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【発明の名称】 めっき装置
【発明者】 【氏名】山本 渡

【氏名】濱崎 久美

【氏名】星野 芳明

【要約】 【課題】バレルめっき装置のドラム内部の被処理物に流れる電流の変動、および、バレルめっき装置のドラム内部のめっき液の状態を再現して、これらがめっき皮膜の形成に及ぼす影響について試験を行うことができるめっき装置を提供する。

【構成】本発明のめっき装置1は、めっき液を貯留し、摺動板13a,13aによって形成された隙間13Sが設けられた遮蔽板13によって第1の貯留部と第2の貯留部とに区分されためっき槽10と、第1の貯留部に垂直状態で配置され、側壁部21に開口部26を有し、該側壁部21が隙間13Sを閉塞するように摺動板13a,13aに当接して回転するドラム20と、ドラム20の内部に配置されて回転する被めっき物30と、ドラム20と被めっき物30とを互いに回転速度差を持たせて回転駆動させる駆動機構40と、第2の貯留部に配置される陽極50と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液を貯留し、隙間が設けられた遮蔽板によって第1の貯留部と第2の貯留部とに区分されためっき槽と、
前記第1の貯留部に垂直状態で配置され、側壁部に1つ以上の開口部を有し、該側壁部が前記隙間を閉塞するように前記遮蔽板に当接して回転するドラムと、
前記ドラムの内部に配置されて回転する被めっき物と、
前記ドラムと前記被めっき物とを互いに回転速度差を持たせて回転駆動させる駆動機構と、
前記第2の貯留部に配置される陽極と、
を備えることを特徴とするめっき装置。
【請求項2】
前記被めっき物は、その表面に形成されるめっき皮膜の均一電着性を測定する金属片であることを特徴とする請求項1に記載のめっき装置。
【請求項3】
めっき液を貯留し、隙間が設けられた遮蔽板によって第1の貯留部と第2の貯留部とに区分されためっき槽と、
前記第1の貯留部に垂直状態で配置され、側壁部に1つ以上の開口部を有し、該側壁部が前記隙間を閉塞するように前記遮蔽板に当接して回転するドラムと、
前記ドラムを回転駆動させる駆動機構と、
前記第2の貯留部に配置される陽極と、
前記ドラムの内部に配置され、めっき皮膜が形成される被めっき面の背面にひずみゲージが取り付けられた陰極板と、
前記ひずみゲージに接続され、前記陰極板に形成されるめっき皮膜の内部応力を測定する内部応力測定装置と、
を備えることを特徴とするめっき装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置に関し、さらに詳細には、小物部品等をめっきするバレルめっき装置のドラム内部の状態を再現して試験を行うことができるめっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小物部品等をめっきするバレルめっき装置としては、内部に被処理物(例えば、電子部品や機械部品等)を収容して水平状態で回転可能に支持されたドラムと、このドラムを浸漬させるめっき液を貯留しためっき槽と、ドラム内部に配置される陰極と、陰極とはドラムを間に挟むようにしてめっき槽の内に配置された陽極とを備えるバレルめっき装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなバレルめっき装置は、被処理物を収容したドラムを、めっき液を貯留しためっき槽内に浸漬してモータ等により回転を付与させながら、めっき槽内に配置された陽極とドラム内部に配置された陰極との間を通電してめっきを行うものである。
【0004】
バレルめっき装置のドラム内部に収容される個々の被処理物は、ドラムの回転により、例えば、図10(a)に示すように、表面層(P)からドラムDの側壁部分に落下して(P)、下方から内部に潜り込み(P)、他の被処理物Pと揉み合って再び表面層(P)に現れるという動きを繰り返している。
この時、個々の被処理物に流れる電流は、図10(b)に示すように、表面層(P)で最大となり、内部(P)でほとんどゼロになるという変動を繰り返している。
【0005】
また、バレルめっき装置のドラムの側壁部には、被処理物をドラム内部に保持しつつ、めっき液を通過させるための開口部、例えば、メッシュやスリット、小孔等が形成されている。しかし、被処理物の微細化に伴って、これらをドラム内部に保持するため、メッシュの目の大きさやスリットの幅、小孔の径等も微細化されているので、ドラム内部へのめっき液の出入りが不十分となり、めっきを行っていくうちにドラム内部のめっき液の組成が徐々に変化することになる。
【特許文献1】特開2005−42140号公報(段落0022〜0023、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記したような現象は、被処理物表面のめっき皮膜の形成に影響を及ぼすと考えられる。すなわち、バレルめっき装置のドラム内部の被処理物に流れる電流の変動は、めっき皮膜の膜厚にばらつきを生じさせ、ドラム内部のめっき液の組成の変化は、めっき皮膜の特性に変化を生じさせることになると考えられる。
【0007】
しかしながら、従来はバレルめっき装置のドラム内部の被処理物に流れる電流の変動、および、バレルめっき装置のドラム内部のめっき液の状態を再現して試験を行うことができるめっき装置がなく、例えば、電流密度の大きさや電流の流し方(例えば、直流、交流、パルス等)をどのような条件に設定すればその影響を最小限にできるのか等について試験を行うことができなかった。
【0008】
また、生産用のバレルめっき装置を用いて、そのドラム内部に製品となる被処理物を収容し、実際に運転を行うという試験を、条件を変化させながら何度か繰り返すことで最適な運転条件を設定することもできると考えられるが経済的ではない。
【0009】
そこで、本発明は、バレルめっき装置のドラム内部の被処理物に流れる電流の変動、および、バレルめっき装置のドラム内部のめっき液の状態を再現して、これらがめっき皮膜の形成に及ぼす影響について試験を行うことができるめっき装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明に係るめっき装置は、めっき液を貯留し、隙間が設けられた遮蔽板によって第1の貯留部と第2の貯留部とに区分されためっき槽と、第1の貯留部に垂直状態で配置され、側壁部に1つ以上の開口部を有し、該側壁部が隙間を閉塞するように遮蔽板に当接して回転するドラムと、ドラムの内部に配置されて回転する被めっき物と、ドラムと被めっき物とを互いに回転速度差を持たせて回転駆動させる駆動機構と、第2の貯留部に配置される陽極と、を備えることを特徴とする。
