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【発明の名称】 電気複合めっき線材、電気複合めっき線材の製造方法及び製造装置
【発明者】 【氏名】江平 淳

【氏名】村上 亮

【氏名】小浦 延幸

【氏名】宇井 幸一

【要約】 【課題】線材の長さ方向における電気伝導性に優れた電気複合めっき線材、電気複合めっき線材の製造方法及び電気複合めっき線材の製造装置を提供すること。

【構成】長軸と短軸の長さ比が10以上の微粒子をその長軸方向が電気複合めっき線材長さ方向に沿うように含有している電気複合めっき被膜を線材表面に形成して成る電気複合めっき線材。該線材は、有底容器12と筒状陽極14を備えるめっき液槽10、複合めっき液流れ制御手段20及び線材走行制御手段30を具備し、複合めっき液流れ制御手段20が筒状陽極14内で複合めっき液4を一方向に流し、線材走行制御手段30が筒状陽極14内で複合めっき液4の流れと同一又は逆方向に線材2を走行させる装置を用いることによって製造する電気複合めっき線材製造方法および該製造装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材の表面に電気複合めっき被膜を形成して成る電気複合めっき線材であって、
上記電気複合めっき被膜は、長軸と短軸との長さ比が10以上である微粒子を、該微粒子の長軸方向が当該電気複合めっき線材の長さ方向に沿うように含有していることを特徴とする電気複合めっき線材。
【請求項2】
上記微粒子は、ナノカーボンであり、該ナノカーボンが、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー及びカーボンナノホーンから成る群より選ばれた少なくとも1種のナノカーボンを含有することを特徴とする請求項1に記載の電気複合めっき線材。
【請求項3】
上記カーボンナノチューブは、直径が1〜100nmであり、且つ長さが1〜100μmであり、且つアスペクト比が10〜100であるカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項2に記載の電気複合めっき線材。
【請求項4】
上記線材が、銅、銅基合金、アルミニウム及びアルミニウム基合金から成る群より選ばれた少なくとも1種の線材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の電気複合めっき線材。
【請求項5】
長軸と短軸との長さ比が10以上である微粒子を含有する電気複合めっき被膜を線材の表面に形成して成る電気複合めっき線材を電気複合めっきによって製造するに当たり、
長軸と短軸との長さ比が10以上である微粒子と金属イオンとを含有する複合めっき液と、線材と、を用い、
上記複合めっき液を一方向に流し、その流れと同一又は逆方向に上記線材を走行させることを特徴とする電気複合めっき線材の製造方法。
【請求項6】
上記複合めっき液は、長軸と短軸との長さ比が10以上である微粒子、アルミニウムハロゲン化物、1,3−ジアルキルイミダゾリウムハロゲン化物及び/又はモノアルキルピリジニウムハロゲン化物を含有し、
上記アルミニウムハロゲン化物と、上記1,3−ジアルキルイミダゾリウムハロゲン化物及び/又は上記モノアルキルピリジニウムハロゲン化物とをモル比で20:80〜80:20の割合で含有し、
上記1,3−ジアルキルイミダゾリウムハロゲン化物が、炭素数1〜12のアルキル基を有し、
上記モノアルキルピリジニウムハロゲン化物が、炭素数1〜12のアルキル基を有する、ことを特徴とする請求項5に記載の電気複合めっき線材の製造方法。
【請求項7】
有底容器と筒状陽極とを備えるめっき液槽と、
複合めっき液流れ制御手段と、
線材走行制御手段と、
を具備する電気複合めっき線材の製造装置であって、
上記複合めっき液流れ制御手段が、上記筒状陽極内で、複合めっき液を一方向に流し、
上記線材走行制御手段が、上記筒状陽極内で、上記複合めっきの流れと同一又は逆方向に線材を走行させる、ことを特徴とする電気複合めっき線材の製造装置。
【請求項8】
電気複合めっき被膜の原料を供給する原料供給手段を更に備えることを特徴とする請求項7に記載の電気複合めっき線材の製造装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、電気複合めっき線材、電気複合めっき線材の製造方法及び製造装置に係り、更に詳細には、所定形状の微粒子を所定の状態で含有する電気複合めっき被膜を線材の表面に形成して成り、線材の長さ方向における電気伝導性に優れた電気複合めっき線材、電気複合めっき線材の製造方法及び電気複合めっき線材の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、線材に連続的に電気めっきを施す手段として、直線めっき法、ケンモア法及び横型回転法などのめっき法が知られている。
