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【発明の名称】 金属線材メッキ用不溶性陽極および線材の製造方法
【発明者】 【氏名】村上 健一

【氏名】梅崎 幸弘

【要約】 【課題】複数本の金属線材におけるメッキ付着量を、長期間安定して均一化することができ、メッキ設備の簡略化や通線作業の便宜にも寄与でき、更にはメッキ反応に伴って発生するガスの放出性にも優れた金属線材メッキ用不溶性陽極およびこれを用いた線材の製造方法を提供する。

【構成】メッキ液中を並列して走行する複数本の金属線材60に同時に電気メッキを施す電気メッキ装置用の不溶性陽極である。各金属線材60の線材パスラインを両側から挟んで対向するように並列配置された複数枚の不溶性電極板20と、その各間に介在して各間に等間隔の隙間を形成する複数枚の導電性接触子30と、複数枚の不溶性電極板20と導電性接触子30とを線材パスライン方向の複数箇所で並列方向に締め付けて固定する複数本の貫通ボルト40とを具備する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッキ液中を並列して走行する複数本の金属線材に同時に電気メッキを施す電気メッキ装置用の不溶性陽極において、
各金属線材の線材パスラインを両側から挟んで対向するように並列配置された複数枚の不溶性電極板と、
複数枚の不溶性電極板の各間に介在して各間に等間隔の隙間を形成する複数枚の導電性接触子と、
複数枚の不溶性電極板と導電性接触子とを線材パスライン方向の複数箇所で並列方向に締め付けて固定する複数本の貫通ボルトとを具備することを特徴とする金属線材メッキ用不溶性陽極。
【請求項2】
複数枚の導電性接触子は、線材パスライン方向の複数箇所に間隔をあけて配置されている請求項1記載の金属線材メッキ用不溶性陽極。
【請求項3】
複数枚の導電性接触子は、複数枚の不溶性電極板の各間の線材パスラインと干渉しないように線材パスラインの下側に配置されている請求項1または2記載の金属線材メッキ用不溶性陽極。
【請求項4】
複数枚の不溶性電極板又は複数枚の導電性接触子の少なくとも一方において、貫通ボルトの貫通するボルト孔が、部材端面に達する切り込み状に形成されている請求項1〜3のうちいずれか一項記載の金属線材メッキ用不溶性陽極。
【請求項5】
メッキ液中を走行させることにより線材に電気メッキを施すメッキ工程を含む線材の製造方法において、請求項1〜4のうちいずれか一項記載の金属線材メッキ用不溶性陽極を用いて電気メッキを行うことを特徴とする線材の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、金属線材メッキ用不溶性陽極および線材の製造方法(以下、それぞれ単に「不溶性陽極」および「製造方法」とも称する)に関し、詳しくは、メッキ液中を並列して走行する複数本の金属線材に同時に電気メッキを施すメッキ装置に使用される不溶性陽極、および、これを用いた線材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属線材に電気メッキを施した製品の一つとしてタイヤ用スチールコードがある。このスチールコードの製造では、一般に鋼線に銅メッキと亜鉛メッキとが施される。これらの電気メッキ工程では、メッキ槽内に配設された電極板に沿って複数本の金属線材を走行させ、槽内のメッキ液中に通ずることにより、各金属線材の表面に電気メッキを行う。このような線材メッキで従来から使用されている電極板は可溶性陽極である。
【0003】
可溶性電極を使用する電気メッキでは、可溶性陽極としてメッキ金属と同材質の金属板等が使用され、通電によるアノード溶解により電極板自身がメッキ液中に溶解してメッキ金属イオンを供給する。この方法では、電極板が溶解するために、陰極である金属線材との距離が変化し、メッキ厚が経時的に変化して安定した品質のものが得られにくいという品質管理上の問題がある。また、電極板の交換を頻繁に行わなければならないという作業効率上の問題がある。このような事情から、最近は可溶性陽極に代わって不溶性陽極を使用するところが増加してきている。
【0004】
不溶性陽極を使用する金属線材の電気メッキ方法では、電極板からのメッキ金属イオンの供給を期待できないため、メッキ金属イオンの供給手段を別途設ける必要がある。不溶性陽極を使用した電気メッキ方法で一般に用いられるメッキ装置の概略構造を図4に示す。
【0005】