【0011】
このようなめっき装置によれば、隙間が設けられた遮蔽板によって第1の貯留部と第2の貯留部とに区分されためっき槽と、第1の貯留部に垂直状態で配置され、側壁部に1つ以上の開口部を有し、該側壁部が隙間を閉塞するように遮蔽板に当接して回転するドラムと、ドラムの内部に配置される被めっき物と、ドラムを回転駆動させる駆動機構と、第2の貯留部に配置される陽極とを備えるから、バレルめっき装置のドラム内部の被処理物に流れる電流の変動、および、バレルめっき装置のドラム内部のめっき液の状態を再現することができる。
【0012】
すなわち、遮蔽板の隙間とドラムの側壁部に設けられた開口部とが完全に一致するときは、被めっき物と陽極との間に流れる電流値は最大となる。駆動機構によってドラムが回転し、遮蔽板の隙間とドラムの側壁部に設けられた開口部との一致部分が狭くなっていくことで、被めっき物と陽極との間に流れる電流値が減少していき、遮蔽板の隙間をドラムの側壁部が完全に閉塞するとき(遮蔽板の隙間とドラムの側壁部に設けられた開口部とが全く重なり合わないとき)は、被めっき物と陽極との間に電流がほとんど流れなくなるので、電流値はほとんどゼロになる。さらにドラムが回転して、遮蔽板の隙間とドラムの側壁部に設けられた開口部とが再び重なり合い、その部分が広くなっていくことで、被めっき物と陽極との間に流れる電流値が増加していき、遮蔽板の隙間とドラムの側壁部に設けられた開口部とが再び完全に一致することで、被めっき物と陽極との間に流れる電流値は最大となる。このような動作を繰り返すことで、バレルめっき装置のドラム内部の被処理物に流れる電流の変動が再現されることになる。
【0013】
また、ドラムの側壁部に設けられた開口部を、例えば、メッシュやスリット、小孔等とすることで、ドラムの内部へのめっき液の出入りを不十分にすることができる。この状態で、めっき装置を運転してドラムの内部に配置された被めっき物にめっき皮膜を形成させると、バレルめっき装置のドラム内部と同様に、ドラムの内部のめっき液の組成が徐々に変化することになる。このようにして、バレルめっき装置のドラム内部のめっき液の状態が再現されることになる。
【0014】
また、このようなめっき装置によれば、ドラムと被めっき物とを互いに回転速度差を持たせて回転駆動させる駆動機構を備えるから、めっき皮膜を被めっき物の全周面に均一に形成させることができる。
【0015】
すなわち、ドラムと被めっき物とが同じ速度で回転する場合(または、被めっき物が回転しない場合)、例えば、遮蔽板の隙間とドラムの側壁部に設けられた開口部とが完全に一致したとき、被めっき物の陽極との対向面は、常に同一面となり、めっき皮膜がこの面に厚く形成されることになる。しかしながら、ドラムと被めっき物とが互いに回転速度差を持って回転する場合、例えば、遮蔽板の隙間とドラムの側壁部に設けられた開口部とが完全に一致するたびに、被めっき物の陽極との対向面が、前に一致したときの対向面とは異なるので、めっき装置の連続運転によって、めっき皮膜が被めっき物の全周面に均一に形成されることになる。
【0016】
したがって、このように構成されためっき装置は、バレルめっき装置のドラム内部の被処理物に流れる電流の変動、および、バレルめっき装置のドラム内部のめっき液の状態を再現しつつ、めっき皮膜を被めっき物の全周面に均一に形成させることができる。
【0017】
また、本発明に係るめっき装置の被めっき物は、その表面に形成されるめっき皮膜の均一電着性を測定する金属片であることを特徴とする。
【0018】
このように構成されためっき装置は、バレルめっき装置のドラム内部の被処理物に流れる電流の変動、および、バレルめっき装置のドラム内部のめっき液の状態を再現して、これらがめっき皮膜の均一電着性に及ぼす影響について試験を行うことができる。
【0019】
また、本発明に係るめっき装置は、めっき液を貯留し、隙間が設けられた遮蔽板によって第1の貯留部と第2の貯留部とに区分されためっき槽と、第1の貯留部に垂直状態で配置され、側壁部に1つ以上の開口部を有し、該側壁部が隙間を閉塞するように遮蔽板に当接して回転するドラムと、ドラムを回転駆動させる駆動機構と、第2の貯留部に配置される陽極と、ドラムの内部に配置され、めっき皮膜が形成される被めっき面の背面にひずみゲージが取り付けられた陰極板と、ひずみゲージに接続され、陰極板に形成されるめっき皮膜の内部応力を測定する内部応力測定装置と、を備えることを特徴とする。
【0020】
このようなめっき装置によれば、隙間が設けられた遮蔽板によって第1の貯留部と第2の貯留部とに区分されためっき槽と、第1の貯留部に垂直状態で配置され、側壁部に1つ以上の開口部を有し、該側壁部が隙間を閉塞するように遮蔽板に当接して回転するドラムと、ドラムを回転駆動させる駆動機構と、第2の貯留部に配置される陽極と、ドラムの内部に配置された陰極板とを備えるから、バレルめっき装置のドラム内部の被処理物に流れる電流の変動、および、バレルめっき装置のドラム内部のめっき液の状態を再現することができる。
【0021】
また、このようなめっき装置によれば、ドラムの内部に配置され、めっき皮膜が形成される被めっき面の背面にひずみゲージが取り付けられた陰極板と、ひずみゲージに接続され、陰極板に形成されるめっき皮膜の内部応力を測定する内部応力測定装置とを備えるから、めっき液の組成が変化する状況下における、電流の変動がめっき皮膜の内部応力に及ぼす影響について調べることができる。
【0022】
したがって、このように構成されためっき装置は、バレルめっき装置のドラム内部の被処理物に流れる電流の変動、および、バレルめっき装置のドラム内部のめっき液の状態を再現して、これらがめっき皮膜の内部応力に及ぼす影響について試験を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、バレルめっき装置のドラム内部の被処理物に流れる電流の変動、および、バレルめっき装置のドラム内部のめっき液の状態を再現して、これらがめっき皮膜の形成に及ぼす影響について試験を行うことができる。これにより、例えば、めっき液の組成が変化する状況下で、バレルめっき装置のドラム内部の被処理物に通電する電流密度の大きさや電流の流し方等について最適な条件を設定することができる。