また、電気複合めっき法においては、プロペラ撹拌法やポンプ循環法、エア撹拌法などを適用して、金属イオンを含む複合めっき液中の微粒子を均一に分散させながら、被めっき金属材料を浸漬する方法が一般的に行われている。
【0003】
そして、電気複合めっき法において、複合めっき液を容器底面に吹き当てながら送入し、微粒子を均一に分散させながら、送入された複合めっき液を容器内面と挿入された陽極又は陰極との間の流路から上昇させ、両極間に電流を流す方法が提案されている(特許文献1参照。)。
また、線材の電気めっき装置としては、めっき液槽内を回転する送線ドラムを用いて線材を螺旋移動させる装置が提案されている(特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平7−157899号公報
【特許文献2】特開平5−222580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の電気複合めっき装置においては、線材への適用を考慮した装置構成となっておらず、優れた電気伝導性を有する電気複合めっき線材を製造することができなかった。
また、上記特許文献2に記載の電気めっき装置においては、電気複合めっきについて何らの検討もなされておらず、そのめっき液槽も従来からのものを用いているため、線材の長さ方向において優れた電気伝導性を有する電気複合めっき線材を製造することが困難であった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的をするところは、線材の長さ方向における電気伝導性に優れた電気複合めっき線材、電気複合めっき線材の製造方法及び電気複合めっき線材の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねたところ、長軸と短軸との長さ比が10以上である微粒子をその微粒子の長軸方向が当該電気複合めっき線材の長さ方向に沿うように含有している電気複合めっき被膜を、線材の表面に形成することなどにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の電気複合めっき線材は、線材の表面に電気複合めっき被膜を形成して成る電気複合めっき線材であって、その電気複合めっき被膜は、長軸と短軸との長さ比が10以上である微粒子を、微粒子の長軸方向が電気複合めっき線材の長さ方向に沿うように含有していることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の電気複合めっき線材の製造方法は、長軸と短軸との長さ比が10以上である微粒子を含有する電気複合めっき被膜を、線材の表面に形成して成る電気複合めっき線材を電気複合めっきによって製造するに当たり、長軸と短軸との長さ比が10以上である微粒子と金属イオンとを含有する複合めっき液と、線材とを用い、複合めっき液を一方向に流し、その流れと同一又は逆方向に線材を走行させることを特徴とする。
【0009】
更に、本発明の電気複合めっき線材の製造装置は、有底容器と筒状陽極とを備えるめっき液槽と、複合めっき液流れ制御手段と、線材走行制御手段とを具備する電気複合めっき線材の製造装置であって、複合めっき液流れ制御手段が、筒状陽極内で複合めっき液を一方向に流し、線材走行制御手段が、筒状陽極内で複合めっきの流れと同一又は逆方向に線材を走行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長軸と短軸との長さ比が10以上である微粒子をその微粒子の長軸方向が当該電気複合めっき線材の長さ方向に沿うように含有している電気複合めっき被膜を、線材の表面に形成することなどとしたため、線材の長さ方向における電気伝導性に優れた電気複合めっき線材、電気複合めっき線材の製造方法及び電気複合めっき線材の製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の電気複合めっき線材について詳細に説明する。なお、本明細書において濃度及び含有量などについての「%」は、特記しない限り質量百分率を表わすものとする。