図4に示したメッキ装置では、メッキ液1を収容するメッキ槽2の槽底部に不溶性の電極板3が水平に配置されている。メッキ槽2からメッキ液1をオーバーフローさせ、メッキ槽2の前後に配置されたガイドローラー4で金属線材5をメッキ液1の液面より下に支持しながらメッキ槽2に通す。このとき給電手段6を用いて金属線材5と電極板3との間に電圧を印加する。メッキ槽2からオーバーフローしたメッキ液1は補助槽7に回収され、ポンプでメッキ槽2に戻される。メッキ操業の進行に伴って消費されるメッキ液中のメッキ金属は、図示されない供給手段により適宜補充される。
【0006】
このような電気メッキ装置では、メッキ液中を通過する金属線材に対して下側からのみ電極板が対向する。線材の上側が開放されているので、設備が簡単である上、電極板が通線作業を遮らない利点があり、更にはメッキ槽内でのメッキ反応に伴って発生するガスの放出性も良好である。しかし、電極板が対向する下面に比べて上面のメッキ付着量が少なくなり、線材の周方向でメッキ付着量分布が不均一になりやすいというメッキ品質上の問題がある。
【0007】
前記電気メッキ装置の利点を残しつつその問題点を解決するものとして、メッキ槽内の線材パスラインを両側から挟むように2枚の電極板を対向設置し、両側の電極板間に金属線材を通過させる電気メッキ方法が特許文献1に記載されている。この方法によると、線材周方向でのメッキ付着量分布の均一性が向上する上に、線材パスラインの上側が開放されるので前述の利点がそのまま引き継がれる。複数本の金属線材を同時に電気メッキする場合は、所定間隔で並べた複数枚の電極板の各間に金属線材を通過させる形態が、同文献に記載されている。
【特許文献1】特開2000−192291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
メッキ線材の生産性を高めるために、メッキ液中に複数本の金属線材を並列にして通過させ、これらに同時に電気メッキを施す技術は不可欠である。また、この同時メッキのために、垂直に立てた複数枚の電極板をメッキ槽内で板厚方向に並べ、それらの電極板の各間に金属線材を通過させる方法は、考え方としては非常に合理的である。しかしながら、これを実際に行おうとすると、複数本の金属線材の間でメッキ付着量にばらつきが生じ、これを均一に揃えることが非常に困難である。この傾向は一度にメッキする金属線材の本数が増加するほど顕著になり、このことがメッキ線材の生産性を阻害する結果になっていた。
【0009】
そこで本発明の目的は、複数本の金属線材に同時に電気メッキを施すに際し、各金属線材におけるメッキ付着量を、長期間安定して均一化できる金属線材メッキ用不溶性陽極およびこれを用いた線材の製造方法を提供することにあり、また、メッキ設備を簡略化できる上に、電極板が通線作業を遮らない利点を有し、更にはメッキ槽内でのメッキ反応に伴って発生するガスの放出性にも優れた金属線材メッキ用不溶性陽極およびこれを用いた線材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明者らは垂直に立てた複数枚の電極板の各隙間に金属線材を通過させる複数本同時メッキ法において、複数本の金属線材のメッキ付着量がばらつく原因及びその対策について鋭意検討した。その結果、以下の事実が判明した。
【0011】
並列して走行する複数本の金属線材間でメッキ付着量がばらつく原因は、複数枚の電極板の各隙間におけるメッキ電流の不均一であり、その不均一は各隙間の物理的な寸法のばらつきの他、各電極板への給電のばらつきに起因する。隙間の寸法的なばらつき及び電極板への給電のばらつきを抑制するためには、複数枚の電極板を、各隙間に導電性接触子を挟んで貫通ボルトにより板厚方向に締め付けて固定するのが有効である。換言すれば、複数枚の電極板を、各隙間に導電性接触子を挟んで貫通ボルトにより板厚方向に締め付けて固定するならば、隙間の寸法的なばらつき及び電極板への給電のばらつきの両方が共に効果的に抑制されるのである。
【0012】
すなわち、本発明の金属線材メッキ用不溶性陽極は、メッキ液中を並列して走行する複数本の金属線材に同時に電気メッキを施す電気メッキ装置用の不溶性陽極において、各金属線材の線材パスラインを両側から挟んで対向するように並列配置された複数枚の不溶性電極板と、複数枚の不溶性電極板の各間に介在して各間に等間隔の隙間を形成する複数枚の導電性接触子と、複数枚の不溶性電極板と導電性接触子とを線材パスライン方向の複数箇所で並列方向に締め付けて固定する複数本の貫通ボルトとを具備することを特徴とするものである。
【0013】