【0024】
また、電流の変動の周期、例えば、図10(b)に示す波形の山と山の間隔は、バレルめっき装置のドラム内部において、表面層にあった被処理物が、再び表面層に現れるまでの周期(混合周期という。)に相当するので、本発明によれば、被処理物の混合周期を再現することができる。これにより、バレルめっき装置のドラムの回転速度や回転数等を設定することができる。
【0025】
また、本発明によれば、ドラムが垂直状態で配置され、その上部に被めっき物を内部に配置(収容)するための開口が形成されているので、ドラムの内部のめっき液を容易に採取することができる。このような構成により、例えば、ドラムの内部のめっき液の組成とドラムの外部のめっき液の組成とをそれぞれ分析して比較することや、ドラムの内部のめっき液のめっき開始からの組成の変化の分析等を行い易くなっている。
【0026】
さらに、本発明によれば、バレルめっき装置のドラム内部の被処理物に流れる電流の変動、および、バレルめっき装置のドラム内部のめっき液の状態を再現することができるので、生産用のバレルめっき装置や製品となる被処理物を用いることなく、バレルめっき装置の運転条件(例えば、電流密度の大きさや電流の流し方、ドラムの回転速度や回転数等)を設定することができ、経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
[第1実施形態]
第1実施形態に係るめっき装置1について、適宜図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係るめっき装置を示す全体斜視図であり、図2は、第1実施形態に係るめっき装置を示す分解斜視図である。
【0029】
第1実施形態に係るめっき装置1は、被めっき物30をめっきするための装置であり、図1に示すように、めっき液(図示せず)を貯留し、遮蔽板13によって第1の貯留部と第2の貯留部とに区分されためっき槽10と、側壁部21に開口部26を有し、回転するドラム20と、回転する被めっき物30と、ドラム20と被めっき物30とを互いに回転速度差を持たせて回転駆動させる駆動機構40と、陽極50とから概ね構成されている。
【0030】
図2に示すように、ドラム20は、めっき槽10の第1の貯留部11aに垂直状態で、側壁部21が隙間13Sを閉塞するように配置される。被めっき物30は、ドラム20の内部に配置される。駆動機構40は、ドラム20の上部に接続され、めっき槽10と並んで配置される。陽極50は、めっき槽10の第2の貯留部11bに、ドラム20(被めっき物30)と対向するように配置される。
【0031】
以下、めっき装置1の各部について、適宜図1乃至図7を参照しながら詳細に説明する。
図3は、第1実施形態に係るめっき装置を構成するめっき槽を示す斜視図(a)および平面図(b)である。図4は、第1実施形態に係るめっき装置を構成するドラムを示す分解斜視図である。図5は、第1実施形態に係るめっき装置のドラムの内部に配置されるベントカソードを示す側面図(a)および正面図(b)である。図6は、第1実施形態に係るめっき装置を示す一部断面部分を含む正面図である。図7は、第1実施形態に係るめっき装置を構成する駆動機構の一部および被めっき物に電流を供給するための構成を示す分解斜視図である。
【0032】
<めっき槽10>
めっき槽10は、めっき液(図示せず)を貯留するための水槽であり、図3に示すように、貯留部11と、基台12と、遮蔽板13と、摺動板13a,13aとから構成されている。
【0033】
貯留部11は、めっき液を貯留する水槽部分であり、アクリル樹脂を用いて、上部が開口した四角筒状に形成されている。
なお、貯留部11の形状は四角筒状に限定されず、例えば、円筒状であってもよい。
【0034】
基台12は、貯留部11を支持する台であり、貯留部11と一体に形成されている。この基台12には、必要に応じて、例えば、めっき液を加熱・保温するためのヒータや、めっき液を供給するための流入口、めっき液を排出するための排出口等の1つ以上を備えてもよい。
【0035】
遮蔽板13は、貯留部11を、ドラム20が配置される部分(第1の貯留部11a)と陽極50が配置される部分(第2の貯留部11b)とに区分する部材であり、アクリル樹脂を用いて、略コの字形状(図6参照)の平板体として形成されている。この遮蔽板13は、貯留部11の内壁に設けられたガイド溝11cに摺動させて、貯留部11の内部に設置・固定されている。
なお、遮蔽板13は、略コの字形状の平板体に限定されず、例えば、側面視L字形状として下部を合成樹脂製のネジで貯留部11に固定してもよいし、貯留部11と一体に形成してもよい。
【0036】
摺動板13a,13aは、ドラム20と当接する部材であり(図3(b)参照)、例えば、フッ素樹脂等を用いて、柔軟性を有する薄い平板状に形成されている。
この摺動板13a,13aは、遮蔽板13にスリット状の隙間13Sを形成するように合成樹脂製のネジ14,14・・・で平行に取り付けられている。
摺動板13aは、柔軟性を有するので、ドラム20が隙間13Sを閉塞するように当接してもドラム20の回転が妨げられない構成となっている。
なお、摺動板13a,13aは必ずしも設ける必要はなく、ドラム20の回転を妨げることがなければ、ドラム20が隙間13Sを形成した遮蔽板13(図示せず)に直接当接する構成としてもよい。
【0037】
<ドラム20>
ドラム20は、後記する被めっき物30を内部に配置する筒状の容器であり、アクリル樹脂を用いて、図4に示すように、側壁部21と、上端部22と、下端部23とを有する円筒状に形成され、めっき槽10の内部に垂直状態で、側壁部21が隙間13Sを閉塞するように摺動板13a,13aに当接して回転可能に配置されている(図2,図3(b)参照)。
なお、ドラム20の形状は円筒状に限定されず、例えば、多角形筒状であってもよい。
【0038】
側壁部21には、側壁孔21aが設けられ、この側壁孔21aを覆うようにめっき液を通過させるための通液部24aを有するアクリル樹脂製の孔蓋24が、合成樹脂製のネジ25,25・・・で着脱自在(交換可能)に取り付けられている。なお、側壁孔21aと通液部24aとによって形成されためっき液を通過させるための部分を開口部26とする。
【0039】
本実施形態では、図4に示すように、通液部24aがメッシュとなっているが、これに限定されず、試験の目的や対象となるバレルめっき装置のドラムに合わせて、例えば、スリットや小孔等とすることもできる。また、メッシュの目の大きさ、スリットの幅、小孔の径等も、試験の目的や対象となるバレルめっき装置のドラムに合わせて適宜選択することができる。