上述の如く、本発明の電気複合めっき線材は、線材の表面に電気複合めっき被膜を形成して成る電気複合めっき線材であって、電気複合めっき被膜は、長軸と短軸との長さ比が10以上である微粒子を、該微粒子の長軸方向が当該電気複合めっき線材の長さ方向に沿うように含有している。
このような構成とすることにより、優れた電気伝導性を有する電気複合めっき線材となる。また、副次的な効果として、熱伝導性を向上させることもできる。
【0012】
ここで、電気複合めっき被膜に含まれる微粒子の長軸と短軸との長さ比が10未満であると、電気伝導性の向上効果が小さいものとなる。
また、電気複合めっき被膜内において、所定の微粒子(例えば針状微粒子など。)が、その長軸方向が電気複合めっき線材の長さ方向に沿うように含まれていない場合、換言すれば、その長軸方向が電気複合めっき線材の長さに方向に配向せずに含まれている場合、更に換言すれば、その長軸方向が電気複合めっき線材の長さ方向に対して等方的に含まれている場合には、優れた電気伝導性を有する電気複合めっき線材とはならない。
【0013】
また、本発明において、上述の微粒子としては、特に限定されるものではないが、例えばナノカーボンを用いることができる。具体的には、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー又はカーボンナノホーン、及びこれらの任意の組み合せに係る混合物を挙げることができる。
【0014】
更に、本発明において、上述のカーボンナノチューブとしては、特に限定されるものではないが、例えば直径が1〜100nmであり、且つ長さが1〜100μmであり、且つアスペクト比が10〜100であるものを用いることが好ましい。
ここで、「アスペクト比」とは、カーボンナノチューブの長軸と短軸との長さ比(長軸長さ/短軸長さ)をいう。
また、カーボンナノチューブは、一般的に短軸方向より長軸方向において電気伝導性に優れており、これを長軸配向して含有する複合めっき被膜は長軸方向における電気伝導性に優れたものとなる。
【0015】
ここで、カーボンナノチューブの直径が1nm未満では、詳しくは後述するが、電気複合めっき被膜を形成する際に、凝集し易くなり沈降が起こり易いため、電気複合めっき被膜中に十分に取り込まれないことがある。一方、100nm超でも、沈降が起こり易いため、電気複合めっき被膜中に十分に取り込まれないことがある。
また、カーボンナノチューブの長さが1μm未満でも、直径が1nm未満の場合と同様に凝集し易くなり沈降が起こり易いため、電気複合めっき被膜中に十分に取り込まれないことがある。一方、100μm超でも、直経が100nm超の場合と同様に凝集し易くなり沈降が起こり易いため、電気複合めっき被膜中に十分に取り込まれないことがある。
更に、カーボンナノチューブのアスペクト比が10未満の場合には、長軸方向と短軸方向における物性の違いが小さくなるため、長軸方向を電気複合めっき線材の長さ方向に配向させた際の向上効果があまり大きくならず、アスペクト比が100超の場合には、カーボンナノチューブ同士が絡み合い凝集し易くなり、長軸方向を電気複合めっき線材の長さ方向に配向させ難くなる。
なお、カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブのいずれを用いてもよく、適宜混合して用いてもよい。
【0016】
更にまた、本発明において、上述の線材としては、例えば銅、銅基合金、アルミニウム又はアルミニウム基合金のいずれかを好適に用いることができる。特に線材を電線として使用する場合には優れた電気伝導率の観点から銅やアルミニウムを用いることが好ましい。しかしながら、これらに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0017】
次に、本発明の電気複合めっき線材の製造方法について詳細に説明する。
上述の如く、本発明の電気複合めっき線材の製造方法は、長軸と短軸との長さ比が10以上である微粒子を含有する電気複合めっき被膜を、線材の表面に形成して成る電気複合めっき線材を電気複合めっきによって製造するに当たり、長軸と短軸との長さ比が10以上である微粒子と金属イオンとを含有する複合めっき液と、線材とを用い、複合めっき液を一方向に流し、その流れと同一又は逆方向に線材を走行させ、所望の電気複合めっき線材を得る製造方法である。
このように複合めっき液の流れを一方向に制御し、めっき液の流れと同一又は逆方向に線材を走行させることにより、電気複合めっき被膜中において、上述の微粒子が、その微粒子の長軸方向を電気複合めっき線材の長さ方向に配向させて含有させることができる。
