被めっき面の全面とめっき液とを水平方向に相対的に移動することができる構成になっている。
【0018】
本構成によれば、基板の中央部に接するめっき液に、水平方向の相対的な運動エネルギーを付与することができる。これにより、基板中央部の気泡を確実に排除することができ、被めっき面に気泡が付着することを確実に防止することができる。なお、上記移動機構は、例えば、上記保持体を水平方向に揺動させる機構や、上記回転機構の回転軸と異なる鉛直軸心周りに、上記保持体を回転させる機構を採用することができる。
【0019】
一方、他の観点では、本発明は、電解めっき方法を提供することができる。すなわち、本発明に係る電解めっき方法は、被めっき面を下方に向けた状態で基板をめっき液に浸漬し、被めっき面にめっき膜を形成する電解めっき方法であり、まず、基板の被めっき面をめっき液に浸漬する。次いで、被めっき面がめっき液に浸漬した状態で、前記被めっき面の全面とめっき液とを水平方向に相対的に移動させ、被めっき面とめっき液との間に存在する気泡を排除する。また、基板に導通可能に接続されたカソードと、前記めっき液を収容するめっき槽内に配置されたアノードとの間に電流を通電し、前記被めっき面にめっき膜を形成する。
【0020】
上記気泡排除工程において、被めっき面の全面とめっき液とを水平方向に相対的に移動させる方式としては、例えば、上記基板を水平方向に揺動させる方式や、基板の中央部以外の鉛直軸心周りに上記基板を回転させる方式を採用することができる。上記水平方向の相対的な移動では、上記被めっき面に接するめっき液に、めっき液1mLあたり0.047mJを超える水平方向の相対的な運動エネルギーが付与されることが好ましい。また、上記水平方向の相対的な移動は、上記めっき槽内に、被めっき面に向かうめっき液の上昇流が形成された状態で行われてもよい。この場合、めっき液流の運動エネルギーも、上記相対的な運動エネルギーに含まれる。
【0021】
また、上記めっき膜は、上記基板の中央部に位置する鉛直軸心周りに当該基板を回転させながら形成されることが好ましく、さらに、被めっき面に向かうめっき液の上昇流に、基板中央部を対向させた状態で形成されることが好ましい。これにより、気泡のない被めっき面に均一なめっき膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、半導体基板の中央部に対して、半導体基板の表面と平行な方向に力を作用させることができる。このため、半導体基板の被めっき面に気泡が付着することを確実に防止でき、製造歩留まりを改善できるとともに、均一なめっき膜を形成することができるという、優れた効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の実施形態では、銅めっき膜を形成する電解めっき装置および電解めっき方法として本発明を具体化している。
【0024】