また、開口部26を2つ以上形成してもよいし、側壁部21に直接通液部24a(メッシュ)を設けて開口部26としてもよい。
さらに、側壁孔21aに、孔蓋24を取り付けない構成としてもよい。この場合でも、バレルめっき装置のドラム内部の被処理物に流れる電流の変動を再現することができる。
【0040】
上端部22および下端部23は、両端が開口した円筒状の側壁部21の上端および下端を閉塞してドラム20が容器状となるように、例えば、耐薬品性の接着剤や合成樹脂製のネジ等(図示せず)で取り付けられる円板状の部材である。
なお、上端部22および下端部23の形状は円板状に限定されず、ドラム20の形状に合わせて適宜決定される。
【0041】
上端部22には、被めっき物30をドラム20の内部に配置するための開口となる筒状の円筒部22aが設けられている。この円筒部22aの外壁部分には、後記する駆動機構40のギア423に形成された雌ネジ部と螺合する雄ネジ部が形成されている(図4参照)。
なお、本実施形態では、被めっき物30をドラム20の内部に配置するための開口となる部分を円筒部22aとして円筒状に形成しているが、これに限定されず、ドラム20が駆動機構40のギア423に接続・固定される構成(ネジ構造に限定されない)であれば、例えば、多角形筒状に形成してもよい。
【0042】
本実施形態では、めっき槽10およびドラム20を、主にアクリル樹脂で形成しているが、これに限定されず、アクリル樹脂と同等以上の耐薬品性や耐熱性、硬度を備える合成樹脂系の材料、例えば、ポリプロピレン樹脂やフッ素樹脂等を用いて形成してもよい。
【0043】
<被めっき物30>
被めっき物30は、本実施形態においては、めっき皮膜の均一電着性を測定するためのベントカソードと呼ばれる金属片であり、銅板を、図5に示すように、中間部32aを略コの字形状に折り曲げるとともに、先端部32bを上向きに45°の角度をなすように折り曲げた形状に形成されている。このベントカソード31は、試験部32と掛着部33とから構成され、少なくとも試験部32がドラム20の内部でめっき液に浸漬するように配置されている。
なお、ベントカソード31は銅製に限定されず、例えば、黄銅や鉄、アルミニウム等、試験の目的やバレルめっき装置のドラム内部に収容される被処理物の材質等に合わせて適宜選択することができる。
【0044】
試験部32は、ドラム20の内部でめっき液に浸漬するように配置されることで、めっき皮膜が形成される部分であり(中間部32aおよび先端部32bを含む)、めっき後(試験後)は長板形状に引き伸ばされる。この時、めっき皮膜が均一に形成されていなければ、めっき面にクラックや色の違い等が発生することになるので、めっき皮膜の均一電着性を評価することができる。
【0045】
掛着部33は、後記する支持棒61に掛着して、ベントカソード31をドラム20の内部に吊設するための部分であり、試験部32と一体に形成されている。なお、掛着部33の表面に絶縁塗料等を塗布して、めっき皮膜が形成されないようにしてもよい。
【0046】
なお、本実施形態では、めっき皮膜の均一電着性を測定するための金属片(ベントカソード31)を被めっき物30としているが、被めっき物30は、このような試験用の金属片に限定されるものではない。例えば、電子部品や機械部品等の一般的な被処理物を用いることもできる。
【0047】
<駆動機構40>
駆動機構40は、ドラム20と被めっき物30とを互いに回転駆動差を持たせて回転駆動させるための動力源と動力伝達手段であり、図6に示すように、モータ41と、ギア421,422,423と、プーリ431,432と、ベルト44とから概ね構成されている。この駆動機構40の各部は、図6に示すように、モータ41はめっき槽10と並んで配置されるハウジング45の内部に、ギア421,422,423はハウジング45の上面に取り付けられた下部支持板46と上部支持板47との間に、プーリ431,432とベルト44は上部支持板47の上部にそれぞれ配置されている。
【0048】
モータ41は、ドラム20と被めっき物30とを回転駆動させるための動力源であり、アクリル樹脂製のハウジング45の内部に、駆動軸41aを上方に向けて配置されている。
駆動軸41aは、ギア421に接続し、ギア421は金属製のネジ48,48によって、プーリ431と接続している。これにより、モータ41は、ギア421とプーリ431を同時に回転させることができるようになっている。
【0049】
ギア421,422,423は、モータ41の回転をドラム20に伝達するための手段であり、例えば、ポリプロピレン樹脂等を用いて形成されている。
ギア421は、モータ41の駆動軸41aに接続され、上部にプーリ431を取り付けるためのネジ孔を備えた台部421aが形成されている。このギア421は、モータ41の回転をギア422に伝達することで、ギア422を回転させるものである。
ギア422は、ギア421の回転をギア423に伝達することで、ギア423を回転させるものである。
ギア423は、内側部分に雌ネジ部(図示せず)を有する環状体として形成され、ドラム20の円筒部22aに形成された雄ネジ部と螺合することでドラム20と接続される構成となっている(図4参照)。
【0050】
以上のような構成により、モータ41の駆動軸41aおよびギア421の回転が、ギア422を介してギア423に伝達され、ギア423に接続されたドラム20を回転駆動させることができるようになっている。
【0051】
プーリ431,432は、モータ41の回転を被めっき物30(ベントカソード31)に伝達するための手段であり、例えば、ポリプロピレン樹脂等を用いて形成されている。このプーリ431,432は、それぞれ、図6に示すように、一体に形成された、短径部431a,432aと、長径部431b,432bとから構成されている。
プーリ431は、金属製のネジ48,48によってギア421の台部421aに接続・固定され、ギア421と一体に回転するようになっている。
プーリ432は、環状(または筒状)に形成され、図7に示すように、上部支持板47に形成された立上がり円筒部47aに被嵌するフランジ付き円筒49に被嵌して回転可能に設置されている。また、プーリ432には、後記する支持棒61を設置・固定するための溝432cが、短径部432aと長径部432bのそれぞれに形成されている。
【0052】