【0018】
また、電気複合めっき被膜中の微粒子(例えばナノカーボンなど。)の含有量は、複合めっき液中の微粒子の懸濁・分散濃度の上昇とともに増加するが、複合めっき被膜の電気伝導性などは、その含有率と相関性を有するので、各種の複合めっき液で最適な電解電流密度や電解時間を選択する必要がある。もちろん、複合めっき液中の微粒子は、均一分散していることが望ましい。
更に、電流密度を高くして生産性を向上させる場合には、複合めっき液の流速と、線材の走行速度との相対速度を大きくすることが効果的であり、複合めっき液の流れ方向と逆方向に線材を走行させることが好ましい。
更にまた、電気複合めっき法については、例えば直流及びパルス電流のいずれか一方又は双方などにより、浴温0〜300℃、電流密度0.01〜20,000mA/cmの電解条件で線材の表面に電気複合めっき被膜を形成することができるが、これに限定されるものでないことは言うまでもない。
なお、めっき作業時の雰囲気は、乾燥無酸素雰囲気中で行うことが望ましい。
【0019】
また、本発明において、例えば上述の複合めっき液として、長軸と短軸との長さ比が10以上である微粒子と、アルミニウムハロゲン化物と、1,3−ジアルキルイミダゾリウムハロゲン化物及びモノアルキルピリジニウムハロゲン化物のいずれか一方又は双方とを含有し、このような1,3−ジアルキルイミダゾリウムハロゲン化物が炭素数1〜12のアルキル基を有し、モノアルキルピリジニウムハロゲン化物が炭素数1〜12のアルキル基を有するものを用いる場合には、このようなアルミニウムハロゲン化物と、1,3−ジアルキルイミダゾリウムハロゲン化物及びモノアルキルピリジニウムハロゲン化物のいずれか一方又は双方とを、モル比で20:80〜80:20の割合で含有するものを用いることが、取り扱いや微粒子の分散性の観点から望ましいが、このような複合めっき液に限定されるものではない。即ち、ベンゼン、トルエン、o‐キシレン、m‐キシレン、p‐キシレンなどのような有機溶媒を所定の微粒子等を分散させるものとして用いることもできる。
【0020】
このような割合を満たさない場合には、めっき液の粘性が高く、めっき液として不向きであり、優れた電気伝導性を有する電気複合めっき線材が得られにくい。
また、1,3−ジアルキルイミダゾリウムハロゲン化物やモノアルキルピリジニウムハロゲン化物が炭素数1〜12のアルキル基を有さない場合には、常温で溶融せず、めっき液にならないか、仮に温度を上げて溶融させても、めっき液の粘性が高く、めっき液として不向きであり、優れた電気伝導性を柚須売る電気複合めっき線材が得られにくい。
なお、1,3−ジアルキルイミダゾリウムハロゲン化物及びモノアルキルピリジニウムハロゲン化物は、上記の割合を満たす範囲で、それぞれ単独で又は適宜混合して用いると、いわゆる常温溶融塩(イオン液体)となり好ましい。
【0021】
ここで、アルミニウムハロゲン化物と1,3−ジアルキルイミダゾリウムハロゲン化物及びモノアルキルピリジニウムハロゲン化物の一方又は双方との合計体積に対して、0.01〜50g/Lの割合で所定の微粒子(例えばナノカーボンなど。)を含有することが好ましく、0.01〜20g/Lの割合で微粒子を含有することがより好ましい。
含有する微粒子の割合が0.01g/L未満の場合には、複合めっき被膜に取り込まれる微粒子の量が少なくなり、所望の特性を得難くなる。一方、含有する微粒子の割合が50g/Lを超えると、めっき浴槽における微粒子の濃度が高まり、微粒子が凝集して沈降することがあり、また、めっき液槽から線材を引き上げる際に、分散している微粒子が余分に付着してしまうことがある。
また、用いるアルミニウムハロゲン化物としては、特に限定されるものではないが、例えば塩化アルミニウム(AlCl)を使用することが好ましく、特に無水AlClを好適に使用することができる。
更に、用いる1,3−ジアルキルイミダゾリウムハロゲン化物としては、上述の如く、炭素数が1〜12のアルキル基を少なくとも1つ有せば、特に限定されるものではないが、例えば炭素数が1〜5のアルキル基を1つ有することが好ましく、2つ有することがより好ましい。具体的には、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(以下、「EMIC」と略記する。)を好適に使用することができる。なお、2つのアルキル基は同一でも異なってもよい。