まず、本発明の原理について説明する。図1は、図14から図16に示した従来の電界めっき装置において、異なる条件で気泡排除を行った後、同一のめっき処理条件で半導体基板100上に形成されためっき膜に発生した凹型欠陥の分布を示す図である。ここで、凹型欠陥は、数十μm程度の気泡が付着した部分に銅めっき膜が堆積できないことに起因して発生するめっき欠け等の欠陥を指す。なお、各欠陥分布は、形成された銅めっき膜の表面をレーザー散乱式欠陥検査装置で観察することにより取得したものであり、凹部欠陥を黒丸として図示している。また、図1(a)、図1(b)、図1(c)は、接液時と接液後とで保持体104を同一の回転数で回転させて気泡除去を行った場合の欠陥分布である。各図における保持体104の回転数は、それぞれ、125rpm、60rpm、30rpmである。また、図1(d)における保持体104の回転数は、接液時が125rpmであり、接液後が30rpmである。
【0025】
図1(a)および図1(b)に示すように、接液時および接液後の保持体104の回転数が125rpmまたは60rpmである場合、半導体基板100の中央部だけで凹型欠陥が検出される。これに対し、接液時および接液後の保持体104の回転数が30rpmである場合、図1(c)に示すように、凹型欠陥は半導体基板100の中央部だけでなく全面で検出される。一方、接液時に保持体104の回転数が図1(a)と同じ125rpmである場合でも、接液後に30rpmまで回転数を低下させると、図1(d)に示すように、凹型欠陥は半導体基板100の全面で検出される。
【0026】
したがって、半導体基板100の中央部以外に形成される凹部欠陥は、接液時の回転数ではなく、接液後の回転数に依存して形成されていることが理解できる。すなわち、接液時の保持体104の回転数に関わらず、気泡は被めっき面に滞留しており、接液後の保持体104の回転数を60rpm以上にすることによって、半導体基板100の中央部以外の気泡が排除されているのである。
【0027】
なお、図14に示す従来の電解めっき装置が備える隔膜110は、循環の過程でめっき液102中に発生した気泡がカソード室101bへ透過することを防止する機能も有している。このため、被めっき面に存在する気泡は、半導体基板100が接液するときに半導体基板100の周囲の大気を巻き込んで発生した気泡であるといえる。
【0028】
以上のことから、保持体104を60rpmの回転数で回転させたときに半導体基板100の中央部以外に存在する気泡に加わる力を作用させることにより、半導体基板100の中央部に付着した気泡を排除することができる。すなわち、半導体基板100の中央部に付着した気泡を排除するには、保持体104が60rpmの回転数で回転する場合に、中央部以外の気泡に接するめっき液102の相対的な運動エネルギーと同等の運動エネルギーを中央部の気泡に接するめっき液102に付与すればよい。
【0029】
ここで、めっき液102対して、水平方向にどれだけの運動エネルギーを付与すれば気泡が排除されるかを、図2を参照しながら説明する。図2は、半導体基板100表面上の任意の点400に対するめっき液102の相対速度を示す平面図である。図2に示すように、点400に対するめっき液102の相対速度Vは、半導体基板100の半径方向外向きの相対速度V1と接線方向の相対速度V2とを合成した速度となる。ここで、相対速度V1は、めっき槽101内の上昇流により生じる被めっき面に沿っためっき液102の液流に起因する相対速度である。また、相対速度V2は、回転機構121による半導体基板100の回転に起因する相対速度V2である。なお、ここでは、半導体基板100は、平面視において反時計回りに回転している。
【0030】
この場合、相対速度Vは、次の式(1)により求めることができる。
【0031】
【数1】