ベルト44は、プーリ431の回転をプーリ432に伝達するための部材であり、例えば、ゴム材料等を用いて断面視略円形状の環状体として形成され、図6に示すように、プーリ431の短径部431aとプーリ432の長径部432bに掛架されている。
【0053】
以上のような構成により、モータ41の駆動軸41aおよびプーリ431の回転が、ベルト44を介してプーリ432に伝達されてプーリ432を回転させ、このプーリ432に固定された支持棒61に掛着された被めっき物30(ベントカソード31)を回転駆動させることができるようになっている。
【0054】
ところで、ベルト44を、プーリ431の短径部431aとプーリ432の長径部432b、または、プーリ431の長径部431bとプーリ432の短径部432a、に掛架して、モータ41(駆動軸41a)を回転させると、プーリ432はプーリ431(モータ41)とは異なる回転速度で回転することになる。また、ベルト44を、プーリ431の短径部431aとプーリ432の短径部432a、または、プーリ431の長径部431bとプーリ432の長径部432b、に掛架して、モータ41を回転させると、プーリ432はプーリ431(モータ41)と同じ回転速度で回転することになる。
このように、駆動機構40は、ベルト44を、プーリ431,432のどこに掛架するかによって、プーリ432、すなわち、被めっき物30(ベントカソード31)の回転速度を調整することができる。
【0055】
このような構成を利用して、駆動機構40は、ドラム20と被めっき物30(ベントカソード31)とに回転速度差を持たせて回転駆動させることができるようになっている。すなわち、ギア421,422,423によって回転するドラム20の回転速度は不変であるが、ベルト44を掛架する部分によって被めっき物30(ベントカソード31)の回転速度を調整することができるので、ドラム20とは異なる回転速度で被めっき物30(ベントカソード31)を回転させることができる。
【0056】
なお、本実施形態では、2つのプーリ431,432しか備えていないが、これに限定されず、短径部と長径部の径がプーリ431,432とは異なるプーリ(図示せず)を、プーリ431,432とは別にあらかじめ用意しておいてもよい。これらを自在に組み合わせることにより、被めっき物30(ベントカソード31)の回転速度をきめ細かく調整することができる。
【0057】
ハウジング45は、モータ41を収容するとともに、駆動機構40の基台となる筐体であり、アクリル樹脂を用いて、上面にモータ41の駆動軸41aを通す孔や、下部支持板46および上部支持板47を取り付けるためのネジ孔(図示せず)を有する箱状に形成されている。
【0058】
下部支持板46および上部支持板47は、ギア421,422,423およびプーリ431,432を支持・設置するための板状部材であり、アクリル樹脂を用いて、下部支持板46は平板状に、上部支持板47は立上がり円筒部47a(図7参照)を有する平板状に形成されている。
下部支持板46と上部支持板47とは、その間にギア421,422,423を回転可能に介在させ、棒状の連結部材を介して金属製のネジ(図示せず)で接続されている。さらに、下部支持板46および上部支持板47は、それぞれ、棒状の連結部材を介して金属製のネジ(図示せず)でハウジング45の上面に接続・固定されている。
【0059】
なお、被めっき物30(ベントカソード31)をドラム20の内部に配置するために、上部支持板47の立上がり円筒部47aとドラム20の円筒部22a(図4参照)とは、連通するように形成・配置されている。この部分(試料投入口Mと称する。)から、被めっき物30(ベントカソード31)がドラム20の内部へ配置されることとなる。
めっき装置1は、垂直状態に配置されたドラム20と上部が開口した試料投入口Mを有することで、ドラム20の内部のめっき液(図示せず)を容易に採取することができるようになっている。
【0060】
フランジ付き円筒49は、立上がり円筒部47aとプーリ432との間に配置され、いわゆる、すべり軸受の役割を担う部材であり、例えば、金属等を用いて、フランジ部分を有する筒状に形成されている(図7参照)。
なお、フランジ付き円筒49は必ずしも設ける必要はなく、プーリ432が滑らかに回転するのであれば、プーリ432が立上がり円筒部47aに直接外嵌する構成としてもよい。
【0061】
なお、本実施形態では、例えば、ギア421,422,423やプーリ431,432をポリプロピレン樹脂で、ベルト44をゴム材料で、ハウジング45や下部支持板46、上部支持板47をアクリル樹脂で形成しているが、これらに限定されるものではない。
これらの材料と同等以上の耐熱性や硬度(強度)、さらに、必要に応じて耐薬品性を備える材料であれば、適宜使用することができる。
【0062】
<陽極50>
陽極50は、電源(図示せず)の正極に電気的に接続されて被めっき物30(ベントカソード31)との間で通電を行うための電極であり、通常はめっき液に溶融している物質と同じ材料、例えば、銅、ニッケル、錫等を用いて、細長い板状に形成されている(図1参照)。この陽極50は、めっき槽10の第2の貯留部11bに、ドラム20(被めっき物30)と対向するように配置されている(図3(b)参照)。
なお、陽極50の形状は細長い板状に限定されず、例えば、長棒状であってもよいし、ボール状やペレット状に形成した陽極50を上部が開口したチタンメッシュ製のケースに充填した形状であってもよい。また、陽極50の材質が不溶性である場合は、めっき液と異なる材質で形成してもよい
【0063】
ここで、被めっき物30(ベントカソード31)に電流を供給するための構成について説明する。これらは、図7に示すように、支持棒61と、導電板62と、伝導体63とから構成され、ドラム20および駆動機構40(プーリ432)の上部に配置されている(図6参照)。
【0064】
支持棒61は、被めっき物30(ベントカソード31)を掛着させてドラム20の内部に吊設するための部材であり、例えば、銅や黄銅、ステンレス等の導電性物質を用いて、断面視略四角形状の棒状体として形成されている。
この支持棒61には、凹部61aが形成されていて、この部分に被めっき物30(ベントカソード31)が掛着される。これにより、被めっき物30(ベントカソード31)が、ドラム20の内部の一定の位置に配置(吊設)されることになる。
支持棒61は、プーリ432に設けられた溝432cに設置されることで、プーリ432に固定されている。これにより、プーリ432と一体に回転するようになっている。
