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【発明の名称】 電着塗料浴中の極比を最適に調節する方法およびそれに用いる電着塗料浴
【発明者】 【氏名】三好 正寿

【要約】 【課題】電着塗料浴において、被塗物の表面積が変化する場合に、被塗物上に形成される塗膜膜厚を一定化する方法の提供。

【構成】被塗物と該被塗物の対電極とを備えた電着塗料浴において、該対電極が電極板と、該電極板を一定間隔をあけて収納しかつ固形分を遮断する隔膜を壁面に有する隔膜ボックスと、該隔膜と電極板との間に電極板の通電部分の面積を調節するための絶縁性遮蔽板と、を備え、前記絶縁性遮蔽板により電極板の通電部分の面積を調節して被塗物の導電性表面積と対電極の表面積との比(対電極:被塗物)である極比を1:4〜1:10に調節する方法およびそれに用いる電着塗料浴。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物と、該被塗物の対電極とを備えた電着塗料浴において、該対電極が電極板と、該電極板を一定間隔をあけて収納しかつ固形分を遮断する隔膜を壁面に有する隔膜ボックスと、該隔膜と電極板との間に電極板の通電部分の面積を調整するための絶縁性遮蔽板と、を備えることを特徴とする電着塗料浴。
【請求項2】
前記絶縁性遮蔽板が、電極板の通電部分の面積を可変的にまたは段階的に調節可能である請求項1記載の電着塗料浴。
【請求項3】
前記絶縁性遮蔽板が、電極板の被塗物側に存在する請求項1記載の電着塗料浴。
【請求項4】
前記電極板の通電部分の面積を可変的にまたは段階的に調節する手段が、絶縁性遮蔽板を隔膜と電極板の間に可変的にまたは段階的に挿入する手段である請求項2記載の電着塗料浴。
【請求項5】
電着塗料浴中に、絶縁性遮蔽板を有する隔膜ボックス電極を複数個有する請求項1記載の電着塗料浴。
【請求項6】
被塗物と該被塗物の対電極とを備えた電着塗料浴において、該対電極が電極板と、該電極板を一定間隔をあけて収納しかつ固形分を遮断する隔膜を壁面に有する隔膜ボックスと、該隔膜と電極板との間に電極板の通電部分の面積を調節するための絶縁性遮蔽板と、を備え、前記絶縁性遮蔽板により電極板の通電部分の面積を調節して被塗物の導電性表面積と対電極の表面積との比(対電極:被塗物)である極比を1:4〜1:10に調節する方法。
【請求項7】
前記絶縁性遮蔽板が、電極板の通電部分の面積を可変的にまたは段階的に調節可能である請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記絶縁性遮蔽板が、電極板の被塗物側に存在する請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記電極板の通電部分の面積を可変的にまたは段階的に調節する手段が、絶縁性遮蔽板を隔膜と電極板の間に可変的にまたは段階的に挿入する手段である請求項7記載の極比を最適に調節する方法。
【請求項10】
電着塗料浴中に、絶縁性遮蔽板を有する隔膜ボックス電極を複数個有する請求項6記載の方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は被塗物の導電性表面積とその被塗物の対電極の表面積との比である極比を最適に調節する方法およびそれに用いる電着塗料浴に関する。
【背景技術】
【0002】
電着塗装は、複雑な形状を有する被塗物であっても、細部にまで塗装を施すことができ、自動的かつ連続的に塗装することができるので、自動車車体などの大型で複雑な形状を有し、高い防錆性が要求される被塗物の下塗り塗装方法として汎用されている。また、他の塗装方法と比較して、塗料の使用効率が極めて高いことから、経済的であり、工業的な塗装方法として広く普及している。電着塗装方法には、カチオン電着塗装方法と、アニオン電着塗装方法の二種類が存在する。いずれの方法においても、被塗物を片方の電極とし、もう一方の電極(対電極と呼ばれる)が電着塗料浴中に存在している。
【0003】
電着塗装について図1に基づいて若干説明する。図1には電着浴1中に電着塗料2が満たされており、その中に被塗物3が浸漬されている。この被塗物3は搬送手段4によって次から次へと流れてくる。被塗物3に対応する電極5(対電極)が電着浴中に沈められている。この対電極5が電圧コントローラ6によりコントロールされている。