本発明において、複数枚の導電性接触子は、線材パスライン方向の複数箇所に間隔をあけて配置することが好ましく、複数枚の不溶性電極板の各間の線材パスラインと干渉しないように線材パスラインの下側に配置することも好ましい。また、複数枚の不溶性電極板又は複数枚の導電性接触子の少なくとも一方において、貫通ボルトの貫通するボルト孔を、部材端面に達する切り込み状に形成することが好ましい。
【0014】
また、本発明の線材の製造方法は、メッキ液中を走行させることにより線材に電気メッキを施すメッキ工程を含む線材の製造方法において、上記本発明の金属線材メッキ用不溶性陽極を用いて電気メッキを行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の不溶性陽極によれば、複数枚の不溶性電極板と、その各間に等間隔の隙間を形成する複数枚の導電性接触子とを、複数本の貫通ボルトにより締め付けて固定する構成としたことにより、これら不溶性電極板間を通過させて複数本の金属線材に対し同時に電気メッキを施すに際し、メッキ付着量を各金属線材間で均一化することができ、長期にわたり安定して線材のメッキ処理を行うことができる。したがって、かかる不溶性陽極を用いた本発明の製造方法によれば、高品質のメッキ済み線材を、長期にわたり安定して得ることが可能である。
【0016】
また、本発明の不溶性陽極において、複数枚の導電性接触子を、線材パスライン方向の複数箇所に間隔をあけて配置すれば、隣接する導電性接触子の間に空間が確保され、この部分で電極間の隙間が垂直方向に連通するため、メッキ液の撹拌流動が阻害されない。さらに、複数の導電性接触子を線材パスラインの下側に配置すれば、線材パスラインの上方から障害物が完全排除され、メッキ設備を簡略化できるとともに、通線作業を遮らない設計が可能であり、メッキ槽内でのメッキ反応に伴って発生するガスの放出性も改善できる。さらにまた、複数枚の不溶性電極板又は複数枚の導電性接触子の少なくとも一方において、貫通ボルトの貫通するボルト孔を部材端面に達する切り込み状に形成すれば、貫通ボルトを抜かずに締め付けを緩めるだけでこれら部材の脱着が可能になり、交換作業等が簡単になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態を示す金属線材メッキ用不溶性陽極の正面図、図2は同金属線材メッキ用不溶性陽極の平面図、図3は同金属線材メッキ用不溶性陽極に使用される不溶性電極板の側面図である。
【0018】
本実施形態の不溶性陽極は、メッキ槽内のメッキ液中を横に並んで水平方向に走行する複数本の金属線材を同時に電気メッキする電気メッキ装置に使用される。この不溶性陽極は、図1及び図2に示すように、両側の外枠10,10の間に所定間隔で並列配置された複数枚の不溶性電極板20と、複数枚の不溶性電極板20の各間に等間隔の隙間を形成する前記各間に挿入された複数枚の導電性接触子30と、これらを板厚方向に締め付けて固定する複数本の貫通ボルト40とを備えている。
【0019】
複数枚の不溶性電極板20は、メッキすべき金属線材60の走行方向に長い長方形で垂直な導電性薄板であり、材質としては、メッキ液に浸食されない金属チタンやチタン−タンタル、チタン−タンタル−ニオブ、チタン−パラジウムなどのチタン基合金が好適である。例えば、板厚が1mm程度のチタン板を用いることができる。
【0020】
不溶性電極板20の下部には、図3に示すように、締め付け用の貫通ボルト40が貫通するボルト孔22が開設されている。ボルト孔22は、電極板20の長手方向に間隔をあけて設けられており、ここでは、貫通ボルト40による締め付け部である電極板20の長手方向両端部に開設されている。各ボルト孔22は下方に延びる長孔であり、電極板20の下端面に達する逆U字状の切り込み状になっている。
【0021】
複数枚の不溶性電極板20を挟む両側の外枠10,10は、不溶性電極板20と同じ長さである。各外枠10は、不溶性電極板20と同様にメッキ液に浸食されないチタン材などからなり、十分な機械的強度を確保できる厚みを有すると共に、不溶性電極板20のボルト孔22に対応するように設けられたボルト孔を有している。また、両側の外枠10,10間に配置された複数枚の不溶性電極板20への給電のために、各外枠10の長手方向両端部にターミナル11が取り付けられている。
【0022】