【0065】
導電板62は、支持棒61に当接して電気的に接続する部材であり、例えば、銅や黄銅、ステンレス等の導電性物質を用いて、円形環状の薄板体として形成されている。
この導電板62は、プーリ432の上部に設置され、例えば、プーリ432に金属製のネジで螺接したり、導電板62に形成した爪部をプーリ432に形成した孔部に掛合したりすることで、プーリ432に固定されて一体に回転するようになっている(図示せず)。
【0066】
伝導体63は、回転する導電板62に当接して電気的に接続する部材であり、図7に示すように、導電体63aと、弾性部材63bと、電極棒63cと、ハウジング63dとから概ね構成されている。
導電体63aは、導電板62に、その回転を妨げずに当接して電気的に接続する部材であり、例えば、ブロック状のカーボンブラシ等が使用される。
弾性部材63bは、導電体63aを導電板62に弾性的に付勢する部材であり、例えば、コイルバネ等が使用され、導電体63aの上部に設置されている。
電極棒63cは、電源(図示せず)の負極に電気的に接続され、被めっき物30(ベントカソード31)を介して陽極50(図1参照)との間で通電を行うための部材である。電極棒63cは、例えば、銅や黄銅等を用いて、断面視略円形状の棒状体として形成され、その先端部分が、例えば、電線等(図示せず)で導電体63aに電気的に接続されている。
ハウジング63dは、導電体63a、弾性部材63bおよび電極棒63cの先端部分を収容する筐体であり、例えば、アクリル樹脂やポリプロピレン樹脂等を用いて形成されている。なお、導電体63aは、その下部がハウジング63dから突出するように収容されている。
【0067】
以上のような構成により、被めっき物30(ベントカソード31)に電流を供給することができるようになっている。すなわち、電流は、電源(図示せず)の負極に電気的に接続された伝導体63の電極棒63cおよび導電体63aによって、回転する導電板62に供給され、さらに、導電板62に当接する支持棒61へと供給されることになる。これにより、支持棒61に掛着する被めっき物30(ベントカソード31)に電流が供給されることになる。
【0068】
続いて、めっき装置1の動作の概要について、適宜図1乃至図7を参照しながら説明する。
【0069】
まず、ドラム20の円筒部22aに形成された雄ネジ部と駆動機構40のギア423に形成された雌ネジ部とを螺合して、ドラム20と駆動機構40とを接続する。
【0070】
次に、駆動機構40に接続されたドラム20を、めっき液(図示せず)が貯留されためっき槽10の第1の貯留部11aに配置する。この時、めっき槽10の内部に形成された隙間13Sを閉塞するように、遮蔽板13に取り付けられた摺動板13a,13aにドラム20の側壁部21を当接させる。
【0071】
さらに、陽極50を、めっき液(図示せず)が貯留されためっき槽10の第2の貯留部11bに配置する。この時、ドラム20と陽極50とが、めっき槽10の遮蔽板13を挟んで対向するようにする。
【0072】
そして、ベントカソード31を、試料投入口Mからドラム20の内部に挿入し、駆動機構40(プーリ432の溝432c)に設置・固定された支持棒61の凹部61aに、ベントカソード31の掛着部33を掛着させて吊設する。この時、ドラム20の内部に配置されたベントカソード31の試験部32がめっき液(図示せず)に完全に浸漬するようにする。
【0073】
最後に、導電板62を駆動機構40(プーリ432)に設置して支持棒61に当接させ、伝導体63を、導電体63aが導電板62に当接するように配置する。この時、支持棒61と導電板62と伝導体63(導電体63a)が電気的に接続するようにする。
【0074】
以上のように構成されためっき装置1は、駆動機構40のモータ41を駆動させて、ドラム20とベントカソード31とを互いに回転速度差を持たせて回転駆動させ、陽極50を電源(図示せず)の正極に、伝導体63(電極棒63c)を電源の負極に電気的に接続して通電することで、ベントカソード31(試験部32)にめっき皮膜を形成させることができる。めっき後、ベントカソード31(試験部32)を、ドラム20の内部から取り出し、引き伸ばしてめっき皮膜の均一電着性を評価する。
【0075】
このようなめっき装置1によれば、バレルめっき装置のドラム内部の被処理物に流れる電流の変動、および、バレルめっき装置のドラム内部のめっき液の状態を再現しつつ、めっき皮膜を被めっき物30の全周面に均一に形成させることができる。
【0076】
すなわち、遮蔽板13に取り付けられた摺動板13a,13aによって形成された隙間13S(以下、隙間13Sという。)と、ドラム20の側壁部21に設けられた開口部26(以下、開口部26という。)とが完全に一致するときは、被めっき物30と陽極50との間に流れる電流値は最大となる。駆動機構40によってドラム20が回転し、隙間13Sと開口部26との一致部分が狭くなっていくことで、被めっき物30と陽極50との間に流れる電流値が減少していき、隙間13Sをドラム20の側壁部21が完全に閉塞するとき(隙間13Sと開口部26とが全く重なり合わないとき)は、被めっき物30と陽極50との間に電流がほとんど流れなくなるので、電流値はほとんどゼロになる。さらにドラム20が回転して、隙間13Sと開口部26とが再び重なり合い、その部分が広くなっていくことで、被めっき物30と陽極50との間に流れる電流値が増加していき、隙間13Sと開口部26とが再び完全に一致することで、被めっき物30と陽極50との間に流れる電流値は最大となる。このような動作を繰り返すことで、バレルめっき装置のドラム内部の被処理物に流れる電流の変動が再現されることになる。
【0077】
また、開口部26(通液部24a)をメッシュとすることで、ドラム20の内部へのめっき液(図示せず)の出入りを不十分にすることができる。この状態で、めっき装置1を運転してドラム20の内部に配置された被めっき物30にめっき皮膜を形成させると、バレルめっき装置のドラム内部と同様に、ドラム20の内部のめっき液の組成が徐々に変化することになる。このようにして、バレルめっき装置のドラム内部のめっき液の状態が再現されることになる。
【0078】