【0004】
対電極5は図2に示すような構造になっている。対電極5は電極板と、その電極板7が収納され、固形分を遮断するために隔膜8を有する隔膜ボックス9とから構成され、隔膜8により電着塗料と遮られている。この対電極5は特に隔膜ボックス電極と呼ばれている。
【0005】
従来の電着塗装方法では、一定の大きさをもつ被塗物が次から次に流れてきて、電着塗料浴中で塗装が施され次の工程へ移動していく。しかしながら、最近、色々な形状を有しかつ大きさの異なる被塗物が流れてくる、いわゆる混流と呼ばれる電着塗装形態が採用されつつあり、効率化が追求されている。被塗物に形成される被膜は、被塗物が同じ大きさの場合には被塗物の膜厚はとくに変化はないが、被塗物の表面積が異なってくると、被塗物の表面積と、対電極中の電極の表面積との比に応じて、膜厚が変化することが知られている。
【0006】
被塗物に塗装される被膜の膜厚が変化することは、一定の品質が得られないということで避けられなければならない。
【0007】
実用新案登録第3061515号公報(特許文献1)には、図1と同様に対電極が幾つも存在しており、各対電極がスイッチをオンおよびオフすることができるようになっており、各電極のスイッチをオンあるいはオフにすることにより対電極の表面積を変更することにより、被塗物の変化による膜厚の変化を最小限にしている。しかしながら、この方法では対電極の一つ全体がオンあるいはオフになるので、段階的にしか調節することができない。被塗物の表面積の変化が小さい場合には、この方法では賄いきれない。
【0008】
また、極比という概念は、被塗物の表面積と対電極の表面積との比であるが、この極比が一定であればよいのであるが、実際には被塗物が変化するのに応じて極比が変化し、被塗物上の塗膜膜厚が変化する。特願2005−316828号(特許文献2)には、電着塗料自体を改良し、極比の変化が生じても膜厚が変化しないようにする技術が開示されており、被塗物の表面積が変化する混流であっても、膜厚を一定にしようとすることが記載されている。この方法は有効ではあるが、塗料の改良だけでなく、極比自体もほぼ一定にすることができればより均一性が増大すると考えられる。
【0009】
特開平10−330997号公報(特許文献3)には、上記隔膜ボックス電極の隔膜と電極板との間に、窓に付けるブラインドのような遮蔽部材を設けることが開示されている。この遮蔽部材は、構成が複雑で、簡便に実施できる手段とは言えない。
【特許文献1】実用新案登録3061515号公報
【特許文献2】特願2005−316828号
【特許文献3】特開平10−330997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、電着塗料浴において、被塗物の表面積が変化した場合であっても、被塗物の対電極の表面積を容易かつ簡便にコントロールすることにより、被塗物上に形成される塗膜の膜厚の一定化を図ることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、被塗物と、該被塗物の対電極とを備えた電着塗料浴において、該対電極が電極板と、該電極板を一定間隔をあけて収納しかつ固形分を遮断する隔膜を壁面に有する隔膜ボックスと、該隔膜と電極板との間に電極板の通電部分の面積を調整するための絶縁性遮蔽板と、を備えることを特徴とする電着塗料浴を提供する。
【0012】
また、本発明は、被塗物と該被塗物の対電極とを備えた電着塗料浴において、該対電極が電極板と、該電極板を一定間隔をあけて収納しかつ固形分を遮断する隔膜を壁面に有する隔膜ボックスと、該隔膜と電極板との間に電極板の通電部分の面積を調節するための絶縁性遮蔽板と、を備え、前記絶縁性遮蔽板により電極板の通電部分の面積を調節して被塗物の導電性表面積と対電極の表面積との比(対電極:被塗物)である極比を1:4〜1:10に調節する方法を提供する。
【0013】
本発明では前記絶縁性遮蔽板は、電極板の通電部分の面積を可変的にまたは段階的に調節可能であるようにすることが特徴である。
【0014】
絶縁性遮蔽板は通常、電極板の被塗物側に存在する。
【0015】
電極板の通電部分の面積を可変的にまたは段階的に調節する手段が、絶縁性遮蔽板を隔膜と電極の間に可変的にまたは段階的に挿入する手段である。
【0016】