複数枚の導電性接触子30は、不溶性電極板20より低くかつ十分に短い導電性の厚板からなり、複数枚の不溶性電極板20の下部間に配置されることにより、その上部の、対向する電解面の間に金属線材60を通過させるためのパスライン用空間を形成する。これにより、線材パスラインの上側がライン全長で開放され、装置構造が簡単になると共に、導電性接触子が通線作業を遮ることがなく、更には良好なガス放出性が確保される。これらの導電性接触子30は、パスライン方向の複数箇所に間隔をあけて配置することが好ましく、ここでは貫通ボルト40による締め付け部であるパスライン方向の両端部に配置されている。導電性接触子30はまた、複数枚の不溶性電極板20の各間だけでなく、両端の不溶性陽極板20とその外側の外枠10との間にも同じように配置されている。
【0023】
各導電性接触子30は、不溶性電極板20と同様にメッキ液に侵食されない材質、例えば、白金、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム又はこれらの何れかを主体とする合金などからなり、貫通ボルト40が貫通する2つのボルト孔を有している。
【0024】
そして、全ての不溶性電極板20及び全ての導電性接触子30の各下面は、同一平面上に位置して、水平な平坦面を形成している。
【0025】
貫通ボルト40は、前述したように、締め付け部であるパスライン方向の両端部に配置されており、各締め付け部において両側の外枠10,10、これらの間に配設された複数枚の電極板20及び導電性接触子30を並列方向に貫通する。そして、外枠10,10の外側に突出する両端部にナット41,41をねじ込むことにより、これらの部材を並列方向に強固に締め付けて固定する。貫通ボルト40及びナット41,41も、他の部材と同様にメッキ液に侵食されないチタン材などからなる。
【0026】
次に、本実施形態の不溶性陽極の使用方法及び機能について説明する。
【0027】
組立を終えた不溶性陽極をメッキ槽内に設置して槽内のメッキ液中に浸漬する。複数枚の不溶性電極板20の各間、より詳しくは対向する電極面21,21間に形成された水平方向のパスラインに、メッキすべき金属線材60を通過させる。これにより、複数本の金属線材60が両側から電極板20,20に挟まれた状態でメッキ液中を並列して走行する。
【0028】
このとき、メッキ液の外に露出するターミナル11から複数枚の不溶性電極板20に給電を行う。陰極である金属線材60を接地すること、メッキ槽内のメッキ液を循環させること、メッキ液中にメッキ金属イオンを供給することなどは従来と同様である。
【0029】
これにより、メッキ液中を並列して走行する複数本の金属線材60が同時に電気メッキされる。電極板20が20枚であれば19本の金属線材60を同時にメッキすることができる。実際の操業では、数十本の金属線材60を並列走行させて同時メッキすることもある。
【0030】
このような複数本同時メッキにおいては、各金属線材60の両側に、不溶性電極板20が対向して配置されているため、金属線材60の周囲に均等な厚みの電気メッキを行うことができる。電極板が不溶性であるため、メッキ操業の進行に伴う消耗が生じず、これに伴う電極間距離の変化もない。複数枚の不溶性電極板20が、各隙間に導電性接触子30を挟んで貫通ボルト40により板厚方向に締め付けられた構造のため、全ての不溶性電極板20が平行に固定され、電極上部間に形成されるパスライン用空間の横幅(電極間距離)が各隙間で均一に固定される。これらのために、複数本の金属線材60におけるメッキ付着量を均一化できる。
【0031】
これに加え、貫通ボルト40による板厚方向の締め付けにより、複数枚の電極板20が導電性接触子30を介して強固に面接触し、両者の接触面における電気的抵抗が減少するので、部材並列方向の端部、すなわち両側の外枠10,10に取り付けたターミナル11から給電を行う場合にも、各電極板20への均一な給電が可能である。
【0032】
このように、本実施形態の不溶性陽極では、接触抵抗低減の点からも複数本の金属線材60におけるメッキ付着量を均一化でき、かつその均一化を長期間にわたって維持できる。また、この均一化に、接触面に被覆された電極活性物質が貢献していることは言うまでもない。
【0033】
複数枚の電極板20の各間においては、導電性接触子30がパスライン方向の複数箇所に間隔をあけて配置され、図示例ではパスライン方向の両端部に配置されている。このため、パスライン方向において隣接する導電性接触子間に大きな隙間が形成され、電極間の下部も上部と同様に実質的に開放されている。このため、メッキ液の良好な流動性が確保され、これも均一メッキに寄与する。
【0034】