さらに、ドラム20と被めっき物30とが同じ速度で回転する場合(または、被めっき物30が回転しない場合)、例えば、隙間13Sと開口部26とが完全に一致したとき、被めっき物30の陽極50との対向面は、常に同一面となり、めっき皮膜がこの面に厚く形成されることになる。しかしながら、ドラム20と被めっき物30とが互いに回転速度差を持って回転する場合、例えば、隙間13Sと開口部26とが完全に一致するたびに、被めっき物30の陽極50との対向面が、前に一致したときの対向面とは異なるので、めっき装置1の連続運転によって、めっき皮膜が被めっき物30の全周面に均一に形成されることになる。
【0079】
また、このようなめっき装置1において、被めっき物30として、めっき皮膜の均一電着性を測定するベントカソード31を用いたことにより、バレルめっき装置のドラム内部の被処理物に流れる電流の変動、および、バレルめっき装置のドラム内部のめっき液の状態を再現して、これらがめっき皮膜の均一電着性に及ぼす影響について試験を行うことができる。
【0080】
[第2実施形態]
第2実施形態に係るめっき装置2について、適宜図6乃至図9を参照しながら説明する。
図8は、第2実施形態に係るめっき装置を示す全体斜視図である。図9は、第2実施形態に係るめっき装置を構成する陰極カートリッジを示す正面斜視図(a)、背面斜視図(b)およびA−A断面図(c)である。
【0081】
第2実施形態に係るめっき装置2は、図8に示すように、駆動機構40’の構成と、被めっき物30(ベントカソード31)の代わりに陰極カートリッジ70と内部応力測定装置80とを備えることが、第1実施形態に係るめっき装置1と異なっている。以下、これらについて説明する。なお、めっき槽10、ドラム20および陽極50については、第1実施形態に係るめっき装置1と同様であるから説明を省略する。
【0082】
<駆動機構40’>
駆動機構40’は、ドラム20を回転駆動させるための動力源と動力伝達手段であり、第1実施形態に係るめっき装置1の駆動機構40から、プーリ431,432と、ベルト44と、ネジ48,48と、フランジ付き円筒49とを取り外したこと以外は、第1実施形態に係るめっき装置1の駆動機構40と同様である。
すなわち、駆動機構40’は、モータ41と、ギア421,422,423と、ハウジング45と、下部支持板46と、上部支持板47とから構成されている(図6参照)。
これらの機能、構成および動作については、第1実施形態に係るめっき装置1の駆動機構40と同様であるから説明を省略する。
【0083】
<陰極カートリッジ70>
陰極カートリッジ70は、陰極板71をドラム20の内部のめっき液中に支持するためのものであり、図9に示すように、陰極板71と、ひずみゲージ72と、陰極板支持部73とから構成され、ドラム20の上部に設置されている。
【0084】
陰極板71は、電源(図示せず)の負極に電気的に接続されて陽極50との間で通電を行うことで、その表面にめっき皮膜が形成される電極であり、例えば、銅や黄銅、鉄、アルミニウム等を用いて、細長い板状に形成されている。この陰極板70は、陰極カートリッジ70(陰極板支持部73)によって、被めっき面71sがドラム20の内部において、側壁部21または開口部26を介して陽極50と対向するように配置されている。
被めっき面71sは、めっき皮膜が形成される部分であり、陰極板71の表面のうち、被めっき面71sとする部分以外に、例えば、絶縁塗料等を塗布することによって形成されている。
なお、陰極板71の材質は、試験の目的やバレルめっき装置のドラム内部に収容される被処理物の材質等によって適宜選択することができる。
【0085】
ひずみゲージ72は、素地金属の変形に伴う電気抵抗の変化から当該素地金属のひずみを計測するための部材であり、陰極板71(被めっき面71s)の背面に貼り付けられている。このひずみゲージ72は、後記する内部応力測定装置80(計測器81)に接続されている。
【0086】
陰極板支持部73は、陰極板70をドラム20の内部のめっき液中に支持するための部材であり、例えば、アクリル樹脂やポリプロピレン樹脂等を用いて、図9に示すように、外観視円柱状に形成されている。
なお、陰極板支持部73の外観形状は、円柱状に限定されず、例えば、四角柱等の、多角形の柱状であってもよい。
【0087】
支持部73aは、陰極板71を支持するための円柱状の部分であり、陰極板挿入孔73cが形成され、止めネジ73dが設けられている。
被嵌部73bは、駆動機構40’の上部支持板47に形成された立上がり円筒部47a(図6,図7参照)に被嵌される円筒状の部分であり、支持部73aと一体に形成されている。
陰極板挿入孔73cは、陰極板71を挿入するための孔であり、陰極板支持部73の長手方向の中央部に、上下方向に貫通して形成されている。
止めネジ73dは、陰極板71の上下方向の位置を調節・固定するためのネジであり、支持部73aの側面の陰極板挿入孔73cに対応する位置に設けられている。
【0088】
以上のような構成により、陰極板支持部73は、支持部73aに形成された陰極板挿入孔73cに陰極板71を挿入し、止めネジ73dによって固定した状態で、被嵌部73bを、駆動機構40’の上部支持板47に形成された立上がり円筒部47aに被嵌させることにより、陰極板71をドラム20の内部のめっき液中に支持することができるようになっている。
【0089】
ところで、ひずみゲージ72を利用してめっき皮膜の内部応力を正確に測定するためには、陰極板71(被めっき面71s)に形成されるめっき皮膜の膜厚を均一にする必要がある。そのためには、陽極50と陰極板71(被めっき面71s)とを、平行に対向するように配置する必要がある。そこで、この位置決めが容易に行えるように、例えば、立上がり円筒部47aの上端部に凹部を、被嵌部73bの内側に凸部を設けて嵌合させる構成を設けてもよい。また、このような構成を設けることにより、陰極板支持部73(陰極カートリッジ70)が、立上がり円筒部47aの周方向に動かないように固定することもできる。
【0090】
<内部応力測定装置80>
内部応力測定装置80は、陰極板71(被めっき面71s)に形成されるめっき皮膜の内部応力を測定するための装置であり、図8に示すように、計測器81と、計算機82とから構成されている。
【0091】
計測器81は、陰極板71に取り付けられたひずみゲージ72の電気抵抗の変化から陰極板71のひずみを計測するための機器である。計測器81は、例えば、ひずみゲージ72をその一部に組み込んだブリッジ回路(ホイートストンブリッジ)およびアンプを備えており、ひずみゲージ72の電気抵抗の変化から、陰極板71のひずみを計測することができるようになっている。計測器81は、計測したひずみを、接続ケーブル83を介して計算機82に送信することができるようになっている。