更にまた、用いるモノアルキルピリジニウムハロゲン化物としては、上述の如く、炭素数が1〜12のアルキル基を有せば、特に限定されるものではないが、例えば炭素数が1〜5のアルキル基を1つ有することが好ましい。具体的には、1−ブチルピリジニウムクロリド(以下、「BPC」と略記する。)を好適に使用することができる。
【0022】
次に、本発明の電気複合めっき線材の製造装置について詳細に説明する。
図1は、本発明の電気複合めっき線材の製造装置の一実施形態を示す構成図である。同図に示すように、本実施形態の製造装置は、有底容器12と筒型陽極14とを備えるめっき液槽10と、複合めっき液循環用ポンプ22と、線材取り出し給電ドラム32と、線材巻き取り給電ドラム34と、線材支持絶縁性ロール36と、線材誘導絶縁性ロール38と、を具備する。また、必要に応じて具備する原料供給手段40を更に備える。なお、めっき液槽10内には、所望の濃度の複合めっき液4が満たされている。
【0023】
そして、複合めっき液循環用ポンプ22は、その駆動により、図中破線矢印で示すように、筒状陽極14内での複合めっき液4の流れを一方向に制御して、複合めっき液流れ制御手段20として機能する。
また、本実施形態においては、複合めっき液循環用ポンプ22に、複合めっき液流れ制御手段20として機能させるだけでなく、複合めっき液中の微粒子を均一分散させる撹拌手段として機能させることもできる。なお、撹拌機能を有する手段は別途設けてもよい。
【0024】
また、線材取り出し給電ドラム32から取り出された線材2は、図中実線矢印で示すように、線材誘導絶縁性ロール38により、筒状陽極14内に導かれ、複合めっき液4と逆方向に走行し、線材支持絶縁性ロール36にて一旦折り返した後、再度、線材誘導絶縁性ロール38により、筒状陽極14内に導かれ、複合めっき液4と逆方向に走行し、線材巻き取り給電ドラム34で巻き取られる。即ち、線材取り出し給電ドラム32と線材誘導絶縁性ロール38と線材支持絶縁性ロール36と線材巻き取り給電ドラム34とが協働して、線材走行制御手段30として機能する。
【0025】
このように、線材2の走行方向と複合めっき液4と流れ方向とが逆である筒状陽極14内において、線材2に連続的に電気複合めっきが施され、微粒子の長軸方向が線材の長さ方向に配向した状態で微粒子が含有される電気複合めっき線材が得られる。
また、筒状陽極14を用いて電気複合めっきを施すと、電流密度を高めることができ、生産性を向上させることができる。更に、筒状陽極14により、線材2の表面へ均一な電気複合めっき被膜が形成されるという効果も得られる。
なお、原料供給手段40は、めっき液槽10内に複合めっき被膜の原料となる金属イオンや所定の微粒子などを供給しながら、所望の濃度に調整する。これにより、線材に対して、更に連続的に電気複合めっきを施すことができる。
また、めっき液槽10は、少なくとも1つの有底容器12と少なくとも1つ以上の筒状陽極を備え、複合めっき液流れを制御し得れば、その形状については特に限定されるものではない。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこのような実施例に限定されるものではない。
具体的には、以下の各例に記載したような操作を行い、電気複合めっき線材を作製し、その性能を評価した。
【0027】
(実施例1)
まず、AlClとEMICとをモル比で2:1となるように秤量し、撹拌しながら混合した。次に、完全に溶融したものにAl線を1週間以上浸す置換法によって精製した。しかる後、これに、多層カーボンナノチューブ(MWCNT:チューブ径1.2〜20nm、チューブ長さ2〜5μm)を、10.0g/Lとなるように添加して、複合めっき液を調製して、用意した。また、線材として、銅線(銅含有量:99.96%、線径:1mm)を用意した。
次に、図1に示すような、電気複合めっき線材の製造装置のめっき液槽に上述した複合めっき液を満たし、線材取り出し給電ドラムなどの線材走行制御手段に上述した線材を配置した。なお、筒状陽極としては、アルミニウム製のパイプ(内径:10mm)を用いた。
しかる後、複合めっき液を十分に撹拌すると共に、複合めっき液を一方向へと流し、その流れと逆方向に線材を走行させながら、定電流電解を行い、線材の表面に電気複合めっきを施し、本例の電気複合めっき線材を得た(線材の表面には、厚さ100μmのアルミニウム/カーボンナノチューブ複合めっき被膜が形成されている。従って、電気複合めっき線材の約30体積%がめっき被膜により占められている。更に、めっき被膜を電子顕微鏡により観察したところ、図2に示すように、電気複合めっき線材の長さ方向にカーボンナノチューブの長軸が配向していることが確認された。)。