さらに電着塗料浴中に、絶縁性遮蔽板を有する隔膜ボックス電極を複数個有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被塗物と対電極との極比(被塗物の表面積と対電極中の電極の表面積との比(対電極:被塗物))が一定になるように、対電極である隔膜ボックス電極中に絶縁性遮蔽板を単に挿入するだけで、電極の表面積を小さくするので、極比がほぼ一定になり、形成される電着塗膜の膜厚が各被塗物の形状が異なっていてもほぼ同じになる利点を有する。
【0018】
各隔膜ボックス電極が、個別に絶縁性遮蔽板を連続的に挿入することができ、あるいは複数の隔膜ボックス電極内の電極の表面を連続的に変化することができるので、塗膜の膜厚が一定になる。本発明の方法はカチオン電着塗料あるいはアニオン電着塗料のいずれにも応用できるが、最近とくに広く行われているカチオン電着塗装においてもっとも有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を図面に基づいてさらに詳細に説明する。
図1は、本発明の電着浴を模式的に示す図である。
図2は、本発明の隔膜ボックス電極を模式的に示す図である。
図3は、本発明の絶縁性遮蔽板を挿入しつつある隔膜ボックス電極を示す図である。
図4は、本発明の絶縁性遮蔽板を吊り下げる手段の一態様を示す図である。
図5は、本発明の絶縁性遮蔽板を吊り下げる手段の別の態様を示す図である。
【0020】
図1中、電着塗料浴1中に電着塗料2が満たされており、被塗物3が搬送手段4によって運びこまれる。図1には被塗物が一つしか記載されていないが、実際には幾つもの被塗物が連続して搬入され、排出されていく。被塗物3の対電極5が複数個存在する。カチオン電着塗料では被塗物3が陰極であり、対電極の電極板が陽極である。一方、アニオン電着では被塗物が陽極であり、対電極の電極板が陰極である。
【0021】
図2に示すのは対電極5であり、隔膜ボックス電極と呼ばれるものである。固形分を遮断する隔膜8を有する隔膜ボックス9内に電極板7が収納されている。
【0022】
図3を見ると明らかなように、本発明では隔膜8と電極板7との間に電極板の通電部分の面積を調節するための絶縁性遮蔽板10が設置できるようになっている。図3では絶縁性遮蔽板10が挿入されつつある状態を示す。絶縁性遮蔽板は、電気的に絶縁性であればとくにいかなる材料を用いてもよいが、電極板7付近は塗料の性質に応じて塩基性あるいは酸性の高い状態になるので、それらについて耐性のある材料であることが望ましい。絶縁性遮蔽板の例としてはアクリル板、塩化ビニル板などが例示できる。好ましくはアクリル板である。絶縁性遮蔽板の形状は、いかなる形状であっても良いが、平板状が好ましい。
【0023】
本発明では、隔膜8と電極7との間に絶縁性遮蔽板10が挿入されている。電極と遮蔽板10との距離はとくに限定的ではなく、隔膜8と電極板7の間に挿入する状態であればいかなる距離でもよい。通常電極板7と隔膜8の距離は20〜40mmであるので、絶縁性遮蔽板10と電極板7との距離は10〜30mmである。図3の対応では、電極板7の片側(即ち、被塗物側)のみに絶縁性遮蔽板10が挿入されているように図示されているが、反対側にも存在しても別に問題は無い。また、図3の例では、絶縁性遮蔽板10と電極板7の大きさが一致していないが、図示上の簡略化であり、両者が全く同じ大きさであっても、あるいは絶縁性遮蔽板10が電極板7よりも大きさが小さいものであってもよい。
【0024】
いずれにしても、図3の態様では絶縁性遮蔽板10が挿入することにより、電極板7の通電面積の一部を遮断する。
【0025】
絶縁性遮蔽板10の挿入はいかに行なわれるかについては図示されていないが、挿入用の装置を用いてもよくあるいは手動で行ってもよい。
【0026】
最も簡便に絶縁性遮蔽板10を挿入する方法は例えば図4および図5に示す手段が考えられる。図4では、遮蔽板10に絶縁された金属(具体的には被覆線)あるいは繊維状物から形成された吊り下げ手段11を取り付け、これを図3の隔膜ボックス9に取り付ければよい。図4のような遮蔽板10の大きさの違うものをいくつか用意して、被塗物の表面積に応じて、大きさの違う遮蔽板10を取り替えれば、段階的に対電極の通電部分の面積を調整することができる。図5では、遮蔽板10に吊り下げ手段12を取り付け、これを昇降するためのロッド13に取り付けて、ロッド13を昇降することにより、絶縁性遮蔽板10が昇降することにしてもよい。ロッド13の昇降を連続的にすれば、可変的な調節が可能であり、昇降を段階的に行えば、段階的な調節が可能となる。もちろん、これらの手段に限定されるものではない。