また、複数枚の不溶性電極板20の上部間がパスライン全長で上方に開放していることにより、装置構造が簡単になるとともに、メッキ開始前の通線作業を遮る部材がなく、作業性が良好となる。更に、メッキ反応に伴って発生するガスの放出性が良好であり、これも均一メッキ、メッキ品質の向上に寄与する。
【0035】
作業性に関しては更に、電極板20におけるボルト孔22が下面に達する逆U字状の切り込み状になっている。このため、貫通ボルト40を緩めれば、貫通ボルト40の引き抜きによる電極板20及び導電性接触子30の分解を行わずに、電極板20を上方へ引き抜くことができ、その交換作業が容易となる。電極板20だけでなく導電性接触子30についても、ボルト孔を下面に達する逆U字状の切り込み状にすることができる。
【0036】
上記実施形態では、貫通ボルトによる締め付け部(導電性接触子配置部)を電極板の長手方向両端部に設定したが、両端部及び中央部の3ヶ所、或いはそれ以上でもよく、電極板の長さに応じて適宜選択することができる。
【0037】
本発明の不溶性陽極は、銅、亜鉛等の電気メッキに好適に使用することができ、例えば、タイヤ用スチールコードの製造において有用である。
【0038】
本発明の線材の製造方法においては、メッキ液中を走行させることにより線材に電気メッキを施すメッキ工程において上記本発明の不溶性陽極を用いる点が重要であり、それ以外の具体的なメッキ条件や他の製造工程の詳細については、常法に従い適宜決定して実施することができ、特に制限されるものではない。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図1〜図3に示す不溶性陽極を実際に作製して、メッキ試験に供した。不溶性電極板は、50本の金属線材を同時メッキするために51枚とした。各不溶性電極板は、長さ400mm、高さ90mm、厚さ1mmのチタン薄板とした。導電性接触子は長さ80mm、高さ40mm、厚さ10mmのチタン厚板とし、電極板間の長手方向両端部に配置した。貫通ボルトはチタンボルトであり、長手方向両端部の導電性接触子配置部(締め付け部)に使用した。外枠及びターミナルもチタン製とした。
【0040】
作製された不溶性陽極を別途用意したメッキ槽に配置し、陰極である50本の鋼線(直径1.5mm、長さ200mm)を電極板間のパスラインに配置して、メッキ試験を行った。メッキ試験では、硫酸亜鉛:300g/L、硫酸:50g/Lを調製したものをメッキ液(電解浴)とし、温度50℃、陰極電流密度20A/dm2、通電時間10秒のメッキ条件を採用した。メッキ後の亜鉛被覆鋼線材を剥離液に浸漬して亜鉛を溶解し、その溶解液を蛍光X線分析装置により分析して鋼線材1本あたりのメッキ付着量を調査した。調査結果を表1に示す。
【0041】
【表1】


【0042】
表1においては、50本の鋼線材を一度にメッキし、付着量のばらつきが7%以内の場合を「良」、7%を超え15%以内の場合を「可」とし、15%を超える場合を「不可」とした。この結果より、不溶性電極板の間に導電性接触子を介在させて電極間距離を等間隔にするとともに、両者を面接触させて接触面積を十分に確保したことにより、複数の金属線材間において、めっき付着量を高いレベルで均一化できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係る金属線材メッキ用不溶性陽極を示す正面図である。
【図2】同金属線材メッキ用不溶性陽極を示す平面図である。
【図3】同金属線材メッキ用不溶性陽極に使用される不溶性電極板を示す側面図である。
【図4】従来の金属線材メッキ用不溶性陽極を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0044】
10 外枠
11 ターミナル
20 不溶性電極板
21 電極面
22 ボルト孔
30 導電性接触子
40 貫通ボルト
41 ナット
60 金属線材
【出願人】 【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
【出願日】 平成18年6月30日(2006.6.30)
【代理人】 【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎

【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子


【公開番号】 特開2008−7832(P2008−7832A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−181196(P2006−181196)