【0032】
上記液流に起因するめっき液の相対速度V1は、(めっき液流量)/(めっき液が通過する断面積)により求めることができる。ここで、半導体基板100の下方から供給されるめっき液102は、半導体基板100の中央部において面積が1cm2の領域に衝突し、その後、半導体基板100の半径方向に等方的に進行すると仮定する。この場合、めっき液の流量v(L/min)、および半導体基板100の中心からの点400までの距離r(cm)を用いて、相対速度V1(m/s)は次の式(2)で表される。
【0033】
【数2】


【0034】
また、保持体104の回転数をn(rpm)とすると、相対速度V2(m/s)は式(3)で表すことができる。
【0035】
【数3】


【0036】
上記式(2)および式(3)を式(1)に代入すると、次の式(4)が得られる。
【0037】
【数4】


【0038】
したがって、半導体基板100の表面上の任意の点400に対するめっき液1mLあたりの運動エネルギーKは、メッキ液102の比重mを用いて、次の式(5)で求めることができる。
【0039】
【数5】


【0040】
式(5)によれば、比重m、めっき液流量v、回転数nが定数である場合、半導体基板100の中央部以外の領域では、中心からの距離rが大きい程、運動エネルギーKが大きくなる。したがって、凹型欠陥が発生していて、中心からの距離rが最も大きくなる図1(d)に示す点300におけるめっき液1mLあたりの運動エネルギーより大きい運動エネルギーを付与することにより、任意の点400に存在する気泡を排除できることになる。
【0041】
図1(d)では、比重m=1.15、めっき液流量v=6L/min、距離r=9.11cm、回転数n=30rpmであるので、点300における運動エネルギーKは、式(5)により、0.047mJとなる。
【0042】
したがって、半導体基板100の被めっき面に存在する気泡に対して、被めっき面に平行な方向にめっき液1mLあたり0.047mJを超える運動エネルギーを付与すれば、気泡を排除することができる。すなわち、被めっき面がめっき液102に浸漬された状態で、被めっき面の全面とめっき液102とを水平方向に相対的に移動させることにより、気泡に接するめっき液102に当該運動エネルギーを付与すればよい。
【0043】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態における電解めっき装置および電解めっき方法について図面を参照しながら詳細に説明する。図3は本実施形態における電解めっき装置を示す要部構成図である。なお、図3は保持体104がめっき液102に接液する前の状態を示している。また、図4は、保持体104がめっき液102に接液した状態にある、本実施形態における電解めっき装置を示す要部構成図である。
【0044】
図3に示すように、本実施形態の電解めっき装置は、回転機構121が、アーム122に沿って水平方向に移動可能な移動機構123を介して、アーム122に支持されている点が従来の電解めっき装置と異なる。他の構成は、従来の電解めっき装置と同様である。なお、以下では、図14から図16に示した従来の電解めっき装置と同一の作用効果を奏する部材に同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0045】
本実施形態に係る電解めっき装置において銅めっき膜を形成する場合、従来同様、半導体基板100は、被めっき面を露出した状態で保持体104に設置される。ここでは、半導体基板100の被めっき面には、シード層200として100nm程度の銅膜が形成されている。
【0046】
半導体基板100が配置された保持体104は、半導体基板100の被めっき面が下方を向いた状態で回転機構121に支持されており、昇降可能に設けられたアーム122の下降につれてめっき槽101に収容されためっき液102に浸漬される。従来と同様、保持体104をめっき液102に接液する際、保持体104は、半導体基板100の被めっき面が水平面に対して2°以上傾く状態に傾斜されるとともに、回転機構121により回転される。また、めっき槽101内では、めっき液供給管111(めっき液供給部)からめっき液102が上昇流として供給されている。なお、本実施形態では、めっき槽101は上方に開口を有する円筒形状であり、その底面の中心にめっき液供給管111が配置されている。また、めっき槽101は、隔膜110により下部のアノード室101aと上部のカソード室101bに区分されており、アノード室101aに銅を主成分とする含リン銅からなるアノード105が水平に配置されている。
【0047】
半導体基板100の被めっき面がめっき液102に浸漬された後、本実施形態の電解めっき装置は、図4に示すように、移動機構123により保持体104を水平方向に揺動するとともに、回転機構121により保持体104を回転させる。このとき、半導体基板100の中央部に接するめっき液102には、図5に示すように、揺動にともなう相対速度V3が生じる。なお、図5では、揺動における半導体基板100の中心の軌跡を1点鎖線500で示している。
【0048】
また、図4および図5に示すように、揺動の過程では、半導体基板100の中央部は、めっき槽101の中央からずれた位置にある。上述のように、めっき液102は、めっき槽101の中央部にて上昇流を形成し、半導体基板100に衝突した後、半導体基板100の周辺部へ流れている。そのため、本実施形態の電解めっき装置では、半導体基板100がめっき槽101の中央部からずれた位置にあるときに、半導体基板100の中央部に接するめっき液102には、被めっき面の表面の平行な方向にめっき液流に起因する相対速度V1が生じる。したがって、半導体基板100の中央部に対するめっき液102の相対速度VAは、相対速度V1と相対速度V3の合成速度になる。
【0049】
また、図5では、半導体基板100が、実線で示す位置から点線で示す位置へ移動するときに、めっき液流によるめっき液102の相対速度V1と、揺動によるめっき液102の相対速度V3とが、同一方向となり相対速度VAは最大になる。このとき、半導体基板100の中央部に接するめっき液102の半導体基板100に対する、めっき液1mLあたりの水平方向の相対的な運動エネルギーKAは、半導体基板100の中心とめっき槽101中心との間の距離r1を用いて、次の式(6)で表すことができる。
【0050】
【数6】


【0051】
上述したように、式(6)に示す運動エネルギーKAが0.047mJより大きければ、半導体基板100の中央部に存在する気泡を排除することができる。すなわち、以下の式(7)を満足する、比重m、めっき液流量v、距離r1を選択し、保持体104をめっき液102中で回転させながら、水平方向に揺動させることで、半導体基板100の中央部の気泡を確実に排除することができる。
【0052】
【数7】