【0092】
計算機82は、計測器81によって計測された陰極板71のひずみから、めっき皮膜の内部応力を計算するものであり、例えば、ノート型のパーソナルコンピュータ等が使用される。計算機82と計測器81とは、接続ケーブル83によって接続されており、計算機82は、計測器81で計測したデータを受信することができるようになっている。計算機82は、ひずみゲージ72の計測値(ひずみ)、陰極板71(被めっき面71s)の特性値(長さ、厚さ、ヤング率、ポアソン比等)およびめっき皮膜の特性値(膜厚等)から、例えば、式(1)に基づいて、めっき皮膜の内部応力を計算するようになっている。
【0093】
σ=Etδ/{3(1−ν)dl}・・・・・・・・(1)
ここで、σ:めっき皮膜の内部応力
l:陰極板の被めっき面の長さ
t:陰極板の厚さ
E:陰極板のヤング率
ν:陰極板のポアソン比
δ:陰極板のたわみ量
d:めっき皮膜の膜厚
【0094】
なお、ひずみゲージを利用しためっき皮膜の内部応力測定システムについては、本出願人が出願した特開2005−221269号公報に開示されている。
【0095】
続いて、めっき装置2の動作の概要について、適宜図3乃至図9(図5を除く)を参照しながら説明する。
【0096】
まず、ドラム20の円筒部22aに形成された雄ネジ部と駆動機構40のギア423に形成された雌ネジ部とを螺合して、ドラム20と駆動機構40とを接続する。
【0097】
次に、駆動機構40に接続されたドラム20を、めっき液(図示せず)が貯留されためっき槽10の第1の貯留部11aに配置する。この時、めっき槽10の内部に形成された隙間13Sを閉塞するように、遮蔽板13に取り付けられた摺動板13a,13aにドラム20の側壁部21を当接させる。
【0098】
さらに、陽極50を、めっき液(図示せず)が貯留されためっき槽10の第2の貯留部11bに配置する。この時、ドラム20と陽極50とが、めっき槽10の遮蔽板13を挟んで対向するようにする。
【0099】
そして、陰極カートリッジ70の陰極板支持部73に形成された被嵌部73bを、駆動機構40’の立上がり円筒部47aに被嵌して、陰極カートリッジ70をドラム20の上部に設置する。この時、ドラム20の内部に配置された陰極板71の被めっき面71sが、めっき液(図示せず)に完全に浸漬するようにするとともに、陽極50と平行に対向するようにする。
最後に、ひずみゲージ72を内部応力測定装置80(計測器81)に接続する。
【0100】
以上のように構成されためっき装置2は、駆動機構40’のモータ41を駆動させて、ドラム20を回転駆動させ、陽極50を電源(図示せず)の正極に、陰極板71を電源の負極に電気的に接続して通電し、計測器81を操作して陰極板71のひずみの計測を行うことができる。そして、計算機82によって、計測器81の計測値と、あらかじめ入力されているめっき液の特性値と、陰極板71の特性値とに基づいて、前記した式(1)により、めっき皮膜の内部応力を計算する。
【0101】
このようなめっき装置2によれば、バレルめっき装置のドラム内部の被処理物に流れる電流の変動、および、バレルめっき装置のドラム内部のめっき液の状態を再現して、これらがめっき皮膜の内部応力に及ぼす影響について試験を行うことができる。
【0102】
なお、本発明の実施形態はこれらに限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、第1実施形態に係るめっき装置1は、被めっき物30(ベントカソード31)をプーリ431,432およびベルト44を用いて回転駆動させる構成としているが、これに限定されず、ギアを用いて被めっき物30(ベントカソード31)を回転駆動させる構成としてもよい。
また、第2実施形態に係るめっき装置2は、内部応力測定装置80が計測器81と計算機82とから構成されているが、1台の機器で測定・計算を行う構成としてもよい。また、第2実施形態では、前記した式(1)によって、めっき皮膜の内部応力を計算しているが、内部応力を求める式はこれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】第1実施形態に係るめっき装置を示す全体斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るめっき装置を示す分解斜視図である。
【図3】第1実施形態に係るめっき装置を構成するめっき槽を示す斜視図(a)および平面図(b)である。
【図4】第1実施形態に係るめっき装置を構成するドラムを示す分解斜視図である。
【図5】第1実施形態に係るめっき装置のドラムの内部に配置されるベントカソードを示す側面図(a)および正面図(b)である。
【図6】第1実施形態に係るめっき装置を示す一部断面部分を含む正面図である。
【図7】第1実施形態に係るめっき装置を構成する駆動機構の一部および被めっき物に電流を供給するための構成を示す分解斜視図である。
【図8】第2実施形態に係るめっき装置を示す全体斜視図である。
【図9】第2実施形態に係るめっき装置を構成する陰極カートリッジを示す正面斜視図(a)、背面斜視図(b)およびA−A断面図(c)である。
【図10】回転するドラム内部の被処理物の動きを示す模式図(a)および回転するドラム内部の被処理物に流れる電流の変動を示す模式図(b)である。
【符号の説明】
【0104】
1,2 めっき装置
10 めっき槽
11a 第1の貯留部
11b 第2の貯留部
13 遮蔽板
13a 摺動板
13S 隙間
20 ドラム
21 側壁部
26 開口部
30 被めっき物
31 ベントカソード(金属片)
40,40’ 駆動機構
50 陽極
71 陰極板
71s 被めっき面
72 ひずみゲージ
80 内部応力測定装置
【出願人】 【識別番号】394016519
【氏名又は名称】株式会社山本鍍金試験器
【出願日】 平成18年7月5日(2006.7.5)
【代理人】 【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造

【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫


【公開番号】 特開2008−13806(P2008−13806A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−185533(P2006−185533)