なお、電解条件は、浴温度:30℃、電流密度:10,000mA/cm、電析電気量:50C/cmとした。
また、電気複合めっき中は、上述したAlClとEMICと多層カーボンナノチューブとを適宜供給して、所望の濃度となるように調整した。
【0028】
(比較例1)
複合めっき液を意図的に一方向に流さず、アルゴンガスによるガス撹拌のみで複合めっき液を撹拌しながら、定電流電解を行い、線材の表面に電気複合めっきを施した以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の電気複合めっき線材を得た(線材の表面には、厚さ100μmのアルミニウム/カーボンナノチューブ複合めっき被膜が形成されている。従って、電気複合めっき線材の約30体積%がめっき被膜により占められている。更に、めっき被膜を電子顕微鏡により観察したところ、図3に示すように、電気複合めっき線材の長さ方向にカーボンナノチューブの長軸が配向しておらず、ランダムにめっき被膜に取り込まれていることが確認された。)。
【0029】
(比較例2)
めっき液へカーボンナノチューブの添加を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の電気めっき線材を得た(線材の表面には、厚さ100μmのアルミニウムめっき被膜が形成されている。従って、電気めっき線材の約30体積%がめっき被膜により占められている。)。
【0030】
[性能評価]
上記各例の電気複合めっき線材又は電気めっき線材に対して、線材の長さ方向の体積電気抵抗率、比重及びカーボン含有量を測定した。得られた結果を表1に示す。
ここで、体積電気抵抗率は、4端子法により測定した。また、比重はアルキメデス法により測定した。更に、カーボン含有量は、燃焼−赤外線吸収法により測定した。更にまた、複合めっき被膜中のカーボン含有量は、各例の電気複合めっき線材のカーボン含有量から計算により算出した。
また、実施例1において、めっき厚み(100μm)を得るための線材走行速度を基準値100としたときの各例の相対値を表1に併記する。
【0031】
【表1】


【0032】
表1より、本発明の範囲に属する実施例1は、本発明外である比較例1と比較して、カーボン含有量は同じであるにもかかわらず、電気抵抗率が低いことが確認された。
また、本発明外である比較例1は、本発明の範囲に属する実施例1と比較して、電流密度が低くなってしまうため、同じめっき厚み(100μm)を得るために線材走行速度を低下させる必要があった。従って、本発明の範囲に属する実施例1は、本発明外である比較例1と比較して、生産性が高いと言える。
【0033】
以上、本発明を若干の実施形態及び実施例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
例えば、上記の実施例では、微粒子としてナノカーボンを用いる場合について説明したが、長軸配向させてめっき被膜に含有させることによって、電気的、熱的、磁気的及び機械的性能などを向上させ得る他の異方性材料においても、本発明の製造方法を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の電気複合めっき線材の製造装置の一実施形態を示す構成図である。
【図2】実施例1に係る電気複合めっき線材の一部を示す斜視説明図である。
【図3】比較例1に係る電気複合めっき線材の一部を示す斜視説明図である。
【符号の説明】
【0035】
2 線材
4 複合めっき液
10 めっき液槽
12 有底容器
14 筒状陽極
20 複合めっき液流れ制御手段
22 複合めっき液循環用ポンプ
30 線材走行制御手段
32 線材取り出し給電ドラム
34 線材巻き取り給電ドラム
36 線材支持絶縁性ロール
38 線材誘導絶縁性ロール
40 原料供給手段
50 電気複合めっき線材
52 銅線
54 電気複合めっき被膜
56 カーボンナノチューブ
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【識別番号】000184078
【氏名又は名称】小浦 延幸
【出願日】 平成18年7月11日(2006.7.11)
【代理人】 【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲


【公開番号】 特開2008−19456(P2008−19456A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−190012(P2006−190012)