【0053】
したがって、式(7)を満足する条件下の揺動によれば、図6の断面図に示すように、半導体基板100の中央部に存在する気泡203bに、めっき液1mLあたり0.047mJを超える水平方向の運動エネルギーを有するめっき液102が作用する。この結果、気泡203bを排除することができる。なお、半導体基板100の中央部以外に存在する気泡203aにも、めっき液1mLあたり0.047mJを超える水平方向の運動エネルギーを有するめっき液102が作用するため、同様に排除される。
【0054】
なお、めっき槽101内に配置されたアノード105と、半導体基板100のシード層200と導通状態にあるカソード103との間に電圧を印加する電源108は、半導体基板100がめっき液に接液する直前にオン状態になる。そして、半導体基板100が接液した直後に、アノード105とカソード103との間に定電流が通電され、被めっき面に銅めっき膜が堆積する。当該めっき処理では、移動機構123による保持体104の揺動は停止され、回転機構121による保持体104の回転のみが継続された状態で、かつめっき槽101内にめっき液102の上昇流が生成された状態で行われる。これにより、凹型欠陥のない均一な銅めっき膜を形成することができる。
【0055】
また、アノード105がめっき槽101の全域にわたって配置されていない場合、保持体104がめっき槽101の中央部からずれた状態で停止していると、図7に示すように、アノード105と被めっき面との間の電気力線(破線800)の分布に偏りが生じる。その電気力線の偏りを回避するため、めっき処理時には、半導体基板100の中央部が、めっき液供給管111の真上、すなわち、めっき槽101の中心に固定されることが好ましい。これにより、被めっき面に対してより均一にめっき膜を堆積することができる。
【0056】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、保持体を水平方向に揺動する移動機構を備えた電解めっき処理装置を説明した。しかしながら、移動機構は、被めっき面がめっき液に浸漬された状態で、被めっき面の全面とめっき液とを水平方向に相対的に移動させることが可能であればよい。そこで、第2の実施形態では、他の構成の移動機構を備えた電解めっき装置および当該装置を用いた電解めっき方法について説明する。
【0057】
図8は、本実施形態における電解めっき装置を示す要部構成図である。なお、図8は、保持体104がめっき液102に接液する前の状態を示している。また、図9は、保持体104がめっき液102に接液した状態にある、本実施形態における電解めっき装置を示す要部構成図である。
【0058】
図8に示すように、本実施形態の電解めっき装置は、移動機構として、保持体104を回転機構121の回転軸と異なる鉛直軸心周りに回転させる第2の回転機構124(以下、公転機構124という。)を備えている。特に限定されるものではないが、本実施形態では、公転機構124の回転軸の側面に回転機構121を支持する構成を採用している。また、本実施形態では、公転機構124は、昇降可能に構成されたアーム122に、アーム122沿って移動可能な状態で支持されている。なお、第1の実施形態と同様に、以下では、図14から図16に示した従来の電解めっき装置と同一の作用効果を奏する部材に同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0059】
本実施形態に係る電解めっき装置においてめっき膜を形成する場合、第1の実施形態と同様に、半導体基板100は、シード層200が形成された被めっき面を露出した状態で保持体104に設置される。
【0060】
半導体基板100が配置された保持体104は、半導体基板100の被めっき面が下方を向いた状態で回転機構121に支持されており、昇降可能に設けられたアーム122の下降につれてめっき槽101に収容されためっき液102に浸漬される。第1の実施形態と同様に、保持体104をめっき液102に接液する際、保持体104は、半導体基板100の被めっき面が水平面に対して2°以上傾く状態に傾斜されるとともに、回転機構121により回転される。また、めっき槽101内では、めっき液供給管111からめっき液102が上昇流として供給されている。なお、第1の実施形態と同様に、めっき槽101は上方に開口を有する円筒形状であり、その底面の中心にめっき液供給管111が配置されている。
【0061】
半導体基板100の被めっき面がめっき液102に浸漬された後、本実施形態の電解めっき装置は、図9に示すように、公転機構124により保持体104を回転軸601を軸として水平面内で回転させるとともに、回転機構121により保持体104を回転軸600を軸として回転させる。このとき、半導体基板100の中央部に接するめっき液102には、図10に示すように、公転機構124による回転にともなう相対速度V4が生じる。なお、図10では、公転機構124による回転における半導体基板100の中心の軌跡を1点鎖線700で示している。
【0062】
また、図9および図10に示すように、公転機構124による回転の過程では、半導体基板100の中央部は、めっき槽101の中央からずれた位置にある。上述のように、めっき液102は、めっき槽101の中央部にて上昇流を形成し、半導体基板100に衝突した後、半導体基板100の周辺部へ流れている。そのため、本実施形態の電解めっき装置では、半導体基板100の中央部に接するめっき液102には、被めっき面の表面の平行な方向にめっき液流に起因する相対速度V1が生じる。したがって、半導体基板100の中央部に対するめっき液102の相対速度VBは、相対速度V1と相対速度V4の合成速度になる。このとき、半導体基板100の中央部に接するめっき液102の半導体基板100に対する、めっき液1mLあたりの水平方向の相対的な運動エネルギーKBは、公転機構124の回転軸601から回転機構121の回転軸600までの距離r2(cm)、および公転機構124の回転数n2(rpm)を用いて、次の式(8)で表すことができる。
【0063】
【数8】


【0064】
上述したように、式(8)に示す運動エネルギーKBが0.047mJより大きければ、半導体基板100の中央部に付着した気泡を排除することができる。すなわち、以下の式(7)を満足する、比重m、めっき液流量v、距離r2、回転数n2を選択し、保持体104をめっき液102中で回転させながら、公転機構124により回転させることで、半導体基板100の中央部の気泡を確実に排除することができる。
【0065】
【数9】