【0027】
図3に示すような絶縁性遮蔽板10を有した隔膜ボックス電極が図1に示されるように対電極5としていくつか用いられてもよく、あるいは必要に応じて1または複数個のみが絶縁性遮蔽板を有してもよい。
【0028】
本発明によれば、被塗物の導電性表面積と電極板の表面積との比(極比)を一定範囲に保つことができる。極比を一定範囲に保つことにより、被塗物上に形成される電着塗膜の膜厚が均一化する。前述のように極比を一定にする方法は本発明では、電極板の表面積を絶縁性遮蔽板により制御することにより行なわれる。極比は、具体的には、電極板の表面積:被塗物の表面積で表され、1:4〜1:10であるのが好ましい。被塗物表面積が大きくなりすぎると塗膜が生成しなくなる。また被塗物表面積が小さくなりすぎると塗膜が厚くなり過ぎて異常肌になる。極比は、絶縁性遮蔽板による制御は、1またはそれ以上の隔膜ボックス電極を個別にあるいは一緒に調節して行なってもよい。
【実施例】
【0029】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものと解してはならない。
【0030】
実施例1
図1に示すような電着浴中にカチオン電着塗料を満たし、被塗物(自動車車体)を浸漬して設定電圧235ボルト浴温30℃でコンベアベルトのスピード4.5mで塗装を行なった。隔膜ボックス電極は実際には、片側13枚、両側で26枚存在した。図1では簡単の為、5つだけを記載した。隔膜ボックス電極の内の1枚のみを絶縁性遮蔽板により遮蔽し、電着塗装を行なった。その場合の極比(電極板の表面積/被塗物の表面積)は0.20であった。
【0031】
塗装後形成された塗膜厚を測定し、被塗物の各部分毎に表1に記載する。
【0032】
実施例2
実施例2では、対電極の隔膜ボックス電極の内2枚を絶縁性遮蔽板により遮蔽して電着塗装を行なった。その時の極比(電極板の表面積/被塗物の表面積)は0.19であった。実施例1と同様に各被塗物の各部分の膜厚を測定し結果を表1に示す
【0033】
【表1】


【0034】
上記表1の結果から明らかなように、絶縁性遮蔽板により隔膜ボックス電極の電極板の1枚および2枚を遮蔽した場合に、被塗膜上の膜厚が変化することがわかる。このことは逆に、被塗物の表面積が変化した場合に、電極板を遮蔽することにより、膜厚を均一にすることができることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の電着塗料浴を模式的に示す図である。
【図2】本発明の隔膜ボックス電極を示す斜視図である。
【図3】本発明の隔膜ボックス電極中に絶縁性遮蔽板10が挿入されている状態を示す模式断面図である。
【図4】本発明の絶縁性遮蔽板を吊り下げる手段の一態様を示す図である。
【図5】本発明の絶縁性遮蔽板を吊り下げる手段の別の態様を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1…電着浴、2…電着塗料、3…被塗物、4…搬送手段、5…隔膜ボックス電極、6…電源、7…電極板、8…隔膜、10…絶縁性遮蔽板、11および12…吊り下げ手段、12…ロッド(昇降手段)。
【出願人】 【識別番号】000230054
【氏名又は名称】日本ペイント株式会社
【出願日】 平成18年7月3日(2006.7.3)
【代理人】 【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆

【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄

【識別番号】100126789
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 裕子


【公開番号】 特開2008−13785(P2008−13785A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−183083(P2006−183083)