【0066】
したがって、式(9)を満足する条件下の気泡排除によれば、図11の断面図に示すように、半導体基板100の中央部に存在する気泡203bに、めっき液1mLあたり0.047mJを超える水平方向の運動エネルギーを有するめっき液102が作用する。この結果、気泡203bを排除することができる。なお、半導体基板100の中央部以外に存在する気泡203aにも、めっき液1mLあたり0.047mJを超える水平方向の運動エネルギーを有するめっき液102が作用するため、同様に排除される。
【0067】
なお、めっき槽101内に配置されたアノード105と、半導体基板100のシード層200と導通状態にあるカソード103との間に電圧を印加する電源108は、半導体基板100がめっき液に接液する直前にオン状態になる。そして、半導体基板100が接液した直後に、アノード105とカソード103との間に定電流が通電され、被めっき面に銅めっき膜が堆積する。当該めっき処理は、公転機構124による保持体104の回転が停止され、回転機構121による保持体104の回転のみを継続した状態で、かつめっき槽101内にめっき液102の上昇流が形成された状態で行われる。これにより、凹型欠陥のない均一な銅めっき膜を形成することができる。
【0068】
また、アノード105がめっき槽101の全域にわたって配置されていない場合、保持体104がめっき槽101の中央部からずれた状態で停止していると、図12に示すように、アノード105と被めっき面との間の電気力線(破線900)の分布に偏りが生じる。その電気力線の偏りを回避するため、めっき処理時には、図13に示すように、公転機構124をアーム122に沿って移動させ、半導体基板100の中央部をめっき液供給管111の真上、すなわち、めっき槽101の中心に固定することが好ましい。これにより図13に破線901で示すように、アノード105と被めっき面との間の電気力線に偏りを生じることなく、被めっき面に対してより均一にめっき膜を堆積することができる。
【0069】
なお、上記公転機構124の回転軸の位置により、めっき槽101内で保持体104を回転させることができない場合は、公転機構124は、保持体104を、めっき槽101内に位置する円弧部分を往復させる動作を行ってもよい。
【0070】
以上説明したように、本発明によれば、半導体基板の中央部に対して、半導体基板表面と平行な方向に力を作用させることができる。このため、半導体基板の被めっき面に気泡が付着することを確実に防止でき、均一なめっき膜を形成することができる。
【0071】
なお、本発明は、以上で説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲において、種々の変形および応用が可能である。例えば、被めっき面がめっき液に浸漬された状態で、被めっき面の全面とめっき液とを水平方向に相対的に移動させる構成は上述の揺動や公転に限定されるものではなく、他の態様を採用してもよい。
【0072】
また、上記では、半導体基板に銅めっきを行う事例を説明したが、本発明を適用可能なめっき対象物、並びに、めっき材料がこれらに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、めっき欠け等の欠陥の発生を確実に防止できるという効果を有し、電解めっき装置および電解めっき方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】異なる条件で気泡排除処理を行った場合の凹型欠陥分布を示す図
【図2】半導体基板上の任意点に作用するめっき液の相対速度を示す平面図
【図3】本発明の第1の実施形態における電解めっき装置を示す要部構成図
【図4】本発明の第1の実施形態における電解めっき装置を示す要部構成図
【図5】本発明の第1の実施形態における半導体基板の中央部に作用するめっき液の相対速度を示す平面図
【図6】本発明の第1の実施形態におけるめっき液に浸漬した保持体を示す断面図
【図7】本発明の第1の実施形態における電気力線の分布を示す断面図
【図8】本発明の第2の実施形態における電解めっき装置を示す要部構成図
【図9】本発明の第2の実施形態における電解めっき装置を示す要部構成図
【図10】本発明の第2の実施形態における半導体基板の中央部に作用するめっき液の相対速度を示す平面図
【図11】本発明の第2の実施形態におけるめっき液に浸漬した保持体を示す断面図
【図12】本発明の第2の実施形態における電気力線の分布を示す断面図
【図13】本発明の第2の実施形態における電気力線の分布を示す断面図
【図14】従来の電解めっき装置の概略構成図
【図15】従来の電解めっき装置の保持体の断面図
【図16】従来の電解めっき装置におけるめっき液に浸漬した保持体を示す断面図
【符号の説明】
【0075】
100 半導体基板
101 めっき槽
102 めっき液
103 カソード
104 保持体
105 アノード
108 電源
110 隔膜
111 めっき液供給部
200 シード層
201 シール部材
202 銅めっき膜
203a 半導体基板の中央部以外の気泡
203b 半導体基板の中央部の気泡

【出願人】 【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【出願日】 平成18年7月14日(2006.7.14)
【代理人】 【識別番号】100083172
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 豊明


【公開番号】 特開2008−19496(P2008−19496A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−194398(P2006−194398)